説明

スパイク手段、野球靴の靴底及び野球靴

【課題】野球競技の動作、地面環境、個人差に応じて、靴底における位置及び向きを簡単に調整することができるスパイク手段、前記スパイク手段を備えた野球靴の靴底及び野球靴を提供することを目的とする。
【解決手段】靴底に固着され、ねじ孔を有し、接地側の面に平行なV字状の第1の歯列が形成された定位部材と、前記定位部材の接地側の面上に設けられ、前記ねじ孔に対応して長穴が第1の歯列と直交する方向に設けられ、前記定位部材側の面に前記第1の歯列と嵌まり合う一連の平行なV字形状の第2の歯列が形成された位置調整部材と、外周面に前記ねじ孔と螺合する雄ねじが形成された螺軸と、地面に対してほぼ直角に立上り、前記靴底側の端部が、前記定位部材と前記位置調整部材との一の端部に、平行な2つの枢軸により回動自在に枢止されている爪片とからなっていることを特徴とする、野球靴の靴底に用いられるスパイク手段を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパイク手段、野球靴の靴底及び野球靴に関し、特に調整可能なスパイク手段、そのスパイク手段をそなえた野球靴の靴底及び野球靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、滑り止めを有する野球靴として、例えば図8に示すように、複数のスパイク82を靴底81に突設したスパイクシューズ8がある(特許文献1)。スパイク82は、爪片811が形成された座板812が固定釘813によって該座板812と靴底82を貫通して靴底82の内部に固定されてなったものである。
【0003】
しかしながら、前記構成の野球靴8では、野球競技中、バッティングや、スローイング、ランニングなどの動作に応じて、最適な滑り止め効果を有するよう、スパイク82の位置及び向きを調整するために、スパイク82を取り替えなければならず、取替え手間がかかるという問題点がある。なお、この固定的なスパイク82を設けた野球靴8は、一般グラウンドの環境や使用者の足部の形等の個人差によってスパイクの靴底における位置及び向きに対する異なった要求にも対応できない欠点がある。
【特許文献1】特開2000−106901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点や欠点に鑑みてなされたもので、野球競技の動作、グラウンド状態、個人差に応じて、靴底における位置及び向きを簡単に調整することができるスパイク手段、前記スパイク手段を備えた野球靴の靴底及び野球靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明は、野球靴の靴底に用いられるスパイク手段であって、プレート状に形成され、前記靴底に固着され、そのほぼ中央部には厚さ方向にねじ孔が貫設され、接地側の面に一連の平行なV字形状の第1の歯列が形成された定位部材と、プレート状に形成され、前記定位部材の接地側の面上に設けられ、前記ねじ孔に対応して長穴が前記一連の第1の歯列と直交する方向に沿って設けられ、前記定位部材に臨む面に前記一連の第1の歯列と嵌め合う一連の平行なV字形状の第2の歯列が形成されている位置調整部材と、その外周面に前記長穴を通して前記ねじ孔と螺合する雄ねじが形成された頭部付き螺軸と、地面に対してほぼ直角に立上り、前記靴底側の端部が、前記定位部材と前記位置調整部材とのそれぞれの前記一連の第1の歯列と前記一連の第2の歯列とに平行する端部に、前記螺軸に近接したり離れたりする平行な2つの枢軸により回動自在に枢止されている爪片とからなっていることを特徴とするスパイク手段を提供する。
【0006】
前記定位部材は、前記靴底に固着されたベースと、前記ベースの接地側の面上に設けられ、接地側の面に前記一連の第1の歯列が形成された定位板とにより構成され、前記ねじ孔は、前記ベースに設けられた螺孔と前記定位板に該螺孔に対応して設けられた挿通孔とからなり、前記螺軸は前記長穴と前記挿通孔を通して前記螺孔に螺合され、前記ベースには、前記定位板側の面における前記螺孔の周りに複数の第1の放射歯が周設され、前記定位板の前記ベース側の面には、前記挿通孔の周りに前記複数の第1の放射歯に対応する複数の第2の放射歯が周設され、また、前記爪片は、前記定位板と前記位置調整部材とに枢止されていることが好ましい。
【0007】
また、前記構成において、前記螺孔と前記挿通孔のそれぞれの開口部には、前記定位板が常時前記ベースから離れる方向に付勢するばね部材が介挿され、また、前記定位板と前記位置調整部材との間には、前記位置調整部材が常時前記定位板から離れる方向に付勢するスプリング部材が配置されていることが好ましい。
【0008】
更に、本発明は、接地面に複数の凹部が形成され、それぞれの凹部にスパイク手段が設けられ、それらのスパイク手段として前記構成のスパイク手段が使用されていることを特徴とする野球靴の靴底をも提供する。
【0009】
更に、本発明は、靴底の接地面に複数の凹部が設けられ、それぞれの凹部にスパイク手段が設けられ、それらのスパイク手段として前記構成のスパイク手段が使用されていることを特徴とする野球靴をも提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスパイク手段によれば、前記螺軸の締付けが緩められて前記定位部材と前記位置調整部材との間で両歯列が僅かに離隔する時に、前記位置調整部材を連動させながら前記爪片を回動させて地面に対する角度を変えたり、螺軸を中心に向きを変えられるので、必要に応じて前記爪片を回動してからまた前記螺軸を締付けることによって簡単に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態のスパイク手段の分解斜視図である。図2は、前記実施形態のスパイク手段の部分斜視図である。図3は、前記実施形態のスパイク手段の斜視図であり、爪片が地面に対してほぼ直角に立上っている状態を示す。図4は、前記実施形態のスパイク手段の斜視図であり、爪片が地面に対して斜めに立上っている状態を示す。図5は、前記実施形態のスパイク手段の斜視図であり、爪片が地面に対して斜めに立上り且つ向きを変えた状態を示す。
【0012】
図1、図2及び図3に示すように、本実施形態のスパイク手段は、野球靴の靴底(例えば図6を参照)に用いられるものとして、主に定位部材20と、位置調整部材23と、螺軸24と、爪片25とからなっている。
【0013】
定位部材20は、前記靴底に固着されるベース21と、ベース21の接地側の面上に設けられた定位板22とにより構成されている。
ベース21は、上下方向に螺孔211が設けられ、定位板22側の面における螺孔211の周りに複数の第1の放射歯212が周設されている。また、本実施形態において、ベース21には、周縁から突出た複数の突起に貫通孔213が設けられ、靴底を樹脂で形成すると同時に、樹脂を貫通孔213に充填することによりベース21を靴底内に固着することができる。
【0014】
定位板22には、螺孔211に対応して挿通孔221が設けられ、ベース21側の面における該挿通孔221の周りに複数の第1の放射歯212に対応する複数の第2の放射歯223が周設され、且つ接地側の面に一連の平行なV字形状の第1の歯列222が形成されている。
【0015】
また、螺孔211と挿通孔221のそれぞれの開口部には、段部が形成されて、定位板22が常時ベース21から離れる方向に付勢する圧縮ばね26が介挿されている。
【0016】
位置調整部材23は、定位板22の接地側の面上に設けられた板体として構成され、定位板22に臨む面に前記一連の第1の歯列222と嵌まり合う一連の平行なV字形第2の歯列232が形成され、挿通孔221と螺孔211とに対応して長穴231が前記一連の第2の歯列232と直交して延びるように設けられている。
【0017】
螺軸24には、その外周面に長穴231と挿通孔221を通して螺孔211の雌ねじと螺合する雄ねじ241が形成され、頭部242が位置調整部材23の接地側の面に当接するように付けられたものである。
【0018】
爪片25は、地面に対してほぼ直角に立上り、前記靴底側の端部251が定位板22と位置調整部材23それぞれの、前記一連の第1の歯列222と前記一連の第2の歯列232と平行する端部に、螺軸24に近接したり離れたりする、平行する二の枢軸28により回動自在に枢止されている。
【0019】
また、定位板22と位置調整部材23との間には、位置調整部材23が常時定位板22から離れる方向に付勢されるねじりばね27が配置されている。
【0020】
爪片25の地面に対する立上り状態を図3から図4に示されるように変える場合、まず螺軸24の締付けを緩めると、ねじりばね27により位置調整部材23が定位板22から僅かに離隔し、前記一連の第1の歯列222と前記一連の平行なV字形状の第2の歯列232との嵌め合わせが解除されるので、長孔231を介して位置調整部材23を連動させながら爪片25が螺軸24に近接したり螺軸24から離れたりするよう回動されるようになるため、必要に応じて爪片25を地面に対して所定の角度で斜めに立上る状態に回動してから、また螺軸24を締付けることができ、簡単に調整することができる。
【0021】
また、爪片25の向きを図4から図5に示されるように変える場合、同じくまず螺軸24の締付けを緩めると、圧縮ばね26により定位板22がベース21から僅かに離隔し、複数の第1の放射歯212と複数の第2の放射歯223との嵌め合わせが解除されるので、位置調整部材23と定位板22を連動させながら爪片25がベース21に対して螺軸24を中心に回動されるようになるため、必要に応じて爪片25を回動してその向きを変えてからまた螺軸24を締付けることができ、簡単に調整することができる。
【0022】
図6は、本発明の第2実施形態の野球靴の靴底の縦断面図であり、スパイク手段として第1実施形態のスパイク手段が使用されて図3の状態とされた。図7は、図6のスパイク手段が図4の状態とされた。
【0023】
図6、7に示すように、本実施形態の野球靴の靴底11は、その接地面111に複数の凹部12が形成され、それぞれの凹部12にスパイク手段が設けられ、それらのスパイク手段として第1実施形態のスパイク手段2が使用されている。また、本実施形態では、前記のように靴底11を樹脂で形成すると同時に、樹脂がベース21の貫通孔213に充填されることによりベース21が靴底11内に固着されるようになっっている。ベース21の靴底11に対する固着は、これに限定されず、他に例えば接着剤、ねじ止めで固着される方法などもできる。
【0024】
また、図示したように、複数の凹部12の開口は、螺軸24の頭部242と爪片25とが外部から回動されることが可能なようにカバー13によって覆われている。
【0025】
また、図6に示すように、本発明の第3実施形態の野球靴100は、アッパー3と第2実施形態の靴底11とが一体化してなったものである。なお、アッパー3と、アッパー3と靴底11との一体化の方法については、本発明に直接かかわらなく従来技術を利用すればよいので、説明を省略する。
【0026】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定して狭義に解釈されるものではなく、即ち本考案の精神の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上説明したように、本発明のスパイク手段、野球靴の靴底及び野球靴によれば、野球競技の動作、地面環境、個人差に応じて、靴底における位置及び向きを簡単に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態のスパイク手段の分解斜視図。
【図2】前記実施形態のスパイク手段の部分斜視図。
【図3】前記実施形態のスパイク手段の斜視図であり、爪片が地面に対してほぼ直角に立上り状態を示す。
【図4】前記実施形態のスパイク手段の斜視図であり、爪片が地面に対して斜めに立上り状態を示す。
【図5】前記実施形態のスパイク手段の斜視図であり、爪片が地面に対して斜めに立上り且つ向きを変えた状態を示す。
【図6】本発明の第2実施形態の野球靴の靴底の縦断面図であり、スパイク手段として第1実施形態のスパイク手段が使用されて図3の状態とされた。
【図7】図6のスパイク手段が図4の状態とされた。
【図8】従来の野球靴の一例を示す部分断面図。
【符号の説明】
【0029】
100 野球靴
11 野球靴の靴底
111 接地面
12 凹部
13 カバー
2 スパイク手段
20 定位部材
21 ベース
211 螺孔
212 第1の放射歯
213 貫通孔
22 定位板
221 挿通孔
222 一連の第1の歯列
223 第2の放射歯
23 位置調整部材
231 長穴
232 一連の第2の歯列
24 螺軸
241 雄ねじ
242 頭部
25 爪片
251 (爪片の)靴底側の端部
26 圧縮ばね
27 ねじりばね
28 枢軸
3 アッパー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
野球靴の靴底に用いられるスパイク手段であって、
プレート状に形成され、前記靴底に固着され、そのほぼ中央部には厚さ方向にねじ孔が貫設され、接地側の面に一連の平行なV字形状の第1の歯列が形成された定位部材と、
プレート状に形成され、前記定位部材の接地側の面上に設けられ、前記ねじ孔に対応して長穴が前記一連の第1の歯列と直交する方向に沿って設けられ、前記定位部材に臨む面に前記一連の第1の歯列と嵌め合う一連の平行なV字形状の第2の歯列が形成されている位置調整部材と、
外周面に前記長穴を通して前記ねじ孔と螺合する雄ねじが形成された頭部付き螺軸と、
地面に対してほぼ直角に立上り、前記靴底側の端部が、前記定位部材と前記位置調整部材とのそれぞれの前記一連の第1の歯列と前記一連の第2の歯列とに平行する端部に、前記螺軸に近接したり離れたりする平行な2つの枢軸により回動自在に枢止されている爪片と
からなっていることを特徴とするスパイク手段。
【請求項2】
前記定位部材は、前記靴底に固着されたベースと、前記ベースの接地側の面上に設けられ、接地側の面に前記一連の第1の歯列が形成された定位板とにより構成され、
前記ねじ孔は、前記ベースに設けられた螺孔と前記定位板に該螺孔に対応して設けられた挿通孔とからなり、
前記螺軸は前記長穴と前記挿通孔を通して前記螺孔に螺合され、
前記ベースには、前記定位板側の面における前記螺孔の周りに複数の第1の放射歯が周設され、前記定位板の前記ベース側の面には、前記挿通孔の周りに前記複数の第1の放射歯に対応する複数の第2の放射歯が周設され、
また、前記爪片は、前記定位板と前記位置調整部材とに枢止されていることを特徴とする請求項1に記載のスパイク手段。
【請求項3】
前記螺孔と前記挿通孔のそれぞれの開口部には、前記定位板が常時前記ベースから離れる方向に付勢されるばね部材が介挿され、
また、前記定位板と前記位置調整部材との間には、前記位置調整部材が常時前記定位板から離れる方向に付勢されるスプリング部材が配置されていることを特徴とする請求項2に記載のスパイク手段。
【請求項4】
接地面に複数の凹部が形成され、それぞれの凹部にスパイク手段が設けられ、前記スパイク手段として前記請求項1〜3のいずれか一項に記載のものが使用されていることを特徴とする野球靴の靴底。
【請求項5】
靴底の接地面に複数の凹部が設けられ、それぞれの凹部にスパイク手段が設けられ、前記スパイク手段として前記請求項1〜3のいずれか一項に記載のスパイク手段が使用されていることを特徴とする野球靴。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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