説明

スパッタリング用分割ターゲット装置及びそれを利用したスパッタリング方法

【課題】スパッタリング用分割ターゲット装置及びそれを利用したスパッタリング方法を提供する。
【解決手段】ベースプレート110と、ベースプレートの一面に規則的な列をなして付着した複数の小片ターゲット120、及びベースプレートの他面に複数の小片ターゲットとそれぞれ対になって付着した複数の磁石130とを備えた複数のソースユニット140と、を備え、ソースユニットは、列の方向である第1方向と、それに垂直である第2方向との間の角度において相互平行に配列されたスパッタリング用分割ターゲット装置100である。これにより、製造及び取扱の容易な小片ターゲットを使用しつつも均一な蒸着品質が得られ、結果的に、ディスプレイ装置の輝度を画面全体にわたって均一にしうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング作業に蒸着源として使われる分割ターゲット装置及びそれを利用したスパッタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ディスプレイ装置に適用される薄膜トランジスタは、マグネトロンスパッタリングのような蒸着過程を通じて製造される。すなわち、準備された蒸着ターゲットをスパッタリングして、蒸着対象材であるディスプレイ装置の基板上に所望のパターンの薄膜を形成する。
【0003】
しかし、最近、ディスプレイ装置の画面が次第に大型化されるにつれて、蒸着ターゲットをその画面と同じサイズに製作することが難しくなっている。すなわち、前記薄膜トランジスタは、ディスプレイ装置の画面全体にわたって形成されるが、大型画面の蒸着作業のために、蒸着ターゲットを画面とほぼ同じサイズに作るためには、製作及び取扱が相当に困難になる。しかも、酸化物を用いて活性層を形成する薄膜トランジスタが増加するにつれて、酸化物ターゲットがスパッタリングに使われる場合が増加しているが、特に、このような酸化物は脆性が大きいため、大型化する場合に、製造及び取扱が相当に困難になる。
【0004】
したがって、最近には、このような問題を勘案して、蒸着ターゲットを、製造及び取扱の容易な数個の小片状に形成して、ベースプレート上に付着させて作り、スパッタリングの際にそのターゲット組立体を画面に沿って移動させつつ作業する分割ターゲット装置が好まれている。すなわち、蒸着ターゲットを、画面全体をカバーするサイズに作るのではなく、小さな小片を繋いで作り、その繋がれたサイズも画面の一部幅のみをカバーするように作った後、スパッタリング時に蒸着ターゲットを画面に沿って移動させつつ蒸着作業を行う方式が使われている。
【0005】
しかし、このように多くの小片を繋いで蒸着ターゲットを作ったところ、小片間の隙間の領域と小片の内側領域との間において蒸着品質の偏りが大きくなる問題が発生している。すなわち、小片間の隙間の領域には、各小片の端部の角部が位置するため、その位置における電圧及び磁場値が、小片の内側より増大して、蒸着品質が不均一になる。
【0006】
そうなれば、最終製品であるディスプレイ装置の画面上で輝度が一定ではなく、部位別に偏りがはなはだしくなる恐れがある。
【0007】
したがって、このような問題を解決できる方策が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、小片ターゲットを使用しつつも輝度偏差を招く部位別蒸着品質偏差を抑制できるように改善された、スパッタリング用分割ターゲット装置及びそれを利用したスパッタリング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するために、本発明の実施形態によるスパッタリング用分割ターゲット装置は、ベースプレートと、前記ベースプレートの一面に規則的な列をなして付着した複数の小片ターゲット、及び前記ベースプレートの他面に前記複数の小片ターゲットとそれぞれ対になって付着した複数の磁石を備えた複数のソースユニットと、を備え、前記ソースユニットは、前記列の方向である第1方向と、それに垂直である第2方向との間の角度において相互平行に配列される。
【0010】
ここで、隣接した前記ソースユニット同士は、前記第1方向に沿ってそれぞれのスパッタリング領域が相互重畳して配されうる。
【0011】
前記ソースユニットのうち、前記第1方向に沿った両端部に設置されたソースユニットは、対象材のスパッタリング領域の外に位置するダミーソースユニットでありうる。
【0012】
前記ベースプレートが前記ソースユニットと同じパターン形状に形成されてもよく、前記ソースユニットを受容する他のパターン形状に形成されてもよい。
【0013】
前記ベースプレートは、金属材質を含むことができ、前記分割ターゲットは、酸化物材質を含むことができる。
【0014】
また、前記課題を達成するために、本発明の実施形態によるスパッタリング方法は、ベースプレートの一面に規則的な列をなして付着した複数の小片ターゲットと、前記ベースプレートの他面に前記複数の小片ターゲットとそれぞれ対になって付着した複数の磁石と、を備えた複数のソースユニットを備え、前記ソースユニットは、前記列の方向である第1方向と、それに垂直である第2方向との間の角度において相互平行に配列されたスパッタリング用分割ターゲット装置を準備するステップと、スパッタリング対象材である基板を前記分割ターゲット装置に対向させて準備するステップと、前記分割ターゲット装置を前記基板上において前記第2方向に移動させてスパッタリングを行うステップと、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製造及び取扱の容易な小片ターゲットを使用しつつも均一な蒸着品質が得られ、結果的に、ディスプレイ装置の輝度を画面全体にわたって均一にしうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態による分割ターゲット装置を示す平面図である。
【図2】図1に示された分割ターゲット装置が設置された真空チャンバを示す図面である。
【図3】図1に示された分割ターゲット装置の一部を拡大した平面図である。
【図4】図1に示された分割ターゲット装置のスパッタリング分布を示すグラフである。
【図5】本発明の他の実施形態による分割ターゲット装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付した図面を参照して、本発明の望ましい実施形態を詳細に説明すれば、次の通りである。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態によるスパッタリング用分割ターゲット装置100の構造を示した図面である。
【0019】
図1に示したように、本実施形態の分割ターゲット装置100は、金属である銅板材質のベースプレート110と、スパッタリングソースであって、そのベースプレート110の一面上に付着した複数の小片ターゲット120と、ベースプレート110の他面に各小片ターゲット120と対になって付着された複数の磁石130と、を備えている。すなわち、ベースプレート110の一面及び他面にそれぞれ付着された小片ターゲット120と磁石130とが一対一に対になってソースユニット140を形成し、このようなソースユニット140が第1方向(Y軸方向)に沿った列になって複数個が配列されている。
【0020】
このような分割ターゲット装置100は、スパッタリングの際、図2に示したように、アルゴンガスが導入された真空チャンバ10内において、スパッタリング対象材であるディスプレイ装置の基板20に対面するように設置される。
【0021】
この真空チャンバ10内において前記分割ターゲット装置100を負極に、スパッタリング対象材である基板20を正極にして放電を起こせば、前記アルゴンガスからアルゴンイオンが発生し、このアルゴンイオンは、分割ターゲット装置100の小片ターゲット120に衝突し、その小片ターゲット120の微粒子を飛散させ、その飛散した微粒子が基板20に蒸着されつつ薄膜が形成される。そして、前記磁石130は、磁場を形成し、アルゴンイオンの衝突によるスパッタリング速度を向上させる役割を行う。このように、電圧及び磁場を共に加えて蒸着を進めるスパッタリングをマグネトロンスパッタリングという。
【0022】
一方、前記分割ターゲット装置100は、図2に示したように、基板20と同じサイズではなく、基板20の一部領域のみをカバーできるサイズであって、スパッタリング時には、図面のX軸方向である第2方向に移動しつつ基板20上をスキャンする。すなわち、相互対面する基板20と分割ターゲット装置100とを同じサイズに製作せず、基板20の一部幅のみをカバーするように分割ターゲット装置100を作り、その代わりに、分割ターゲット装置100が基板20上をスキャンすることにより全体領域のカバーを可能にした。この際、基板20に対する分割ターゲット装置100の移動は、相対運動であるので、分割ターゲット装置100を固定し、基板20を第2方向(X軸方向)に移動させることもある。
【0023】
そして、分割ターゲット装置100に付着されたスパッタリングソースは、図1に示したように、複数の小片ターゲット120で形成されているが、これは、特に酸化物ターゲットの場合、取扱を容易にするためである。すなわち、前述したように、活性層を酸化物から形成する薄膜トランジスタが増加するにつれて、酸化物ターゲットがスパッタリングに使われる場合が増加しているが、特に、このような酸化物は、脆性が大きいので、大型化する場合、製造及び取扱が相当に困難になる。しかし、複数個に分割された小片ターゲット120をベースプレート110に付着させて分割ターゲット装置100を作る本実施形態の場合には、小さな小片ターゲット120のみを扱えば良いので、大型ターゲットを作る場合に比べて、製造及び取扱が非常に便利になる。
【0024】
その代わりに、このような小片ターゲット120を使用する場合、各小片ターゲット120間の隙間121のため、不均一な蒸着が発生する恐れがある。すなわち、小片ターゲット120間の隙間121の領域には、各小片ターゲット120の端部の角部分が位置するので、電圧及び磁場値が各小片ターゲット120の内側より大きくなる。このため、スパッタリングの結果が不均一になる恐れがあるが、これを解決するために、本実施形態では、各小片ターゲット120をいずれも一定方向に傾けて平行に設定する。
【0025】
すなわち、図1に示したように、各小片ターゲット120が一列に配列された列の方向(Y軸方向)を第1方向とし、分割ターゲット装置100が基板20上を移動する方向(X軸方向)を第2方向とすれば、前記小片ターゲット120は、いずれも前記第1方向と第2方向との間に向かうように傾いた状態で相互平行に配列される。そうすれば、隣接したソースユニット140同士でスパッタリング領域が相互重畳され、小片ターゲット120間の隙間の影響が相殺されうる。この原理を説明すれば、次の通りである。
【0026】
まず、前記のように傾いて配列されたソースユニット140のうち一つのソースユニット140のみでスパッタリングを行うと仮定する場合、そのスパッタリングの分布は、図3のように形成されると見なされる。すなわち、小片ターゲット120の中央部において最大の蒸着率aが現れ、両端側のエッジへ行くほど、当然蒸着率は低下する。
【0027】
しかし、このようなソースユニット140を一列に平行に連結すれば、図4に示したようなスパッタリング分布を示す。すなわち、点線で示したような各ソースユニット140のスパッタリング分布が相互重畳されつつ、全体的には、実線で示されたようなスパッタリング分布が得られる。それにより、各ソースユニット140をスパッタリング分布が相互重畳するように配列することによって、小片ターゲット120間の隙間において蒸着率が変わる現象を相殺させた。それにより、中央部において最大の蒸着率bが現れ、両端側のエッジへ行くほど蒸着率が低下する大きなスパッタリング分布が形成される。説明の便宜上、複数のソースユニット140にS1〜S9まで記号を付けたが、両端側のS1、S9ソースユニット140領域では、蒸着率が低下し、残りのS2〜S8ソースユニット140の領域では、蒸着率がほぼ最大蒸着率bのレベルを維持する。図面のS1_a〜S9_aとS1_b〜S9_bとは、S1〜S9ソースユニット140の第1方向(Y軸方向)への一端及び他端の位置をそれぞれ示したものであって、隣接したソースユニット140間のスパッタリング領域が相互重畳される状況を示すために付与した参照符号である。
【0028】
したがって、このようなスパッタリング分布を示す分割ターゲット装置100に対して、対象材である基板20を図2のように配置させれば、全体的に均一な分布のスパッタリングを行える。すなわち、両端側のS1、S9ソースユニット140は、隣接したソースユニット140のスパッタリング分布に影響を与える役割のみを行い、実質的には、対象材である基板20のスパッタリング領域の外に位置するダミーソースユニットの役割を行う。そして、残りのS2〜S8ソースユニット140によって基板20上に均一なスパッタリングが行われる。
【0029】
したがって、このような分割ターゲット装置100を利用すれば、製作及び取扱の容易な小片ターゲット120を使用しつつも基板20上に均一なスパッタリングが可能になり、基板20全体にわたって均一な輝度が実現可能になる。
【0030】
一方、本実施形態では、図1に示したように、ベースプレート110が、斜めに配列されたソースユニット140のパターンに沿って同一な形態に形成された構造を例示したが、図5に示したように、ソースユニット140を受容する広い形態にベースプレート110’を形成することもある。すなわち、実質的なスパッタリング分布は、前記小片ターゲット120と磁石130とによって形成されるので、ベースプレート110’を 、多様な形状に変形させうる。
【0031】
したがって、前記のように改善された構造を有する分割ターゲット装置100を使用すれば、製造及び取扱の容易な小片ターゲット120を使用しつつも基板20上に均一な蒸着品質が得られ、結果的に、ディスプレイ装置の輝度を画面全体にわたって均一にさせうる。特に、脆性の大きい酸化物をターゲットとして使用する場合に、有効に活用されうる。
【0032】
本発明は、図面に示された一実施形態を参照して説明されたが、これは、例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるということが分かるであろう。したがって、本発明の真の保護範囲は、特許請求の範囲によって決定されねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、均質な薄膜蒸着関連の技術分野に好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
100 分割ターゲット装置
110 ベースプレート
120 小片ターゲット
130 磁石
140 ソースユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
前記ベースプレートの一面に規則的な列に沿って付着した複数の小片ターゲット、及び前記ベースプレートの他面に前記複数の小片ターゲットとそれぞれ対になって付着した複数の磁石を備えた複数のソースユニットと、を備え、
前記ソースユニットは、前記列の方向である第1方向とそれに垂直である第2方向との間の角度において相互平行に配列されたスパッタリング用分割ターゲット装置。
【請求項2】
隣接した前記ソースユニット同士は、前記第1方向に沿ったそれぞれのスパッタリング領域が相互重畳して配されたことを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング用分割ターゲット装置。
【請求項3】
前記ソースユニットのうち、前記第1方向に両端部に設置されたソースユニットは、対象材のスパッタリング領域の外に位置するダミーソースユニットであることを特徴とする請求項2に記載のスパッタリング用分割ターゲット装置。
【請求項4】
前記ベースプレートは、前記ソースユニットと同じパターン形状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング用分割ターゲット装置。
【請求項5】
前記ベースプレートは、前記ソースユニットを受容する異なるパターン形状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング用分割ターゲット装置。
【請求項6】
前記ベースプレートは、金属材質を含むことを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング用分割ターゲット装置。
【請求項7】
前記小片ターゲットは、酸化物材質を含むことを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング用分割ターゲット装置。
【請求項8】
ベースプレートの一面に規則的な列をなして付着した複数の小片ターゲット、及び前記ベースプレートの他面に前記複数の小片ターゲットとそれぞれ対になって付着した複数の磁石を備えた複数のソースユニットを備え、前記ソースユニットは、前記列の方向である第1方向とそれに垂直である第2方向との間の角度において相互平行に配列されたスパッタリング用分割ターゲット装置を準備するステップと、
スパッタリング対象材である基板を前記分割ターゲット装置に対向させて準備するステップと、
前記分割ターゲット装置を、前記基板上において前記第2方向に移動させてスパッタリングを行うステップと、を含むスパッタリング方法。
【請求項9】
隣接した前記ソースユニット同士は、前記第1方向に沿ってそれぞれのスパッタリング領域が相互重畳して配されたことを特徴とする請求項8に記載のスパッタリング方法。
【請求項10】
前記ソースユニットのうち、前記第1方向に沿った両端部に設置されたソースユニットは、対象材のスパッタリング領域の外に位置するダミーソースユニットであることを特徴とする請求項9に記載のスパッタリング方法。
【請求項11】
前記ベースプレートが前記ソースユニットと同じパターン形状に形成されたことを特徴とする請求項8に記載のスパッタリング方法。
【請求項12】
前記ベースプレートは、前記ソースユニットを受容する異なるパターン形状に形成されたことを特徴とする請求項8に記載のスパッタリング方法。
【請求項13】
前記ベースプレートは、金属材質を含むことを特徴とする請求項8に記載のスパッタリング方法。
【請求項14】
前記小片ターゲットは、酸化物材質を含むことを特徴とする請求項8に記載のスパッタリング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−241282(P2012−241282A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−25854(P2012−25854)
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Mobile Display Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】San #24 Nongseo−Dong,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do 446−711 Republic of KOREA
【Fターム(参考)】