説明

スピーカ機能付き天井材

【課題】天井化粧板の振動が取付フレームを介して建物躯体に伝播するのを防止でき、周辺への固体伝播を効果的に抑制すること。
【解決手段】天井面1と平行に配置される振動板を兼ねる薄肉の天井化粧板5の裏面に加振器6が取り付けられると共に天井化粧板5の下面部5cが内装化粧面となっており、天井面1に取り付けられる取付フレーム3に天井化粧板5の内装化粧面の中央部分を下方に露出させる開口部16が設けられているスピーカ機能付き天井材である。、天井化粧板5の外周部を保持する保持手段は、天井化粧板5の外周部の下面部5cと取付フレーム3の内側上面部3bとの上下方向Aに対向するそれぞれの位置に、互いに反発しあう向きに対向させて取り付けられる上下一対の磁石7,8からなる。両磁石7,8間の磁気反発力を利用して天井化粧板5を上記取付フレーム3と接触しない位置まで浮上させるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ機能を有する天井材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、スピーカ筐体内部に振動板を収容し、振動板の裏面に取り付けた加振器にて該振動板を加振することで音響を発生させるスピーカ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のスピーカ装置では、振動板が音を発するときに空気に振動を伝えるが、その反作用としてスピーカ筐体自体も振動するため、この振動が固定しているものに対して伝わる固体伝播現象が問題となっている。特にスピーカ装置を天井面に直付けする取り付け構造にあっては、固体伝播により隣室や周辺空間に対して振動を伝え、その周辺空間にいる人に対して振動や共鳴等による音に起因する不快感を与えることがある。そのためスピーカ装置と天井面との間に振動吸収用部材を介在させる必要が生じるなど、スピーカ装置の取り付け構造が複雑になるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−59193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、振動板を兼ねる天井化粧板の振動が建物躯体側に伝播するのを防止でき、周辺への固体伝播を効果的に抑制することができるスピーカ機能付き天井材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明は、被取付面となる天井面1と平行に配置される振動板を兼ねる薄肉の天井化粧板5の裏面に加振器6が取り付けられていると共に天井化粧板5の下面部5cが内装化粧面となっており、上記天井面1に取り付けられる取付フレーム3に、上記天井化粧板5の外周部を保持する保持手段が設けられると共に上記天井化粧板5の内装化粧面の中央部分を下方に露出させる開口部16が設けられてなるスピーカ機能付き天井材であって、上記保持手段は、上記天井化粧板5の外周部の下面部5cと上記取付フレーム3の内側上面部3bとの上下方向Aに対向するそれぞれの位置に、互いに反発しあう向きに対向させて取り付けられる上下一対の磁石7,8からなる。両磁石7,8間の磁気反発力を利用して天井化粧板5を上記取付フレーム3と接触しない位置まで浮上させるように構成したことを特徴としている。
【0007】
このような構成とすることで、天井建材としての本来の機能に加えて、加振器6付き天井化粧板5によってスピーカ機能を付加することができ、そのうえ、一対の磁石7,8を互いに反発しあう向きに取り付ける簡易な保持構造により、取付フレーム3内部で天井化粧板5を浮上させることができ、これにより取付フレーム3自体の振動を抑えることができ、天井化粧板5の振動が取付フレーム3を介して建物躯体に伝播するのを抑制できるようになる。
【0008】
また、上記天井化粧板5の外周端面5bとこれに対向する取付フレーム3の内周面3aとの間の横方向Bの隙間9に、クッション性を有する緩衝部材15を介在させるのが好ましく、この場合、浮上状態で振動する天井化粧板5の横方向Bのふらつき動作を緩衝部材15によって防止できるので、取付フレーム3自体の振動抑制効果を高めることができる。
【0009】
また、上記天井化粧板5の外周端面5bとこれに対向する取付フレーム3の内周面3aとの横方向Bに対向するそれぞれの位置に、左右一対の第2磁石10,11を互いに反発しあう向きに対向させて取り付けると共に、上記天井化粧板5の上面部5aと取付フレーム3の内側下面部3cとの上下方向Aに対向するそれぞれの位置に、上下一対の第3磁石12,13を互いに反発しあう向きに対向させて取り付けるのが好ましく、この場合、浮上状態で振動する天井化粧板5の横方向B或いは上下方向Aのふらつき動作を第2磁石10,11の磁気反発力、第3磁石12,13の磁気反発力によってそれぞれ抑制でき、天井化粧板5の安定性が一層増し、天井化粧板5と取付フレーム3との接触、摩擦をより確実に回避できるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上下一対の磁石間の磁気反発力を利用して天井化粧板を取付フレーム内部で浮上させることにより、取付フレーム自体の振動を抑えることができ、建物躯体への振動伝播が抑えられる結果、近隣の部屋や周辺空間に対する不快な振動、音の固体伝播を効果的に抑制できるものである。さらに、取付フレームとこれが取り付けられる建物躯体との間に振動吸収用の弾性部材などを介在させる必要がなくなり、取付構造を簡略化できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態のスピーカ機能付き天井材の側面断面図である。
【図2】同上の取付フレームの基枠部と天井化粧板の分解斜視図である。
【図3】本発明の他の実施形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0013】
図1は本実施形態のスピーカ機能付き天井材2の側面断面図である。本例の天井材2は天井面1から突出して取り付けられる飾り天井として用いられるが、これに限らず、天井面1の一部に埋め込まれる構成であってもよい。
【0014】
本例の取付フレーム3は、扁平中空形状に形成され、下面には基枠部4で囲まれた開口部16が設けられ、この開口部16が放音口となっている。
【0015】
上記取付フレーム3の内部には振動板を兼ねる天井化粧板5が収容されている。図2に示すように、天井化粧板5は矩形状に形成され、その裏面中央部に信号処理装置(図示せず)からの音響信号に応じて天井化粧板5を加振するための加振器6が取り付けられている。
【0016】
上記天井化粧板5の下面部5cの外周部と取付フレーム3の基枠部4の内側上面部3bとに、それぞれ、上下一対の磁石7,8が互いに反発しあう向きに対向して取り付けられている。図2に示す例では、天井化粧板5の下面部5cの四辺に沿わせて一方の磁石7が取り付けられ、天井化粧板5の下面部5cよりも下方に位置する基枠部4の内側上面部3bに沿わせて他方の磁石8が取り付けられている。これら一対の磁石7,8は直方体の棒状磁石からなり、互いに対向する面が異なる磁極、つまりN極同士或いはS極同士となるように取り付けられており、磁石7,8間で生じる磁気反発力は加振器6付き天井化粧板5が取付フレーム3と接触しない位置まで浮上させることができる大きさに設定されている。
【0017】
しかして、上記構成の天井材2によれば、天井建材としての本来の機能に加えて、スピーカ機能を付加することができ、さらに振動板を兼ねる天井化粧板5の下面部5bが内装化粧面となっているので、飾り天井としての外観性も得られる。
【0018】
ここで、天井化粧板5を取付フレーム3内部に配置するにあたって、上下一対の磁石7,8間に発生する磁気反発力によって天井化粧板5が浮上して取付フレーム3と接触しない位置で振動して音を再生する方式を採用するので、取付フレーム3自体の振動が抑えられ、これにより天井化粧板5の振動が取付フレーム3を介して天井面1側に伝播するのを抑えることができ、近隣の部屋や周辺空間に対する不快な振動、音の固体伝播を抑制する効果が得られる。しかも、振動伝播を抑えるための振動吸収用の防振ゴムなどを取付フレーム3と天井面1との間に介在させる必要もないので、取付フレーム3の取付構造を簡略化できる効果も得られる。
【0019】
また本例では、天井化粧板5の外周端面5bとこれに対向する取付フレーム3の内周面3aとの間の横方向Bの隙間9にクッション性のある緩衝部材15を設けている。ここでは緩衝部材15としてエアーバックを使用している。このエアークッションにより、浮上状態で振動する天井化粧板5の横方向Bへのふらつき動作を防止でき、天井化粧板5の外周端面5bが取付フレーム3に接触摩擦することがなくなり、固体伝播抑制効果を一層高めることができる利点がある。
【0020】
図3は更に他の実施形態であり、図1の実施形態の上下一対の磁石7,8(第1磁石)に加えて、第2磁石10,11と第3磁石12,13を設けたものである。本例では、天井化粧板5の外周端面5bとこれに対向する取付フレーム3の内周面3aとの横方向Bに対向するそれぞれの位置に、左右一対の第2磁石10,11を互いに反発しあう向きに対向させて取り付けてある。さらに取付フレーム3の内周面3aからは、天井化粧板5よりも上方位置から内方に向けて凸リブ20を突設し、天井化粧板5の上面部5aと凸リブ20の内側下面部3cとの上下方向Aに対向するそれぞれの位置に、上下一対の第3磁石12,13を互いに反発しあう向きに対向させて取り付けてある。なお、これら第2磁石10,11及び第3磁石12,13は、第1磁石7,8と同様、直方体の棒状磁石で構成するのが好ましい。しかして、第1磁石7,8によって浮上する天井化粧板5の横方向Bのふらつき動作を第2磁石10,11の磁気反発力によって抑制でき、さらに天井化粧板5の上下方向Aのふらつき動作を第3磁石12,13の磁気反発力によって抑制でき、これにより天井化粧板5の上下左右の安定性が一層増し、天井化粧板5と取付フレーム3との接触、摩擦を確実に回避できるので、天井面1側への振動伝播をより一層抑制できる構造となる。
【0021】
前記実施形態では、磁石7,8;10,11;12,13として永久磁石を例示したが、電磁石を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 天井面
2 天井材
3 取付フレーム
3a 内周面
3b 内側上面部
3c 内側下面部
5 天井化粧板
5a 上面部
5b 外周端面
5c 下面部
6 加振器
7,8 第1磁石
9 横方向の隙間
15 緩衝部材
16 開口部
A 上下方向
B 横方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付面となる天井面と平行に配置される振動板を兼ねる薄肉の天井化粧板の裏面に加振器が取り付けられていると共に天井化粧板の下面部が内装化粧面となっており、上記天井面に取り付けられる取付フレームに、上記天井化粧板の外周部を保持する保持手段が設けられると共に上記天井化粧板の内装化粧面の中央部分を下方に露出させる開口部が設けられてなるスピーカ機能付き天井材であって、上記保持手段は、上記天井化粧板の外周部の下面部と上記取付フレームの内側上面部との上下方向に対向するそれぞれの位置に、互いに反発しあう向きに対向させて取り付けられる上下一対の磁石からなり、両磁石間の磁気反発力を利用して上記天井化粧板を上記取付フレームと接触しない位置まで浮上させるように構成したことを特徴とするスピーカ機能付き天井材。
【請求項2】
上記天井化粧板の外周端面とこれに対向する取付フレームの内周面との間の横方向の隙間に、クッション性を有する緩衝部材を介在させたことを特徴とする請求項1記載のスピーカ機能付き天井材。
【請求項3】
上記天井化粧板の外周端面とこれに対向する取付フレームの内周面との横方向に対向するそれぞれの位置に、左右一対の第2磁石を互いに反発しあう向きに対向させて取り付けると共に、上記天井化粧板の上面部と取付フレームの内側下面部との上下方向に対向するそれぞれの位置に、上下一対の第3磁石を互いに反発しあう向きに対向させて取り付けてなることを特徴とする請求項1記載のスピーカ機能付き天井材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−232924(P2010−232924A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77774(P2009−77774)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】