説明

スピーカ

【課題】部品コストや製造コストを上昇させることなく、耐入力性および低音再生能力に優れて小型化および薄型化が可能なスピーカを提供する。
【解決手段】スピーカ1の振動板2は、細長形状であり、長手方向に沿って少なくとも2つの凹部2aが形成されている。これら凹部2aの側面部に結合部材13の前段部13aを接合するとともに、振動板2の短手方向に形成されたリブ2cに前段部13aを接合する。また、結合部材13の後段部13bの内周面にボイスコイルボビン4の外周面を接合する。これにより、振動板2の短手方向の径よりも大きな径のボイスコイルボビン4を、結合部材13を介して振動板2に固定できる。本スピーカ1によれば、エッジ3の幅を狭めることなく、ボイスコイルボビン4の口径を大きくでき、高耐入力化が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカは家庭用音響機器、車載用音響機器だけでなく、パーソナルコンピュータ、携帯電話、ゲーム機やさまざまな電子機器に広く使用されている。電子機器は軽薄短小化が進んでおり、スピーカに対しても、より小型化、薄型化および高性能化が求められている。高性能化としては、音質が優れている他に、高耐入力が求められている。
【0003】
電子機器は、スピーカの設置スペースが限られていることから、細長形状でありながら、高耐入力であることが要求される。細長形状のスピーカは、短径寸法が限られるため、ボイスコイル径を大きく出来ず、耐入力に対し不利である。スピーカの短径寸法を変えずにボイスコイル口径を大きくすると、その分エッジ幅が狭くなり、振動板の振幅が制限され、結果として耐入力を高くできない。また、エッジ幅が狭くなると、最低共振周波数も上がってしまい、低域の再生能力が劣ってしまう。
【0004】
図20は従来の細長形状のスピーカ21の断面図であり、スピーカ21の短径側の断面構造を左側に、長径側の断面構造を右側に示している。図20のスピーカ21は、フレーム22と、フレーム22に結合された磁気回路23と、磁気回路23の磁気ギャップ中に支持されるボイスコイル24と、外周部がエッジ25を介してフレーム22に固定されてボイスコイル24とともに上下方向に振動する振動板26と、ボイスコイル24に内周部が固定されフレーム22に外周部が固定されたダンパー27と、ボイスコイル24の前方を覆うセンターキャップ28とを備えている。
【0005】
図20のスピーカ21において、高耐入力にするためにボイスコイル24の口径を大きくすると、短径側のエッジ25の幅がより狭くなり、最低共振周波数が上がってしまい、低域の再生能力が劣化してしまう。このような問題を解決する一例として特許文献1がある。
【0006】
図21は特許文献1に記載された細長形状のスピーカ31の構造を示す図である。図21(a)はスピーカ31の断面図、図21(b)はスピーカ31の要部の斜視図である。図21(a)では、図20と同様に、スピーカ31の短径側の断面構造を左側に、長径側の断面構造を右側に示している。
【0007】
図21のスピーカ31のボイスコイル32は、短径側において、エッジ33の内周よりも外側に配置されており、エッジ33とボイスコイル32が接触しないように、ボイスコイル32の前端部の一部35を切り欠いている。このため、短径側のエッジ33の幅を狭めずにボイスコイル32の口径を大きくすることができ、高耐入力が確保できる。
【0008】
また、上記問題を解決する他の一例として特許文献2がある。図22は特許文献2に記載されたスピーカ41の断面図である。図22のスピーカ41は、振動板(中央ドーム)42の径よりもボイスコイルボビン43の径を大きくして、ボイスコイルボビン43と振動板42との間に拡張部材44を配置し、この拡張部材44にエッジ(外周ドーム)45の内周部を接合している。
【0009】
図22のスピーカ41は、拡張部材44を設けることで、ボイスコイルボビン43の口径を大きくしても、エッジ45の幅を狭めなくて済み、耐入力を高くできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3956485号公報
【特許文献2】特開2006−311156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1では、ボイスコイル32の前端部を切り欠くための加工処理が必要となり、また、スピーカ31の組立時にも、ボイスコイル32に方向性があるために作業性が悪くなる。これらは、部品コストと製造コストの上昇の要因となりうる。
【0012】
また、特許文献2では、拡張部材44の形状が略細長のボイスコイル形状であり、かつ平板のリング状であるため、通常の丸形状のボイスコイルを使用する細長形状のスピーカには適応できないという問題がある。また、特許文献2は、ダンパーのないマイクロスピーカであり、低域再生能力が劣るという問題がある。
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、部品コストや製造コストを上昇させることなく、耐入力性および低音再生能力に優れて小型化および薄型化が可能なスピーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様では、振動板と、
前記振動板の外周側から後方にかけて配置されるフレームと、
内周部が前記振動板に接合され、外周部が前記フレームに接合されるエッジと、
前記振動板よりも後方に配置されて、前記フレームに接合される磁気回路と、
前記振動板を振動させるボイスコイルボビンと、
前記ボイスコイルボビンの外周面に沿って巻回され、前記磁気回路の磁気ギャップ中に支持されるボイスコイルと、を備えたスピーカにおいて、
前記振動板の裏面に接合されるとともに、前記ボイスコイルボビンに接合される結合部材を備え、
前記結合部材は、前記振動板の裏面側に接合されるとともに、前記ボイスコイルボビンに接合され、
前記ボイスコイルボビンの外径は、前記振動板の短手方向の外径よりも大きいことを特徴とするスピーカが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、部品コストや製造コストを上昇させることなく、耐入力性および低音再生能力に優れて小型化および薄型化が可能なスピーカを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るスピーカ1の主要部の斜視図。
【図2】図1にボイスコイルボビンを装着した状態を示す斜視図。
【図3】(a)は結合部材13をその前方から見た平面図、(b)は結合部材13をその後方から見た平面図、(c)は(a)の下方から見た結合部材13の側面図、(d)は(a)の右または左方向から見た結合部材13の側面図。
【図4】(a)はフレームを取り外した状態でスピーカ1をその前方から見た平面図、(b)は(a)のA−A線断面図。
【図5】(a)は振動板2を前方から見た平面図、(b)は(a)のB−B線断面図。
【図6】図1〜図5の構造を備えたスピーカ1全体の断面構造を示す図。
【図7】本実施形態のスピーカ1の製造工程順序の一例を示すフローチャート。
【図8】結合部材13とダンパー5とを一体化した構造体21の一例を示す斜視図。
【図9】図8の構造体21を図1等に示した振動板2に組み付けたスピーカの分解斜視図。
【図10】図9のスピーカの製造工程順序の一例を示すフローチャート。
【図11】(a)は凹部のない振動板20aの平面図、(b)は振動板20aの長手方向側面図、(c)は振動板20aの短手方向側面図。
【図12】図10の振動板20に図8の構造体21を組み付けたスピーカの分解斜視図。
【図13】図12のスピーカの短手方向断面図。
【図14】(a)は裏面側が緩やかな凹面形状の振動板20aに対応した構造体21aの斜視図、(b)は構造体21bと振動板20bを組み付けたスピーカの断面図。
【図15】(a)は振動板2のリブ2cの先端部を挟み込むように接着固定可能な構造体21cの斜視図、(b)は構造体21cと振動板2を組み付けたスピーカの断面図。
【図16】(a)は前端部が平面形状の構造体21dの斜視図、(b)は構造体21dと裏面側が平面形状の振動板20cとを組み付けたスピーカの断面図。
【図17】第1および第2の部材からなる構造体21eの斜視図。
【図18】構造体21eの製造工程順序を示す工程斜視図。
【図19】鍔部13cのある構造体21の一変形を示す部分鳥瞰図。
【図20】従来の細長形状のスピーカ21の断面図。
【図21】特許文献1に記載された細長形状のスピーカ31の構造を示す図。
【図22】特許文献2に記載されたスピーカ41の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係るスピーカ1の主要部の斜視図であり、フレーム、磁気回路およびボイスコイルボビンを省略した図である。図2は図1にボイスコイルの巻かれたボイスコイルボビンを装着した状態を示す斜視図である。
【0019】
図1および図2に示す本実施形態のスピーカ1は、細長形状の振動板2と、振動板2を取り囲むように配置される細長で環状のエッジ3と、振動板2の裏面側に取り付けられるボイスコイルボビン4とを備えている。
【0020】
エッジ3の内周部は振動板2に接合され、エッジ3の外周部は不図示のフレームに接合されている。ボイスコイルボビン4の外周面に沿って巻回されるボイスコイル4aは不図示の磁気回路の磁気ギャップ中に支持されている。
【0021】
本実施形態の技術的特徴の一つは、振動板2とボイスコイルボビン4を接合するために結合部材13を設けたことである。以下、結合部材13の構造についてより詳細に説明する。
【0022】
図3は結合部材13の構造を示す図であり、図3(a)は結合部材13をその前方から見た平面図、図3(b)は結合部材13をその後方から見た平面図、図3(c)は図3(a)の下方から見た結合部材13の側面図、図3(d)は図3(a)の右または左方向から見た結合部材13の側面図である。
【0023】
結合部材13は、スピーカ1の前面側に配置される前段部13aと、スピーカ1の底面側に配置される後段部13bと、で構成される2段構造になっており、前段部13aと後段部13bは一体形成されている。前段部13aは、スピーカ1の長手方向に沿った方向の径がスピーカ1の短手方向に沿った方向の径よりも大きい円環形状である。後段部13bは、略等径の円環形状である。図3(a)と図3(c)を見ればわかるように、スピーカ1の短手方向では、前段部13aの径よりも後段部13bの径の方が大きい。また、図3(b)と図3(d)を見ればわかるように、スピーカ1の長手方向では、前段部13aの径が後段部13bの径よりもわずかに大きい。
【0024】
図1に示すように、結合部材13の前段部13aは振動板2に接合され、後段部13bはボイスコイルボビン4に接合される。このように、振動板2とボイスコイルボビン4は、結合部材13を介して、互いに固定される。これが、本実施形態の技術的特徴の一つである。
【0025】
ボイスコイルボビン4および振動板2と結合部材13とを接合する際には、例えばボイスコイルボビン4および振動板2と結合部材13との少なくとも一方に接着部材を付着させて、両者を接合すればよい。なお、具体的な接合形態は問わない。
【0026】
図4(a)はフレームを取り外した状態でスピーカ1をその前方から見た平面図、図4(b)は図4(a)のA−A線断面図である。また図5(a)は振動板2を前方から見た平面図、図5(b)は図5(a)のB−B線断面図である。
【0027】
図1に示すように、ボイスコイルボビン4は振動板2の裏面側に取り付けられるため、図4(a)ではボイスコイルボビン4の位置を破線で示している。図5に示すように、振動板2には、その長手方向(第1の方向)に沿って3つの凹部2aが形成されている。また、振動板2の外周縁部には、後方に伸びるリブ2cが形成されている。振動板2の隣接する2個の凹部2aの側面部と、これら凹部2aの間のリブ2cの内周面には、結合部材13の前段部13aが接合される。結合部材13の前段部13aの前面は、振動板2の形状に合わせて形成されており、振動板2と接合される。また、結合部材13の後段部13bの内周面はボイスコイルボビン4の外周面に接合される。
【0028】
図4(b)では、結合部材13の後段部13bの内周面をボイスコイルボビン4の外周面に接合しているが、結合部材13の後段部13bの外周面をボイスコイルボビン4の内周面に接合してもよい。
【0029】
結合部材13の材料は特に問わないが、軽量でかつ硬い部材が望ましく、例えば樹脂などが用いられる。また、結合部材13の前段部13aと振動板2との接合、および後段部13bとボイスコイルボビン4との接合には例えば接着剤が用いられる。
【0030】
振動板2の凹部2aとリブ2cは、一体成形された一つの部材で構成されている。この部材の材料としては例えば紙や樹脂が用いられるが、材料については特に問わない。
【0031】
振動板2は、図4(b)に示すように、短手方向では緩やかな曲面形状になっており、短手方向の中心線が最も前方に張り出している。
【0032】
振動板2の前面外周側にはエッジ3が接合されている。エッジ3の内周部は、振動板2の外周縁部よりも内側で振動板2に接合されている。また、図4(a)に示すように、結合部材13の後段部13bに接合されたボイスコイルボビン4はエッジ3の内径よりも大きくなっている。また、ボイスコイルボビン4の外周縁部はエッジ3とは非接触である。
【0033】
したがって、本実施形態によれば、ボイスコイルボビン4の外径をより大きくすることができる。すなわち、本実施形態の場合、ボイスコイルボビン4の外径を大きくするためには、それに合わせて結合部材13の後段部13bの外径を大きくする必要があるが、結合部材13の後段部13bの外径が大きくなっても、エッジ2への干渉はなく、結合部材13の後段部13bの外径が大きくなったことによりエッジ3の幅が狭まるおそれはない。したがって、従来問題であった、ボイスコイルボビン4の口径を大型化した影響で、エッジ3の幅が狭まって最低共振周波数が上がるという不具合が生じなくなる。
【0034】
このように、本実施形態によれば、ボイスコイルボビン4の外径を大きくしても、エッジ3の幅に影響を及ぼすことがない。したがって、ボイスコイルボビン4の口径の大型化に容易に対応できる。
【0035】
図6は図1〜図5の構造を備えたスピーカ1全体の断面構造を示す図である。本実施形態のスピーカ1は内磁型でも外磁型でもよい。図6(a)は内磁型のスピーカ1の断面図、図6(b)は外磁型のスピーカ1の断面図である。
【0036】
図6(a)および図6(b)のスピーカ1は、上述した構造の結合部材13、振動板2、エッジ3およびボイスコイルボビン4を備える他に、ダンパー5と、フレーム6と、磁気回路7とを備えている。
【0037】
図6(a)の磁気回路7は、フレーム6の内周部に接合されるポットヨーク8と、ポットヨーク8の内側に配置されるマグネット9と、マグネット9の前面に配置されるポールピース10とを有する。
【0038】
図6(b)の磁気回路7は、ボイスコイルボビン4の周囲に配置されるトッププレート11と、フレーム6の後面側に配置されるボトムヨーク12と、トッププレート11およびボトムヨーク12の間に配置されるマグネット9とを有する。
【0039】
図6に示すように、磁気回路7が内磁型と外磁型のいずれであっても、結合部材13の構造は図1〜図3で示したものを利用でき、振動板2、ボイスコイルボビン4およびエッジ3の配置も図1と同様になるため、ボイスコイルボビン4の口径の大型化と低域の再生能力の向上が図れる。
【0040】
図1〜図5では、振動板2に3つの凹部2aを形成し、これら3つの凹部2aで2つの結合部材13を固定する例を説明したが、ボイスコイルボビン4が1個だけの場合は振動板2に2つの凹部2aを設ければよい。すなわち、本実施形態の振動板2には少なくとも2つの凹部2aが形成される。隣接する2つの凹部2aの間隔は結合部材13の前段部13aの外径に合わせて設定する必要がある。
【0041】
また、本実施形態は、ボイスコイルボビン4の数が3個以上の場合にも適用可能である。この場合、ボイスコイルボビン4の数に応じた数の凹部2aを振動板2に形成すればよい。また、ボイスコイルボビン4ごとに結合部材13を設ける必要がある。
【0042】
図7は本実施形態のスピーカ1の製造工程順序の一例を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに基づいてスピーカ1の製造工程順序を説明する。
【0043】
まず、振動板2の裏面に結合部材13の前段部13aを接合する(ステップS1)。次に、フレーム6に磁気回路7を接合した構造体における磁気回路7のギャップ中に、ボイスコイル4aの巻かれたボイスコイルボビン4を位置決めする(ステップS2)。この位置決めは正確に行う必要があるため、不図示のボイスコイルセット治具にボイスコイルボビン4を取り付けた状態で、この治具ごと、磁気回路7のギャップに挿入して位置決めする。そして、ボイスコイルボビン4とフレーム6とをダンパー5で接合する(ステップS3)。そして、ボイスコイルセット治具を抜き去る(ステップS4)。
【0044】
次に、ボイスコイルボビン4の前側外周面か、あるいは結合部材13の後段部13bの内周面に接着剤を塗布し、ステップS1の処理後の結合部材13の後端部13bの内周面をボイスコイルボビン4の上端側外周面に接合する(ステップS5)。以上により、図6のスピーカ1が完成する。上述したステップS1の工程は、ステップS2〜S4の工程の後に行ってもよい。
【0045】
以上に説明した本実施形態のスピーカ1の技術的特徴をまとめると、本実施形態の振動板2は、細長形状であり、長手方向に沿って少なくとも2つの凹部2aが形成されている。これら凹部2aの側面部に結合部材13の前段部13aを接合するとともに、振動板2の短手方向に形成されたリブ2cに前段部13aを接合する。また、結合部材13の後段部13bの内周面にボイスコイルボビン4の外周面を接合する。これにより、振動板2の短手方向の径よりも大きな径のボイスコイルボビン4を、結合部材13を介して振動板2に固定できる。
【0046】
振動板2の前面側に接合されるエッジ3の内周部は、振動板2の外周端よりも内側で振動板2と接合されるため、結合部材13の外径が大きくなっても、その影響でエッジ3の幅が狭まることがない。したがって、本実施形態によれば、エッジ3の幅を狭めることなく、ボイスコイルボビン4の口径を大きくでき、高耐入力化が図れる。また、エッジ3の幅を狭めないで済むため、最低共振周波数を低く維持でき、低域の再生能力の向上が図れる。
【0047】
上述した実施形態では、結合部材13とダンパー5とを別個の部材として設ける例を説明したが、結合部材13とダンパー5とを一体構造としてもよい。図8は結合部材13とダンパー5とを一体化した構造体21の一例を示す斜視図である。この構造体21は、結合部材13と、ダンパー部22と、ダンパー外周支持部23とを有する。結合部材13は、構造体の中央部に配置されている。結合部材13は、4つのダンパー部22を介してダンパー外周支持部23で支持されている。より詳細には、各ダンパー部22の一端は結合部材13の後段部13bに接合され、各ダンパー部22の他端はダンパー外周支持部23に接合されている。
【0048】
図8のような構造体を用いた場合には、結合部材13とは別個にダンパー5を取り付ける手間が不要となるため、スピーカの組立工程を簡略化でき、製造時の作業性がよくなる。
【0049】
図9は図8の構造体21を図1等に示した振動板2に組み付けたスピーカ1aの分解斜視図、図10は図9のスピーカ1aの製造工程順序の一例を示すフローチャートである。以下、図10のフローチャートを用いて、図9のスピーカ1aの製造工程順序を説明する。
【0050】
位置出し治具を使用して振動板2をフレーム6に接着する(ステップS11)。ここで、振動板2には予めエッジ3が取り付けられているものとする。
【0051】
次に、構造体21に、ボイスコイル4aが巻回されたボイスコイルボビン4を接着固定する(ステップS12)。次に、ボイスコイルボビン4を接着固定した構造体21をフレーム6に接着固定する(ステップS13)。構造体21は、フレーム6の位置出し構造により、フレーム6の所定位置に嵌合されるようになっている。
【0052】
次に、ポットヨーク8、マグネット9およびポールピース10からなる磁気回路7を、フレーム6の後方側からフレーム6に接着固定する(ステップS14)。
【0053】
このように、構造体21には予めダンパーが一体成形されているため、ダンパーを取り付ける工程が不要となり、製造組立の作業性が向上する。
【0054】
上述した実施形態では、2つの凹部2aが形成された振動板2を使用する例を説明したが、振動板に凹部は必ずしも必須ではない。
【0055】
図11は凹部のない振動板20aの一例を示しており、図11(a)は振動板20aの平面図、図11(b)は振動板20aの長手方向断面図、図11(c)は振動板20aの短手方向断面図である。
【0056】
図11の振動板20aの前面は緩やかな凸面形状になっており、裏面側には凹部は存在しない。振動板20aの裏面側も前方から見て凸面形状になっているため、裏面側に接着固定される構造体21aの前端部も振動板20aの裏面側の形状に合わせた形状にする必要がある。
【0057】
図12は図11の振動板20aに図8の構造体21を組み付けたスピーカの分解斜視図、図13は図12のスピーカの短手方向断面図である。
【0058】
図12のスピーカの製造工程順序は、図10のフローチャートと同様の工程順序で行われる。振動板20aに凹部がなくても、上述したようにフレーム6の位置出し構造により、構造体21aはフレーム6の所定位置に嵌合されるため、振動板20とボイスコイルボビン4との位置関係がずれるおそれはない。
【0059】
振動板20の前面側の形状は凸面形状以外の形状でもよく、例えば凹面形状でもよい。図14(a)は前面側が緩やかな凹面形状の振動板20bの裏面側に接着固定される構造体21bの斜視図、図14(b)は構造体21bと振動板20bを組み付けたスピーカ1cの断面図である。
【0060】
図14(a)に示すように、構造体21bの前面は、振動板20bの凹面に密着するような形状になっている。その他の構造は構造体21と同様である。
【0061】
図4(b)では、振動板2のリブ2cの内周面に結合部材13の前段部13aが接合される例を示したが、リブ2cの先端部を両側から挟み込むようにして、振動板2と結合部材または構造体とを接合してもよい。
【0062】
図15(a)は振動板2のリブ2cの先端部を挟み込むように接着固定可能な構造体21cの斜視図、図15(b)は構造体21cと振動板2を組み付けたスピーカ1dの断面図である。図15(a)に示すように、構造体21cの前端部には、リブ2cの形状に沿って溝23が形成されており、この溝23にリブ2cが嵌合される構造になっている。
【0063】
このように、構造体21cの前端部は2本の溝23により振動板20aと接合されており、いわば帯状に構造体21cは振動板20aと接合される。
【0064】
構造体21の前端部の構造と振動板2の形状は上述したものに限定されない。例えば、振動板2の裏面側は平面形状でもよく、この場合は、構造体の前端部も平面形状になる。図16(a)は前端部が平面形状の構造体21dの斜視図、図16(b)は構造体21dと裏面側が平面形状の振動板20cとを組み付けたスピーカの断面図である。
【0065】
上述した構造体21、21a、21b、21c、21dはいずれも一体構造になっているが、構造体は2つの部材で構成することも可能である。図17は第1の部材21fおよび第2の部材21gからなる構造体21eの斜視図、図18は構造体21eの製造工程順序を示す工程斜視図である。
【0066】
図18(a)に示すように、第1の部材21fは、振動板2とボイスコイルボビン4に結合される結合部材13と、ダンパー部22と、枠体部24とを有する。枠体部24は、内周側の4箇所に設けられたリブ25で、ダンパー部22と接合されている。図18(b)に示すように、第2の部材21gは、枠体部24に嵌合される構造になっている。
【0067】
図18(c)に示すように、第2の部材21gは、第1の部材21fの枠体部24の内周面に沿って挿入されて第2の部材21gと係合される。その後、図18(d)に示すように、4箇所のリブ25を除去することで、枠体部24が外れて構造体21eが完成する。
【0068】
図17および図18に示した構造体21eは、裏面側が凸面形状の振動板に接着固定される形状を有するが、構造体21eの前段部13aの形状を変えることにより、上述した種々の形状の振動板に接着固定させることができる。
【0069】
例えば、構造体21eの前段部13aに、振動板2の裏面側に接合される鍔部を設けてもよい。図19は鍔部13cを有する構造体21の部分拡大鳥瞰図である。鍔部13cを設けることで、振動板2との接触面積を増やすことができ、構造体21と振動板2との接合力を増大できる。
図19の例では、結合部材13の前段部13aの長径方向および短径方向に鍔部13cを設けているが、振動板2の長径方向のみに鍔部13cを設けてもよい。
【0070】
また、上述した実施形態ではボイスコイルボビン4とボイスコイル4aをは円形形状にしたが、角部が丸まった矩形状でもよいし、トラック形状(平行する二本の直線の両端にそれぞれ円弧を接続した形状)でもよいし、その他の形状でもよく、具体的な形状は問わない。
【0071】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 スピーカ
2 振動板
2a 凹部
2b 幅広部
2c リブ
3 エッジ
4 ボイスコイルボビン
4a ボイスコイル
5 ダンパー
6 フレーム
7 磁気回路
8 ポットヨーク
9 マグネット
10 ポールピース
11 トッププレート
12 ボトムヨーク
13 結合部材
13a 前段部
13b 後段部
13c 鍔部
21 構造体
22 ダンパー部
23 ダンパー外周支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板と、
前記振動板の外周側から後方にかけて配置されるフレームと、
内周部が前記振動板に接合され、外周部が前記フレームに接合されるエッジと、
前記振動板よりも後方に配置されて、前記フレームに接合される磁気回路と、
前記振動板を振動させるボイスコイルボビンと、
前記ボイスコイルボビンの外周面に沿って巻回され、前記磁気回路の磁気ギャップ中に支持されるボイスコイルと、を備えたスピーカにおいて、
前記振動板の裏面に接合されるとともに、前記ボイスコイルボビンに接合される結合部材を備え、
前記結合部材は、前記振動板の裏面側に接合されるとともに、前記ボイスコイルボビンに接合され、
前記ボイスコイルボビンの外径は、前記振動板の短手方向の外径よりも大きいことを特徴とするスピーカ。
【請求項2】
前記振動板は、
前記ボイスコイルの径と略等しい間隔を隔てて配置され、前記振動板の裏面側に形成される少なくとも2つの凹部と、
前記振動板の外周縁部に沿って裏面側に形成されるリブと、を有することを特徴とする請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
前記結合部材は、前記振動板の裏面側に接合される前段部と、前記ボイスコイルボビンに接合され前記前段部と一体成形される後段部と、を有し、
前記前段部は、前記振動板の裏面に接合される環状または帯状の部材であり、
前記後段部は、その内周面または外周面で前記ボイスコイルボビンの上端部の外周面または内周面に接合される環状の部材であることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記振動板は、細長形状状であり、
前記結合部材は、前記振動板の長手方向に沿って前記2つの凹部の側面部に接合されるとともに、前記振動板の短手方向に沿って前記リブの内周面に接合されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスピーカ。
【請求項5】
一端が前記結合部材に接合され他端が支持体に接合される複数のダンパー部と、前記結合部材と、を一体成形した第1の部材と、
前記第1の部材に組み付け可能であり、前記結合部材を支持する第2の部材と、を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のスピーカ。
【請求項6】
前記ボイスコイルボビンは円形形状であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のスピーカ。
【請求項7】
前記ボイスコイルボビンは角部が丸まった矩形状またはトラック形状であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のスピーカ。
【請求項8】
前記結合部材の前記前段部は、前記振動板の裏面側に接合される鍔部を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のスピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−166722(P2011−166722A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114659(P2010−114659)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【特許番号】特許第4750212号(P4750212)
【特許公報発行日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】