説明

スピーカ

【課題】部品コストや製造コストを上昇させることなく、耐入力性および低音再生能力に優れて小型化、薄型化および狭幅化が可能なスピーカを提供する。
【解決手段】スピーカ1は、振動板2と、振動板2の外周側から後方にかけて配置されるフレーム6と、内周部が振動板2に接合され、外周部がフレーム6に接合されるエッジ3と、振動板2よりも後方に配置される磁気回路7と、振動板2を振動させるボイスコイルボビン4と、ボイスコイルボビン4の外周面に沿って巻回され、磁気回路7の磁気ギャップ中に支持されるボイスコイル4aと、を備える。振動板2の裏面に接合されるとともに、フレーム6および磁気回路7に接合される構造体11を備え、構造体11は、フレーム6の側面に略面一に接合される側面を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカは家庭用音響機器、車載用音響機器だけでなく、パーソナルコンピュータ、携帯電話、ゲーム機やさまざまな電子機器に広く使用されている。電子機器は軽薄短小化が進んでおり、スピーカに対しても、より小型化、薄型化および高性能化が求められている。高性能化としては、音質が優れている他に、高耐入力が求められている。
【0003】
電子機器は、スピーカの設置スペースが限られていることから、細長形状でありながら、高耐入力であることが要求される。細長形状のスピーカは、短径寸法が限られるため、ボイスコイル径を大きく出来ず、耐入力に対し不利である。スピーカの短径寸法を変えずにボイスコイル口径を大きくすると、その分エッジ幅が狭くなり、振動板の振幅が制限され、結果として耐入力を高くできない。また、エッジ幅が狭くなると、最低共振周波数も上がってしまい、低域の再生能力が劣ってしまう。
【0004】
図8は従来の細長形状のスピーカ21の断面図であり、スピーカ21の短径側の断面構造を左側に、長径側の断面構造を右側に示している。図8のスピーカ21は、フレーム22と、フレーム22に結合された磁気回路23と、磁気回路23の磁気ギャップ中に支持されるボイスコイル24と、外周部がエッジ25を介してフレーム22に固定されてボイスコイル24とともに上下方向に振動する振動板26と、ボイスコイル24に内周部が固定されフレーム22に外周部が固定されたダンパ27と、ボイスコイル24の前方を覆うセンターキャップ28とを備えている。
【0005】
図8のスピーカ21において、高耐入力にするためにボイスコイル24の口径を大きくすると、短径側のエッジ25の幅がより狭くなり、最低共振周波数が上がってしまい、低域の再生能力が劣化してしまう。このような問題を解決する一例として特許文献1がある。
【0006】
図9は特許文献1に記載された細長形状のスピーカ31の構造を示す図である。図9(a)はスピーカ31の断面図、図9(b)はスピーカ31の要部の斜視図である。図9(a)では、図8と同様に、スピーカ31の短径側の断面構造を左側に、長径側の断面構造を右側に示している。
【0007】
図9のスピーカ31のボイスコイル32は、短径側において、エッジ33の内周よりも外側に配置されており、エッジ33とボイスコイル32が接触しないように、ボイスコイル32の前端部の一部35を切り欠いている。このため、短径側のエッジ33の幅を狭めずにボイスコイル32の口径を大きくすることができ、高耐入力が確保できる。
【0008】
また、上記問題を解決する他の一例として特許文献2がある。図10は特許文献2に記載されたスピーカ41の断面図である。図10のスピーカ41は、振動板(中央ドーム)42の径よりもボイスコイルボビン43の径を大きくして、ボイスコイルボビン43と振動板42との間に拡張部材44を配置し、この拡張部材44にエッジ(外周ドーム)45の内周部を接合している。
【0009】
図10のスピーカ41は、拡張部材44を設けることで、ボイスコイルボビン43の口径を大きくしても、エッジ45の幅を狭めなくて済み、耐入力を高くできる。
【0010】
また、上記問題を解決する他の一例として特許文献3がある。図11は特許文献3に記載されたスピーカ51の構造を示す分解斜視図である。図11のスピーカ51は、細長形状の振動板52と、この振動板52の長手方向に沿って並設される複数の磁気回路53と、これら磁気回路53の前方側に配置されて振動板52の長手方向に沿って並設される複数の支持部54と、磁気回路53の磁気ギャップ55中に挿入されて、対応する支持部54に固定される複数のボイスコイル56と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3956485号公報
【特許文献2】特開2006−311156号公報
【特許文献3】特開平9−261795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1では、ボイスコイル32の前端部を切り欠くための加工処理が必要となり、また、スピーカ31の組立時にも、ボイスコイル32に方向性があるために作業性が悪くなる。これらは、部品コストと製造コストの上昇の要因となりうる。
【0013】
また、特許文献2では、拡張部材44の形状が略細長のボイスコイル形状であり、かつ平板のリング状であるため、通常の丸形状のボイスコイルを使用する細長形状のスピーカには適応できないという問題がある。また、特許文献2は、ダンパのないマイクロスピーカであり、低域再生能力が劣るという問題がある。
【0014】
一方、特許文献3は、振動板52の長手方向に沿って複数のボイスコイル56を並設しているが、フレーム57の内側には一体構造のダンパが設けられている。このため、スピーカの狭幅化には限界がある。また、特許文献3のスピーカは、支持体54によりボイスコイル56と振動板52を結合しているが、支持体54とボイスコイル56の外形寸法は振動板52の外形寸法よりも小さいため、耐入力の向上には限界がある。さらに、角形(非円形)のボイスコイルを用いているため、コスト上昇につながる。
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、部品コストや製造コストを上昇させることなく、耐入力性および低音再生能力に優れて小型化、薄型化および狭幅化が可能なスピーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様では、振動板と、
前記振動板の外周側から後方にかけて配置されるフレームと、
内周部が前記振動板に接合され、外周部が前記フレームに接合されるエッジと、
前記振動板よりも後方に配置される磁気回路と、
前記振動板を振動させるボイスコイルボビンと、
前記ボイスコイルボビンの外周面に沿って巻回され、前記磁気回路の磁気ギャップ中に支持されるボイスコイルと、を備えたスピーカにおいて、
前記振動板の裏面に接合されるとともに、前記フレームおよび前記磁気回路に接合される構造体を備え、
前記構造体は、前記フレームの側面に略面一に接合される側面を有し、
前記ボイスコイルボビンの外径は、前記振動板の短手方向の外径よりも大きいことを特徴とするスピーカが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、部品コストや製造コストを上昇させることなく、耐入力性および低音再生能力に優れて小型化、薄型化および狭幅化が可能なスピーカを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るスピーカ1の分解斜視図。
【図2】(a)は図1のスピーカの平面図、(b)は(a)のA−A線断面図。
【図3】構造体の斜視図。
【図4】(a)〜(d)は第1の部材と第2の部材を組み付けて構造体を作製する工程順序を説明する図。
【図5】本実施形態に係るスピーカの製造工程順序の一例を示すフローチャート。
【図6】図5とは異なる製造工程順序の一例を示すフローチャート。
【図7】第2の部材をフレームと一体成形したスピーカの一例を示す分解斜視図。
【図8】従来の細長形状のスピーカ21の断面図。
【図9】(a)は特許文献1に記載された細長形状のスピーカ31の断面図、図9(b)はスピーカ31の要部の斜視図。
【図10】特許文献2に記載されたスピーカ41の断面図。
【図11】特許文献3に記載されたスピーカの構造を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係るスピーカ1の分解斜視図である。図1は磁気回路7を4個、振動板2を2個を使用した例を示している。
【0021】
スピーカ1は、細長形状の振動板2と、振動板2を取り囲むように配置される細長で環状のエッジ3と、振動板2を振動させるボイスコイルボビン4と、ボイスコイルボビン4の外周面に沿って巻回されるボイスコイル4aと、フレーム6と、磁気回路7とを備えている。
【0022】
エッジ3は、内周部が振動板2に接合され、外周部がフレーム6に接合されている。フレーム6は振動板2の外周側から後方にかけて配置されている。
【0023】
磁気回路7は、振動板2よりも後方に配置されており、磁気回路7の磁気ギャップ中にボイスコイル4aは保持されている。磁気回路7は、フレーム6の内周部に接合されるポットヨーク8と、ポットヨーク8の内側に配置されるマグネット9と、マグネット9の前面に配置されるポールピース10とを有する。
【0024】
この他、図1のスピーカ1は、振動板2の裏面に接合されるとともに、フレーム6および磁気回路7に接合される構造体11を備えている。構造体11は、互いに組み付け可能な第1の部材11aおよび第2の部材11bを有する。
【0025】
図2は図1のスピーカ1の平面図および断面図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は図2(a)のA−A線断面図である。図3は構造体11の斜視図であり、第1の部材11aと第2の部材11bを組み付けた状態を示している。
【0026】
図3に示すように、構造体11内の第1の部材11aは、振動板2の裏面に接続されるとともに、ボイスコイルボビン4に接合される結合部材11cと、一端が結合部材11cに接合される複数のダンパ部11dと、を一体成形したものである。構造体11内の第2の部材11bは、第1の部材11aの後方に配置されてフレーム6に接合され、第2の部材11bの側面11gはフレーム6の側面6aと略面一になるように接合されている。
【0027】
第1の部材11a内の結合部材11cは、振動板2の裏面側に接合される前段部11eと、ボイスコイルボビン4に接合され前段部11eと一体成形される後段部11fと、を有する。前段部11eは、スピーカ11の長手方向に沿った方向の径がスピーカ11の短手方向に沿った方向の径よりも大きい円環形状である。後段部11fは、略等径の円環形状である。図3からわかるように、スピーカ11の短手方向では、前段部11eの径よりも後段部11fの径の方が大きく、スピーカ11の長手方向では、前段部11eの径が後段部11fの径よりもわずかに大きい。
【0028】
図2(b)に示すように、結合部材11cの前段部11eは振動板2に接合され、後段部11fはボイスコイルボビン4に接合される。このように、振動板2とボイスコイルボビン4は、結合部材11cを介して、互いに固定される。
【0029】
図2(a)では、ボイスコイルボビン4の外径を破線で図示している。この破線の大きさからわかるように、ボイスコイルボビン4の外径は、振動板2の短手方向の外径よりも大きい。
【0030】
ボイスコイルボビン4と振動板2を結合部材11cに接合する際には、例えばボイスコイルボビン4および振動板2と結合部材11cとの少なくとも一方に接着部材を付着させて、両者を接合すればよい。なお、具体的な接合形態は問わない。
【0031】
図1に示すように、振動板2には、その長手方向に沿って3つの凹部2aが形成されている。また、振動板2の外周縁部には、図2(b)に示すように、後方に伸びるリブ2bが形成されている。振動板2の隣接する2個の凹部2aの側面部と、これら凹部2aの間のリブ2bの内周面には、結合部材11cの前段部11eが接合される。結合部材11cの前段部11eの前面は、振動板2の形状に合わせて形成されており、前段部11eの前面が振動板2の裏面に面接触するようにしている。また、結合部材11cの後段部11fの内周面はボイスコイルボビン4の外周面に接合される。
【0032】
本実施形態では、図2(b)に示すように、結合部材11cの後段部11fの内周面をボイスコイルボビン4の外周面に接合しているが、結合部材11cの後段部11fの外周面をボイスコイルボビン4の内周面に接合してもよい。
【0033】
結合部材11cの材料は特に問わないが、軽量でかつ硬い部材が望ましく、例えば樹脂などが用いられる。また、結合部材11cの前段部11eと振動板2との接合、および後段部11fとボイスコイルボビン4との接合には例えば接着剤が用いられる。
【0034】
振動板2の凹部2aとリブ2bは、一体成形された一つの部材で構成されている。この部材の材料としては例えば紙や樹脂が用いられるが、材料については特に問わない。
【0035】
振動板2は、図2(b)に示すように、短手方向では緩やかな曲面形状になっており、短手方向の中心線が最も前方に張り出している。
【0036】
振動板2の前面外周側にはエッジ3が接合されている。エッジ3の内周部は、振動板2の外周縁部よりも内側で振動板2に接合されている。また、図2(b)に示すように、結合部材11cの後段部11fに接合されたボイスコイルボビン4はエッジ3の内径よりも大きくなっている。また、ボイスコイルボビン4の外周縁部はエッジ3とは非接触である。したがって、エッジ3の内径よりもボイスコイルボビン4の外径をより大きくすることができる。
【0037】
フレーム6の短径側の側面には凹部6bが形成されており、この凹部6bに構造体11内の第2の部材11bの側面が嵌合される(図2(b)参照)。本実施形態では、第2の部材11bのスピーカ1短径側の幅寸法を、フレーム6の短径側の幅寸法と略等しくしているため、フレーム6の凹部6bに第2の部材11bが嵌合すると、フレーム6の側面と第2の部材11bの側面とが略面一になる。これにより、フレーム6の短径側の側面から外側に第2の部材11bが突出しなくなり、スピーカ1の短径側の幅寸法を短縮できる。
【0038】
このように、本実施形態の技術的特徴の一つは、構造体11の側面11gがフレーム6の側面6aに略面一に接合されることである。
【0039】
図4は第1の部材11aと第2の部材11bを組み付けて構造体11を作製する工程順序を説明する図である。まず、図4(a)に示す第1の部材11aを用意する。第1の部材11aは、結合部材11cを4本のダンパ部11dで支持し、これらダンパ部11dを枠体部11hで支持する構造である。同様に、図4(b)に示す第2の部材11bを用意する。上述したように、第2の部材11bは対向する2つの側面を有し、これら側面間の幅寸法は、フレーム6のスピーカ1短径側の側面の幅寸法と略等しい。
【0040】
次に、図4(c)に示すように、第1の部材11aと第2の部材11bを組み付ける。第2の部材11bの対向する二つの側面11gは、第1の部材11aの枠体部11hの内側に嵌合されるような構造になっている。次に、図4(d)に示すように、ダンパと枠体部11hをつなぐ4箇所のリブ11iを除去して枠体部11hを取り外す。これにより、構造体11が完成する。
【0041】
図5は本実施形態に係るスピーカ1の製造工程順序の一例を示すフローチャートである。まず、不図示の位置出し治具を使用して振動板2をフレーム6に装着する(ステップS1)。ここでは、振動板2に予めエッジが取付けられているものとする。
【0042】
次に、第1の部材11aと第2の部材11bを組み付けた構造体11に、ボイスコイルが巻回されたボイスコイルボビン4を接着固定する(ステップS2)。次に、ボイスコイルボビン4を接着固定した構造体11をフレーム6に接着固定する(ステップS3)。フレーム6は、所定位置のみに構造体11を接着固定できるような位置出し構造を備えているため、治具等を用いることなく、構造体11はフレーム6の所定位置に嵌合される。これにより、フレーム6のスピーカ1短径側の側面6aの凹部6bに、第2の部材11bの側面11gが嵌合されて、フレーム6の側面6aと第2の部材11bの側面11gが略面一になる。
【0043】
次に、ポットヨーク8、マグネット9およびポールピース10からなる磁気回路をフレーム6の後方側から構造体11に接着固定する(ステップS4)。
【0044】
このように、構造体11とフレーム6との位置決めは容易であり、また、構造体11にはダンパが一体的に形成されているため、別個にダンパを取付ける工程が不要となり、製造組立の作業性が向上する。
【0045】
図5では、第1の部材11aと第2の部材11bを組み付けて構造体11を作製した後にボイスコイルボビン4を接着固定する例を説明したが、スピーカ1の製造工程順序は必ずしも図5に示したものに限定されない。
【0046】
図6は図5とは異なる製造工程順序の一例を示すフローチャートである。まず、ステップS1と同様に、位置出し治具を使用して振動板2をフレーム6に装着する(ステップS11)。次に、ボイスコイル4aが巻回されたボイスコイルボビン4と第2の部材11bを組立治具にセットした状態で、第1の部材11aを上方から装着する。そして、第1の部材11aのリブ11iを切断し、枠体部11hを取り除く(ステップS12)。これにより、構造体11にボイスコイルボビン4が接合された構造が得られる。
【0047】
次に、構造体11内の第2の部材11bの側面11gを、振動板2の接合されたフレーム6の凹部6bに接合する(ステップS13)。次に、ポットヨーク8、マグネット9およびポールピース10からなる磁気回路7を、フレーム6の後方側から構造体11に接着固定する(ステップS14)。
【0048】
図5と図6のいずれの場合も、構造体11内の第2の部材11bの側面をフレーム6のスピーカ1短径側の側面と面一にすることができ、スピーカ1の短径側の幅寸法を短縮できる。
【0049】
図3および図4に示した構造体11は、裏面側が凸面形状の振動板2に接着固定することを念頭に置いた形状の結合部材11cを有するが、振動板2の裏面側の形状に合わせて結合部材11cの前段部11eの形状を変えることで、種々の形状の振動板2に接着固定可能な構造体11を作製できる。
【0050】
図1〜図4に示した構造体11内の結合部材11cの前段部11eは環状であるが、環状の代わりに帯状でもよい。例えば、前段部11eに、振動板2のリブの形状に沿って溝を形成し、この溝にリブを嵌合するような構造にしてもよい。この場合、前段部11eの溝は、環状ではなく、帯状に形成することになる。
【0051】
また、図1〜図2に示したボイスコイルボビン4は円筒状であるが、ボイスコイルボビン4は必ずしも円筒状でなくてもよく、その断面形状が楕円や矩形など種々の形状が適用可能である。
【0052】
また、図3および図4では、第1の部材11aと第2の部材11bを組み付けて構造体11を作製する例を説明したが、第1の部材11aと第2の部材11bの少なくとも一方をフレーム6と一体成形してもよい。図7は第2の部材11bをフレーム6と一体成形したスピーカ1aの一例を示す分解斜視図である。
【0053】
図7のフレーム6には構造体11の第2の部材11bが一体成形されており、フレーム6のスピーカ短径側の側面よりも内側に第2の部材11bが形成されている。ボイスコイル4aが巻回されたボイスコイルボビン4を構造体11の第1の部材11aに接着固定するとともに、第1の部材11aの前段部11eを振動板2の裏面に接着固定し、かつ第1の部材11aをフレーム6内の第2の部材11bに嵌合する。また、フレーム6の後方側から磁気回路7を取付ける。
【0054】
このように、フレーム6に第2の部材11bを一体成形することにより、スピーカ1aの製造工程が簡略化し、作業性がよくなる。図7のスピーカ1aは、フレーム6のスピーカ短径側の側面6aと第2の部材11bの側面11gが面一になるように、フレーム6に第2の部材11bを一体成形するため、フレーム6の側面6aに凹部6bを形成したり、この凹部6bに第2の部材11bの側面を嵌合させる工程が不要となり、作業性がより向上する。
【0055】
一方、第2の部材11bの代わりにフレーム6に第1の部材11aを一体成形してもよいし、フレーム6に第1の部材11aと第2の部材11bの双方を一体成形してもよい。
【0056】
図4では、第1の部材11aと第2の部材11bを組み付けて構造体11を作製する例を説明したが、第1の部材11aと第2の部材11bに分けずに一体的に図3の構造の構造体11を形成してもよい。この場合、図4のように第1の部材11aと第2の部材11bを組み付ける製造工程が不要となる。
【0057】
以上に説明したように、本実施形態では、結合部材11cを有する構造体11をフレーム6に接着固定する際に、構造体11の側面がフレーム6のスピーカ短径側の側面と面一になるようにするため、スピーカ短径側の幅寸法を短縮することができる。
【0058】
特に、結合部材11cを有する第1の部材11aと、第2の部材11bとを組み付けて構造体11を作製する場合、第2の部材11bのスピーカ短径側の側面11gをフレーム6のスピーカ短径側の側面6aと略面一にすることができ、フレーム6のスピーカ短径側の側面の幅寸法から外側に第2の部材11bが突き出すおそれがなくなり、狭幅化を実現できる。
【0059】
また、フレーム6のスピーカ短径側の側面6aに凹部6bを形成して、この凹部6bに第2の部材11bの側面11gを嵌め込むため、スピーカ1aの奥行き方向の厚さも縮小でき、薄型のスピーカ1aを実現できる。
【0060】
上述した実施形態では、フレーム6に4つの構造体11を組み込む例を説明したが、1つのフレーム6に組み込む構造体11の数には特に制限はない。また、上述した実施形態では、1つの振動板2に3個の凹部2aを形成して、その間に2個の構造体11を組み込む例を説明したが、振動板2の形状や、1つの振動板2に組み込む構造体11の数には特に制限はない。
【0061】
また、上述した実施形態ではボイスコイルボビン4とおよびボイスコイル4aを円形形状にしたが、角部が丸まった矩形状でもよいし、トラック形状(平行する二本の直線の両端にそれぞれ円弧を接続した形状)でもよいし、その他の形状でもよく、具体的な形状は問わない。
【0062】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1,1a スピーカ
2 振動板
3 エッジ
4 ボイスコイルボビン
4a ボイスコイル
6 フレーム
7 磁気回路
8 ポットヨーク
9 マグネット
10 ポールピース
11 構造体
11a 第1の部材
11b 第2の部材
11c 結合部材
11d ダンパ部
11e 前段部
11f 後段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板と、
前記振動板の外周側から後方にかけて配置されるフレームと、
内周部が前記振動板に接合され、外周部が前記フレームに接合されるエッジと、
前記振動板よりも後方に配置される磁気回路と、
前記振動板を振動させるボイスコイルボビンと、
前記ボイスコイルボビンの外周面に沿って巻回され、前記磁気回路の磁気ギャップ中に支持されるボイスコイルと、を備えたスピーカにおいて、
前記振動板の裏面に接合されるとともに、前記フレームおよび前記磁気回路に接合される構造体を備え、
前記構造体は、前記フレームの側面に略面一に接合される側面を有し、
前記ボイスコイルボビンの外径は、前記振動板の短手方向の外径よりも大きいことを特徴とするスピーカ。
【請求項2】
前記構造体の前記側面は、前記フレームの短径側の側面に略面一に接合されることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
前記構造体は、互いに組み付け可能な第1の部材および第2の部材を有し、
前記第1の部材は、前記振動板の裏面に接合されるとともに、前記ボイスコイルボビンに接合される結合部材と、それぞれの一端が前記結合部材に接合される複数のダンパ部と、を一体成形したものであり、
前記第2の部材は、前記第1の部材の後方に配置されて前記フレームの側面に略面一に接合される側面を有することを特徴とする請求項1または2に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記第2の部材の前記側面に略面一に接合される前記フレームの側面の一部に切り欠き部が形成され、
前記第2の部材の前記側面は、前記切り欠き部に嵌合されて前記フレームの側面と略面一になるように接合されることを特徴とする請求項3に記載のスピーカ。
【請求項5】
前記構造体は、前記第1の部材と前記第2の部材とを一体成形したものであることを特徴とする請求項3または4に記載のスピーカ。
【請求項6】
前記構造体、前記磁気回路および前記ボイスコイルボビンは複数個ずつ設けられ、
複数個の前記構造体のそれぞれは、前記フレームの長手方向に沿って前記フレームに接合され、
複数個の前記磁気回路および前記ボイスコイルボビンのそれぞれは、対応する前記構造体に接合されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のスピーカ。
【請求項7】
前記結合部材は、前記振動板の裏面側に接合される前段部と、前記ボイスコイルボビンに接合され前記前段部と一体成形される後段部と、を有し、
前記前段部は、前記振動板の裏面に接合される環状または帯状の部材であり、
前記後段部は、その内周面または外周面で前記ボイスコイルボビンの上端部の外周面または内周面に接合される環状の部材であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のスピーカ。
【請求項8】
前記ボイスコイルボビンは、円形形状、角部が丸まった矩形状、またはトラック形状であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のスピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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