説明

スピーカ

【課題】耐入力を向上可能で、低域再生能力が高く、かつ小型および薄型化を実現可能とする。
【解決手段】ボイルコイルボビン4と、ボイスコイルボビン4の外周面に沿って巻回されるボイスコイル5と、ボイスコイル5に接続される錦糸線6と、内周部がボイスコイルボビン4の外周面に接合され、外周部がフレームに接合される振動板7と、外周部がフレームに接合され、振動板7よりも前側に配置される支持部材8と、を備える。錦糸線6は、化学繊維からなる芯線と、芯線に隙間を持たせて巻回される、絶縁皮膜で覆われた1本以上の導線と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錦糸線を備えたスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯可能な電子機器等では、高音質のマイクロスピーカを搭載する例が増えてきた。図15に示すように、従来のマイクロスピーカ100では、振動板101と磁気回路のポットヨーク107の外周部との間にダンパ103を配置したときに、錦糸線を配置する十分なスペースを確保できなくなるため、錦糸線を用いずに、ボイスコイル104からのリード線105を振動板101の裏面に接着してフレームの裏面まで引き出す構造を採用することが多い。ここで、リード線とは、ボイルコイル104の先端部を指し、本明細書では、ボイルコイルボビン106に巻回されていないボイスコイル104の先端部分をリード線と呼ぶ。
【0003】
図16は平坦なフラットダンパ103aを用いた従来のマイクロスピーカ100aの一例であるが、この例でも、ボイスコイル104からのリード線105は、振動板101の裏面に接着されている。
【0004】
図17はダンパを持たない従来のマイクロスピーカ100bの一例を示しているが、やはりボイスコイル104からのリード線105が振動板101の裏面に接着されている。
【0005】
上述したように、ボイスコイル104からのリード線105を振動板101の裏面に接着した構造では、リード線105自体の太さが細くて強度が弱く、振動板101の振動時にリード線105が断線しやすいため、耐入力の向上には限界がある。
【0006】
図18は振動板101の裏面側のリード線105の配置の一例を示す図である。図示のように、リード線105は、ボイスコイルボビン106に巻回されたボイスコイル104の先端側からボイスコイルボビン106の外周面とを経て振動板101の裏面に接着されている。図18では、接着された部分(接着部)を符号110で表している。リード線105の先端部は振動板101の裏面を通ってフレーム102側まで配置される。振動板101が振動するとき、リード線105は、ボイスコイルボビン106と振動板101との接合部分と、振動板101の外周部とフレーム102との接合部分において、特に大きく屈曲を繰り返すため、これらの接合部分で断線するおそれがある。 耐入力向上のための他の手法として、ポットヨーク107に設けた通気孔108に制動材109を取付けることも考えられる。例えば、図17のポットヨーク108の開口部に不織布やフェルト等からなる制動材109を装着して、最低共振周波数を上げることなく、振動板101の振幅を抑制して耐入力を改善できる。ところが、低域の音圧出力が低下し、低域再生が犠牲となってしまう。
【0007】
また、錦糸線はボイルコイルのリード線105に比べて径が大きくて、重量もあり、柔軟性がなく、引き回しが困難で、マイクロスピーカでは、錦糸線の配置スペースを確保するのが容易ではない。
【0008】
さらに、振動板101は、振動機能だけでなく、ボイスコイルボビン106を支持する機能も持っている。ところが、振動板101だけでは、高入力時にローリングによる異音が発生するおそれがあり、場合によっては振動板101が破壊する可能性もある。
【0009】
上述した問題を解決するために、平板状のダンパを設けたスピーカ(特許文献1)と、ダンパを振動板の前側に配置した逆コーン型スピーカ(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4237702号公報
【特許文献2】特許第3944848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の平板状ダンパは、導電性の板ばねであり、低域再生に限界がある上に、構造が複雑であるため、組立作業性が悪い。特許文献2のスピーカでは、逆コーン型の振動板がエッジを介してフレームに固着されており、小型および薄型のマイクロスピーカでは実現が困難な構造である。
【0012】
本発明は、上述した課題を解決するためのものであり、その目的は、耐入力を向上可能で、かつ低域再生帯域を確保でき、かつ小型および薄型化が実現可能なスピーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明は、ボイルコイルボビンと、
前記ボイスコイルボビンの外周面に沿って巻回されるボイスコイルと、
前記ボイスコイルに接続される錦糸線と、
内周部が前記ボイスコイルボビンの外周面に接合され、外周部がフレームに接合される振動板と、
外周部が前記フレームに接合され、前記振動板よりも前側に配置される支持部材と、を備え、
前記錦糸線は、
化学繊維からなる芯線と、
前記芯線に隙間を持たせて巻回される、絶縁皮膜で覆われた1本以上の導線と、を有することを特徴とするスピーカを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐入力を向上可能で、低域再生帯域を確保でき、かつ小型および薄型化が実現可能なスピーカを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るスピーカ1の断面図。
【図2】図1のスピーカ1の分解斜視図。
【図3】(a)は支持部材8の詳細な形状を示す斜視図、(b)は支持部材8の外周部にリングBが一体成形された構造8aを示す図、(c)と(d)は支持部材8の変形例を示す図。
【図4】図1のスピーカ1の組立工程の一例を示すフローチャート。
【図5】図1のスピーカ1の組立工程順序を矢印で示した断面図。
【図6】本実施形態で用いる錦糸線6の外観図。
【図7】本実施形態の係る錦糸線6aの一変形例を示す外観図。
【図8】図1のスピーカ1と従来のスピーカ1の定格入力を比較した図。
【図9】(a)は制動材を有する従来のスピーカ1と制動材を省略した従来のスピーカ1の音圧周波数特性を比較した図、(b)は本実施形態に係るスピーカ1と制動材を有する従来のスピーカ1の音圧周波数特性を比較した図、(c)は本実施形態に係るスピーカ1と制動材を省略した従来のスピーカ1の音圧周波数特性を比較した図。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るスピーカ1aの断面図。
【図11】図10のスピーカ1aの分解斜視図。
【図12】(a)は、支持部材8の裏面に支柱17を、樹脂材料を用いた射出成形または、フィルム材料を用いたプレス成形により一体成形する例を示す斜視図、(b)は支持部材8の外周面とフレーム2の内周部とを接合するためのリングAまで含めて一体成形する例を示す斜視図、(c)と(d)は支持部材8の変形例を示す図。
【図13】図10のスピーカ1aの組立工程の一例を示すフローチャート。
【図14】図10のスピーカ1aの組立工程順序を矢印で示した断面図。
【図15】従来のマイクロスピーカの一例を示す断面図。
【図16】平坦なフラットダンパ103aを用いた従来のマイクロスピーカの一例を示す図。
【図17】ダンパを持たない従来のマイクロスピーカの一例を示す図。
【図18】振動板101の裏面側のリード線105の配置の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るスピーカ1の断面図、図2は図1のスピーカ1の分解斜視図である。図1のスピーカ1は、フレーム2の中央部に取付けられた磁気回路3と、磁気回路3の磁気ギャップ中に支持されるボイスコイルボビン4と、ボイスコイルボビン4の外周面に沿って巻回されるボイスコイル5と、ボイスコイル5に接続される錦糸線6と、ボイスコイルボビン4に接合される振動板7と、振動板7よりも前側でボイスコイルボビン4に接合される支持部材8と、ボイスコイルボビン4の前側端部を覆うキャップ9とを備えている。
【0018】
振動板7の内周部はボイスコイルボビン4の外周面に接合され、振動板7の外周部はフレーム2の内周部に設けられたリングAに接合されている。
【0019】
支持部材8の内周部はボイスコイルボビン4の外周面に接合され、支持部材8の外周部はフレーム2の内周面に設けられたリングBに接合されている。支持部材8は、ボイスコイルボビン4の外周面上で、振動板7よりも前側でボイスコイルボビン4に接合されている。
【0020】
磁気回路3は、スピーカ1の底面側でフレーム2の内周部に接合されるポットヨーク11と、ポットヨーク11の前面に接合される永久磁石12と、永久磁石12の前面に接合されるポールピース13とを有する。ポットヨーク11の外周部には、所定間隔で開口部18が形成されている。この開口部18には、制動材を取り付けることも可能である。
【0021】
錦糸線6は、ボイスコイル5の先端部に接合されており、フレーム2の内周部に設けられた錦糸線引き出し部15を経由して、ポットヨーク11の裏面側の端子16に半田付けされている。
【0022】
図3(a)は支持部材8の詳細な形状を示す斜視図である。図3(a)に示すように、支持部材8は、中央部に孔が空いた円環状であり、表面には凹凸が形成されている。支持部材8の材料は、織布、不織布または樹脂フィルム等である。織布を用いる場合は、織布に熱硬化性樹脂を含浸させたものを所定の形状に成形したものを用いる。
【0023】
支持部材8の形状は、図3(a)に示したものに限定されず、種々の変形例が考えられる。図3(b)は支持部材8の外周部にリングBが一体成形された構造8aを示す図である。このような一体成形は、例えば樹脂材料を用いた射出成形により、比較的容易に実現可能である。図3(b)の支持部材8は、そのリングBがフレーム2の内周面に接合されることになる。リングBを別部材としていないため、図3(a)よりも組立が容易になる。また、部品点数も削減できるため、製造コスト削減が図れる。
【0024】
図3(c)と図3(d)の支持部材8b,8cは、その表面に、それぞれが分離した複数の開口部8d,8eが形成されている。これら開口部8d,8eは、通気性とスチフネスを調整するためのものである。開口部8d,8eの数や形状、サイズには特に制限はない。
【0025】
図3(c)の支持部材8bの開口部8dは、径方向に沿って放射状に形成されている。これに対して、図3(d)の支持部材8は、開口部8eを形成することで、いわゆる蝶ダンパ形状としたものである。
【0026】
図4は図1のスピーカ1の組立工程の一例を示すフローチャート、図5は図1のスピーカ1の組立工程の一例を模式的に示した図である。以下、図4と図5を用いて、図1のスピーカ1の組立工程を説明する。まず、磁気回路3内のポールピース13と永久磁石12を接合する(工程A1)。次に、ポールピース13の裏面にポットヨーク11を接合する(工程A2)。以上により、磁気回路3が完成する。
【0027】
次に、フレーム2の後方から、フレーム2の中央部の孔に磁気回路3を位置決めして、フレーム2と磁気回路3とを接合する(工程S1)。次に、ポットヨーク11の裏面側に端子16を接合する(工程S2)。
【0028】
次に、フレーム2の前方から、ボイスコイル5が巻回されたボイスコイルボビン4を磁気回路3の磁気ギャップ中にボイスコイルボビン4を、治具を用いて位置決めする(工程S3)。
【0029】
次に、フレーム2の前方から、リングAの付いた振動板7の中央部の孔をボイスコイルボビン4に嵌挿して、振動板7の内周部をボイスコイルボビン4の外周面に接合する(工程S4)。
【0030】
次に、フレーム2の前方から、リングBの付いた支持部材8の中央部の孔をボイスコイルボビン4に嵌挿して、支持部材8の内周部をボイスコイルボビン4の外周面に接合する(工程S5)。
【0031】
次に、工程S3で用いた治具を取り外して、フレーム2の前方から、ボイスコイルボビン4の前側端部を覆うようにキャップ9を装着する(工程S6)。
【0032】
次に、錦糸線6の引き回し(フォーミング)を行って、錦糸線6の先端部を端子16に半田付けする(工程S7)。
【0033】
次に、不図示の筐体を組み付けて、磁気回路3を着磁する(工程S8)。
【0034】
図6は本実施形態で用いる錦糸線6の外観図である。図6の錦糸線6は、化学繊維からなる芯線21と、芯線21に隙間dを持たせて巻回される導線22とを備えている。導線22は、その外表面が絶縁被膜で覆われている。
【0035】
導線22は、芯線21の表面をすべて覆うわけではなく、導線22の間から芯線21の表面が露出されている。したがって、錦糸線6には柔軟性が確保され、錦糸線6の引き回しが容易になる。これにより、ボイスコイル5が大きく振動しても、錦糸線6は断線しにくくなる。
【0036】
本実施形態の錦糸線6は、口径が50mm以下のマイクロスピーカ1に用いることを想定しており、錦糸線6の芯線21の外径に対する導線22の外径の比率は、約0.5〜1.2が望ましい。芯線21の外径は約0.08〜0.12mm、導線22の外径は約0.04〜0.08mmが望ましい。
【0037】
導線22は、ボイスコイル5に電流を供給する役割を持つことから、できるだけ電気抵抗の低い材料(例えば、銅)で形成するのが望ましい。導線22を被覆する絶縁被膜は、例えばポリウレタン樹脂を主成分とした絶縁ワニスである。導線22を絶縁被膜で覆 うことで、仮に錦糸線6がスピーカ1の金属部品に接触しても、短絡するおそれがなくなる。
【0038】
図7は本実施形態の係る錦糸線6aの一変形例を示す外観図である。図7の錦糸線6aは、絶縁被膜で覆われた導線22を二本密着配置した導線束を設け、この導線束を芯線21に隙間dを持たせて巻回させたものである。
【0039】
図7の錦糸線6aも、芯線21が部分的に露出しているため、柔軟性があり、耐入力を高くすることができる。また、導線束は、絶縁被膜で覆われているため、短絡するおそれがないのも図6と同じである。
【0040】
なお、導線束における密着配置される導線22の数は三本以上でも構わない。このように、複数の導線22を密着配置した導線束を設けることにより、錦糸線6aの導電性がよくなって断線も生じにくくなるため、信頼性が向上する。
【0041】
図8は図1のスピーカ1と図17に示す従来のスピーカ100bの定格入力を比較した図であり、100時間のノイズ試験を行うJIS C5532による定格入力の比較結果を示している。図8では、従来のスピーカ100bについては、制動材109を装着した場合と装着しない場合の定格入力を示している。
【0042】
図8で比較に用いたスピーカ1、100bは、サイズと種類を共通化しており、口径28mmの小型かつ薄型のマイクロスピーカである。ボイスコイル5の径は13mm、インピーダンス8Ω、ボイスコイル5の線材の径は0.06mmである。比較に用いた従来のスピーカ100bにおいて、ボイスコイル5の先端側のリード線は、振動板7の裏面に接着されて、その先端部は端子16に半田付けされている。
【0043】
振動板7は、厚さ38μmのPET(ポリエステル)を成形したものである。低域の振幅を抑制するための制動材109の材料は厚さ1mmの不織布である。制動材109は、ポットヨーク11の外周部に形成された開口部108に取付けられる。
【0044】
図1のスピーカ1と図17に示す従来のスピーカ100bとの構造的な違いは、図1のスピーカ1は、キャップ9と、錦糸線6と、支持部材8とを備えていることである。図1のスピーカ1の振動板7の材料は従来のスピーカ100bの振動板7と同じであるが、厚さが25μmである。支持部材8は、綿布を成形したものであり、振動板7と支持部材8の両方でスピーカ1の最低共振周波数を調整している。錦糸線6は、外径が0.08mmの芯線を有し、この芯線の材料はポリアミド繊維である。芯線の周囲には、図6と図7に示すように、外径が0.06mmの導線を隙間を隔てて巻回している。
【0045】
図8に示すように、制動材109を省略した従来のスピーカ100bの定格入力は0.2W、低域の振幅を抑制した制動材109を有する従来のスピーカ100bの定格入力は0.6Wである。また、本実施形態のスピーカ1の定格入力は2Wである。
【0046】
本実施形態に係るスピーカ1の定格入力が従来のスピーカ100bよりも格段に優れている理由は、図6または図7に詳細構造を示した錦糸線6を用いたことによるものと考えられる。従来のスピーカ100bは、錦糸線6を配置するスペースがないことから、リード線をボイスコイル5から端子16まで引き回しており、耐入力性能を上げるのには限界がある。これに対して、図6または図7に示した錦糸線6は、従来の錦糸線と比べ外径サイズも細く、質量も小さく、柔軟性があり、耐入力性能の大幅アップを図ることができる。
【0047】
図9は図8の3種類のスピーカの音圧周波数特性を比較した図であり、図9(a)は制動材109を有する従来のスピーカ100bと制動材109を省略した従来のスピーカ100bの音圧周波数特性を比較した図、図9(b)は本実施形態に係るスピーカ1と制動材109を有する従来のスピーカ100bの音圧周波数特性を比較した図、図9(c)は本実施形態に係るスピーカ1と制動材109を省略した従来のスピーカ100bの音圧周波数特性を比較した図である。
【0048】
図9(a)からわかるように、制動材109を設けることで、低域時の音圧を下げることができる。また、図9(b)からわかるように、本実施形態に係るスピーカ1の方がより低域まで音圧を確保でき、制動材109を有するスピーカ100bよりも低域再生能力に優れている。また、図9(c)からわかるように、本実施形態に係るスピーカ1と制動材109を省略した従来のスピーカ100bとは音圧周波数特性が似通っており、いずれも十分な低域再生能力を確保できる。
【0049】
本実施形態に係るスピーカ1では、振動板7よりも前側に支持部材8を配置しており、この支持部材8により、特に低域時のローリング発生を防止でき、結果として低域再生帯域の確保と耐入力の向上が図れる。
【0050】
このように、第1の実施形態では、振動板7よりも前側に支持部材8を配置することで、低域再生能力の向上を図ることができる。また、芯線に隙間を持たせて導線を巻回した錦糸線6をボイスコイル5に接合するため、支持部材8を設けていながら、スピーカ1の奥行きを長くせずに錦糸線6を配置でき、耐入力に優れた小型かつ薄型のマイクロスピーカ1を実現できる。
【0051】
(第2の実施形態)
以下に説明する第2の実施形態は、第1の実施形態とは、少なくとも振動板の構造が異なるものである。
【0052】
図10は本発明の第2の実施形態に係るスピーカ1aの断面図、図11は図10のスピーカ1aの分解斜視図である。図10および図11では、第1の実施形態に係るスピーカ1と共通する構成部品には同一符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
【0053】
図10のスピーカ1aの振動板7aには、振動板7aの中心付近でボイスコイルボビン4の前側端部を覆うようにキャップ部7bが一体成形されており、図1のスピーカ1では必須であったキャップ9が不要となる。
【0054】
図1のキャップ9は、その中央部がスピーカ1の後側に突き出たドープ型であったのに対して、図10の振動板7aの中央部はスピーカ1aの前側に突き出た凸構造である。ただし、第1および第2の実施形態のスピーカの中央部を前側あるいは後側に突き出させるか否かは任意であり、形状は限定しない。
【0055】
また、図10のスピーカ1aでは、支持部材8と振動板7aの間に円筒状の支柱17が配置されている。支柱17が必要になるのは、振動板7aがボイスコイルボビン4の前側端部に接合される結果、振動板7aと支持部材8との距離を確保するために、支柱17を設けなければならないためである。
【0056】
この結果、図10のスピーカ1aでは、振動板7aの裏面にボイスコイルボビン4の前側端部が接合され、振動板7aの前面に支柱17の後側端部が接合され、支柱17の前側端部は支持部材8の裏面に接合されている。
【0057】
図10のスピーカ1aと図1のスピーカ1との構造的な相違点は、上述した振動板7aの構造と支柱17の有無だけであり、これら以外は実質的に同一である。図10のスピーカ1aにおいても、図6または図7に示す錦糸線6が用いられる。
【0058】
図10のスピーカ1aにおける支持部材8は、図3に詳細構造を示した支持部材8と同様である。ただし、支持部材8の裏面には支柱17が接合されるため、支持部材8と支柱17を一体成形してもよい。この場合の支柱17の構造は例えば図12のようなもの8f〜8iになる。図12(a)は、支持部材8の裏面に支柱17を、樹脂材料を用いた射出成形または、フィルム材料を用いたプレス成形により一体成形する例を示す斜視図である。支持部材8と支柱17を一体成形することにより、部品点数を削減できる。
【0059】
図12(b)は支持部材8の外周面とフレーム2の内周部とを接合するためのリングAまで含めて一体成形する例を示す斜視図である。これにより、図12(a)よりもさらに部品点数を削減できる。
【0060】
なお、第2の実施形態に係る支持部材8は、図3(c)のような開口部8dを設けてもよいし(図12(c))、図3(d)のような蝶ダンバ形状8iにしてもよい(図12(d))。
【0061】
図13は図10のスピーカ1aの組立工程の一例を示すフローチャート、図14は図10のスピーカ1aの組立工程の一例を模式的示した図である。磁気回路3の組立工程を示した工程A21とA22は図4の工程A1とA2と同様である。
【0062】
磁気回路3の組立に前後して、振動板7aの外周部にリングBを接合した状態で、振動板7aの裏面に、ボイスコイル5が巻回されたボイスコイルボビン4の前側端部を接合する(工程B1)。
【0063】
次に、工程B1で組み付けた組立体をフレーム2に装着する(工程S11)。このとき、振動板7aの外周部のリングBをフレーム2の内周部に接合する。
【0064】
次に、振動板7aの前面に支柱17の後側端部を接合する(工程S12)。次に、支持部材8の外周部にリングAを接合した状態で、支持部材8の裏面に支柱17の前側端部を接合する(工程S13)。
【0065】
次に、フレーム2の後方側から、工程A22で組み付けた磁気回路3をフレーム2に接合する(工程S14)。このとき、フレーム2の底面側内周部と磁気回路3のポットヨーク11の外周部とを接合する。
【0066】
次に、フレーム2の底面に端子16を取付けた後、ボイスコイル5の先端部に接合されている錦糸線6を引き回して、端子16に半田付けする(工程S15)。次に、磁気回路3を着磁する(工程S16)。
【0067】
このように、第2の実施形態においても、振動板7aの他に支持部材8を有し、かつ図6または図7の錦糸線6を有するため、耐入力性に優れて低域再生能力も確保可能な小型かつ薄型のマイクロスピーカ1aを作製できる。
【0068】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1、1a スピーカ
2 フレーム
3 磁気回路
4 ボイスコイルボビン
5 ボイスコイル
6 錦糸線
7 振動板
8 支持部材
9 キャップ
11 ポットヨーク
12 永久磁石
13 ポールピース
15 錦糸線引き出し部
16 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイルコイルボビンと、
前記ボイスコイルボビンの外周面に沿って巻回されるボイスコイルと、
前記ボイスコイルに接続される錦糸線と、
内周部が前記ボイスコイルボビンの外周面に接合され、外周部がフレームに接合される振動板と、
外周部が前記フレームに接合され、前記振動板よりも前側に配置される支持部材と、を備え、
前記錦糸線は、
化学繊維からなる芯線と、
前記芯線に隙間を持たせて巻回される、絶縁皮膜で覆われた1本以上の導線と、を有することを特徴とするスピーカ。
【請求項2】
前記ボイスコイルボビンの前側端部を覆うキャップを備え、
前記支持部材の内周部は、前記ボイスコイルボビンの外周面に接合され、
前記支持部材は、前記ボイスコイルボビンの外周面上で、前記振動板よりも前側に接合されることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
前記キャップは、前記ボイスコイルボビンの後側に向かって突き出たドーム状であることを特徴とする請求項1または2に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記振動板の前面に接合される円筒状の支柱を備え、
前記支持部材の底面は、前記支柱の前側端部に接合され、
前記ボイスコイルボビンの前側端部は前記振動板の底面に接合されることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ。
【請求項5】
前記振動板は、キャップ部を有し、前記ボイスコイルボビンの前側端部全体を覆うことが可能な形状であることを特徴とする請求項4に記載のスピーカ。
【請求項6】
前記支持部材および前記支柱を一体成形した構造体を備えることを特徴とする請求項4または5に記載のスピーカ。
【請求項7】
前記支持部材は、それぞれが分離して形成される複数の開口部を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のスピーカ。
【請求項8】
前記支持部材は、織布、不織布または樹脂薄膜を用いて形成されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のスピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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