説明

スピーカ

【課題】 製造の手間を軽減し再生音圧レベルの高い高効率のスピーカを提供する。
【解決手段】 フレーム5内に収容され、互いに平行な直線状で両端が開放した磁気ギャップ17a,17bを有する磁気回路10と、前記フレーム5に支持され長手及び短手方向を有する細長形状の振動板2と、前記振動板2に固着され、振動板の振動方向に直交する平面が長手及び短手方向を有し、短手に対向する面が互いに平行な細長形状のコイルボビン6と、前記コイルボビンに巻き回されたボイスコイル7を備えたスピーカにおいて、前記コイルボビン6は、直線状の中間部分が前記磁気回路の磁気ギャップ内に配置される一方、両端19は前記磁気ギャップ外に位置するように配置され、前記コイルボビンの両端19下部と前記フレーム5とに連結され、前記コイルボビン6を支持する薄板状の支持部材8を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック形状などの細長型のスピーカに関し、特に、音声再生能力に優れ、薄型のテレビやディスプレイなどの電子機器に適するスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
音声を再生するスピーカを取り付ける薄型ディスプレイ等の機器においては、表示部分以外の面積を小さくすることが望まれており、スピーカを取り付けるのに要する空間についても小型化が要望されている。特に、細長形(矩形、長円形(楕円形、トラック形を含む))のスピーカは、その形状からこれらの機器に好適に用いることができる。しかし、細長形スピーカは、短手方向に振動板面積が限られ、細長形のスピーカ振動板に特有な分割振動の影響が大きくて平坦な再生音圧周波数特性を得ることが難しい等の様々な理由から音声再生能力において不利な点がある。したがって、従来にはこれらの問題を解決するために、次に示すような様々なスピーカが提案されている。
【0003】
例えば、スピーカ形状の縦、横の寸法が長手側と短手側とからなるトラック型スピーカにおいて、磁気回路を構成するマグネットをほぼスピーカ外形に収まる範囲内で大きな形状とし、かつ前記磁気回路を構成するボイスコイルの形状は前記長手側の方向に沿って延びる細長い形状としたトラック型スピーカが知られている(特許文献1)。
【0004】
また、少なくとも2個の棒状マグネットを上部プレートと下部プレートとで前記下部プレートに設けた棒状のセンターポール部をはさんで平行に挟持した磁気回路と、この磁気回路に結合されたフレームと、このフレームの外周部に結合された振動板と、この振動板に結合されるとともに、その一部が前記磁気回路の磁気ギャップ内に配置されたボイスコイルとからなるスピーカがある(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、長手方向に比べて短手方向が短い細長形のスピーカでは、磁気回路の磁気空隙およびボイスコイルを長手方向の二辺を含む形状にすることで、磁束と交差するボイスコイル長を長くし、ボイスコイルに発生する駆動力を増大させて効率が高いスピーカを実現できる。一方で、磁束と交差するボイスコイル長を長くすると、細長形状のコイルが巻き回されるボビンが大型化するため、スピーカ、特にボイスコイルを支える振動板及びエッジの強度不足が生じやすい。このため、ボイスコイルを支持する振動板の材料に強度が求められることとなり、再生動作中に音の歪みが発生しやすく、また、再生音圧レベルが低下し、効率が悪くなるという問題がある。
【0006】
この問題を解消するために、特許文献3や特許文献4に示すように、図10に示すような、個々のボイスコイル102を小さくして軽量化する一方、振動板101に複数設けることによって、再生音圧レベルを高めたスピーカも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−197190号公報
【特許文献2】特開2004−266337号公報
【特許文献3】特開2006−311174号公報
【特許文献4】特開2011−10167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、振動板の複数箇所にボイスコイルを設置したスピーカでは、複数のボイスコイルを配線するための手間が大きく、製造コストが増大するという問題がある。また、複数のボイスコイル102がそれぞれ独立して動くため、図11の矢印90に示すように、ボイスコイル102が設けられている部分に大きい駆動力が加わり、その中間部分では振動の節103が発生する等、振動板全体としては共振が発生するなど振動板の分割共振モードが生じやすくなる、という問題がある。このため、振動板の長さには実質的に制限があり、長手側と短手側の比率が大きい細長いスピーカを実現することは困難であった。
【0009】
また、この分割共振モードの発生の問題を低減するために、振動板を強度に構成するため、特許文献4に開示されているように、振動板に補強部材を設けるなどの手段が取られているが、これらの構成はいずれも振動板の重量を大きくするものであるため、再生音圧レベルの低下を引き起こすという問題があった。
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、製造の手間を軽減し再生音圧レベルの高い高効率を実現することができる細長形のスピーカを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成のスピーカを提供する。
【0012】
本発明の第1態様によれば、フレーム内に収容され、互いに平行な直線状で両端が開放した磁気ギャップを有する磁気回路と、
前記フレームに支持され長手及び短手方向を有する細長形状の振動板と、
前記振動板に固着され、振動板の振動方向に直交する平面が長手及び短手方向を有し、短手に対向する面が互いに平行な細長形状のコイルボビンと、
前記コイルボビンに巻き回されたボイスコイルを備えたスピーカにおいて、
前記コイルボビンは、直線状の中間部分が前記磁気回路の磁気ギャップ内に配置される一方、両端は前記磁気ギャップ外に位置するように配置され、
前記コイルボビンの両端下部と前記フレームとに連結され、前記コイルボビンを支持する支持部材を備えることを特徴とするスピーカを提供する。
【0013】
本発明の第2態様によれば、前記コイルボビンは、前記両端部に底壁を有し、
前記支持部材は、前記底壁と前記フレームの内底面に連結することを特徴とする第1態様のスピーカを提供する。
【0014】
本発明の第3態様によれば、前記コイルボビンはトラック形状であることを特徴とする第1又は第2態様のスピーカを提供する。
【0015】
本発明の第4態様によれば、前記コイルボビンは、側壁全周にわたって変形防止リブが設けられていることを特徴とする、第1から第3態様のいずれか1つのスピーカを提供する。
【0016】
本発明の第5態様によれば、前記コイルボビンは、嵌入するように配置される振動板を支持する振動板取付部を内側面に備えることを特徴とする、第1から第4態様のいずれか1つのスピーカを提供する。
【0017】
本発明の第6態様によれば、前記支持部材は、薄板状に構成された外側部と、前記外側部と同心に設けられた内側部とを有し、前記内側部が外側部の主面方向に変位するように構成されていることを特徴とする、第1から第4態様のいずれか1つのスピーカを提供する
【0018】
本発明の第7態様によれば、前記支持部材は、同心に設けられた円板状の外側部と内側部を接続するプリーツを有することを特徴とする、第1から第6態様のいずれか1つのスピーカを提供する。
【0019】
本発明の第8態様によれば、前記磁気回路は複数個が間欠的に設けられており、
前記コイルボビンは、前記複数の磁気回路の隙間が設けられている部分に短手方向に対向する面を連接する補強部材を備えること特徴とする、第1から第7のいずれか1つのスピーカを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、磁気回路の磁気ギャップを両端が開放した互いに平行な直線状のものとすることにより簡単な構成とすることができ、また、ボイスコイルとの隙間調整が容易なため、製造工程を容易にすることができる。さらに、コイルボビンを短手方向に対向する面が平行な細長い形状とすることで、振動板に広く一様に駆動力を伝えることができ、振動板の振動直線性を大きくすることができることから、分割共振モードの発生を抑えることができる。
【0021】
また、細長形状の振動板を有するスピーカにおいて、コイルボビンを細長形状にすることによって磁束と交差するボイスコイル長を長く取ることができるため、ボイスコイルで発生する駆動力を大きくすることができる。さらに、コイルボビンの両端下部を支持部材により支持することにより、コイルボビンを支持する振動板と支持部材との間の距離を大きくすることができる。このため振動板の垂直振動の安定性を向上させることができる。よって、スピーカの高さ寸法を小さくすることができる。したがって、本発明によれば、高音声レベルでありながら耐入力性を兼ね備え、容易に製造可能なスピーカを提供することができる。
【0022】
本発明の第2態様によれば、コイルボビンと支持部材の固定を容易にすることができ、また、コイルボビンを補強することができることから、コイルボビンを薄肉化して軽量化することで、スピーカを小型化することができる。
【0023】
本発明の第6態様によれば、薄板状に構成された支持部材を用いることにより、コイルボビンの下側に設けられる支持部材の取り付けスペースを小さくし、スピーカの高さ寸法を小さくすることができる。
【0024】
本発明の第4態様及び第5態様によれば、変形防止リブ及び内部に嵌入して設けられた振動板により、コイルボビンの変形を防止することができ、スピーカの組立精度を向上させることができる。
【0025】
本発明の第7態様によれば、同心円状のプリーツを有する円板形状の支持部材を用いることで、主面に沿ったいずれの方向からの力を支持することができると共に、主面に直交する方向については、振動板の動きを阻害することがない。よって、コイルボビンを効率よく支持することができる。
【0026】
本発明の第8態様によれば、コイルボビンの直線部分の変形を少なくすることができることから、磁気ギャップの位置決め精度を高くすることができ、短手方向に対して長手方向が長いコイルボビンであっても、高い入力耐性のスピーカとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態にかかるスピーカの外観構成を示す斜視図である。
【図2】図1のスピーカの組立分解斜視図である。
【図3】図1のスピーカのA−A線における断面図である。
【図4】図1のスピーカのB−B線における断面図である。
【図5】図1のスピーカのC−C線における断面図である。
【図6】図1のスピーカのD−D線における断面図である。
【図7】図1のスピーカのE−E線における断面図である。
【図8】図7のスピーカ部分拡大図である。
【図9】図2の部分拡大一部断面図である。
【図10】従来のスピーカに用いられる振動板の構成を模式的に示す図である。
【図11】従来のスピーカにおける振動板の分割振動の発生を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態に係るスピーカについて、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施形態にかかるスピーカの外観構成を示す斜視図である。図2は、図1のスピーカの組立分解図である。本発明のスピーカ1は、取り付け空間の小型化が要望されている薄型のテレビやノートパソコンなどの電子機器に搭載されるスピーカである。
【0030】
本実施例のスピーカ1は、長手方向長L1が約100mm、短手方向長L2が約15mmの細長い形状であり、磁気回路などを収容するフレーム5の上面に振動板2が設けられている。振動板2は、短手方向の辺が互いに平行に構成され、長手方向両端部が半円状に構成されているトラック形状を有している。
【0031】
振動板2の外周端には、エッジ3が接着されており、さらにエッジ3の外周側には、上部フレーム4が設けられている。上部フレーム4は、トラック形の振動板2に対応した細長形状に構成されている。
【0032】
エッジ3は、本実施例では、柔軟性を有する素材で形成されており、例えば発泡ゴムなどが好適に用いられる。振動板2の長手方向に直線状に延びるトラック形の長辺と、短手方向に円弧状になるトラック形の短辺とを含む振動板2の全周を支持し、その結果、細長形の振動板2は、エッジ3により柔軟に支持されて全体を一体的に垂直振動可能に支持されている。
【0033】
振動板2及び振動板の形状に対応した細長形状のフレーム5は、エッジ3を介して連結される。フレーム5内には、磁気回路10などが収納される。
【0034】
また、振動板2の裏面には、図2に示すように、トラック形のコイルボビン6が設けられる。音声電流が供給されるトラック形のコイルボビン6の側壁6aの周囲には、全周にわたってボイスコイル7が巻き回される。コイルボビン6は、振動板の外径形状にほぼ沿うような形状に構成されている。
【0035】
フレーム5は、振動板2の形状に対応して上方が開口した細長形の箱形状であり、当該開口部分で上部フレーム4と係合する。フレーム5は、磁気回路10のヨークをインサート成形することによって製造され、振動板2を係合する振動板固定部11と、磁気回路10のヨークを固定するヨーク固定部12と、支持部材8が配置される支持部材配置部13が設けられている。
【0036】
振動板固定部11は、フレーム5の側壁51の内側面に設けられた段差であり、上部フレーム4を係止することによって振動板を特定の位置に配置する。したがって、振動板2に設けられているコイルボビン6は、通常時において、フレーム5内での基準位置が画一的に決定されることとなる。
【0037】
磁気回路10を特定の位置に固定するヨーク固定部12は、フレーム5の側壁51に平行に設けられた壁状部材であり、後述するように、フレームの側壁とヨーク固定部との間に案内溝53が形成される。
【0038】
図3は、図1のスピーカのA−A線における断面図である。図4は、図1のスピーカのB−B線における断面図である。図5は、図1のスピーカのC−C線における断面図である。図6は、図1のスピーカのD−D線における断面図である。図7は、図1のスピーカのE−E線における断面図である。
【0039】
ヨーク固定部12に固定される磁気回路10は、図3及び図5に示すように、フレーム5の特定箇所に固定される細長形のヨーク14と、ヨーク14の底部に配置されるマグネット15と、マグネットの上に設けられるポール16とから構成されている。
【0040】
ヨーク14は、断面がコの字状の磁性体金属で構成されており、底面にマグネット15が配置される。細長形のマグネット15は、外形がフレーム5の長手方向に長い細長形であり、ポール16もマグネット15の形状に対応した略細長形状である。マグネット15及びポール16は、間に間隙15aをおいてヨーク14内に2つ配置される。当該間隙15aは、後述するコイルボビン6の補強部材20aが位置する。
【0041】
ヨーク14の長辺とポール16の長辺との間には、均等な幅を有する互いに平行な二辺の直線状の磁気ギャップ17a、17bが形成される。磁気ギャップ17a、17bは、両端が開放しており、幅寸法はスピーカのサイズによって多少の違いが見られるが概ね数mm程度に構成されている。
【0042】
本実施例のマグネット15は、残留磁化および保磁力が大きく、小さい体積でも保磁力の強いNd−Fe−B系の希土類磁石を用いるが、特に限定されるものではなく、フェライト系磁石であってもよい。なお、希土類磁石とは、Nd−Fe−B系のネオジウム磁石、もしくは、Sm−Co系のサマリウムコバルト磁石であって、磁石の最大エネルギー積(BH)maxが大きな値をとる磁石である。
【0043】
振動板2に設けられるコイルボビン6は、振動板の外枠形状にほぼ沿うような環状の筒状体であり、ジュラルミンやアルミニウムなどの軽金属、耐熱樹脂フィルムなどをプレス成形して製造することができる。本実施形態では、放熱効果が大きいアルミニウムのプレス加工品が用いられている。コイルボビン6は、図6に示すように、中間部分が直線部18であり、両方の端部19が半円形状を有するトラック形状に構成されている。直線部18を構成するコイルボビン6の短手方向に対向する2面は互いに平行である。
【0044】
直線部18は、図6に示すように、その一部分が磁気回路10の磁気ギャップ17a,17bに配置され、一方、両端部19は、磁気回路10の磁気ギャップ17a,17b外に配置される。直線部18のみを磁気回路10の対向する磁気ギャップに配置することにより、ヨーク14及びマグネット15の幅によって磁気ギャップ間の位置関係を容易にすることができ、更に、ヨーク固定部12により、フレーム5内での磁気回路10の短手方向の取り付け位置を画一的に決定することができるため、磁気ギャップ17a,17b内へのボイスコイル7の短手方向の位置を高精度に行うことができる。
【0045】
また、コイルボビン6の直線部18及び磁気ギャップ17a,17bは、互いに並行に構成されているため、磁気回路10とボイスコイル7との長手方向の相対位置関係は、多少のずれは許容される。
【0046】
コイルボビン6は、図6,図7に示すように、中央部に補強部材20aが設けられている。補強部材20aはトラック形状のコイルボビン6の変形を防止するために、対向する2つの中間部の下端同士を接続するものである。上記のように、マグネット15及びポール16は、2つに分割されて構成されているため、補強部材20aは、当該2つのマグネット15及びポール16の間隙15aに配設される。
【0047】
また、コイルボビン6は、図8に示すように、外側壁30の全周にわたってボイスコイル係止部31,補強リブ33が設けられている。空巻きして形成されたボイスコイル7はトラック形状にしてボイスコイル係止部31に挿入し、上端の段差32に突き当てることにより貼付位置の位置合わせをすることができる。
【0048】
コイルボビン6の内側壁上部には、振動板取付部34が側壁全周にわたって設けられており、コイルボビン6の上端側から挿入された振動板2を突き当てて位置決めする。上記のように、コイルボビン6の開口と振動板2は同形状であり、振動板取付部34に振動板2を挿入することで、コイルボビン6の側壁上端側の変形を防止することができる。
【0049】
外側壁30に設けられた補強リブ33と上端に設けられた振動板取付部34及び、コイルボビン6の中央下部に設けられた補強部材20aによって、コイルボビン6の直線部18の変形を防止することができる。
【0050】
コイルボビン6に振動板2を取り付けると、図8に示すように、両者の上面2a,6aはほぼ同じ高さになるように構成され、エッジ3を振動板2及びコイルボビン6の上面2a,6aに接着することで、強度を得ることができる。
【0051】
図9は、コイルボビンの両端部近傍の部分拡大一部断面図である。コイルボビン6の両端下部には、薄い板状の支持部材8が設けられ、後述するようにフレーム5に固定され、コイルボビン6を下側から支持する。本実施形態においては、コイルボビンの両端部の半円形状とほぼ同様の大きさを有する円板状の支持部材8が用いられている。
【0052】
コイルボビン6の両端部には、図9に示すように、底板20が設けられており、短手方向に対向する面の端部及び半円状の曲面に連接する。底板20の下面には、突状部21が設けられている。突状部21は、下側に伸び、支持部材8の固定孔22に挿入して支持部材8を固定する。
【0053】
支持部材は、外周部及び外周部ほぼ同形の内周部が、同心位置に配置された構成であり、外周部と内周部がその厚み方向に移動できるように両者を接続する構成である。
【0054】
本実施形態においては、支持部材8は、円板状の布成形品で構成され、中心に設けられた固定孔22を有する内側部分が同心円状のプリーツ23によって、最外周部に位置するフランジ24と接続されている。固定孔22は突状部21が挿通されてコイルボビンと接続し、フランジ24はフレーム5の支持部材配置部13に固定される。
【0055】
なお、コイルボビン6の突状部21とフレーム5との干渉を防止し、支持部材の下部を開放させてコイルボビン6のスムーズな動きを確保するため、フレーム5の支持部材配置部13には、中央に貫通孔54が設けられている。
【0056】
支持部材8は、その面に交差する方向の力が加わると、プリーツ23が変形してフランジ24と固定孔22との高さ方向の変位を吸収する。なお、支持部材8は、布成型品で構成されている必要はなく、例えば、金属などを用いることができる。
【0057】
支持部材8とコイルボビン6との位置関係は、定常時には、支持部材8がコイルボビン6を下側から支持するように配置される。なお、支持部材8は、プリーツ23が同心円状に設けられているため、その面に沿ったいずれの方向からの応力についても支持力を発揮することができ、例えば、振動板2が正面を向くようにスピーカ1を寝かして配置したとしても、コイルボビン6を支持可能である。
【0058】
スピーカ1の使用時において、コイルボビン6の振動に伴って、支持部材8が変形する。上記のようにコイルボビン6は、上端を振動板2に固定され、下端を支持部材8により支持されているため、支持箇所の間隔が広く、安定した垂直振動を確保することができる。また、安定した垂直振動を確保しながらコイルボビン6の高さを小さくすることができるため、スピーカの厚み寸法を小さくすることができる。
【0059】
上記構成により、コイルボビン6は、振動板2と支持部材8とで、上下から支持されることとなり、振動板2に加わる応力は軽減される。したがって、音圧レベルを高めるためにコイルボビン6を大きく構成したとしても、振動板2に加わる応力が軽減されるため、振動板を薄肉化、軽量化することができる。したがって、大型のコイルボビン6による音圧レベルの向上に加えて、振動板の軽量化に伴う音圧レベルの向上を実現することができる。
【0060】
ボイスコイル7の引出し線7aは、後述するように、両端部19近傍から始端し、フレーム5の側壁51に沿って設けられる引出し線7aの案内溝53を通って挿通孔52からフレーム5の外部に引き出される。
【0061】
フレーム5の側壁51に設けられた挿通孔52からフレーム5の外部に引回された引出し線7aは、側壁51の外側に設けられる端子板9に到達する。このため、引出し線7aの大部分は隠蔽されて、外部から視認できず、また、他の部材に接触して断線することもない。
【0062】
以上説明したように、本発明の実施形態にかかるスピーカによれば、支持部材8と振動板2とで狭持するようにコイルボビン6を支持するため、コイルボビン6を大型化しても振動板2の補強が少なくてすむため、再生音圧のレベルを高めることができる。また、コイルボビン6を大きくすることができるため、振動板2の振動直線性を高めることができる。
【0063】
また、トラック形状の振動板を有するスピーカにおいて、コイルボビンを細長形状にすることによって磁束と交叉するボイスコイル長が長く取ることができるため、ボイスコイルで発生する駆動力を大きくすることができる。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。例えば、コイルボビン6と支持部材8との連結構造は、コイルボビンの両端下部に薄板状の支持部材を取り付ける構成であれば広く適用可能である。
【0065】
また、コイルボビン6の両端下部に設けられる支持部材は、薄板状であればその形状及び材質は特に限定されず、例えば、矩形に構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のスピーカは、比較的小型の電子機器に用いることができ、引出し線の破断を防止することができることから耐久性に優れた電子機器を提供することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 スピーカ
2 振動板
3 エッジ
4 上部フレーム
5 フレーム
6 コイルボビン
7 ボイスコイル
8 支持部材
10 磁気回路
11 振動板固定部
12 ヨーク固定部
13 支持部材配置部
14 ヨーク
15 マグネット
16 ポール
17a,17b 磁気ギャップ
18 直線部
19 端部
20 底板
20a 補強部材
21 突状部
22 固定孔
23 プリーツ
24 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム内に収容され、互いに平行な直線状で両端が開放した磁気ギャップを有する磁気回路と、
前記フレームに支持され長手及び短手方向を有する細長形状の振動板と、
前記振動板に固着され、振動板の振動方向に直交する平面が長手及び短手方向を有し、短手に対向する面が互いに平行な細長形状のコイルボビンと、
前記コイルボビンに巻き回されたボイスコイルを備えたスピーカにおいて、
前記コイルボビンは、直線状の中間部が前記磁気回路の磁気ギャップ内に配置される一方、両端は前記磁気ギャップ外に位置するように配置され、
前記コイルボビンの両端下部と前記フレームとに連結され、前記コイルボビンを支持する支持部材を備えることを特徴とするスピーカ。
【請求項2】
前記コイルボビンは、前記両端部に底壁を有し、
前記支持部材は、前記底壁と前記フレームの内底面に連結することを特徴とする、請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
前記コイルボビンはトラック形状であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記コイルボビンは、側壁全周にわたって変形防止リブが設けられていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1つに記載のスピーカ。
【請求項5】
前記コイルボビンは、嵌入するように配置される振動板を支持する振動板取付部を内側面に備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1つに記載のスピーカ。
【請求項6】
前記支持部材は、薄板状に構成された外側部と、前記外側部と同心に設けられた内側部とを有し、前記内側部が外側部の主面方向に変位するように構成されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1つに記載のスピーカ。
【請求項7】
前記支持部材は、同心に設けられた円板状の外側部と内側部を接続するプリーツを有することを特徴とする、請求項6に記載のスピーカ。
【請求項8】
前記磁気回路は複数個が間欠的に設けられており、
前記コイルボビンは、前記複数の磁気回路の隙間が設けられている部分に短手方向に対向する面を連接する補強部材を備えること特徴とする、請求項1から7のいずれか1つに記載のスピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−21469(P2013−21469A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152542(P2011−152542)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【特許番号】特許第4906971号(P4906971)
【特許公報発行日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(509290902)大和音響株式会社 (3)
【Fターム(参考)】