説明

スライド式携帯機器

【課題】スライド式の携帯機器において、全体のコンパクト性を図りながら、第1の筐体を安定してスライド移動及び縦長状態と横長状態とに切換操作可能に支持し、第1の筐体を横長状態としたときに、通常のキー配置での操作を可能とする。
【解決手段】表面に上下方向に長い縦長の液晶表示部2を有する第1の筐体3と、表面に操作部4を有する第2の筐体5とをスライド自在に連結するスライド機構25を設ける。このスライド機構25は、第2の筐体5表面に上下方向に延びるように設けたレール部26を含み、スライド機構25により、第1の筐体3を第2の筐体5の上端側へスライド移動させたときに、第2の筐体5の操作部4が現れるように構成する。さらに、カム機構10(支持機構)によって、第1の筐体3を第2の筐体5に対して縦長状態と横長状態とに切換操作可能に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機や携帯通信機器等の、第1の筐体と第2の筐体とがスライド自在に連結されたスライド式携帯機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地上デジタルテレビ放送ならではのサービスとして注目を集めている携帯電話機や携帯通信機器向けの1セグメント部分受信サービスが開始され、このサービスは「ワンセグ」と呼ばれている。
【0003】
「ワンセグ」は、地上デジタルテレビ放送の6メガヘルツの帯域を13のセグメントに分けて送る日本独自の放送方式によって実現したサービスで、13の真中のセグメント1つだけで映像、音声、データが得られる。また、通常のテレビとの違いは、移動しながらでもテレビ映像が乱れずに受信できるというメリットがあり、今後さらに利用者が増えてくることが予想されている。そのため、携帯電話機や携帯通信機器は、テレビ受信機能を備えることが不可欠となることが予想される。
【0004】
一方、携帯電話機では、その主な機能は依然として通話機能であり、また、その携帯性のために小型化、軽量化が商品性の面で重要となっている。使い勝手の面を重視して、携帯電話機は、横幅を抑えた縦長形状となっている。
【0005】
上記携帯電話機の表示部が縦長状態で固定されていると、横長の画像を表示する場合には、縦長の画面に入るように縮小表示するか又は横スクロール操作により画像全体を見るようにしなければならなかった。
【0006】
例えば、特許文献1のように、操作部が設けられた本体と、本体の操作部側に重ね合わせられた状態から操作部に沿ってスライド自在に接続された蓋体とからなる携帯情報端末が知られている。このようなスライド式の携帯情報端末では、蓋体と本体を重ね合わせた状態で、蓋体に設けた表示部が横長状態になるように横にして持てば、横長状態でのテレビ受信は可能である。
【0007】
ところで、地上デジタルテレビ放送は、従来のアナログテレビ放送と異なり、テレビからクイズ番組に参加したり、テレビショッピングや銀行振り込みなどをテレビを通じて利用したりする、いわゆる双方向サービスを受けることができるものである。
【0008】
この地上デジタルテレビ放送を携帯電話機等で視聴可能にした場合、表示部で画像を見ながら、操作部でキー操作をする必要がさらに高まる。
【0009】
しかしながら、上記特許文献1のものでは、蓋体には、簡単な操作キーしか設けられておらず、また、蓋体をスライドさせて表示部を現出させた状態で横長状態にして持つと、操作部も90度回転した状態となるので、操作キーに表された表示も90度回転した状態で見ることになり、また、普段とは異なる操作キーの配置であるため、入力操作が極めて困難になるという問題があった。
【0010】
そこで、例えば、特許文献2では、携帯電話機をダイヤルボタン等のボタン群及び各種電子回路を収納した本体と、本体に重ねて取り付けるよう該本体と同じサイズを持つディスプレイ部とで構成している。本体は、その表面側の上部に突起の上に円形の板が付けられたピンを備え、ディスプレイ部は、その裏面の縦長の方向に上端からほぼ中央の位置まで断面が上記本体に設けたピンと嵌合するT字型の溝により構成するカム部を備え、本体のピンに前記ディスプレイ部のカム部を挿入してスライド可能な構造にするよう構成されている。
【0011】
このような携帯電話機では、テレビショッピングなどの双方向サービスのテレビ放送を受信する場合や英文メールを作成するような場合、表示部を横長状態とした状態で、通常のキー操作が行えるという利点がある。
【特許文献1】特開2006−115109号公報
【特許文献2】特開2003−338866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献2の携帯電話機では、ディスプレイ部のスライド移動や回転の中心であるピンは、本体の上端に位置し、また、1本のピンのみでディスプレイ部が片持ちでスライド移動及び回転するためにバランスが悪く、経年的にはグラツキが大きくなるという問題がある。また、ピンが本体の上端にあることから、ディスプレイ部を横長状態にしたときにディスプレイ部の上端が本体の上端からさらに上に配置され、机上に放置したときの安定感が悪いという問題がある。
【0013】
逆に、ピンを本体の上端から下に下げて安定感を増すようにすると、操作部の領域を狭くしなければならず、理想のボタン配置が望めなくなって操作性が悪くなる。これを防ぐためには、製品の外形を大きくせざるを得ず、そうすると携帯性が悪化するという問題がある。
【0014】
本発明は、かかる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、全体のコンパクト性を図りながら、第1の筐体を安定してスライド移動及び縦長状態と横長状態とに切換操作可能に支持し、第1の筐体を横長状態としたときに、通常のキー配置で操作が可能なスライド式の携帯機器を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、この発明では、レール部上をスライド自在な第1の筐体を、第2の筐体に対してさらに縦長状態と横長状態とに切換操作可能に支持する支持機構を設けた。
【0016】
具体的には、第1の発明では、表面に上下方向に長い縦長の表示部を有する第1の筐体と、
表面に操作部を有する第2の筐体と、
上記第1の筐体と第2の筐体とをスライド自在に連結するスライド機構とを備えたスライド式携帯機器を対象とし、
上記スライド機構は、上記第2の筐体表面に上下方向に延びるように設けたレール部を備え、上記第1の筐体を第2の筐体の上端側へスライド移動させたときに、上記第2の筐体の操作部が現れるように構成され、
上記スライド式携帯機器は、上記第1の筐体を第2の筐体に対して縦長状態と横長状態とに切換操作可能に支持する支持機構を備えている。
【0017】
上記の構成によると、第1の筐体は、スライド機構のレール部により、第2の筐体の上端側へ安定してスライド移動した後、第2の筐体の操作部が現れ、通話やメール通信が可能となる。さらに、支持機構により、第1の筐体が第2の筐体に対して縦長状態と横長状態とに切換操作可能となるので、表示部を現出させた状態で第1の筐体を横長状態に切り換えることで、横長状態の画面を見ながら、通常のキー配置で操作が可能となる。
【0018】
第2の発明では、上記スライド機構は、上記第1の筐体の裏面と上記第2の筐体の表面との間に設けられ、上記レール部上をスライド移動するプレート部を備え、
上記支持機構は、上記プレート部に設けられている。
【0019】
上記の構成によると、レール部上をスライド移動するプレート部に支持機構を設ける構造とすることで、簡単な構造で確実にスライド移動及び縦長状態又は横長状態に切換操作が可能となる。また、プレート部や支持機構が第1の筐体の裏面と第2の筐体の表面との間の限られたスペースに設けられるので、スライド式携帯機器がコンパクトなものとなる。
【0020】
第3の発明では、上記支持機構は、カム機構によって構成されている。
【0021】
上記の構成によると、カム機構の溝形状や配置を工夫することにより、適切な第1の筐体の切換操作における回転移動の軌跡の制御が可能となり、スライド式携帯機全体のコンパクト化が可能となる。
【0022】
第4の発明では、上記カム機構は、第1の筐体の下端側コーナー部が直線状の軌跡でもって移動するように上記第1の筐体の縦長状態と横長状態との切換を案内支持するものである。
【0023】
上記の構成によると、第1の筐体の縦長状態と横長状態との切換における軌跡が直線状となるので、第1の筐体の縦長状態と横長状態との切換時の動きが滑らかになり、切換操作が容易となる。
【0024】
第5の発明では、上記第1の筐体の縦長状態と横長状態とにおける左右方向中央部が、それぞれ第2の筐体の略左右方向中央に位置している。
【0025】
上記の構成によると、第1の筐体が横長状態においても、該第1の筐体が第2の筐体の略左右方向中央に位置するので、片手に持ったときや机上に載置したときに安定性がよく、また、見映えもよい。
【0026】
第6の発明では、上記第1の筐体が横長状態となったときに、下側に操作部が現出し、表面から見たときに略T字型となる。
【0027】
上記の構成によると、横長状態の表示部を見ながら、片手で第2の筐体を持ち、通常のキー配置で操作が行われる。
【0028】
第7の発明では、上記第1の筐体を縦長状態から横長状態に切り換えたときに、横長状態の第1の筐体の上辺と第2の筐体の上辺とが一致する。
【0029】
上記の構成によると、第1の筐体が横長状態のときに第1の筐体が第2の筐体の上端からはみ出さないので、机上においても安定し、かつ見映えがよい。
【0030】
第8の発明では、上記カム機構は、
上記プレート部に設けられ略左右方向に延びかつ中凸状に湾曲した曲線状の左右方向ガイド溝と、
上記プレート部に設けられ略上下方向に延びる上下方向ガイド溝と、
上記第1の筐体の裏面側に設けられ上記左右方向ガイド溝にスライド自在に係合する第1ガイドピンと、
上記第1の筐体の裏面側に設けられ上記上下方向ガイド溝にスライド自在に係合する第2ガイドピンとを備えている。
【0031】
上記の構成によると、カム機構により、第1の筐体の第1ガイドピンが左右方向ガイド溝に係合した状態で左右方向にスライド移動するのと同時に、第1の筐体の第2ガイドピンが上下方向ガイド溝に係合した状態で上下方向にスライド移動する。このカム機構による移動規制により、第1の筐体は、その下端側コーナー部が直線状の軌跡でもって移動するように縦長状態又は横長状態に切り換えられる。また、カム機構により、一度に上下方向の移動と回転方向の移動とが行われるので、第1及び第2ガイドピンを第2の筐体の上端側に配置する必要がなく、これら第2の筐体の中間部に配置された2本のガイドピンで第1の筐体が第2の筐体に支持されるので、第1の筐体のグラツキが確実に防止される。
【0032】
第9の発明では、上記第1の筐体が第2の筐体に対してスライド移動する間に、該第1の筐体が縦長状態から横長状態に切り換わるのを規制する第1規制部材を備えている。
【0033】
上記の構成によると、第1規制部材により第1の筐体のスライド移動の途中に第1の筐体が回転することはないので、スライド移動が安定して確実に行われる。
【0034】
第10の発明では、上記第1の筐体の裏面には、回転防止用突起が突設され、
上記第1規制部材は、上記回転防止用突起の動きを規制するように構成されている。
【0035】
上記の構成によると、第1規制部材が第1の筐体の裏面に設けた回転防止用突起の動きを規制するので、第1の筐体がスライド移動の途中に回転することはなく、スライド移動が安定して確実に行われる。
【0036】
第11の発明では、上記第1規制部材は、上記第2の筐体の表面に設けられた直線状の規制用突条よりなり、
上記回転防止用突起の近傍に位置して第1の筐体が縦長状態から横長状態に切り換わるのを規制するように構成されている。
【0037】
上記の構成によると、簡単な構成で回転防止用突起の規制を行え、スライド移動が安定して確実に行われる。
【0038】
第12の発明では、上記第1の筐体が第2の筐体に対してスライド移動する間に、上記回転防止用突起が、上記規制用突条の近傍をスライド移動し、
上記スライド移動が完了すると上記回転防止用突起が上記規制用突条から離れるように構成されている。
【0039】
上記の構成によると、第1の筐体がスライド移動しているときには、第1の筐体を縦長状態から横長状態に切り換えようとすると、回転防止用突起が規制用突条に当接するので、その移動が規制され、第1の筐体が横長状態に切り換わることはない。一方、スライド移動が完了して回転防止用突起が規制用突条から離れることにより、回転防止用突起の規制が解除されて移動が可能となるので、第1の筐体が縦長状態から横長状態に切り換え可能となる。
【0040】
第13の発明では、上記回転防止用突起は、上記第1ガイドピン及び第2ガイドピンよりも上記第2の筐体側へ突出している。
【0041】
上記の構成によると、規制用突条の高さを第1ガイドピン及び第2ガイドピンには接触せず、回転防止用突起には接触するようにすることで、簡単な構成により、スライド移動の途中には第1の筐体が縦長状態から横長状態に切り換わるのを規制しながら、スライド移動後には第1の筐体の切換操作を可能とすることができる。
【0042】
第14の発明では、上記プレート部は、上記回転防止用突起との接触を防止するめに上側が開放した接触防止用開口を備えている。
【0043】
上記の構成によると、回転防止用突起が第1の筐体を横長状態又は縦長状態に切換途中にプレート部と接触するのが防止される。また、切り欠いた部分の軽量化及びコンパクト化が可能となる。
【0044】
第15の発明では、上記第1の筐体のスライド移動を完了させて縦長状態から横長状態に切り換えた状態では、第1の筐体が再びスライド移動するのを規制する第2規制部材を備えている。
【0045】
上記の構成によると、第1の筐体が横長状態となったときに、第2規制部材によって第1の筐体が再びスライド移動することはないので、横長状態が確実に保持される。このため、横長状態での操作性がよくなる。一方、横長状態から縦長状態に戻した後には、スライド移動が可能になるようにすればよい。
【0046】
第16の発明では、上記第2規制部材は、第1ガイドピンの動きを規制するように構成されている。
【0047】
上記の構成によると、第1の筐体の切換操作において左右に移動する第1ガイドピンを第2規制部材で規制するようにすることで、横長状態に切り換えた状態では、第1の筐体が再びスライド移動するのを規制しながら、第1の筐体が横長状態から縦長状態に戻ることで第1ガイドピンが移動して第2規制部材から離れ、第1の筐体がスライド可能となる。このように、第1の筐体のスライド移動の解除が容易に可能となる。
【0048】
第17の発明では、上記第2規制部材は、第1の筐体が横長状態のときの第2の筐体における第1ガイドピンの近傍に突設された規制用突起よりなり、第1の筐体が下方へスライド移動をするのを規制するように構成されている。
【0049】
上記の構成によると、第1の筐体の切換操作で左右に移動する第1ガイドピンを突起よりなる第2規制部材で下側に移動しないように規制することで、第1の筐体のスライド移動が防止される。第2規制部材は、突起よりなるので、小さなスペースを占有すればよいだけであり、第1の筐体の切換操作やスライド移動において第2規制部材が、これらの動きの妨げとなることが防止される。
【0050】
第18の発明では、上記上下方向ガイド溝は、上記レール部に対して平行とする。
【0051】
第19の発明では、上記上下方向ガイド溝は、上記レール部に対して傾斜している。
【0052】
上記の構成によると、上下方向ガイド溝の傾斜角度を調整することで、左右方向ガイド溝を円弧状にすることができる。このため、第1の筐体の切り換え動作が滑らかになる。また、上下方向ガイド溝を傾斜させることで、上下方向ガイド溝を形成する部材を上下方向ガイド溝の近傍までカットでき、その部分の軽量化及びコンパクト化が可能となる。
【0053】
第20の発明では、上記上下方向ガイド溝は、湾曲する曲線形状を有している。
【0054】
上記の構成によると、上下方向ガイド溝を適宜湾曲させ、それに合わせて左右方向ガイド溝の形状を調整することで、第1の筐体の動きを滑らかにしたり、上下方向ガイド溝を形成する部材をカットして、その部分の軽量化及びコンパクト化を図ったりすることが可能となる。
【0055】
第21の発明では、上記支持機構には、一端が上記第1ガイドピンに固定され、他端が上記プレート部に固定され、第1の筐体が縦長状態又は横長状態となるように付勢する弾性部材が設けられている。
【0056】
上記の構成によると、第1の筐体に対する弾性部材の付勢力のかかり方を調整することで、第1の筐体を縦長状態から横長状態へ若しくは横長状態から縦長状態への切換、又はその両方の切換が弾性部材によってアシストされる。
【0057】
第22の発明では、上記弾性部材は、上記左右方向ガイド溝の最上点近傍で最も圧縮されるように配置されている。
【0058】
上記の構成によると、左右方向ガイド溝の最上点近傍で弾性部材の力が最も蓄えられ、この最上点を超えることで、縦長状態から横長状態へ若しくは横長状態から縦長状態への切換が弾性部材によってアシストされる。
【0059】
第23の発明では、上記弾性部材は、ねじりコイルバネである。
【0060】
上記の構成によると、簡単かつ壊れにくい構成により、弾性部材が実現される。
【0061】
第24の発明では、上記支持機構は、リンク部材を備え、該リンク部材の裏面側に上記第1ガイドピンと第2ガイドピンとが設けられ、表面側が上記第1の筐体に取り付けられる。
【0062】
上記の構成によると、リンク部材を第1の筐体に取り付けることで、第1ガイドピンと第2ガイドピンとが第1の筐体の定位置に取り付けられる。
【0063】
第25の発明では、上記プレート部とリンク部材とは、ユニット組立されている。
【0064】
上記の構成によると、プレート部とリンク部材とをユニット組立することで、第1ガイドピンと第2ガイドピンとを各ガイド溝内に精度よく配置できるとともに、支持機構が第1の筐体に容易に組み付けられる。また、プレート部をレール部に嵌め込むことで、第1の筐体が第2の筐体に容易に組み付けられる。
【0065】
第26の発明では、上記プレート部は、板金よりなる。
【0066】
上記の構成によると、加工が容易で安価である。
【0067】
第27の発明では、上記プレート部は、マグネシウム合金の成型品よりなる。
【0068】
上記の構成によると、剛性が高くて耐久性のある軽量薄型のプレート部が得られ、ガイド溝を形成しても全体の強度が保たれる。
【0069】
第28の発明では、上記表示部は、液晶ディスプレイを備えている。
【0070】
上記の構成によると、液晶ディスプレイは、有機ELディスプレイに比べて安価で寿命が長い。
【0071】
第29の発明では、上記表示部は、有機ELディスプレイを備えている。
【0072】
上記の構成によると、有機ELディスプレイは、自発光を発するため消費電力が小さく、液晶ディスプレイに比べて視野角が広く、かつバックライトを必要としないため、薄型化が可能である。
【0073】
第30の発明では、スライド式携帯機器は、携帯通信機器とする。
【0074】
上記の構成によると、横長状態の表示部を見ながら通常のキー配置で操作が可能なスライド式の携帯通信機器が得られる。
【0075】
第31の発明では、携帯通信機器は、携帯電話機とする。
【0076】
上記の構成によると、携帯性やデザインが重視される携帯電話機において、コンパクトで操作性がよく、快適にテレビ視聴が可能となる。
【発明の効果】
【0077】
以上説明したように、本発明によれば、全体のコンパクト性を図りながら、第1の筐体を安定してスライド移動及び縦長状態と横長状態とに切換操作可能に支持し、第1の筐体を横長状態としたときに、通常のキー配置で操作が可能なスライド式の携帯機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0078】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0079】
図1は、スライド前状態にある本発明の実施形態にかかるスライド式携帯機器としてのスライド式携帯電話機1を示す正面図と右側面図である。図2は、第1の筐体3を第2の筐体5に対しスライド移動したスライド後状態を示す正面図と右側面図である。図3は、図2のスライド後状態の後、第1の筐体3を縦長状態から横長状態に切り換える途中の状態を示す正面図と右側面図である。図4は、第1の筐体3を縦長状態から横長状態に切り換えた状態を示す正面図と右側面図である。
【0080】
本実施形態のスライド式携帯電話機1は、表面に表示部としての液晶表示部2を有する第1の筐体3と、表面に操作部4を有する第2の筐体5とを備えている。これら第1の筐体3と第2の筐体5とは、スライド機構25によって第2の筐体5の長さ方向(上下方向)に沿ってスライド自在に連結されている。第1の筐体3と第2の筐体5とは、図示しない接続手段により、電気的に接続されている。このことで、スライド式携帯電話機1は、図1に示すコンパクトなスライド前状態と図2に示すスライド後状態とに切換可能となっている。
【0081】
上記第1の筐体3は、縦長状態における下端部が直線状に形成されている。上記液晶表示部2は、上下方向に長い縦長矩形状であり、第1の筐体3の表面の大部分を占めるように配置されている。第1の筐体3が縦長状態における上端側に会話用のスピーカ部(図示せず)が設けられている。なお、第1の筐体3の各角部は下端側コーナー部3aを含め、デザイン上又は安全上の観点から丸面取りされている。
【0082】
上記第2の筐体5の操作部4には、下側に複数の入力ボタン7が設けられ、その上側に機能ボタン8が設けられている。これら入力ボタン7及び機能ボタン8は、スライド式携帯電話機1全体を縦長に持ったときにキー入力できるように配置され、かつその表面に表示が付されている。この入力ボタン7及び機能ボタン8を操作することで、スライド式携帯電話機1の多数の機能が利用されるようになっている。操作部4は、第1の筐体3を第2の筐体5に対して上方へスライド移動させたときに現出するように構成されている。また、第2の筐体5には、図示しない会話用のマイク部が設けられている。
【0083】
図2及び図4に示すように、このスライド式携帯電話機1では、液晶表示部2が縦長状態と横長状態とのいずれにおいても、ユーザは液晶表示部2を見ながら同じ縦状態の配置の操作部4の入力ボタン7及び機能ボタン8を操作できるようになっている。つまり、第1の筐体3が横長状態となったときにも、下側に操作部4が現出し、表面から見たときに略T字型となり、横長状態の液晶表示部2を見ながら、片手で第2の筐体5を持ち、通常のキー配置で操作が行えるようになっている。また、上記第1の筐体3の縦長状態と横長状態とにおける左右方向中央部が、それぞれ第2の筐体5の略左右方向中央に位置している。さらに、横長状態の第1の筐体3の上辺3b(縦長状態における左辺)と第2の筐体5の上辺5aとは、一致し、見映えのよいものとなっている。
【0084】
図5に示すように、上記スライド機構25は、上記第2の筐体5の表面に上下方向に延びるレール部26を備えている。このレール部26は、第2の筐体5の表面から突出した一対の平行な棒状部材26aと、この棒状部材26aの内側に設けたの凹状溝26bとを備えている。スライド機構25は、上記第1の筐体3の裏面と上記第2の筐体5の表面との間に設けられ、上記レール部26上をスライド移動するプレート部16を備えている。図9に示すように、このプレート部16は、例えば、板金よりなる。板金であれば、加工が容易で安価である。このプレート部16は、左右に裏面側に折り曲げられた折曲部16aを有し、該折曲部16aを上記レール部26に嵌め込むことで、プレート部16がレール部26上を上下にスライド移動可能とされ、かつレール部26から抜け止めされている。例えば、レール部26の上下端部にストッパー26cを設けることで、そのスライド移動の範囲が規制される。プレート部16に第1の筐体3が支持機構としてのカム機構10を介して支持され、この第1の筐体3を第2の筐体5の上端側へスライド移動させたときに、第2の筐体5の操作部4が現れるように構成されている。
【0085】
図6は、第1の筐体が上にスライド移動した状態と各ピンや突起の移動した位置を示す。図7は、第1の筐体が上にスライド移動した後、時計回り方向に回転した状態を示す。図8は、第1の筐体が図7の状態からさらに時計回りに回転し、縦長状態から横長状態に切り換えられた状態を示す。
【0086】
図6〜図9に示すように、上記カム機構10は、上記プレート部16に設けられている。カム機構10により、第1の筐体3が縦長状態と横長状態とに切換操作可能に支持されている。カム機構10は、プレート部16に設けられ左右方向に延びかつ中凸状に湾曲した曲線状の左右方向ガイド溝12と、プレート部16に設けられ上下方向に延びる直線状の上下方向ガイド溝14と、第1の筐体3の裏面側に設けられ上記左右方向ガイド溝12にスライド自在に係合する第1ガイドピン13と、第1の筐体3の裏面側に設けられ上記上下方向ガイド溝14にスライド自在に係合する第2ガイドピン15とを備えている。
【0087】
すなわち、左右方向ガイド溝12は、中凸状に湾曲した曲線状開口で構成され、スライド式携帯電話機1を表面から見たときに、その中心部が第1の筐体3の左側にオフセットして配置されている。上下方向ガイド溝14は、左右方向ガイド溝12の中凸形状の最上部の上側に設けられた直線状開口の周縁部よりなる。第1の筐体3が縦長状態にあるときに、第2ガイドピン15は、スライド式携帯電話機1の表面側から見て第1の筐体3の中央から若干左下側にオフセットした位置に配置されている。
【0088】
一方、上記第1の筐体3の背面には、金属製のリンク部材18が装着されている。このリンク部材18は、第1の筐体3の裏面側に締結又は位置決めするための貫通孔18aが設けられた板状の取付部18bと、この取付部18bから側面視L字状に連続する先端部18cとを有している。上記第1ガイドピン13は、リンク部材18の一端側、すなわち、取付部18bの先端にプレート部16側へ垂直に延びるように設けられている。上記第2ガイドピン15は、上記リンク部材18の他端側、すなわち、先端部18cの端部にプレート部16側へ垂直に延びるように設けられている。これらガイドピン13,15は、先端にガイド溝12,14よりも大径の環状部13a,15aが形成されている。この環状部13a,15aがガイド溝12,14の周縁をそれぞれ摺動するようになっている。このことで、ガイドピン13,15がガイド溝12,14から抜け止めされ、第1の筐体3がプレート部16から外れないようになっている。第1ガイドピン13の環状部13aは、第2ガイドピン15の環状部15aよりもさらに裏側へ突出している。
【0089】
このように、リンク部材18は、裏面側に上記第1ガイドピン13と第2ガイドピン15とが設けられ、表面側を貫通孔18aに挿通したビス40で締結することで上記第1の筐体3に取り付けられる。リンク部材18を第1の筐体3に取り付けることで、第1ガイドピン13と第2ガイドピン15とが第1の筐体3の定位置に取り付けられる。
【0090】
図9に示すように、上記上下方向ガイド溝14は、上記レール部26(折曲部16a)に対して傾斜している。また、プレート部16の上側中央には、上端が開放された接触防止用開口16bが形成されている。このように、上下方向ガイド溝14の傾斜角度を調整することで、左右方向ガイド溝12を円弧状にすることができ、このことで、第1の筐体3の切り換え動作が滑らかになる。また、上下方向ガイド溝14を傾斜させているので、接触防止用開口16bを設けた場合でも、上下方向ガイド溝14と接触防止用開口16bとの間に補強を設けやすい。上記プレート部16の下側中央表面には、バネ固定ピン19が表面側へ突出するように設けられている。
【0091】
図6乃至図8に示すように、上記カム機構10には、一端20aが上記第1ガイドピン13に固定され、他端20bがバネ固定ピン19に固定され、第1の筐体3が縦長状態又は横長状態となるように付勢する弾性部材としてのねじりコイルバネ20が設けられている。ねじりコイルバネ20は、バネ固定ピン19を中心に左右に揺動可能に支持され、その弾性力により、第1の筐体3が縦長状態から横長状態となるのを付勢し、かつ縦長状態から横長状態となるのを付勢するように構成されている。あるいは、縦長状態又は横長状態になるときのみを優先して付勢するようにしてもよい。このようにすることで、ユーザは片手のみでワンタッチで縦長状態又は横長状態に切り換えることも可能となる。
【0092】
また、ねじりコイルバネ20は、上記左右方向ガイド溝12の最上点近傍(図7に示す)で最も圧縮されるように配置されている。このことで、左右方向ガイド溝12の最上点近傍でねじりコイルバネ20の力が最も蓄えられ、この最上点を超えることで、縦長状態から横長状態へ若しくは横長状態から縦長状態への切換がねじりコイルバネ20によってアシストされる。
【0093】
このように、レール部26上をスライド移動するプレート部16にカム機構10を設ける構造とすることで、簡単な構造で確実にスライド移動及び縦長状態又は横長状態に切換操作が可能となる。また、プレート部16やカム機構10が第1の筐体3の裏面と第2の筐体5の表面との間の限られたスペースに設けられるので、スライド式携帯電話機1がコンパクトなものとなる。
【0094】
プレート部16とリンク部材18とねじりコイルバネ20とは、ユニット組立可能に構成されている。このユニット組立されたカム機構10を第1の筐体3に取り付けるようにすることで、カム機構10の組み付けが容易となると共に、第1ガイドピン13と第2ガイドピン15とが各ガイド溝12,14内に精度よく配置される。また、プレート部16をレール部26に嵌め込むことで、第1の筐体3が第2の筐体5に容易に組み付けられる。また、カム機構10を金属部材で構成することで、その動きがスムーズとなり、かつその剛性を向上させることができる。
【0095】
第2の筐体5の表面には、第1規制部材としての規制用突条30が形成されている。規制用突条30は、上下方向に一定高さで延びる直線状の突条よりなり、第1の筐体3が第2の筐体5に対してスライド移動する間に、第1の筐体3が縦長状態から横長状態に切り換わるのを規制するものとなっている。一方、第1の筐体3の表面から見て中心より若干左寄りの裏面には、回転防止用突起31が突設されている。回転防止用突起31は、上記第1ガイドピン13及び第2ガイドピン15よりも第2の筐体5側へ突出している。
【0096】
このように構成することで、規制用突条30は、回転防止用突起31の近傍に位置し、回転防止用突起31の動きを規制することで、第1の筐体3が縦長状態から横長状態に切り換わるのを規制するように構成されている。具体的には、第1の筐体3が第2の筐体5に対してスライド移動する間に、回転防止用突起31が、規制用突条30の近傍をスライド移動し、その間は回転防止用突起31が規制用突条30に当接して左方へ移動できないことから、第1の筐体3の回転が規制され、スライド移動が完了すると回転防止用突起31が規制用突条30から離れて左方へ移動可能となり、第1の筐体3の回転規制が解除されるように構成されている。このように簡単な構成で回転防止用突起31の規制が行われるようになっている。
【0097】
また、プレート部16には、上記接触防止用開口16bが形成されているので、プレート部16と回転防止用突起31との接触が防止されている。また、接触防止用開口16bを切り欠いているので、その部分の軽量化及びコンパクト化が可能となり、また、回転防止用突起31が第1の筐体3を横長状態又は縦長状態に切換途中にプレート部16と接触するのが防止される。
【0098】
第1の筐体3が横長状態のときの第1ガイドピン13の近傍に位置する第2の筐体5の表面には、第2規制部材としての規制用突起35が突出するように設けられている。この規制用突起35は、第1ガイドピン13の動きを規制し、そのことで、第1の筐体3がスライド移動をするのを規制するように構成されている。つまり、第1の筐体3のスライド移動を完了させて縦長状態から横長状態に切り換えた状態では、規制用突起35が第1のガイドピン13の環状部13aに当接することにより、第1の筐体3が再び下方へスライド移動するのが規制されている。
【0099】
−作用−
次に、本実施形態にかかるスライド式携帯電話機1の作動について説明する。
【0100】
まず、図1に示すように、スライド式携帯電話機1が待機状態のときなどには、第1の筐体3が第2の筐体5に対してスライド移動されていないスライド前状態にある。このとき、液晶表示部2が表面に現れているので、この状態でもテレビ視聴は可能である。
【0101】
次いで、図2に示すように、第1の筐体3を第2の筐体5に対して上側にスライド移動する。この第1の筐体3がスライド移動している途中に第1の筐体3を縦長状態から横長状態に切り換えようとすると、図5に示すように、回転防止用突起31が規制用突条30に当接するので、回転防止用突起31の左方への移動が規制され、第1の筐体3が横長状態に切り換わることはない。このため、スライド移動が安定して確実に行われる。また、プレート部16が第2の筐体5のレール部26上をスライド移動することで、カム機構10を介して支持された第1の筐体3が第2の筐体5の上側にスライド移動し、操作部4が現出する。通常の通話時やメール送受信時などには、液晶表示部2を縦長状態とし、操作部4でキー入力しながら使用する。
【0102】
一方、地上デジタルテレビ放送の視聴や英文でメールを作成したり読んだりするときなど横長画像を見たいときには、ユーザが操作部4を現出させた状態で第1の筐体3を回転させ縦長状態から横長状態に切り換える。このとき、図6に示すように、スライド移動が完了して回転防止用突起31が規制用突条30から離れることにより、回転防止用突起31の規制が解除されて左方への移動が可能となっている。つまり、第1の筐体3が縦長状態から横長状態に切り換え可能となっている。規制用突条30の高さを第1ガイドピン13及び第2ガイドピン15には接触せず、回転防止用突起31には接触するようにすることで、簡単な構成により、スライド移動の途中には第1の筐体3が縦長状態から横長状態に切り換わるのを規制しながら、スライド移動後には第1の筐体3の切換操作を可能とすることができる。
【0103】
まず、ユーザは図6の状態にある第1の筐体3をねじりコイルバネの付勢力に抗して表面から見て時計回りに回転させて、下端側コーナー部3aを図7に示す位置まで移動させる。このとき、スライド式携帯電話機1の表面から見て上下方向ガイド溝14の下端にあった第2ガイドピン15が上端に移動し、左右方向ガイド溝12の右端にあった第1ガイドピン13が中央に移動する。
【0104】
次いで、ねじりコイルバネの最大たわみ角を超えると、その付勢力によって第1の筐体3がアシストされながら、横長状態に切り換えられる。このとき、図7及び図8に示すように、スライド式携帯電話機1の表面から見て上下方向ガイド溝14の上端にあった第2ガイドピン15が下端に移動し、左右方向ガイド溝12の中央にあった第1ガイドピン13が左端に移動する。
【0105】
このように、カム機構10により、第1の筐体3背面の第1ガイドピン13が左右方向ガイド溝12内を左方へスライド移動するのと同時に、第1の筐体3背面の第2ガイドピン15が上下方向ガイド溝14内を上下にスライド移動する。
【0106】
図10に、下端側コーナー部3aがカム機構10による移動規制により、描いた軌跡を示す。切換時の最下端部は、機能ボタン8との間に所定の隙間を保った直線状の軌跡でもって移動するように案内支持される。このため、第1の筐体3がこの軌跡よりも下側へ移動することはないので、第1の筐体3が機能ボタン8に接触することはない。また、第1の筐体3の縦長状態と横長状態との切換時の動きが滑らかになり、切換操作が容易となる。
【0107】
図4に示す横長状態でも、上記第1の筐体3の左右方向中央部は、第1の筐体3の略左右方向中央に位置している。第1の筐体3が横長状態となったときに、下側に操作部4が現出し、表面から見たときに略T字型となる。そして、液晶表示部2に横長画像が大きく表示されるように設定して、操作部4でキー入力しながら、テレビからクイズ番組に参加したり、テレビショッピングや銀行振り込みなどをテレビを通じて利用したりする。第1の筐体3が横長状態においても、第1の筐体3が第2の筐体5の略左右方向中央に位置する。さらに、図4に示すように、上記第1の筐体3を縦長状態から横長状態に切り換えたときに、横長状態の第1の筐体3の上辺3bと第2の筐体5の上辺5aとが一致する。このことで、第1の筐体3が横長状態のときに第1の筐体3が第2の筐体5の上端からはみ出さない。このため、片手に持ったときや机上に載置したときに安定性がよく、また、見映えもよい。
【0108】
第1の筐体3が横長状態となったときに、第1の筐体3の切換操作で左右に移動する第1ガイドピン13の環状部13aが規制用突起35に当接して下側に移動しないように規制される。このことで、第1の筐体3のスライド移動が防止される。第1ガイドピン13がこの位置にある限り、規制用突起35によって第1の筐体3が再びスライド移動することはないので、横長状態が確実に保持される。このため、横長状態での操作性がよくなる。規制用突起35は、突起よりなるので、小さなスペースを占有すればよいだけであり、第1の筐体3の切換操作やスライド移動において規制用突起35が、これらの動きの妨げとなることが防止される。
【0109】
一方、横長状態から縦長状態に戻した後には、第1ガイドピン13が右側へ移動し、規制用突起35から離れるので、第1の筐体3は、下方へスライド移動が可能になる。このように、第1の筐体3のスライド移動の解除は、容易に行える。
【0110】
そして、使用後は、上記とは反対に、第1の筐体3の右側の上記下端側コーナー部3aをねじりコイルバネ20の付勢力に抗するように、表面から見て反時計回りに回動させ、ねじりコイルバネ20がその最大たわみ角を超えると、その付勢力によって第1の筐体3がアシストされながら、縦長状態に戻る。
【0111】
そして、第1の筐体3を第2の筐体5に対して下側にスライド移動させ、待機状態とする。
【0112】
したがって、本実施形態にかかるスライド式携帯電話機1によると、全体のコンパクト性を図りながら、第1の筐体3を安定してスライド移動及び縦長状態と横長状態とに切換操作可能に支持し、第1の筐体3を横長状態としたときに、通常のキー配置で操作が可能となる。
【0113】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0114】
すなわち、上記実施形態では、上下方向ガイド溝14は、レール部26に対して傾斜しているものとしたが、レール部26に対して平行に設けてもよい。また、図11に示すように、上下方向ガイド溝14は、湾曲する曲線形状を有していてもよい。このことで、上下方向ガイド溝14を適宜湾曲させ、それに合わせて左右方向ガイド溝12の形状を調整することで、第1の筐体3の動きを滑らかにしたり、上下方向ガイド溝14を形成する部材をカットして、その部分の軽量化及びコンパクト化を図ったりすることが可能となる。
【0115】
上記実施形態では、カム機構10によって、第1の筐体3を、その下端側コーナー部3aが直線状の軌跡でもって移動するように案内支持しているが、曲線的な軌跡でもって移動するようにしてもよい。
【0116】
上記実施形態では、カム機構10は、第1の筐体3を表面から見て時計回りに縦長状態から横長状態に切り換えているが、反時計回りに切り換えるようにしてもよい。
【0117】
このように、カム機構10の溝形状や配置を工夫することにより、適切な第1の筐体3の切換操作における回転移動の軌跡の制御が可能となる。
【0118】
また、上記実施形態では、第1の筐体3の縦長状態及び横長状態における左右方向中央部を第1の筐体3の略左右方向中央に位置させているが、左右のいずれかにオフセットさせてもよい。
【0119】
上記実施形態では、表示部は、液晶表示部2としたが、有機ELディスプレイよりなるものでもよい。有機ELディスプレイは、自発光を発するため消費電力が小さく、液晶ディスプレイに比べて視野角が広く、かつバックライトを必要としないため、薄型化が可能である。
【0120】
上記プレート部16は、マグネシウム合金の成型品よりなるものとしてもよい。このことで、剛性が高くて耐久性のある軽量薄型のプレート部16が得られ、ガイド溝12,14や接触防止用開口16bを形成しても全体の強度が保たれる。
【0121】
上記実施形態では、スライド式携帯機器は、携帯電話機としたが、PHS、PDA、PC、モバイルツールの携帯通信機器等であってもよい。要は、第1の筐体3と第2の筐体5とがスライド自在に連結され、縦長の表示部を有する携帯機器であればよい。
【0122】
上記実施形態では、表面に上下方向に長い縦長の液晶表示部2を有する第1の筐体3を備えたスライド式携帯電話機1を対象としているが、表面に左右方向に長い横長の液晶表示部2を有する第1の筐体3を備えたスライド式携帯機器であってもよい。この場合には、スライド機構は、第2の筐体表面に左右方向に延びるように設けたレール部を備え、第1の筐体を第2の筐体の右端側又は左端側へスライド移動させたときに、第2の筐体の操作部が現れるように構成し、第1の筐体を第2の筐体に対して横長状態と縦長状態とに切換操作可能に支持する支持機構を設ければよい。これにより、通常の横長状態でのキー操作を表示部を縦長としながら行うこともできる。
【0123】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0124】
以上説明したように、本発明は、第1の筐体と第2の筐体とがスライド自在に連結された表示部を有するスライド式携帯機器について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】スライド前状態にある本発明の実施形態にかかるスライド式携帯電話機を示し、(a)が正面図で、(b)が右側面図である。
【図2】第1の筐体を第2の筐体に対しスライドしたスライド後状態を示し、(a)が正面図で、(b)が右側面図である。
【図3】図2のスライド後状態の後、第1の筐体を縦長状態から横長状態に切り換える途中の状態を示し、(a)が正面図で、(b)が右側面図である。
【図4】第1の筐体を縦長状態から横長状態に切り換えた状態を示し、(a)が正面図で、(b)が右側面図である。
【図5】スライド前状態にあるスライド式携帯電話機の第1の筐体を外したときを示し、(a)が正面図で、(b)が底面図である。
【図6】第1の筐体が上にスライド移動した状態と各ピンや突起の移動した位置を示し、(a)が正面図で、(b)が底面図である。
【図7】第1の筐体が上にスライド移動した後、時計回り方向に回転した状態を示し、(a)が正面図で、(b)が底面図である。
【図8】第1の筐体が図7の状態からさらに時計回りに回転し、縦長状態から横長状態に切り換えられた状態を示し、(a)が正面図で、(b)が底面図である。
【図9】プレート部の正面図である。
【図10】第1の筐体の下端側コーナー部の軌跡を示す説明図である。
【図11】その他の実施形態にかかる上下方向ガイド溝と左右方向ガイド溝の形状を示す図9相当図である。
【符号の説明】
【0126】
1 スライド式携帯電話機(スライド式携帯機器)
2 液晶表示部(表示部)
3 第1の筐体
3a 下端側コーナー部
3b 上辺
4 操作部
5 第2の筐体
5a 上辺
10 カム機構(支持機構)
12 左右方向ガイド溝
13 第1ガイドピン
14 上下方向ガイド溝
15 第2ガイドピン
16 プレート部
16b 接触防止用開口
18 リンク部材
20 コイルバネ(弾性部材)
25 スライド機構
26 レール部
30 規制用突条(第1規制部材)
31 回転防止用突起
35 規制用突起(第2規制部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に上下方向に長い縦長の表示部を有する第1の筐体と、
表面に操作部を有する第2の筐体と、
上記第1の筐体と第2の筐体とをスライド自在に連結するスライド機構とを備えたスライド式携帯機器であって、
上記スライド機構は、上記第2の筐体表面に上下方向に延びるように設けたレール部を備え、上記第1の筐体を第2の筐体の上端側へスライド移動させたときに、上記第2の筐体の操作部が現れるように構成され、
上記第1の筐体を第2の筐体に対して縦長状態と横長状態とに切換操作可能に支持する支持機構を備えている
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項2】
請求項1に記載のスライド式携帯機器において、
上記スライド機構は、上記第1の筐体の裏面と上記第2の筐体の表面との間に設けられ、上記レール部上をスライド移動するプレート部を備え、
上記支持機構は、上記プレート部に設けられている
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項3】
請求項2に記載のスライド式携帯機器において、
上記支持機構は、カム機構によって構成されている
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項4】
請求項3に記載のスライド式携帯機器において、
上記カム機構は、第1の筐体の下端側コーナー部が直線状の軌跡でもって移動するように上記第1の筐体の縦長状態と横長状態との切換を案内支持するものである
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のスライド式携帯機器において、
上記第1の筐体の縦長状態と横長状態とにおける左右方向中央部が、それぞれ第2の筐体の略左右方向中央に位置している
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項6】
請求項3又は4に記載のスライド式携帯機器において、
上記第1の筐体が横長状態となったときに、下側に操作部が現出し、表面から見たときに略T字型となる
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のスライド式携帯機器において、
上記第1の筐体を縦長状態から横長状態に切り換えたときに、横長状態の第1の筐体の上辺と第2の筐体の上辺とが一致する
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項8】
請求項3乃至7のいずれか1つに記載のスライド式携帯機器において、
上記カム機構は、
上記プレート部に設けられ略左右方向に延びかつ中凸状に湾曲した曲線状の左右方向ガイド溝と、
上記プレート部に設けられ略上下方向に延びる上下方向ガイド溝と、
上記第1の筐体の裏面側に設けられ上記左右方向ガイド溝にスライド自在に係合する第1ガイドピンと、
上記第1の筐体の裏面側に設けられ上記上下方向ガイド溝にスライド自在に係合する第2ガイドピンとを備えている
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項9】
請求項8に記載のスライド式携帯機器において、
上記第1の筐体が第2の筐体に対してスライド移動する間に、該第1の筐体が縦長状態から横長状態に切り換わるのを規制する第1規制部材を備えている
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項10】
請求項9に記載のスライド式携帯機器において、
上記第1の筐体の裏面には、回転防止用突起が突設され、
上記第1規制部材は、上記回転防止用突起の動きを規制するように構成されている
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項11】
請求項10に記載のスライド式携帯機器において、
上記第1規制部材は、上記第2の筐体の表面に設けられた直線状の規制用突条よりなり、
上記回転防止用突起の近傍に位置して第1の筐体が縦長状態から横長状態に切り換わるのを規制するように構成されている
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項12】
請求項11に記載のスライド式携帯機器において、
上記第1の筐体が第2の筐体に対してスライド移動する間に、上記回転防止用突起が、上記規制用突条の近傍をスライド移動し、
上記スライド移動が完了すると上記回転防止用突起が上記規制用突条から離れるように構成されている
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のスライド式携帯機器において、
上記回転防止用突起は、上記第1ガイドピン及び第2ガイドピンよりも上記第2の筐体側へ突出している
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれか1つに記載のスライド式携帯機器において、
上記プレート部は、上記回転防止用突起との接触を防止するめに上側が開放した接触防止用開口を備えている
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項15】
請求項8乃至14に記載のスライド式携帯機器において、
上記第1の筐体のスライド移動を完了させて縦長状態から横長状態に切り換えた状態では、第1の筐体が再びスライド移動するのを規制する第2規制部材を備えている
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項16】
請求項15に記載のスライド式携帯機器において、
上記第2規制部材は、第1ガイドピンの動きを規制するように構成されている
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項17】
請求項16に記載のスライド式携帯機器において、
上記第2規制部材は、第1の筐体が横長状態のときの第2の筐体における第1ガイドピンの近傍に突設された規制用突起よりなり、第1の筐体が下方へスライド移動をするのを規制するように構成されている
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項18】
請求項8乃至17のいずれか1つに記載のスライド式携帯機器において、
上記上下方向ガイド溝は、上記レール部に対して平行である
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項19】
請求項8乃至17のいずれか1つに記載のスライド式携帯機器において、
上記上下方向ガイド溝は、上記レール部に対して傾斜している
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項20】
請求項8乃至17のいずれか1つに記載のスライド式携帯機器において、
上記上下方向ガイド溝は、湾曲する曲線形状を有している
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項21】
請求項8乃至20のいずれか1つに記載のスライド式携帯機器において、
上記支持機構には、一端が上記第1ガイドピンに固定され、他端が上記プレート部に固定され、表示部が縦長状態又は横長状態となるように付勢する弾性部材が設けられている
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項22】
請求項21に記載のスライド式携帯機器において、
上記弾性部材は、上記左右方向ガイド溝の最上点近傍で最も圧縮されるように配置されている
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項23】
請求項21又は22に記載のスライド式携帯機器において、
上記弾性部材は、ねじりコイルバネである
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項24】
請求項8乃至23のいずれか1つに記載のスライド式携帯機器において、
上記支持機構は、リンク部材を備え、該リンク部材の裏面側に上記第1ガイドピンと第2ガイドピンとが設けられ、表面側が上記第1の筐体に取り付けられる
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項25】
請求項24に記載のスライド式携帯機器において、
上記プレート部とリンク部材とは、ユニット組立されている
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項26】
請求項2乃至25のいずれか1つに記載のスライド式携帯機器において、
上記プレート部は、板金よりなる
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項27】
請求項2乃至25のいずれか1つに記載のスライド式携帯機器において、
上記プレート部は、マグネシウム合金の成型品よりなる
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項28】
請求項1乃至27のいずれか1つに記載のスライド式携帯機器において、
上記表示部は、液晶ディスプレイを備えている
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項29】
請求項1乃至27のいずれか1つに記載のスライド式携帯機器において、
上記表示部は、有機ELディスプレイを備えている
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項30】
請求項1乃至29のいずれか1つに記載のスライド式携帯機器において、
携帯通信機器である
ことを特徴とするスライド式携帯機器。
【請求項31】
請求項30に記載のスライド式携帯機器において、
携帯通信機器は、携帯電話機である
ことを特徴とするスライド式携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−103989(P2008−103989A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284825(P2006−284825)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】