スラッシュ成形用樹脂粉末組成物
【課題】バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸、および脂肪族ジオールを使用したスラッシュ成形用樹脂粉末組成物を開発し、地球温暖化防止、循環型社会の構築といった社会の要請に答えるスラッシュ成形用樹脂粉末組成物を提供することである。
【解決手段】バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)、および/またはバイオマス由来の脂肪族ジオール(C)を必須単量体成分とするポリエステルジオール(A)とジイソシアネート(B)を反応させて得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)と添加剤(L)を含有するスラッシュ成形用樹脂粉末組成物。
【解決手段】バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)、および/またはバイオマス由来の脂肪族ジオール(C)を必須単量体成分とするポリエステルジオール(A)とジイソシアネート(B)を反応させて得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)と添加剤(L)を含有するスラッシュ成形用樹脂粉末組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスツルメントパネル、ドアトリム等の自動車内装部品の成形用素材として適する、熱可塑性樹脂粉末を主体とする、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スラッシュ成形用の熱可塑性樹脂粉末は、これまで石油由来の原料が主として使用されてきた。これらを成形してなる自動車内装部品は、使用後、廃棄物として焼却処分される。この際に発生する二酸化炭素により引き起こされる地球温暖化が、近年問題となっている。この問題を解決するために、植物など生物由来のバイオマス原料を使用した樹脂材料を自動車等の材料として積極的に使用することが、社会から要請されている。(例えば特許文献1、2、3)。バイオマス原料を使用した部品を焼却処分する際に発生する二酸化炭素は、植物の成長の過程で光合成を行うために吸収した二酸化炭素であるため、全体として見れば大気中の二酸化炭素量を増加させていないと考えられる。このため、バイオマス原料を積極的に使用することで、地球温暖化防止へ貢献することができる。
スラッシュ成形用熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)などが挙げられるが、PVC、TPOの原料である塩化ビニルやオレフィンはバイオマスから生産することができないため、焼却する際の二酸化炭素の生成を抑えることができない。
一方、TPU、なかでもポリエステル系TPUの原料である、ジカルボン酸、ジオールは、バイオマスから生産することができる。近年のバイオ関連技術の発展にともなって、これまで主に石油から作られていた脂肪族ジカルボン酸、および脂肪族ジオールを、バイオマスから生産する技術が注目されている。(例えば特許文献4、5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−28067号公報
【特許文献2】特開2008−56779号公報
【特許文献3】特開2007−314913号公報
【特許文献4】特開2005−211041号公報
【特許文献5】特表2007−502325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物に、バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸、または脂肪族ジオールを積極的に使用し、環境へ貢献しようとしたものは知られていない。本発明が解決しようとする課題は、バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸、および脂肪族ジオールを使用したスラッシュ成形用樹脂粉末組成物を開発し、地球温暖化防止、循環型社会の構築といった社会の要請に答えることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究した結果、本発明を完成させるに至った。
本発明は、バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)、および/またはバイオマス由来の脂肪族ジオール(C)を必須単量体成分とするポリエステルジオール(A)とジイソシアネート(B)を反応させて得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)と添加剤(L)を含有するスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)は、原料にバイオマス原料を使用していることから、本品を使用することにより地球温暖化防止、循環型社会の構築に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】樹脂粉末(E1)の粒度分布測定結果
【図2】樹脂粉末(E2)の粒度分布測定結果
【図3】樹脂粉末(E3)の粒度分布測定結果
【図4】樹脂粉末(E4)の粒度分布測定結果
【図5】樹脂粉末(E5)の粒度分布測定結果
【図6】樹脂粉末(E6)の粒度分布測定結果
【図7】樹脂粉末(E7)の粒度分布測定結果
【図8】樹脂粉末(E8)の粒度分布測定結果
【図9】樹脂粉末(E9)の粒度分布測定結果
【図10】樹脂粉末(E10)の粒度分布測定結果
【図11】樹脂粉末(E11)の粒度分布測定結果
【発明を実施するための形態】
【0008】
スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)は、バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)、および/またはバイオマス由来の脂肪族ジオール(C)を必須単量体成分とするポリエステルジオール(A)とジイソシアネート(B)を反応させて得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)を含有する。
【0009】
本発明において、ポリエステルジオール(A)は、単量体成分として、少なくともバイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)またはバイオマス由来の脂肪族ジオール(C)のいずれかを含有していればよい。なお。脂肪族ジカルボン酸(J)には、そのエステル形成性誘導体(I)も含まれる。
エステル形成性誘導体(I)としては酸無水物、低級アルキルエステル(ジメチルエステル、ジエチルエステルなど)、酸ハライド(酸クロライド等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0010】
バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)、およびバイオマス由来の脂肪族ジオール(C)は、バイオマスから生産されるものであれば特に制限はないが、炭素数2〜10の群から選ばれる脂肪族ジカルボン酸、例えば、コハク酸、セバシン酸、炭素数2〜10の群から選ばれる脂肪族ジオール、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。なかでもバイオマス由来のコハク酸を用いることが好ましい。
【0011】
バイオマス由来のコハク酸の製造方法としては、トウモロコシや小麦等のでんぷんを、発酵法にて製造する方法があり、本発明のコハク酸はこの方法にて製造したものを用いることが好ましい。公知のコハク酸発酵法としては、アナエロビオスピルリム・サクシニシプロデュセンス(Anaerobiospirillumsuccinicproducens)(ATCC35488)の嫌気培養(特開昭62−294090号公報)や、好気性コリネ型細菌であるブレビバクテリウム・フラバム(Brebibacteriumflavum)の遺伝子組み換え菌を増殖後、嫌気的に炭酸ガス含有液中で有機原料に作用させる方法(特開平11−196888号公報)等が挙げられる。バイオマス由来の1,4−ブタンジオールはバイオマス由来のコハク酸を還元することにより得られる。
バイオマス由来のセバシン酸は、例えばひまし油のアルカリ溶融による製造法があり、これを経てバイオマス由来の1,10−デカンジオールが製造される(特開2009−7314号公報)。
バイオマス由来の1,2−エタンジオール、1,2-プロパンジオールは、例えばトウモロコシや、小麦等のでんぷんから酵素、触媒により各種グリコールを合成し、精製することにより得られる(特開2009−20914号公報)。
バイオマス由来の1,3−プロパンジオールは、たとえばトウモロコシ等のでんぷんを発酵、精製することにより得られる(特開2007−502325号公報)。
【0012】
ポリエステルジオール(A)は、単量体成分として、バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)およびバイオマス由来の脂肪族ジオール(C)以外のジカルボン酸成分およびジオール成分を含有することができる。
【0013】
バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)以外のジカルボン酸成分としては、以下の化合物が挙げられる。
(i)炭素数4〜15の脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸等);
(ii)炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸等);
(iii)これらのエステル形成性誘導体(酸無水物、低級アルキルエステル(ジメチルエステル、ジエチルエステルなど)、酸ハライド(酸クロライド等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
これらのなかで、炭素数4〜10の脂肪族ジカルボン酸、およびイソフタル酸が好ましい。
【0014】
バイオマス由来の脂肪族ジオール(C)以外のジオール成分としては、以下のものが挙げられる。
(i)脂肪族低分子ジオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び1,10−デカンジオール等);
(ii)環構造を有する低分子ジオール{たとえば、特公昭45−1474号公報に記載のもの:1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及びm−又はp−キシリレングリコール等};
(iii)ビスフェノールのアルキレンオキシド低モル付加体(数平均分子量500未満);及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
これらのなかで、好ましくは脂肪族低分子ジオールであり、より好ましくは炭素数2〜10の脂肪族低分子ジオール(C1)であり、特に好ましくは1,6−ヘキサンジオールである。
【0015】
ポリエステルジオール(A)中のバイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)および/またはバイオマス由来の脂肪族ジオール(C)の含有量は、環境への貢献度の観点から通常10〜100重量%であり、好ましくは40〜100重量%である。
【0016】
ポリエステルジオール(A)の脂肪族ジオールから2つの水酸基を除いた残基、および(A)の脂肪族ジカルボン酸から2つのカルボキシル基を除いた残基の合計炭素数(以下合計C数と記す。)は8〜12であることが好ましい。合計C数が8以上となると、ポリエステルジオール(A)のエステル基濃度が下がりガラス転移点(Tg)が低くなるため、自動車内装材用樹脂成形品(T)のTgが下がり低温でのソフト感が優れるため好ましい。また、合計C数が12以下となると、ポリエステルジオール(A)の融点が低くなるため、プレポリマー溶液の粘度が低くなり、粒子化プロセスへの適用が容易になるため好ましい。
【0017】
本発明において、ポリエステルジオール(A)とともに、バイオマス由来の単量体成分を全く含有しないポリエステルジオール(A’)を熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の成分として使用できる。
ポリエステルジオール(A’)のうち、芳香族ジカルボン酸と脂肪族低分子ジオール(炭素数2〜10)からなるポリエステルジオール(a’)が好ましく、ヘキサメチレンイソフタレートジオールが特に好ましい。
【0018】
ポリエステルジオール(A)とポリエステルジオール(A’)を併用する場合において、ポリエステルジオール(A)の含有量は、ポリエステルジオール全体の重量に基づいて30〜100重量%であり、また、自動車内装材用樹脂成形品(T)重量に基づいて10〜95重量%である。この範囲において環境への貢献度の点から好ましい。
(a’)の含有量は、ポリエステルジオール全体の重量に基づいて、0〜30重量%であることが好ましく、より好ましくは0〜10重量%である。(a’)の含有量を上げると、剛直な構造が樹脂に組み込まれ、自動車内装材用樹脂成形品(T)の耐薬品性などの耐久性を上げることができる。30重量%を超えると、自動車内装材用樹脂成形品(T)中のバイオマス由来原料の比率が下がり、環境への貢献度が下がる。また、自動車内装材用樹脂成形品(T)のTgが上がり、低温でのソフト感に劣る。
【0019】
ポリエステルジオール(A)は、例えば以下の方法にて製造することができる。
ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体と、ジオールを200 〜280 ℃で約2〜10時間常圧下で、次いで、200 〜280 ℃で約2〜10時間減圧下で、反応させることにより行う。エステル化反応を行う際に、公知のエステル化触媒や重縮合触媒、を使用しても良い。アンチモン、チタン、ゲルマニウム、スズ、亜鉛等の化合物が好ましく、チタン系(例えばチタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラヘキソキシド、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド、チタンテトラオクトキシド)がより好ましく、チタンテトライソプロポキシドが特に好ましい。ただし、樹脂粉末組成物(S)および自動車内装材用樹脂成形品(T)の製造工程、性能等に影響を及ぼす触媒を使用する場合、触媒の失活、除去等の工程が必要となり、例えばチタンテトライソプロポキシドを使用する場合は、後の製造工程中のウレタン化反応に影響を及ぼすため、触媒の失活工程が必要となる。
【0020】
ジイソシアネート(B)は、
(i)炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)2〜18の脂肪族ジイソシアネート[エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等];
(ii)炭素数4〜15の脂環族ジイソシアート[イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロへキセン等];
(iii)炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート[m−および/またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等];芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、1,3−及び/又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−及び/又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、粗製MDI、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−及びp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等;
(iv)これらのジイソシアネートの変性物(カーボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、ウレア基等を有するジイソシアネート変性物);
(v)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
これらのうち好ましいものは脂肪族ジイソシアネートまたは脂環族ジイソシアネートであり、より好ましいのは、HDI、IPDI、水添MDIであり、HDIがとくに好ましい。
【0021】
本発明において、熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)を含有する樹脂粉末(E)は、例えば、以下の方法で得ることができる。
(1)ポリエステルジオール(A)とジイソシアネート(B)から得られるイソシアネート含有ウレタンプレポリマー(U)を、水および分散安定剤存在下で、攪拌下にブロックされた低分子ジアミン(F)(例えばケチミン化合物)で伸長反応させて熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)を含有する樹脂粉末(E)を得る。
(2)上記ウレタンプレポリマー(U)を、非極性有機溶媒および分散安定剤存在下で、攪拌下に鎖伸長剤[低分子ジアミン(F)及び低分子ジオール等]で伸長反応させて熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)を含有する樹脂粉末(E)を得る。
(3)ポリエステルジオール(A)、ジイソシアネート(B)および低分子ジアミン(F)又は低分子ジオールを反応させることで熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の塊状物を得る。ついで粉末化(例えば冷凍粉砕、溶融状態下に細孔を通し切断する方法)して樹脂粉末(E)を得る。
熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)は、ポリエステルジオール(A)とジイソシアネート(B)を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを低分子ジアミン(F)、又は低分子ジオールで鎖伸長して得られるものが好ましく、低分子ジアミン(F)で鎖伸長して得られるものが好ましい。
添加剤(L)は上記工程中で適宜添加することができる。
【0022】
低分子ジアミン(F)としては、炭素数2〜18の脂肪族ジアミン(F1)(1,4−テトラメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン及び1,10−デカメチレンジアミン等)及び炭素数6〜18の脂環式ジアミン(F2)(イソホロンジアミン等)が好ましい。これら(F)は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
低分子ジオールは、前記したものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0024】
樹脂粉末組成物(S)のスラッシュ成形における低温成形性を向上させるために、低分子ジアミン(F)として、炭素数2〜18の脂肪族ジアミン(F1)と脂環式ジアミン(F2)の混合物を用いることがより好ましく、1,6−ヘキサメチレンジアミンとイソホロンジアミンの混合物を用いることが特に好ましい。脂環式アミン(F2)を混合することで、ハードセグメントの凝集力が適度に弱まり、樹脂粉末組成物(S)の低温溶融性を向上させることができる。
アミン組成における(F1)と(F2)の合計モルに対する(F1)のモル%は、70〜100%であることが好ましく、より好ましくは80〜98%であり、85〜90%であることが特に好ましい。(F1)比率がこれらの範囲であると、熱軟化温度が下がらず、高温環境下での耐熱変形性が良好となる。
【0025】
熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと記載)による重量平均分子量(以下、Mwと記載)は、好ましくは10万〜25万である。Mwが10万以上であれば、自動車内装材用樹脂成形品(T)の高温環境下での耐熱変形性が良好であり、25万以下であれば、樹脂粉末組成物(S)のスラッシュ成形時の低温溶融性が良好である。
【0026】
本発明の樹脂粉末組成物(S)は、熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)と添加剤(L)を含む。添加剤(L)としては無機フィラー、顔料、可塑剤、離型剤、有機充填剤、ブロッキング防止剤(流動性向上剤)、安定剤及び分散剤等が挙げられる。
添加剤(L)の含有量は樹脂粉末組成物(S)の重量に対して、通常0.01〜45重量%であり、好ましくは1〜25重量%である。
熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の含有量は樹脂粉末組成物(S)の重量に対して、通常55〜99.99重量%であり、好ましくは75〜99重量%である。
【0027】
無機フィラーとは、カオリン、タルク、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、ベントナイト、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、ガラス繊維、黒鉛、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、硫酸バリウム、ホウ酸亜鉛、アルミナ、マグネシア、ウォラストナイト、ゾノトライト、ウィスカー及び金属粉末等が挙げられる。これらのうち、熱可塑性樹脂の結晶化促進の観点から、カオリン、タルク、シリカ、酸化チタン及び炭酸カルシウムが好ましく、さらに好ましくはカオリン及びタルクである。
無機フィラーの含有量は熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の重量に対して、通常0〜40重量%であり、好ましくは1〜20重量%である。
【0028】
顔料としては特に限定されず、公知の有機顔料および/または無機顔料を使用することができる。
有機顔料としては、例えば不溶性もしくは溶性アゾ顔料、銅フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられ、無機系顔料としては、例えばクロム酸塩、フェロシアン化合物、金属酸化物(酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム等)、金属塩類[硫酸塩(硫酸バリウム等)、珪酸塩(珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム等)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、燐酸塩(燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム等)等]、金属粉末(アルミ粉末、鉄粉末、ニッケル粉末、銅粉末等)、カーボンブラック等が挙げられる。
顔料の含有量は熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の重量に対して、通常0.01〜10重量%であり、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0029】
可塑剤としては、フタル酸エステル(フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチルベンジル及びフタル酸ジイソデシル等);脂肪族2塩基酸エステル(アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル及びセバシン酸−2−エチルヘキシル等);トリメリット酸エステル(トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル及びトリメリット酸トリオクチル等);脂肪酸エステル(オレイン酸ブチル等);脂肪族リン酸エステル(トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート及びトリブトキシホスフェート等);芳香族リン酸エステル(トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート及びトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート等);ハロゲン脂肪族リン酸エステル(トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(βークロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート及びトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等);及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
可塑剤の含有量は熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の重量に対して、通常0〜20重量%であり、好ましくは0〜15重量%である。
【0030】
離型剤としては公知の離型剤等が使用でき、フッ素化合物型離型剤(リン酸トリパーフルオロアルキル(炭素数8〜20)エステル、たとえば、トリパーフルオロオクチルホスフェート及びトリパーフルオロドデシルホスフェート等);シリコーン化合物型離型剤(ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン及びカルボキシル変性ジメチルポリシロキサン等)、脂肪酸エステル型離型剤(炭素数10〜24の脂肪酸のモノ又は多価アルコールエステル、たとえば、ブチルステアレート、硬化ひまし油及びエチレングリコールモノスレアレート等);脂肪族酸アミド型離型剤(炭素数8〜24の脂肪酸のモノ又はビスアミド、たとえば、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド及びエチレンジアミンのジステアリン酸アミド等);金属石鹸(ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸亜鉛等);天然又は合成ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス及びポリブロピレンワックス等);及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
離型剤の含有量は熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の重量に対して、通常0〜1重量%であり、好ましくは0.1〜0.5重量%である。
【0031】
安定剤とは、分子中に炭素−炭素二重結合(置換基を有していてもよいエチレン結合等)(ただし芳香環中の二重結合は除く)、炭素−炭素三重結合(置換基を有していてもよいアセチレン結合)を有する化合物等が使用でき、(メタ)アクリル酸と多価アルコール(2〜10価の多価アルコール、以下同様)とのエステル(エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等);(メタ)アリルアルコールと2〜6価の多価カルボン酸とのエステル(ジアリルフタレート及びトリメリット酸トリアリルエステル等);多価アルコールのポリ(メタ)アリルエーテル(ペンタエリスリトール(メタ)アリルエーテル等);多価アルコールのポリビニルエーテル(エチレングリコールジビニルエーテル等);多価アルコールのポリプロペニルエーテル(エチレングリコールジプロペニルエーテル等);ポリビニルベンゼン(ジビニルベンゼン等)及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステルが好ましく、さらに好ましくはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートである。
安定剤の含有量は熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の重量に対して、通常0〜20重量%であり、好ましくは1〜15重量%である。
【0032】
ブロッキング防止剤(流動性向上剤)として、公知の無機系ブロッキング防止剤及び有機系ブロッキング防止剤等を使用することができる。無機系ブロッキング防止剤としてはシリカ、タルク、酸化チタン及び炭酸カルシウム等が挙げられる。有機系ブロッキング防止剤としては粒子径10μm以下の熱硬化性樹脂(熱硬化性ポリウレタン樹脂、グアナミン系樹脂及びエポキシ系樹脂等)及び粒子径10μm以下の熱可塑性樹脂(熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂及びポリ(メタ)アクリレート樹脂等)等が挙げられる。
ブロッキング防止剤(流動性向上剤)の含有量は熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の重量に対して、通常0〜5重量%であり、好ましくは0.5〜1重量%である。
【0033】
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)を含有する樹脂粉末(E)と添加剤(L)を、混合して樹脂粉末組成物(S)を生産するときに使用する混合装置としては、公知の粉体混合装置を使用でき、容器回転型混合機、固定容器型混合機、流体運動型混合機のいずれも使用できる。例えば固定容器型混合機としては高速流動型混合機、複軸パドル型混合機、高速剪断混合装置(ヘンシエルミキサー(登録商標)等)、低速混合装置(プラネタリーミキサー等)や円錐型スクリュー混合機(ナウタ−ミキサ−(登録商標)等)を使ってドライブレンドする方法が良く知られている。これらの方法の中で、複軸パドル型混合機、低速混合装置(プラネタリーミキサー等)、および円錐型スクリュー混合機(ナウタ−ミキサ−(登録商標、以下省略)等)を使用するのが好ましい。
【0034】
樹脂粉末組成物(S)の体積平均粒径は、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは70〜300μmである。
【0035】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)を成形して得られる樹脂成形品(T)の例として、例えば表皮等が挙げられる。スラッシュ成形法としては、例えば本発明の粉末組成物が入ったボックスと加熱した金型を共に振動回転させ、パウダーを型内で溶融流動させた後、冷却後、固化させ、表皮を製造する方法を挙げることができる。
上記金型温度は好ましくは200〜300℃、さらに好ましくは210〜280℃である。表皮厚さは、0.5〜1.5mmが好ましい。
【0036】
成形表皮は、表面を発泡型に接するようにセットし、ウレタンフォームを流し、裏面に5mm〜15mmの発泡層を形成させて、該表皮を有する樹脂成形品とすることができる。
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)を成形して得られる樹脂成形品(T)は、自動車内装材、例えばインストルメントパネル、ドアトリム等に好適に使用される。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
製造例1
ポリエステルジオール(A)の製造
ディーンスターク装置を取り付けたガラス製反応装置にバイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(690.1部)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)を仕込み、窒素置換を行いながら170℃まで昇温した。減圧下(−80kpa)にて10時間エステル化反応を行い、チタンテトライソプロポキシド(0.02部)を加えさらに5時間反応を行い、生成した縮合水を系外へ除去した。生成物に水(200部)を加え100℃で3時間加熱しチタンテトライソプロポキシドを失活させた。減圧下で脱水を行い、ポリトリメチレンサクシネートジオール(A1)(分子量1000)を得た。
【0038】
製造例2
プレポリマー溶液の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、製造例1で得たポリトリメチレンサクシネートジオール(A1)(604.13部)、酸化防止剤ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート][チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製; イルガノックス1010](1.08部)、体積平均粒径9.2μmのカオリン(18.6部)を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら120℃に加熱して均一化させ、60℃まで冷却した。続いて、1−オクタノール(9.45部)、ヘキサメチレンジイソシアネート(B1)(145.11部)、メチルエチルケトン(150部)、90℃で4時間反応させた。その後、65℃まで冷却し、紫外線吸収剤2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製; チヌビン571](2.16部)、ブラック着色剤(28.40部)を投入し1時間混合することでプレポリマー溶液(U1)を得た。
【0039】
製造例3
ヘキサメチレンジアミンのMEK(メチルエチルケトン)ケチミン化物の製造
ヘキサメチレンジアミン(F1)と過剰のMEK(ジアミンに対して4倍モル量)を80℃で24時間還流させながら生成水を系外に除去した。その後減圧にて未反応のMEKを除去してヘキサメチレンジアミンのMEKケチミン化物(G1)を得た。
【0040】
製造例4
熱可塑性ポリウレタン樹脂を含有する樹脂粉末の製造
反応容器に、製造例2で得たプレポリマー溶液(U1)(100部)と製造例3で得たヘキサメチレンジアミンのMEKケチミン化合物(G1)(5.20部)を投入し、そこにジイソブチレンとマレイン酸との共重合体のNa塩を含む分散剤(三洋化成工業(株)製サンスパールPS−8)(1.3部)を溶解した水溶液(300部)を加え、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて5000rpmの回転数で1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら70℃、減圧下で2時間反応、脱MEKを行った。反応終了後、濾別及び乾燥、分級を行い、熱可塑性ポリウレタン樹脂(D1)を含有する樹脂粉末(E1)を製造した。(D1)のMwは13万、(E1)の積算分布曲線の50%に相当する粒子径(以下体積平均粒径という)は152μmであった(図1)。
【0041】
実施例1
樹脂粉末組成物の製造
3Lのプラネタリーミキサー内に、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(E1)(100部)、PEG330の安息香酸ジエステル〔三洋化成工業(株)製サンソフト EB−300〕(12.0部)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート [三洋化成工業株式会社;DA600](3.9部)、紫外線安定剤ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)[商品名:TINUVIN 765、チバ社製](0.3部)を投入し70℃で4時間含浸した。含浸4時間後、2種類の内添離型剤であるジメチルポリシロキサン[日本ユニカー(株)製;ケイL45−1000](0.10部)、カルボキシル変性シリコン[信越化学工業(株)製;X−22−3710](0.07部)、を投入し1時間混合した後室温まで冷却した。最後に、ブロッキング防止剤架橋ポリメチルメタクリレート[ガンツ化成(株);ガンツパールPM−030S](0.5部)を投入混合することで樹脂粉末組成物(S1)を得た。
【0042】
実施例2
製造例1において、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(690.1部)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)の代わりに、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(520.4部)と石油由来の1,6−ヘキサンジオール(638.4部)を使用すること以外は製造例1と同様にしてポリヘキサメチレンサクシネートジオール(A2)(分子量1000)を得た。
続いて、製造例2において、(A1)の代わりに、(A2)を使用すること以外は製造例2と同様にしてプレポリマー溶液(U2)を得た。
続いて、製造例4において、(U1)の代わりに、(U2)を使用すること以外は、製造例4と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂(D2)を含有する樹脂粉末(E2)を製造した。(D2)のMwは15万、(E2)の体積平均粒径は132μmであった(図2)。
続いて、実施例1において、(E1)の代わりに、(E2)を使用すること以外は、実施例1と同様にして樹脂粉末組成物(S2)を製造した。
【0043】
実施例3
製造例1において、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(690.1部)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)の代わりに、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(380.7部)とバイオマス由来の1,10−デカンジオール[小倉合成工業(株)社製](735.4部)を使用すること以外は製造例1と同様にしてポリデカメチレンサクシネートジオール(A3)(分子量1000)を得た。
続いて、製造例2において、(A1)の代わりに、(A3)を使用すること以外は製造例2と同様にしてプレポリマー溶液(U3)を得た。
続いて、製造例4において、(U1)の代わりに、(U3)を使用すること以外は、製造例4と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂(D3)を含有する樹脂粉末(E3)を製造した。(D3)のMwは14万、(E3)の体積平均粒径は151μmであった(図3)。
続いて、実施例1において、(E1)の代わりに、(E3)を使用すること以外は、実施例1と同様にして樹脂粉末組成物(S3)を製造した。
【0044】
製造例5
ポリエステルジオールの製造
ディーンスターク装置を取り付けたガラス製反応装置にイソフタル酸(580.9部)、石油由来の1,6−ヘキサンジオール(598.7部)を仕込み、窒素置換を行いながら230℃まで昇温した。230℃で加圧下(50kpa)にて4時間、210℃で減圧(−80kpa)にて8時間エステル化反応を行い、ポリへキサメチレンイソフタレートジオール(A’1)(分子量900)を得た。
【0045】
実施例4
製造例2において、(A1)の代わりに、ポリヘキサメチレンサクシネートジオール(A2)(422.89部)とポリヘキサメチレンイソフタレートジオール(A’1)(181.2部)を使用したこと以外は、製造例2と同様にしてプレポリマー溶液(U4)を得た。
続いて、製造例4において、(U1)の代わりに、(U4)を使用すること以外は、製造例4と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂(D4)を含有する樹脂粉末(E4)を製造した。(D4)のMwは15万、(E4)の体積平均粒径は140μmであった(図4)。
続いて、実施例1において、(E1)の代わりに、(E4)を使用すること以外は、実施例1と同様にして樹脂粉末組成物(S4)を製造した。
【0046】
製造例6
イソホロンジアミンのMEK(メチルエチルケトン)ケチミン化物の製造
イソホロンンジアミン(F2)と過剰のMEK(ジアミンに対して4倍モル量)を80℃で24時間還流させながら生成水を系外に除去した。その後減圧にて未反応のMEKを除去してイソホロンジアミンのMEKケチミン化物(G2)を得た。
【0047】
実施例5
製造例4において、プレポリマー溶液(U1)(100部)の代わりにプレポリマー溶液(U4)(100部)を使用し、ヘキサメチレンジアミンのMEKケチミン化合物(G1)(5.20部)の代わりにヘキサメチレンジアミンのMEKケチミン化合物(G1)(4.66部)とイソホロンジアミンのMEKケチミン化合物(G2)(0.12部)を使用した以外は、製造例4と同様にして、熱可塑性ポリウレタン樹脂(D5)を含有する樹脂粉末(E5)を製造した。(D5)のMwは12万、(E5)の体積平均粒径は148μmであった(図5)。実施例1と同様にして、樹脂粉末組成物(S5)を製造した。
【0048】
実施例6
製造例1において、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(690.1部)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)の代わりに、バイオマス由来のセバシン酸[小倉合成(株)社製](831.0部)とバイオマス由来の1,2−エタンジオール[長春大成集団製](317.1部)を使用すること以外は、製造例1と同様にしてポリジメチレンセバケートジオール(A4)(分子量1000)を得た。
続いて、製造例2において、(A1)の代わりに、(A4)を使用すること以外は製造例2と同様にしてプレポリマー溶液(U5)を得た。
続いて、製造例4において、(U1)の代わりに、(U5)を使用すること以外は、製造例4と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂(D6)を含有する樹脂粉末(E6)を製造した。(D6)のMwは15万、(E6)の体積平均粒径は155μmであった(図6)。
続いて、実施例1において、(E1)の代わりに、(E6)を使用すること以外は、製造例5と同様にして樹脂粉末組成物(S6)を製造した。
【0049】
実施例7
製造例1において、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(690.1部)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)の代わりに、バイオマス由来のセバシン酸[小倉合成(株)社製](771.2部)とバイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](366.2部)を使用すること以外は、製造例1と同様にしてポリトリメチレンセバケートジオール(A5)(分子量1000)を得た。
続いて、製造例2において、(A1)の代わりに、(A5)を使用すること以外は製造例2と同様にしてプレポリマー溶液(U6)を得た。
続いて、製造例4において、(U1)の代わりに、(U6)を使用すること以外は、製造例4と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂(D7)を含有する樹脂粉末(E7)を製造した。(D7)のMwは13万、(E7)の体積平均粒径は154μmであった(図7)。
続いて、実施例1において、(E1)の代わりに、(E7)を使用すること以外は、実施例1と同様にして樹脂粉末組成物(S7)を製造した。
【0050】
実施例8
製造例1において、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(690.1部)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)の代わりに、バイオマス由来のセバシン酸[小倉合成(株)社製](627.3部)と石油由来の1,6−ヘキサンジオール(484.4部)を使用すること以外は、製造例1と同様にしてポリヘキサメチレンセバケートジオール(A6)(分子量1000)を得た。
続いて、製造例2において、(A1)の代わりに、(A6)を使用すること以外は製造例2と同様にしてプレポリマー溶液(U7)を得た。
続いて、製造例4において、(U1)の代わりに、(U7)を使用すること以外は、製造例4と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂(D8)を含有する樹脂粉末(E8)を製造した。(D8)のMwは12万、(E8)の体積平均粒径は166μmであった(図8)。
続いて、実施例1において、(E1)の代わりに、(E8)を使用すること以外は、実施例1と同様にして樹脂粉末組成物(S8)を製造した。
【0051】
実施例9
製造例1において、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(690.1部)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)の代わりに、石油由来のコハク酸(690.1部)とバイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)を使用すること以外は、製造例1と同様にしてポリトリメチレンサクシネートジオール(A7)(分子量1000)を得た。
続いて、製造例2において、(A1)の代わりに、(A7)を使用すること以外は製造例2と同様にしてプレポリマー溶液(U8)を得た。
続いて、製造例4において、(U1)の代わりに、(U8)を使用すること以外は、製造例4と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂(D9)を含有する樹脂粉末(E9)を製造した。(D9)のMwは12万、(E9)の体積平均粒径は159μmであった(図9)。
続いて、実施例1において、(E1)の代わりに、(E9)を使用すること以外は、実施例1と同様にして樹脂粉末組成物(S9)を製造した。
【0052】
比較例1
製造例1において、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(690.1部)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)の代わりに、石油由来のコハク酸(520.4部)と、石油由来の1,6−ヘキサンジオール(638.4部)を使用すること以外は、製造例1と同様にしてポリヘキサメチレンサクシネートジオール(A’2)(分子量1000)を得た。
続いて、製造例2において、(A1)の代わりに、(A’2)を使用すること以外は製造例2と同様にしてプレポリマー溶液(U9)を得た。
続いて、製造例4において、プレポリマー溶液(U1)(100部)の代わりにプレポリマー溶液(U9)(100部)を使用し、ヘキサメチレンジアミンのMEKケチミン化合物(G1)(5.20部)の代わりにヘキサメチレンジアミンのMEKケチミン化合物(G1)(4.66部)とイソホロンジアミンのMEKケチミン化合物(G2)(0.12部)を使用した以外は、製造例4と同様にして、熱可塑性ポリウレタン樹脂(D10)を含有する樹脂粉末(E10)を製造した。(D10)のMwは12万、(E10)の体積平均粒径は163μmであった(図10)。
続いて、実施例1において、(E1)の代わりに、(E10)を使用すること以外は、実施例1と同様にして樹脂粉末組成物(S10)を製造した。
【0053】
比較例2
製造例1において、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(690.1部)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)の代わりに、石油由来のアジピン酸(664.3部)と、石油由来の1,6−ヘキサンジオール(499.5部)を使用すること以外は、製造例1と同様にしてポリヘキサメチレンサクシネートジオール(A’3)(分子量1000)を得た。
続いて、製造例2において、(A1)の代わりに、(A’3)を使用すること以外は製造例2と同様にしてプレポリマー溶液(U10)を得た。
続いて、製造例4において、(U1)の代わりに、(U10)を使用すること以外は、製造例4と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂(D11)を含有する樹脂粉末(E11)を製造した。(D11)のMwは12万、(E11)の体積平均粒径は144μmであった(図11)。
続いて、実施例1において、(E1)の代わりに、(E11)を使用すること以外は、実施例1と同様にして樹脂粉末組成物(S11)を製造した。
【0054】
樹脂成形品の製造
以下のようにスラッシュ成形を行った。予め、実施例5、比較例1は230℃に、それ以外は270℃に加熱されたしぼ模様の入ったNi電鋳型に実施例1〜9、及び比較例1、2のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S1)〜(S11)を充填し、10秒後余分な樹脂粉末組成物を排出する。60秒放冷後、水冷してNi電鋳型から脱型することで、厚さ1mmの樹脂成形品(T1)〜(T11)を得た。
【0055】
実施例1〜9、及び比較例1、2の樹脂粉末組成物(E1)〜(E9)について下記に示す方法で、メルトフローレートの測定を行った。また、実施例1〜9、及び比較例1、2の樹脂成形品(T1)〜(T11)について下記に示す方法で、ガラス転移温度(Tg)、熱軟化温度(℃)、表皮物性の測定を行った。結果を表1、表2に示した。
また、樹脂粉末(E1)〜(E11)について下記の粒度分布測定方法により粒度分布を測定し、結果を図1〜11に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
<MFR測定方法>
機器:メルトフローインデクサー(安田精機製作所製)
荷重:2.16kgf
温度:215℃
試料量:50g
上記条件でのMFRの値(g/10min)が高い程、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)のスラッシュ成形時の低温成形性に優れるため好ましい。
【0059】
<ガラス転移温度測定方法>
幅約5mm、長さ約45mmの試験片を切り取り、動的粘弾性測定装置(Rheogel−E4000、UBM製)に取り付け、周波数10Hzで−80℃から30℃まで引張温度依存性の測定を行った。得られたE’’ピークトップ温度を樹脂のガラス転移温度(Tg)(℃)とする。ガラス転移温度が低いほど、樹脂成形品(T)の低温条件下でのソフト感に優れるため好ましい。
【0060】
<熱軟化温度測定方法>
機器:熱機械分析装置TMA/SS6100
データ処理装置EXSTAR6000[エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製]
測定条件:測定温度範囲25〜250℃、昇温速度5℃/min、荷重5g、針直径0.5mm。
解析方法:TMAチャートにおいて、「JIS K7121−1987、P.5、図3階段状変化」の方法に準じて、TMA曲線の接線の交点を求め、熱軟化温度とする。
熱軟化温度が高いほど、樹脂成形品(T)の高温条件下での耐変形性に優れるため好ましい。
<引張強度測定方法>
樹脂成形品(T)からJISK6251の引張試験片ダンベル1号形を作成した。測定方法はJISK6251「引張試験」に準じて測定を行った。
<粒度分布測定方法>
機器:マイクロトラックHRA粒度分析計9320−X100(日機装株式会社製)レーザー式光散乱法
測定サンプル作成方法:サンプル5gを分散剤水溶液50g(三洋化成工業(株)製サンスパールPS−8 4gとイオン交換水46g)に入れる。スターラーピースを入れて200rpmで5分間攪拌し、水中にサンプルを分散させた状態を保持したままスポイト等で約1mlの分散液を採取し、測定サンプルとして使用する。
【0061】
実施例及び比較例に示したように、原料にバイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸、および/またはバイオマス由来の脂肪族ジオールを使用しても、石油由来の脂肪族ジカルボン酸および石油由来の脂肪族ジオールを使用した場合と同様の物性を示すことがわかった。
バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸を使用した実施例1〜8を比較して、なかでも、ポリエステルジオール(A)の合計C数が8以上である実施例2〜8がTgが低く、樹脂成形品(T)の低温条件下でのソフト感に優れるため好ましい。合計C数が12以下である実施例1〜7は、プレポリマーの粘度が低く、粒子化プロセスへの適用が容易になるため好ましい。実施例4のように、耐薬品性などを向上させる目的で、ポリエステルジオール(A)と芳香族ジカルボン酸からなるポリエステル(A’)を併用しても良い。実施例2、5を比較して、ジアミン(F)として1,6−ヘキサメチレンジアミンとイソホロンジアミンの混合物を用いると、実施例5のようにMFRの値を上げることができ、スラッシュ成形時の低温成形性に優れるため特に好ましい。
本実施例の記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)は、バイオマス原料を使用していることから、本品を使用することにより地球温暖化防止、循環型社会の構築に貢献することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)をスラッシュ成形して得られる樹脂成形品(T)は、例えばインストルメントパネル、ドアトリム等の自動車内装材として好適に使用される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスツルメントパネル、ドアトリム等の自動車内装部品の成形用素材として適する、熱可塑性樹脂粉末を主体とする、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スラッシュ成形用の熱可塑性樹脂粉末は、これまで石油由来の原料が主として使用されてきた。これらを成形してなる自動車内装部品は、使用後、廃棄物として焼却処分される。この際に発生する二酸化炭素により引き起こされる地球温暖化が、近年問題となっている。この問題を解決するために、植物など生物由来のバイオマス原料を使用した樹脂材料を自動車等の材料として積極的に使用することが、社会から要請されている。(例えば特許文献1、2、3)。バイオマス原料を使用した部品を焼却処分する際に発生する二酸化炭素は、植物の成長の過程で光合成を行うために吸収した二酸化炭素であるため、全体として見れば大気中の二酸化炭素量を増加させていないと考えられる。このため、バイオマス原料を積極的に使用することで、地球温暖化防止へ貢献することができる。
スラッシュ成形用熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)などが挙げられるが、PVC、TPOの原料である塩化ビニルやオレフィンはバイオマスから生産することができないため、焼却する際の二酸化炭素の生成を抑えることができない。
一方、TPU、なかでもポリエステル系TPUの原料である、ジカルボン酸、ジオールは、バイオマスから生産することができる。近年のバイオ関連技術の発展にともなって、これまで主に石油から作られていた脂肪族ジカルボン酸、および脂肪族ジオールを、バイオマスから生産する技術が注目されている。(例えば特許文献4、5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−28067号公報
【特許文献2】特開2008−56779号公報
【特許文献3】特開2007−314913号公報
【特許文献4】特開2005−211041号公報
【特許文献5】特表2007−502325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物に、バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸、または脂肪族ジオールを積極的に使用し、環境へ貢献しようとしたものは知られていない。本発明が解決しようとする課題は、バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸、および脂肪族ジオールを使用したスラッシュ成形用樹脂粉末組成物を開発し、地球温暖化防止、循環型社会の構築といった社会の要請に答えることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究した結果、本発明を完成させるに至った。
本発明は、バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)、および/またはバイオマス由来の脂肪族ジオール(C)を必須単量体成分とするポリエステルジオール(A)とジイソシアネート(B)を反応させて得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)と添加剤(L)を含有するスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)は、原料にバイオマス原料を使用していることから、本品を使用することにより地球温暖化防止、循環型社会の構築に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】樹脂粉末(E1)の粒度分布測定結果
【図2】樹脂粉末(E2)の粒度分布測定結果
【図3】樹脂粉末(E3)の粒度分布測定結果
【図4】樹脂粉末(E4)の粒度分布測定結果
【図5】樹脂粉末(E5)の粒度分布測定結果
【図6】樹脂粉末(E6)の粒度分布測定結果
【図7】樹脂粉末(E7)の粒度分布測定結果
【図8】樹脂粉末(E8)の粒度分布測定結果
【図9】樹脂粉末(E9)の粒度分布測定結果
【図10】樹脂粉末(E10)の粒度分布測定結果
【図11】樹脂粉末(E11)の粒度分布測定結果
【発明を実施するための形態】
【0008】
スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)は、バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)、および/またはバイオマス由来の脂肪族ジオール(C)を必須単量体成分とするポリエステルジオール(A)とジイソシアネート(B)を反応させて得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)を含有する。
【0009】
本発明において、ポリエステルジオール(A)は、単量体成分として、少なくともバイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)またはバイオマス由来の脂肪族ジオール(C)のいずれかを含有していればよい。なお。脂肪族ジカルボン酸(J)には、そのエステル形成性誘導体(I)も含まれる。
エステル形成性誘導体(I)としては酸無水物、低級アルキルエステル(ジメチルエステル、ジエチルエステルなど)、酸ハライド(酸クロライド等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0010】
バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)、およびバイオマス由来の脂肪族ジオール(C)は、バイオマスから生産されるものであれば特に制限はないが、炭素数2〜10の群から選ばれる脂肪族ジカルボン酸、例えば、コハク酸、セバシン酸、炭素数2〜10の群から選ばれる脂肪族ジオール、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。なかでもバイオマス由来のコハク酸を用いることが好ましい。
【0011】
バイオマス由来のコハク酸の製造方法としては、トウモロコシや小麦等のでんぷんを、発酵法にて製造する方法があり、本発明のコハク酸はこの方法にて製造したものを用いることが好ましい。公知のコハク酸発酵法としては、アナエロビオスピルリム・サクシニシプロデュセンス(Anaerobiospirillumsuccinicproducens)(ATCC35488)の嫌気培養(特開昭62−294090号公報)や、好気性コリネ型細菌であるブレビバクテリウム・フラバム(Brebibacteriumflavum)の遺伝子組み換え菌を増殖後、嫌気的に炭酸ガス含有液中で有機原料に作用させる方法(特開平11−196888号公報)等が挙げられる。バイオマス由来の1,4−ブタンジオールはバイオマス由来のコハク酸を還元することにより得られる。
バイオマス由来のセバシン酸は、例えばひまし油のアルカリ溶融による製造法があり、これを経てバイオマス由来の1,10−デカンジオールが製造される(特開2009−7314号公報)。
バイオマス由来の1,2−エタンジオール、1,2-プロパンジオールは、例えばトウモロコシや、小麦等のでんぷんから酵素、触媒により各種グリコールを合成し、精製することにより得られる(特開2009−20914号公報)。
バイオマス由来の1,3−プロパンジオールは、たとえばトウモロコシ等のでんぷんを発酵、精製することにより得られる(特開2007−502325号公報)。
【0012】
ポリエステルジオール(A)は、単量体成分として、バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)およびバイオマス由来の脂肪族ジオール(C)以外のジカルボン酸成分およびジオール成分を含有することができる。
【0013】
バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)以外のジカルボン酸成分としては、以下の化合物が挙げられる。
(i)炭素数4〜15の脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸等);
(ii)炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸等);
(iii)これらのエステル形成性誘導体(酸無水物、低級アルキルエステル(ジメチルエステル、ジエチルエステルなど)、酸ハライド(酸クロライド等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
これらのなかで、炭素数4〜10の脂肪族ジカルボン酸、およびイソフタル酸が好ましい。
【0014】
バイオマス由来の脂肪族ジオール(C)以外のジオール成分としては、以下のものが挙げられる。
(i)脂肪族低分子ジオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び1,10−デカンジオール等);
(ii)環構造を有する低分子ジオール{たとえば、特公昭45−1474号公報に記載のもの:1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及びm−又はp−キシリレングリコール等};
(iii)ビスフェノールのアルキレンオキシド低モル付加体(数平均分子量500未満);及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
これらのなかで、好ましくは脂肪族低分子ジオールであり、より好ましくは炭素数2〜10の脂肪族低分子ジオール(C1)であり、特に好ましくは1,6−ヘキサンジオールである。
【0015】
ポリエステルジオール(A)中のバイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)および/またはバイオマス由来の脂肪族ジオール(C)の含有量は、環境への貢献度の観点から通常10〜100重量%であり、好ましくは40〜100重量%である。
【0016】
ポリエステルジオール(A)の脂肪族ジオールから2つの水酸基を除いた残基、および(A)の脂肪族ジカルボン酸から2つのカルボキシル基を除いた残基の合計炭素数(以下合計C数と記す。)は8〜12であることが好ましい。合計C数が8以上となると、ポリエステルジオール(A)のエステル基濃度が下がりガラス転移点(Tg)が低くなるため、自動車内装材用樹脂成形品(T)のTgが下がり低温でのソフト感が優れるため好ましい。また、合計C数が12以下となると、ポリエステルジオール(A)の融点が低くなるため、プレポリマー溶液の粘度が低くなり、粒子化プロセスへの適用が容易になるため好ましい。
【0017】
本発明において、ポリエステルジオール(A)とともに、バイオマス由来の単量体成分を全く含有しないポリエステルジオール(A’)を熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の成分として使用できる。
ポリエステルジオール(A’)のうち、芳香族ジカルボン酸と脂肪族低分子ジオール(炭素数2〜10)からなるポリエステルジオール(a’)が好ましく、ヘキサメチレンイソフタレートジオールが特に好ましい。
【0018】
ポリエステルジオール(A)とポリエステルジオール(A’)を併用する場合において、ポリエステルジオール(A)の含有量は、ポリエステルジオール全体の重量に基づいて30〜100重量%であり、また、自動車内装材用樹脂成形品(T)重量に基づいて10〜95重量%である。この範囲において環境への貢献度の点から好ましい。
(a’)の含有量は、ポリエステルジオール全体の重量に基づいて、0〜30重量%であることが好ましく、より好ましくは0〜10重量%である。(a’)の含有量を上げると、剛直な構造が樹脂に組み込まれ、自動車内装材用樹脂成形品(T)の耐薬品性などの耐久性を上げることができる。30重量%を超えると、自動車内装材用樹脂成形品(T)中のバイオマス由来原料の比率が下がり、環境への貢献度が下がる。また、自動車内装材用樹脂成形品(T)のTgが上がり、低温でのソフト感に劣る。
【0019】
ポリエステルジオール(A)は、例えば以下の方法にて製造することができる。
ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体と、ジオールを200 〜280 ℃で約2〜10時間常圧下で、次いで、200 〜280 ℃で約2〜10時間減圧下で、反応させることにより行う。エステル化反応を行う際に、公知のエステル化触媒や重縮合触媒、を使用しても良い。アンチモン、チタン、ゲルマニウム、スズ、亜鉛等の化合物が好ましく、チタン系(例えばチタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラヘキソキシド、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド、チタンテトラオクトキシド)がより好ましく、チタンテトライソプロポキシドが特に好ましい。ただし、樹脂粉末組成物(S)および自動車内装材用樹脂成形品(T)の製造工程、性能等に影響を及ぼす触媒を使用する場合、触媒の失活、除去等の工程が必要となり、例えばチタンテトライソプロポキシドを使用する場合は、後の製造工程中のウレタン化反応に影響を及ぼすため、触媒の失活工程が必要となる。
【0020】
ジイソシアネート(B)は、
(i)炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)2〜18の脂肪族ジイソシアネート[エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等];
(ii)炭素数4〜15の脂環族ジイソシアート[イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロへキセン等];
(iii)炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート[m−および/またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等];芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、1,3−及び/又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−及び/又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、粗製MDI、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−及びp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等;
(iv)これらのジイソシアネートの変性物(カーボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、ウレア基等を有するジイソシアネート変性物);
(v)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
これらのうち好ましいものは脂肪族ジイソシアネートまたは脂環族ジイソシアネートであり、より好ましいのは、HDI、IPDI、水添MDIであり、HDIがとくに好ましい。
【0021】
本発明において、熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)を含有する樹脂粉末(E)は、例えば、以下の方法で得ることができる。
(1)ポリエステルジオール(A)とジイソシアネート(B)から得られるイソシアネート含有ウレタンプレポリマー(U)を、水および分散安定剤存在下で、攪拌下にブロックされた低分子ジアミン(F)(例えばケチミン化合物)で伸長反応させて熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)を含有する樹脂粉末(E)を得る。
(2)上記ウレタンプレポリマー(U)を、非極性有機溶媒および分散安定剤存在下で、攪拌下に鎖伸長剤[低分子ジアミン(F)及び低分子ジオール等]で伸長反応させて熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)を含有する樹脂粉末(E)を得る。
(3)ポリエステルジオール(A)、ジイソシアネート(B)および低分子ジアミン(F)又は低分子ジオールを反応させることで熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の塊状物を得る。ついで粉末化(例えば冷凍粉砕、溶融状態下に細孔を通し切断する方法)して樹脂粉末(E)を得る。
熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)は、ポリエステルジオール(A)とジイソシアネート(B)を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを低分子ジアミン(F)、又は低分子ジオールで鎖伸長して得られるものが好ましく、低分子ジアミン(F)で鎖伸長して得られるものが好ましい。
添加剤(L)は上記工程中で適宜添加することができる。
【0022】
低分子ジアミン(F)としては、炭素数2〜18の脂肪族ジアミン(F1)(1,4−テトラメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン及び1,10−デカメチレンジアミン等)及び炭素数6〜18の脂環式ジアミン(F2)(イソホロンジアミン等)が好ましい。これら(F)は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
低分子ジオールは、前記したものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0024】
樹脂粉末組成物(S)のスラッシュ成形における低温成形性を向上させるために、低分子ジアミン(F)として、炭素数2〜18の脂肪族ジアミン(F1)と脂環式ジアミン(F2)の混合物を用いることがより好ましく、1,6−ヘキサメチレンジアミンとイソホロンジアミンの混合物を用いることが特に好ましい。脂環式アミン(F2)を混合することで、ハードセグメントの凝集力が適度に弱まり、樹脂粉末組成物(S)の低温溶融性を向上させることができる。
アミン組成における(F1)と(F2)の合計モルに対する(F1)のモル%は、70〜100%であることが好ましく、より好ましくは80〜98%であり、85〜90%であることが特に好ましい。(F1)比率がこれらの範囲であると、熱軟化温度が下がらず、高温環境下での耐熱変形性が良好となる。
【0025】
熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと記載)による重量平均分子量(以下、Mwと記載)は、好ましくは10万〜25万である。Mwが10万以上であれば、自動車内装材用樹脂成形品(T)の高温環境下での耐熱変形性が良好であり、25万以下であれば、樹脂粉末組成物(S)のスラッシュ成形時の低温溶融性が良好である。
【0026】
本発明の樹脂粉末組成物(S)は、熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)と添加剤(L)を含む。添加剤(L)としては無機フィラー、顔料、可塑剤、離型剤、有機充填剤、ブロッキング防止剤(流動性向上剤)、安定剤及び分散剤等が挙げられる。
添加剤(L)の含有量は樹脂粉末組成物(S)の重量に対して、通常0.01〜45重量%であり、好ましくは1〜25重量%である。
熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の含有量は樹脂粉末組成物(S)の重量に対して、通常55〜99.99重量%であり、好ましくは75〜99重量%である。
【0027】
無機フィラーとは、カオリン、タルク、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、ベントナイト、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、ガラス繊維、黒鉛、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、硫酸バリウム、ホウ酸亜鉛、アルミナ、マグネシア、ウォラストナイト、ゾノトライト、ウィスカー及び金属粉末等が挙げられる。これらのうち、熱可塑性樹脂の結晶化促進の観点から、カオリン、タルク、シリカ、酸化チタン及び炭酸カルシウムが好ましく、さらに好ましくはカオリン及びタルクである。
無機フィラーの含有量は熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の重量に対して、通常0〜40重量%であり、好ましくは1〜20重量%である。
【0028】
顔料としては特に限定されず、公知の有機顔料および/または無機顔料を使用することができる。
有機顔料としては、例えば不溶性もしくは溶性アゾ顔料、銅フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられ、無機系顔料としては、例えばクロム酸塩、フェロシアン化合物、金属酸化物(酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム等)、金属塩類[硫酸塩(硫酸バリウム等)、珪酸塩(珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム等)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、燐酸塩(燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム等)等]、金属粉末(アルミ粉末、鉄粉末、ニッケル粉末、銅粉末等)、カーボンブラック等が挙げられる。
顔料の含有量は熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の重量に対して、通常0.01〜10重量%であり、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0029】
可塑剤としては、フタル酸エステル(フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチルベンジル及びフタル酸ジイソデシル等);脂肪族2塩基酸エステル(アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル及びセバシン酸−2−エチルヘキシル等);トリメリット酸エステル(トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル及びトリメリット酸トリオクチル等);脂肪酸エステル(オレイン酸ブチル等);脂肪族リン酸エステル(トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート及びトリブトキシホスフェート等);芳香族リン酸エステル(トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート及びトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート等);ハロゲン脂肪族リン酸エステル(トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(βークロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート及びトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等);及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
可塑剤の含有量は熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の重量に対して、通常0〜20重量%であり、好ましくは0〜15重量%である。
【0030】
離型剤としては公知の離型剤等が使用でき、フッ素化合物型離型剤(リン酸トリパーフルオロアルキル(炭素数8〜20)エステル、たとえば、トリパーフルオロオクチルホスフェート及びトリパーフルオロドデシルホスフェート等);シリコーン化合物型離型剤(ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン及びカルボキシル変性ジメチルポリシロキサン等)、脂肪酸エステル型離型剤(炭素数10〜24の脂肪酸のモノ又は多価アルコールエステル、たとえば、ブチルステアレート、硬化ひまし油及びエチレングリコールモノスレアレート等);脂肪族酸アミド型離型剤(炭素数8〜24の脂肪酸のモノ又はビスアミド、たとえば、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド及びエチレンジアミンのジステアリン酸アミド等);金属石鹸(ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸亜鉛等);天然又は合成ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス及びポリブロピレンワックス等);及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
離型剤の含有量は熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の重量に対して、通常0〜1重量%であり、好ましくは0.1〜0.5重量%である。
【0031】
安定剤とは、分子中に炭素−炭素二重結合(置換基を有していてもよいエチレン結合等)(ただし芳香環中の二重結合は除く)、炭素−炭素三重結合(置換基を有していてもよいアセチレン結合)を有する化合物等が使用でき、(メタ)アクリル酸と多価アルコール(2〜10価の多価アルコール、以下同様)とのエステル(エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等);(メタ)アリルアルコールと2〜6価の多価カルボン酸とのエステル(ジアリルフタレート及びトリメリット酸トリアリルエステル等);多価アルコールのポリ(メタ)アリルエーテル(ペンタエリスリトール(メタ)アリルエーテル等);多価アルコールのポリビニルエーテル(エチレングリコールジビニルエーテル等);多価アルコールのポリプロペニルエーテル(エチレングリコールジプロペニルエーテル等);ポリビニルベンゼン(ジビニルベンゼン等)及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステルが好ましく、さらに好ましくはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートである。
安定剤の含有量は熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の重量に対して、通常0〜20重量%であり、好ましくは1〜15重量%である。
【0032】
ブロッキング防止剤(流動性向上剤)として、公知の無機系ブロッキング防止剤及び有機系ブロッキング防止剤等を使用することができる。無機系ブロッキング防止剤としてはシリカ、タルク、酸化チタン及び炭酸カルシウム等が挙げられる。有機系ブロッキング防止剤としては粒子径10μm以下の熱硬化性樹脂(熱硬化性ポリウレタン樹脂、グアナミン系樹脂及びエポキシ系樹脂等)及び粒子径10μm以下の熱可塑性樹脂(熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂及びポリ(メタ)アクリレート樹脂等)等が挙げられる。
ブロッキング防止剤(流動性向上剤)の含有量は熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の重量に対して、通常0〜5重量%であり、好ましくは0.5〜1重量%である。
【0033】
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)を含有する樹脂粉末(E)と添加剤(L)を、混合して樹脂粉末組成物(S)を生産するときに使用する混合装置としては、公知の粉体混合装置を使用でき、容器回転型混合機、固定容器型混合機、流体運動型混合機のいずれも使用できる。例えば固定容器型混合機としては高速流動型混合機、複軸パドル型混合機、高速剪断混合装置(ヘンシエルミキサー(登録商標)等)、低速混合装置(プラネタリーミキサー等)や円錐型スクリュー混合機(ナウタ−ミキサ−(登録商標)等)を使ってドライブレンドする方法が良く知られている。これらの方法の中で、複軸パドル型混合機、低速混合装置(プラネタリーミキサー等)、および円錐型スクリュー混合機(ナウタ−ミキサ−(登録商標、以下省略)等)を使用するのが好ましい。
【0034】
樹脂粉末組成物(S)の体積平均粒径は、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは70〜300μmである。
【0035】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)を成形して得られる樹脂成形品(T)の例として、例えば表皮等が挙げられる。スラッシュ成形法としては、例えば本発明の粉末組成物が入ったボックスと加熱した金型を共に振動回転させ、パウダーを型内で溶融流動させた後、冷却後、固化させ、表皮を製造する方法を挙げることができる。
上記金型温度は好ましくは200〜300℃、さらに好ましくは210〜280℃である。表皮厚さは、0.5〜1.5mmが好ましい。
【0036】
成形表皮は、表面を発泡型に接するようにセットし、ウレタンフォームを流し、裏面に5mm〜15mmの発泡層を形成させて、該表皮を有する樹脂成形品とすることができる。
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)を成形して得られる樹脂成形品(T)は、自動車内装材、例えばインストルメントパネル、ドアトリム等に好適に使用される。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
製造例1
ポリエステルジオール(A)の製造
ディーンスターク装置を取り付けたガラス製反応装置にバイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(690.1部)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)を仕込み、窒素置換を行いながら170℃まで昇温した。減圧下(−80kpa)にて10時間エステル化反応を行い、チタンテトライソプロポキシド(0.02部)を加えさらに5時間反応を行い、生成した縮合水を系外へ除去した。生成物に水(200部)を加え100℃で3時間加熱しチタンテトライソプロポキシドを失活させた。減圧下で脱水を行い、ポリトリメチレンサクシネートジオール(A1)(分子量1000)を得た。
【0038】
製造例2
プレポリマー溶液の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、製造例1で得たポリトリメチレンサクシネートジオール(A1)(604.13部)、酸化防止剤ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート][チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製; イルガノックス1010](1.08部)、体積平均粒径9.2μmのカオリン(18.6部)を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら120℃に加熱して均一化させ、60℃まで冷却した。続いて、1−オクタノール(9.45部)、ヘキサメチレンジイソシアネート(B1)(145.11部)、メチルエチルケトン(150部)、90℃で4時間反応させた。その後、65℃まで冷却し、紫外線吸収剤2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製; チヌビン571](2.16部)、ブラック着色剤(28.40部)を投入し1時間混合することでプレポリマー溶液(U1)を得た。
【0039】
製造例3
ヘキサメチレンジアミンのMEK(メチルエチルケトン)ケチミン化物の製造
ヘキサメチレンジアミン(F1)と過剰のMEK(ジアミンに対して4倍モル量)を80℃で24時間還流させながら生成水を系外に除去した。その後減圧にて未反応のMEKを除去してヘキサメチレンジアミンのMEKケチミン化物(G1)を得た。
【0040】
製造例4
熱可塑性ポリウレタン樹脂を含有する樹脂粉末の製造
反応容器に、製造例2で得たプレポリマー溶液(U1)(100部)と製造例3で得たヘキサメチレンジアミンのMEKケチミン化合物(G1)(5.20部)を投入し、そこにジイソブチレンとマレイン酸との共重合体のNa塩を含む分散剤(三洋化成工業(株)製サンスパールPS−8)(1.3部)を溶解した水溶液(300部)を加え、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて5000rpmの回転数で1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら70℃、減圧下で2時間反応、脱MEKを行った。反応終了後、濾別及び乾燥、分級を行い、熱可塑性ポリウレタン樹脂(D1)を含有する樹脂粉末(E1)を製造した。(D1)のMwは13万、(E1)の積算分布曲線の50%に相当する粒子径(以下体積平均粒径という)は152μmであった(図1)。
【0041】
実施例1
樹脂粉末組成物の製造
3Lのプラネタリーミキサー内に、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(E1)(100部)、PEG330の安息香酸ジエステル〔三洋化成工業(株)製サンソフト EB−300〕(12.0部)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート [三洋化成工業株式会社;DA600](3.9部)、紫外線安定剤ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)[商品名:TINUVIN 765、チバ社製](0.3部)を投入し70℃で4時間含浸した。含浸4時間後、2種類の内添離型剤であるジメチルポリシロキサン[日本ユニカー(株)製;ケイL45−1000](0.10部)、カルボキシル変性シリコン[信越化学工業(株)製;X−22−3710](0.07部)、を投入し1時間混合した後室温まで冷却した。最後に、ブロッキング防止剤架橋ポリメチルメタクリレート[ガンツ化成(株);ガンツパールPM−030S](0.5部)を投入混合することで樹脂粉末組成物(S1)を得た。
【0042】
実施例2
製造例1において、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(690.1部)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)の代わりに、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(520.4部)と石油由来の1,6−ヘキサンジオール(638.4部)を使用すること以外は製造例1と同様にしてポリヘキサメチレンサクシネートジオール(A2)(分子量1000)を得た。
続いて、製造例2において、(A1)の代わりに、(A2)を使用すること以外は製造例2と同様にしてプレポリマー溶液(U2)を得た。
続いて、製造例4において、(U1)の代わりに、(U2)を使用すること以外は、製造例4と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂(D2)を含有する樹脂粉末(E2)を製造した。(D2)のMwは15万、(E2)の体積平均粒径は132μmであった(図2)。
続いて、実施例1において、(E1)の代わりに、(E2)を使用すること以外は、実施例1と同様にして樹脂粉末組成物(S2)を製造した。
【0043】
実施例3
製造例1において、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(690.1部)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)の代わりに、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(380.7部)とバイオマス由来の1,10−デカンジオール[小倉合成工業(株)社製](735.4部)を使用すること以外は製造例1と同様にしてポリデカメチレンサクシネートジオール(A3)(分子量1000)を得た。
続いて、製造例2において、(A1)の代わりに、(A3)を使用すること以外は製造例2と同様にしてプレポリマー溶液(U3)を得た。
続いて、製造例4において、(U1)の代わりに、(U3)を使用すること以外は、製造例4と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂(D3)を含有する樹脂粉末(E3)を製造した。(D3)のMwは14万、(E3)の体積平均粒径は151μmであった(図3)。
続いて、実施例1において、(E1)の代わりに、(E3)を使用すること以外は、実施例1と同様にして樹脂粉末組成物(S3)を製造した。
【0044】
製造例5
ポリエステルジオールの製造
ディーンスターク装置を取り付けたガラス製反応装置にイソフタル酸(580.9部)、石油由来の1,6−ヘキサンジオール(598.7部)を仕込み、窒素置換を行いながら230℃まで昇温した。230℃で加圧下(50kpa)にて4時間、210℃で減圧(−80kpa)にて8時間エステル化反応を行い、ポリへキサメチレンイソフタレートジオール(A’1)(分子量900)を得た。
【0045】
実施例4
製造例2において、(A1)の代わりに、ポリヘキサメチレンサクシネートジオール(A2)(422.89部)とポリヘキサメチレンイソフタレートジオール(A’1)(181.2部)を使用したこと以外は、製造例2と同様にしてプレポリマー溶液(U4)を得た。
続いて、製造例4において、(U1)の代わりに、(U4)を使用すること以外は、製造例4と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂(D4)を含有する樹脂粉末(E4)を製造した。(D4)のMwは15万、(E4)の体積平均粒径は140μmであった(図4)。
続いて、実施例1において、(E1)の代わりに、(E4)を使用すること以外は、実施例1と同様にして樹脂粉末組成物(S4)を製造した。
【0046】
製造例6
イソホロンジアミンのMEK(メチルエチルケトン)ケチミン化物の製造
イソホロンンジアミン(F2)と過剰のMEK(ジアミンに対して4倍モル量)を80℃で24時間還流させながら生成水を系外に除去した。その後減圧にて未反応のMEKを除去してイソホロンジアミンのMEKケチミン化物(G2)を得た。
【0047】
実施例5
製造例4において、プレポリマー溶液(U1)(100部)の代わりにプレポリマー溶液(U4)(100部)を使用し、ヘキサメチレンジアミンのMEKケチミン化合物(G1)(5.20部)の代わりにヘキサメチレンジアミンのMEKケチミン化合物(G1)(4.66部)とイソホロンジアミンのMEKケチミン化合物(G2)(0.12部)を使用した以外は、製造例4と同様にして、熱可塑性ポリウレタン樹脂(D5)を含有する樹脂粉末(E5)を製造した。(D5)のMwは12万、(E5)の体積平均粒径は148μmであった(図5)。実施例1と同様にして、樹脂粉末組成物(S5)を製造した。
【0048】
実施例6
製造例1において、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(690.1部)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)の代わりに、バイオマス由来のセバシン酸[小倉合成(株)社製](831.0部)とバイオマス由来の1,2−エタンジオール[長春大成集団製](317.1部)を使用すること以外は、製造例1と同様にしてポリジメチレンセバケートジオール(A4)(分子量1000)を得た。
続いて、製造例2において、(A1)の代わりに、(A4)を使用すること以外は製造例2と同様にしてプレポリマー溶液(U5)を得た。
続いて、製造例4において、(U1)の代わりに、(U5)を使用すること以外は、製造例4と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂(D6)を含有する樹脂粉末(E6)を製造した。(D6)のMwは15万、(E6)の体積平均粒径は155μmであった(図6)。
続いて、実施例1において、(E1)の代わりに、(E6)を使用すること以外は、製造例5と同様にして樹脂粉末組成物(S6)を製造した。
【0049】
実施例7
製造例1において、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(690.1部)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)の代わりに、バイオマス由来のセバシン酸[小倉合成(株)社製](771.2部)とバイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](366.2部)を使用すること以外は、製造例1と同様にしてポリトリメチレンセバケートジオール(A5)(分子量1000)を得た。
続いて、製造例2において、(A1)の代わりに、(A5)を使用すること以外は製造例2と同様にしてプレポリマー溶液(U6)を得た。
続いて、製造例4において、(U1)の代わりに、(U6)を使用すること以外は、製造例4と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂(D7)を含有する樹脂粉末(E7)を製造した。(D7)のMwは13万、(E7)の体積平均粒径は154μmであった(図7)。
続いて、実施例1において、(E1)の代わりに、(E7)を使用すること以外は、実施例1と同様にして樹脂粉末組成物(S7)を製造した。
【0050】
実施例8
製造例1において、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(690.1部)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)の代わりに、バイオマス由来のセバシン酸[小倉合成(株)社製](627.3部)と石油由来の1,6−ヘキサンジオール(484.4部)を使用すること以外は、製造例1と同様にしてポリヘキサメチレンセバケートジオール(A6)(分子量1000)を得た。
続いて、製造例2において、(A1)の代わりに、(A6)を使用すること以外は製造例2と同様にしてプレポリマー溶液(U7)を得た。
続いて、製造例4において、(U1)の代わりに、(U7)を使用すること以外は、製造例4と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂(D8)を含有する樹脂粉末(E8)を製造した。(D8)のMwは12万、(E8)の体積平均粒径は166μmであった(図8)。
続いて、実施例1において、(E1)の代わりに、(E8)を使用すること以外は、実施例1と同様にして樹脂粉末組成物(S8)を製造した。
【0051】
実施例9
製造例1において、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(690.1部)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)の代わりに、石油由来のコハク酸(690.1部)とバイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)を使用すること以外は、製造例1と同様にしてポリトリメチレンサクシネートジオール(A7)(分子量1000)を得た。
続いて、製造例2において、(A1)の代わりに、(A7)を使用すること以外は製造例2と同様にしてプレポリマー溶液(U8)を得た。
続いて、製造例4において、(U1)の代わりに、(U8)を使用すること以外は、製造例4と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂(D9)を含有する樹脂粉末(E9)を製造した。(D9)のMwは12万、(E9)の体積平均粒径は159μmであった(図9)。
続いて、実施例1において、(E1)の代わりに、(E9)を使用すること以外は、実施例1と同様にして樹脂粉末組成物(S9)を製造した。
【0052】
比較例1
製造例1において、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(690.1部)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)の代わりに、石油由来のコハク酸(520.4部)と、石油由来の1,6−ヘキサンジオール(638.4部)を使用すること以外は、製造例1と同様にしてポリヘキサメチレンサクシネートジオール(A’2)(分子量1000)を得た。
続いて、製造例2において、(A1)の代わりに、(A’2)を使用すること以外は製造例2と同様にしてプレポリマー溶液(U9)を得た。
続いて、製造例4において、プレポリマー溶液(U1)(100部)の代わりにプレポリマー溶液(U9)(100部)を使用し、ヘキサメチレンジアミンのMEKケチミン化合物(G1)(5.20部)の代わりにヘキサメチレンジアミンのMEKケチミン化合物(G1)(4.66部)とイソホロンジアミンのMEKケチミン化合物(G2)(0.12部)を使用した以外は、製造例4と同様にして、熱可塑性ポリウレタン樹脂(D10)を含有する樹脂粉末(E10)を製造した。(D10)のMwは12万、(E10)の体積平均粒径は163μmであった(図10)。
続いて、実施例1において、(E1)の代わりに、(E10)を使用すること以外は、実施例1と同様にして樹脂粉末組成物(S10)を製造した。
【0053】
比較例2
製造例1において、バイオマス由来のコハク酸(Bio amber社製)(690.1部)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオール[デュポン(株)社製; Susterra](520.5部)の代わりに、石油由来のアジピン酸(664.3部)と、石油由来の1,6−ヘキサンジオール(499.5部)を使用すること以外は、製造例1と同様にしてポリヘキサメチレンサクシネートジオール(A’3)(分子量1000)を得た。
続いて、製造例2において、(A1)の代わりに、(A’3)を使用すること以外は製造例2と同様にしてプレポリマー溶液(U10)を得た。
続いて、製造例4において、(U1)の代わりに、(U10)を使用すること以外は、製造例4と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂(D11)を含有する樹脂粉末(E11)を製造した。(D11)のMwは12万、(E11)の体積平均粒径は144μmであった(図11)。
続いて、実施例1において、(E1)の代わりに、(E11)を使用すること以外は、実施例1と同様にして樹脂粉末組成物(S11)を製造した。
【0054】
樹脂成形品の製造
以下のようにスラッシュ成形を行った。予め、実施例5、比較例1は230℃に、それ以外は270℃に加熱されたしぼ模様の入ったNi電鋳型に実施例1〜9、及び比較例1、2のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S1)〜(S11)を充填し、10秒後余分な樹脂粉末組成物を排出する。60秒放冷後、水冷してNi電鋳型から脱型することで、厚さ1mmの樹脂成形品(T1)〜(T11)を得た。
【0055】
実施例1〜9、及び比較例1、2の樹脂粉末組成物(E1)〜(E9)について下記に示す方法で、メルトフローレートの測定を行った。また、実施例1〜9、及び比較例1、2の樹脂成形品(T1)〜(T11)について下記に示す方法で、ガラス転移温度(Tg)、熱軟化温度(℃)、表皮物性の測定を行った。結果を表1、表2に示した。
また、樹脂粉末(E1)〜(E11)について下記の粒度分布測定方法により粒度分布を測定し、結果を図1〜11に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
<MFR測定方法>
機器:メルトフローインデクサー(安田精機製作所製)
荷重:2.16kgf
温度:215℃
試料量:50g
上記条件でのMFRの値(g/10min)が高い程、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)のスラッシュ成形時の低温成形性に優れるため好ましい。
【0059】
<ガラス転移温度測定方法>
幅約5mm、長さ約45mmの試験片を切り取り、動的粘弾性測定装置(Rheogel−E4000、UBM製)に取り付け、周波数10Hzで−80℃から30℃まで引張温度依存性の測定を行った。得られたE’’ピークトップ温度を樹脂のガラス転移温度(Tg)(℃)とする。ガラス転移温度が低いほど、樹脂成形品(T)の低温条件下でのソフト感に優れるため好ましい。
【0060】
<熱軟化温度測定方法>
機器:熱機械分析装置TMA/SS6100
データ処理装置EXSTAR6000[エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製]
測定条件:測定温度範囲25〜250℃、昇温速度5℃/min、荷重5g、針直径0.5mm。
解析方法:TMAチャートにおいて、「JIS K7121−1987、P.5、図3階段状変化」の方法に準じて、TMA曲線の接線の交点を求め、熱軟化温度とする。
熱軟化温度が高いほど、樹脂成形品(T)の高温条件下での耐変形性に優れるため好ましい。
<引張強度測定方法>
樹脂成形品(T)からJISK6251の引張試験片ダンベル1号形を作成した。測定方法はJISK6251「引張試験」に準じて測定を行った。
<粒度分布測定方法>
機器:マイクロトラックHRA粒度分析計9320−X100(日機装株式会社製)レーザー式光散乱法
測定サンプル作成方法:サンプル5gを分散剤水溶液50g(三洋化成工業(株)製サンスパールPS−8 4gとイオン交換水46g)に入れる。スターラーピースを入れて200rpmで5分間攪拌し、水中にサンプルを分散させた状態を保持したままスポイト等で約1mlの分散液を採取し、測定サンプルとして使用する。
【0061】
実施例及び比較例に示したように、原料にバイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸、および/またはバイオマス由来の脂肪族ジオールを使用しても、石油由来の脂肪族ジカルボン酸および石油由来の脂肪族ジオールを使用した場合と同様の物性を示すことがわかった。
バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸を使用した実施例1〜8を比較して、なかでも、ポリエステルジオール(A)の合計C数が8以上である実施例2〜8がTgが低く、樹脂成形品(T)の低温条件下でのソフト感に優れるため好ましい。合計C数が12以下である実施例1〜7は、プレポリマーの粘度が低く、粒子化プロセスへの適用が容易になるため好ましい。実施例4のように、耐薬品性などを向上させる目的で、ポリエステルジオール(A)と芳香族ジカルボン酸からなるポリエステル(A’)を併用しても良い。実施例2、5を比較して、ジアミン(F)として1,6−ヘキサメチレンジアミンとイソホロンジアミンの混合物を用いると、実施例5のようにMFRの値を上げることができ、スラッシュ成形時の低温成形性に優れるため特に好ましい。
本実施例の記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)は、バイオマス原料を使用していることから、本品を使用することにより地球温暖化防止、循環型社会の構築に貢献することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)をスラッシュ成形して得られる樹脂成形品(T)は、例えばインストルメントパネル、ドアトリム等の自動車内装材として好適に使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)、および/またはバイオマス由来の脂肪族ジオール(C)を必須単量体成分とするポリエステルジオール(A)とジイソシアネート(B)を反応させて得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)と添加剤(L)を含有するスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)。
【請求項2】
単量体成分の脂肪族ジオール(C)から2つの水酸基を除いた残基、および脂肪族ジカルボン酸(J)から2つのカルボキシル基を除いた残基の合計炭素数が8〜12である請求項1に記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)。
【請求項3】
バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)が、コハク酸および/またはセバシン酸である請求項1又は2に記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)。
【請求項4】
バイオマス由来の脂肪族ジオール(C)が、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び1,10−デカンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)。
【請求項5】
熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)が、ポリエステルジオール(A)とジイソシアネート(B)を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを低分子ジアミン(F)で鎖伸長して得られる請求項1〜4のいずれか1項に記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)。
【請求項1】
バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)、および/またはバイオマス由来の脂肪族ジオール(C)を必須単量体成分とするポリエステルジオール(A)とジイソシアネート(B)を反応させて得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)と添加剤(L)を含有するスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)。
【請求項2】
単量体成分の脂肪族ジオール(C)から2つの水酸基を除いた残基、および脂肪族ジカルボン酸(J)から2つのカルボキシル基を除いた残基の合計炭素数が8〜12である請求項1に記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)。
【請求項3】
バイオマス由来の脂肪族ジカルボン酸(J)が、コハク酸および/またはセバシン酸である請求項1又は2に記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)。
【請求項4】
バイオマス由来の脂肪族ジオール(C)が、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び1,10−デカンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)。
【請求項5】
熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)が、ポリエステルジオール(A)とジイソシアネート(B)を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを低分子ジアミン(F)で鎖伸長して得られる請求項1〜4のいずれか1項に記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−97184(P2012−97184A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245760(P2010−245760)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】
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