説明

スルーホールの形成方法及び多層プリント配線板

【課題】内側に施すメッキの密着力を向上させたスルーホールの形成方法を提供すること。
【解決手段】多層プリント配線板10の積層段階において、電気的に導通させる層のスルーホール形成予定箇所にスルーホール導通用パターン11,12を形成し、かつ、電気的に導通させる必要のない層のスルーホール形成予定箇所にメッキ強化用パターン17を形成して多層構造を構成する手順と、前記スルーホール形成予定箇所に貫通孔13を形成する手順と、前記貫通孔の内側にメッキ処理を施す手順とを実施してなることを特徴としたスルーホール16の形成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルーホール用の貫通孔内に施すメッキの密着性を向上させたスルーホールの形成方法及び多層プリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多層プリント配線板において、層間の導通を要するパターン箇所にスルーホール用の貫通孔を形成してその内側をメッキ処理することでスルーホールによる層間の電気的導通を確保する手法が従来より行われてきた。例えば、図3(a)に示すように、4層のプリント配線板10の最外層同士を電気的に接続する場合には、スルーホールを形成する予定の箇所に予めスルーホール導通用パターン11、12を形成しておく。スルーホール導通用パターン11、12を形成した箇所に、図3(b)に示すように、導通用パターン11、12及び基板15を貫通させるように貫通孔13を穿設する。その後、図3(c)に示すように、貫通孔13の内側にメッキ14を施すことで、導通用パターン11、12とメッキ14がそれぞれ金属結合して、スルーホール16が形成される。このスルーホール16により、導通用パターン11と12が電気的に導通して、最外層同士を電気的に接続することが可能となる。
【0003】
前記スルーホール16の形状としては、円形の貫通孔13を形成する場合の他に、図4(a)に示すように、一方向に長く形成した長孔のスルーホールや、図4(b)に示すように、方形に近い形状に形成したスルーホールなど、様々な形状のスルーホールが存在する。
【0004】
以上のようなスルーホールを形成した例としては、例えば、特許文献1が既に提案されている。また、図4(a)に示すような長孔のスルーホールの形成のための方法として、本出願人は特許文献2を既に提案している。
【特許文献1】特開2008−113022号公報
【特許文献2】特開2007−098502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図3(c)に示すようなスルーホールを形成する場合、基板材料からのガスの発生などにより、図3(d)において矢印で示すように、基板内部からメッキ部分に対して圧力が加わることがある。この場合、メッキ14はスルーホール導通用パターン11、12部分において結合しているのみであるため、スルーホール壁面の中央付近が膨らむ現象が生じる恐れがあり、さらには、図3(d)に示すように、破線丸印で示すメッキの結合箇所において、圧力が集中することによってコーナークラックが生じる恐れがある。これは最終的にはメッキの剥離に繋がる恐れもある。
【0006】
このようなメッキの密着力の低下の問題は、図4(a)及び(b)に示すような直線部分(矢印で示した範囲)を有するスルーホールにおいて生じやすく、密着力の低下によって層間の電気的接続が不安定になる恐れがある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、内側に施すメッキの密着力を向上させたスルーホールの形成方法及びスルーホールを形成した多層プリント配線板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1は、多層プリント配線板の積層段階において、電気的に導通させる層のスルーホール形成予定箇所にスルーホール導通用パターンを形成し、かつ、電気的に導通させる必要のない層のスルーホール形成予定箇所にメッキ強化用パターンを形成して多層構造を構成する手順と、前記スルーホール形成予定箇所に貫通孔を形成する手順と、前記貫通孔の内側にメッキ処理を施す手順とを実施してなることを特徴とするスルーホールの形成方法である。
【0009】
本発明の請求項2は、請求項1に加えて、前記貫通孔を形成する手順とメッキ処理を施す手順との間において、貫通孔の内壁面に表面積増加のための複数の溝を形成する手順を実行することを特徴とするスルーホールの形成方法である。
【0010】
本発明の請求項3は、請求項2に加えて、前記複数の溝は、前記貫通孔の外周面に沿ってルーターを蛇行処理させることで形成することを特徴とするスルーホールの形成方法である。
【0011】
本発明の請求項4は、請求項2に加えて、前記複数の溝は、貫通孔形成前に予め貫通孔の外周面に位置する部分に複数の下穴を形成して、その後に貫通孔を形成するようにして前記下穴を当該溝とすることを特徴とするスルーホールの形成方法である。
【0012】
本発明の請求項5は、多層プリント配線板の積層段階において、電気的に導通させる層のスルーホール形成予定箇所にスルーホール導通用パターンを形成し、かつ、電気的に導通させる必要のない層のスルーホール形成予定箇所にメッキ強化用パターンを形成して多層構造を構成し、前記スルーホール形成予定箇所に貫通孔を形成し、かつ、前記貫通孔の内側にメッキ処理を施すことで形成したスルーホールを有することを特徴とする多層プリント配線板である。
【0013】
本発明の請求項6は、請求項5に加えて、メッキ処理の前段階において、前記貫通孔の壁面には、表面積増加のための複数の溝を形成したことを特徴とする多層プリント配線板である。
【0014】
本発明の請求項7は、請求項6に加えて、前記複数の溝は、前記貫通孔の外周面に沿ってルーターを蛇行処理させることで形成することを特徴とする多層プリント配線板である。
【0015】
本発明の請求項8は、請求項6に加えて、前記複数の溝は、貫通孔形成前に予め貫通孔の外周面に位置する部分に複数の下穴を形成して、その後に貫通孔を形成するようにして前記下穴を当該溝とすることを特徴とする多層プリント配線板である。
【0016】
本発明の請求項9は、多層プリント配線板の積層段階において、電気的に導通させる層のスルーホール形成予定箇所にスルーホール導通用パターンを形成する手順と、前記スルーホール形成予定箇所に貫通孔を形成する手順と、前記貫通孔の内壁面に表面積増加のための複数の溝を形成する手順と、前記貫通孔の内側にメッキ処理を施す手順とを実行してなることを特徴とするスルーホールの形成方法である。
【0017】
本発明の請求項10は、請求項9に加えて、前記複数の溝は、前記貫通孔の外周面に沿ってルーターを蛇行処理させることで形成することを特徴とするスルーホールの形成方法である。
【0018】
本発明の請求項11は、請求項9に加えて、前記複数の溝は、貫通孔形成前に予め貫通孔の外周面に位置する部分に複数の下穴を形成して、その後に貫通孔を形成するようにして前記下穴を当該溝とすることを特徴とするスルーホールの形成方法である。
【0019】
本発明の請求項12は、多層プリント配線板の積層段階において、電気的に導通させる層のスルーホール形成予定箇所にスルーホール導通用パターンを形成した後に積層することで多層構造を構成し、前記スルーホール形成予定箇所に貫通孔を形成し、前記貫通孔の内壁面に表面積増加のための複数の溝を形成し、かつ、前記貫通孔の内側にメッキ処理を施すことで形成したスルーホールを有することを特徴とする多層プリント配線板である。
【0020】
本発明の請求項13は、請求項12に加えて、前記複数の溝は、前記貫通孔の外周面に沿ってルーターを蛇行処理させることで形成することを特徴とする多層プリント配線板である。
【0021】
本発明の請求項14は、請求項12に加えて、前記複数の溝は、貫通孔形成前に予め貫通孔の外周面に位置する部分に複数の下穴を形成して、その後に貫通孔を形成するようにして前記下穴を当該溝とすることを特徴とする多層プリント配線板である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、スルーホールを形成する際に従来は電気的導通を行う層によってのみメッキの金属結合がなされていたものを、電気的に導通させる必要のない層にメッキ強化用パターンを形成してこの部分においてもメッキと金属結合させるようにしたので、メッキの密着力が高まり、基材からのガス等による内部圧力が加わったとしても、スルーホール壁面の中央付近が膨らむ現象を防止し、また、コーナークラックの発生を防止することが出来る。
【0023】
また、スルーホール用の貫通孔を形成した後に、この貫通孔内に複数の溝を形成することで、貫通孔の内壁面の表面積を増加させることができ、さらにメッキの密着力が高まるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明によるスルーホールの形成方法は、多層プリント配線板の積層段階において、電気的に導通させる層のスルーホール形成予定箇所にスルーホール導通用パターンを形成し、かつ、電気的に導通させる必要のない層のスルーホール形成予定箇所にメッキ強化用パターンを形成して多層構造を構成する手順と、前記スルーホール形成予定箇所に貫通孔を形成する手順と、前記貫通孔の内側にメッキ処理を施す手順とを実施してなることを特徴としたものである。以下、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本発明によるスルーホールの形成方法の手順を示したものであり、図1(a)から順に説明する。図1(a)は、多層プリント配線板の一例として4層のプリント配線板10を例として、最外層同士を電気的に接続するスルーホールを形成する前段階の状態を表したものである。この図1(a)に示すように、プリント配線板の4層のうちスルーホールによって電気的に接続したい層には、スルーホールを形成する予定の箇所に予めスルーホール導通用パターン11、12を形成しておく。このスルーホール導通用パターン11、12は、それぞれの層において他のパターンと繋がっている。
【0026】
また、プリント配線板の4層のうちスルーホールによって電気的に接続する必要のない層には、スルーホールを形成する予定の箇所に予めメッキ強化用パターン17を形成しておく。このメッキ強化用パターン17は、本来必要のないパターンであるので、形成した層において他のパターンから独立している。
【0027】
次に、スルーホール導通用パターン11、12、及び、メッキ強化用パターン17を形成した箇所に、図1(b)に示すように、導通用パターン11、12、メッキ強化用パターン17及び基板15を貫通させるように、貫通孔13を穿設する。
【0028】
その後、図1(c)に示すように、貫通孔13の内側にメッキ14を施すことで、スルーホール導通用パターン11、12及びメッキ強化用パターン17とメッキ14がそれぞれ金属結合して、スルーホール16が形成される。このスルーホール16により、導通用パターン11と12が電気的に導通して、最外層同士を電気的に接続することが可能となる。
【0029】
以上のようにして図1(c)に示すスルーホールを形成すると、基板材料からのガスの発生などにより、図1(d)の矢印で示すように、基板内部からメッキ部分に対して圧力が加わることがある。しかし、本発明においては、スルーホール導通用パターン11、12部分のみならず、メッキ強化用パターン17部分においてもメッキ14と金属結合が生じているため、内部からの圧力に強い構成となっている。
【0030】
即ち、スルーホール壁面の中央付近が膨らむ現象を防止することができ、また、図1(d)の破線丸印で示す4つのメッキの結合箇所において圧力を分散することが可能となるため、コーナークラックの発生を防止できる。これにより、メッキの剥離を防ぐことが可能となる。
【実施例2】
【0031】
前記実施例1ではメッキ強化用パターン17を設けることで、スルーホール内側のメッキの密着力を向上させていたが、この実施例2においては、別の手法によってメッキの密着力を高める構成となっている。
【0032】
図2(a)に示すのは、図1(a)の状態におけるプリント配線板のスルーホール導通用パターン11部分を上部から観察した場合の模式図である。スルーホールを形成する場合、円形のみならず一方向に長い長穴(図2(a)の破線で示すのが貫通孔形成予定位置)とすることがあるため、この図2(a)に示すように、スルーホール導通用パターン11も長穴に合わせた形状となっている。
【0033】
スルーホールの形成順序としては、図2(a)の状態において貫通孔13を穿設するが、この貫通孔13の形成後に、貫通孔13内部壁面をルーターによって整える処理を行う。この際に、ルーターを蛇行処理することで、図2(b−1)に示すように、貫通孔13の壁面部分に複数の溝18を形成する。若しくは、図2(b−1)に示すように、貫通孔形成予定位置の壁面に重なるように複数の下穴19を形成して、その後に貫通孔13を形成することで、貫通孔13の壁面部分に複数の溝18を形成する。
【0034】
以上のようにして、貫通孔13の壁面部分に複数の溝18を形成した状態で、図2(c)に示すように、貫通孔13内部にメッキ処理をする。複数の溝18を形成しておくことによって、貫通孔の内壁面の表面積が増加してメッキ14の密着力が高まり、メッキ14の剥離を防ぐことが可能となる。
【0035】
図2に示した例では、長穴の貫通孔13の直線部分に複数の溝18を形成するようにしたが、これは、曲面部分よりも直線部分においてメッキの密着力が低下する傾向が強いことを考慮したものである。しかし、この実施例に限定されるものではなく、溝18を形成する箇所は貫通孔13の壁面の何れの部分であってもよい。また、図2の例では溝18の形成方向を貫通孔13の形成方向と同一方向としているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、貫通孔13の内部の壁面に溝18を形成することができればその方向(角度)はどのようなものであってもよい。
【0036】
前記実施例1によるメッキ強化用パターン17を設ける構成と、前記実施例2による貫通孔13の内部の壁面に複数の溝18を形成する構成との両方を実施することにより、よりメッキの密着力を強固なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明によるスルーホールの形成の手順を示した模式図である。
【図2】貫通孔13の内部の壁面に複数の溝18を形成してスルーホールを形成する手順を表した模式図である。
【図3】従来のスルーホールの形成手順を表した模式図である。
【図4】スルーホールの形状の一例を表した模式図である。
【符号の説明】
【0038】
10…プリント配線板、11、12…スルーホール導通用パターン、13…貫通孔、14…メッキ、15…基板、16…スルーホール、17…メッキ強化用パターン、18…溝、19…下穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層プリント配線板の積層段階において、電気的に導通させる層のスルーホール形成予定箇所にスルーホール導通用パターンを形成し、かつ、電気的に導通させる必要のない層のスルーホール形成予定箇所にメッキ強化用パターンを形成して多層構造を構成する手順と、前記スルーホール形成予定箇所に貫通孔を形成する手順と、前記貫通孔の内側にメッキ処理を施す手順とを実行してなることを特徴とするスルーホールの形成方法。
【請求項2】
前記貫通孔を形成する手順とメッキ処理を施す手順との間において、貫通孔の内壁面に表面積増加のための複数の溝を形成する手順を実行することを特徴とする請求項1記載のスルーホールの形成方法。
【請求項3】
前記複数の溝は、前記貫通孔の外周面に沿ってルーターを蛇行処理させることで形成することを特徴とする請求項2記載のスルーホールの形成方法。
【請求項4】
前記複数の溝は、貫通孔形成前に予め貫通孔の外周面に位置する部分に複数の下穴を形成して、その後に貫通孔を形成するようにして前記下穴を当該溝とすることを特徴とする請求項2記載のスルーホールの形成方法。
【請求項5】
多層プリント配線板の積層段階において、電気的に導通させる層のスルーホール形成予定箇所にスルーホール導通用パターンを形成し、かつ、電気的に導通させる必要のない層のスルーホール形成予定箇所にメッキ強化用パターンを形成して多層構造を構成し、前記スルーホール形成予定箇所に貫通孔を形成し、かつ、前記貫通孔の内側にメッキ処理を施すことで形成したスルーホールを有することを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項6】
メッキ処理の前段階において、前記貫通孔の壁面には、表面積増加のための複数の溝を形成したことを特徴とする請求項5記載の多層プリント配線板。
【請求項7】
前記複数の溝は、前記貫通孔の外周面に沿ってルーターを蛇行処理させることで形成することを特徴とする請求項6記載の多層プリント配線板。
【請求項8】
前記複数の溝は、貫通孔形成前に予め貫通孔の外周面に位置する部分に複数の下穴を形成して、その後に貫通孔を形成するようにして前記下穴を当該溝とすることを特徴とする請求項6記載の多層プリント配線板。
【請求項9】
多層プリント配線板の積層段階において、電気的に導通させる層のスルーホール形成予定箇所にスルーホール導通用パターンを形成する手順と、前記スルーホール形成予定箇所に貫通孔を形成する手順と、前記貫通孔の内壁面に表面積増加のための複数の溝を形成する手順と、前記貫通孔の内側にメッキ処理を施す手順とを実行してなることを特徴とするスルーホールの形成方法。
【請求項10】
前記複数の溝は、前記貫通孔の外周面に沿ってルーターを蛇行処理させることで形成することを特徴とする請求項9記載のスルーホールの形成方法。
【請求項11】
前記複数の溝は、貫通孔形成前に予め貫通孔の外周面に位置する部分に複数の下穴を形成して、その後に貫通孔を形成するようにして前記下穴を当該溝とすることを特徴とする請求項9記載のスルーホールの形成方法。
【請求項12】
多層プリント配線板の積層段階において、電気的に導通させる層のスルーホール形成予定箇所にスルーホール導通用パターンを形成した後に積層することで多層構造を構成し、前記スルーホール形成予定箇所に貫通孔を形成し、前記貫通孔の内壁面に表面積増加のための複数の溝を形成し、かつ、前記貫通孔の内側にメッキ処理を施すことで形成したスルーホールを有することを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項13】
前記複数の溝は、前記貫通孔の外周面に沿ってルーターを蛇行処理させることで形成することを特徴とする請求項12記載の多層プリント配線板。
【請求項14】
前記複数の溝は、貫通孔形成前に予め貫通孔の外周面に位置する部分に複数の下穴を形成して、その後に貫通孔を形成するようにして前記下穴を当該溝とすることを特徴とする請求項12記載の多層プリント配線板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−238762(P2010−238762A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82650(P2009−82650)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000103220)エルナー株式会社 (48)
【Fターム(参考)】