説明

ズームレンズおよび撮像装置

【課題】ズームレンズにおいて、少ないレンズ枚数で小型に構成しながら、高倍率化や広角化を図り、良好な色収差の補正と優れた像面特性を両立させる。
【解決手段】ズームレンズは、物体側から順に、正の第1レンズ群G1、移動して変倍を行う負の第2レンズ群G2、絞り、正の第3レンズ群G3、変倍に伴う像面位置の補正および合焦を行う正の第4レンズ群G4を備える。第2レンズ群G2は物体側から順に、第1の負レンズL21と、少なくとも1面の非球面を有する第2の負レンズL22と、正レンズL23とを含む。第2の負レンズL22のアッベ数に関する条件式(1)と、第1の負レンズL21と第2の負レンズL22の間隔に関する条件式(2)と、第2レンズ群G2の焦点距離と全系の焦点距離に関する条件式(3)とを満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズおよび撮像装置に関し、より詳しくは、ビデオカメラや電子スチルカメラ、監視カメラ等に好適に使用可能なズームレンズおよび該ズームレンズを備えた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、民生用ビデオカメラや監視用ビデオカメラ等に用いられるズームレンズとして、4群タイプや5群タイプのズームレンズが多く提案されてきた。例えば、特許文献1〜3には、10倍程度の変倍比と1.8程度のFナンバーを有するズームレンズが開示されており、特許文献4には、10倍程度の変倍比と2.8程度のFナンバーを有するズームレンズが開示されている。この種のタイプでは、単板式、3板式に関わらず、第1レンズ群が3枚からなり、第2レンズ群が3枚からなる構成が多くのズームレンズに共通して採用されてきた。より詳しくは、特許文献1〜4には、第1レンズ群が物体側から順に、負レンズ、正レンズ、正レンズの3枚の球面レンズからなり、第2レンズ群が物体側から順に、負レンズ、負レンズ、正レンズの3枚の球面レンズからなるズームレンズが記載されている。
【特許文献1】特開2006−221208号公報
【特許文献2】特開2006−113257号公報
【特許文献3】特開2006−301193号公報
【特許文献4】特開2005−345714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年では、民生用ビデオカメラなどに用いられるズームレンズにおいて、従来からある小型化の要求に加えて、高倍率化や広角化への要求が高まっている。高倍率化や広角化を図る際の課題の1つとして、色収差補正が挙げられる。同じレンズ構成のままで、変倍比を上げようとすると、その分、望遠端での色収差が増大する。また、広角化を図る場合にも、色収差を抑えることが非常に困難になるという問題がある。
【0004】
従来、上記分野の多くのズームレンズでは、第2レンズ群が比較的、屈折率が高い材料で構成されている場合が多く、屈折率が高い材料を用いることで変倍時の移動量を小さくできる。しかしながら、高屈折率材料は一般に高分散材料でもある。変倍比が小さい場合や、画角が小さい場合には、第2レンズ群に低分散材料を用いなくても色収差をある程度抑えることができるが、ある程度の画角や変倍比を上回って高倍率化や広角化を図ろうとすると、色収差の補正が難しくなる。
【0005】
そこで、例えば、第2レンズ群中に低分散材料を用いることが考えられる。第2レンズ群中に低分散材料を用いた例が特許文献3や特許文献4に示されている。しかしながら、特許文献3や特許文献4のように、第2レンズ群中に低分散材料を用いると、低分散材料は一般に低屈折率材料であるため、レンズの曲率が大きくなってしまい、変倍時の収差変動が大きくなってしまうという問題が生じる。つまり、第2レンズ群に低分散材料を用いると、色収差を良好に抑えることはできても、像面補正には不利になってしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、少ないレンズ枚数で小型に構成しながら、高倍率化または広角化が図られ、色収差が良好に補正されているとともに、優れた像面特性を有するズームレンズおよび該ズームレンズを備えた撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有し、変倍時に固定されている第1レンズ群と、負の屈折力を有し、光軸に沿って移動することにより変倍を行う第2レンズ群と、絞りと、正の屈折力を有し、変倍時に固定されている第3レンズ群と、正の屈折力を有し、変倍に伴う像面位置の補正および合焦を行う第4レンズ群とを備え、第2レンズ群が、物体側から順に、第1の負レンズと、少なくとも1面の非球面を有する第2の負レンズと、正レンズとを含み、第2の負レンズのd線におけるアッベ数をν22とし、第1の負レンズの物体側の面から第2の負レンズの像側の面までの光軸上の距離をD2aとし、第1の負レンズの像側の面から第2の負レンズの物体側の面までの光軸上の距離をD2bとし、第2レンズ群の焦点距離をf2とし、広角端における全系の焦点距離をfwとしたとき、下記条件式(1)〜(3)を満たすことを特徴とするものである。
68.0<ν22<83.0 … (1)
0.68<D2b/D2a<0.85 … (2)
1.5<|f2/fw|<1.9 … (3)
【0008】
なお、本発明において、各「レンズ群」は、複数のレンズから構成されるものだけでなく、1枚のレンズのみで構成されるものも含むものとする。
【0009】
本発明のズームレンズでは、第2レンズ群の第2の負レンズの材料を条件式(1)を満たすような低分散材料となるように選択することで、良好な色収差補正を図り、そしてこの第2の負レンズに非球面を設けることで、優れた像面特性を図り、従来、高倍率化や広角化を進める上で課題となっていた良好な色収差補正と像面補正との両立を図るようにしている。また、第2レンズ群中の2枚の負レンズの距離が条件式(2)を満たすように2枚の負レンズを配置することで、第2の負レンズが条件式(1)を満たすような低分散材料で構成されていても、個々のレンズの曲率を極端に大きくすることなく、第2レンズ群に必要とされるパワーを確保し、小型化を図るようにしている。さらに、条件式(3)を満たすことで、小型化および良好な光学性能を図るようにしている。
【0010】
本発明のズームレンズにおいては、第2レンズ群の上記正レンズのd線におけるアッベ数をν23としたとき、下記条件式(4)を満たすことが好ましい。
ν23<21.0 … (4)
【0011】
また、本発明のズームレンズにおいては、第2の負レンズの焦点距離をf22としたとき、下記条件式(5)を満たすことが好ましい。
1.7<f22/f2<2.4 … (5)
ここで、上記f22は、近軸領域におけるものとする。
【0012】
また、本発明のズームレンズにおいては、第1レンズ群の焦点距離をf1としたとき、下記条件式(6)を満たすことが好ましい。
5.0<|f1/f2|<6.0 … (6)
【0013】
また、本発明のズームレンズにおいては、第1レンズ群が、1枚の負レンズと、3枚の正レンズとから構成されるようにしてもよい。
【0014】
なお、各条件式の値は、特に断りがない限り、ズームレンズの基準波長におけるものである。
【0015】
本発明の撮像装置は、上記記載の本発明のズームレンズを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1レンズ群と第3レンズ群とを固定群とし、第2レンズ群を光軸に沿って移動させることにより変倍を行い、それによる像面位置の補正および合焦を第4レンズ群の移動により行う方式のズームレンズにおいて、第2レンズ群の構成を好適に設定し、条件式(1)〜(3)を満たすようにしているため、高倍率化や広角化を図った場合でも、色収差補正と像面補正との両立を実現することができ、少ないレンズ枚数で小型に構成可能で、良好な光学性能を有するズームレンズおよび該ズームレンズを備えた撮像装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態にかかるズームレンズの構成例を示す断面図であり、後述の実施例1のズームレンズに対応している。また、図2〜図7は、本発明の実施形態にかかる別の構成例を示す断面図であり、それぞれ後述の実施例2〜実施例7のズームレンズに対応している。図1〜図7に示す例の基本的な構成は同様であり、各図の図示方法も同様であるため、ここでは主に図1を参照しながら、本発明の実施形態にかかるズームレンズについて説明する。
【0019】
本発明の実施形態にかかるズームレンズは、光軸Zに沿って、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、開口絞りStと、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とを備えている。
【0020】
このズームレンズは、広角端から望遠端への変倍を行う際には、第1レンズ群G1および第3レンズ群G3を光軸Z上に固定とし、第2レンズ群G2を光軸Zに沿って像側に移動させることにより変倍を行うとともに、該変倍に伴う像面位置の補正および合焦を第4レンズ群G4を光軸Zに沿って移動させることにより行うように構成されている。
【0021】
図1では、左側が物体側、右側が像側であり、上段に広角端におけるレンズ配置を示し、下段に望遠端におけるレンズ配置を示し、広角端から望遠端へ変倍するときの各レンズ群の概略的な移動軌跡を矢印で示している。なお、図1に示す開口絞りStは必ずしも大きさや形状を表すものではなく、光軸Z上の位置を示すものである。
【0022】
また、図1では像面をSimとして図示している。例えばこのズームレンズを撮像素子が搭載された撮像装置に適用する際には、像面Simに撮像素子の撮像面が位置するように配置される。
【0023】
ズームレンズを撮像装置に適用する際には、レンズを装着するカメラ側の構成に応じて、最も像側のレンズと撮像面との間にカバーガラスや、プリズム、赤外線カットフィルタ、ローパスフィルタなどの各種フィルタ等を配置することが好ましく、図1では、最も像側のレンズ群と像面Simとの間に、これらを想定した平行平板状の光学部材PPが配置された例を示している。
【0024】
本発明の実施形態にかかるズームレンズは、主に第2レンズ群G2に特徴的な構成を有している。第2レンズ群G2は、図1に示す例のように、物体側から順に、負レンズL21と、少なくとも1面が非球面の負レンズL22と、正レンズL23とを含むように構成される。
【0025】
例えば図1に示す例のズームレンズの第2レンズ群G2は、物体側から順に、メニスカス形状の負レンズL21と、両面が非球面で近軸領域において両凹形状の負レンズL22と、メニスカス形状の正レンズL23とからなる3群3枚構成である。
【0026】
本発明の実施形態にかかるズームレンズは、負レンズL22のd線におけるアッベ数をν22とし、負レンズL21の物体側の面から負レンズL22の像側の面までの光軸上の距離をD2aとし、負レンズL21の像側の面から負レンズL22の物体側の面までの光軸上の距離をD2bとし、第2レンズ群G2の焦点距離をf2とし、広角端における全系の焦点距離をfwとしたとき、下記条件式(1)〜(3)を満たすように構成されている。
68.0<ν22<83.0 … (1)
0.68<D2b/D2a<0.85 … (2)
1.5<|f2/fw|<1.9 … (3)
【0027】
条件式(1)は、良好な色収差補正を行うための条件である。変倍比が10倍程度の従来のズームレンズに対し、さらなる高倍率化や広角化を図る際には、色収差補正が問題となるため、負レンズL22の材料に条件式(1)を満たす低分散材料を用いることが必要となる。条件式(1)の下限以下になると、ズーム全域にわたって倍率色収差を良好に補正することが困難になる。条件式(1)の上限以上になると、特定の変倍域、もしくは、特定の波長域の色収差補正に偏りやすくなり、全変倍域にわたってバランス良く色収差補正を行うことが難しくなってしまう。
【0028】
このように、色収差補正のためには、負レンズL22に条件式(1)を満たす材料を用いることが好ましいが、一方で、条件式(1)を満たすような低分散材料は、屈折率が低いため、レンズの曲率が大きくなりやすく、倍率ごとや画角ごとの像面をそろえることが難しくなってしまう。
【0029】
そこで、本ズームレンズでは、負レンズL22に非球面を設けること、および、負レンズL21と負レンズL22とを条件式(2)を満足するように配置することで、良好な色収差補正と像面補正とを両立させるようにしている。
【0030】
第2レンズ群G2中に、設計自由度の高い非球面を設けて、非球面形状を適切に設定することで、良好な色収差補正および像面補正を両立させることが容易になる。なお、第2レンズ群G2中の非球面を設けるレンズは、以下に述べる理由から、負レンズL22とすることが好ましい。
【0031】
小型化および低コスト化のためにはレンズ枚数を増やさないことが好ましいため、従来多く採用されている、物体側から順に、負、負、正のパワー配置の3枚のレンズからなる第2レンズ群G2を採用することが前提となる。このような第2レンズ群G2において、非球面を設けることを考えると、収差補正上、負レンズに適用することが好ましい。
【0032】
第2レンズ群G2の変倍時の移動量を小さくして系の小型化を図るためには、第2レンズ群G2が強い負のパワーを持つことが好ましく、そのためには第2レンズ群G2の個々の負レンズのパワーも許容可能な範囲で強い方が好ましい。
【0033】
しかしながら、負レンズL22には低分散材料が用いられることから、仮に負レンズL22のパワーを強くしようとすると、このレンズの曲率を大きくしなくてはならないため、変倍時の収差変動や製造誤差や組立誤差に伴う性能劣化が大きくなり好ましくない。したがって、第2レンズ群G2の負レンズに強いパワーを持たせるのであれば、負レンズL22よりも負レンズL21に強いパワーを持たせることが好ましい。ここで、パワーの強いレンズに非球面を設けると、製造誤差や組立誤差に伴う性能劣化が大きくなりやすく好ましくないため、負レンズL21よりも負レンズL22に非球面を設けることがより好ましい。
【0034】
なお、収差補正上、強いパワーをもつ負レンズL21の材料は高屈折率材料とすることが好ましい。高屈折率材料が好ましい負レンズL21と、低分散材料からなる負レンズL22のうち、どちらのレンズに非球面を設けるのが有利かについて考察する。低分散材料は一般に低屈折率であるため、負レンズL22の材料として、高屈折率でありながら、所望の色収差補正を実現できる材料は、現存の光学材料の範囲では極めて少なく、選択性が乏しいものとなるため、負レンズL22に設計自由度が高く収差補正効果の高い非球面を設けることが有利と考えられる。
【0035】
また、負レンズL21の像側のレンズ面は曲率が大きくなりやすく、その曲率は負レンズL22の面の曲率よりも大きくなりやすい傾向にあるため、加工性の点からも負レンズL22の方を非球面レンズとする方が好ましい。さらに、負レンズL22の方が負レンズL21よりもレンズ外径が小さいため、低コスト化できることから、コスト上も負レンズL22に非球面を設ける方が好ましい。
【0036】
条件式(2)は、負レンズL21と負レンズL22の空気間隔に関する式であり、この空気間隔を、負レンズL21の物体側の面から負レンズL22の像側の面までの光軸上の距離で規格化したものである。従来のズームレンズでは、第2レンズ群中の2枚の負レンズを近づけたものが多く、そのような構成で第2レンズ群に強い負のパワーを持たせるには、個々の負レンズのパワーを強くし、それに伴ってレンズの曲率を大きくしなくてはならなかった。レンズの曲率を大きくすると、変倍に伴う収差変動が大きくなってしまい、また、レンズの製造誤差や組立誤差に伴う性能劣化が大きくなってしまい、好ましくなかった。
【0037】
そこで、本ズームレンズでは、条件式(2)を満たすように、第2レンズ群が巨大化しない程度に2つの負レンズL21、L22を離して配置するようにしている。2つの負レンズL21、L22の空気間隔が大きいほどこれらの合成パワーは強くなることから、2つの負レンズL21、L22の空気間隔を大きくすれば、個々のレンズにそれほど強いパワーを持たせなくても、第2レンズ群G2に強い負のパワーを持たせることができる。本ズームレンズによれば、条件式(1)を満たすような低分散材料を2レンズ群G2に用いた場合でも、条件式(2)を満たすように負レンズL21と負レンズL22を配置することにより、必ずしもこれらのレンズの曲率を大きくすることなく、第2レンズ群G2の変倍時の移動量を小さくして系の小型化を図ることが可能になる。
【0038】
したがって、条件式(2)の下限以下になると、2枚の負レンズL21、L22が近づきすぎて上記のような理由から好ましくない。条件式(2)の上限以上になると、第2レンズ群G2の大型化、および光学系全体の大型化を招いてしまい、好ましくない。
【0039】
条件式(3)は、第2レンズ群G2の焦点距離と広角端における全系の焦点距離の関係を規定しており、いわば、全系のパワーに対する第2レンズ群G2のパワーの比を規定するものである。
【0040】
条件式(3)の下限以下になるほど第2レンズ群G2のパワーを強くすると、個々のレンズが担うパワーが強くなりすぎ、良好な像面特性を得ることが困難になる。上述したように、第2レンズ群G2に低屈折率材料を用いている場合には、特に、レンズの曲率が大きくなり、変倍時の収差変動や製造誤差や組立誤差に伴う性能劣化が大きくなり、好ましくない。条件式(3)の上限以上になると、変倍時の第2レンズ群G2の移動量が大きくなり、レンズ系が大型化してしまう。
【0041】
なお、第2レンズ群G2の構成は、図1に示す例に限定されない。図1には、第2レンズ群G2が3枚の単レンズからなる例を示しているが、図5の構成例に示すように、負レンズL22と正レンズL23とを貼り合わせて接合レンズとしてもよい。また、第2レンズ群G2を4枚以上のレンズで構成することも考えられるが、小型化を重視する場合は、第2レンズ群G2は、上述した負レンズL21、負レンズL22、正レンズL23からなる3枚で構成することが好ましい。
【0042】
本ズームレンズの第1レンズ群G1の構成としては、1枚の負レンズと、3枚の正レンズとから構成されることが好ましい。20倍程度の高倍率を有するズームレンズにおいて、望遠側における色収差補正を良好に行うためには、第1レンズ群G1を少なくとも4枚で構成することが好ましい。
【0043】
例えば図1に示す例のズームレンズは、物体側から順に、メニスカス形状の負レンズL11およびメニスカス形状の正レンズL12の貼り合わせによる接合レンズと、両凸形状の正レンズL13と、メニスカス形状の正レンズL14とからなる3群4枚構成である。なお、像側から2番目の正レンズL13は、図2、図6、図7の構成例に示すようにメニスカス形状とすることもできる。
【0044】
第3レンズ群G3の構成としては、例えば図1に示す例のように、両面非球面で近軸領域においてメニスカス形状の正レンズL31と、メニスカス形状の正レンズL32およびメニスカス形状の負レンズL33の接合レンズとからなる2群3枚構成としてもよい。
【0045】
第4レンズ群G4の構成としては、例えば図1に示す例のように、両凸形状の正レンズL41およびメニスカス形状の負レンズL42の接合レンズと、両面非球面で近軸領域において両凸形状の正レンズL43とからなる2群3枚構成としてもよい。
【0046】
本発明の実施形態にかかるズームレンズは、さらに以下の条件式を満たすように構成することが好ましい。なお、好ましい態様としては、下記条件式のいずれか1つの式を満足するものでもよく、あるいは任意の組合せを満足するものでもよい。以下に、好ましい態様に関する条件式と、その作用効果について述べる。
【0047】
第2レンズ群G2の正レンズL23のd線におけるアッベ数をν23としたとき、下記条件式(4)を満たすことが好ましい。
ν23<21.0 … (4)
【0048】
条件式(4)は、第2レンズ群G2が有する正レンズL23のアッベ数を規定している。条件式(4)の上限以上になると、倍率色収差が大きくなってしまう。
【0049】
第2レンズ群G2の負レンズL22の焦点距離をf22とし、第2レンズ群G2の焦点距離をf2としたとき、下記条件式(5)を満たすことが好ましい。
1.7<f22/f2<2.4 … (5)
【0050】
条件式(5)は、負レンズL22と第2レンズ群G2の焦点距離の関係を規定しており、いわば第2レンズ群G2のパワーに対する負レンズL22のパワーの比を規定するものである。条件式(5)の下限以下になると、負レンズL22のパワーが強くなり、それに伴って負レンズL22の曲率も大きくなり、変倍伴う収差変動が大きくなってしまう。条件式(5)の上限以上になると、コマ収差の補正が困難になる。
【0051】
第1レンズ群G1の焦点距離をf1とし、第2レンズ群G2の焦点距離をf2としたとき、下記条件式(6)を満たすことが好ましい。
5.0<|f1/f2|<6.0 … (6)
【0052】
条件式(6)は、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の焦点距離の関係を規定しており、高変倍でありながら、コンパクトで、良好な光学性能を得るための条件である。条件式(6)の下限以下になるほど、第2レンズ群G2の焦点距離が大きくなり、第1レンズ群G1の焦点距離が小さくなると、変倍に伴う第2レンズ群G2の移動量が大きくなり、レンズ系の全長や前玉(最も物体側のレンズ)を小さくすることが難しくなる。また、望遠側での第4レンズ群G4の移動量が大きくなり、変倍時の収差変動が大きくなってしまう。条件式(6)の上限以上になると、ディストーションなどの諸収差を良好に補正することが困難になる。
【0053】
本発明の実施形態にかかるズームレンズは、さらに以下の条件式(1−1)、(2−1)、(3−1)、(5−1)、(6−1)のいずれかあるいは全てを満足することがより好ましい。条件式(1−1)、(2−1)、(3−1)、(5−1)、(6−1)それぞれを満たすことで、条件式(1)、(2)、(3)、(5)、(6)それぞれを満たすことにより得られる効果をさらに高めることができる。
70.0<ν22<78.0 … (1−1)
0.71<D2b/D2a<0.83 … (2−1)
1.55<|f2/fw|<1.85 … (3−1)
1.8<f22/f2<2.3 … (5−1)
5.1<|f1/f2|<5.9 … (6−1)
【0054】
また、本ズームレンズが例えば屋外等の厳しい環境において使用される場合には、最も物体側に配置されるレンズには、風雨による表面劣化、直射日光による温度変化に強く、さらには油脂・洗剤等の化学薬品に強い材料、すなわち耐水性、耐候性、耐酸性、耐薬品性等が高い材料を用いることが好ましく、さらには堅く、割れにくい材料を用いることが好ましい。以上のことから最も物体側に配置される材料としては、具体的にはガラスを用いることが好ましく、あるいは透明なセラミックスを用いてもよい。
【0055】
本ズームレンズが厳しい環境において使用される場合には、保護用の多層膜コートが施されることが好ましい。さらに、保護用コート以外にも、使用時のゴースト光低減等のための反射防止コート膜を施すようにしてもよい。
【0056】
図1に示す例では、レンズ系と像面Simとの間に光学部材PPを配置した例を示したが、ローパスフィルタや特定の波長域をカットするような各種フィルタ等を配置する代わりに、各レンズの間にこれらの各種フィルタを配置してもよく、あるいは、いずれかのレンズのレンズ面に、各種フィルタと同様の作用を有するコートを施してもよい。
【0057】
以上説明したように、本実施形態のズームレンズによれば、要求される仕様等に応じて、上記した好ましい構成を適宜採用することで、少ないレンズ枚数で小型に構成しながら、高倍率化や広角化を図った場合でも、良好な色収差と優れた像面特性を両立させることができる。
【実施例】
【0058】
次に、本発明のズームレンズの数値実施例について説明する。実施例1〜実施例7のズームレンズのレンズ断面図はそれぞれ図1〜図7に示したものである。
【0059】
実施例1にかかるズームレンズの基本レンズデータを表1に、ズーム(変倍)に関するデータを表2に、非球面データを表3に示す。同様に、実施例2〜7にかかるズームレンズの基本レンズデータ、ズームに関するデータ、非球面データを表4〜表21に示す。以下では、表中の記号の意味について、実施例1を例にとり説明するが、実施例2〜7のものについても基本的に同様である。
【0060】
表1の基本レンズデータにおいて、Siは最も物体側の構成要素の面を1番目として像側に向かうに従い順次増加するi番目(i=1、2、3、…)の面番号を示し、Riはi番目の面の曲率半径を示し、Diはi番目の面とi+1番目の面との光軸Z上の面間隔を示している。なお、曲率半径の符号は、物体側に凸の場合を正、像側に凸の場合を負としており、面間隔の最下欄の数値は表中の最終面と像面Simとの面間隔を示している。
【0061】
また、基本レンズデータにおいて、Ndjは最も物体側のレンズを1番目として像側に向かうに従い順次増加するj番目(j=1、2、3、…)の光学要素のd線(波長587.6nm)に対する屈折率を示し、νdjはj番目の光学要素のd線に対するアッベ数を示している。なお、基本レンズデータには、開口絞りStおよび光学部材PPも含めて示しており、開口絞りStに相当する面の面番号の欄には、面番号とともに(開口絞り)という語句を記載している。
【0062】
表1の基本レンズデータにおいて、変倍時に間隔が変化する面間隔の欄にはそれぞれD7、D13、D19、D24の符号を記載し、各符号の後に(可変)と記載している。後述の実施例についても同様に、変倍時に間隔が変化する面間隔の欄には対応する符号と(可変)という語句を記載している。
【0063】
表2のズームに関するデータには、広角端、望遠端における、全系の焦点距離f、FナンバーFno.、全画角2ω、変倍に伴い変化する各面間隔D7、D13、D19、D24の値を示す。
【0064】
表1の基本レンズデータでは、非球面の面番号に*印を付しており、非球面の曲率半径として近軸の曲率半径の数値を示している。表3の非球面データには、非球面レンズであるレンズの符号と、非球面の面番号と、各非球面に関する非球面係数を示す。表3の非球面データの数値の「E−0n」(n:整数)は、「×10−n」を意味する。なお、非球面係数は、以下の式(A)で表される非球面式における各係数KA、RA(m=3、4、5、…10)の値である。
【0065】
Zd=C・h/{1+(1−KA・C・h1/2}+ΣRA・h … (A)
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸に垂直な平面に
下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸からのレンズ面までの距離)
C:近軸曲率半径の逆数
KA、RA:非球面係数(m=3、4、5、…10)
【0066】
なお、ここでは一例として、表1〜表3における長さの単位に「mm」を用い、角度の単位に「度」を用い、式(A)のZd、hの単位に「mm」を用いている。しかし、光学系は比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、単位は「mm」に限定されることはなく、他の適当な単位を用いることもできる。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
【表5】

【0072】
【表6】

【0073】
【表7】

【0074】
【表8】

【0075】
【表9】

【0076】
【表10】

【0077】
【表11】

【0078】
【表12】

【0079】
【表13】

【0080】
【表14】

【0081】
【表15】

【0082】
【表16】

【0083】
【表17】

【0084】
【表18】

【0085】
【表19】

【0086】
【表20】

【0087】
【表21】

【0088】
表22に、実施例1〜7における条件式(1)〜(6)に対応する値を示す。表22からわかるように、実施例1〜7のいずれも、条件式(1)〜(6)を満足している。
【0089】
【表22】

【0090】
図8(A)〜図8(H)に実施例1のズームレンズの広角端および望遠端における、球面収差、非点収差、ディストーション(歪曲収差)、倍率色収差の各収差図を示す。各収差図には、d線(波長587.6nm)を基準波長とした収差を示すが、球面収差図および倍率色収差図には波長460.0nm、波長615.0nmについての収差も示す。球面収差図のFno.はFナンバー、その他の収差図のωは半画角を意味する。
【0091】
同様に、図9(A)〜図9(H)、図10(A)〜図10(H)、図11(A)〜図11(H)、図12(A)〜図12(H)、図13(A)〜図13(H)、図14(A)〜図14(H)に、実施例2〜7のズームレンズの広角端および望遠端における、球面収差、非点収差、ディストーション(歪曲収差)、倍率色収差の各収差図を示す。
【0092】
以上のデータから、実施例1〜7のズームレンズは、少ないレンズ枚数で小型に構成され、20倍程度の高倍率を有し、広角端における全画角は64〜67度程度で、Fナンバーが1.9程度と小さく、色収差を含む各収差が良好に補正され、広角端および望遠端ともに可視域において高い光学性能を有することがわかる。これらのズームレンズは、監視カメラや、ビデオカメラ、電子スチルカメラ等の撮像装置に好適に使用することができる。
【0093】
図15に、本発明の実施形態の撮像装置の一例として、本発明の実施形態にかかるズームレンズ1を用いて構成したビデオカメラ10の構成図を示す。なお、図15では、ズームレンズ1が備える正の第1レンズ群G1、負の第2レンズ群G2、開口絞りSt、正の第3レンズ群G3、正の第4レンズ群G4を概略的に示し、変倍時に移動する第2レンズ群G2および第4レンズ群G4の上には両矢印を付している。
【0094】
ビデオカメラ10は、ズームレンズ1と、ズームレンズ1の像側に配置されたローパスフィルタおよび赤外線カットフィルタ等の機能を有するフィルタ2と、フィルタ2の像側に配置された撮像素子4と、信号処理回路5とを備えている。撮像素子4はズームレンズ1により形成される光学像を電気信号に変換するものであり、例えば、撮像素子4としては、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等を用いることができる。撮像素子4は、その撮像面がズームレンズ1の像面に一致するように配置される。
【0095】
ズームレンズ1により撮像された像は撮像素子4の撮像面上に結像し、その像に関する撮像素子4からの出力信号が信号処理回路5にて演算処理され、表示装置6に像が表示される。
【0096】
なお、図15には、1つの撮像素子4を用いた、いわゆる単板式の撮像装置を図示しているが、本発明の撮像装置としては、ズームレンズ1と撮像素子4の間にR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)等の各色に分ける色分解プリズムを挿入し、各色に対応する3つの撮像素子を用いた、いわゆる3板式のものでもよい。
【0097】
本発明の実施形態にかかるズームレンズは、前述した長所を有するため、本実施形態の撮像装置は、高倍率化や広角化が図られ、小型に構成可能であり、かつ色再現性の良い高画質の映像を得ることができる。
【0098】
以上、実施形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズ成分の曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数等の値は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施例1にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図2】本発明の実施例2にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図3】本発明の実施例3にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図4】本発明の実施例4にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図5】本発明の実施例5にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図6】本発明の実施例6にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図7】本発明の実施例7にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図8】図8(A)〜図8(H)は本発明の実施例1のズームレンズの各収差図
【図9】図9(A)〜図9(H)は本発明の実施例2のズームレンズの各収差図
【図10】図10(A)〜図10(H)は本発明の実施例3のズームレンズの各収差図
【図11】図11(A)〜図11(H)は本発明の実施例4のズームレンズの各収差図
【図12】図12(A)〜図12(H)は本発明の実施例5のズームレンズの各収差図
【図13】図13(A)〜図13(H)は本発明の実施例6のズームレンズの各収差図
【図14】図14(A)〜図14(H)は本発明の実施例7のズームレンズの各収差図
【図15】本発明の実施形態にかかる撮像装置の概略構成図
【符号の説明】
【0100】
1 ズームレンズ
2 フィルタ
4 撮像素子
5 信号処理回路
6 表示装置
10 ビデオカメラ
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
PP 光学部材
St 開口絞り
Z 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、正の屈折力を有し、変倍時に固定されている第1レンズ群と、負の屈折力を有し、光軸に沿って移動することにより変倍を行う第2レンズ群と、絞りと、正の屈折力を有し、変倍時に固定されている第3レンズ群と、正の屈折力を有し、変倍に伴う像面位置の補正および合焦を行う第4レンズ群とを備え、
前記第2レンズ群が、物体側から順に、第1の負レンズと、少なくとも1面の非球面を有する第2の負レンズと、正レンズとを含み、
前記第2の負レンズのd線におけるアッベ数をν22とし、前記第1の負レンズの物体側の面から前記第2の負レンズの像側の面までの光軸上の距離をD2aとし、前記第1の負レンズの像側の面から前記第2の負レンズの物体側の面までの光軸上の距離をD2bとし、前記第2レンズ群の焦点距離をf2とし、広角端における全系の焦点距離をfwとしたとき、下記条件式(1)〜(3)を満たすことを特徴とするズームレンズ。
68.0<ν22<83.0 … (1)
0.68<D2b/D2a<0.85 … (2)
1.5<|f2/fw|<1.9 … (3)
【請求項2】
前記正レンズのd線におけるアッベ数をν23としたとき、下記条件式(4)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
ν23<21.0 … (4)
【請求項3】
前記第2の負レンズの焦点距離をf22としたとき、下記条件式(5)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のズームレンズ。
1.7<f22/f2<2.4 … (5)
【請求項4】
前記第1レンズ群の焦点距離をf1としたとき、下記条件式(6)を満たすことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のズームレンズ。
5.0<|f1/f2|<6.0 … (6)
【請求項5】
前記第1レンズ群が、1枚の負レンズと、3枚の正レンズとから構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のズームレンズを備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−139725(P2010−139725A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315675(P2008−315675)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】