説明

セメント添加材及びセメント組成物

【課題】水粉体比の小さいセメント組成物であっても流動性を向上させることができ、さらに凝結時間を短縮することができるセメント添加材を提供する。
【解決手段】BET比表面積が異なる2種の無機粉末A、Bを含有するセメント添加材であって、無機粉末A、BのBET比表面積が4〜30m/gであり、かつ、無機粉末A、B間のBET比表面積の差が2m/g以上であるセメント添加材。無機粉末AのBET比表面積は、好ましくは4〜15m/gである。無機粉末A、Bは、例えば、炭酸カルシウム微粉末、シリカフューム、またはこれらの組み合わせである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントペースト、モルタル又はコンクリート(以下、セメント組成物と称する。)の材料として用いられるセメント添加材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の高層化に伴って、高強度コンクリートの開発が進められている。
高強度コンクリートを製造するための最も効果的で一般的な方法として、高性能減水剤や高性能AE減水剤を用いてコンクリート体を密実に成形し得る範囲内で、コンクリートの水セメント比をできるだけ小さくする方法が知られている。
しかし、水セメント比を小さくした場合、セメント組成物の粘性が増大するため、流動性が低下し、施工性が悪くなるという問題がある。特に、セメント組成物の水セメント比が小さくなり過ぎると、混練物の流動性が小さくなって、通常の流し込みや締め固めの方法ではセメント組成物を成形することができなくなるという問題がある。
【0003】
ここで、セメント組成物の流動性を改善する手段として、シリカフュームを添加材として用いる方法が知られている(特許文献1)。シリカフュームは、金属シリコンやフェロシリコンの製造時に生じる副産物であり、比表面積が20m/g程度、平均粒径が0.1μm程度の、球状の超微粒子のシリカである。
また、セメント組成物の流動性を改善するための添加材として、炭酸カルシウムの微粉末を用いる方法が提案されている。
このような技術として、例えば、湿分が0.20質量%未満であるコンクリート用炭酸カルシウム微粉末が提案されている(特許文献2)。この文献には、炭酸カルシウム微粉末のBET比表面積として、0.8〜3.0m/gの数値範囲が記載されている。
また、モース硬度が1〜5の鉱物又は前記鉱物を50重量%以上含む岩石を微粉砕し分級することにより得られた、平均粒径が0.05〜0.5μmであって、前記平均粒径が重量累積粒度分布の50%径である鉱物の微粒子が提案されている(特許文献3)。この文献には、前記鉱物の例として炭酸塩鉱物が記載されている。
【特許文献1】特公昭60−59182号公報
【特許文献2】特開2006−298667号公報
【特許文献3】特開2007−126304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているように、シリカフュームを使用することによって、セメント組成物の流動性を大きくすることができる。また、このシリカフュームと、高性能減水剤又は高性能AE減水剤を併用することによって、セメント組成物の粘性が小さくなり、流動性が大きくなるので、水粉体比をより小さくして、セメント組成物を製造することが可能となる。
しかし、この流動性向上の効果を大きくするためには、減水剤の使用量を増やす必要があり、この場合、セメント組成物の凝結に長時間を要し、施工の効率が劣るという問題がある。また、セメント組成物の水粉体比が20質量%未満の場合、流動性改善の効果が得られ難く、また、通常の流し込みや締め固めではセメント組成物を成形することが困難であるという問題がある。
【0005】
特許文献2の技術では、特定の炭酸カルシウム微粉末を用いることによって、セメント組成物の流動性を向上させるとともに、水粉体比が比較的高い高流動コンクリートに対して、材料分離抵抗性を付与することができる。
しかし、セメント組成物の水粉体比が20質量%未満の場合、流動性改善の効果が得られ難く、また、通常の流し込みや締め固めではセメント組成物を成形することが困難であるという問題がある。
特許文献3の技術では、セメント組成物の流動性をある程度向上させることができる。
しかし、セメント組成物の水粉体比が20質量%未満の場合、流動性の向上の効果が不十分であるという問題がある。また、平均粒径0.05〜0.5μmという非常に小さな粒子を用いる必要があり、その粉砕、分級等の作業に長時間を要したり、超高圧水衝突式粉砕装置等の特殊な粉砕装置が必要であるなど、汎用性に欠けるという問題がある。
そこで、本発明は、水粉体比の小さいセメント組成物であっても流動性を向上させることができ、さらに凝結時間を短縮することができるセメント添加材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のBET比表面積を有する2種のシリカフュームを含むセメント添加材を用いれば、前記の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[]を提供するものである。
[1] BET比表面積が異なる2種のシリカフュームA、B(ただし、シリカフュームAはシリカフュームBよりも小さなBET比表面積を有するものとする。)を含むセメント添加材であって、シリカフュームA、BのBET比表面積が4〜30m/gであり、かつ、シリカフュームA、B間のBET比表面積の差が2m/g以上であることを特徴とするセメント添加材。
[2] シリカフュームAのBET比表面積が、4〜15m/gである上記[1]に記載のセメント添加材。
[] シリカフュームBのBET比表面積が15m/g以上であり、かつ、シリカフュームAとシリカフュームBとの質量比(シリカフュームA/シリカフュームB)が、65/35〜99.9/0.1である上記[1]又は[2]に記載のセメント添加材。
[] シリカフュームAのBET比表面積が5〜15m/gであり、シリカフュームBのBET比表面積が15m/gを超え30m/g以下であり、シリカフュームA、B間のBET比表面積の差が3m/g以上であり、シリカフュームAとシリカフュームBとの質量比(シリカフュームA/シリカフュームB)が、70/30〜99.9/0.1である上記[1]に記載のセメント添加材。
[] 上記[1]〜[]のいずれかに記載のセメント添加材及びセメントを含む粉体と、該粉体100質量部に対して10〜35質量部の量で配合される水を含むことを特徴とするセメント組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明のセメント添加材を用いれば、小さな水粉体比(例えば、10〜35質量%)を有するセメント組成物であっても、減水剤の使用量を増大させずに優れた流動性を得ることができる。
また、本発明のセメント添加材は、従来のセメント添加材(例えば、単一のBET比表面積を有するシリカフューム)と比べて、セメント組成物の水粉体比が小さい場合に高性能減水剤や高性能AE減水剤の使用量を増大させる必要がなく、このように減水剤の使用量を少量に抑え得る結果として、凝結時間を短縮することができる。特に、炭酸カルシウム微粉末を使用した場合は、エーライトの水和を促進させることができるので、凝結時間をより短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のセメント添加材は、BET比表面積が異なる2種のシリカフュームA、B(ただし、シリカフュームAはシリカフュームBよりも小さなBET比表面積を有するものとする。)を含むセメント添加材であって、シリカフュームA、BのBET比表面積が4〜30m/gであり、かつ、シリカフュームA、B間のBET比表面積の差が2m/g以上のものである。
【0009】
本発明で用いるシリカフュームシリカフュームA、B)のBET比表面積は、4〜30m/g、好ましくは5〜25m/g、より好ましくは7〜23m/gである。
BET比表面積が4m/g未満では、BET比表面積が大きいシリカフュームと組み合わせて使用しても、小さな水粉体比(例えば、10〜20質量%)を有するセメント組成物の流動性を向上させることが困難となる。また、優れた流動性を確保するために高性能減水剤や高性能AE減水剤の使用量を増大させなければならない場合があり、この場合、凝結時間が遅延するため好ましくない。
BET比表面積が30m/gを超えると、入手が困難となるうえに、BET比表面積が小さいシリカフュームと組み合わせて使用しても、小さな水粉体比(例えば、10〜20質量%)を有するセメント組成物の流動性を向上させることが困難となる。また、優れた流動性を確保するために高性能減水剤や高性能AE減水剤の使用量を増大させなければならない場合があり、この場合、凝結時間が遅延するため好ましくない。
なお、本明細書において、水粉体比が10〜20質量%であるセメント組成物を、「超低水粉体比のセメント組成物」と称することがある。
【0010】
本発明で用いられる2種のシリカフュームA、B間のBET比表面積の差は、2m/g以上、好ましくは2.5m/g以上、より好ましくは3m/g以上である。
該差が2m/g未満では、セメント組成物の流動性を向上させる効果を得ることが困難となる。
本発明において、シリカフュームA(すなわち、2種のシリカフュームのうち、BET比表面積が小さいほうのシリカフューム)のBET比表面積は、超低水粉体比のセメント組成物の流動性を向上させる効果等の観点から、好ましくは4〜15m/g、より好ましくは5〜13m/g、特に好ましくは7〜12m/gである。
【0011】
本発明のセメント添加材の好適な例としては、シリカフュームA、BのBET比表面積が4〜30m/g(好ましくは、シリカフュームAのBET比表面積が4〜15m/g)であり、かつ、シリカフュームA、B間のBET比表面積の差が2m/g以上であるという条件に加えて、例えば、次の(1)〜(3)の条件を有するものが挙げられる。
(1) シリカフュームBのBET比表面積が15m/g未満であり、かつ、シリカフュームAとシリカフュームBとの質量比(シリカフュームA/シリカフュームB)が、0.1/99.9〜99.9/0.1であるセメント添加材。
(2) シリカフュームBのBET比表面積が15m/g以上であり、かつ、シリカフュームAとシリカフュームBとの質量比(シリカフュームA/シリカフュームB)が、65/35〜99.9/0.1であるセメント添加材。
(3) シリカフュームAのBET比表面積が5〜15m/gであり、シリカフュームBのBET比表面積が15m/gを超え30m/g以下であり、シリカフュームA、B間のBET比表面積の差が3m/g以上であり、シリカフュームAとシリカフュームBとの質量比(シリカフュームA/シリカフュームB)が、70/30〜99.9/0.1であるセメント添加材。
【0012】
前記の(1)のセメント添加材において、シリカフュームAとシリカフュームBの質量比(シリカフュームA/シリカフュームB)は、0.1/99.9〜99.9/0.1、好ましくは1/99〜99/1、より好ましくは5/95〜95/5、さらに好ましくは10/90〜90/10、特に好ましくは20/80〜80/20である。該質量比が該数値範囲内であれば、セメント組成物の流動性が向上する。
前記の(2)のセメント添加材において、シリカフュームAとシリカフュームBの質量比(シリカフュームA/シリカフュームB)は、65/35〜99.9/0.1、好ましくは70/30〜99.9/0.1、より好ましくは80/20〜99.5/0.5、特に好ましくは90/10〜99/1である。該質量比が該数値範囲内であれば、セメント組成物の流動性が向上する。
前記の(3)のセメント添加材において、シリカフュームAとシリカフュームBの質量比(シリカフュームA/シリカフュームB)は、70/30〜99.9/0.1、好ましくは80/20〜99.5/0.5、より好ましくは90/10〜99/1である。該質量比が該数値範囲内であれば、セメント組成物の流動性が向上する。
【0013】
シリカフューム以外の無機粉末としては、例えば、炭酸カルシウム微粉末等が挙げられる。
炭酸カルシウム微粉末は、原料の入手の容易性やコスト等の観点から、本発明で好適に用いられる。
シリカフュームは、入手の容易性やコスト等の観点から、本発明で好適に用いられる。
炭酸カルシウム微粉末としては、工業用炭酸カルシウム、石灰石粉末等を使用することができる。中でも、安価である石灰石粉末を使用することが好ましい。その他、炭酸カルシウムを主成分とする貝殻やサンゴの粉砕物、又はこれらの加工物を使用してもよい。ここで、主成分とは、炭酸カルシウムを60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上含むことをいう。
【0014】
炭酸カルシウム微粉末の全有機炭素量は、超低水粉体比を有するセメント組成物の流動性の向上等の観点から、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.05質量%未満、特に好ましくは0.01質量%未満である。
炭酸カルシウムの全有機炭素量は、以下の一連の手順(a)〜(c)からなる方法で測定することができる。
(a)炭酸カルシウム粉末に濃塩酸を発泡して溢れないように少しずつ添加する。
(b)発泡がなくなるまで濃塩酸を添加した後、130℃で乾燥する。
(c)乾燥後、元素分析計で全有機炭素量を測定する。
元素分析計としては、日本シイベルヘグナー社製の「vario MAX CN」等を使用することができる。
【0015】
炭酸カルシウム微粉末としては、(A)乾式粉砕のみにより得られた炭酸カルシウム微粉末、(B)乾式粉砕と分級を組み合わせた方法により得られた炭酸カルシウム微粉末、(C)湿式粉砕により得られた炭酸カルシウム微粉末、のいずれも用いることができる。
中でも、上記(A)、(B)の炭酸カルシウム微粉末は、超水粉体比を有するセメント組成物であっても、流動性を向上させる効果が大きいことなどから、好ましく用いられる。
炭酸カルシウム微粉末は、例えばBET比表面積が4m/g未満の炭酸カルシウムを、乾式粉砕あるいは湿式粉砕し、BET比表面積を調整することにより得られる。
炭酸カルシウム微粉末を乾式粉砕により得る場合には、BET比表面積が4m/g未満の炭酸カルシウムと、必要に応じて配合されるアミン類、グリコール類、アルコール類、石膏や滑石等の無機物、ポリカルボン酸系やナフタレン系等のセメント分散剤等の粉砕助剤とを乾式粉砕機に投入し、BET比表面積を調整する。乾式粉砕によって所定のBET比表面積に調整された炭酸カルシウムは、そのまま、本発明のセメント添加材の材料として用いることができる。
乾式粉砕機としては、ボールミル、ロッドミル、振動ミル、竪型ミル、チューブミル、ローラーミル、ジェットミル、分級機を内蔵したハイブリッドミル等が挙げられる。また、乾式粉砕の際には、必要に応じて、分級を行うことができる。分級手段としては、風力分級機や篩等が挙げられる。
粉砕助剤の添加量は、炭酸カルシウム100質量部に対して、好ましくは0〜2質量部、より好ましくは0〜1質量部、特に好ましくは0〜0.5質量部である。
【0016】
炭酸カルシウム微粉末を湿式粉砕により得る場合には、例えば、BET比表面積が4m/g未満の炭酸カルシウム、消泡剤、分散剤、及び水を湿式粉砕機に投入し、BET比表面積を調整する。湿式粉砕により所定のBET比表面積に調整された炭酸カルシウム微粉末は、そのままスラリーの形態で、あるいは、乾燥させて粉体の形態で、本発明のセメント添加材の材料として用いることができる。
湿式粉砕機としては、ボールミル、撹拌ミル等が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン系、アルコール系、ポリエーテル系などの合成物質、植物由来の天然物質又は石油精製由来の鉱物油系等の消泡剤が挙げられる。消泡剤の添加量は、炭酸カルシウム100質量部に対して、好ましくは0.001〜0.2質量部、より好ましくは0.005〜0.1質量部である。
分散剤としては、ポリカルボン酸系、ナフタリン系、メラミン系、アミノスルホン酸系、リグニンスルホン酸系、ポリスチレンスルホン酸系等の分散剤が挙げられる。分散剤の添加量は、炭酸カルシウム100質量部に対して、固形分換算で、好ましくは0.1〜3.0質量部、より好ましくは0.4〜1.0質量部である。
湿式粉砕時の水の量は、炭酸カルシウム100質量部に対して、好ましくは10〜230質量部、より好ましくは20〜150質量部、特に好ましくは20〜60質量部である。
【0017】
本発明のセメント添加材は、特に、水粉体比が10〜35質量%である低水粉体比のセメント組成物の材料として好適に使用することができる。
特に、本発明のセメント添加材によれば、単一のBET比表面積を有するシリカフューム等の従来の流動性改善材と異なり、水粉体比が10〜20質量%の超低水粉体比のセメント組成物であっても、セメント組成物の流動性を向上させることができる。また、この場合、減水剤の量を過度に増大させる必要がないため、超低水粉体比であるために多量の減水剤を必要とするセメント組成物と比べて、セメント組成物の凝結時間を短縮することができる。
なお、本発明において、水粉体比における水は、セメント組成物に含まれる全ての水をいい、例えば、炭酸カルシウムを湿式粉砕により得てスラリー状で使用する場合は、スラリーに含まれている水と、セメント組成物の配合水又は練り混ぜ水と称される水とを合わせたもの(合計量)をいう。
【0018】
本発明のセメント組成物は、上述のセメント添加材に加えて、セメント、水、及び必要に応じて配合される他の材料を含む。
必要に応じて配合される他の材料としては、粗骨材、細骨材、減水剤(特に高性能減水剤または高性能AE減水剤)、本発明のセメント添加材以外のセメント混和材(具体的には、本発明で規定するBET比表面積の数値範囲内にある、シリカフュームA、B以外の第3の無機粉末や、本発明で規定するBET比表面積の数値範囲を外れた無機粉末)等が挙げられる。
本発明において、粗骨材の配合量は、セメント組成物の機械的強度等の観点から、本発明のセメント添加材とセメントの合計量(100質量%)に対する割合(外割)で、好ましくは0〜150質量%、より好ましくは0〜100質量%、特に好ましくは0〜80質量%である。
細骨材の配合量は、セメント組成物の機械的強度等の観点から、本発明のセメント添加材とセメントの合計量(100質量%)に対する割合(外割)で、好ましくは5〜200質量%、より好ましくは10〜150質量%、特に好ましくは20〜100質量%である。
【0019】
減水剤の配合量は、セメント組成物の流動性及び凝結時間の観点から、本発明のセメント添加材とセメントの合計量(100質量%)に対する割合(外割)で、固形分換算で、好ましくは0.1〜7質量%、より好ましくは0.2〜5質量%、特に好ましくは0.3〜3質量%である。
【0020】
セメント組成物には、BET比表面積が4〜30m/gである、シリカフュームA、B以外の1種又は2種以上の無機粉末を配合することもできる。ただし、材料の入手や調製等の手間を考慮すると、本発明で規定するBET比表面積が4〜30m/gの数値範囲内においては、シリカフュームA、Bの2種のみを含むことが好ましい。
セメント組成物の材料として、BET比表面積が4〜30m/gであるシリカフュームを3種以上用いる場合、本発明で規定するシリカフュームA、Bは、配合量の最も大きい2種の組み合わせを意味するものとする。また、この場合、BET比表面積が4〜30m/gであるすべてのシリカフュームの合計量中のシリカフュームA、Bの合計量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。
【0021】
セメント組成物には、BET比表面積が4〜30m/gの範囲を外れた無機粉末を配合することもできる。ただし、該無機粉末の配合量は、本発明の効果を大きく損ねないために、本発明のセメント添加材とセメントの合計量(100質量%)に対する割合(外割)で、好ましくは0〜40質量%、より好ましくは0〜30質量%、特に好ましくは0〜20質量%である。
【0022】
本発明で用いるシリカフュームA、B以外のセメント混和材として、高炉スラグ、フライアッシュ等が挙げられる。また炭酸カルシウム粉末等も使用可能である。
本発明で用いるシリカフュームA、B以外のセメント混和材の配合量は、セメント組成物の機械的強度、流動性等の観点から、本発明のセメント添加材とセメントの合計量(100質量%)に対する割合(外割)で、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜40質量%、特に好ましくは0〜30質量%である。
【0023】
セメント組成物における、本発明のセメント添加材の配合量は、セメントとセメント添加材との合計量100質量%に対して、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。また、本発明のセメント添加材の配合量は、セメントとセメント添加材との合計量100質量%に対して、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上である。
セメント添加材の配合量が、セメントとセメント添加材との合計量100質量%に対して、3質量%未満または50質量%を超えると、超低水粉体比のセメント組成物の流動性を向上させる効果が低下する場合があるため、好ましくない。また、高性能減水剤や高性能AE減水剤の使用量を多くしなければならない場合があり、セメント組成物の凝結時間が遅延するおそれがある。
本発明のセメント添加材は、シリカフュームAとシリカフュームBを予め混合してプレミックス材として使用してもよいし、あるいは、シリカフュームAとシリカフュームBを分けて用意しておき、セメント組成物の調製時に、シリカフュームA、シリカフュームB、及び他の材料をそれぞれミキサに投入して、セメント組成物を製造するように使用してもよい。
本発明のセメント組成物における水粉体比(本発明のセメント添加材とセメントの合計に対する水の質量割合)は、水粉体比が低い場合に高い流動性を得ようとする本発明の目的を考慮すると、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは18質量%以下、特に好ましくは16質量%以下である。
水粉体比の下限値は、特に限定されないが、通常、10質量%である。
本発明のセメント組成物がモルタルである場合、モルタルの流動性は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行わないで測定したフロー値で、好ましくは140mm以上、より好ましくは150mm以上である。
【実施例】
【0024】
以下、実施例によって本発明を説明する。
1.使用材料
以下に示す材料を使用した。
(1)セメント ;低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、比重3.22)
(2)細骨材 ;小笠産陸砂
(3)高性能減水剤A;コアフローNF−200(太平洋マテリアル社製)
高性能減水剤B;レオビルドSP−8HU(ポゾリス物産社製)
(4)消泡剤A ;AF−20(太平洋マテリアル社製)
消泡剤B ;マイクロエア404(ポゾリス物産社製)
(5)水 ;水道水
(6)無機粉末a ;シリカフューム(BET比表面積11m/g)
(7)無機粉末b ;シリカフューム(BET比表面積22m/g)
(8)無機粉末c ;平均粒径10μmの炭酸カルシウム粉末を湿式粉砕した後、乾燥して得た炭酸カルシウム微粉末(BET比表面積20m/g、炭酸カルシウムの含有量:98.5質量%)
(9)無機粉末d ;乾式粉砕及び分級により得た、BET比表面積8.0m/gの炭酸カルシウム微粉末(炭酸カルシウムの含有量:98.5質量%、全有機炭素量:0.01質量%未満)
【0025】
2.モルタル評価試験1
上記材料を使用して、細骨材/粉体比(質量)を1.5、高性能減水剤/粉体比(質量)を0.025、消泡剤/粉体比(質量)を0.0001とし、表1に示す水粉体比となるようにセメント添加材の配合量を定めて、モルタル(実施例1〜10、参考例1〜2、比較例1〜7)を調製した。
モルタルの調製には、ホバートミキサを使用し、各材料を個別にミキサに投入し、表1に示す混練時間で、低速で混練した。
各モルタルのフロー値を「JIS R 5201(セメントの物理試験方法) 11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行わないで測定した。
結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
3.モルタル評価試験の結果の考察1
表1に示す結果から、本発明のセメント添加材を使用した、水粉体比が16質量%であるセメント組成物(実施例1〜5)は、フロー値が236mm以上と大きく、無機粉末aと無機粉末bのいずれかを単独で使用したセメント組成物(比較例1〜2)及び無機粉末a、bを使用しないセメント組成物(比較例3)よりも、流動性を向上させることが確認できた。
また、本発明のセメント添加材を使用した、水粉体比が14質量%であるセメント組成物(実施例6〜10)は、フロー値が145mm以上と大きく、無機粉末aを単独で使用したセメント組成物(比較例4)よりも、流動性を向上させることが確認できた。なお、無機粉末bを単独で用いた場合(比較例5)、無機粉末cを単独で用いた場合(比較例6)、及び無機粉末b、cを使用しない場合(比較例7)は、混練が不可能であった。
【0028】
4.モルタル評価試験2
上記材料を使用して、水/粉体比(質量)を0.13、高性能減水剤B/粉体比(質量)を0.005、消泡剤B/粉体比(質量)を0.0001とし、細骨材/粉体比(質量)、及びセメント添加材の配合量が表2に示す値となるようにモルタル(参考例4〜7、比較例8〜10)を調製した。
モルタルの調製には、ホバートミキサを使用し、各材料を個別にミキサに投入し、表2に示す混練時間で、低速で混練した。
各モルタルのフロー値を「JIS R 5201(セメントの物理試験方法) 11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行わないで測定した。
結果を表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
5.モルタル評価試験の結果の考察2
表2から無機粉末a、dを使用しない場合(比較例10)は、混練が不可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET比表面積が異なる2種のシリカフュームA、B(ただし、シリカフュームAはシリカフュームBよりも小さなBET比表面積を有するものとする。)を含むセメント添加材であって、シリカフュームA、BのBET比表面積が4〜30m/gであり、かつ、シリカフュームA、B間のBET比表面積の差が2m/g以上であることを特徴とするセメント添加材。
【請求項2】
シリカフュームAのBET比表面積が、4〜15m/gである請求項1に記載のセメント添加材。
【請求項3】
シリカフュームBのBET比表面積が15m/g以上であり、かつ、シリカフュームAとシリカフュームBとの質量比(シリカフュームA/シリカフュームB)が、65/35〜99.9/0.1である請求項1又は2に記載のセメント添加材。
【請求項4】
シリカフュームAのBET比表面積が5〜15m/gであり、シリカフュームBのBET比表面積が15m/gを超え30m/g以下であり、シリカフュームA、B間のBET比表面積の差が3m/g以上であり、シリカフュームAとシリカフュームBとの質量比(シリカフュームA/シリカフュームB)が、70/30〜99.9/0.1である請求項1に記載のセメント添加材。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載のセメント添加材及びセメントを含む粉体と、該粉体100質量部に対して10〜35質量部の量で配合される水を含むことを特徴とするセメント組成物。

【公開番号】特開2012−254936(P2012−254936A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−221878(P2012−221878)
【出願日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【分割の表示】特願2007−272398(P2007−272398)の分割
【原出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人セメント協会、「第61回セメント技術大会講演要旨 2007」(2007年5月20日発行)にて発表
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】