説明

セメント組成物及びセメント混練物

【課題】 産業廃棄物あるいは産業副産物をセメントクリンカー原料として多量に使用することができ、練混ぜ直後の流動性に優れ、流動性の経時変化の小さいセメント組成物を提供する。
【解決手段】 セメント組成物は、セメントクリンカーと石膏とを含有し、セメントクリンカー中のMgO量とボーグ式算定のCA量のモル比(MgO/CA)は、0.8〜1.8である。セメントクリンカーに占めるCA量は、ボーグ式算定で9質量%〜15質量%であり、セメントクリンカーに占めるMgO量は、1.0質量%を超える。そして、セメント組成物に、水及びポリカルボン酸系分散剤を添加して調製したセメントペーストの注水練混ぜ開始時から10分後の降伏値は、23Pa以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業廃棄物あるいは産業副産物をセメントクリンカー原料として使用することができ、水との練混ぜ直後における流動性に優れ、流動性の経時変化の小さいセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント産業では古くから原料及び燃料に産業廃棄物あるいは産業副産物を用いてきたが、1990年代より資源循環型社会の構築の機運が高まり、セメント組成物における産業廃棄物や産業副産物の使用量のさらなる増大が望まれている。一般にセメント組成物の原料として使用できる廃棄物は、Al成分に富んだものであり、粘土代替原料として使用されている。したがって、この廃棄物原料の使用量を増大させるためには、セメントクリンカー組成をAl成分に富む組成にすればよい。しかし、この場合、同時にクリンカー化合物組成も変化し、アルミネート系化合物である3CaO・Al(「CA」と略される)や4CaO・Al・Fe(「CAF」と略される)が増大することになる。
【0003】
廃棄物を多量に使用して製造する技術の代表的なものとして、JIS R 5214「エコセメント」で規定されているエコセメントがある。このエコセメントは、従来のポルトランドセメントとは異なり、カルシウムクロロアルミネート化合物を含む、あるいはCAを多量に含むことを特徴としている。これらの化合物は水和活性が非常に高いため、所定の流動性を得るには、化学混和剤を多量に使用する必要がある。しかも流動性の経時変化が大きいために、減水能力が大きいポリカルボン酸系高性能減水剤や遅延剤の併用が欠かせず、これを改良する技術として下記特許文献1に示されるように、アルミネート系化合物の量を制限している。
【0004】
表1に、種々のセメント系材料中のアルミネート系化合物(CA、非晶質C12等)の標準的なボーグ式算定含有量を示す。アルミネート系化合物は一般に活性が高く、その性質を利用する早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、速硬セメント、急結材等に多く含まれる。しかし、アルミネート系化合物量が多くなると、一般にセメントペースト、モルタルあるいはコンクリートの流動性は低下し、しかも経時変化が大きくなる。このため、減水剤を多量に添加する、減水能力の大きい減水剤を使用する、あるいは減水剤と遅延剤を併用するなどの対策が取られている。
【0005】
【表1】

【0006】
また、セメントやクリンカー中のCA量は、ボーグ式により計算されるのが一般的であるが、MgO量の多少によって、ボーグ式で算出されるCA量と、粉末X線回折や光学顕微鏡観察により定量されるCA量とに差があることが、近年の研究によって明らかにされている。
【特許文献1】特開平11−199301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、コンクリートは、セメント組成物、水、細骨材等の練混ぜ、運搬、さらに打設の過程を経る。練混ぜ直後の流動性はコンクリート配合あるいは減水剤添加量である程度の調整は可能であるが、単位水量の問題や減水剤添加量の増大によるコストアップを考慮すると、コンクリート自体の流動性は高い方が好ましい。また、コンクリートの流動性の経時変化が大きいと、品質管理が困難になる、あるいはポンプ圧送が困難になるなどのトラブルが発生する場合がある。従って、使用するセメント組成物は、練混ぜ直後の流動性が高く経時変化が小さいことが望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、産業廃棄物あるいは産業副産物をセメントクリンカー原料として多量に使用することができ、練混ぜ直後の流動性に優れ、流動性の経時変化の小さいセメント組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、このような目的を達成するために、クリンカー鉱物組成と少量成分が、セメント組成物の練混ぜ直後における流動性に及ぼす影響を鋭意研究した結果、CA量だけでなく、微量成分であるMgO量も流動性に影響を与えることを知見し、本発明を完成するに至った。具体的には、廃棄物使用量の増加に伴うCA量が増大したセメント組成物であっても、CA量とMgO量を適正化することにより、練混ぜ直後の流動性が高く経時変化が小さいものとすることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係るセメント組成物は、セメントクリンカーと石膏とを含有し、該セメントクリンカー中のMgO量とボーグ式算定とのCA量のモル比(MgO/CA)が0.8〜1.8であることを特徴とする。
【0011】
このセメント組成物には、産業廃棄物あるいは産業副産物をセメントクリンカー原料として多量に使用することができ、セメント組成物は、練混ぜ直後の流動性に優れ、その流動性の経時変化は小さい。ここで、(MgO/CA)モル比が0.8未満の場合、練混ぜ直後の流動性および流動性の経時変化が顕著に悪化するため不適当である。また、(MgO/CA)モル比が1.8を超えると、粉末X線回折や光学顕微鏡で定量されるCA量が少ない場合でも、流動性は大きく低下するため好ましくない。
【0012】
また、セメントクリンカーに占めるCA量がボーグ式算定で9質量%〜15質量%であることが好ましい。CA量が9質量%未満の場合、セメント組成物に水等を練り混ぜた直後の初期強度の発現が低下するほか、MgO量の適正範囲が狭くなり、実用上調整が難しくなる傾向がある。CA量が15質量%を超えると、練混ぜ直後の流動性が顕著に低下する傾向がある。
【0013】
また、セメントクリンカーに占めるMgO量が1.0質量%を超えることが好ましい。MgO量が1.0質量%未満であると、所定の流動性を確保することが困難となる傾向がある。
【0014】
さらに、セメントクリンカーの原料として、鉄鋼スラグ、非鉄スラグ、石炭灰、下水汚泥から選ばれる少なくとも1種以上が使用されていることが好ましい。これらの産業廃棄物や産業副産物を使用することにより、資源循環型社会の要請に応えることができる。
【0015】
さらに、セメント組成物には、高炉スラグ、フライアッシュ、石灰石微粉末から選ばれる少なくとも1種以上の無機粉末を含有すると良い。高炉スラグやフライアッシュのような産業副産物を使用することにより、さらに資源循環型社会の要請に応えることができる。
【0016】
さらに、上記のセメント組成物は、水及びポリカルボン酸系分散剤を添加して調製したセメントペーストの注水練混ぜ開始時から10分後の降伏値が23Pa以下であると好ましい。この条件を満たせば、セメント組成物をコンクリートに用いても良好な流動性を発現できる。
【0017】
また、本発明に係るセメント混練物は、上記のセメント組成物に、ポリカルボン酸系分散剤が練り混ぜられていることを特徴とする。セメント混練物としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート等が例示される。特に、セメント組成物を用いて高い流動性が要求される高流動コンクリートを調整する場合に、減水能力の大きいポリカルボン酸系の分散剤を用いることで、水セメント比が低い条件下において、良好な流動性を発現させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、産業廃棄物あるいは産業副産物をセメントクリンカー原料として多量に使用することができ、練混ぜ直後の流動性に優れ、流動性の経時変化の小さいセメント組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るセメント組成物の好適な実施形態について説明する。
【0020】
本実施形態に係るセメント組成物は、セメントクリンカーと石膏とを含有し、セメントクリンカー中のMgO量とボーグ式算定のCA量のモル比(MgO/CA)が、0.8〜1.8、好ましくは0.9〜1.6、特に好ましくは1.0〜1.5である。このときのMgO量は、JIS R 5204「セメントの蛍光X線分析方法」に示されたガラスビードを用いた蛍光X線分析により計測した値である。
【0021】
(MgO/CA)モル比が0.8未満の場合、練混ぜ直後の流動性および流動性の経時変化が顕著に悪化するため不適当である。また、(MgO/CA)モル比が1.8を超えると、粉末X線回折や光学顕微鏡で定量されるCA量が少ない場合でも、流動性は大きく低下するため好ましくない。その原因は、CAあるいはCAFの反応性の増加、あるいは遊離MgOが水和反応に作用しているからであると推察される。
【0022】
ここで、セメントクリンカーに関し、その種類および製造方法は制限されない。例えば、単一のクリンカー原料を焼成して製造しても良いし、二種以上のセメントクリンカーを混合して調製しても良い。
【0023】
本発明者らの検討結果によると、(MgO/CA)モル比が同じであれば、CA量が少ないほど流動性は良いことから、CA量の不足による初期強度の低下やCAF量の増加による呈色が問題とならない場合であれば、ボーグ式で求められるCA量は少ない方が好ましく、MgO量はCA量に応じて適正な範囲に調整することが必要である。一方、原料の諸事情により、MgO量が調整できない場合には、CA量をMgO量に応じて適正な範囲に調整することで、良好な流動性を付与することができる。すなわち、MgO量によっては、CA量を増量することで、練混ぜ直後の流動性および流動性の経時変化が良くなる。このように、(MgO/CA)の適正領域に着目した点が、極めて特徴的である。
【0024】
また、上記のセメント組成物は、セメントクリンカーに占めるCA量がボーグ式算定で9質量%〜15質量%、好ましくは9質量%〜14質量%、特に好ましくは9質量%〜13質量%であることが望ましい。CA量が9質量%未満の場合、セメント組成物に水等を練り混ぜた直後の初期強度の発現が低下する傾向があるほか、MgO量の適正範囲が狭くなり、実用上調整が難しくなる傾向がある。CA量が15質量%を超えると、いかなるMgO量の条件においても、練混ぜ直後の流動性が顕著に低下する傾向がある。
【0025】
また、上記のセメント組成物は、セメントクリンカーに占めるMgO量が1.0質量%を超えることが望ましい。MgO量が1.0質量%未満であると、所定の流動性を確保することが困難となる傾向がある。なお、セメントクリンカーに占めるMgO量は、4.0質量%以下であることが好ましい。4.0質量%を超えると、CA量は15質量%を超えなければならず、所定の流動性を確保することが難しくなる傾向にあり、また、遊離MgOにより硬化体が膨張するおそれがあるためである。
【0026】
セメントクリンカーの原料としては、天然原料のほかに産業廃棄物や産業副産物である鉄鋼スラグ、非鉄スラグ、石炭灰、及び下水汚泥などを使用して、セメントクリンカーを焼成してもよい。本セメント組成物は、普通ポルトランドセメントよりも廃棄物の使用量を多くすることができ、間隙相(CAとCAF)を増量したセメントクリンカーを含有しても、流動性に優れる。
【0027】
さらに、上記のセメント組成物は、高炉スラグ、フライアッシュ、石灰石微粉末から選ばれる少なくとも1種以上の無機粉末を含有することが望ましい。高炉スラグやフライアッシュのような産業副産物を使用することにより、資源循環型社会の要請に応えることができる。これらの含有量が多いほど流動性は良好となるため、初期強度の発現等が問題とならない範囲であれば、無機粉末の含有量は多い方が好ましい。
【0028】
ここで、上記のセメント組成物は、水セメント比35%でポリカルボン酸系分散剤を0.6質量%添加して調製したセメントペーストの注水練混ぜ開始時から10分後の降伏値が、23Pa以下であることが望ましい。このような配合とすると、セメントペーストは近似的にビンガム流動を示し、降伏値を測定することができる。本発明者らの検討結果では、セメントペーストの注水練混ぜ開始時から10分後の降伏値が23Pa以下であれば、コンクリートでも良好な流動性を発現できることが確認された。なお、この降伏値は、1.0Pa以上であることが好ましい。降伏値が1.0Pa未満であると、セメントペーストのコンシステンシーが過度に小さくなり、そのようなセメント組成物でモルタルやコンクリートを調整した場合に、骨材の分離を生じるおそれがあるためである。
【0029】
また、セメント組成物にポリカルボン酸系分散剤を練り混ぜて、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント混練物を作製すると良い。特に、セメント組成物を用いて高い流動性が要求される高流動コンクリートを調整する場合に、減水能力の大きいポリカルボン酸系の分散剤を用いることで、水セメント比が低い条件下において、良好な流動性を発現させることができる。
【0030】
このように、通常のポルトランドセメントのみならず、産業廃棄物や産業副産物をセメントクリンカーの原料として多量に使用し間隙相量を増大させたセメント組成物においてさえも、セメントクリンカー中のCA量とMgO量の調整により流動性を調整できることを見出したことが、本発明の重要なポイントであり、それらを最適化することで、本発明の目的を達成できる。
【0031】
なお、セメント組成物において、用い得る石膏の種類は、二水石膏や半水石膏、不溶性無水石膏が挙げられる。石膏を添加するタイミングは特に制限されるものではなく、セメントクリンカーの粉砕時に添加しても良く、あるいは粉砕後のセメントクリンカーに添加し混合しても良い。
【0032】
また、上記のセメント組成物は、水および各種減水剤との混合により、優れた流動性を発現するが、更にはこれをベースとした混合セメント、セメント系固化材、セルフレベリング材等の用途においても、好適に使用することができる。
【0033】
以上のように、セメントクリンカー中のCA量およびMgO量を適正な割合で調整するという簡便な方法で、練混ぜ直後の流動性に優れ、流動性の経時変化が小さいセメント組成物を得ることができる。また、セメントクリンカー原料として、産業廃棄物や産業副産物を大量に使用し、間隙相量が増加したセメントクリンカーを使用した場合であっても、流動性に優れるセメント組成物を得ることができる。これにより、廃棄物の使用量を増大させることができ、資源循環型社会に一層貢献することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0035】
石灰石、珪石の天然原料と、高炉スラグ、石炭灰および鉄精鉱から選ばれた廃棄物類の所要量を使用し、(株)モトヤマ製超高速昇温電気炉にて、表2に示した鉱物組成およびMgO含有量の異なるセメントクリンカーを試製した。ここで、「MgO/CAモル比」の欄には、セメントクリンカー中のMgO量とボーグ式算定のCA量のモル比(MgO/CA)を示した。なお、MgO量は、JIS R 5204「セメントの蛍光X線分析方法」に示されたガラスビードを用いた蛍光X線分析により計測した値である。これらのセメントクリンカーに、セメント組成物のSO量が2.0質量%となるよう二水石膏および半水石膏を添加し、ブレーン比表面積で320±10m/kgに粉砕した。ここで、セメント組成物中の半水石膏と(二水石膏+半水石膏)との比(=半水石膏/(二水石膏+半水石膏))は、いずれも0.8とした。また、減水剤は、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(以下PCと略記する)を使用した。以下に使用した材料を記す。
【0036】
(1)セメント組成物の原料
(i)セメントクリンカー原料
石灰石( CaO含有量=55.2質量%)
珪石( SiO2含有量=96.1質量%)
高炉スラグ( Al2O3含有量=14.6質量%)
石炭灰( Al2O3含有量=32.0質量%)
鉄精鉱( Fe2O3含有量=70.1質量%)
酸化アルミニウム(試薬特級、和光純薬鉱業株式会社製)
硫酸カルシウム二水和物(試薬特級、関東化学株式会社製)
炭酸ナトリウム(試薬特級、和光純薬鉱業株式会社製)
炭酸カリウム(試薬特級、和光純薬鉱業株式会社製)
(ii)石膏
二水石膏:硫酸カルシウム二水和物(試薬特級、関東化学株式会社製)
半水石膏:硫酸カルシウム二水和物(試薬特級、関東化学株式会社製)を大気中で加熱調製(加熱温度120℃)
(2)減水剤
ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(PC):レオビルドSP8Sx4(株式会社エヌエムビー製)
【0037】
【表2】

【0038】
[セメント組成物の流動性評価]
(1)セメントペーストの調製
調製した各セメント組成物100質量%に対し、水セメント比35%、減水剤添加量0.60質量%の条件でイオン交換水および減水剤を加え、ハイシアーミキサー(SILVERSON社製)にて2分間攪拌しセメントペーストを調製した。これをR.H.(相対湿度)90%以上の湿空環境で静置し、注水撹拌開始から10分後および60分後に、次に示す流動性の評価試験を実施した。
【0039】
(2)評価試験
流動性の評価は、プレート間のギャップを0.5mmとしたパラレルプレート型回転粘度計(Haake社製Rotovisco RV1)を用い、せん断速度を0 s-1 → 500 s-1 → 0 s-1 (加速・減速ともに2分間)と変化させた周期的せん断試験により、せん断応力を測定した。このうち、加速時の100〜400 s-1 におけるせん断応力を直線近似し、ビンガム降伏値を流動性の指標とした。
【0040】
調整したセメント組成物の流動性評価試験結果を表2の「流動性試験結果」の欄に示す。同じ間隙相組成であるセメントクリンカーNo.1〜4を用いて調整したセメント組成物の流動性試験結果を比べると、MgO量によって流動性は変化することがわかった。また、水及びPCを添加して調整したセメントペーストの注水練混ぜ開始時から10分後の降伏値が23Pa以下であったのは、セメントクリンカーNo.2,3を用いて調整したセメント組成物であることがわかった(実施例1,2)。さらに、そのセメントクリンカーNo.2,3を用いて調整したセメント組成物の10〜60分における降伏値の増加(Pa)、つまり流動性の経時変化は十分小さく、セメントクリンカーNo.1,4(比較例1,2)のそれに比べて良好であった。
【0041】
セメントクリンカーNo.5,6のCA量は、セメントクリンカーNo.1,4のCA量よりも多いが、セメントクリンカーNo.5,6を用いたセメント組成物に、水及びPCを添加して調整したセメントペーストの注水練混ぜ開始時から10分後の降伏値は、23Pa以下であり、流動性は良好であった(実施例3,4)。
【0042】
また、セメントクリンカーNo.2,3,5,6(実施例1〜4)のセメントクリンカー中におけるMgO量とボーグ式算定のCA量のモル比(MgO/CA)は、0.8〜1.8であることがわかった。また、セメントクリンカーNo.2,3,5,6それぞれに占めるCA量は、9質量%〜15質量%であり、セメントクリンカーに占めるMgO量は、1.0質量%を超えていた。このように、CA量やMgO量の変化に伴う流動性の変化は一定ではなく、両者のモル比が重要であることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントクリンカーと石膏とを含有し、該セメントクリンカー中のMgO量とボーグ式算定のCA量とのモル比(MgO/CA)が0.8〜1.8であることを特徴とするセメント組成物。
【請求項2】
前記セメントクリンカーに占めるCA量がボーグ式算定で9質量%〜15質量%であることを特徴とする請求項1に記載のセメント組成物。
【請求項3】
前記セメントクリンカーに占めるMgO量が1.0質量%を超えることを特徴とする請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項4】
前記セメントクリンカーの原料として、鉄鋼スラグ、非鉄スラグ、石炭灰、下水汚泥から選ばれる少なくとも1種以上が使用されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセメント組成物。
【請求項5】
さらに、高炉スラグ、フライアッシュ、石灰石微粉末から選ばれる少なくとも1種以上の無機粉末を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセメント組成物。
【請求項6】
水及びポリカルボン酸系分散剤を添加して調製したセメントペーストの注水練混ぜ開始時から10分後の降伏値が23Pa以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のセメント組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のセメント組成物に、ポリカルボン酸系分散剤が練り混ぜられていることを特徴とするセメント混練物。

【公開番号】特開2006−1793(P2006−1793A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180040(P2004−180040)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】