説明

セラミックパッケージの製造方法

【課題】少なくとも2段以上のキャビティを有するセラミックパッケージの製造方法において、グリーンシート積層方法及び貼着方法を用いることなく、且つ製品バリエーションに対しても柔軟に対応できるセラミックパッケージの製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明のセラミックパッケージの製造方法は、セラミックグリーンシートの一部を窪むように加工して、該セラミックグリーンシートに第1凹部を形成する第1凹部形成工程と、前記セラミックグリーンシートを焼成して、前記第1凹部が形成されたセラミック基板を形成するシート焼成工程と、前記セラミック基板の前記第1凹部が開口している側の表面上に、該第1凹部の開口を取り囲むようにペーストを塗布して、塗布層の内壁面で囲まれる第2凹部を形成する第2凹部形成工程とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子等の電子部品の素子を収容するためのセラミックパッケージの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光素子の一つである発光ダイオード(LED素子)のパッケージとしては、従来からセラミックパッケージが用いられている。従来の発光素子収納用セラミックパッケージとして、図1に示すものが提案されている。(特許文献1)
図1の発光素子収納用セラミックパッケージ100は、発光素子120が搭載される素子搭載領域121を有するセラミック基板110と、セラミック基板110上に素子搭載領域121を取り囲むように形成された第1枠体111と、第1枠体111上に形成された第2枠体112と、を備えている。
すなわち、このセラミックパッケージ100の、発光素子120を収納するためのキャビティは、第1凹部101と第2凹部102とからなる2段構造になっている。
そして、このセラミックパッケージ100に発光素子120を搭載して、発光装置100として使用する。この発光装置100は、セラミック基板110の素子搭載領域121に、発光素子120が導電性接合材、樹脂接着剤等により固着されるとともに、第1枠体111に形成された電極パッド130に、発光素子120の電極がボンディングワイヤ131を介して電気的に接続される。また、第1枠体111及び第2枠体112の内側には、発光素子120を覆うように透光部材132が設けられる。そして、セラミック基板110下面の外部接続端子133が外部電気回路基板の配線導体に接続されることで、セラミックパッケージ100内の配線導体134を介して、発光素子120へ電源電圧が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−173182号公報
【0004】
キャビティが2段構造である、このセラミックパッケージを製造する方法として、グリーンシート積層方法が挙げられる。以下に、この従来の製造方法について説明する。
まず、アルミナ粉末、有機バインダ、溶剤、可塑剤等を混合してスラリーを作製する。このスラリーを従来周知の手法によりシート状に成形して、セラミックグリーンシートを形成する。
次に、焼成後にセラミック基板となる、基板用セラミックグリーンシートを形成した後、焼成後に第1枠体及び第2枠体となる、セラミックグリーンシートに対して、パンチング加工を施すことによって、貫通孔を有する第1枠体用及び第2枠体用セラミックグリーンシートを形成する。
次に、単層又は複層の基板用セラミックグリーンシートの上に、単層又は複層の第1枠体用セラミックグリーンシートと、単層又は複層の第2枠体用セラミックグリーンシートとを積層させた後、圧着、一体化して積層体を形成する。
その後、高温で焼成することで、セラミック基板と第1枠体と第2枠体とが一体となったセラミックパッケージが製造される。
【0005】
また、別の製造方法として、セラミック基板の上に、第1枠体と第2枠体とを、接着剤を用いて、積層貼着させる方法(貼着方法)が挙げられる。以下に、この従来の製造方法について説明する。
まず、従来周知の手法によりセラミックグリーンシートを作製した後、焼成して、セラミック基板を形成する。
次に、アルミナ粉末、有機バインダ、溶剤、可塑剤等を混合してスラリーを作製した後、造粒工程及び分級工程を経て、原料粉末を得る。その後、第1枠体及び第2枠体の形状に対応した金型に原料粉末を充填し、プレス成形して成形体を得た後、高温で焼成して、第1枠体及び第2枠体(焼結体)を形成する。
次に、セラミック基板の上に、第1枠体と第2枠体とを、700〜900℃の融点を有する銀−銅等のロウ材、樹脂接着剤、低融点ガラス等により固定することで、セラミック基板と第1枠体と第2枠体とを備えたセラミックパッケージが製造される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記グリーンシート積層方法でセラミックパッケージを製造する場合、隣接するセラミックグリーンシート同士の密着性を考慮する必要があるため、セラミックグリーンシートを構成する材料(含有する化合物の種類、含有量、組織、形状等)には、制約が生じる。そのため、グリーンシート積層方法で製造する場合、セラミックグリーシートを構成する材料を自由に選択できないという問題がある。
また、グリーンシート積層方法で凹部を形成する場合、凹部の深さはセラミックグリーンシートの厚みに応じた深さとなるため、電子部品の素子に応じた最適な深さ(形状)に形成することができない。
このように、グリーシート積層方法は、製品バリエーションに対して柔軟な対応が困難である。
【0007】
また、上記貼着方法でセラミックパッケージを製造する場合、枠体はあらかじめプレス成形して成形されたものである。そのため、枠体を設計変更する場合、新たに金型を作製する必要があり、製造コストが高くなってしまう。このように、貼着方法も、製品バリエーションに対して、柔軟な対応が困難である。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、キャビティが少なくとも2段以上であるセラミックパッケージの製造方法において、グリーンシート積層方法及び貼着方法を用いることなく、且つ製品バリエーションに対しても柔軟に対応できるセラミックパッケージの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段(本発明(1))は、セラミックグリーンシートの一部を窪むように加工して、該セラミックグリーンシートに第1凹部を形成する第1凹部形成工程と、前記セラミックグリーンシートを焼成して、前記第1凹部が形成されたセラミック基板を形成するシート焼成工程と、前記セラミック基板の前記第1凹部が開口している側の表面上に、該第1凹部の開口を取り囲むようにペーストを塗布して、塗布層の内壁面で囲まれる第2凹部を形成する第2凹部形成工程とを備えることを特徴とするセラミックパッケージの製造方法である。
【0010】
従って、本発明(1)のセラミックパッケージの製造方法によると、キャビティが少なくとも2段以上である(第1凹部と第2凹部とを有する)セラミックパッケージであっても、加工とペースト塗布という2種類の製造方法を適切に組み合わせることで、グリーンシート積層方法、及び貼着方法を用いることなく、製造することができる。
【0011】
本発明(1)において、第1凹部は、プレス加工、切削加工、レーザー加工等の加工法により、形成することができる。
このように、第1凹部を上記加工法で形成し、第2凹部をペースト塗布法で形成している。そのため、本発明(1)の製造方法では、第1凹部及び第2凹部の形状を変更する際、加工領域の変更と、ペースト塗布領域(箇所や回数等)の変更だけで対応できる。
従って、本発明(1)は、製品バリエーションに対して、柔軟に対応することができる。
【0012】
また、本発明(1)の第1凹部を有するセラミック基板は、積層構造を採用していないため、積層時のシート同士の密着性を考慮する必要が無い。そのため、セラミック基板を構成する材料を自由に選択できる。さらに、積層時の位置ずれがないため、高い寸法及び位置精度で第1凹部を形成することができる。また、グリーンシートの積層圧着工程がなくなるため、製造工程を簡略化できる。
【0013】
また、本発明(1)において、第1凹部形成工程は、セラミックグリーンシートに対して実施している。そのため、焼結体であるセラミック基板と比較して、容易に第1凹部を形成することができる。
【0014】
上記課題を解決するための手段(本発明(2))は、セラミックグリーンシートの一部を窪むように加工して、該セラミックグリーンシートに第1凹部を形成する第1凹部形成工程と、前記セラミックグリーンシートの前記第1凹部が開口している側の表面上に、該第1凹部の開口を取り囲むようにペーストを塗布して、塗布層の内壁面で囲まれる第2凹部を形成する第2凹部形成工程と、前記セラミックグリーンシートを焼成して、セラミック基板を形成するシート焼成工程とを備えることを特徴とするセラミックパッケージの製造方法である。
【0015】
従って、本発明(2)のセラミックパッケージの製造方法によると、キャビティが少なくとも2段以上である(第1凹部と第2凹部とを有する)セラミックパッケージであっても、加工とペースト塗布という2種類の製造方法を適切に組み合わせることで、グリーンシート積層方法、及び貼着方法を用いることなく、製造することができる。
【0016】
本発明(2)において、第1凹部は、プレス加工、切削加工、レーザー加工等の加工法により、形成することができる。
このように、第1凹部を上記加工法で形成し、第2凹部をペースト塗布法で形成している。そのため、本発明(2)の製造方法では、第1凹部及び第2凹部の形状を変更する際、加工領域の変更と、ペースト塗布領域(箇所や回数等)の変更だけで対応できる。
従って、本発明(2)は、製品バリエーションに対して、柔軟に対応することができる。
【0017】
また、本発明(2)の第1凹部を有するセラミック基板は、積層構造を採用していないため、積層時のシート同士の密着性を考慮する必要が無い。そのため、セラミック基板を構成する材料を自由に選択できる。さらに、積層時の位置ずれがないため、高い寸法及び位置精度で第1凹部を形成することができる。また、グリーンシートの積層圧着工程がなくなるため、製造工程を簡略化できる。
【0018】
また、本発明(2)において、第1凹部形成工程は、セラミックグリーンシートに対して実施している。そのため、焼結体であるセラミック基板と比較して、容易に第1凹部を形成することができる。
【0019】
上記課題を解決するための手段(本発明(3))は、セラミックグリーンシートを焼成して、セラミック基板を形成するシート焼成工程と、前記セラミック基板の一部を窪むように加工して、該セラミック基板に第1凹部を形成する第1凹部形成工程と、前記セラミック基板の前記第1凹部が開口している側の表面上に、該第1凹部の開口を取り囲むようにペーストを塗布して、塗布層の内壁面で囲まれる第2凹部を形成する第2凹部形成工程を備えることを特徴とするセラミックパッケージの製造方法。
【0020】
従って、本発明(3)のセラミックパッケージの製造方法によると、キャビティが少なくとも2段以上である(第1凹部と第2凹部とを有する)セラミックパッケージであっても、加工とペースト塗布という2種類の製造方法を適切に組み合わせることで、グリーンシート積層方法、及び貼着方法を用いることなく、製造することができる。
【0021】
本発明(3)の第1凹部形成工程において、第1凹部は、切削加工、レーザー加工、マイクロブラスト加工等の加工法により、形成することができる。
このように、第1凹部を上記加工法で形成し、第2凹部をペースト塗布法で形成している。そのため、本発明(3)の製造方法では、第1凹部及び第2凹部の形状を変更する際、加工領域の変更と、ペースト塗布領域(箇所や回数等)の変更だけで対応できる。
従って、本発明(3)は、製品バリエーションに対して、柔軟に対応することができる。
【0022】
また、本発明(3)の第1凹部を有するセラミック基板は、積層構造を採用していないため、積層時のシート同士の密着性を考慮する必要が無い。そのため、セラミック基板を構成する材料を自由に選択できる。さらに、積層時の位置ずれがないため、高い寸法及び位置精度で第1凹部を形成することができる。また、グリーンシートの積層圧着工程がなくなるため、製造工程を簡略化できる。
【0023】
また、本発明(3)において、第1凹部形成工程は、焼結体であるセラミック基板に対して実施している。そのため、焼成による歪みが起きないため、第1凹部を精密に形成することができる。
【0024】
また、本発明(1)及び(2)の第1凹部形成工程では、プレス加工により第1凹部を形成することが好ましい。具体的には、セラミックグリーンシートの表面に、凸部を有する金型を押圧して、第1凹部を形成することができる。
このように、第1凹部をプレス加工にて形成するため、レーザー加工や切削加工の際の加工屑が発生しない。従って、この方法で凹部を形成すると、加工屑を除去する工程や装置を別途設ける必要がない。
また、第1凹部の形状を変更する場合においても、上記金型の凸部形状を変更するだけで対応できるため、製品バリエーションに対して、柔軟に対応することができる。
尚、第1凹部の深さは、セラミックグリーンシートの厚みの半分以下にすることが好ましい。第1凹部の深さを半分以下とすることで、プレス加工時に生じるセラミックグリーンシートの歪みが生じにくく、焼成時に、セラミック基板の反りが生じにくくなる。
【0025】
また、本発明(1)〜(3)の第2凹部形成工程では、無機成分を含有する無機ペーストを塗布、焼成することにより、塗布層を形成することができる。焼結させて塗布層を形成しているので、セラミック基板と塗布層との密着性が良くなるため、セラミックパッケージとして信頼性の優れるものを提供できる。
また、そして、その第2凹部形成工程では、無機ペーストの塗布及び焼成を複数回実施して、塗布層を形成することができる。具体的には、無機ペーストの塗布、焼成により形成された焼成膜の上に、さらに無機ペーストの塗布、焼成を所定回数行うことで、積層構造の塗布層(焼成膜の積層体)を形成する。
この方法で塗布層を形成することによって、第2凹部の形状(深さ、角度等)を容易に変更することができる。すなわち、製品バリエーションに対して、柔軟に対応することができる。
また、セラミック基板と焼成膜、及び焼成膜同士の密着性が良くなるため、より一層機械強度に優れる塗布層を形成することができる。そのため、セラミックパッケージとして信頼性の優れるものを提供できる。
【0026】
また、本発明(1)〜(3)のセラミックパッケージの具体例としては、発光素子収納用セラミックパッケージ、水晶振動子収納用セラミックパッケージ、MEMS素子収納用セラミックパッケージ等が挙げられる。
また、発光素子を収納する場合、第1凹部の底部に、発光素子が搭載される素子搭載領域を備えることが好ましい。第1凹部の底部に発光素子が搭載されることにより、発光素子から放射された光を、効率よく外部へ照射することができる。
【0027】
尚、この発光素子収納用セラミックパッケージを従来の上記貼着方法で製造する場合、セラミック基板と第1枠体との間、及び第1枠体と第2枠体との間に、接着剤層が形成される。しかし、発光素子収納用セラミックパッケージにおいて、この接着剤層は、発光素子から放射された光を効率よく反射しなかったり、光を外部へ漏洩したりする。そのため、発光装置の発光効率が悪くなってしまうという問題が懸念される。
この問題に対して、本発明では、接着剤を用いることなく、セラミックパッケージを製造するため、接着剤層に起因する光出力の低下を排除することができる。
【0028】
本発明のペーストは、樹脂ペースト、無機ペースト(ガラスペースト及びセラミックペースト)等の各種ペーストを選択することができる。尚、セラミック基板と塗布層の密着性を考慮すると、ペーストを焼成することにより、セラミック基板に強固に密着させることができる無機ペーストがより好ましい。そして、セラミック基板と塗布層との密着性をより一層考慮した場合、焼成することでガラス化するガラス粉末を含有したガラスペーストであることがより好ましい。尚、ガラスペーストには、セラミック粉末を含有させることもできる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によって、キャビティが少なくとも2段以上であるセラミックパッケージの製造方法において、グリーンシート積層方法及び貼着方法を用いることなく、且つ製品バリエーションに対しても柔軟に対応できる製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来の発光素子収納用セラミックパッケージの断面図。
【図2】本実施の形態によるセラミックパッケージの斜視図。
【図3】本実施の形態によるセラミックパッケージの断面図。
【図4】本実施の形態のセラミックパッケージの製造方法を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
図2は、発光素子収納用セラミックパッケージ10の斜視図(概略図)である。また、図3は、発光素子収納用セラミックパッケージ10の断面図である。
【0032】
図2に示されるように、本実施形態によるセラミックパッケージ10は、発光素子30を実装するためのパッケージであって、矩形平板状の部材である。
本実施の形態のセラミックパッケージ10は、セラミック基板11と、セラミック基板11の上面27の上に形成されたガラス層12(本発明の塗布層に相当する。)と、電極パッド13と、を備えている。
【0033】
次に、上記セラミックパッケージ10の構造を、図3に基づいて説明する。
単層のセラミック基板11は、矩形平板状の部材であり、アルミナセラミックスからなる。セラミック基板11の上面27の中央部には、厚み方向内側に向かって窪む第1凹部21を有する。第1凹部21の底面24の中央部には、発光素子30が搭載される素子搭載領域31を有する。
また、第1凹部21の開口25の形状は、四角形状(長方形状)であり、第1凹部21の深さは、例えばセラミック基板11の厚みの半分以下である。
そして、第1凹部21の側面23は、発光素子30から放射された光の反射面として作用し、外部に向かって広がるように形成される。
尚、セラミック基板11の材料は、アルミナセラミックス(酸化アルミニウム質焼結体)以外にも、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体等のセラミックスも選択することができる。
【0034】
ガラス層12は、セラミック基板11の上面27の上に、第1凹部21の開口25を取り囲むように形成された枠状の部材であって、積層構造になっている。第2凹部22は、ガラス層12の内壁面26と、セラミック基板11の上面27と、第1凹部21の開口25とで、構成される。
また、ガラス層12は、SiO、Al、B等のガラス成分と、酸化チタン(TiO2)や硫酸バリウム(BaSO)等のセラミック粉末とを混合した材料から構成される。
また、第2凹部22の開口は、トラック形状(略平行な2本の直線と、それらをつなぐ2つの曲線とを有する形状)である。
そして、第2凹部22の側面26(ガラス層12の内壁面26)は、発光素子30から放射された光の反射面として作用し、外部に向かって広がるように形成される。
上述のように、セラミックパッケージ10の素子収納部となるキャビティ20は、第1凹部21と、第2凹部22とからなる2段構造である。
【0035】
そして、このセラミックパッケージ10に発光素子30を搭載して、発光装置として使用する。この発光装置は、セラミック基板10の素子搭載領域31に、発光素子30が樹脂接着剤により固着されるとともに、電極パッド13に、発光素子30の電極がボンディングワイヤ14を介して電気的に接続される。また、キャビティ20内には、発光素子30を覆うように透光部材(図示しない)が設けられる。そして、セラミック基板の配線導体15が、外部電気回路基板の配線導体に接続されることで、発光素子30へ電源電圧が供給される。
【0036】
本実施の形態によるセラミックパッケージによれば、以下の効果を得ることができる。
(1)第1凹部21を備えるセラミック基板11は、積層構造を採用していないため、積層時のシート同士の密着性を考慮する必要が無い。そのため、セラミック基板11を構成する材料を自由に選択できる。さらに、積層時の位置ずれがないため、高い寸法及び位置精度を有する第1凹部21を備えることができる。
(2)接着剤層を備えていないため、接着剤層に起因する光出力の低下を排除できる。
(3)第1凹部21の反射面(側面23)にはセラミック材料が露出し、第2凹部22の反射面(側面26)にはガラスを含む材料が露出している。このように、発光素子30が搭載される第1凹部21の反射面がセラミック材料で、第1凹部21より外側の第2凹部22の反射面がガラスを含む材料で構成されることで、発光素子30から放射された光を、効率よく外部へ照射することができる。
(4)発光素子30の電極に電気的に接続される電極パッド13が、セラミック基板11の上面27(第2凹部22の底面)の上に形成されるため、素子搭載領域31の周辺面積を小さくすることができるので、セラミックパッケージ10を小型化できる。また、発光素子30と第1凹部21の反射面との距離が狭まるので、発光素子30から放射された光を効率よく外部へ照射することができる。
【0037】
(製造方法1)
次に、上記構造のセラミックパッケージ10を製造する方法について、図4に基づいて説明する。
まず、セラミックグリーンシート51を準備する準備工程(図4(A))を実施する。具体的には、アルミナ粉末(セラミック粉末)、有機バインダ、溶剤、可塑剤等を適宜混合してスラリーを作製する。そして、このスラリーを従来周知の手法(例えば、ドクターブレード法やカレンダーロール法)により、シート状に成形して、セラミックグリーンシート51を作製する。
尚、セラミックグリーンシート51は、原料粉末を成型機に充填して、加圧成形して作製することもできる。
【0038】
次に、第1凹部形成工程(図4(B))を実施する。具体的には、凸部53を有する金型52を、単層のセラミックグリーンシート51に向かって押圧して、セラミックグリーンシート51の上面の一部を凹ませて、底部を有する第1凹部21を形成する。
尚、例えば、第1凹部21の深さがセラミックシート51の厚みの半分以下になるように、第1凹部21は形成されている。
【0039】
次に、シート焼成工程(図示しない)を実施する。具体的には、セラミックグリーンシートを、アルミナが焼結し得る所定の温度(例えば、1400℃から1800℃程度の温度)に加熱する焼成工程を行う。この焼成工程により、セラミックグリーンシート51を焼結させて、セラミック基板11を形成する。
【0040】
次に、導体部形成工程(図4(C))を実施する。具体的には、金属粉末、有機バインダ、溶剤、可塑剤等を適宜混合して、導体ペーストを作製する。そして、その導体ペーストを、セラミック基板11の上面27及び側面の所定の位置に印刷する。その後、焼成することで、導体ペーストの印刷層を焼結させて、電極パッド13と配線導体15とを形成する。
【0041】
次に、第2凹部形成工程を(図4(D))を実施する。具体的には、まず、SiO、Al、B等を主成分とするガラス粉末と、酸化チタン(TiO)または、硫酸バリウム(BaSO)等の光散乱粒子(セラミック粉末)と有機ビヒクルとを適宜混合して、ガラスペーストを作製する。そして、そのガラスペーストを、セラミック基板11の上面27の上に、第1凹部21の開口25を取り囲むように、スクリーン印刷する。その後、焼成することで、ガラスペースト印刷層を焼結させて、ガラス焼成膜を形成する。そして、そのガラス焼成膜の上に、ガラスペーストを印刷し、焼成する工程を行う。この工程を所定回数行うことで、積層構造のガラス層を形成する。ガラス層12が形成されることにより、その内壁面26と、セラミック基板11の上面27と、第1凹部21の開口25、によって囲まれる、第2凹部22が形成される。
尚、ガラス層12は、ガラスペーストの印刷を複数回行った後、焼成して形成することもできる。また、ガラスペーストを厚く1回印刷した後、焼成して、形成することもできる。
以上の工程を経ることで、セラミックパッケージ10が製造される。
【0042】
従って、本実施の形によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)第1凹部21と第2凹部22とを有する、複雑な立体形状のセラミックパッケージ10であっても、加工とペースト印刷という2種類の製造方法を適切に組み合わせることで、グリーンシート積層方法及び貼着方法を用いることなく、製造することができる。
(2)第1凹部21をプレス加工で形成し、かつ第2凹部22をペースト印刷で形成している。そのため、第1凹部21及び第2凹部22の形状を変更する際、プレス加工の際に用いる金型52の凸部53形状の変更と、ペースト印刷領域(箇所や回数等)の変更だけで対応できる。すなわち、本実施の形態の製造方法は、製品バリエーションに対して、柔軟に対応することができる。
(3)第1凹部形成工程において、第1凹部21はプレス加工にて形成されるため、レーザー加工や切削加工の際の加工屑が発生しない。そのため、加工屑を除去する工程や装置を別途設ける必要がない。
(4)、第1凹部21の深さは、セラミックグリーンシートの厚みの半分以下にしているため、プレス加工時に生じるセラミックグリーンシート51の歪みが生じにくく、焼成時に、セラミック基板11の反りが生じにくくなる。
(5)セラミック基板11は、積層構造を採用していないため、積層時のシート同士の密着性を考慮する必要が無い。そのため、セラミック基板11を構成する材料を自由に選択できる。さらに、積層時の位置ずれがないため、高い寸法及び位置精度で第1凹部を形成することができる。また、グリーンシートの積層圧着工程がなくなるため、製造工程を簡略化できる。
(6)第2凹部形成工程は、ガラスペーストの印刷及び焼成を複数回行い、ガラス層12を形成しているので、第2凹部22の形状を容易に変更することができる。すなわち、製品バリエーションに対して、柔軟に対応することができる。
また、セラミック基板11とガラス焼成膜、及びガラス焼成膜同士の密着性が良くなるため、機械強度に優れるガラス層12を形成することができる。そのため、セラミックパッケージ10として信頼性の優れるものを提供できる。
【0043】
尚、本発明の実施の形態は、以下のように変更してもよい。
【0044】
(製造法2)
まず、セラミックグリーンシートを準備する。
次に、単層のセラミックグリーンシートに向かって、凸部を有する金型を押圧して、セラミックグリーンシートの上面の一部を凹ませて、第1凹部を形成する。
次に、導体ペーストを、セラミックグリーンシートの所定の位置に、印刷する。
次に、ガラスペーストを、セラミックグリーンシートの上面上に、第1凹部の開口を取り囲むように、スクリーン印刷を複数回行う。
次に、上記セラミックグリーンシートを焼成する。この焼成により、セラミックグリーシート、導体ペーストの印刷層、ガラスペーストの印刷層を焼結させて、セラミック基板、導体部、ガラス層を形成する。
以上により、セラミックパッケージが製造される。
また、この実施形態の製造方法では、セラミックグリーンシートと、導体ペーストの印刷層と、ガラスペーストの印刷層とを同時焼成しているので、焼成工程が1回で済む。そのため、セラミックパッケージの製造工程を簡略化できる。
【0045】
(製造方法3)
まず、セラミックグリーンシートを準備する。
次に、セラミックグリーシートを焼成して、セラミック基板を形成する。
次に、単層のセラミック基板の上面の一部を、レーザー加工で削り、第1凹部を形成する。
次に、導導体ペーストを、セラミック基板の所定の位置に印刷する。その後、焼成を行うことで、導体ペーストの印刷層を焼結させて、導体部を形成する。
次に、ガラスペーストを、セラミック基板の上面上に、第1凹部の開口を取り囲むように、スクリーン印刷を複数回行う。その後、焼成を行うことで、ガラスペーストの印刷層を焼結させて、ガラス層(第2凹部)を形成する。
以上により、セラミックパッケージが製造される。
また、この実施形態の製造方法では、第1凹部形成工程は、焼成体であるセラミック基板に対して実施している。そのため、焼成による歪みが生じないため、第1凹部を精密に形成することができる。
【0046】
上記実施の形態では、発光素子収納用セラミックパッケージに具体化していたが、MEMS素子などの他の電子部品の素子収納用セラミックパケージに、本発明を適用しても良い。
また、上記実施の形態のガラス層の上に、第2凹部の開口を取り囲むようにガラスペーストを塗布、焼成して、別のガラス層をさらに形成することで、第3凹部を形成することもできる。
また、上記実施の形態では、スクリーン印刷でペーストを被膜していたが、各種印刷方法及び塗布方法を用いることもできる。
また、上記実施の形態では、ペーストとしてガラスペーストを用いたが、セラミックペースト及び樹脂ペーストを用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によって、少なくとも2段以上のキャビティを有するセラミックパッケージの製造方法において、グリーンシート積層方法及び貼着方法を用いることなく、且つ製品バリエーションに対しても柔軟に対応できるセラミックパッケージの製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0048】
10・・・セラミックパッケージ
11・・・セラミック基板
12・・・ガラス層
13・・・電極パッド
14・・・ボンディングワイヤ
15・・・配線導体
20・・・キャビティ
21・・・第1凹部
22・・・第2凹部
23・・・第1凹部の側面
24・・・第1凹部の底面
25・・・第1凹部の開口
26・・・第2凹部の側面(ガラス層の内壁面)
27・・・セラミック基板の上面
30・・・発光素子
31・・・素子搭載領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックグリーンシートの一部を窪むように加工して、該セラミックグリーンシートに第1凹部を形成する第1凹部形成工程と、
前記セラミックグリーンシートを焼成して、前記第1凹部が形成されたセラミック基板を形成するシート焼成工程と、
前記セラミック基板の前記第1凹部が開口している側の表面上に、該第1凹部の開口を取り囲むようにペーストを塗布して、塗布層の内壁面で囲まれる第2凹部を形成する第2凹部形成工程と
を備えることを特徴とするセラミックパッケージの製造方法。
【請求項2】
セラミックグリーンシートの一部を窪むように加工して、該セラミックグリーンシートに第1凹部を形成する第1凹部形成工程と、
前記セラミックグリーンシートの前記第1凹部が開口している側の表面上に、該第1凹部の開口を取り囲むようにペーストを塗布して、塗布層の内壁面で囲まれる第2凹部を形成する第2凹部形成工程と、
前記セラミックグリーンシートを焼成して、セラミック基板を形成するシート焼成工程と
を備えることを特徴とするセラミックパッケージの製造方法。
【請求項3】
セラミックグリーンシートを焼成して、セラミック基板を形成するシート焼成工程と、
前記セラミック基板の一部を窪むように加工して、該セラミック基板に第1凹部を形成する第1凹部形成工程と、
前記セラミック基板の前記第1凹部が開口している側の表面上に、該第1凹部の開口を取り囲むようにペーストを塗布して、塗布層の内壁面で囲まれる第2凹部を形成する第2凹部形成工程と
を備えることを特徴とするセラミックパッケージの製造方法。
【請求項4】
前記第1凹部形成工程は、プレス加工により前記第1凹部を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックパッケージの製造方法。
【請求項5】
前記ペーストは無機ペーストであって、前記塗布層は該無機ペーストを塗布、焼成して形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセラミックパッケージの製造方法。
【請求項6】
前記第2凹部形成工程は、無機ペーストの塗布及び焼成を複数回行うことで、前記塗布層を形成することを特徴とする請求項5に記載のセラミッパッケージの製造方法。
【請求項7】
前記セラミックパッケージは、発光素子収納用セラミックパッケージであって、前記第1凹部の底部に、前記発光素子が搭載される素子搭載領域を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のセラミックパッケージの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−164774(P2012−164774A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23134(P2011−23134)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】