説明

セルバランス回路の異常診断装置及び方法

【課題】セルバランス回路の異常診断装置及び方法を提供する。
【解決手段】セルバランス回路20の異常診断装置は、バッテリーパック10に含まれた複数のバッテリーセルVBの電圧をバランシングできるようにそれぞれのバッテリーセルと連結された複数のセルバランス回路20と、セルバランス回路と対応するバッテリーセルの正極端子と負極端子との間にそれぞれ設けられた診断抵抗Rmと、それぞれのバッテリーセルに対応するセルバランス回路の電圧差を測定する電圧測定部30と、診断対象セルバランス回路をオンまたはオフさせ、電圧測定部を通じて測定された隣接するセルバランス回路の電圧差に対する変化パターンから診断対象セルバランス回路の異常有無を判別する制御部40とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルバランス回路の異常診断装置及び方法に関し、より詳しくは、セルバランス回路に含まれたセルバランススイッチの異常有無を判別できるセルバランス回路の異常診断装置及び方法に関する。
【0002】
本出願は、2010年3月5日出願の韓国特許出願第10−2010−0019924号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
近年、化石エネルギーの枯渇と環境汚染の問題から化石エネルギーの代わりに電気エネルギーを使用する電気自動車やハイブリッド自動車に対する関心が高くなっている。
【0004】
このような電気自動車やハイブリッド自動車が走行するためには、高出力を必要とする駆動モーターを駆動させなければならない。そのために電気自動車やハイブリッド自動車に使用されるバッテリーは、複数のバッテリーセルが直列で連結されたバッテリーパックから出力される電気を電源として用いている。
【0005】
このようなバッテリーパックに含まれている複数のバッテリーセルは、安定性、寿命の向上、及び高出力を得るためにそれぞれのバッテリーセルの電圧を均一に維持する必要がある。
【0006】
バッテリーパックに含まれたそれぞれのバッテリーセルの充電電圧を均一にバランシングする方法としては、電圧が相対的に低いバッテリーセルに充電電流を供給して電圧を上昇させる方法、電圧が相対的に高いバッテリーセルを放電させて電圧を下降させる方法、それぞれのバッテリーセルの電圧からバランシング目標電圧を決定し、目標電圧より電圧の高いバッテリーセルは放電させ、目標電圧より電圧の低いバッテリーセルは充電させる方法などが用いられていた。
【0007】
このようなセルバランス方法は、それぞれのバッテリーセルと連結されたセルバランス回路によって具現される。セルバランス回路は、セルバランス動作の始めと終了を制御するスイッチング素子、及びバッテリーセルの電圧を放電させる放電抵抗を含む。
【0008】
しかし、セルバランス回路を用いてバッテリーセルのバランスを取る過程において、瞬間的に過度な電流がセルバランス回路に流れ込むか、スイッチング素子に動作電圧以上の過電圧が印加されるか、または放電抵抗を通じて過度な熱が発生するなどの異常状況が起きれば、セルバランス回路に含まれた部品が短絡(short)または断線(open)されて回路が正常に動作しないという問題が生じる。
【0009】
このような問題によってセルバランス回路が非正常的に動作すれば、該当回路に連結されたバッテリーセルの電圧が他のバッテリーセルに比べて過度に高くなるか又は低くなることで、バッテリーパックが爆発したり、バッテリーパックと連結された負荷の動作が急に停止するなどの深刻な問題が引き起こされる恐れがある。
【0010】
このような問題を解決するためには、セルバランス回路の異常有無を診断できる別の診断回路をセルバランス回路に組み込む必要がある。
【0011】
例えば、特許文献1には電界効果トランジスタ(FET)及び放電抵抗からなるセルバランス回路、並びに前記電界効果トランジスタのソースとドレーンとの間に介在される抵抗をそれぞれのバッテリーセル毎に設け、相異なるレベルの基準電圧源が印加された2つの比較器を用いてソースとドレーンとの間の電圧差を抵抗を通じて測定し、測定された電圧のレベル(high、low)によってセルバランス回路の異常有無を判別するセルバランス回路の異常有無検出装置が開示されている。
【0012】
ところが、特許文献1は、セルバランス回路の異常有無を検出するため、診断回路という別の回路構成を必要とし、それぞれの診断回路は2つの比較器をさらに必要とするため、セルバランス回路の異常有無検出装置の製造コストが増加する問題点があった。また、それぞれのセルに対応するセルバランス回路の異常有無を判別することは可能であるが、全体セルバランス回路の異常が生じる場合には正確な異常原因を把握することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開第2007−085847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な回路構成によってセルバランス回路の異常有無及び異常原因を正確に判別することができるセルバランス回路の異常診断装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を達成するため、本発明の一態様によるセルバランス回路の異常診断装置は、バッテリーパックに含まれた複数のバッテリーセルの電圧をバランシングできるようにそれぞれのバッテリーセルと連結された複数のセルバランス回路と、前記セルバランス回路と対応するバッテリーセルの正極端子と負極端子との間にそれぞれ設けられた診断抵抗と、それぞれのバッテリーセルに対応するセルバランス回路の電圧差を測定する電圧測定部と、診断対象セルバランス回路をオンまたはオフさせ、前記電圧測定部を通じて測定された隣接するセルバランス回路の電圧差に対する変化パターンから前記診断対象セルバランス回路の異常有無を判別する制御部と、を含む。
【0016】
望ましくは、前記隣接するセルバランス回路の電圧差は、前記隣接するセルバランス回路の一端と対応するバッテリーセルの負極端子とが連結された低電位ノードと、前記隣接するセルバランス回路の他端と対応するバッテリーセルの正極端子とが連結された高電位ノードとの間の電圧差を意味する。
【0017】
望ましくは、前記セルバランス回路は、対応するバッテリーセルの電圧を放電させる放電抵抗と、前記対応するバッテリーセルと前記放電抵抗とを連結/解除するセルバランススイッチとを含み、前記制御部は前記セルバランススイッチのオン/オフを制御してバッテリーセルの電圧をバランシングする。
【0018】
本発明によれば、前記セルバランス回路は放電電流と逆方向の電流が前記放電抵抗を通じて流れることを制限するダイオードをさらに含む。
【0019】
本発明によれば、前記セルバランススイッチは電界効果トランジスター(field effect transistor;FET)である。
【0020】
望ましくは、前記制御部は、前記隣接するセルバランス回路をオフさせた状態で前記診断対象セルバランス回路をオンまたはオフさせ、前記電圧測定部を通じて前記診断対象セルバランス回路がオンまたはオフされたとき、前記隣接するセルバランス回路の電圧差を測定する。
【0021】
本発明の一態様によれば、前記診断対象セルバランス回路がオン状態であるとき、前記隣接するセルバランス回路の電圧差がセル電圧より高く、前記診断対象セルバランス回路がオフ状態であるとき、前記隣接するセルバランス回路の電圧差がセル電圧と対応すれば、前記診断対象セルバランス回路が正常であると判別する。
【0022】
また、本発明の一態様によれば、前記制御部は、前記診断対象セルバランス回路がオン状態であるときとオフ状態であるとき、前記隣接するセルバランス回路の電圧差がセル電圧と対応すれば、前記診断対象セルバランス回路に断線が発生したと判別する。
【0023】
さらに、本発明の一態様によれば、前記制御部は、前記診断対象セルバランス回路がオン状態であるときとオフ状態であるとき、前記隣接するセルバランス回路の電圧差がセル電圧より高ければ、前記診断対象セルバランス回路に短絡が発生したと判別する。
【0024】
上記の課題を達成するため、本発明の一態様によるセルバランス回路の異常診断装置は、バッテリーパックに含まれた複数のバッテリーセルの電圧をバランシングできるようにそれぞれのバッテリーセルと連結された複数のセルバランス回路、それぞれのバッテリーセルに対応するセルバランス回路の電圧差を測定する電圧測定部と、最高電位側または最低電位側のバッテリーセルとそれと対応するセルバランス回路との間に設けられた放電抵抗と診断スイッチ、及び全体セルバランス回路がオンまたはオフされた状態で前記診断スイッチをオンまたはオフさせ、前記診断スイッチのオン状態とオフ状態で前記電圧測定部を通じて測定された全体セルバランス回路の電圧差に対する変化パターンから全体セルバランス回路の異常有無を診断する制御部を含む。
【0025】
本発明の一態様によれば、前記制御部は、前記全体セルバランス回路をオンさせた状態で、前記診断スイッチをオンさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差と前記診断スイッチをオフさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差が全体セル電圧と対応すれば、前記全体セルバランス回路に断線が発生したと判別する。
【0026】
また、本発明の一態様によれば、前記制御部は、前記全体セルバランス回路をオフさせた状態で、前記診断スイッチをオンさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差より前記診断スイッチをオフさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差が低ければ、前記全体セルバランス回路に短絡が発生したと判別する。
【0027】
本発明によれば、前記制御部は、前記セルバランス回路に含まれたセルバランススイッチの動作を制御するスイッチ制御モジュールと、前記電圧測定部から出力されるアナログ電圧信号をデジタル電圧信号に変換するA/D変換モジュールと、前記A/D変換モジュールからデジタル電圧信号の入力を受けて前記セルバランス回路の異常有無を判別する中央演算モジュールと、を含む。
【0028】
選択的に、前記セルバランス回路に異常が生じたことを視覚的または聴覚的に出力する異常警報機をさらに含み、前記制御部は、前記セルバランス回路に異常が生じた場合、前記異常警報機を通じて前記セルバランス回路に異常が生じたことを視覚的または聴覚的に警報する。
【0029】
本発明の課題は、上述したセルバランス回路の異常診断装置を含むバッテリー管理システム、バッテリー駆動装置、またはバッテリーパックによって達成することができる。
【0030】
上記の課題を達成するため、本発明の他の態様によるセルバランス回路の異常診断方法は、バッテリーパックに含まれた複数のバッテリーセルの電圧をバランシングできるようにそれぞれのバッテリーセルと連結された複数のセルバランス回路の異常を診断する方法において、診断対象セルバランス回路と隣接するセルバランス回路をオフさせた状態で前記診断対象セルバランススイッチをオンさせ、前記隣接するセルバランス回路の電圧差を測定するステップと、前記隣接するセルバランス回路をオフさせた状態で前記診断対象セルバランススイッチをオフさせ、前記隣接するセルバランス回路の電圧差を測定するステップと、前記診断対象セルバランス回路がオンまたはオフされたとき、前記隣接するセルバランス回路の電圧差変化パターンから前記診断対象セルバランス回路の異常有無を判別するステップと、を含む。
【0031】
上記の課題を達成するため、本発明の他の態様によるセルバランス回路の異常診断方法は、バッテリーパックに含まれた複数のバッテリーセルの電圧をバランシングできるようにそれぞれのバッテリーセルと連結された複数のセルバランス回路と、最高電位側または最低電位側のバッテリーセルとそれと対応するセルバランス回路との間に設けられた放電抵抗及び診断スイッチを用いて全体セルバランス回路の異常を診断する方法において、全体セルバランス回路をオンまたはオフさせた状態で前記診断スイッチをオンまたはオフさせたとき、前記全体セルバランス回路の電圧差を測定するステップと、前記診断スイッチをオンまたはオフさせたとき、前記全体セルバランス回路の電圧差変化パターンから前記全体セルバランス回路の異常有無を判別するステップと、を含む。
本発明にあっては下記態様の発明を提案することができる。
(1) バッテリーパックに含まれた複数のバッテリーセルの電圧をバランシングできるようにそれぞれのバッテリーセルと連結された複数のセルバランス回路と、
前記セルバランス回路と対応するバッテリーセルの正極端子と負極端子との間にそれぞれ設けられた診断抵抗と、
それぞれのバッテリーセルに対応するセルバランス回路の電圧差を測定する電圧測定部と、
診断対象セルバランス回路をオンまたはオフさせ、前記電圧測定部を通じて測定された隣接するセルバランス回路の電圧差に対する変化パターンから前記診断対象セルバランス回路の異常有無を判別する制御部とを備えてなることを特徴とする、セルバランス回路の異常診断装置。
(2) 前記隣接するセルバランス回路の電圧差が、
前記隣接するセルバランス回路の一端と対応するバッテリーセルの負極端子とが連結された低電位ノードと、前記隣接するセルバランス回路の他端と対応するバッテリーセルの正極端子とが連結された高電位ノードとの間の電圧差であることを特徴とする、(1)に記載のセルバランス回路の異常診断装置。
(3) 前記セルバランス回路が、
対応するバッテリーセルの電圧を放電させる放電抵抗と、
前記対応するバッテリーセルと前記放電抵抗とを連結/解除するセルバランススイッチとを備えてなり、
前記制御部は前記セルバランススイッチのオン/オフを制御してバッテリーセルの電圧をバランシングすることを特徴とする、(1)に記載のセルバランス回路の異常診断装置。
(4) 前記セルバランス回路が、放電電流と逆方向の電流が前記放電抵抗を通じて流れることを制限するダイオードをさらに備えてなることを特徴とする、(3)に記載のセルバランス回路の異常診断装置。
(5) 前記セルバランススイッチが、電界効果トランジスタであることを特徴とする、(3)に記載のセルバランス回路の異常診断装置。
(6) 前記制御部が、
前記隣接するセルバランス回路をオフさせた状態で前記診断対象セルバランス回路をオンまたはオフさせ、
前記電圧測定部を通じて前記診断対象セルバランス回路がオンまたはオフされたとき、前記隣接するセルバランス回路の電圧差を測定することを特徴とする、(1)に記載のセルバランス回路の異常診断装置。
(7) 前記制御部が、
前記診断対象セルバランス回路がオン状態であるときの前記隣接するセルバランス回路の電圧差がセル電圧より高く、前記診断対象セルバランス回路がオフ状態であるときの前記隣接するセルバランス回路の電圧差がセル電圧と対応すれば、前記診断対象セルバランス回路が正常であると判別することを特徴とする、(1)または(6に記載のセルバランス回路の異常診断装置。
(8) 前記制御部が、
前記診断対象セルバランス回路がオン状態であるとき及びオフ状態であるときの前記隣接するセルバランス回路の電圧差がセル電圧と対応すれば、前記診断対象セルバランス回路に断線が発生したと判別することを特徴とする、(1)または(6)に記載のセルバランス回路の異常診断装置。
(9) 前記制御部が、
前記診断対象セルバランス回路がオン状態であるとき及びオフ状態であるときの前記隣接するセルバランス回路の電圧差がセル電圧より高ければ、前記診断対象セルバランス回路に短絡が発生したと判別することを特徴とする、(1)または(6)に記載のセルバランス回路の異常診断装置。
(10) バッテリーパックに含まれた複数のバッテリーセルの電圧をバランシングできるようにそれぞれのバッテリーセルと連結された複数のセルバランス回路と、
それぞれのバッテリーセルに対応するセルバランス回路の電圧差を測定する電圧測定部と、
最高電位側または最低電位側のバッテリーセルとそれと対応するセルバランス回路との間に設けられた放電抵抗及び診断スイッチと、
全体セルバランス回路がオンまたはオフされた状態で前記診断スイッチをオンまたはオフさせ、前記診断スイッチのオン状態及びオフ状態で前記電圧測定部を通じて測定された全体セルバランス回路の電圧差に対する変化パターンから全体セルバランス回路の異常有無を診断する制御部とを備えてなることを特徴とする、セルバランス回路の異常診断装置。
(11) 前記制御部が、
前記全体セルバランス回路をオンさせた状態で、前記診断スイッチをオンさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差及び前記診断スイッチをオフさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差が全体セル電圧と対応すれば、前記全体セルバランス回路に断線が発生したと判別することを特徴とする、(10)に記載のセルバランス回路の異常診断装置。
(12) 前記制御部が、
前記全体セルバランス回路をオフさせた状態で、前記診断スイッチをオンさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差より前記診断スイッチをオフさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差が低ければ、前記全体セルバランス回路に短絡が発生したと判別することを特徴とする、(10)に記載のセルバランス回路の異常診断装置。
(13) 前記制御部が、
前記セルバランス回路に含まれたセルバランススイッチの動作を制御するスイッチ制御モジュールと、
前記電圧測定部から出力されるアナログ電圧信号をデジタル電圧信号に変換するA/D変換モジュールと、
前記A/D変換モジュールからデジタル電圧信号の入力を受けて前記セルバランス回路の異常有無を判別する中央演算モジュールとを備えてなることを特徴とする、(1)または(10)に記載のセルバランス回路の異常診断装置。
(14) 前記セルバランス回路に異常が生じたことを視覚的または聴覚的に出力する異常警報機をさらに備えてなり、
前記制御部は、前記セルバランス回路に異常が生じた場合、前記異常警報機を通じて前記セルバランス回路に異常が生じたことを視覚的または聴覚的に警報することを特徴とする、(1)または(10)に記載のセルバランス回路の異常診断装置。
(15) (1)〜(14)の何れか一項に記載のセルバランス回路の異常診断装置を含むバッテリー管理システム。
(16) (1)〜(14)の何れか一項に記載のセルバランス回路の異常診断装置を含むバッテリー駆動装置。
(17) (1)〜(14)の何れか一項に記載のセルバランス回路の異常診断装置を含むバッテリーパック。
(18) バッテリーパックに含まれた複数のバッテリーセルの電圧をバランシングできるようにそれぞれのバッテリーセルと連結された複数のセルバランス回路の異常を診断する方法において、
診断対象セルバランス回路と隣接するセルバランス回路をオフさせた状態で前記診断対象セルバランススイッチをオンさせ、前記隣接するセルバランス回路の電圧差を測定するステップと、
前記隣接するセルバランス回路をオフさせた状態で前記診断対象セルバランススイッチをオフさせ、前記隣接するセルバランス回路の電圧差を測定するステップと、
前記診断対象セルバランス回路がオンまたはオフされたときの前記隣接するセルバランス回路の電圧差に対する変化パターンから前記診断対象セルバランス回路の異常有無を判別するステップとを備えてなることを特徴とする、セルバランス回路の異常診断方法。
(19) 前記セルバランス回路の異常有無を判別するステップが、
前記診断対象セルバランス回路がオン状態で測定された前記隣接するセルバランス回路の電圧差より前記診断対象セルバランス回路がオフ状態で測定された前記隣接するセルバランス回路の電圧差が低い場合、前記診断対象セルバランス回路が正常であると判別することを特徴とする、(18)に記載のセルバランス回路の異常診断方法。
(20) 前記セルバランス回路の異常有無を判別するステップが、
前記診断対象セルバランス回路がオン状態で測定された前記隣接するセルバランス回路の電圧差と前記診断対象セルバランス回路がオフ状態で測定された前記隣接するセルバランス回路の電圧差がセル電圧と対応すれば、前記診断対象セルバランス回路に断線が発生したと判別することを特徴とする、(18)に記載のセルバランス回路の異常診断方法。
(21) 前記セルバランス回路の異常有無を判別するステップが、
前記診断対象セルバランス回路がオン状態で測定された前記隣接するセルバランス回路の電圧差及び前記診断対象セルバランス回路がオフ状態で測定された前記隣接するセルバランス回路の電圧差がセル電圧より高い場合、前記診断対象セルバランス回路に短絡が発生したと判別することを特徴とする、(18)に記載のセルバランス回路の異常診断方法。
(22) バッテリーパックに含まれた複数のバッテリーセルの電圧をバランシングできるようにそれぞれのバッテリーセルと連結された複数のセルバランス回路、最高電位側または最低電位側のバッテリーセルとそれと対応するセルバランス回路との間に設けられた放電抵抗及び診断スイッチを用いて全体セルバランス回路の異常を診断する方法において、
全体セルバランス回路をオンまたはオフさせた状態で前記診断スイッチをオンまたはオフさせたとき、前記全体セルバランス回路の電圧差を測定するステップと、
前記診断スイッチをオンまたはオフさせたとき、前記全体セルバランス回路の電圧差に対する変化パターンから前記全体セルバランス回路の異常有無を判別するステップとを備えてなることを特徴とするセルバランス回路の異常診断方法。
(23) 前記全体セルバランス回路の異常有無を判別するステップが、
前記全体セルバランス回路をオンさせた状態で、前記診断スイッチをオンさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差及び前記診断スイッチをオフさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差が全体セル電圧と対応すれば、前記全体セルバランス回路に断線が発生したと判別することを特徴とする、(22)に記載のセルバランス回路の異常診断方法。
(24) 前記全体セルバランス回路の異常有無を判別するステップが、
前記全体セルバランス回路をオフさせた状態で、前記診断スイッチをオフさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差より前記診断スイッチをオンさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差が低い場合、前記全体セルバランス回路に短絡が発生したと判別する特徴とする、(22)に記載のセルバランス回路の異常診断方法。
(25) 前記セルバランス回路に異常が生じたと判別された場合、前記セルバランス回路に異常が生じたことを視覚的または聴覚的に警報するステップをさらに含むことを特徴とする、(18)または(22)に記載のセルバランス回路の異常診断方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、簡単な回路構成によってセルバランス回路の異常有無及び異常原因を診断することができる。また、全体セルバランス回路が断線または短絡した場合にも、異常原因を正確に判別することができる。したがって、セルバランス回路の異常によってバッテリーや負荷に損傷が生じることを予め防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図1】本発明の望ましい実施例によるセルバランス回路の異常診断装置を示した回路構成図である。
【図2】本発明の望ましい実施例による制御部の構成を示したブロック図である。
【図3】本発明の望ましい実施例によるセルバランス回路の異常有無及び異常原因を判別する方法を説明するための図である。
【図4】本発明の望ましい実施例によるセルバランス回路の異常有無及び異常原因を判別する方法を説明するための図である。
【図5】本発明の望ましい実施例によるセルバランス回路の異常有無及び異常原因を判別する方法を説明するための図である。
【図6】本発明の望ましい実施例によるセルバランス回路の異常を診断する方法を説明するためのフロー図である。
【図7】本発明の望ましい実施例による全体セルバランス回路の異常を診断する方法を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0035】
図1は、本発明の望ましい実施例によるセルバランス回路の異常診断装置を示した回路構成図である。図1にはセルが3個である場合が例示されているが、本発明がセルの個数によって限定されることはない。
【0036】
図1を参照すれば、本発明によるセルバランス回路の異常診断装置は、バッテリーパック10に含まれた複数のバッテリーセルVB、VB、VBの電圧をバランシングできるようにそれぞれのバッテリーセルと連結された複数のセルバランス回路20、前記セルバランス回路20とそれぞれのバッテリーセルVB、VB、VBの正極端子及び負極端子との間にそれぞれ設けられた診断抵抗R、それぞれのバッテリーセルVB、VB、VBに対応するセルバランス回路20の電圧差を測定する電圧測定部30、及び前記電圧測定部30を通じて測定された隣接するセルバランス回路20の電圧差に対する変化パターンからセルバランス回路20の異常有無を判別する制御部40を含む。
【0037】
前記セルバランス回路20は、制御部40の制御に従ってそれぞれのバッテリーセルVB、VB、VBの電圧をバランシングするバッテリーパック10の保護回路である。
【0038】
前記セルバランス回路20は、それぞれのバッテリーセルVB、VB、VBの正極及び負極端子に連結された電圧測定ラインと並列で連結される。このとき、セルバランス回路20の一端とバッテリーセルVB、VB、VBの正極端子から延びた電圧測定ラインと連結されたノードが高電位ノードAであり、セルバランス回路20の他端とバッテリーセルVB、VB、VBの負極端子から延びた電圧測定ラインと連結されたノードが低電位ノードBである。また、セルバランス回路20の電圧差は、前記高電位ノードAと低電位ノードBとの間の電圧差を意味する。ここで、前記高電位ノードA及び低電位ノードBは、前記セルバランス回路20と電圧測定ラインとが接続する相対的な地点であって、例えば、第1セルVBの正極と接続して延びたセル電圧測定ラインとセルバランス回路20とが接続する地点は高電位ノードAになり、該高電位ノードAは再び、第2セルVBの負極と接続して延びたセル電圧測定ラインとセルバランス回路20とが接続する地点では低電位ノードBになる。
【0039】
前記セルバランス回路20は、バッテリーセルVB、VB、VBのセル電圧を放電させる放電抵抗R、及びバッテリーセルVB、VB、VBと放電抵抗Rとを連結/解除するセルバランススイッチSWb1、SWb2、SWb3を含む。また、選択的に、セルバランス回路20の低電位ノードB側には放電電流と逆方向の電流が放電抵抗Rを通じて流れることを制限するダイオードDがさらに含まれ得る。ここで、前記セルバランススイッチSWb1、SWb2、SWb3としては電界効果トランジスター(FET)を使用することが望ましい。電界効果トランジスターは、ソース端子、ドレーン端子及びゲート端子を備え、ゲート端子には前記制御部40の制御に従って駆動電圧が印加され、駆動電圧の印加によってセルバランス回路20がオンされて前記放電抵抗Rを通じてセル電圧が放電する。
【0040】
前記診断抵抗Rは、セルバランススイッチSWb1、SWb2、SWb3の異常を診断するために採用した構成要素であって、セル電圧が放電して放電抵抗Rを通じて放電電流が流れるときと流れないときとのセルバランス回路20の電圧差に変化を引き起こす。すなわち、セルバランススイッチSWb1、SWb2、SWb3がオンされるか又はセルバランススイッチSWb1、SWb2、SWb3が短絡すれば、矢印で示された放電ルーフを通じて放電電流が流れる。このとき、高電位ノードの電位は高電位ノード側の診断抵抗Rに流れる放電電流によって放電電流が流れない場合に比べて減少し、低電位ノードの電位は低電位ノード側の診断抵抗Rに流れる放電電流によって放電電流が流れない場合に比べて上昇する。その結果、放電電流が流れるセルバランス回路20のノード間の電圧差は、放電電流が流れない場合より減少する。逆に、セルバランススイッチSWb1、SWb2、SWb3がオフされるか又はセルバランススイッチSWb1、SWb2、SWb3が断線すれば、放電ルーフに放電電流が流れないため、セルバランス回路20のノード間の電圧差はセル電圧と同じ電圧値を有する。放電ルーフに放電電流が流れなければ、診断抵抗Rを通じて電圧が降下することなく、ノード間にセル電圧がそのまま印加されるためである。
【0041】
前記電圧測定部30は、セルバランス回路20の異常を診断するため、前記制御部40の制御に従ってセルバランススイッチSWb1、SWb2、SWb3がオンまたはオフされれば、セルバランス回路20の高電位ノードAと低電位ノードBとの間の電圧差を測定してアナログ電圧信号に出力する。
【0042】
望ましくは、前記電圧測定部30は、それぞれのバッテリーセルVB、VB、VBの電圧を周期的に測定するために通常使用する回路をそのまま用いる。この場合、セルバランス回路20の異常を診断するために別途の電圧測定部30を設けなくても済むという利点がある。
【0043】
図2は、本発明の望ましい実施例による制御部の構成をより具体的に示したブロック図である。
【0044】
図2に示されたように、前記制御部40はA/D変換モジュール41、中央演算モジュール42、及びスイッチ制御モジュール43を含む。
【0045】
前記A/D変換モジュール41は、電圧測定部30から出力されるアナログ電圧信号をデジタル電圧信号に変換して中央演算モジュール42に出力する。前記アナログ電圧信号は、それぞれのバッテリーセルVB、VB、VBのセル電圧に対応する信号、及びセルバランス回路20の電圧差に対応する電圧信号を含む。
【0046】
前記中央演算モジュール42は、前記A/D変換モジュール41からデジタル電圧信号の入力を受けてセルバランス回路20の異常有無及び異常原因を判別する。すなわち、前記中央演算モジュール42は、診断対象セルバランス回路20と隣接するセルバランス回路20の電圧差の変化パターンから診断対象セルバランス回路20の異常有無及び異常原因を判別する。
【0047】
前記スイッチ制御モジュール43は、セルバランス回路20に含まれたセルバランススイッチSWb1、SWb2、SWb3のオン/オフを制御する。
【0048】
本発明の望ましい実施例によるセルバランス回路の異常診断装置が、セルバランス回路20の異常有無及び異常原因を判別する過程を第2セルVBに該当するセルバランス回路20の異常診断過程を中心に説明すれば、次のようである。
【0049】
まず、前記制御部40は、診断対象になる第2セルVBに隣接する第1セルVB及び第3セルVBのセルバランススイッチSWb1、SWb3をオフさせ、第2セルVBのセルバランススイッチSWb2をオンさせる。その後、第1セルVBと第3セルVBに対応するセルバランス回路20の電圧差を電圧測定部30を通じて測定して保存する。次いで、制御部40は第2セルVBのセルバランススイッチSWb2をオフさせた後、第1セルVBと第3セルVBに対応するセルバランス回路20の電圧差を電圧測定部30を通じて測定して保存する。このとき、前記制御部40は第2セルVBのセルバランススイッチSWb2を異時的にオンまたはオフさせる。ここで、「異時的」とは、時間間隔を置いてセルバランススイッチSWb2のオン/オフを制御することを意味し、以下においても同様である。その後、制御部40は第2セルVBのセルバランススイッチSWb2がオンまたはオフされるときの隣接するセルに対応するセルバランス回路20の電圧差の変化パターンを分析し、第2セルVBに対応するセルバランス回路20の異常有無及び異常原因を判別する。
【0050】
<ケース1:第2セルのセルバランス回路が正常である場合>
図3に示されたように、第2セルVBのセルバランススイッチSWb2がオンされれば、隣接する第1セルVB及び第3セルVBに対応するセルバランス回路20の電圧差VABはそれぞれのバッテリーセルの電圧V、Vより上昇する。第2セルVBのセルバランススイッチSWb2がオンされれば、第2セルVBの放電ルーフに放電電流が流れるため、第1セルVBの高電位ノードの電位は上昇し、第3セルVBの低電位ノードの電位は下降する。結果的に、第1セルVB及び第3セルVBに対応するセルバランス回路20の電圧差VABがそれぞれのバッテリーセルの電圧V、Vより上昇する。そして、第2セルVBのセルバランススイッチSWb2がオフされれば、隣接する第1セルVB及び第3セルVBに対応するセルバランス回路20の電圧差VABはそれぞれのバッテリーセルのセル電圧V、Vと同一になる。
【0051】
したがって、制御部は診断対象セルバランス回路がオン状態であるとき、隣接するセルバランス回路の電圧差がセル電圧より高く、診断対象セルバランス回路がオフ状態であるとき、隣接するセルバランス回路の電圧差がセル電圧と対応すれば、診断対象セルバランス回路が正常であると判別する。
【0052】
<ケース2:第2セルのセルバランス回路に短絡が発生した場合>
図4に示されたように、第2セルVBのセルバランススイッチSWb2が短絡していれば、セルバランススイッチSWb2のオンまたはオフと関係なく、放電ルーフを通じて放電電流が流れる。その結果、第1セルVBと第3セルVBに対応するセルバランス回路20の電圧差VABは、第2セルVBのセルバランススイッチSWb2のオンまたはオフに係らず、それぞれのバッテリーセルの電圧V、Vより高い電圧値を有する。第2セルVBの放電ルーフを通じて放電電流が流れる場合、隣接するバッテリーセルに対応するセルバランス回路20の電圧差の上昇する理由は、ケース1で説明した通りである。
【0053】
したがって、制御部は、診断対象セルバランス回路がオン状態であるとき及びオフ状態であるときともに隣接するセルバランス回路の電圧差がセル電圧より高く、且つ、同じであれば、診断対象セルバランス回路に短絡が発生したと判別する。
【0054】
<ケース3:第2セルのセルバランス回路に断線が発生した場合>
図5に示されたように、第2セルVBのセルバランススイッチSWb2が断線した状態であれば、セルバランススイッチSWb2がオンまたはオフされても放電ルーフに放電電流が流れない。したがって、第1セルVBと第3セルVBに対応するセルバランス回路20の電圧差VABは、第2セルVBのセルバランススイッチSWb2のオンまたはオフと関係なく、それぞれのバッテリーセルのセル電圧V、Vと同じ電圧値を有する。
【0055】
したがって、制御部は、診断対象セルバランス回路がオン状態であるとき及びオフ状態であるときともに隣接するセルバランス回路の電圧差がセル電圧と対応すれば、診断対象セルバランス回路に断線が発生したと判別する。
【0056】
一方、セルバランス回路に断線が発生する場合には、セルバランススイッチの断線だけでなく、放電抵抗Rが断線した場合またはセルバランス回路内部の回路線路が断線した場合が全て含まれる。このような場合にも診断対象セルバランス回路と隣接するセルバランス回路との電圧差の変化パターンは、図5に示された電圧差の変化パターンと同様の様相を示すことは自明である。
【0057】
本発明によるセルバランス回路の異常診断装置は、全体セルバランス回路が短絡または断線したとき、これを正確に診断できる追加的な回路構成をさらに含み得る。
【0058】
より具体的に、図1に示されたように、本発明によるセルバランス回路の異常診断装置は、最低電位側に位置したバッテリーセルVBと連結されたセルバランス回路20とこれと対応するバッテリーセルVBとの間に設けられた放電抵抗R及び診断スイッチSWをさらに含み得る。なお、前記放電抵抗R及び診断スイッチSWが、最高電位側に位置したバッテリーセルVBと連結されたセルバランス回路20とこれと対応するバッテリーセルVBとの間に設けられ得ることも勿論である。
【0059】
本発明によるセルバランス回路の異常診断装置により全体セルバランス回路の異常有無及び異常原因を判別する過程は、次のようである。
【0060】
まず、前記制御部40は、全体セルバランススイッチSWb1、SWb2、SWb3をオンさせた状態でそれぞれのバッテリーセルVB、VB、VBに対応するそれぞれのセルバランス回路20の電圧差を前記電圧測定部30を通じて測定し、測定されたそれぞれの電圧差を合算して全体セルバランス回路20の電圧差を1次的に算出する。その後、全体セルバランススイッチSWb1、SWb2、SWb3をオンさせた状態で前記診断スイッチSWをオンさせた後、この状態でそれぞれのバッテリーセルVB、VB、VBに対応するそれぞれのセルバランス回路20の電圧差を前記電圧測定部30を通じて測定し、測定されたそれぞれの電圧差を合算して全体セルバランス回路20の電圧差を2次的に算出する。その後、前記制御部40は、1次的に算出された全体セルバランス回路の電圧差と2次的に算出された全体セルバランス回路の電圧差とが同じであるか否かを判断し、もし同じであれば全体セルバランス回路に断線が発生したと判別する。
【0061】
逆に、前記制御部40は全体セルバランススイッチSWb1、SWb2、SWb3をオフさせた状態でそれぞれのバッテリーセルVB、VB、VBに対応するそれぞれのセルバランス回路20の電圧差を前記電圧測定部30を通じて測定し、測定されたそれぞれの電圧差を合算して全体セルバランス回路20の電圧差を1次的に算出する。その後、全体セルバランススイッチSWb1、SWb2、SWb3をオフさせた状態で前記診断スイッチSWをオンさせた後、この状態でそれぞれのバッテリーセルVB、VB、VBに対応するそれぞれのセルバランス回路20の電圧差を前記電圧測定部30を通じて測定し、測定されたそれぞれの電圧差を合算して全体セルバランス回路20の電圧差を2次的に算出する。その後、前記制御部40は1次的に算出された全体セルバランス回路の電圧差より2次的に算出された全体セルバランス回路の電圧差が小さいか否かを判断し、もし小さければ全体セルバランス回路に短絡が発生したと判別する。
【0062】
全体セルバランス回路で断線が発生すると、放電抵抗R側に放電電流が流れないため、1次的に算出された全体セルバランス回路の電圧差と2次的に算出された全体セルバランス回路の電圧差とが同一になる。逆に、全体セルバランス回路で短絡が発生すると、放電抵抗R側に放電電流が流れ込むことで放電抵抗Rによる電圧降下効果が全体セルバランス回路の電圧差に反映されるため、1次的に算出された全体セルバランス回路の電圧差より2次的に算出された全体セルバランス回路の電圧差が低くなる。
【0063】
図2に示されたように、本発明によるセルバランス回路の異常診断装置は異常警報機50をさらに含み得る。この場合、前記制御部40はセルバランス回路20に異常が生じた場合、異常が生じたことを異常警報機50を通じて外部に知らせる。すなわち、前記制御部40は、セルバランス回路20に異常があると判別した場合、異常発生信号を異常警報機50に伝達し、異常警報機50を通じて視覚的または聴覚的に異常が生じたことを外部に警報し得る。
【0064】
前記異常警報機50は、LED、LCD、アラーム警報機、またはこれらの組合せを含む。この場合、前記異常発生信号が入力されれば、前記異常警報機50はLEDを点滅するか、LCDに警告メッセージを出力するか、またはアラームブザー音を鳴らし、ユーザにセルバランススイッチに異常が生じたことを警報し得る。前記LED、LCD及びアラーム警報機は、異常警報機50の一例に過ぎず、他の変形された形態の視覚的または聴覚的アラーム装置を異常警報機として採用できることは当業者には自明である。
【0065】
上述したセルバランス回路の異常診断は、一定周期で繰り返して行われても良く、ユーザの診断命令または制御部40の制御アルゴリズムで自動的に発される診断命令に従って行われても良い。
【0066】
また、上述した動作を行う制御部40は、セルバランス回路の異常診断方法をプログラム化したコードを実行可能なマイクロプロセッサーで構成しても良く、セルバランス回路の異常診断方法の制御フローを論理回路として具現した注文型半導体チップ(ASIC)で構成しても良いが、本発明がこれらに限定されることはない。
【0067】
上述した本発明によるセルバランス回路の異常診断装置は、バッテリーパックから電源が供給されるバッテリーパック駆動装置に組み込んで使用し得る。
【0068】
一例として、本発明は、ノートパソコン、携帯電話、個人携帯用マルチメディア再生機のようにバッテリーから駆動電圧が供給される各種電子製品に組み込んで使用し得る。
【0069】
他の例として、本発明は、化石燃料自動車、電気自動車、ハイブリッド自動車、電気自転車のようにバッテリーを搭載した各種動力装置に組み込んで使用し得る。
【0070】
また、本発明によるセルバランス回路の異常診断装置は、バッテリーパックの充放電を制御して過充電または過放電などからバッテリーパックを保護するバッテリー管理システム(Battery Management System;BMS)に組み込んで使用し得る。
【0071】
さらに、本発明によるセルバランス回路の異常診断装置は、バッテリーパック内に組み込んで使用し得る。
【0072】
図6は、本発明の望ましい実施例によるセルバランス回路の異常診断方法を説明するために示したフロー図である。以下、セルバランス回路20をオン/オフさせるとは、セルバランス回路20内に含まれたセルバランススイッチSWb1、SWb2、SWb3をオン/オフさせることを意味する。
【0073】
まず、ステップS11において、制御部は電圧測定部を通じてそれぞれのバッテリーセルのセル電圧を測定して保存する。このとき、制御部はそれぞれのバッテリーセルに対応するセルバランス回路をオフさせる。
【0074】
ステップS12において、制御部は診断対象セルバランス回路と隣接するセルバランス回路をオフさせる。
【0075】
ステップS13において、制御部は隣接するセルバランス回路をオフさせた状態で診断対象セルバランス回路をオンさせ、隣接するセルバランス回路の電圧差を測定して保存する。
【0076】
ステップS14において、制御部は隣接するセルバランス回路をオフさせた状態で診断対象セルバランス回路をオフさせ、隣接するセルバランス回路の電圧差を測定して保存する。
【0077】
ステップS15において、制御部は診断対象セルバランス回路がオンされたとき及びオフされたときの隣接するセルバランス回路の電圧差の変化パターンから診断対象セルバランス回路の異常有無及び異常原因を判別する。
【0078】
すなわち、制御部は、前記診断対象セルバランス回路がオンされたときに測定された隣接するセルバランス回路の電圧差がセル電圧より高く、前記診断対象セルバランス回路がオフされたときに測定された隣接するセルバランス回路の電圧差がセル電圧と対応すれば、診断対象セルバランス回路が正常であると判別する。
【0079】
また、制御部は、前記診断対象セルバランス回路がオンされたとき及びオフされたときに測定された隣接するセルバランス回路の電圧差がセル電圧と対応すれば、診断対象セルバランス回路に断線が発生したと判別する。
【0080】
また、制御部は、前記診断対象セルバランス回路がオンされたとき及びオフされたときに測定された隣接するセルバランス回路の電圧差がセル電圧より高くて変化がなければ、診断対象セルバランス回路に短絡が発生したと判別する。
【0081】
ステップS16において、制御部はセルバランス回路の異常有無の判別結果に応じてプロセスを2元化させる。もし、診断対象セルバランス回路に異常が生じていないと判別されれば、制御部はセルバランス回路の異常診断のためのプロセスを終了する。一方、診断対象セルバランス回路に異常が生じたと判別されれば、制御部はプロセスをステップS17に移行する。ステップS17において、診断対象セルバランス回路に異常が生じたことを異常警報機を通じてユーザに視覚的または聴覚的に警報する。
【0082】
上述したステップS11ないしステップS17は、それぞれのバッテリーセルに対応するセルバランス回路毎に行われても良い。また、セルバランス回路の異常診断は、一定周期で繰り返されてもよく、ユーザの診断命令または制御部の制御アルゴリズムで自動的に発される診断命令に従って実行されてもよいことは当業者には自明である。
【0083】
図7は、全体セルバランス回路の異常を診断する方法を説明するために示したフロー図である。
【0084】
まず、ステップS21において、制御部は全体セルバランス回路をオンさせて診断スイッチをオフさせた状態で電圧測定部を通じてそれぞれのセルバランス回路の電圧差を測定し、測定されたそれぞれの電圧差を合算して全体セルバランス回路の電圧差を1次的に算出する。
【0085】
ステップS22において、制御部は全体セルバランス回路をオンさせた状態で診断スイッチをオンさせて電圧測定部を通じてそれぞれのセルバランス回路の電圧差を測定し、測定されたそれぞれの電圧差を合算して全体セルバランス回路の電圧差を2次的に算出する。
【0086】
ステップS23において、制御部は1次的に算出された全体セルバランス回路の電圧差と2次的に算出された全体セルバランス回路の電圧差とを比べる。もし、2つの電圧差の値が同じであれば、制御部は全体セルバランス回路に断線が発生したと判別する。
【0087】
ステップS24において、制御部は全体セルバランス回路の異常診断結果に応じてプロセスを2元化させる。もし、全体セルバランス回路に断線が発生したと判別されれば、プロセスをステップS29に移行し、全体セルバランス回路に断線が発生したことを異常警報機を通じてユーザに視覚的または聴覚的に知らせる。一方、全体セルバランス回路に断線が発生していないと判別されれば、プロセスをステップS25に移行する。
【0088】
次いで、ステップS25において、制御部は診断スイッチをオフさせて全体セルバランス回路をオフさせた状態で電圧測定部を通じてそれぞれのセルバランス回路の電圧差を測定し、測定されたそれぞれの電圧差を合算して全体セルバランス回路の電圧差を1次的に算出する。
【0089】
ステップS26において、制御部は全体セルバランス回路をオフさせた状態で診断スイッチをオンさせて電圧測定部を通じてそれぞれのセルバランス回路の電圧差を測定し、測定されたそれぞれの電圧差を合算して全体セルバランス回路の電圧差を2次的に算出する。
【0090】
ステップS27において、制御部は1次的に算出された全体セルバランス回路の電圧差と2次的に算出された全体セルバランス回路の電圧差とを比べる。もし、2次的に算出された全体セルバランス回路の電圧差が1次的に算出された全体セルバランス回路の電圧差より小さければ、全体セルバランス回路に短絡が発生したと判別する。
【0091】
ステップS28において、制御部は全体セルバランス回路の異常診断結果に応じてプロセスを2元化させる。もし、全体セルバランス回路に短絡が発生したと判別されれば、プロセスをステップS29に移行し、全体セルバランス回路に短絡が発生したことを異常警報機を通じてユーザに視覚的または聴覚的に知らせる。一方、全体セルバランス回路に短絡が発生していないと判別されれば、制御部は全体セルバランス回路の異常診断過程を終了させる。
【0092】
本発明によるセルバランス回路の異常診断は、バッテリーパックの使用中に一定周期で繰り返して行われても良く、ユーザの診断命令または制御部の制御アルゴリズムで自動的に発される診断命令に従って行われても良いことは当業者には自明である。
【0093】
また、セルバランス回路の異常診断結果を異常警報機を通じて出力する構成は省かれても良い。この場合、制御部は異常診断結果及び異常原因をメモリーに保存することが望ましい。
【0094】
本発明は、セルバランス回路及び診断スイッチのオン/オフ順によって限定されず、実施例に示されたセルバランス回路及び診断スイッチのオン/オフ順は本発明の技術的思想の範囲内で変更することができる。
【0095】
以上、本発明を限定された実施例と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーパックに含まれた複数のバッテリーセルの電圧をバランシングできるようにそれぞれのバッテリーセルと連結された複数のセルバランス回路と、
それぞれのバッテリーセルに対応するセルバランス回路の電圧差を測定する電圧測定部と、
最高電位側または最低電位側のバッテリーセルとそれと対応するセルバランス回路との間に設けられた放電抵抗及び診断スイッチと、
全体セルバランス回路がオンまたはオフされた状態で前記診断スイッチをオンまたはオフさせ、前記診断スイッチのオン状態及びオフ状態で前記電圧測定部を通じて測定された全体セルバランス回路の電圧差に対する変化パターンから全体セルバランス回路の異常有無を診断する制御部とを備えてなることを特徴とする、セルバランス回路の異常診断装置。
【請求項2】
前記制御部が、
前記全体セルバランス回路をオンさせた状態で、前記診断スイッチをオンさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差及び前記診断スイッチをオフさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差が全体セル電圧と対応すれば、前記全体セルバランス回路に断線が発生したと判別することを特徴とする、請求項1に記載のセルバランス回路の異常診断装置。
【請求項3】
前記制御部が、
前記全体セルバランス回路をオフさせた状態で、前記診断スイッチをオンさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差より前記診断スイッチをオフさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差が低ければ、前記全体セルバランス回路に短絡が発生したと判別することを特徴とする、請求項1に記載のセルバランス回路の異常診断装置。
【請求項4】
前記制御部が、
前記セルバランス回路に含まれたセルバランススイッチの動作を制御するスイッチ制御モジュールと、
前記電圧測定部から出力されるアナログ電圧信号をデジタル電圧信号に変換するA/D変換モジュールと、
前記A/D変換モジュールからデジタル電圧信号の入力を受けて前記セルバランス回路の異常有無を判別する中央演算モジュールとを備えてなることを特徴とする、請求項1に記載のセルバランス回路の異常診断装置。
【請求項5】
前記セルバランス回路に異常が生じたことを視覚的または聴覚的に出力する異常警報機をさらに備えてなり、
前記制御部は、前記セルバランス回路に異常が生じた場合、前記異常警報機を通じて前記セルバランス回路に異常が生じたことを視覚的または聴覚的に警報することを特徴とする、請求項1に記載のセルバランス回路の異常診断装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載のセルバランス回路の異常診断装置を含むバッテリー管理システム。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか一項に記載のセルバランス回路の異常診断装置を含むバッテリー駆動装置。
【請求項8】
請求項1〜5の何れか一項に記載のセルバランス回路の異常診断装置を含むバッテリーパック。
【請求項9】
バッテリーパックに含まれた複数のバッテリーセルの電圧をバランシングできるようにそれぞれのバッテリーセルと連結された複数のセルバランス回路、最高電位側または最低電位側のバッテリーセルとそれと対応するセルバランス回路との間に設けられた放電抵抗及び診断スイッチを用いて全体セルバランス回路の異常を診断する方法において、
全体セルバランス回路をオンまたはオフさせた状態で前記診断スイッチをオンまたはオフさせたとき、前記全体セルバランス回路の電圧差を測定するステップと、
前記診断スイッチをオンまたはオフさせたとき、前記全体セルバランス回路の電圧差に対する変化パターンから前記全体セルバランス回路の異常有無を判別するステップとを備えてなることを特徴とするセルバランス回路の異常診断方法。
【請求項10】
前記全体セルバランス回路の異常有無を判別するステップが、
前記全体セルバランス回路をオンさせた状態で、前記診断スイッチをオンさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差及び前記診断スイッチをオフさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差が全体セル電圧と対応すれば、前記全体セルバランス回路に断線が発生したと判別することを特徴とする、請求項9に記載のセルバランス回路の異常診断方法。
【請求項11】
前記全体セルバランス回路の異常有無を判別するステップが、
前記全体セルバランス回路をオフさせた状態で、前記診断スイッチをオフさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差より前記診断スイッチをオンさせたときの前記全体セルバランス回路の電圧差が低い場合、前記全体セルバランス回路に短絡が発生したと判別する特徴とする、請求項9に記載のセルバランス回路の異常診断方法。
【請求項12】
前記セルバランス回路に異常が生じたと判別された場合、前記セルバランス回路に異常が生じたことを視覚的または聴覚的に警報するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載のセルバランス回路の異常診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−255788(P2012−255788A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−143313(P2012−143313)
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【分割の表示】特願2012−503342(P2012−503342)の分割
【原出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】