説明

ダイシングテープ一体型接着シート、多層回路基板、電子部品及び半導体装置

【課題】対向する部材の端子間の接続および部材間の空隙の封止を同時に行うことができ、対向する部材の端子間を確実に接続することができ、アウトガスが少なく気泡の発生が少ない接着フィルムを有する、作業性に優れたダイシングテープ一体型接着シートを提供する。
【解決手段】支持体の第一の端子と被着体の第二の端子を半田を用いて電気的に接続し、該支持体と該被着体とを接着する接着フィルム3と、ダイシングテープ2とから構成される積層構造を有するダイシングテープ一体型接着シート10であって、該接着フィルム3の最低溶融粘度が0.01〜100,000Pa・s以下であり、かつ、該接着フィルム3の発熱ピーク温度を(a)、該接着フィルム3の5%重量加熱減量温度を(b)と定義した時、下記の式(1)を満たすダイシングテープ一体型接着シート10により、上記課題を解決することができる。(b)−(a)≧100℃(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングテープ一体型接着シート、多層回路基板、電子部品及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化及び軽薄短小化の要求に伴い、半導体パッケージ等の電子部品の高密度集積化、高密度実装化が進んでおり、これら電子部品の小型化、多ピン化が進んでいる。これら電子部品の電気的な接続を得るためには、半田接合が用いられている。
この半田接合としては、例えば半導体チップ同士の導通接合部、フリップチップで搭載したパッケージのような半導体チップと回路基板間との導通接合部、回路基板同士の導通接合部等が挙げられる。この半田接合部には、電気的な接続強度及び機械的な接続強度を確保するために、一般的にアンダーフィル材と呼ばれる封止樹脂が注入されている(アンダーフィル封止)。
【0003】
この半田接合部よって生じた空隙(ギャップ)を液状封止樹脂(アンダーフィル材)で補強する場合、半田接合後に液状封止樹脂(アンダーフィル材)を供給し、これを硬化することによって半田接合部を補強している。しかしながら、電子部品の薄化、小型化に伴い、半田接合部は狭ピッチ化/狭ギャップ化しているため、半田接合後に液状封止樹脂(アンダーフィル材)を供給してもギャップ間に液状封止樹脂(アンダーフィル材)が行き渡らなく、完全に充填することが困難になるという問題が生じている。
【0004】
このような問題に対して、異方導電フィルムを介して端子間の電気的接続と接着とを一括で行う方法が知られている。例えば半田粒子を含む接着フィルムを、部材間に介在させて熱圧着させることにより、両部材の端子間に半田粒子を介在させ、他部に樹脂成分を充填させる方法や、金属粒子を接触させることによって電気的接続をとる方法が記載されている(例えば、特許文献1、2)。
【0005】
しかしこの方法では、隣接する端子間に導電性粒子が存在するため、隣接する端子間の絶縁性を確保することや隣接する端子間に気泡が存在するため、電子部品や半導体装置の信頼性を確保することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−276873号公報
【特許文献2】特開平9−31419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、対向する部材の端子間の接続および部材間の空隙の封止を同時に行うことができ、また、対向する部材の端子間を確実に接続することができ、さらに、アウトガスが少なく気泡の発生が少ないダイシングテープ一体型接着シートを提供することにある。また、別の目的は、電気的接続信頼性が高く、さらに、気泡の少ない多層回路基板、電子部品および半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(14)により達成される。
(1) 支持体の第一の端子と、被着体の第二の端子を、半田を用いて電気的に接続し、該支持体と該被着体とを接着する接着フィルムと、ダイシングテープとから構成される積層構造を有するダイシングテープ一体型接着シートであって、
該接着フィルムの最低溶融粘度が0.01〜100,000Pa・s以下であり、かつ、該接着フィルムの発熱ピーク温度を(a)、該接着フィルムの5%重量加熱減量温度を(b)と定義した時、下記の式(1)を満たすことを特徴とするダイシングテープ一体型接着シート。
(b)−(a)≧100℃ (1)
(2) (A)熱硬化性樹脂と、(B)硬化剤と、(C)フラックス機能を有する化合物と、(D)成膜性樹脂と、を含む上記(1)に記載の接着フィルム。
(3) 前記(A)熱硬化性樹脂と、前記(C)フラックス機能を有する化合物の配合比((A)/(C))が、0.5〜20.0である、上記(2)に記載のダイシングテープ一体型接着シート。
(4) 前記(A)熱硬化性樹脂の含有量が5〜80重量%である、上記(2)または(3)に記載のダイシングテープ一体型接着シート。
(5) 前記(A)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、上記(2)ないし(4)のいずれかに記載のダイシングテープ一体型接着シート。
(6) 前記(C)フラックス機能を有する化合物が、カルボキシル基および/またはフェノール性水酸基を有するフラックス機能を有する化合物である、上記(2)ないし(5)のいずれかに記載のダイシングテープ一体型接着シート。
(7) 前記(C)フラックス機能を有する化合物が、1分子中に2個のフェノール性水酸基と、少なくとも1個の芳香族に直接結合したカルボキシル基とを有するフラックス機能を有する化合物である、上記(2)ないし(6)のいずれかに記載のダイシングテープ一体型接着シート。
(8) 前記(C)フラックス機能を有する化合物が、下記一般式(2)で示される化合物を含む、上記(2)ないし(7)に記載のダイシングテープ一体型接着シート。
HOOC−(CH)n−COOH (2)
(式(2)中、nは、1〜20の整数である。)
(9) 前記(C)フラックス機能を有する化合物が、下記一般式(3)及び/又は(4)で示される化合物を含む、上記(2)ないし(8)のいずれかに記載のダイシングテープ一体型接着シート。
【0009】
【化1】


[式中、R〜Rは、それぞれ独立して、1価の有機基であり、R〜Rの少なくとも一つは水酸基である。]
【0010】
【化2】


[式中、R〜R20は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、R〜R20の少なくとも一つは水酸基又はカルボキシル基である。]
(10) 前記接着フィルムが、さらに充填材を含む上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のダイシングテープ一体型接着シート。
(11) 前記充填材の含有量が、0.1重量%以上80重量%未満である上記(10)に記載のダイシングテープ一体型接着シート。
(12) 上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の接着フィルムの硬化物を有することを特徴とする多層回路基板。
(13) 上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の接着フィルムの硬化物を有することを特徴とする電子部品。
(14) 上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の接着フィルムの硬化物を有することを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、対向する部材の端子間の接続および部材間の空隙の封止を同時に行うことができ、また、対向する部材の端子間を確実に接続することができ、さらに、アウトガスが少なく気泡の発生が少ないダイシングテープ一体型接着シートを提供することができる。また、本発明によれば、電気的接続信頼性が高く、さらに、気泡の少ない多層回路基板、電子部品および半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明のダイシングテープ一体型接着シートを用いた半導体装置の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、本発明のダイシングテープ一体型接着シートを用いた半導体装置の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、本発明のダイシングテープ一体型接着シートの製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のダイシングテープ一体型接着シート、多層回路基板、電子部品及び半導体装置に関して説明する。
本発明のダイシングテープ一体型接着シートは、支持体の第一の端子と、被着体の第二の端子を、半田を用いて電気的に接続し、該支持体と該被着体とを接着する接着フィルムと、ダイシングテープとから構成される積層構造を有するダイシングテープ一体型接着シートであって、
該接着フィルムの最低溶融粘度が0.01〜100,000Pa・s以下であり、かつ、該接着フィルムの発熱ピーク温度を(a)、該接着フィルムの5%重量加熱減量温度を(b)と定義した時、下記の式(1)を満たすことを特徴とする。
(b)−(a)≧100℃ (1)
また、本発明の多層回路基板、電子部品及び半導体装置は、第一の端子を有する支持体と、第二の端子を有する被着体とを、上記接着フィルムを用いて、電気的に接続し、該支持体と該被着体とを接着したものである。
【0014】
以下、本発明のダイシングテープ一体型接着シート、多層回路基板、電子部品及び半導体装置について詳細に説明する。
【0015】
本発明のダイシングテープ一体型接着シートは、支持体の第一の端子と、被着体の第二の端子を、半田を用いて電気的に接続し、該支持体と該被着体とを接着する接着フィルムと、ダイシングテープとを必須の構成要素とするものである。また、この他に、後述する介在層や外層を設けてもよい。ダイシングテープ一体型接着シートの各部の構成について、順次詳述する。
【0016】
(ダイシングテープ)
ダイシングテープは、一般的に用いられるどのようなダイシングテープでも用いることが出来る。
具体的には、ダイシングテープとして、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等を含む第一樹脂組成物で構成されているものを用いることが出来る。
【0017】
アクリル系粘着剤としては、例えば(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルで構成される樹脂、(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルと、それらと共重合可能な不飽和単量体(例えば酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等)との共重合体等が用いられる。また、これらの共重合体を2種類以上混合してもよい。
【0018】
また、これらの中でも(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシルおよび(メタ)アクリル酸ブチルからなる群から選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルおよび酢酸ビニルの中から選ばれる1種以上との共重合体が好ましい。これにより、ダイシングテープ2が粘着する相手(被着体)との密着性や粘着性の制御が容易になる。
【0019】
また、第一樹脂組成物には、粘着性(接着性)を制御するためにウレタンアクリレート、アクリレートモノマー、多価イソシアネート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート)等のイソシアネート化合物等のモノマーおよびオリゴマーを添加してもよい。
【0020】
さらに、第一樹脂組成物には、後述する第二樹脂組成物と同様の光重合開始剤を添加してもよい。
【0021】
また、接着強度およびシェア強度を高める目的で、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族系石油樹脂等の粘着付与剤等を添加してもよい。
【0022】
このようなダイシングテープの平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、特に3〜20μm程度であるのがより好ましい。ダイシングテープの平均厚さが前記範囲内であれば、ダイシングテープの形状追従性が確保され、接着フィルムの半導体ウエハーに対する密着性をより高めることができる。
【0023】
介在層について後述するが、ダイシングテープ一体型接着シートにおいて、ダイシングテープと接着フィルムの間に介在層を有する場合、ダイシングテープは、介在層よりも粘着性が高いものが好ましい。これにより、接着フィルムに対する介在層の密着力よりも、介在層および支持フィルムに対するダイシングテープの密着力が大きくなる。そのため、後述する半導体装置の製造におけるピックアップ工程において、剥離を生じさせるべき所望の界面(すなわち介在層と接着フィルムとの界面)で剥離を生じさせることができる。
【0024】
また、ダイシングテープの粘着性を高めることにより、後述する半導体装置の製造の第2の工程においては、半導体ウエハーをダイシングして個片化する際に、ダイシングテープとウエハーリングとの間が確実に固定されることとなる。その結果、半導体ウエハーの位置ずれが確実に防止され、半導体素子の寸法精度を高めることができる。
【0025】
(接着フィルム)
本発明の接着フィルムは、該接着フィルムの最低溶融粘度が0.01〜100,000Pa・sであり、かつ、該接着フィルムの発熱ピーク温度を(a)、該接着フィルムの5%重量加熱減量温度を(b)と定義した時、下記の式(1)を満たすことを特徴とする。
(b)−(a)≧100℃ (1)
【0026】
前記接着フィルムの最低溶融粘度を0.01〜100,000Pa・sとすることで、対向する支持体の第一の端子と被着体の第二の端子の間に接着フィルムを介し、前記接着フィルムを加熱溶融させて、支持体および被着体を電気的に接続して、さらに、接着する際に良好な接続信頼性を確保することが可能となる。
【0027】
前記最低溶融粘度を0.01Pa・s以上とすることで、溶融した接着フィルムが支持体または被着体に這い上がり汚染してしまうことを防止することができる。また、前記溶融粘度を100,000Pa・s以下とすることで、対向する端子間に溶融した接着フィルムが噛みこんでしまい導通不良が発生することを防止することができる。
【0028】
前記最低溶融粘度は、好ましくは、0.02Pa・s以上、特に0.05Pa・s以上とすることが好ましい。これにより、溶融した接着フィルムが支持体または被着体に這い上がり汚染してしまうことを、より効果的に防止することができる。また、前記最低溶融粘度は、好ましくは、70,000Pa・s以下、特に30,000Pa・s以下とすることが好ましい。これにより、対向する端子間に溶融した接着フィルムが噛みこんでしまい導通不良が発生することを、より効果的に防止することができる。
【0029】
ここで、前記接着フィルムの最低溶融粘度は、粘弾性測定装置(HAAKE社製「RheoStress RS150」)を用いて、パラレルプレート20mmφ、ギャップ0.05mm、周波数0.1Hz、昇温速度は、10℃/分の条件で測定することができる。
【0030】
また、接着フィルムの発熱ピーク温度を(a)、該接着フィルムの5%重量加熱減量温度を(b)と定義した時、下記の式(1)を満たすことにより、対向する支持体の第一の端子と被着体の第二の端子の間に接着フィルムを介し、前記接着フィルムを加熱溶融させて、支持体および被着体を電気的に接続して、さらに、接着する際に気泡が発生することを防止することができるため、作製した多層回路基板、電子部品、半導体装置の信頼性を向上することができる。
(b)−(a)≧100℃ (1)
【0031】
前記接着フィルムの5%重量加熱減量温度(b)と発熱ピーク温度(a)の差が大きいほど、接着フィルムを加熱することによりアウトガスが発生し難いため、電気的接続および接着後の気泡の発生を防止することができる。さらに、アウトガスが発生した場合においても、接着フィルムの硬化反応よりも遅れてアウトガスが発生し、三次元化した接着フィルム中をアウトガスが移動しにくいため、電気的接続および接着後の気泡の発生を防止することができる。
【0032】
前記接着フィルムの5%重量加熱減量温度(b)と発熱ピーク温度(a)の差は、好ましくは120℃以上、特に150℃以上とすることが好ましい。これにより、接着フィルムのアウトガスの発生をより効果的に防止することができる。また、仮にアウトガスが発生した場合でも、接着フィルム中をアウトガスが移動し難いため、電気的接続および接着後の気泡の発生をより効果的に防止することができる。
【0033】
ここで、前記接着フィルムの発熱ピーク温度(b)は、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製、DSC−6200)を用いて、昇温速度10℃/分で測定することができる。
【0034】
また、前記接着フィルムの5%重量加熱減量温度(a)は、熱重量/示差熱同時測定装置(セイコーインスツルメンツ(株)製、TG/DTA6200)を用いて、昇温速度10℃/分で測定することができる。
【0035】
前記接着フィルムの5%重量加熱減量温度(b)と発熱ピーク温度(a)の差を上記範囲とする方法としては、特に限定されるわけではないが、(A)熱硬化性樹脂、(B)硬化剤、(C)フラックス機能を有する化合物中の軟化点や含有量、さらに、低分子成分の含有量を適宜調整することにより行うことができる。
【0036】
前記接着フィルムは、(A)熱硬化性樹脂、(B)硬化剤、(C)フラックス機能を有する化合物、(D)成膜性樹脂を含むことが好ましい。(A)熱硬化性樹脂、(B)硬化剤、(D)成膜性樹脂を含むことにより、前記接着フィルムの溶融粘度を上記範囲とすることが容易となる。(A)熱硬化性樹脂、(B)硬化剤、D)成膜性樹脂の軟化点、配合量を適宜選択することにより、最適な溶融粘度に調整することが出来る。
【0037】
(A)熱硬化性樹脂
本発明に係る(A)熱硬化性樹脂は、特に限定されるわけではなく、例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂(ポリイミド前駆体樹脂)、ビスマレイミド−トリアジン樹脂などが挙げられる。特に、エポキシ樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。中でも、硬化性と保存性、硬化物の耐熱性、耐湿性、耐薬品性に優れるという観点からエポキシ樹脂が好ましい。また、これらの熱硬化性樹脂は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記(A)熱硬化性樹脂の含有量は、特に限定されるわけではないが、5〜80重量%が好ましく、8〜75重量%が好ましく、10〜55重量%が特に好ましい。(A)熱硬化性樹脂の含有量を上記下限値以上とすることで、硬化後の接着フィルムの耐熱性が向上するため、多層回路基板、電子部品及び半導体装置の信頼性を向上することができる。
また、上記上限値以下とすることで、硬化後の接着フィルムの弾性率が高くなりすぎることを防止することができるため、支持体と被着体との接着性を向上することができる。
【0039】
前記エポキシ樹脂としては、特に制限されるわけではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、3官能エポキシ樹脂、4官能エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0040】
また、前記エポキシ樹脂としては、より好ましくは、25℃における粘度が、500〜50,000mPa・sであるもの、さらに、800〜40,000mPa・sであるものが好ましく、25℃における粘度を上記下限値以上とすることで、接着フィルムの柔軟性と屈曲性を確保することができる。また、25℃における粘度を上記上限値以下とすることで接着フィルムのタック性が強くなり、ハンドリング性が低下することを防止することができる。
【0041】
また、前記エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、10〜80重量%が好ましく、8〜75重量%が特に好ましい。上記下限値以上とすることで、接着フィルムの柔軟性と屈曲性をより効果的に発現させることができる。また、上記上限値以下とすることで、接着フィルムのタック性が強くなり、ハンドリング性が低下することをより効果的に防止することができる。
【0042】
前記エポキシ樹脂の中でも、接着フィルムの溶融粘度を0.01〜100,000Pa・sの範囲に調整することと接着フィルムの作業性(タック性、屈曲性)を両立することが容易である、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。
【0043】
(B)硬化剤
本発明に係る(B)硬化剤は、特に限定されるわけではなく、使用する(A)熱硬化性樹脂の種類により、適宜選択することができる。前記硬化剤(B)としては、例えば、フェノール類、アミン類、チオール類、酸無水物類、イソシアナート類、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられ1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記(A)熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合、前記(B)硬化剤としてはフェノール類が好ましい。(B)硬化剤としてフェノール類を使用することにより、硬化後の接着フィルムの耐熱性を高く、さらに、吸水率を低くすることができるため、多層回路基板、電子部品及び半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0045】
前記フェノール類としては、特に限定されるわけではないが、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、ビスフェノールF型ノボラック樹脂、ビスフェノールAF型ノボラック樹脂等が挙げられるが、接着フィルムの硬化物のガラス転移温度を効果的に高めることができ、また、アウトガスとなる成分を低減することができる、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂が好ましい。
【0046】
前記フェノールノボラック樹脂またはクレゾールノボラック樹脂は、1核体から3核体の合計の含有量が、30〜70%であることが好ましい。これにより、接着フィルムの硬化物のガラス転移温度を高めること、および、アウトガスとなるフェノール系ノボラック樹脂の量を低減することができ、耐イオンマイグレーション性を向上させることが可能となる。また、接着フィルムに適度な柔軟性を付与することができるため、接着フィルムの脆性を改善することが可能となる。さらに、接着フィルムに適度なタック性を付与することができるため、作業性に優れた接着フィルムを得ることができる。
【0047】
前記1核体から3核体の合計の含有量が30%より小さい(4核体以上の合計の含有量が70%以上)場合、前記エポキシ樹脂との反応性が低下し、接着フィルムの硬化物中に未反応のフェノール系ノボラック樹脂が残留するため、耐マイグレーション性が低下、また、接着フィルムが脆くなり作業性が低下する可能性がある。また、前記1核体から3核体の合計の含有量が70%より大きい(4核体以上の合計の含有量が30%以下)場合、接着フィルムを硬化させる際のアウトガス量が増大し、支持体または被着体の表面を汚染してしまったり、耐マイグレーション性が低下してしまったり、さらに、接着フィルムのタック性が大きくなり、接着フィルムの作業性が低下する可能性がある。
【0048】
前記フェノールノボラック樹脂またはクレゾールノボラック樹脂中の2核体と3核体の合計の含有量は、特に限定されるわけではないが、30〜70%であることが好ましい。
上記下限値以上とすることで、接着フィルムを硬化させる際のアウトガス量が増大し、支持体または被着体の表面を汚染してしまうことをより効果的に防止することができる。また、上記上限値以下とすることで、接着フィルムの柔軟性と屈曲性をより効果的に確保することができる。
【0049】
前記フェノールノボラック樹脂またはクレゾールノボラック樹脂中の1核体の含有量は、特に限定されるわけではないが、接着フィルム中に1%以下であることが好ましく、0.8%以下であることが特に好ましい。前記1核体の含有量を、上記範囲とすることで、接着フィルムを硬化する際のアウトガス量を低減することができ、支持体または被着体の汚染を抑制することができ、さらに、耐マイグレーション性を向上することができる。
【0050】
前記フェノールノボラック樹脂またはクレゾールノボラック樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるわけではないが、300〜1,500であることが好ましく、400〜1,400であることが特に好ましい。上記下限値以上とすることで、接着フィルムを硬化させる際のアウトガス量が増大し、支持体または被着体の表面を汚染してしまうことをより効果的に防止することができる。また。上記上限値以下とすることで、接着フィルムの柔軟性と屈曲性をより効果的に確保することができる。
【0051】
本発明の接着フィルムは、(C)フラックス機能を有する化合物を含む。これにより、支持体の第一の端子および被着体の第二の端子の少なくとも一方の半田表面の酸化膜を除去すること、また、場合によっては、支持体の第一の端子または被着体の第二の端子表面の酸化膜を除去することができ、確実に前記第一の端子と前記第二の端子を半田接合することができるため、接続信頼性の高い多層回路基板、電子部品、半導体装置等を得ることができる。
【0052】
前記(C)フラックス機能を有する化合物としては、半田表面の酸化膜を除去する働きがあれば、特に限定されるものではないが、カルボキシル基又はフェノール性水酸基のいずれか、あるいは、カルボキシル基及びフェノール水酸基の両方を備える化合物が好ましい。
【0053】
前記(C)フラックス機能を有する化合物の配合量は、1〜30重量%が好ましく、3〜20重量%が特に好ましい。(C)フラックス機能を有する化合物の配合量が、上記範囲であることにより、フラックス活性を向上させることができるとともに、接着フィルムを硬化した際に、未反応の(A)熱硬化性樹脂、(C)フラックス機能を有する化合物が残存し、接着フィルムを熱硬化させる際にアウトガスになることを防止することができ、耐マイグレーション性を向上することができる。
【0054】
また、エポキシ樹脂の硬化剤として作用する化合物の中には、(C)フラックス機能を有する化合物が存在する(以下、このような化合物を、フラックス活性硬化剤とも記載する。)。
例えば、エポキシ樹脂の硬化剤として作用する、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等は、フラックス作用も有している。本発明では、このような、フラックスとしても作用し、エポキシ樹脂の硬化剤としても作用するようなフラックス活性硬化剤を、好適に用いることができる。
【0055】
なお、カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物とは、分子中にカルボキシル基が1つ以上存在するものをいい、液状であっても固体であってもよい。また、フェノール性水酸基を備える(C)フラックス機能を有する化合物とは、分子中にフェノール性水酸基が1つ以上存在するものをいい、液状であっても固体であってもよい。また、カルボキシル基及びフェノール性水酸基を備える(C)フラックス機能を有する化合物とは、分子中にカルボキシル基及びフェノール性水酸基がそれぞれ1つ以上存在するものをいい、液状であっても固体であってもよい。
【0056】
これらのうち、カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物としては、脂肪族酸無水物、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等が挙げられる。
【0057】
前記カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物に係る脂肪族酸無水物としては、無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物等が挙げられる。
【0058】
前記カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物に係る脂環式酸無水物としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0059】
前記カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物に係る芳香族酸無水物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート等が挙げられる。
【0060】
前記カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物に係る脂肪族カルボン酸としては、下記一般式(1)で示される化合物や、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸等が挙げられる。
HOOC−(CH−COOH (1)
(式(1)中、nは、1以上20以下の整数を表す。)
【0061】
前記脂肪族カルボン酸のうち、(C)フラックス機能を有する化合物が有する活性度、接着フィルムの硬化時におけるアウトガスの発生量、及び硬化後の接着フィルムの弾性率やガラス転移温度等のバランスが良い点で、前記一般式(1)で示される化合物が好ましい。そして、前記一般式(1)で示される化合物のうち、式(1)中のnが3〜10である化合物が、硬化後の接着フィルムにおける弾性率が増加するのを抑制することができるとともに、支持体と被着体の接着性を向上させることができる点で、特に好ましい。
【0062】
前記一般式(1)で示される化合物のうち、式(1)中のnが3〜10である化合物としては、例えば、n=3のグルタル酸(HOOC−(CH−COOH)、n=4のアジピン酸(HOOC−(CH−COOH)、n=5のピメリン酸(HOOC−(CH−COOH)、n=8のセバシン酸(HOOC−(CH−COOH)及びn=10のHOOC−(CH10−COOH−等が挙げられる。
【0063】
前記カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物に係る芳香族カルボン酸としては、例えば、下記一般式(3)または(4)で表される(C)フラックス機能を有する化合物が挙げられる。
【0064】
【化3】


[式中、R〜Rは、それぞれ独立して、1価の有機基であり、R〜Rの少なくとも一つは水酸基である。]
【0065】
【化4】


[式中、R〜R20は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、R〜R20の少なくとも一つは水酸基又はカルボキシル基である。]
【0066】
前記芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリット酸、トリイル酸、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、トルイル酸、ケイ皮酸、サリチル酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、浸食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキ
シ−2−ナフトエ酸等のナフトエ酸誘導体、フェノールフタリン、ジフェノール酸等が挙げられる。
【0067】
前記一般式(3)または(4)で表される(C)フラックス機能を有する化合物の中でも、硬化後のエポキシ樹脂の三次元的なネットワークの形成を向上させるという観点からは、1分子中に、エポキシ樹脂に付加することができる2つ以上のフェノール性水酸基と、フラックス作用(還元作用)を示す芳香族に直接結合した1つ以上のカルボキシル基とを備える化合物が好ましい。このようなフラックス活性硬化剤としては、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)等の安息香酸誘導体;1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,7−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸等のナフトエ酸誘導体;フェノールフタリン;及びジフェノール酸等が挙げられ、これらは1種単独又は2種以上を組み合わせでもよい。これらの中でも、半田表面の酸化膜を除去する効果とエポキシ樹脂との反応性に優れる、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸、フェノールフタリンが好ましい。
【0068】
前記フェノール性水酸基を備える(C)フラックス機能を有する化合物としては、フェノール類が挙げられ、具体的には、例えば、フェノール、o−クレゾール、2,6−キシレノール、p−クレゾール、m−クレゾール、o−エチルフェノール、2,4−キシレノール、2,5キシレノール、m−エチルフェノール、2,3−キシレノール、メジトール、3,5−キシレノール、p−ターシャリブチルフェノール、カテコール、p−ターシャリアミルフェノール、レゾルシノール、p−オクチルフェノール、p−フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAF、ビフェノール、ジアリルビスフェノールF、ジアリルビスフェノールA、トリスフェノール、テトラキスフェノール等のフェノール性水酸基を含有するモノマー類等が挙げられる。
【0069】
また、接着フィルム中、フラックス活性硬化剤の配合量は、1〜30重量%が好ましく、3〜20重量%が特に好ましい。接着フィルム中のフラックス活性硬化剤の配合量が、上記範囲であることにより、接着フィルムのフラックス活性を向上させることができるとともに、接着フィルム中に、エポキシ樹脂と未反応のフラックス活性硬化剤が残存するのが防止される。なお、未反応のフラックス活性硬化剤が残存すると、マイグレーションが発生する。
【0070】
前記(A)熱硬化性樹脂と(C)フラックス機能を有する化合物の配合比は、特に限定されるわけではないが、((A)/(C))が0.5〜20.0であることが好ましく、1〜18であることが特に好ましく、2〜15であることがさらに好ましい。((A)/(C))を上記下限値以上とすることで、接着フィルムを硬化させる際に、アウトガスとなる(C)フラックス化合物を低減することができるため、接着フィルム中のボイドを低減することができる。また、((A)/(C))を上記上限値以下とすることで、被着体、支持体の端子表面や半田表面の酸化膜を効果的に除去することができる。
【0071】
本発明の接着フィルムは、接着フィルムの成膜性を向上する(D)成膜性樹脂を含む。
これにより、フィルム状態にするのが容易となる。また、接着フィルムの機械的特性にも優れる。
【0072】
前記(D)成膜性樹脂としては、特に限定されるわけではないが、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シロキサン変性ポリイミド樹脂、ポリブタジエン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ナイロン等を挙げることができる。これらは、1種で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも、(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂及びポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0073】
前記(D)成膜性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるわけではないが、1万以上が好ましく、より好ましくは2万〜100万、更に好ましくは3万〜90万である。重量平均分子量が前記範囲であると、接着フィルムの成膜性をより向上させることができる。
前記(D)成膜性樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記接着フィルム中の5〜70重量%が好ましく、10〜60重量%がより好ましく、特に15〜55重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、接着フィルムの流動性を抑制することができ、接着フィルムの取り扱いが容易になる。
【0074】
また、前記接着フィルムは、(E)硬化促進剤を更に含んでもよい。(E)硬化促進剤は硬化性樹脂の種類等に応じて適宜選択することができる。(E)硬化促進剤としては、例えば、トリ置換ホスホニオフェノラートまたはその塩、融点が150℃以上のイミダゾール化合物等を挙げることができるが、添加量が少ない状態で接着フィルムの硬化性を効果的に向上させることができるが、融点が150℃以上のイミダゾール化合物が好ましい。前記イミダゾール化合物の融点が150℃以上であると、接着フィルムの硬化が完了する前に、被着体の端子と支持体の端子を接合することができる。融点が150℃以上のイミダゾール化合物としては、2−フェニルヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4−メチルヒドロキシイミダゾール等が挙げられる。
【0075】
前記(E)硬化促進剤の含有量は、特に限定されるわけではないが、接着フィルム中0.005〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜5重量%である。イミダゾール化合物の配合量を前記下限値以上とすることにより、(E)硬化促進剤としての機能を更に効果的に発揮させて、接着フィルムの硬化性を向上させることができる。また、イミダゾールの配合量を前記上限値以下とすることにより、接着フィルムが硬化する前に被着体の端子と支持体の端子を確実に接合することができ、さらに、接着フィルムの保存性の低下を防止することができる。これらの(E)硬化促進剤は、1種で用いて
もよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
また、前記接着フィルムは、(F)シランカップリング剤を更に含んでもよい。(F)シランカップリング剤を含むことにより、半導体チップ、基板等の支持体または被着体に対する接着フィルムの密着性を高めることができる。(F)シランカップリング剤としては、例えば、エポキシシランカップリング剤、芳香族含有アミノシランカップリング剤等が使用できる。これらは1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。(F)シランカップリング剤の配合量は、適宜選択すればよいが、前記樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.05〜5重量%であり、更に好ましくは0.1〜2重量%である。
【0077】
前記接着フィルムは、(G)充填材を更に含んでも良い。これにより、接着フィルムの線膨張係数を低下すること、また、接着フィルムの最低溶融粘度を0.01〜100,000Pa・sの範囲に調整することできる。
【0078】
前記(G)充填材としては、例えば、銀、酸化チタン、シリカ、マイカ等を挙げることができるが、これらの中でもシリカが好ましい。また、シリカフィラーの形状としては、破砕シリカと球状シリカ等があるが、球状シリカが好ましい。
【0079】
前記(G)充填材の平均粒径は、特に限定されないが、0.01μm以上、20μm以下が好ましく、0.1μm以上、5μm以下が特に好ましい。上記範囲とすることで、接着フィルム内で(G)充填材の凝集を抑制し、外観を向上させることができる。
【0080】
前記(G)充填材の含有量は、特に限定されないが、前記接着フィルム中3〜70重量%が好ましく、特に5〜60重量%が好ましく、8〜55重量%が特に好ましい。充填材の含有量を上記下限値以上とするで、硬化後の接着フィルムと被接着物との間の線膨張係数差が小さくなり、熱衝撃の際に発生する応力を低減させることができるため、被接着物の剥離をさらに確実に抑制することができる。また、充填材の含有量を上記上限値以下とすることで、硬化後の接着フィルムの弾性率が高くなりすぎるのを抑制することができるため、半導体装置の信頼性が向上する。また、充填材の含有量を上記範囲とすることにより、接着フィルムの最低溶融粘度を0.01〜100,000Pa・sに調整するのが容易となる。
【0081】
上述したような各樹脂成分を、溶媒中に混合して得られたワニスをポリエステルシート等の剥離処理を施した基材上に塗布し、所定の温度で、実質的に溶媒を含まない程度にまで乾燥させることにより、接着フィルムを得ることができる。ここで用いられる溶媒は、使用される成分に対し不活性なものであれば特に限定されないが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、DIBK (ジイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、DAA(ジアセトンアルコール)等のケトン類、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DBE(ニ塩基酸エステル)、EEP(3−エトキシプロピオン酸エチル)、DMC(ジメチルカーボネート)等が好適に用いられる。溶媒の使用量は、溶媒に混合した成分の固形分が10〜60重量%となる範囲であることが好ましい。
【0082】
得られた接着フィルムの厚さは、特に限定されないが、1〜300μmであることが好ましく、特に5〜200μmであることが好ましい。厚さが前記範囲内であると、接合部の間隙に樹脂成分を十分に充填することができ、樹脂成分の硬化後の機械的接着強度を確保することができる。
【0083】
このようにして得られた接着フィルムは、フラックス活性を有しているものである。したがって、本発明のダイシングテープ一体型接着シートは、半導体チップと基板、基板と基板、半導体チップと半導体チップ、半導体チップと半導体ウエハ、半導体ウエハと半導体ウエハ等の半田接続を必要とされる部材の接続において好適に用いることができるものである。
【0084】
また、本発明のダイシングテープ一体型接着シートは、上述した接着フィルム、ダイシングテープの他に、1つ以上の介在層を設けていてもよい。また、ダイシングテープ一体型接着シートの一方の面又は両面に1つ以上の外層を設けてもよい。介在層や外層としては、以下のような支持フィルムや粘着層等の基材が挙げられる。
【0085】
(支持フィルム)
支持フィルムとは、以上のようなダイシングテープおよび接着フィルムを支持する機能を有する支持体である。また、ダイシングテープ一体型接着シートの外層として設ける場合、汚染や衝撃から保護する保護フィルムとしての機能も有する。
【0086】
このような支持フィルムの構成材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン酢ビ共重合体、アイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、ビニルポリイソプレン、ポリカーボネート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が挙げられる。
【0087】
支持フィルムの平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、30〜150μm程度であるのがより好ましい。これにより、支持フィルムは、適度な剛性を有するものとなるため、ダイシングテープおよび接着フィルムを確実に支持して、ダイシングテープ一体型接着シートの取扱いを容易にするとともに、ダイシングテープ一体型接着シートが適度に湾曲することで、第一の端子を有する支持体との密着性を高めることができる。
【0088】
(粘着層)
粘着層は、一般的な粘着剤で構成されており、具体的には、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等を含む第二樹脂組成物で構成されている。
アクリル系粘着剤としては、例えば(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルで構成される樹脂、(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルと、それらと共重合可能な不飽和単量体(例えば酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等)との共重合体等が挙げられる。また、これらの樹脂を2種類以上混合してもよい。
【0089】
また、これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシルおよび(メタ)アクリル酸ブチルからなる群から選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルおよび酢酸ビニルの中から選ばれる1種以上との共重合体が好ましい。これにより、粘着層が粘着する相手(被着体)との密着性や粘着性の制御が容易になる。
【0090】
また、第二樹脂組成物には、粘着性(接着性)を制御するためにウレタンアクリレート、アクリレートモノマー、多価イソシアネート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート)等のイソシアネート化合物等のモノマーおよびオリゴマーを添加してもよい。
【0091】
さらに、第二樹脂組成物には、粘着層を紫外線等により硬化させる場合、光重合開始剤としてメトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾインイソブチルエーテル系化合物、ベンゾイン安息香酸メチル系化合物、ベンゾイン安息香酸系化合物、ベンゾインメチルエーテル系化合物、ベンジルフィニルサルファイド系化合物、ベンジル系化合物、ジベンジル系化合物、ジアセチル系化合物等を添加してもよい。
【0092】
また、第二樹脂組成物には、接着強度およびシェア強度を高める目的で、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族系石油樹脂等の粘着付与剤等を添加してもよい。
【0093】
このような粘着層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、特に3〜50μm程度であるのがより好ましい。かかる厚さが前記範囲内であると、特に、ダイシング時に剥離せず、ピックアップ時には引っ張り荷重に伴って比較的容易に剥離可能であり、さらに、ダイシング時やピックアップ時に変形を生じにくいため、ダイシング性、ピックアップ性に優れた層が得られる。
【0094】
(ダイシングテープ一体型接着シートの製造方法)
以上説明したようなダイシングテープ一体型接着シート10は、例えば以下のような方法で製造される。
【0095】
まず、図3(a)に示す基材4aを用意し、この基材4aの一方の面上に介在層1を成膜する。これにより、基材4aと介在層1との積層体61を得る。介在層1の成膜は、前述した第二樹脂組成物を含む樹脂ワニスを各種塗布法等により塗布し、その後塗布膜を乾燥させる方法や、第二樹脂組成物からなるフィルムをラミネートする方法等により行うことができる。また、紫外線等の放射線を照射することにより、塗布膜を硬化させるようにしてもよい。
【0096】
上記塗布法としては、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0097】
また、積層体61と同様にして、図3(a)に示すように、用意した基材4bの一方の面上に接着フィルム3を成膜し、これにより、基材4bと接着フィルム3との積層体62を得る。
【0098】
さらに、各積層体61、62と同様にして、図3(a)に示すように、用意した支持フィルム4の一方の面上にダイシングテープ2を成膜し、これにより、支持フィルム4とダイシングテープ2との積層体63を得る。
【0099】
次いで、図3(b)に示すように、介在層1と接着フィルム3とが接するように積層体61と積層体62とを積層し、積層体64を得る。この積層は、例えばロールラミネート法等により行うことができる。
【0100】
次いで、図3(c)に示すように、積層体64から基材4aを剥離する。そして、図3(d)に示すように、前記基材4aを剥離した積層体64に対して、基材4bを残して、前記接着フィルム3および前記介在層1の有効領域の外側部分を除去する。ここで、有効領域とは、その外周が、半導体ウエハー7の外径よりも大きく、かつ、ウエハーリング9の内径よりも小さい領域を指す。
【0101】
次いで、図3(e)に示すように、介在層1の露出面にダイシングテープ2が接するように、基材4aを剥離し有効領域の外側部分をリング状に除去した積層体64と積層体63を積層する。その後、基材4bを剥離することにより、図3(f)に示すダイシングテープ一体型接着シート10が得られる。
【0102】
支持フィルムに直接ダイシングテープ2を成膜する方法について上述したが、ダイシングテープを、介在層1、接着フィルム3と同様に、基材上に成膜して、それを接着フィルム3、介在層1と積層してダイシングテープ一体型接着シートを作製してもよい。
【0103】
なお、介在層1、ダイシングテープ2および接着フィルム3は、それぞれ異なる密着力を有しているが、それらは以下のような特性を有していることが好ましい。
【0104】
まず、介在層1の接着フィルム3に対する密着力は、ダイシングテープ2の支持フィルム4に対する密着力よりも小さいことが好ましい。これにより、後述する第3の工程において、個片83をピックアップした際に、ダイシングテープ2との支持フィルム4との間は剥離することなく、接着フィルム3と介在層1との間が選択的に剥離する。そして、ダイシングの際には、ウエハーリング9により積層体8を確実に支持し続けることができる。
【0105】
次に、上述したダイシングテープ一体型接着シートを用いた電子部品および半導体装置について説明する。
[1] 図1(a)に示すように、上述したようなダイシングテープ一体型接着シート10の接着フィルム3と、半導体ウエハー7とを密着させつつ、ダイシングテープ一体型接着シート10と半導体ウエハー(支持体)7とを積層する(第1の工程)。ここで、半導体ウエハー(支持体)7において、接着フィルム3と接着する面は、第一の端子(図示せず)を有するものである。なお、図1に示すダイシングテープ一体型接着シート10では、接着フィルム3の平面視における大きさおよび形状が、半導体ウエハー7の外径よりも大きく、かつ、ウエハーリング9の内径よりも小さい形状に、あらかじめ設定されている。このため、半導体ウエハー7の下面全体が接着フィルム3の上面全体と密着し、これにより半導体ウエハー7がダイシングテープ一体型接着シート10で支持されることとなる。 この半導体ウエハー7の第1の端子を接着フィルム3で覆うように、ダイシングテープ一体型接着シート10をラミネートする(図1(b))。
【0106】
ダイシングテープ一体型接着シート10を半導体ウエハー7に積層する方法としては、例えばロールラミネーター、平板プレス、ウエハーラミネーター等が挙げられる。
これらの中でもラミネート時に空気を巻き込まないようにするため、真空下でラミネートする方法(真空ラミネーター)が好ましい。
【0107】
また、ラミネートする条件としては、特に限定されず、ボイドなくラミネートできればよいが、具体的には60〜150℃で1秒〜120秒間加熱する条件が好ましく、特に80〜120℃で5〜60秒間加熱する条件が好ましい。ラミネート条件が前記範囲内であると、貼着性と、樹脂のはみ出しの抑制効果と、樹脂の硬化度とのバランスに優れる。
また、加圧条件も特に限定されないが、0.2〜2.0MPaが好ましく、特に0.5〜1.5MPaが好ましい。
【0108】
上記積層の結果、図1(b)に示すように、ダイシングテープ一体型接着シート10と半導体ウエハー7とが積層されてなる積層体8が得られる。
【0109】
[2]
[2−1]次に、ウエハーリング9を用意する。続いて、ダイシングテープ2の外周部21の上面とウエハーリング9の下面とが密着するように、積層体8とウエハーリング9とを積層する。これにより、積層体8の外周部がウエハーリング9により支持される。
【0110】
ウエハーリング9は、一般にステンレス鋼、アルミニウム等の各種金属材料等で構成されるため、剛性が高く、積層体8の変形を確実に防止することができる。
【0111】
[2−2]次に、図示しないダイサーテーブルを用意し、ダイサーテーブルと支持フィルム4とが接触するように、ダイサーテーブル上に積層体8を載置する。
【0112】
続いて、図1(c)に示すように、ダイシングブレード82を用いて積層体8に複数の切り込み81を形成する(ダイシング)。ダイシングブレード82は、円盤状のダイヤモンドブレード等で構成されており、これを回転させつつ積層体8の半導体ウエハー7側の面に押し当てることで切り込み81が形成される。そして、半導体ウエハー7に形成された回路パターン同士の間隙に沿って、ダイシングブレード82を相対的に移動させることにより、半導体ウエハー7が複数の半導体素子71に個片化される(第2の工程)。また、接着フィルム3も同様に、複数の接着フィルム31に個片化される。このようなダイシングの際には、半導体ウエハー7に振動や衝撃が加わるが、半導体ウエハー7の下面がダイシングテープ一体型接着シート10で支持されているため、上記の振動や衝撃が緩和されることとなる。その結果、半導体ウエハー7における割れや欠け等の不具合の発生を確実に防止することができる。
【0113】
第2の工程において、ダイシングブレード82の先端が粘着層内に留まるように、削り深さを設定してもよい。換言すれば、切り込み81の先端が支持フィルム4に到達することなく、介在層1内またはダイシングテープ2内のいずれかに留まるようにダイシングを行う。このようにすれば、支持フィルム4の削り屑は発生し得ないため、削り屑の発生に伴う問題が確実に解消されることとなる。すなわち、半導体素子71をピックアップする際には、引っ掛かり等の発生が防止され、ピックアップした半導体素子71を被着体5にマウントする際には、異物の侵入および半田接合の不良が防止される。その結果、半導体装置100の製造歩留まりが向上するとともに、信頼性の高い半導体装置100を得ることができる。
【0114】
[3]
[3−1]次に、複数の切り込み81が形成された積層体8を、図示しないエキスパンド装置により、放射状に引き延ばす(エキスパンド)。これにより、図1(d)に示すように、積層体8に形成された切り込み81の幅が広がり、それに伴って個片化された半導体素子71同士の間隔も拡大する。その結果、半導体素子71同士が干渉し合うおそれがなくなり、個々の半導体素子71をピックアップし易くなる。なお、エキスパンド装置は、このようなエキスパンド状態を後述する工程においても維持し得るよう構成されている。
【0115】
[3−2]次に、ダイボンダー250により、個片化された半導体素子71のうちの1つを、ダイボンダーのコレット(チップ吸着部)260で吸着するとともに上方に引き上げる。その結果、図2(e)に示すように、接着フィルム31と介在層1との界面が選択的に剥離し、半導体素子71と接着フィルム31とが積層されてなる個片83がピックアップされる(第3の工程)。
【0116】
なお、接着フィルム31と介在層1との界面が選択的に剥離する理由は、前述したように、ダイシングテープ2の粘着性が介在層1の粘着性より高いため、支持フィルム4とダイシングテープ2との界面の密着力、および、ダイシングテープ2の介在層1との界面の粘着力は、介在層1と接着フィルム3との密着力より大きいからである。すなわち、半導体素子71を上方にピックアップした場合、これらの3箇所のうち、最も粘着力の小さい介在層1と接着フィルム3との界面が選択的に剥離することとなる。
【0117】
また、個片83をピックアップする際には、ダイシングテープ一体型接着シート10の下方から、突き上げ装置400により、ピックアップすべき個片83を選択的に突き上げるようにしてもよい。これにより、積層体8から個片83が突き上げられるため、前述した個片83のピックアップをより容易に行うことができるようになる。なお、個片83の突き上げには、ダイシングテープ一体型接着シート10を下方から突き上げる針状体(ニードル)等が用いられる(図示せず)。
【0118】
[4]
[4−1]次に、半導体素子(チップ)71を搭載(マウント)するための被着体5を用意する。
【0119】
この被着体5は、前記接着フィルム3と接着する面に第2の端子(図示せず)を有するものである。この被着体5としては、半導体素子71を搭載し、半導体素子71と外部とを電気的に接続するための配線を有する基板や半導体素子等が挙げられる。
【0120】
なお、第一の端子と第二の端子としては、例えばパッド部、半田バンプ等が挙げられる。また、第一の端子、第二の端子の少なくとも一方に半田が存在することが好ましい。
【0121】
次いで、図2(f)に示すように、ピックアップされた個片83を、被着体5上に載置する。この際、半導体ウエハー(支持体)7の第一の端子と、被着体5の第二の端子とを位置合わせしながら、接着フィルム3を介して仮圧着する。
【0122】
[4−2]次に、被着体5と半導体素子71を半田接合する(第4の工程)。 半田接続する条件は、使用する半田の種類にもよるが、例えばSn−Agの場合、220〜260℃で5〜500秒間加熱して半田接続することが好ましく、特に230〜240℃で10〜100秒間加熱することが好ましい。
この半田接合は、半田が融解した後に、接着フィルム3が硬化するような条件で行うことが好ましい。すなわち、半田接合は、半田を融解させるが、接着フィルム3の硬化反応があまり進行させないような条件で実施することが好ましい。これにより、半田接続する際の半田接続部の形状を接続信頼性に優れるような安定した形状とすることができる。
【0123】
次に、接着フィルム3を加熱して硬化させる(第5の工程)。硬化させる条件は、特に限定されないが、130〜220℃で30〜500分間加熱する条件が好ましく、特に150〜200℃で60〜180分間加熱する条件が好ましい。
【0124】
以上のような方法によれば、第3の工程において、半導体素子71に接着フィルム31が付着した状態、すなわち個片83の状態でピックアップされることから、第4の工程において、この接着フィルム31をそのまま被着体5との接着に利用することができる。このため、本発明のダイシングテープ一体型接着シートを用いることにより、別途アンダーフィル等を用意する必要がなく、半導体素子(支持体)71と被着体5を半田を用いて電気的に接続した半導体装置100の製造効率をより高めることができる。
【0125】
なお、支持体7および被着体5としては、たとえば、チップ、基板(回路基板)、ウエハー等が挙げられる。支持体7および被着体5としてそれぞれ回路基板を用いる場合、接着フィルム2の硬化物で接合した多層回路基板を得ることができる。また、支持体7および被着体5としてそれぞれ半導体チップを用いる場合、接着フィルム2の硬化物で接着されている電子部品を得ることができる。
【0126】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0127】
(実施例1)
<粘着層の形成>
アクリル酸2−エチルヘキシル30重量%と酢酸ビニル70重量%とを共重合して得られた重量平均分子量300,000の共重合体100重量部と、分子量が700の5官能アクリレートモノマー45重量部と、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン5重量部と、トリレンジイソシアネート(コロネートT−100、日本ポリウレタン工業(株)製)3重量部と、を剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルムに対して、乾燥後の厚さが10μmになるように塗布し、その後、80℃で5分間乾燥した。そして、得られた塗布膜に対して紫外線500mJ/cmを照射し、ポリエステルフィルム上に粘着層を成膜した。
【0128】
<ダイシングテープの形成>
アクリル酸ブチル70重量%とアクリル酸2−エチルヘキシル30重量%とを共重合して得られた重量平均分子量500,000の共重合体100重量部と、トリレンジイソシアネート(コロネートT−100、日本ポリウレタン工業(株)製)3重量部と、を剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルムに対して、乾燥後の厚さが10μmになるように塗布し、その後、80℃で5分間乾燥した。そして、ポリエステルフィルム上にダイシングテープを成膜した。その後、支持フィルムとして厚さ100μmのポリエチレンシートをラミネートした。
【0129】
<接着フィルム用ワニスの調製>
(A)熱硬化性樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、EPICLON−830LVP)55.0重量部と、(B)硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(三井化学社製、VR−9305)30.8重量部と、(C)フラックス機能を有する化合物としてセバシン酸(東京化成工業社製)3.0重量部と、(D)成膜性樹脂としてビスフェノールF型フェノキシ樹脂(東都化成社製、YP−70)10.0重量部と、(E)硬化促進剤として2―フェニルー4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、2P4MZ)0.2重量部と、(F)シランカップリング剤としてβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−303)1.0重量部とを、メチルエチルケトンに溶解し、樹脂濃度50%の樹脂ワニスを調製した。
【0130】
<接着フィルムの製造>
得られた樹脂ワニスを、基材ポリエステルフィルム(東レ株式会社製、ルミラー)に厚さ50μmとなるように塗布して、100℃、5分間乾燥して、厚さ25μmの接着フィルムを得た。
【0131】
<ダイシングテープ一体型接着シートの製造>
粘着側のポリエステルフィルムを剥離して、粘着層を成膜したフィルムと、接着フィルムを成膜したフィルムとを、粘着層と接着フィルムとが接するようにラミネート(積層)し、積層体を得た。
【0132】
次に、ロール状の金型を用いて、粘着層と接着フィルムを半導体ウエハーの外径よりも大きく、かつウエハーリングの内径よりも小さく打ち抜き、その後不要部分を除去して、第2積層体を得た。
【0133】
さらに、ダイシングテープの一方の面側にあるポリエステルフィルムを剥離した。そして、前記第2積層体の粘着層とダイシングテープとが接するように、これらを積層した。これにより、ポリエチレンシート(支持フィルム)、ダイシングテープ、粘着層(介在層)、接着フィルムおよびポリエステルフィルムの5層がこの順で積層してなるダイシングテープ一体型接着シートを得た。
【0134】
<半導体装置の製造>
半田バンプを有するシリコンウエハー(直径8インチ、厚さ100μm)を用意した。ダイシングテープ一体型接着シートからポリエステルフィルムを剥離し、その剥離面と、シリコンウエハーの半田バンプを有する面が接するように、ダイシングテープ一体型接着シートとシリコンウエハーを積層した。これを真空ロールラミネーターで、100℃でラミネートして、ダイシングテープ一体型接着シート付きのシリコンウエハーを得た。
【0135】
次いで、このダイシングテープ一体型接着シート付きのシリコンウエハーをシリコンウエハー側から、ダイシングソー(DFD6360、(株)ディスコ製)を用いて以下の条件でダイシング(切断)した。これにより、シリコンウエハーが個片化され、以下のダイシングサイズの半導体素子を得た。
【0136】
<ダイシング条件>
ダイシングサイズ :10mm×10mm角
ダイシング速度 :50mm/sec
スピンドル回転数 :40,000rpm
ダイシング最大深さ :0.130mm(シリコンウエハーの表面からの切り込み量)
ダイシングブレードの厚さ:15μm
切り込みの横断面積 :7.5×10−5mm(接着フィルムと介在層との界面より先端側の部分の横断面積)
【0137】
なお、このダイシングにより形成された切り込みは、その先端が介在層内に達していた。
【0138】
次いで、半導体素子の1つを半導体用フィルムの裏面からニードルで突き上げ、突き上げた半導体素子の表面をダイボンダーのコレットで吸着しつつ上方に引き上げた。これにより、接着フィルム付き半導体素子をピックアップした。
【0139】
次に、パッドを有する回路基板のパッドと、半田バンプとが当接するように位置あわせを行いながら回路基板に半導体素子を100℃、30秒間で仮圧着した。
次に、235℃、30秒間加熱して、半田バンプを溶融させて半田接続を行った。
そして、180℃、60分間加熱して、接着フィルムを硬化させて、半導体素子と、回路基板とが接着フィルムの硬化物で接着された半導体装置を得た。
【0140】
(実施例2)
接着フィルム用ワニスおよび接着フィルムを下記のとおり製造した点以外は実施例1と同様にしてダイシングテープ一体型接着シートおよび半導体装置の製造を行った。
<接着フィルム用ワニスの調製>
(A)熱硬化性樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、EPICLON−840S)50.0重量部と、(B)硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(三井化学社製、VR−9305)25.5重量部と、(C)フラックス機能を有する化合物としてセバシン酸(東京化成工業社製)3.0重量部と、(D)成膜性樹脂としてビスフェノールF型フェノキシ樹脂(東都化成社製、YP−70)20.0重量部と、(E)硬化促進剤として2―フェニルー4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、2P4MZ)0.5重量部と、(F)シランカップリング剤としてβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−303)1.0重量部とを、メチルエチルケトンに溶解し、樹脂濃度50%の樹脂ワニスを調製した以外は、実施例1と同様に接着フィルムの製造を行った。
【0141】
(実施例3)
接着フィルム用ワニスおよび接着フィルムを下記のとおり製造した点以外は実施例1と同様にしてダイシングテープ一体型接着シートおよび半導体装置の製造を行った。
<接着フィルム用ワニスの調製>
(A)熱硬化性樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、EOCN−1020−70)20.0重量部と、(B)硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、PR55617)15.0重量部と、(C)フラックス機能を有する化合物としてセバシン酸(東京化成工業社製)3.0重量部と、(D)成膜性樹脂としてビスフェノールA型フェノキシ樹脂(東都化成社製、YP−50)60.0重量部と、(E)硬化促進剤として2―フェニルー4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、2P4MZ)1.0重量部と、(F)シランカップリング剤としてβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−303)1.0重量部とを、メチルエチルケトンに溶解し、樹脂濃度50%の樹脂ワニスを調製した以外は、実施例1と同様に接着フィルムの製造の製造を行った。
【0142】
(実施例4)
接着フィルム用ワニスおよび接着フィルムを下記のとおり製造した点以外は実施例1と同様にしてダイシングテープ一体型接着シートおよび半導体装置の製造を行った。
<接着フィルム用ワニスの調製>
(A)熱硬化性樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、EOCN−1020−70)15.0重量部と、(B)硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、PR55617)8.0重量部と、(C)フラックス機能を有する化合物としてフェノールフタリン(東京化成工業社製)6.0重量部と、(D)成膜性樹脂としてビスフェノールA型フェノキシ樹脂(東都化成社製、YP−50)46.0重量部と、(G)充填材として球状シリカフィラー(アドマテックス社製、SC1050−LC、平均粒径0.25μm)23.0重量部と、(E)硬化促進剤として2―フェニルー4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、2P4MZ)1.0重量部と、(F)シランカップリング剤としてβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−303)1.0重量部とを、メチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度40%の樹脂ワニスを調製した以外は、実施例1と同様に接着フィルムの製造を行った。
【0143】
(実施例5)
接着フィルム用ワニスおよび接着フィルムを下記のとおり製造した点以外は実施例1と同様にしてダイシングテープ一体型接着シートおよび半導体装置の製造を行った。
<接着フィルム用ワニスの調製>
(A)熱硬化性樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、EOCN−1020−70)13.0重量部と、(B)硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、PR55617)6.0重量部と、(C)フラックス機能を有する化合物としてフェノールフタリン(東京化成工業社製)5.0重量部と、(D)成膜性樹脂としてビスフェノールA型フェノキシ樹脂(東都化成社製、YP−50)39.0重量部と、(G)充填材として球状シリカフィラー(アドマテックス社製、SC1050−LC、平均粒径0.25μm)36.0重量部と、(E)硬化促進剤として2―フェニルー4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、2P4MZ)0.5重量部と、(F)シランカップリング剤としてβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−303)0.5重量部とを、メチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度30%の樹脂ワニスを調製した以外は、実施例1と同様に接着フィルムの製造を行った。
【0144】
(実施例6)
接着フィルム用ワニスおよび接着フィルムを下記のとおり製造した点以外は実施例1と同様にしてダイシングテープ一体型接着シートおよび半導体装置の製造を行った。
<接着フィルム用ワニスの調製>
(A)熱硬化性樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、EOCN−1020−70)9.0重量部と、(B)硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、PR55617)4.0重量部と、(C)フラックス機能を有する化合物としてフェノールフタリン(東京化成工業社製)4.0重量部と、(D)成膜性樹脂としてアクリル酸エステル共重合樹脂(ナガセケムテックス社製、SG−P3)27.0重量部と、(G)充填材として球状シリカフィラー(アドマテックス社製、SC1050−LC、平均粒径0.25μm)55.0重量部と、(E)硬化促進剤として2―フェニルー4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、2P4MZ)0.5重量部と、(F)シランカップリング剤としてβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−303)0.5重量部とを、メチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度20%の樹脂ワニスを調製した以外は、実施例1と同様に接着フィルムの製造を行った。
【0145】
(実施例7)
接着フィルム用ワニスおよび接着フィルムを下記のとおり製造した点以外は実施例1と同様にしてダイシングテープ一体型接着シートおよび半導体装置の製造を行った。
<接着フィルム用ワニスの調製>
(A)熱硬化性樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、EPICLON−830LVP)55.0重量部と、(B)硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(三井化学社製、VR−9305)31.8重量部と、(C)フラックス機能を有する化合物としてセバシン酸(東京化成工業社製)2.0重量部と、(D)成膜性樹脂としてビスフェノールF型フェノキシ樹脂(東都化成社製、YP−70)10.0重量部と、(E)硬化促進剤として2―フェニルー4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、2P4MZ)0.2重量部と、(F)シランカップリング剤としてβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−303)1.0重量部とを、メチルエチルケトンに溶解し、樹脂濃度50%の樹脂ワニスを調製した以外は、実施例1と同様に接着フィルムの製造を行った。
【0146】
(実施例8)
接着フィルム用ワニスおよび接着フィルムを下記のとおり製造した点以外は実施例1と同様にしてダイシングテープ一体型接着シートおよび半導体装置の製造を行った。
<接着フィルム用ワニスの調製>
(A)熱硬化性樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、EOCN−1020−70)15.0重量部と、(B)硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(三井化学社製、VR−9305)5.0重量部と、(C)フラックス機能を有する化合物としてセバシン酸(東京化成工業社製)60.0重量部と、(D)成膜性樹脂としてビスフェノールA型フェノキシ樹脂(東都化成社製、YP−50)18.0重量部と、(E)硬化促進剤である2―フェニルー4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、2P4MZ)1.0重量部と、(F)シランカップリング剤としてβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−303)1.0重量部とを、メチルエチルケトンに溶解し、樹脂濃度50%の樹脂ワニスを調製した以外は、実施例1と同様に接着フィルムの製造を行った。
【0147】
(実施例9)
接着フィルム用ワニスおよび接着フィルムを下記のとおり製造した点以外は実施例1と同様にしてダイシングテープ一体型接着シートおよび半導体装置の製造を行った。
<接着フィルム用ワニスの調製>
(A)熱硬化性樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、EPICLON−840S)22.0重量部と、(B)硬化剤として4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化社製、リカシットMH)12.5重量部と、(C)フラックス機能を有する化合物としてフェノールフタリン(東京化成工業社製)6.0重量部と、(D)成膜性樹脂としてビスフェノールF型フェノキシ樹脂(東都化成社製、YP−70)9.0重量部と、(E)硬化促進剤である2―フェニルー4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、2P4MZ)0.1重量部と、(F)シランカップリング剤としてβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−303)0.4重量部と、(G)充填材として球状シリカフィラー(アドマテックス社製、SC1050−LC、平均粒径0.25μm)50.0重量部とを、メチルエチルケトンに溶解し、樹脂濃度50%の樹脂ワニスを調製した以外は、実施例1と同様に接着フィルムの製造を行った。
【0148】
(実施例10)
接着フィルム用ワニスおよび接着フィルムを下記のとおり製造した点以外は実施例1と同様にしてダイシングテープ一体型接着シートおよび半導体装置の製造を行った。
<接着フィルム用ワニスの調製>
(A)熱硬化性樹脂としてイソシアヌル酸エチレングリコール変性トリアクレート(東亜合成社製、M−315)16.5重量部と、(B)硬化剤としてt−ブチルパーオキシペンゾエート(日油社製、パーチブルZ)0.5重量部と、(C)フラックス機能を有する化合物としてフェノールフタリン(東京化成工業社製)2.0重量部と、(D)成膜性樹脂としてポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製、BX−1)5.5重量部と、(F)シランカップリング剤としてβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−303)0.5重量部と、(G)充填材として球状シリカフィラー((アドマテックス社製、SC1050−LC、平均粒径0.25μm)75.0重量部とを、メチルエチルケトンに溶解し、樹脂濃度20%の樹脂ワニスを調製した以外は、実施例1と同様に接着フィルムの製造を行った。
【0149】
(比較例1)
接着フィルム用ワニスおよび接着フィルムを下記のとおり製造した点以外は実施例1と同様にしてダイシングテープ一体型接着シートおよび半導体装置の製造を行った。
<接着フィルム用ワニスの調製>
(A)熱硬化性樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、EPICLON−830LVP)59.0重量部と、(B)硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(三井化学社製、VR−9305)34.9重量部と、(C)フラックス機能を有する化合物としてセバシン酸(東京化成工業社製)3.0重量部と、(D)成膜性樹脂としてビスフェノールF型フェノキシ樹脂(東都化成社製、YP−70)2.0重量部と、(E)硬化促進剤である2―フェニルー4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、2P4MZ)0.1重量部と、(F)シランカップリング剤としてβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−303)1.0重量部とを、メチルエチルケトンに溶解し、樹脂濃度50%の樹脂ワニスを調製した以外は、実施例1と同様に接着フィルムの製造を行った。
【0150】
(比較例2)
接着フィルム用ワニスおよび接着フィルムを下記のとおり製造した点以外は実施例1と同様にしてダイシングテープ一体型接着シートおよび半導体装置の製造を行った。
<接着フィルム用ワニスの調製>
(A)熱硬化性樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、EOCN−1020−70)20.0重量部と、(B)硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、PR55167)10.0重量部と、(C)フラックス機能を有する化合物としてフェノールフタリン(東京化成工業社製)8.0重量部と、(D)成膜性樹脂としてアクリル酸エステル共重合樹脂(ナガセケムテックス社製、SG−P3)60.0重量部と、(E)硬化促進剤である2―フェニルー4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、2P4MZ)1.0重量部と、(F)シランカップリング剤としてβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−303)1.0重量部とを、メチルエチルケトンに溶解し、樹脂濃度50%の樹脂ワニスを調製した以外は、実施例1と同様に接着フィルムの製造を行った。
【0151】
(比較例3)
接着フィルム用ワニスおよび接着フィルムを下記のとおり製造した点以外は実施例1と同様にしてダイシングテープ一体型接着シートおよび半導体装置の製造を行った。
<接着フィルム用ワニスの調製>
(A)熱硬化性樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、EPICLON−830LVP)42.0重量部と、(B)硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(三井化学社製、VR−9305)30.0重量部と、(C)フラックス機能を有する化合物としてセバシン酸(東京化成工業社製)3.0重量部と、(D)成膜性樹脂としてアクリル酸エステル共重合樹脂(東都化成社製、SG−P3)15.0重量部と、(E)硬化促進剤である2―フェニルー4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、2P4MZ)0.01重量部と、(F)シランカップリング剤としてβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−303)10.0重量部とを、メチルエチルケトンに溶解し、樹脂濃度50%の樹脂ワニスを調製した以外は、実施例1と同様に接着フィルムの製造を行った。
【0152】
また、各実施例および比較例で得られた接着フィルム、半導体装置について、以下の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。得られた結果を表1に示す。
【0153】
1.接着フィルムの最低溶融粘度
各実施例および比較例で得られた接着フィルムを、粘弾性測定装置(HAAKE社製「RheoStress RS150」)を用いて、パラレルプレート20mmφ、ギャップ0.05mm、周波数0.1Hz、昇温速度は、10℃/分の条件で溶融粘度を測定し、最低となる溶融粘度を測定値とした。
【0154】
2.接着フィルムの5%重量加熱減量温度(b)−発熱ピーク温度(a)
各実施例および比較例で得られた接着フィルムの発熱ピーク温度(a)を、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製、DSC−6200)を用い、昇温速度10℃/分で硬化発熱量を測定し、ピーク温度を測定値とした。
次いで、各実施例および比較例で得られた接着フィルムの5%重量加熱減量温度(b)を、熱重量/示差熱同時測定装置(セイコーインスツルメンツ(株)製、TG/DTA6200)を用い、昇温速度10℃/分で加熱減量を測定し、5%重量減少する温度を測定値とした。
得られた(a)および(b)から、(b)−(a)を算出した。
【0155】
3.半導体装置の空洞及びボイド
各実施例および比較例で得られた半導体装置それぞれ20個ずつについて、半導体チップの半田バンプと回路基板のパッド部の断面観察をSEM(走査型電子顕微鏡)により行い、空洞及びボイド(気泡)の評価を実施した。各符号は、以下の通りである。
○:5μm以上の空洞及びボイドが全く観察されなかった。
×:5μm以上の空洞及びボイドが観察された。
【0156】
4.半導体装置の導通接続性
各実施例および比較例で得られた半導体装置それぞれ20個ずつについて、半導体チップと回路基板間の接続抵抗値をそれぞれデジタルマルチメーターで10点測定し、接続信頼性を評価した。各符号は、以下の通りである。
○:20個すべての(測定点:20×10=200)半導体装置の接続抵抗値が3Ω以下であった。
△:導通しない点は無いが、10〜20点の接続抵抗値が3Ω以上であった(実用上は問題なし)。
×:20点以上の接続抵抗値が3Ω以上、または、オープン不良が1点以上あった(実用上問題あり)。
【0157】
5.半導体装置の絶縁信頼性
各実施例および比較例で得られた半導体装置それぞれ20個について、130℃、85%RHの環境下で3Vの電圧を印加しながら、隣接バンプ間の絶縁抵抗値をそれぞれ3点連続測定(200hr)し、イオンマイグレーションを評価した。各符号は、以下の通りである。
○:すべての測定点(20×3=60)において、絶縁破壊が発生しなかった。
△:絶縁破壊が発生した点が3点未満であった。
×:絶縁破壊が発生した点が3点以上であった。
【0158】
【表1】

【0159】
実施例1で得られたダイシングテープ一体型接着シートに用いた接着フィルムは、最低溶融粘度が0.02Pa・sであり、また、5%重量加熱減量温度(b)と発熱ピーク温度(a)の差が168℃であった。実施例1で得られた接着フィルムで半導体装置を製造し評価を行ったところ、空洞及びボイド、導通接続性、絶縁信頼性のいずれも表1の通り良好であった。
【0160】
また、各実施例2〜10で得られた接着フィルムおよび半導体装置とも実施例1とほぼ同様の挙動を示した。
【符号の説明】
【0161】
1 介在層
11 外周縁
2 ダイシングテープ
21 外周部
3、31 接着フィルム
4 支持フィルム
41 外周部
4a、4b 基材
5 被着体
61〜64 積層体
7 半導体ウエハー(支持体)
71 半導体素子
8 積層体
81 切り込み
82 ダイシングブレード
83 個片
9 ウエハーリング
10、10’ ダイシングテープ一体型接着シート
250 ダイボンダー
260 コレット
270 台(ヒーター)
280 装置本体
400 台(突き上げ装置)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の第一の端子と、被着体の第二の端子を、半田を用いて電気的に接続し、該支持体と該被着体とを接着する接着フィルムと、ダイシングテープとから構成される積層構造を有するダイシングテープ一体型接着シートであって、
該接着フィルムの最低溶融粘度が0.01〜100,000Pa・s以下であり、かつ、該接着フィルムの発熱ピーク温度を(a)、該接着フィルムの5%重量加熱減量温度を(b)と定義した時、下記の式(1)を満たすことを特徴とするダイシングテープ一体型接着シート。
(b)−(a)≧100℃ (1)
【請求項2】
(A)熱硬化性樹脂と、(B)硬化剤と、(C)フラックス機能を有する化合物と、
(D)成膜性樹脂と、を含む請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項3】
前記(A)熱硬化性樹脂と、前記(C)フラックス機能を有する化合物の配合比((A)/(C))が、0.5〜20.0である、請求項2に記載のダイシングテープ一体型接着シート。
【請求項4】
前記(A)熱硬化性樹脂の含有量が5〜80重量%である、請求項2または3に記載のダイシングテープ一体型接着シート。
【請求項5】
前記(A)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、請求項2ないし4のいずれかに記載のダイシングテープ一体型接着シート。
【請求項6】
前記(C)フラックス機能を有する化合物が、カルボキシル基および/またはフェノール性水酸基を有するフラックス機能を有する化合物である、請求項2ないし5のいずれかに記載のダイシングテープ一体型接着シート。
【請求項7】
前記(C)フラックス機能を有する化合物が、1分子中に2個のフェノール性水酸基と、少なくとも1個の芳香族に直接結合したカルボキシル基とを有するフラックス機能を有する化合物である、請求項2ないし6のいずれかに記載のダイシングテープ一体型接着シート。
【請求項8】
前記(C)フラックス機能を有する化合物が、下記一般式(2)で示される化合物を含む、請求項2ないし7に記載のダイシングテープ一体型接着シート。
HOOC−(CH)n−COOH (2)
(式(2)中、nは、1〜20の整数である。)
【請求項9】
前記(C)フラックス機能を有する化合物が、下記一般式(3)及び/又は(4)で示される化合物を含む、請求項2ないし8のいずれかに記載のダイシングテープ一体型接着シート。
【化1】


[式中、R〜Rは、それぞれ独立して、1価の有機基であり、R〜Rの少なくとも一つは水酸基である。]
【化2】


[式中、R〜R20は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、R〜R20の少なくとも一つは水酸基又はカルボキシル基である。]
【請求項10】
前記接着フィルムが、さらに充填材を含む請求項1ないし9のいずれかに記載のダイシングテープ一体型接着シート。
【請求項11】
前記充填材の含有量が、0.1重量%以上80重量%未満である請求項10に記載のダイシングテープ一体型接着シート。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の接着フィルムの硬化物を有することを特徴とする多層回路基板。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれかに記載の接着フィルムの硬化物を有することを特徴とする電子部品。
【請求項14】
請求項1ないし11のいずれかに記載の接着フィルムの硬化物を有することを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−195414(P2012−195414A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57813(P2011−57813)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】