説明

ダイヤモンド被覆工具およびその製造方法

【課題】刃部に設けられたダイヤモンド被膜の表面を研磨して刃先幅Φが100nm以下になるまで尖らせ、優れた切れ味が得られるようにする。
【解決手段】工具母材12の表面にダイヤモンド被膜14がコーティングされた刃部16を有するスクライビングホイール(ダイヤモンド被覆工具)10において、イオンビームの照射によりダイヤモンド被膜14が研磨されることにより、刃部16の先端部分に元の刃先角θaよりも大きな刃先角θ1 で且つ刃先幅Φが10〜100nmの範囲内となるように尖らされた先端研磨部24が設けられているため、所定の刃先強度を確保しつつダイヤモンドコーティングに拘らず優れた切れ味が得られるようになる。すなわち、イオンビームの照射による研磨は非接触であるため、刃先20に研磨荷重が作用せず、刃先幅Φが100nm以下になるまで鋭利に研磨することができるのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイヤモンド被覆工具に係り、特に、刃部先端の刃先幅Φが100nm以下になるまで尖らせたダイヤモンド被覆工具およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超硬合金またはセラミックスから成る工具母材の表面にダイヤモンド被膜がコーティングされて所定の刃部が構成されているダイヤモンド被覆工具が提案されている(特許文献1参照)。このようにダイヤモンド被膜をコーティングすれば、使用に伴う刃部の摩耗が抑制されて工具寿命を大幅に向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−370107号公報
【特許文献2】特開2007−137743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようにダイヤモンド被膜をコーティングした場合、そのダイヤモンド被膜の膜厚は一般に10〜20μm程度であるため、刃部の先端はダイヤモンド被膜の膜厚に近い半径の丸みを帯びて切れ味が悪くなり、目的とする加工を適切に行えなくなる場合があった。例えばガラスを切断する際に刃部の先端でガラスを引っ掻いて疵を付けたり、刃部の先端をガラスに押し付けて疵を付けたりするガラス切断用工具(特許文献2参照)の場合、ダイヤモンド被膜をコーティングすると刃先が丸くなってガラスを適切に切断することができなくなる。これに対し、前記特許文献1では、ダイヤモンド砥石等を用いて刃部の先端部分を研磨することが提案されているが、このような機械的な研磨は刃先に研磨荷重が加えられるため欠け易く、先端の刃先幅Φが100nm以下になるまで尖らせることは困難で、工具の種類によっては未だ十分に満足できない場合があった。なお、刃先幅Φは、刃先の丸み等の幅寸法のことである。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、刃部に設けられたダイヤモンド被膜の表面を研磨することにより刃部先端の刃先幅Φが100nm以下になるまで尖らせ、ダイヤモンドコーティングに拘らず優れた切れ味が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、超硬合金またはセラミックスから成る工具母材の表面にダイヤモンド被膜がコーティングされて所定の刃部が構成されているダイヤモンド被覆工具において、前記刃部に設けられたダイヤモンド被膜の表面にイオンビームが照射されて研磨されることにより、その刃部の先端部分に刃先幅Φが10〜100nmの範囲内となるように尖らされた断面三角形状の先端研磨部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
第2発明は、超硬合金またはセラミックスから成る工具母材の表面にダイヤモンド被膜がコーティングされて所定の刃先角θaの断面三角形の刃部が構成されているダイヤモンド被覆工具において、前記刃部に設けられたダイヤモンド被膜の表面にイオンビームが照射されて研磨されることにより、その刃部の先端部分に前記刃先角θaよりも大きな刃先角θ1 で且つ先端の刃先幅Φが10〜100nmの範囲内となるように尖らされた先端研磨部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
第3発明は、第2発明のダイヤモンド被覆工具において、前記刃部に設けられたダイヤモンド被膜には、前記刃先角θaよりも大きく且つ前記刃先角θ1 よりも小さな刃先角θ2 となるように研磨された中間研磨部が設けられており、その中間研磨部よりも先端側に前記先端研磨部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
第4発明は、第1発明〜第3発明の何れかのダイヤモンド被覆工具において、前記ダイヤモンド被覆工具は、全体として円板形状を成しているとともに、その円板形状の外周部の全周に外周側へ向かって突き出すように前記刃部が設けられ、ガラスを切断する際にその刃部の先端でそのガラスに疵を付けるスクライビングホイールであることを特徴とする。
【0010】
第5発明は、超硬合金またはセラミックスから成る工具母材の表面にダイヤモンド被膜がコーティングされて所定の刃先角θaの断面三角形の刃部が構成されているダイヤモンド被覆工具に関し、その刃部におけるダイヤモンド被膜を研磨して尖らせる製造方法であって、(a) 前記刃部に設けられたダイヤモンド被膜の表面にイオンビームを照射して研磨することにより、その刃部の先端部分に前記刃先角θaよりも大きな刃先角θ2 となる中間研磨部を形成する第1研磨工程と、(b) 前記イオンビームの照射条件を変更して前記中間研磨部の表面に照射して更に研磨することにより、その中間研磨部の先端部分に前記刃先角θ2 よりも大きな刃先角θ1 で且つ先端の刃先幅Φが10〜100nmの範囲内となるように尖らせた先端研磨部を形成する第2研磨工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
第6発明は、第5発明のダイヤモンド被覆工具の製造方法において、前記イオンビームの加速電圧を変更してそのイオンビームの照射による研磨の加工角αを調整することにより、前記第1研磨工程では刃部中心面Sに対して前記刃先角θ2 で対称的に傾斜する前記中間研磨部を形成し、前記第2研磨工程では刃部中心面Sに対して前記刃先角θ1 で対称的に傾斜する前記先端研磨部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明のダイヤモンド被覆工具においては、イオンビームによってダイヤモンド被膜が研磨されることにより、刃部の先端部分に刃先幅Φが10〜100nmの範囲内となるように尖らされた断面三角形状の先端研磨部が設けられているため、所定の刃先強度を確保しつつダイヤモンドコーティングに拘らず優れた切れ味が得られるようになる。すなわち、イオンビームの照射による研磨は非接触であるため、刃先に研磨荷重が作用せず、刃先幅Φが100nm以下になるまで鋭利に研磨することができるのである。これにより、ダイヤモンド被膜による丸みで切れ味が悪くなるため従来は適用できなかったガラス切断用工具や紙の切断工具、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)用加工工具等に対しても、ダイヤモンドコーティングが可能となり、耐久性を大幅に向上させることができる。また、非接触で研磨するため、例えば刃部が長尺であったり円弧形状などの湾曲形状等であったりしても、一定の取り代で均一に研磨することが可能で、砥石等による機械研磨に比較して高い精度で目的形状に研磨することができる。
【0013】
第2発明は、所定の刃先角θaの断面三角形の刃部を備えている場合で、イオンビームによってダイヤモンド被膜が研磨されることにより、刃部の先端部分に刃先角θaよりも大きな刃先角θ1 で且つ先端の刃先幅Φが10〜100nmの範囲内となるように尖らされた先端研磨部が設けられているため、所定の刃先強度を確保しつつダイヤモンドコーティングに拘らず優れた切れ味が得られるようになるなど、第1発明と同様の効果が得られる。加えて、先端研磨部は元の刃先角θaよりも大きな刃先角θ1 であるため、刃部の先端部分のみを局部的に研磨することによって先端を尖らせることが可能で、取り代をできるだけ少なくして研磨コストを低減できる。
【0014】
第3発明は、前記刃先角θaよりも大きく且つ刃先角θ1 よりも小さな刃先角θ2 となるように研磨された中間研磨部が設けられており、その中間研磨部よりも先端側に刃先角θ1 の先端研磨部が設けられているため、例えばイオンビームの照射により一定の刃先角θ1 或いはθ2 等で傾斜させて刃先幅Φが10〜100nmの範囲内になるまで研磨する場合に比較して、その刃先部分のダイヤモンド被膜の取り代が少なくなり、研磨による強度や耐久性の低下が抑制される。なお、上記中間研磨部についてもイオンビームの照射によって研磨することが望ましいが、ダイヤモンド砥石等による機械研磨で研磨することも可能である。
【0015】
第4発明は、ガラスを切断する際に刃部の先端でそのガラスを引っ掻くなどして疵を付けるスクライビングホイールに関するもので、円板形状の全周に刃部を備えているが、軸心まわりに回転させつつ外周部にイオンビームを照射して研磨することにより、全周に亘って一定の取り代で均一に研磨でき、刃先幅Φが全周に亘って略一定の刃部を高い精度で形成できる。すなわち、スクライビングホイールのように一円周上に刃部が設けられている円形のダイヤモンド被覆工具の場合、そのダイヤモンド被覆工具を軸心まわりに回転させながら外周部の刃部を研磨することになるが、ダイヤモンド砥石による機械研磨の場合、ダイヤモンド被覆工具の偏心によって砥石との間の距離が変化することが避けられず、ミクロンオーダーで全周に均一な取り代で研磨加工を行うことは実質的に不可能である。
【0016】
第5発明は、実質的に第3発明のダイヤモンド被覆工具を製造する製造方法に関するもので、第3発明と同様の作用効果が得られる。また、刃先角θaよりも大きな刃先角θ2 となる中間研磨部、および刃先角θ2 よりも大きな刃先角θ1 で且つ先端の刃先幅Φが10〜100nmの範囲内となるように尖らせた先端研磨部を、何れもイオンビームの照射によって研磨するため、中間研磨部を砥石等による機械研磨で研磨する場合に比較して、高い精度で目的形状に研磨することができるとともに、加速電圧や照射角度等の照射条件を変更するだけで一連の研磨作業を容易に行うことができる。
【0017】
第6発明では、イオンビームの加速電圧を変更することにより加工角αを調整して中間研磨部および先端研磨部を形成するため、一連の研磨作業を連続して一層容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例であるスクライビングホイール(ダイヤモンド被覆工具)を説明する図で、(a) は軸心と直角方向から見た正面図、(b) は(a) の右方向から見た側面図、(c) は(a) におけるIC部の断面拡大図である。
【図2】図1のスクライビングホイールの製造工程を説明する図である。
【図3】図2の第1研磨工程および第2研磨工程を具体的に説明する図である。
【図4】図1のスクライビングホイールの刃部の先端の電子顕微鏡写真である。
【図5】図1のスクライビングホイールを用いてテープ心線の光ファイバーを切断する際の使用方法を説明する図で、(a) は4心タイプのテープ心線の斜視図、(b) はそのテープ心線の光ファイバーにスクライビングホイールで疵を付ける方法を示す図である。
【図6】従来品、本発明品1〜3、および比較品1、2を用いて光ファイバーに疵を付けて切断する場合の耐久性試験の結果を説明する図である。
【図7】本発明の他の実施例を説明する図で、何れも図1(c) に相当する刃部の先端部分の断面拡大図である。
【図8】本発明の更に別の実施例を説明する図で、何れも図1(c) に相当する刃部の先端部分の断面拡大図である。
【図9】本発明の更に別の実施例を説明する図で、図1(c) に相当する刃部の先端部分の断面拡大図である。
【図10】本発明の更に別の実施例を説明する図で、(a) 〜(c) 共にガラス切断用のダイヤモンド被覆工具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のダイヤモンド被覆工具は、スクライビングホイール等のガラス切断用工具に好適に適用されるが、紙の切断工具、CFRP用加工工具、或いはバイト等の切削工具等にも適用され得る。ダイヤモンド被膜のコーティングには、マイクロ波プラズマCVD法やホットフィラメントCVD法、高周波プラズマCVD法等のCVD法が好適に用いられるが、イオンビーム法などの他のコーティング技術を採用することもできる。ダイヤモンド被膜は多結晶で、例えば10〜20μmの範囲内の略一定の膜厚でコーティングされ、第2発明のように刃先角θaの断面三角形の刃部を有する場合、工具母材も略同じ刃先角θaの三角形断面を有している。超硬合金或いはセラミックスから成る工具母材に対する密着性(付着強度)を確保するため、その工具母材の表面に酸処理等の前処理を行ったり、ダイヤモンド被膜の下に所定の下地層を設けたりすることも可能である。
【0020】
ダイヤモンド被覆工具の刃部は、例えば第2発明のように所定の刃先角θaの断面三角形のものが適当であるが、第1発明の実施に際しては、工具母材およびダイヤモンド被膜そのものの形状は特に制約されず、刃部の断面が楕円形状や長円形状等であっても良く、イオンビームの照射によってダイヤモンド被膜の表面が研磨されることにより、刃先幅Φが10〜100nmの範囲内となるように尖らされた断面三角形状の先端研磨部が設けられれば良い。この先端研磨部は、必ずしも正確に三角形である必要はなく、刃部先端で交わる2辺が内側へ凹んだ凹形状を成していたり、外側へ膨出する凸形状を成していたりしても良い。第2発明および第5発明の先端研磨部も同様で、刃先角θ1 は一定であっても良いが、刃先角θaよりも大きな角度範囲で連続的に変化させても良い。第3発明および第5発明の中間研磨部についても同様で、刃先角θ2 は一定であっても良いが、刃先角θaよりも大きく且つ刃先角θ1 よりも小さい角度範囲で連続的に変化させても良い。但し、第6発明では、略一定の刃先角θ2 で中間研磨部が設けられ、略一定の刃先角θ1 で先端研磨部が設けられる。
【0021】
イオンビームは、アルゴンやキセノン等の不活性ガスイオンが好適に用いられるが、酸素イオン等の他のガスイオンを用いることもできるし、アーク放電等によりターゲットから放出されるガリウム(Ga+ )等の所定の金属イオンを用いることも可能である。このようなイオンビームは、例えば特開平10−172502号公報や特開2002−187793号公報、或いは「機械の研究 第55巻 第8号」(2003)の「イオンビームと電子ビームを用いたダイヤモンドの微細加工」等に記載されている技術を用いて発生させることができる。
【0022】
刃先幅Φは、10nmよりも小さいと、刃先が脆弱になって欠けが生じ易くなるため、10nm以上とする。また、100nmよりも大きいと、切れ味が悪くなるため100nm以下とする。20〜80nmの範囲内が一層望ましい。刃部を刃先側から電子顕微鏡で観察すると、刃先の稜線部分が白い筋状に見えるため、この白い筋の幅寸法を刃先幅Φとして測定することができる。また、刃先に対して垂直に切断した断面の電子顕微鏡写真から、刃先の丸み等を有する頂点部分の幅寸法を刃先幅Φとして測定するようにしても良い。この刃先幅Φは、刃部が所定の長さで設けられる場合、その刃部の長手方向でばらつきを有するため、平均値が10〜100nmの範囲内に入れば良い。
【0023】
第2発明では、刃先角θaの断面三角形の刃部に対して、その刃先角θaよりも大きな刃先角θ1 で先端研磨部が設けられるが、刃先角θ1 は、刃先角θaよりも10°以上大きい角度が望ましい。第3発明のように中間研磨部を設ける場合、その中間研磨部の刃先角θ2 を、例えば刃先角θaよりも10°以上大きくし、先端研磨部の刃先角θ1 を、その中間研磨部の刃先角θ2 よりも更に10°以上大きくすることが望ましい。
【0024】
第4発明は、外周部に外向きの円形刃部を有するスクライビングホイールに関するものであるが、直線状の刃部を有するものや、円錐形状、角錐形状等の刃部を有する他のガラス切断用工具にも適用され得る。スクライビングホイールは、軸心まわりに回転駆動しつつ外周部の刃部をガラスに押し付けることにより、所定の切込み深さで引っ掻いて疵を付けることもできるが、回転させることなくガラスに対して相対移動させるだけで引っ掻いて疵を付けることもできるし、ガラスに押し付けるだけで疵を付けることも可能である。
【0025】
第6発明は、イオンビームの加速電圧を変更することにより、刃先角θ1 、θ2 に応じて加工角αを調整するものであるが、更にイオンビームの照射角度等の他の照射条件を変更して加工角αを調整することもできる。第5発明の実施に際しては、イオンビームの加速電圧を変更することなく、照射角度等の他の照射条件を変更するだけで加工角αを調整することも可能である。第3発明の中間研磨部については、ダイヤモンド砥石による機械研磨など、イオンビームの照射による研磨以外の研磨方法で研磨するようにしても良い。
【0026】
第6発明では、刃部中心面Sに対して刃部の両側面が対称的に傾斜するように中間研磨部および先端研磨部が形成されるが、他の発明の実施に際しては、例えば刃部の両側の側面に対してイオンビームを別々に照射して研磨することにより、その両側面が刃部中心面Sに対して非対称或いは対称的に傾斜する中間研磨部や先端研磨部を形成することもできる。直線刃部や円形刃部等の長手状の刃部を有する場合、刃先幅Φが10〜100nmの範囲内になるようにするために、例えばその刃部の両側面にそれぞれイオンビームを照射してその両側面を研磨すれば良い。円錐形状や角錐形状の刃部を有する場合には、軸心まわりに回転させるなどして全周にイオンビームを照射して研磨すれば良い。
【0027】
ダイヤモンド被覆工具は、例えば先端研磨部のみが加工に関与するように、その先端研磨部の研磨範囲が設定されるが、工具の種類によっては、前記中間研磨部やイオンビームによる研磨が施されていない部分も加工に関与するようになっていても良い。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例であるスクライビングホイール10を説明する図で、(a) は軸心と直角方向である外周側から見た正面図、(b) は(a) の右方向から見た側面図、(c) は(a) におけるIC部の断面拡大図である。このスクライビングホイール10は、超硬合金から成る工具母材12の表面に多結晶のダイヤモンド被膜14がコーティングされたもので、全体として円板形状を成しているとともに、その円板形状の外周部の全周に外周側へ向かって突き出すように刃部16が設けられており、円板形状の軸心上に設けられた支持軸18を介して軸心まわりに回転可能とされている。このスクライビングホイール10はダイヤモンド被覆工具に相当し、刃部16の刃先までの外径は約20mm、板厚は約5mmであり、ダイヤモンド被膜14の膜厚は約20μmである。
【0029】
刃部16は、(c) に示す軸心を含む断面において、先端の刃先20が外周側(図1(c) における上方)へ突き出す三角形状を成しているとともに、その軸心に対して直角な刃部中心面S(図1(c) の紙面に対して垂直な面)に対して対称的に構成されている。この刃部16の全体の刃先角θaは、本実施例では約70°で、ダイヤモンド被膜14は略一定の膜厚でコーティングされていることから、工具母材12の刃部16部分も、約70°の刃先角の断面三角形状を成している。この刃部16にはまた、ダイヤモンド被膜14の表面にイオンビームが照射されて両側面が対称的に研磨されることにより、刃部16の先端部分に上記刃先角θaよりも大きな略一定の刃先角θ2 で刃部中心面Sに対して対称的に傾斜する三角形状の中間研磨部22が設けられるとともに、その中間研磨部22よりも先端側に刃先角θ2 よりも更に大きな略一定の刃先角θ1 で刃部中心面Sに対して対称的に傾斜し、且つ先端の刃先幅Φが10〜100nmの範囲内となるように尖らされた三角形状の先端研磨部24が設けられている。中間研磨部22は、刃部中心面Sを挟んで対称的に一対の研磨面22a、22bを備えており、先端研磨部24は、刃部中心面Sを挟んで対称的に一対の研磨面24a、24bを備えている。
【0030】
本実施例では、図6の発明品2に示すように、先端の刃先幅Φ≒30nm、中間研磨部22の刃先角θ2 ≒80°、先端研磨部24の刃先角θ1 ≒100°であり、その刃先20におけるダイヤモンド被膜14の膜厚d≒14.3μmである。図4は、刃部16の先端の電子顕微鏡写真で、中央の白い筋状に見える部分が刃先20の稜線部分であり、この白い筋の幅寸法が刃先幅Φで、何箇所か測定した平均値が約30nmである。刃先角θ1 およびθ2 については、刃先20に対して垂直に切断した断面の電子顕微鏡写真から測定することができ、同じく何箇所か測定した平均値がθ1 ≒100°、θ2 ≒80°である。刃先20におけるダイヤモンド被膜14の膜厚dについても、刃先20に対して垂直に切断した断面の電子顕微鏡写真から測定したもので、何箇所かの平均値が約14.3μmである。
【0031】
図2は、以上のように構成されたスクライビングホイール10の製造方法を説明する図で、先ず、外周部分に刃先角θaで外周側へ突き出す刃部16が設けられた円板形状の工具母材12を用意し、その工具母材12の少なくとも刃部16の表面に、マイクロ波プラズマCVD装置等により多結晶のダイヤモンド被膜14を約20μmの膜厚となるようにコーティングする。所定の密着性(付着強度)が得られるように、ダイヤモンドコーティングに先立って工具母材12の表面に酸処理等の前処理を施したり、所定の下地層を設けたりしても良い。図1(c) における一点鎖線は、このダイヤモンド被膜14がコーティングされたままの状態で、刃部16の先端は、ダイヤモンド被膜14のコーティングにより約15μmの半径の丸みを帯びている。
【0032】
続いて、そのダイヤモンド被膜14が設けられた刃部16の先端部分にイオンビームを照射することにより、第1研磨処理を行って中間研磨部22を形成するとともに、更にその中間研磨部22の先端部分にイオンビームを照射することにより、第2研磨処理を行って先端研磨部24を形成する。図1(c) における二点鎖線は、第1研磨処理が施されて中間研磨部22が形成された状態で、この段階の刃部16の先端は、一点鎖線で示すダイヤモンドコーティングのままよりは小さいものの、未だ比較的大きな半径の丸みを帯びており、実線で示すように第2研磨処理が施されることにより、先端の刃先幅Φが約30nmになるまで尖らされる。
【0033】
上記第1研磨処理および第2研磨処理は、例えば図3の(a) に示すように、ダイヤモンドコーティングされた状態のスクライビングホイール10を支持軸18を介して軸心まわりに3回転/分程度の速度で回転させつつ、その外周部の刃部16に対して略垂直、すなわちスクライビングホイール10の軸心に対して垂直に、イオン発生装置30を用いてAr+ (アルゴン)イオンビームを照射することによって行う。Ar+ イオンビームのビーム径(直径)は約20mmである。そして、このAr+ イオンビームの照射によって研磨される加工面は、(b) に示すように照射方向に対して直角な方向から加工角αだけ傾斜するように研磨されるとともに、その加工角αは、(c) に示すようにAr+ イオンビームの加速電圧に応じて変化する。本実施例では、第1研磨処理では加速電圧を約3000eVに設定してアルゴンイオンビームを照射することにより、加工角α≒50°で研磨処理が行われ、刃先角θ2 ≒80°で中間研磨部22が形成される。また、第2研磨処理では加速電圧を約1000eVに設定してAr+ イオンビームを照射することにより、加工角α≒40°で研磨処理が行われ、刃先角θ1 ≒100°で先端研磨部24が形成される。なお、電流密度は0.1〜2.0×3mA/cm2 、ガス流量は0.50〜2.0SCCM程度である。また、研磨量(取り代)は研磨時間で調整でき、本実施例では第1研磨処理および第2研磨処理の何れも研磨時間は約1時間である。
【0034】
そして、以上のように構成されたスクライビングホイール10は、例えば図5に示すようにテープ心線40の光ファイバー(材質は石英ガラス)42等を切断する際に好適に用いられる。図5の(a) はテープ心線40の一例を示す斜視図で、このテープ心線40は4心タイプで、4本の光ファイバー42が一定の間隔で互いに平行に埋設されている。光ファイバー42の直径は約0.125mmで、それぞれ合成樹脂材料により被覆されて直径約0.25mmの素線44とされており、その素線44を4本平行に並べて更に紫外線硬化型合成樹脂材料により一体化することによりテープ心線40が構成されている。図5の(b) は、光ファイバー42を切断するためにスクライビングホイール10により光ファイバー42を引っ掻いて疵を付ける時の状態で、リムーバにより光ファイバー42から合成樹脂等の被覆を剥がしてクランプ台46のV溝内に4本の光ファイバー42をそれぞれ位置決めし、スクライビングホイール10を軸心まわりに回転させることなく光ファイバー42上を移動させて約0.01mmの切込み深さで疵を付ける。すなわち、約10μmの深さで刃部16の刃先20を光ファイバー42に食い込ませることにより、先端研磨部24に対応するV字状の溝が光ファイバー42の外周面に形成される。先端研磨部24は、このように先端研磨部24だけで所定の深さの疵を付けることができる十分な範囲に設けられている。
【0035】
図6は、従来品、本発明品1〜3、および比較品1、2を用いて、上記のように光ファイバー42に疵を付けて切断する場合の耐久性試験の結果を説明する図である。従来品は、前記実施例の工具母材12をそのまま用いる場合で、刃先幅Φは約500nmである。超硬合金は粒子が粗いため、刃先幅Φをこれ以上小さくすることは困難である。発明品1は、前記中間研磨部22と同じ刃先角≒80°で刃先幅Φが約30nmになるまでAr+ イオンビームを照射して研磨した場合で、刃先20の膜厚d≒8.2μmになる。発明品2は、前記実施例のスクライビングホイール10と同じものである。発明品3は、前記先端研磨部24の刃先幅Φ≒80nmで前記実施例よりも大きい場合で、ダイヤモンド被膜14の取り代が少なくなるため、研磨時間が短くなるとともに刃先20の膜厚dが厚くなる。比較品1は、前記先端研磨部24の刃先幅Φ≒150nmで100nmを超えている場合で、刃先20の膜厚d≒15.6μmである。比較品2は、前記実施例においてダイヤモンド被膜14をコーティングしたままで、イオンビームの照射による研磨処理を施していないものであり、刃部16の先端は図1(c) において一点鎖線で示すように丸みを帯びている(R15μm程度)とともに、刃先20の膜厚d≒20μmである。
【0036】
図6の「耐久数」は、前記光ファイバー42を手で軽く折ることができなくなるまでの処理本数で、耐久限界になったらスクライビングホイール10を回転させて加工部位をずらし、同じく耐久限界になるまで使用することを繰り返すが、本発明品1〜3、および比較品1については、1箇所の加工部位で耐久限界に達するまでの処理本数である。従来品は、予め定められた処理本数で加工部位を変化させることにより、計12箇所の加工部位で疵付け処理を行う場合で、1個のスクライビングホイール10で疵付け可能な予め定められた現状の設定数である。
【0037】
この図6の結果から、ダイヤモンド被膜14をコーティングするとともにイオンビームの照射で刃先幅Φが10〜100nmの範囲内となるように研磨した本発明品1〜3によれば、従来品に比較して耐久性が大幅に向上することが明らかである。特に、発明品2のように2段で研磨した場合、1段で研磨した発明品1に比較して、同じ刃先幅Φ≒30nmであっても刃先20の膜厚dが大きくなり、耐久数が1.5倍程度になる。ダイヤモンド被膜14をコーティングした比較品1においても、従来品に比較して耐久性が向上するが、本発明品1〜3に比べると耐久数が少なく、ダイヤモンドコーティングやイオンビームによる研磨処理を考慮すると、費用対効果の点で満足できない。比較品2は、刃部16の先端の丸みが大きく、光ファイバー42を切断できる程度に疵を付けることができなかった。
【0038】
このように本実施例のスクライビングホイール10によれば、イオンビームによってダイヤモンド被膜14が研磨されることにより、刃部16の先端部分に元の刃先角θaよりも大きな刃先角θ1 で且つ刃先幅Φが10〜100nmの範囲内となるように尖らされた断面三角形状の先端研磨部24が設けられているため、所定の刃先強度を確保しつつダイヤモンドコーティングに拘らず優れた切れ味が得られるようになる。すなわち、イオンビームの照射による研磨は非接触であるため、刃先20に研磨荷重が作用せず、刃先幅Φが100nm以下になるまで鋭利に研磨することができるのである。これにより、ダイヤモンドコーティングによる丸みで切れ味が悪くなるため従来は適用できなかったスクライビングホイール10に対しても、ダイヤモンド被膜14をコーティングすることが可能となり、耐久性を大幅に向上させることができる。
【0039】
また、円板形状の全周に刃部14を備えているスクライビングホイール10を軸心まわりに回転させつつ外周部にイオンビームを照射することにより非接触で研磨するため、全周に亘って一定の取り代で均一に研磨でき、刃先幅Φが全周に亘って略一定の刃部16を高い精度で形成できる。すなわち、スクライビングホイール10のように一円周上に刃部16が設けられている場合、スクライビングホイール10を軸心まわりに回転させながら研磨することになるが、ダイヤモンド砥石による機械研磨の場合、スクライビングホイール10の偏心により砥石との間の距離が変化することが避けられず、ミクロンオーダーで全周に均一な取り代で研磨加工を行うことは実質的に不可能である。
【0040】
また、先端研磨部24は元の刃先角θaよりも大きな刃先角θ1 であるため、刃部16の先端部分のみを局部的に研磨することによって先端を尖らせることが可能で、取り代をできるだけ少なくして研磨コストを低減できる。
【0041】
また、本実施例では刃先角θaよりも大きく且つ刃先角θ1 よりも小さな刃先角θ2 となるように研磨された中間研磨部22が設けられており、その中間研磨部22よりも先端側に刃先角θ1 の先端研磨部24が設けられているため、図6の発明品1のように一定の刃先角で傾斜させて刃先幅Φが10〜100nmの範囲内になるまで研磨する場合に比較して、その刃先20におけるダイヤモンド被膜14の研磨量(取り代)が少なくなって膜厚dが大きくなり、研磨による強度や耐久性の低下が抑制される。
【0042】
また、本実施例では刃先角θaよりも大きな刃先角θ2 となる中間研磨部22、および刃先角θ2 よりも大きな刃先角θ1 で且つ先端の刃先幅Φが10〜100nmの範囲内となるように尖らせた先端研磨部24を、何れもイオンビームの照射によって研磨するため、中間研磨部22を砥石等による機械研磨で研磨する場合に比較して、高い精度で目的形状に研磨することができるとともに、加速電圧を変更するだけで一連の研磨作業を連続して容易に行うことができる。
【0043】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0044】
図7の(a) の刃部50は、前記スクライビングホイール10において、中間研磨部を設けることなく刃先角θaよりも大きな略一定の刃先角θ1 で且つ先端の刃先幅Φが10〜100nmの範囲内となるように尖らされた先端研磨部52を、刃部中心面Sに対して対称的に設けた場合で、実質的に前記図6の発明品1に相当する。先端研磨部52は、刃部中心面Sを挟んで対称的に一対の研磨面52a、52bを備えている。
【0045】
図7の(b) の刃部60は、図7の(a) の刃部50に比較して、先端研磨部62を刃部中心面Sに対して非対称に設けた場合で、刃先64が刃部中心面Sから所定寸法だけオフセットした部分に位置している。先端研磨部62は、刃部60の両側に刃部中心面Sに対して非対称の一対の研磨面62a、62bを備えており、これ等の研磨面62a、62bは、異なる照射条件で別々にイオンビームを照射して研磨することによって形成することができる。
【0046】
図8の(a) の刃部70は、図7の(a) の刃部50に比較して、刃先角θ1 が刃先角θaよりも大きい角度範囲で連続的に変化している場合で、先端研磨部72の一対の研磨面72a、72bは、それぞれ内側へ湾曲するように凹んだ凹形状を成している。刃先角θ1 は、先端側へ向かうに従って小さくなっており、イオンビームの照射条件を連続的或いは段階的に変化させることによって形成することができる。なお、刃先角θaよりも小さな角度を含んで刃先角θ1 を変化させることも可能である。
【0047】
図8の(b) の刃部74は、図8の(a) の刃部70に比較して、先端研磨部76の一対の研磨面76a、76bが、それぞれ外側へ滑らかに湾曲するように膨らんだ凸形状を成している。刃先角θ1 は、先端側へ向かうに従って大きくなっており、イオンビームの照射条件を連続的或いは段階的に変化させることによって形成することができる。
【0048】
図9のダイヤモンド被覆工具80は、工具母材82の断面が楕円形状で、その表面に略一定の膜厚でダイヤモンド被膜84がコーティングされている場合であり、楕円形状の長軸方向の一端部に刃部86が設けられている。そして、その刃部86の先端部分にイオンビームが照射されて研磨されることにより、所定の刃先角θ1 で且つ先端の刃先幅Φが10〜100nmの範囲内となるように尖らされた断面三角形状の先端研磨部88が、刃部中心面Sに対して対称的に設けられ、例えばガラスに疵を付けて切断するガラス切断用工具として用いられる。先端研磨部88は、刃部中心面Sを挟んで対称的に一対の研磨面88a、88bを備えている。本実施例においても、ダイヤモンドコーティングにより優れた耐久性が得られるようになるとともに、イオンビームの照射による研磨で刃先幅Φが10〜100nmの範囲内となるように尖らされているため、ダイヤモンドコーティングに拘らず優れた切れ味が得られるようになるなど、前記実施例と同様の効果が得られる。なお、前記図1の実施例のように、先端研磨部88の基部側(図9の下方)に、刃先角θ1 よりも小さな刃先角θ2 の中間研磨部を先端研磨部88に先立って設けることも可能である。
【0049】
図10の(a) は、断面三角形の直線状の刃部90を有するダイヤモンド被覆工具で、(b) は円錐形状の刃部92を有するダイヤモンド被覆工具で、(c) は角錐形状の刃部94を有するダイヤモンド被覆工具であり、何れも刃部90、92、94の先端をガラス板に押し付けて引っ掻くなどして疵を付けるガラス切断用の工具である。このようなダイヤモンド被覆工具についても、前記各実施例と同様に刃部90、92、94にイオンビームを照射して研磨し、中間研磨部や先端研磨部を設けて刃先幅Φが10〜100nmの範囲内となるように刃先を尖らせることにより、ダイヤモンドコーティングに拘らず優れた切れ味が得られるようになる。
【0050】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0051】
10:スクライビングホイール(ダイヤモンド被覆工具) 12、82:工具母材 14、84:ダイヤモンド被膜 16、50、60、70、74、86、90、92、94:刃部 22:中間研磨部 24、52、62、72、76、88:先端研磨部 80:ダイヤモンド被覆工具 S:刃部中心面 θa、θ1 、θ2 :刃先角 Φ:刃先幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超硬合金またはセラミックスから成る工具母材の表面にダイヤモンド被膜がコーティングされて所定の刃部が構成されているダイヤモンド被覆工具において、
前記刃部に設けられたダイヤモンド被膜の表面にイオンビームが照射されて研磨されることにより、該刃部の先端部分に刃先幅Φが10〜100nmの範囲内となるように尖らされた断面三角形状の先端研磨部が設けられている
ことを特徴とするダイヤモンド被覆工具。
【請求項2】
超硬合金またはセラミックスから成る工具母材の表面にダイヤモンド被膜がコーティングされて所定の刃先角θaの断面三角形の刃部が構成されているダイヤモンド被覆工具において、
前記刃部に設けられたダイヤモンド被膜の表面にイオンビームが照射されて研磨されることにより、該刃部の先端部分に前記刃先角θaよりも大きな刃先角θ1 で且つ先端の刃先幅Φが10〜100nmの範囲内となるように尖らされた先端研磨部が設けられている
ことを特徴とするダイヤモンド被覆工具。
【請求項3】
前記刃部に設けられたダイヤモンド被膜には、前記刃先角θaよりも大きく且つ前記刃先角θ1 よりも小さな刃先角θ2 となるように研磨された中間研磨部が設けられており、該中間研磨部よりも先端側に前記先端研磨部が設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載のダイヤモンド被覆工具。
【請求項4】
前記ダイヤモンド被覆工具は、全体として円板形状を成しているとともに、該円板形状の外周部の全周に外周側へ向かって突き出すように前記刃部が設けられ、ガラスを切断する際に該刃部の先端で該ガラスに疵を付けるスクライビングホイールである
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のダイヤモンド被覆工具。
【請求項5】
超硬合金またはセラミックスから成る工具母材の表面にダイヤモンド被膜がコーティングされて所定の刃先角θaの断面三角形の刃部が構成されているダイヤモンド被覆工具に関し、該刃部におけるダイヤモンド被膜を研磨して尖らせる製造方法であって、
前記刃部に設けられたダイヤモンド被膜の表面にイオンビームを照射して研磨することにより、該刃部の先端部分に前記刃先角θaよりも大きな刃先角θ2 となる中間研磨部を形成する第1研磨工程と、
前記イオンビームの照射条件を変更して前記中間研磨部の表面に照射して更に研磨することにより、該中間研磨部の先端部分に前記刃先角θ2 よりも大きな刃先角θ1 で且つ先端の刃先幅Φが10〜100nmの範囲内となるように尖らせた先端研磨部を形成する第2研磨工程と、
を有することを特徴とするダイヤモンド被覆工具の製造方法。
【請求項6】
前記イオンビームの加速電圧を変更して該イオンビームの照射による研磨の加工角αを調整することにより、前記第1研磨工程では刃部中心面Sに対して前記刃先角θ2 で対称的に傾斜する前記中間研磨部を形成し、前記第2研磨工程では刃部中心面Sに対して前記刃先角θ1 で対称的に傾斜する前記先端研磨部を形成する
ことを特徴とする請求項5に記載のダイヤモンド被覆工具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−11475(P2012−11475A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147910(P2010−147910)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【出願人】(000103367)オーエスジー株式会社 (180)
【Fターム(参考)】