説明

ダンパ

【課題】高い制動力を備え、且つ自立機構で初期位置へ自動復帰させることができるダンパを提供する。
【解決手段】ロータ12は略球状の外形とされており、支持部24によって回動可能に支持されている。シャフト18は開口26から外部へ向けて突出しており、このシャフト18に対して発生する入力に対してロータ12が粘性流体に剪断抵抗を生じつつ揺動することでシャフト18を制動する。ロータ12から突設された羽根部材20は収容部22に収まっており、外部から力を受けたシャフト18が初期位置より傾くと、シャフト18が設けられたロータ12もまた支持部24に支持されながら回動する。ロータ12の表面に設けられた凹球面状の凹部34に、この凹部34の表面形状に沿ってこれと嵌合する表面形状のロック部材30が係合し、ロータ12の揺動方向位置決めを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータにトルクを付与するダンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
人工関節などに用いられるダンパや、内視鏡などの医療器具や画像処理装置、あるいはPCやゲーム機等に用いられるポインティングデバイス(ジョイスティック)は、ハウジング内に設けられた球状のロータを外部から回動あるいは揺動させることでトルクを生じさせて衝撃や外部入力を緩和し、あるいはスムーズな操作性を維持している。
【0003】
例えば球面形状の内壁を備えたハウジング内に粘性流体が充填され、その中で略球形の表面をもつロータが回転することで粘性流体に剪断抵抗を与え、衝撃を吸収するダンパが存在する(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
しかし上記の構造ではハウジングの内周面とロータの外周面との間で粘性流体が移動するのみで加圧しないため、発生するトルクは小さく緩衝力も低い。
【0005】
あるいは筒状のハウジング内で傾斜した回転軸に沿って球状のロータを回転させ、ロータ表面の羽根でハウジング内の粘性流体(シリコンオイル)を加圧することにより入力を吸収するダンパが存在する(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
上記の構造では粘性流体を加圧することでより大きなトルクを得ることができるが、ハウジングの軸(回転軸)を中心に、これに対して回転方向の力しか吸収できず、また衝撃吸収前の初期位置へ自然に復帰させる機能は備えていないので、作動後は外部からの力で初期位置に復帰させる必要がある。
【0007】
また球状の基底部を球状に凹んだ受部に嵌め込み、基底部より伸びたスティックを操作するジョイスティック構造において、スティックを覆うゴムカバーの弾性でスティックの先端位置を自動的に復帰させる構成が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
しかし上記の構造ではスティックの復帰をゴムカバーの弾性に頼っているため、外部から直接力のかかる箇所であるスティック先端近傍の耐久性に問題があり、またスティック自体の長さが制限されることに加えてスティックの先端に他の部材(例えば同一構造のスティックなど)を延設できないため人工関節などの用途に用いるには拡張性に欠ける問題がある。
【特許文献1】特開昭49−119074号公報
【特許文献2】特開昭61−140233号公報
【特許文献3】特開2008−215577号公報
【特許文献4】特開2003−230535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事実を考慮し、高い制動力を備え、且つ自立機構で初期位置へ自動復帰させることができるダンパを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載のダンパは、粘性流体が充填され一端に開口部が設けられたハウジングと、前記ハウジング内に回転可能に収容された球状のロータと、先端が前記開口部より突出するように前記ロータの表面の一端に設けられ、外部から伝達される力で前記ロータを作動位置へ揺動させるシャフトと、前記ロータの表面に設けられ、前記ロータの揺動を前記粘性流体への圧縮力に変換する変換手段と、前記作動位置から前記シャフトに外部から力が伝達されていない状態の初期位置となるように前記ロータを付勢する復帰手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明では、ロータの表面に設けられた変換手段が、シャフトの傾きに伴ってハウジング内部で移動し、粘性流体を加圧することでロータの回転を制動する。このためシャフトを傾ける外部からの力を、高い制動力をもって粘性流体で受け止めることができ、緩衝能力に優れたダンパとすることができる。
【0012】
またハウジングの開口部より突出したシャフトの長さには制限がなく、先端に任意の部材を設けることもできるので拡張性に優れる。さらに復帰手段がロータを付勢し、自動的にシャフトを初期位置へ復帰させるので使い勝手に優れたダンパとすることができる。
【0013】
請求項2に記載のダンパは、請求項1に記載の構成において、前記変換手段は前記ロータの表面に設けられた板状の羽根部材であり、前記羽根部材は前記ハウジングの内壁に前記羽根部材と対向して設けられた収容部に嵌り込み、前記収容部では前記羽根部材と前記ハウジングの内壁との間隙が狭くなることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明では、ハウジングの内壁に設けられた凹部である収容部に、ロータの表面から突設された羽根部材が嵌り込み、羽根部材とハウジングの内壁との間隙が狭くなっているため、ダンパ動作時には羽根部材と収容部との間で粘性流体は剪断抵抗を生じながら移動し、高い制動力を発生させることができる。
【0015】
請求項3に記載のダンパは、請求項1または請求項2に記載の構成において、前記羽根部材は前記シャフトの軸芯に対して対称となるように設けられたことを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明では、シャフトの軸芯まわりに回転対称となるように変換手段が設けられているため、制動力はシャフトを傾ける方向によらず、あらゆる方向に対して等しくバランスの取れた制動力を生じるダンパとすることができる。
【0017】
請求項4に記載のダンパは、請求項1〜3の何れか1項に記載の構成において、前記復帰手段は前記ロータの表面に設けられた斜面からなる被係合部と、前記被係合部に対向して設けられ、前記斜面を前記ロータの揺動中心に向けて押圧することで前記ロータを初期位置に向けて付勢する係合部材と、からなることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明では、ハウジング内部に設けられた係合部材が、ロータの表面に設けられた被係合部の斜面を回転中心に向けて押圧し、初期位置に向けてロータを付勢することで、ロータを自動的に初期位置へ戻すダンパとすることができる。
【0019】
請求項5に記載のダンパは、請求項1〜3の何れか1項に記載の構成において、前記復帰手段は前記ロータの表面に設けられた被係合部と、前記被係合部を初期位置である前記シャフトの軸心の延長線上に向けて前記シャフトの軸と直交する方向に付勢する弾性部材と、からなることを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の発明では、ロータ表面に設けられた被係合部を弾性部材がシャフトの軸芯の延長線へ上へ付勢し、ロータを初期位置に向けて付勢する構造としたことで、ロータを自動的に初期位置へ戻すダンパとすることができる。
【0021】
請求項6に記載のダンパは、請求項1〜3の何れか1項に記載の構成において、前記復帰手段は前記シャフトの周囲に設けられ前記開口部を封止するシール部材と、前記シール部材の内側に設けられ、前記シール部材を前記開口部の封止部に向けて付勢すると共に前記シャフトを初期位置に向けて付勢する弾性部材と、からなることを特徴とする。
【0022】
請求項5に記載の発明では、シャフトの周囲に設けられたシール部材が開口部をシールする一方で、シール部材の内側の弾性部材がシャフトを初期位置へ付勢する構造としたことで、ロータを自動的に初期位置へ戻すダンパとすることができる。また弾性部材がシール部材を内側から支持するのでシール部材の封止性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上記構成としたので、高い制動力を備え、且つ自立機構で初期位置へ自動復帰させることができるダンパとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<第1実施形態>
次に、本発明の第1の実施形態に係るダンパについて説明する。
【0025】
図1および図2に示すように、ダンパ10は略円筒状をなす第1ハウジング14と第2ハウジング16とが嵌り合うことでハウジング13を形成している。ハウジング13の一端には開口26が設けられ、ハウジング13の内部で回動可能に保持されたロータ12より延設されたシャフト18が開口26の外側へ突出している。
【0026】
図1および図2に示すように、第1ハウジング14および第2ハウジング16の内周面には、ロータ12の外形に沿った形状でこれを支持する支持部24と、径方向外側へ凹となることでロータ12との間に間隙を設けた収容部22とが交互かつ等間隔に設けられている。例えば図2には、120°間隔で3つの収容部22と、これに対応する位置に支持部24が設けられている。
【0027】
ロータ12は略球状の外形とされており、支持部24によって回動可能に支持されている。ロータ12の外周面には図2に示すように羽根部材20が収容部22に対向する位置で等間隔に設けられており、羽根部材20は収容部22内で狭い隙間をもって上下方向に揺動可能とされている。
【0028】
ロータ12から突設された羽根部材20は収容部22に収まっており、図1(C)に示すように外部から力を受けたシャフト18が初期位置(図中軸CL)より傾くと、シャフト18が設けられたロータ12もまた支持部24に支持されながら回動(揺動)する。このとき羽根部材20の両端は収容部22の内壁で位置規制されるので、ロータ12は軸CLまわりの回転方向には回動しない。
【0029】
ハウジング13内部には粘性流体が充填されており、特に開口26とロータ12との間はロータ12の揺動で粘性流体が漏出することを防ぐため、Oリング40で封止されている。粘性流体としては例えばシリコンオイルなどの化学的性質/物理的物性の安定性に優れた高粘度の液体が考えられるが、これに限定せず他の液体あるいは混合液等を用いることもできる。
【0030】
羽根部材20はロータ12の表面に突設されているので、ロータ12の回動(揺動)によって図1(B)に示す矢印21のように収容部22内で揺動する。このとき収容部22内には粘性流体が充填されているので、羽根部材20は収容部22内で粘性流体からの剪断抵抗を受けつつ矢印21のように揺動する。
【0031】
上記のように羽根部材20はロータ12の外周面に、軸CLまわりに等間隔に設けられているので、シャフト18に対して外部から力が入力される際にロータ12が揺動すれば外部からの入力に対して軸CLまわりの回転方向に関わらず、等しい剪断抵抗すなわち制動力を生じる。
【0032】
図1(B)に示すようにロータ12にはシャフト18が突設されており、外部からの入力がない状態(初期状態)では軸CLに沿って自立した状態を維持する。シャフト18は第1ハウジングに設けられた開口26から外部へ向けて突出しており、このシャフト18に対して外部より入力が発生することにより、この入力に対してロータ12が粘性流体に剪断抵抗を生じつつ揺動することでシャフト18を制動する。
【0033】
シャフト18の先端は特に長さや形状が限定されないため、必要に応じて湾曲させ、または長さや分岐を設定したり、あるいは先端に別のダンパ10を設けることで関節機能を持たせてもよい。
【0034】
図1(B)に示すようにロータ12は支持部24に支持された球形の外周面を備えており、シャフト18を外部からの入力がない状態(初期状態)で軸CLに沿って自立した状態を維持させるための復帰手段を備えている。
【0035】
復帰手段としては例えば図1(B)に示すようにロータ12の表面に設けられた凹球面状の凹部34(図中ではシャフト18と反対側に設けられているが、この位置に限定されず他の位置でもよい)に、この凹部34の表面形状に沿ってこれと嵌合する表面形状(例えば球面形状)のロック部材30が係合し、ロータ12の揺動方向位置決めを行う。
【0036】
ロック部材30は、固定部材36でロータ12方向に付勢された弾性部材、例えば図1(B)に示すバネ32で凹部34に向けて押圧される。これにより球面を形成するロック部材30の表面は凹球面形状の凹部34に係合する。
【0037】
図1(C)に示すようにシャフト18に外部からの力が作用したとき、ロータ12は支持部24に支持されつつ揺動する。初期位置ではロック部材30と係合していた凹部34は、これに伴ってロック部材30から外れる。このためロック部材30を矢印M方向(ロータ12の回転中心方向)に押圧していたバネ32は圧縮され、これに反発してロック部材30をより強く矢印M方向に押し、凹部34に付勢する。
【0038】
バネ32による押圧力でロック部材30がロータ12の回転中心に向けて押圧されることで、ロック部材30が凹部34と最も深く係合する位置(初期状態)にロータ12が回動し、シャフト18を初期状態へ復帰させると共に初期状態を維持する。
【0039】
図1(B)および図2に示すように、第1ハウジング14および第2ハウジング16は内周面に設けられた支持部24でロータ12を支持する一方で、内部(例えば収容部22)に充填された粘性流体を封止し、外部へ漏出させないためにOリング40で開口26の内側を封止している。このときOリング40を介して第1ハウジング14および第2ハウジング16がロータ12を把持した状態で第1ハウジング14と第2ハウジング16を接合する。
【0040】
接合後に粘性流体を充填する方法としては、例えばロータ12にシャフト18を挿入する軸孔19に連通路42を予め貫通させておき、軸孔19から連通路42を通じて粘性流体をハウジング内部に充填するなどの方法でもよい。
【0041】
なお図1、2ではシャフト18はロータ12に設けられた軸穴19に刺さった棒状部材としているが、樹脂などでシャフト18とロータ12とが一体に形成された構造としてもよい。
【0042】
<作用>
上記のような構造としたことにより、ダンパ10はシャフト18を倒そうとする方向に入力された外部からの力に対して、ロータ12の回動(揺動)に変換し、さらにロータ12の外周面に設けられた羽根部材20の上下方向への揺動に変換する。
【0043】
羽根部材20は収容部22内で粘性流体からの剪断抵抗を受けつつ矢印21のように揺動するので、粘性流体に対する剪断抵抗が生じる。加えて収容部22内は羽根部材20との間に狭い間隙しか存在しないため、粘性流体を羽根部材20が圧縮しながら上下方向に揺動することになる。
【0044】
これにより羽根部材20は粘性流体から剪断抵抗を受けつつ圧縮に対する反発をも受けるので、シャフト18を倒そうとする外部からの力に対して高い抵抗力あるいは制動力を生じさせることが可能となる。
【0045】
またロータ12の表面に設けられた復帰手段により、ロータ12は初期位置(軸CL)に付勢されると同時に、ロータ12を回動させる外部からの力に抗してロータ12を初期位置へ復帰させる効果を有する。このため外部からの力への更なる制動力に加えて、入力が終了すると自動的にロータ12を初期位置へ復帰させる効果をも有するダンパとすることができる。
【0046】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係るダンパについて説明する。なお第1実施形態と共通する部品は同じ番号を付与し、説明を省略する。
【0047】
図3および図4に示すように、ダンパ11Aは第1実施形態と同様、略円筒状をなす第1ハウジング14と第2ハウジング16とが嵌り合っている。これを外側より覆うように第3ハウジング15が嵌合することでハウジング13を形成している。
【0048】
ハウジング13の一端には開口26が設けられ、ハウジング13の内部で回動可能に保持されたロータ12より延設されたシャフト18の一端が開口26の外側へ突出している。一方、ロータ12の軸孔19に挿通したシャフト18の先端は先端部18Aとして開口26の反対側へ突出し、バネ38と係合している。第3ハウジング15は、これらの突出部分を外側から被覆し粘性流体の漏出、外部部材の干渉や異物の混入を防止している。
【0049】
図3(B)および図4に示すように、本実施形態においてはシャフト18およびロータ12の復帰手段は、ロータ12側に設けられた被係合部を弾性部材が支持することで初期位置への復帰および初期状態の維持をおこなう構成とされている。
【0050】
具体的には、ロータ12に設けられた被係合部(図3および図4ではシャフト18の先端部18A)が略円盤形状とされたバネ38の中心部38Cに係合することで、先端部18Aを中心部38Cに維持している。
【0051】
図4に示すようにバネ38は中心部38Cから周方向外側へ等間隔(ここでは120°間隔)で設けられた複数の腕部39が渦巻き状に外側へ延出し略円盤状のバネ38を形成しており、中心部38Cは腕部39でバネ38の中心(軸CL)に位置規制される。
【0052】
バネ38は図3(B)に示すように例えば第2ハウジング16に嵌合し位置決めされる形状とされており、腕部39の弾性により中心部38Cは軸CLの延長線上に弾性をもって位置し、ロータ12の被係合部(図中ではシャフト18の先端部18A)が係合することでロータ12の回動(揺動)位置を弾性をもって規制する。
【0053】
これにより、シャフト18を介してロータ12に外部より入力があった際には、ロータ12の回動(揺動)に伴いシャフト18の先端部18Aが中心部38Cに係合したままバネ38の弾性に逆らって移動する。シャフト18への入力が終了するとバネ38の弾性により中心部38Cは軸CLの位置へ戻るので、中心部38Cに係合した先端部18Aもまた軸CLの位置に戻り、シャフト18は初期位置へ復帰する。同時にバネ38の弾性によりシャフト18の初期位置が維持される。
【0054】
<作用>
ダンパ11Aはシャフト18への入力が終了するとバネ38の弾性により中心部38Cは軸CLの位置へ戻るので、中心部38Cに係合した先端部18Aもまた軸CLの位置に戻り、シャフト18は初期位置へ復帰する点は第1実施形態と同様である。
【0055】
第2実施形態に係るダンパ11Aは上記のような構造としたことにより、ロータ12の径方向に突設されたロック部材30、バネ32、固定部材36を必要としないので全体をより小型化することができ、また部品点数を少なくすることも可能となる。
【0056】
また先端部18Aの長さを十分に大きくすれば自立機構そのものがロータ12に接触しない構成とできるので、球状のロータ12の表面が接触により摩耗することを防止でき、制動力のムラやガタつき等を防ぐことができる。
【0057】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態に係るダンパについて説明する。なお第1実施形態および第2実施形態と共通する部品は同じ番号を付与し、説明を省略する。
【0058】
図5および図6に示すように、ダンパ11Bは第1実施形態と同様、略円筒状をなす第1ハウジング14と第2ハウジング16とが嵌り合っている。これを外側より覆うように第3ハウジング15が嵌合することでハウジング13を形成している。
【0059】
第3ハウジング15の一端には開口15Aが設けられ、ハウジング13の内部で回動可能に保持されたロータ12より延設されたシャフト18の一端が開口15Aの外側へ突出している。
【0060】
一方、図6に示すようにシャフト18は開口15Aから突出した部分がバネ38の中心部38Cを貫通し、これと係合している。更に、この外側をゴムなどの軟質な素材で形成されたシーリング50が被覆している。シーリング50はバネ38近傍の部分を外側から被覆し粘性流体の漏出、外部部材の干渉や異物の混入等を防止している。
【0061】
バネ38は図5(B)に示すように例えば第3ハウジング15に嵌合し位置決めされる形状とされており、バネ自体の弾性により中心部38Cは軸CLの延長線上に弾性をもって位置し、シャフト18が中心部38Cを貫通し係合することでロータ12の回動(揺動)位置を弾性をもって規制する。
【0062】
これにより、シャフト18を介してロータ12に外部より入力があった際には、ロータ12の回動(揺動)に伴いシャフト18が中心部38Cに係合したままバネ38の弾性に逆らって移動する。シャフト18への入力が終了するとバネ38の弾性により中心部38Cは軸CLの位置へ戻るので、中心部38Cに係合したシャフト18もまた軸CLの位置に戻り、ロータ12(シャフト18)は初期位置へ復帰する。同時にバネ38の弾性によりシャフト18の初期位置が維持される。
【0063】
<作用>
ダンパ11Bはシャフト18への入力が終了するとバネ38の弾性により中心部38Cは軸CLの位置へ戻るので、中心部38Cに係合したシャフト18もまた軸CLの位置に戻り、ロータ12(シャフト18)は初期位置へ復帰する点は第1および第2実施形態と同様である。
【0064】
第3実施形態に係るダンパ11Bは上記のような構造としたことにより、ロータ12の径方向に突設されたロック部材30、バネ32、固定部材36を必要としないので全体をより小型化することができ、また部品点数を少なくすることも可能となる。
【0065】
またバネ38には通常のコイルバネを用いることができるので設計自由度の向上、コスト削減などの効果がある。加えて複数のバネ38を組み合わせて使用することもできるので、バネ38の弾性をより広く設定することができる。
【0066】
本実施形態においてはシール方法自体も摺動ではなく固定部材であるシーリング50を用いており、加えて図5(B)に示すように、バネ38が開口15Aおよびシャフト18の周囲においてシーリング50を内側から支持する構造とされているので、粘性流体の漏出をより効果的に防ぐことができる。
【0067】
さらに自立機構そのものがロータ12に接触しない構成とできるので、球状のロータ12の表面が接触により摩耗することを防止でき、制動力のムラやガタつき等を防ぐことができる。
【0068】
<その他>
以上、本発明の実施例について記述したが、本発明は上記の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【0069】
例えば上記第1実施形態ではロータ12に設けられた凹部に係合するロック部材30を備えた構成を例に挙げたが、これに限定せず例えばロータ12側にロック部材を設け、ハウジング側に形成された凹部に係合する構成とすることも可能である。また形状も球面/凹球面などに限定されずピラミッド形状の凹部に凸球面などの組み合わせでもよい。
【0070】
あるいはロータ12側に設けられた被係合部と固定部材36との間を引っ張りバネで結び、外部からの力でロータ12が揺動した際には引っ張りバネが伸びることでロータ12を初期位置に付勢する構造とされていてもよい。
【0071】
さらに上記第3実施形態ではシーリング50がシャフト18の自立に関与しない構成を例に挙げたが、これに限定せず例えばシーリング50を十分な硬度と弾性を持たせた素材で形成し、シャフト18の自立を補助する構成とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るダンパを示す斜視図および断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るダンパの内部構造を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るダンパを示す斜視図および断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るダンパの内部構造を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るダンパを示す斜視図および断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るダンパの内部構造を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0073】
10 ダンパ
11A ダンパ
11B ダンパ
12 ロータ
13 ハウジング
14 ハウジング
15 ハウジング
16 ハウジング
18 シャフト
18A 先端部
19 軸孔
20 羽根部材
22 収容部
24 支持部
26 開口
30 ロック部材
32 バネ
34 凹部
36 固定部材
38 バネ
38C 中心部
39 腕部
40 リング
42 連通路
50 シーリング
CL 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性流体が充填され一端に開口部が設けられたハウジングと、
前記ハウジング内に回転可能に収容された球状のロータと、
先端が前記開口部より突出するように前記ロータの表面の一端に設けられ、外部から伝達される力で前記ロータを作動位置へ揺動させるシャフトと、
前記ロータの表面に設けられ、前記ロータの揺動を前記粘性流体への圧縮力に変換する変換手段と、
前記作動位置から前記シャフトに外部から力が伝達されていない状態の初期位置となるように前記ロータを付勢する復帰手段と、を備えたことを特徴とするダンパ。
【請求項2】
前記変換手段は前記ロータの表面に設けられた板状の羽根部材であり、
前記羽根部材は前記ハウジングの内壁に前記羽根部材と対向して設けられた収容部に嵌り込み、前記収容部では前記羽根部材と前記ハウジングの内壁との間隙が狭くなることを特徴とする請求項1に記載のダンパ。
【請求項3】
前記羽根部材は前記シャフトの軸芯に対して対称となるように設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のダンパ。
【請求項4】
前記復帰手段は前記ロータの表面に設けられた斜面からなる被係合部と、
前記被係合部に対向して設けられ、前記斜面を前記ロータの揺動中心に向けて押圧することで前記ロータを初期位置に向けて付勢する係合部材と、からなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のダンパ。
【請求項5】
前記復帰手段は前記ロータの表面に設けられた被係合部と、
前記被係合部を初期位置である前記シャフトの軸心の延長線上に向けて前記シャフトの軸と直交する方向に付勢する弾性部材と、からなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のダンパ。
【請求項6】
前記復帰手段は前記シャフトの周囲に設けられ前記開口部を封止するシール部材と、
前記シール部材の内側に設けられ、前記シール部材を前記開口部の封止部に向けて付勢すると共に前記シャフトを初期位置に向けて付勢する弾性部材と、からなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のダンパ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−196408(P2011−196408A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61506(P2010−61506)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】