説明

トラクタ

【課題】ロータリ耕耘装置の強制昇降時にはエンジンストールを招くことなくエンジンの回転速度を変更し得るトラクタを構成する。
【解決手段】ロータリ耕耘装置の強制上昇制御時には、遅延時間設定ダイヤル41で設定されている第1遅延時間が経過した後に回転速度変更手段52がエンジンEの回転速度を減ずる減速制御を行い、この上昇状態において強制下降制御を行う際には、回転速度変更手段52がエンジンの回転速度を復帰させる復帰制御を行い、強制下降制御を開始するタイミングで復帰制御を開始し、この後、遅延時間設定ダイヤル41で第1遅延時間とともに設定される第2遅延時間が経過した後にロータリ耕耘装置の強制下降制御を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体からの動力で駆動されるロータリ耕耘装置が車体に昇降自在に連結され、耕深検出手段で検出されるロータリ耕耘装置の耕深を目標耕深に維持する自動耕深制御を実現する自動耕深制御手段が備えられ、前記自動耕深制御に優先して前記ロータリ耕耘装置を所定の上限位置まで上昇させる強制上昇制御と、この強制上昇制御の後に元の自動耕深制御に復帰させる強制下降制御とを実現する強制昇降制御手段が備えられているトラクタに関し、詳しくは、強制昇降制御手段によるロータリ耕耘装置の強制上昇制御と強制下降制御とに連動してエンジンの回転速度を変更する技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成されたトラクタとして特許文献1には、車体の後端に昇降自在にロータリ耕耘装置が支持され、強制上昇スイッチの押し操作によってロータリ耕耘装置を所望の対車体レベルまで上昇させ、再度の押し操作によってロータリ耕耘装置元のレベルまで下降させる制御系を備えたものが示されている。
【0003】
この特許文献1のトラクタでは、強制上昇スイッチが押し操作された際には、ロータリ耕耘装置の上昇を行うと共に、アクセル機構の制御によりエンジンの回転数(回転速度)を低減し、変速機構の制御により走行速度を減速する制御が行われる。この後に、強制上昇スイッチが再度押し操作された際には、ロータリ耕耘装置の下降を行うと共に、エンジンの回転数(回転速度)を復元し、走行速度を復元する制御が行われる。
【0004】
また、特許文献2には、車体の後端に昇降自在にロータリ耕耘装置が連結され、車体の後端に突設されたPTO軸からロータリ耕耘装置に駆動力を伝える伝動系が備えられ、ロータリ耕耘装置のロータリカバーの揺動量を検出するカバーセンサから耕深を検出して耕深を維持するようにロータリ耕耘装置を昇降する自動耕深制御手段を備え、この自動耕深制御手段による自動耕深制御時に操作レバーが上向きに操作されることでロータリ耕耘装置を上昇限界位置まで上昇させ、操作レバーが下向きに操作されるがロータリ耕耘装置を自動耕深制御に復帰させる強制昇降制御手段が示されている。
【0005】
この特許文献2では、ロータリ耕耘装置の強制上昇を開始した後に、上昇限界に達するまでにPTO軸の回転速度を低下させるようにエンジンの調速レバーをDCモータで操作する制御形態が記載されている。つまり、ロータリ耕耘装置を強制上昇させる際にロータリ耕耘装置によって土が勢い良く跳ね飛ばされ、覆土されず耕起面に大きい穴が形成される不都合を解消できるようにしている。尚、この特許文献2では、ロータリ耕耘装置の上昇時にのみPTO軸の回転が低減するようにエンジンの回転速度を減じ、ロータリ耕耘装置が上昇限界に達すると元の回転速度でエンジンを駆動する制御形態が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1‐195933号公報
【特許文献2】特開平8‐214612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
圃場での耕起作業では、車体を直進走行させながらロータリ耕耘装置で耕起作業を行い、車体が枕地に達するとロータリ耕耘装置を上昇させて耕起作業を一時中断して車体の旋回により走行方向を反転させ、この後、ロータリ耕耘装置を下降させて耕起作業を再開する作業形態となる。
【0008】
このように車体が枕地に達する毎にロータリ耕耘装置の昇降を必要とするため、特許文献1や特許文献2に記載されるスイッチ等の簡単な操作でロータリ耕耘装置を上昇させ、この後の操作で元の耕起作業を再開できる制御はオペレータの操作の手間を省ける良好な面を現出する。
【0009】
強制上昇制御によって上昇させたロータリ耕耘装置を強制下降制御によって下降させる際には、エンジンストールを回避するためロータリ耕耘装置の耕起爪が接地するまでに、この耕起爪が充分な回転速度に達している必要がある。しかしながら、車輪が圃場に沈み込んでいる場合や土壌が硬質である場合には、ロータリ耕耘装置の下降制御の開始と同時にロータリ耕耘装置の駆動を開始してもロータリ耕耘装置の耕起爪が接地するタイミングでロータリ耕耘装置の耕起爪の駆動速度が耕起に適した回転速度に達していないことありエンジンストールに繋がることも考えられた。
【0010】
本発明の目的は、ロータリ耕耘装置の強制上昇時にはエンジンの回転速度を低減するものでありながら、強制下降時にはエンジンストールを招くことのないトラクタを合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴は、車体からの動力で駆動されるロータリ耕耘装置が車体に昇降自在に連結され、耕深検出手段で検出されるロータリ耕耘装置の耕深を目標耕深に維持する自動耕深制御を実現する自動耕深制御手段が備えられ、前記自動耕深制御に優先して前記ロータリ耕耘装置を所定の上限位置まで上昇させる強制上昇制御と、この強制上昇制御の後に元の自動耕深制御に復帰させる強制下降制御とを実現する強制昇降制御手段が備えられているトラクタであって、
前記車体に備えたエンジンの回転速度を目標回転速度に対応した値に設定する回転速度制御手段を備え、前記強制上昇制御時には前記エンジンの回転速度を、この強制上昇制御直前の目標回転速度より低い値に設定する減速制御を行い、前記強制下降制御時には前記エンジンの回転速度を、強制上昇制御直前の目標回転速度に復帰させる復帰制御を行う回転速度変更手段を備え、
前記復帰制御の開始タイミングから下降遅延時間が経過した後に前記ロータリ耕耘装置の下降を開始させる遅延時間設定手段を備え、この遅延時間設定手段は前記下降遅延時間の人為的な設定が可能に構成されている点にある。
【0012】
この構成によると、自動耕深制御の実行時に強制昇降制御手段によってロータリ耕耘装置の強制上昇制御を行った際には、回転速度変更手段の減速制御によってエンジンの回転速度が、強制昇降制御手段による強制上昇制御直前の回転速度より低い値に設定される。この後に強制下降制御を行う際には、回転速度変更手段がエンジンの回転速度を、強制上昇制御直前の目標速度に復帰させる復帰制御を開始し、この開始タイミングから下降遅延時間が経過することでエンジンの回転速度が充分に高まった後にロータリ耕耘装置の下降を開始することになる。また、下降遅延時間を設定する遅延時間設定手段が下降遅延時間を人為的に長短に設定することが可能であることから、作業環境や土壌の条件等に対応した下降遅延時間の設定が可能となる。
従って、ロータリ耕耘装置の強制上昇時にはエンジンの回転速度を低減するものでありながら、強制下降時にはエンジンの回転速度が充分に高速化しておりエンジンストールを招くことのないトラクタが構成された。
【0013】
本発明は、前記回転速度変更手段は、前記強制上昇制御の開始タイミングを基準にして上昇遅延時間が経過した後に、前記減速制御を行うと共に、前記上昇遅延時間が前記下降遅延時間に連係する値に設定されても良い。
【0014】
これによると、強制上昇制御時には、この強制上昇制御の開始タイミングを基準にして上昇遅延時間が経過した後に強制上昇制御直前の目標回転速度より低い値を目標回転速度に設定する減速制御が行われる。つまり、強制上昇制御によってロータリ耕耘装置が上昇することでエンジンに作用する負荷が低減した後に、減速制御によってエンジンの回転速度が低減するため、エンジンストールを招くことがない。また、上昇遅延時間が下降遅延時間と連係した値に設定されるので、作業環境や土壌等の条件を反映させるものになり、上昇遅延時間を別途設定する必要もない。
【0015】
本発明は、前記遅延時間設定手段は、人為操作具の設定位置に対応して前記下降遅延時間の時間を任意に設定できると共に、前記回転速度変更手段による前記エンジンの回転速度の変更の実行と非実行とを選択できても良い。
【0016】
これによると、人為操作具の設定位置により下降遅延時間を任意に設定できるばかりでなく、強制昇降制御時にエンジン回転速度の変更を必要としない場合には、この人為操作具の操作によってエンジン回転速度を変更しない制御が実現する。
【0017】
本発明は、前記エンジンから前記車体の走行装置に伝えられる動力をアクチュエータの作動によって変速する変速装置と、変速操作具の設定位置に対応する変速作動を実現する変速制御手段とが備えられると共に、
前記回転速度変更手段によって前記減速制御が行われる際には前記変速操作具で設定されている変速位置より低速の変速状態を現出し、この後、前記復帰制御が行われる際には前記変速操作具で設定されている変速位置に対応する変速状態を現出する走行速度変更手段が備えられても良い。
【0018】
これによると、ロータリ耕耘装置の強制上昇制御が行われた場合には、エンジン回転数を低減する減速制御と連係して走行速度変更手段が走行速度を低減するので、枕地で車体を旋回させる場合に低速走行が可能となる。この後、ロータリ耕耘装置の強制下降制御時に復帰制御が行われた場合には、走行速度変更手段が走行速度を元の速度に復帰させるので効率的な耕耘作業を再開できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】トラクタの全体側面図である。
【図2】ロータリ耕耘装置の昇降作動系を示す斜視図である。
【図3】トラクタの運転部の平面図である。
【図4】トラクタの制御系を示すブロック回路図である。
【図5】ロータリ耕耘装置の昇降制御系を示すブロック回路部である。
【図6】強制昇降制御を示すフローチャートである。
【図7】車体旋回時における制御タイミングを模式的に示す平面図である。
【図8】制御動作のタイミングを示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1に示すように、走行装置として左右一対の前車輪1と左右一対の後車輪2とを備えた車体Aの中央位置に運転部Acを配置すると共に、この車体Aの後端に昇降自在、かつ、ローリング自在にロータリ耕耘装置Rを連結してトラクタが構成されている。
【0021】
このトラクタは、車体Aの前部位置のエンジンフード内に水冷式のディーゼルエンジンE(以下、エンジンEと略称する)を備え、車体Aの中央位置で運転部Acの下側から後端に亘る部位にミッションケースMを備えている。ミッションケースMは、エンジンEの駆動力を変速して前車輪1と後車輪2と伝える機能を有した変速装置Mtを備え、変速駆動力を車体後端の出力軸としてのPTO軸3に伝える。
【0022】
図4に示すようにエンジンEには、燃料噴射量や噴射タイミングを電子制御するコモンレール式の燃料噴射装置を備えている。燃料噴射装置は、燃料タンク5に貯留した燃料を圧送するサプライポンプ6と、圧送した燃料を蓄圧するコモンレール7と、蓄圧した燃料を燃焼室(図示せず)に噴射する電子制御式の複数のインジェクタ8と、コモンレール7の内圧を検出する圧力センサ9と、エンジンEの回転速度を計測するピックアップ式の回転センサ10とを備えている。
【0023】
図面には示していないが、前述した変速装置Mtは、作業者の変速操作時に伝動系の油圧クラッチの切り作動を行い、次に、アクチュエータとしての油圧式のシフトシリンダの作動で変速ギヤのシフト作動を行い、次に、油圧クラッチの入り作動を行い、これらの作動を短時間のうちにシーケンシャルに実行することで作業者が主クラッチを人為的に切り操作せずとも変速を実現する。尚、この変速装置Mtでは、シフトシリンダの駆動力で作動するシフタを有したシンクロメッシュ式のギヤ変速系と、油圧によって作動するシフトシリンダと、油圧によって入り切り作動する油圧クラッチと、これらを連係させるパイロット油圧系等を備えている。
【0024】
本発明のトラクタの変速装置Mtは、前述したようにシフトシリンダで変速作動を行うものに限るものではなく、伝動系のギヤ変速部毎に油圧クラッチ(アクチュエータとして機能することになる)を備え、作業者の変速操作時には複数の油圧クラッチのうちの何れかを選択的に入り作動させることで、そのギヤ変速部からの変速駆動力を取り出す変速構造を備えたものであっても良い。
【0025】
図1及び図2に示すように、車体Aの後端でミッションケースMの上部位置には、リフトシリンダ11の作動により揺動端が昇降作動する左右一対のリフトアーム12を備え、このリフトアーム12の基端位置には揺動角を計測するリフトアームセンサ12Sを備えている。ロータリ耕耘装置Rは、単一のトップリンク13と左右一対のロアーリンク14とで成る3点式のリンク機構を介して車体Aの後端に連結している。左右のロアーリンク14と、左右のリフトアーム12とがリフトロッド15によって連結され、左右のリフトロッド15のうちの一方には複動型のローリングシリンダ15Cが介装され、これと平行する位置にローリングシリンダ15Cの伸縮量を計測するストロークセンサ15Sが備えられている。
【0026】
ロータリ耕耘装置Rは、前述したPTO軸3からの駆動力がユニバーサルジョイントを有した伝動軸16を介して伝えられる横フレーム17と、この横フレーム17から動力が伝えられる伝動ケース18と、この伝動ケース18から動力が伝えられ横向き姿勢の駆動軸芯周りで回転するロータリ軸19とを備えている。このロータリ軸19には多数の耕起爪20が備えられ、ロータリ耕耘装置Rの上部カバー21の後部位置には横向きの揺動軸芯周りで揺動自在に支持された後部カバー22が備えられている。
【0027】
上部カバー21には、後部カバー22の揺動量から耕深を検出する耕深検出手段としてのカバーセンサ23を備えている。また、車体Aの後端位置には車体Aのローリング角を検出するローリング角センサ24を備えている。カバーセンサ23はロータリ耕耘装置Rの対地高さを検出する対地高さ検出手段の一例であり、この対地高さ検出手段として超音波によってロータリ耕耘装置Rの対地高さを検出する超音波センサを用いることや、画像処理によってロータリ耕耘装置Rの対地高さを検出するようにカメラと画像処理装置とを用いることも可能である。
【0028】
図1及び図3に示すように、運転部Acは、側面のガラス壁と、上部のルーフとを有するキャビン30を備え、このキャビン30の内部に作業者が着座する運転座席31を備えている。運転座席31の前方位置には、前車輪1を操向操作するステアリングホイール32と、エンジンEの回転数を設定するアクセル操作具としてのアクセルレバー33と、ロータリ耕耘装置Rの強制的な昇降を行う強制昇降レバー34とが配置され、この下方位置にアクセル操作具としてのアクセルペダル35が配置されている。運転座席31の側方位置には、走行速度を設定する変速操作具としての主変速レバー36と、ロータリ耕耘装置Rの昇降制御を行うポジションレバー37とを備えると共に、ロータリ耕耘装置Rの自動耕深制御時の耕深を設定する耕深設定ダイヤル38と、強制上昇時におけるロータリ耕耘装置Rの目標上限(上昇位置)を設定する上限設定ダイヤル39と、ロータリ耕耘装置Rの目標ローリング角を設定するローリング角設定ダイヤル40と、ロータリ耕耘装置Rの強制上昇時におけるエンジン回転速度低下タイミングを設定する人為操作具としての遅延時間設定ダイヤル41とを備えている。
【0029】
アクセルレバー33は、手動操作によりエンジンEの回転速度を任意に設定して保持するように摩擦保持構造を有し、アクセルペダル35は、踏み込み操作によりエンジンEの回転速度を任意に設定し、非操作時には低速回転側に復帰するようにバネ付勢構造を有している。
【0030】
ポジションレバー37は、揺動操作型で任意の操作位置に摩擦式に保持できる構造を有しており、車体後方側への操作でロータリ耕耘装置Rを上昇(リフトアーム12の揺動端を上昇)させ、車体後方側への操作でロータリ耕耘装置Rを下降(リフトアーム12の揺動端を下降)させ、その揺動位置に対応した対車体高さにロータリ耕耘装置Rの高さを設定するポジション制御を実現する。特に、ポジションレバー37を前方側の操作端(最下降側)に操作することで自動耕深制御への移行が実現する。
【0031】
強制昇降レバー34は、中立位置を基準にして上側の上昇操作位置と、中立位置を基準にして下側の下降操作位置とに操作自在で、非操作状態で中立位置に保持されるようにバネ付勢されている。尚、強制昇降制御を実現するためには必ずしも強制昇降レバー34を備える必要はなく、例えば、強制上昇ボタンと強制下降ボタンとを備えることや、初期の押し操作で強制上昇制御を行わせ、再度の押し操作で強制下降制御を行わせるようにプッシュ式のスイッチを備えても良い。
【0032】
この強制昇降レバー34は、自動耕深制御時に作業者によって上昇操作位置に短時間でも操作された場合に、自動耕深制御に優先してロータリ耕耘装置Rを上限設定ダイヤル39で設定される目標上限まで上昇させて停止させる強制上昇制御を実現する。更に、この上昇状態において作業者によって下降操作位置に短時間でも操作された場合にはロータリ耕耘装置Rを下降させて自動耕深制御へ移行させる制御を実現する。
【0033】
耕深設定ダイヤル38は、回転操作により自動耕深制御における目標耕深を任意に設定するものであり、自動耕深制御では、この耕深設定ダイヤル38で設定される目標耕深に、カバーセンサ23で検出されるロータリ耕耘装置Rの耕深が維持されるようにリフトシリンダ11の制御が行われる。
【0034】
ローリング角設定ダイヤル40は、回転操作によりローリング制御における目標ローリング角を任意に設定するものであり、ローリング制御では、ストロークセンサ15Sの計測結果とローリング角センサ24の計測結果とに基づいてロータリ耕耘装置Rの対地ローリング角が演算され、このように演算された対地ローリング角が、目標ローリング角に維持されるようにローリングシリンダ15Cを伸縮作動させる制御が行われる。
【0035】
遅延時間設定ダイヤル41(人為操作具)は、図4、図5に示すように強制昇降制御において後述する減速制御と復帰制御とにおいて遅延を行わないOFF領域と、これに隣接する最小位置から最大位置までの設定領域とに設定可能である。制御形態は後述するが、OFF領域では遅延タイムアップ信号が出力されず、設定領域ではタイムアップ信号が出力される。この遅延時間設定ダイヤル41を設定領域に設定することにより第1遅延時間T1と第2遅延時間T2とを任意に設定できると共に、ロータリ耕耘装置Rの強制昇降制御において回転速度変更手段52によるエンジンEの回転速度の変更と、走行速度変更手段67による変速装置Mtの変速段の変更を実現する。また、OFF領域に設定することにより回転速度変更手段52によるエンジンEの回転速度の変更と、走行速度変更手段67による変速装置Mtの変速段の変更を行わず強制昇降制御のみが可能となる。
【0036】
主変速レバー36は、揺動操作型に構成され任意の変速位置に保持可能であり、この変速位置に対応して変速装置Mtのシフトシリンダと油圧クラッチとを制御することで変速位置に対応した変速段(変速状態)が作り出される。
【0037】
このように、このトラクタではポジション制御と、自動耕深制御と、ローリング制御とが可能であり、また、主変速レバー36の操作に対応した変速制御が可能である。
【0038】
特に、このトラクタでは、枕地で車体Aを旋回させるため強制昇降レバー34でロータリ耕耘装置Rを目標上限まで上昇させた場合に、ロータリ耕耘装置Rが高速で駆動されることによる無駄な耕起と無駄な燃料消費を抑制すると共に、車体Aの安定化を図るために、エンジンEの回転速度を減じ、走行速度を低速側に変速する減速制御が行われる。具体的には、エンジンEの回転速度を、この強制上昇制御の直前の目標回転速度より低い値に設定し、変速装置Mtの変速段を低速側に設定する。
【0039】
このように強制上昇制御によりロータリ耕耘装置Rが上昇した状態で車体Aの旋回が終了して強制昇降レバー34を下降操作位置に操作することでロータリ耕耘装置Rを強制下降させた場合には、エンジンEの回転速度を、強制上昇制御の直前の目標回転速度(元の回転速度)に復帰させ、走行速度を元の走行速度に復帰させる復帰制御が行われ、更に、自動耕深制御へ移行する制御が行われる。これらの制御を実現する制御構成と制御形態とを以下に説明する。
【0040】
〔制御構成〕
図4に示すように、このトラクタにはエンジンEを制御するようにマイクロプロセッサやメモリ等を有したエンジンECU50と、ロータリ耕耘装置Rの昇降やローリングを制御し、変速装置Mtの変速制御を行うようにマイクロプロセッサやメモリ等を有したメインECU60とを備えており、このエンジンECU50とメインECU60との間ではCAN(Controller Area Network)通信などの車内通信により相互に情報のアクセスを行う信号系が構成されている。
【0041】
エンジンECU50には、アクセルレバー33又はアクセルペダル35で設定される目標回転速度に対応した値にエンジンEの回転速度を制御する回転速度制御手段51と、既に設定されている目標回転速度に代えて新たに目標回転速度を設定する回転速度変更手段52とを備えている。
【0042】
メインECU60は、ポジション制御を実現するポジション制御手段61と、自動耕深制御を実現する自動耕深制御手段62と、ロータリ耕耘装置Rの強制上昇制御及び強制下降制御を実現する強制昇降制御手段63と、ロータリ耕耘装置Rのローリング制御を実現するローリング制御手段64と、ロータリ耕耘装置Rの強制上昇制御時にエンジンEの回転速度の低下タイミングを設定し、かつ、強制上昇状態のロータリ耕耘装置Rの強制下降制御における下降開始タイミングを設定する遅延時間設定手段65と、変速装置Mtの変速を実現する変速制御手段66と、変速装置Mtに既に設置されている変速段(変速状態)に代えて新たな変速段を設定して走行速度の減速を実現する走行速度変更手段67とを備えている。
【0043】
前述した回転速度制御手段51と、回転速度変更手段52と、ポジション制御手段61と、自動耕深制御手段62と、強制昇降制御手段63と、ローリング制御手段64と、遅延時間設定手段65と、変速制御手段66と、走行速度変更手段67とはソフトウエアで構成されるものであるが、これらをソフトウエアとハードウエアとの組み合わせによって構成して良く、また、これらをハードウエアのみによって構成しても良い。
【0044】
エンジンECU50は、アクセルレバー33によるアクセル設定位置を検出するポテンショメータ型等のレバーセンサ33Sと、アクセルペダル35によるアクセル設定位置を検出するポテンショメータ型等のペダルセンサ35Sと、エンジンEの回転速度を計測するピックアップ型等の回転センサ10と、前述したコモンレール7の内圧を検出する圧力センサ9とからの信号が入力する。
【0045】
メインECU60は、ポジションレバー37の操作位置を検出するポテンショメータ型等のポジションセンサ37Sと、強制昇降レバー34の操作を検出する昇降スイッチ34Sと、耕深設定ダイヤル38の設定位置を検出するポテンショメータ型等の耕深設定器38Sと、上限設定ダイヤル39の操作位置を検出するポテンショメータ型等の上限設定器39Sと、ローリング角設定ダイヤル40の操作位置を検出するポテンショメータ型等のローリング角設定器40Sと、遅延時間設定ダイヤル41の操作位置を検出するポテンショメータ型等の遅延時間設定器41Sと、主変速レバー36の設定位置を検出するポテンショメータ型やロータリスイッチ型等の変速位置センサ36Sと、ポテンショメータ型等のリフトアームセンサ12Sと、ポテンショメータ型等のストロークセンサ15Sと、ポテンショメータ型等のカバーセンサ23とからの信号が入力する。
【0046】
更に、このメインECU60は、リフトシリンダ11への作動油の給排を行う電磁式の昇降制御弁11Vと、ローリングシリンダ15Cへの作動油の給排を行う電磁式のローリング制御弁15Vと、変速装置Mtとに制御信号を出力する。
【0047】
エンジンECU50では、アクセルレバー33の設定位置をレバーセンサ33Sの信号から取得し、また、アクセルペダル35の操作位置をペダルセンサ35Sの振動から取得し、回転速度制御手段51が、アイソクロナス制御やドループ制御に対応して燃料噴射量や噴射タイミングを制御して目標とする回転速度に設定する制御を行う。尚、アクセルレバー33を任意の位置に設定した状態で、アクセルペダル35を踏み込み操作した場合には、アクセルレバー33の設定位置を超える場合にのみ、エンジンEの回転速度を高める制御が行われる。
【0048】
メインECU60において、ポジション制御手段61がポジション制御を実行する際には、ポジションレバー37の操作位置をポジションセンサ37Sで取得し、このように取得した位置を目標高さに設定し、リフトアームセンサ12Sでロータリ耕耘装置Rの対車体高さを検出し、この対車体高さを目標高さに合致させるように昇降制御弁11Vを操作してリフトアーム12を作動させる制御が行われる。
【0049】
また、自動耕深制御手段62が自動耕深制御を実行する際には、耕深設定ダイヤル38の設定位置を耕深設定器38Sで取得し、このように取得した位置を目標耕深に設定し、カバーセンサ23の検出情報からロータリ耕耘装置Rの耕深(実耕深)を取得し、この耕深(実耕深)を目標耕深に合致させるように昇降制御弁11Vを操作してリフトアーム12を作動させる制御が行われる。
【0050】
また、ローリング制御手段64がローリング制御を実行する際には、ローリング角設定ダイヤル40の設定位置をローリング角設定器40Sで取得して目標ローリング角に設定し、ストロークセンサ15Sの計測結果とローリング角センサ24の計測結果とに基づいてロータリ耕耘装置Rの対地ローリング角を演算によって取得し、この対地ローリング角を目標ローリング角に合致させるようにローリング制御弁15Vを操作してローリングシリンダ15Cを作動させる制御が行われる。
【0051】
更に、自動耕深制御の実行時に強制昇降レバー34が強制上昇位置に操作されたことを昇降スイッチ34Sが取得した場合には、強制昇降制御手段63が上限設定ダイヤル39の設定位置を上限設定器39Sで取得して目標上限に設定し、リフトアームセンサ12Sで検出される対車体高さを目標上限に合致させるように昇降制御弁11Vを操作してリフトアーム12を作動させる形態となる強制上昇制御が行われる。
【0052】
このように強制上昇制御によってロータリ耕耘装置Rが上昇位置(目標上限)にある状態で強制昇降レバー34が強制下降位置に操作された場合には、強制昇降制御手段63がリフトアームセンサ12Sで検出される対車体高さを下限まで下降させ、自動耕深制御に移行させて昇降制御弁11Vを操作する強制下降制御が行われる。
【0053】
尚、強制下降制御を開始するタイミングでは後部カバー22の後端が垂れ下がる姿勢にあるので、この時点で自動耕深制御に移行することでロータリ耕耘装置Rが下降する制御が行われるため、強制昇降レバー34が強制下降位置に操作されたタイミングで自動耕深制御に移行して強制下降制御を実現しても良い。
【0054】
特に、メインECU60で、強制昇降レバー34が上昇操作位置に操作されたことを検出した場合には、強制昇降制御手段63によるロータリ耕耘装置Rの強制上昇制御と併せて、エンジンECU50の回転速度変更手段52がエンジンEの回転速度を低減する制御と、メインECU60の走行速度変更手段67が変速装置Mtの変速段を変更して走行速度を低減する制御とが行われる。
【0055】
強制上昇制御に伴って実行される回転速度変更手段52によるエンジン回転速度の低減と、走行速度変更手段67による走行速度の低減とが開始されるタイミングは遅延時間設定手段65によって設定される。また、強制下降制御を開始するタイミングも遅延時間設定手段65によって設定される。この遅延時間設定手段65はソフトウエアで構成されたタイマを有しており、後述する上昇遅延時間としての第1遅延時間T1と、下降遅延時間としての第2遅延時間T2とが経過した時点でタイムアップ信号を出力する。
【0056】
〔制御形態〕
この制御形態を図6のフローチャートに示しており、この制御における情報の流れを図5に示し、また、枕地で車体Aを旋回させる際において車体Aの走行経路Cと強制上昇、強制下降等のタイミングを図7に示し、図8には制御時のロータリ耕耘装置Rの昇降作動軌跡Dと各制御とのタイミングチャートを示している。
【0057】
つまり、自動耕深制御が実行されている状況で走行経路Cの第1ポジションP1で強制昇降レバー34が強制上昇位置に操作(強制上昇操作)されたことを昇降スイッチ34Sの情報から判別した(強制上昇制御を開始する制御信号を取得した)場合には、強制昇降制御手段63が昇降制御弁11Vの制御によりリフトシリンダ11を制御して強制上昇制御を開始する(#101、#102ステップ)。
【0058】
この強制上昇制御を行う際には、遅延時間設定ダイヤル41がOFF領域に設定されていない限り、強制上昇制御を開始する制御信号を取得したタイミングで遅延時間設定手段65がタイマでの時間経過の計測を開始する。そして遅延時間設定器41Sで設定される第1遅延時間T1が経過したタイミング(第2ポジションP2)に達すると、遅延時間設定手段65がタイムアップ信号を回転速度変更手段52と走行速度変更手段67とに出力する。このタイムアップ信号の出力により回転速度変更手段52はエンジンEの回転速度を、例えば、ダイヤル等で予め設定された減速率に達する回転速度まで低下させ、走行速度変更手段67は変速装置Mtの変速段を予め設定された段数だけ下げる制御を行う。これによりロータリ耕耘装置Rの耕起爪20の回転速度が減じられると共に、車体Aの走行速度が減じられる。また、強制昇降制御手段63は、ロータリ耕耘装置Rが目標上限に達するまで上昇制御を継続する(#103〜#105ステップ)。
【0059】
第1遅延時間T1(上昇遅延時間)は、強制上昇制御によりロータリ耕耘装置Rの耕起爪20が地面から僅かに接触するレベルに達するまでの時間を設定することが基本であり、土壌の状況や、エンジンEの回転速度や、車体Aの走行速度等の条件に対応して遅延時間設定ダイヤル41を操作することにより、この第1遅延時間T1の延長や短縮が可能となる。尚、車体Aが第1ポジションP1から第2ポジションP2に到達するまでに走行する時間が第1遅延時間T1となる。
【0060】
回転速度変更手段52によるエンジンEの回転速度の低減側への制御と、走行速度変更手段67による減速側への変速制御を減速制御と総称しており、第2ポジションで減速制御が行われる。
【0061】
この減速制御では回転速度変更手段52がエンジンEの回転速度を予め設定された減速率に達するまで低下させているが、例えば、予め設定された(メモリ等に記憶された)回転速度まで低下させる制御を行っても良い。また、走行速度変更手段67が変速装置Mtの変速段を予め設定された段数だけ下げているが、例えば、予め設定された走行速度まで低速化する制御を行っても良い。特に、回転速度変更手段52による制御と、走行速度変更手段67による制御を同時に開始しているが、例えば、回転速度変更手段52による制御を開始した後に走行速度変更手段67による制御を行うようにタイムラグを設定することや、これと逆の順序で制御を行うようにタイムラグを設定しても良い。
【0062】
尚、遅延時間設定ダイヤル41がOFF領域に設定されている場合には、強制昇降レバー34の強制上昇位置への操作に基づいてロータリ耕耘装置Rの強制上昇制御が行われる際にもエンジンEの回転速度を減ずることや、変速装置Mtを低速側の変速段に変速する減速制御は行わない。この後、強制昇降レバー34の強制下降位置への操作に基づいてロータリ耕耘装置Rの強制下降制御が行われる際には、下降制御開始のタイミングでロータリ耕耘装置Rを下降させ、当然のことながら、この強制下降制御時にはエンジンEの回転速度と変速段とは維持される。
【0063】
次に、車体Aの旋回終端近くの第3ポジションP3で強制昇降レバー34が強制下降位置に操作(強制下降操作)されたことを昇降スイッチ34Sの情報から判別した(強制下降制御を開始する制御信号を取得した)場合には、遅延時間設定ダイヤル41がOFF領域に設定されていない限り、遅延時間設定手段65が強制下降制御を開始する制御信号を取得したタイミングでタイマでの時間経過の計測を開始する。また、昇降スイッチ34Sの情報を判別したタイミングで回転速度変更手段52がエンジンEの回転速度を元の回転速度に復帰させる制御を行い、このタイミングで走行速度変更手段67は変速装置Mtの変速段を元の変速段に復帰させる制御を行う。更に、遅延時間設定器41Sで設定される第2遅延時間T2(下降遅延時間)が経過したタイミング(第4ポジションP4)で昇降制御弁11Vの制御によりリフトシリンダ11を制御して強制下降制御を開始する(#106〜#110ステップ)。
【0064】
第2遅延時間T2と前述した第1遅延時間T1とは遅延時間設定ダイヤル41の操作によって同時に異なる値が設定されるものを想定しているが、第2遅延時間T2と第1遅延時間T1とが等しい値であっても良い。特に、自動耕深制御にあるロータリ耕耘装置Rを強制上昇制御によって上限位置まで上昇させる時間は、上限位置のロータリ耕耘装置Rを自動耕深のレベルまで下降させるまでの時間より長いため、第1遅延時間T1(上昇遅延時間)を第2遅延時間T2(下降遅延時間)より長く設定することが望ましい。
【0065】
回転速度変更手段52によるエンジンEの回転速度の復帰側への制御と、走行速度変更手段67による復帰側への制御を復帰制御と総称しており、第3ポジションで復帰制御が開始される。また、車体Aが第3ポジションP3から第4ポジションP4に到達するまでに走行する時間が第2遅延時間T2となる。
【0066】
この制御においても、回転速度変更手段52による制御と、走行速度変更手段67による制御とを同時に開始しているが、前述した強制上昇制御時と同様に回転速度変更手段52による制御を開始した後に走行速度変更手段67による制御を行うようにタイムラグを設定することや、これと逆の順序で制御を行うようにタイムラグを設定しても良い。
【0067】
尚、遅延時間設定ダイヤル41がOFF領域に設定されている場合には、強制昇降レバー34が強制下降位置に操作されたタイミングでロータリ耕耘装置Rの強制下降制御を開始することになる。
【0068】
このようにロータリ耕耘装置Rの強制下降制御が行われることにより、ロータリ耕耘装置Rが設置した後には第5ポジションP5において自動耕深制御への移行が実現する(#111ステップ)。
【0069】
〔実施の形態の作用・効果〕
このように本発明のトラクタでは、自動耕深制御が実行されている状況で強制昇降レバー34が強制上昇位置に操作された場合には、操作が検出されたタイミングでロータリ耕耘装置Rの強制上昇制御を開始すると共に、遅延時間設定手段65でタイマの計測が開始される。そして、強制上昇の開始から第1遅延時間T1が経過した時点で減速制御が行われる。この減速制御ではエンジンEの回転速度が低減され、走行速度が低減されることから、上昇状態のロータリ耕耘装置Rの耕起爪20が高速で回転することに起因して土壌を飛散させて地面に凹部を形成することや、燃料を無駄に消費することがない。また、車体Aの走行速度が減じられることにより車体Aを小さい半径で旋回させる場合にも車体Aの姿勢を安定させることになる。
【0070】
特に、第1遅延時間T1を作業者が任意に設定できるので、例えば、土壌が軽く軟質である場合には第1遅延時間T1を短く設定し、土壌が重く硬質である場合には第1遅延時間T1を長く設定することでエンジンストールを招くことなく作業環境に対応した作業が実現する。
【0071】
また、ロータリ耕耘装置Rが強制上昇状態にある状況で強制昇降レバー34が強制下降位置に操作された場合には、復帰制御が開始されると共に、遅延時間設定手段65でタイマの計測が開始され、強制上昇の開始から第2遅延時間T2が経過した時点でロータリ耕耘装置Rの強制下降制御が開始され自動耕深制御への移行が実現する。
【0072】
第2遅延時間T2は復帰制御においてエンジンEの回転速度を減速以前の回転速度に復帰させ、走行速度を減速以前の速度に復帰させるものであるため、耕起爪20が地面に接触する時点でエンジンEの回転速度は充分に高速化されているのでエンジンストールに繋がることがなく、高速走行が行われ効率的な耕起作業に無理なく移行できる。
【0073】
〔別実施の形態〕
本発明は、上記した実施の形態以外に以下のように構成しても良い。
【0074】
(a)ステアリングホイール32を、直進姿勢を基準にして設定角度を超えて操作した際にロータリ耕耘装置Rを強制的に上昇させ(強制上昇制御を行い)、この後、ステアリングホイール32を直進姿勢の方向に戻した際にロータリ耕耘装置Rを強制的に下降させる(強制下降制御を行う)ように強制昇降制御手段63が構成されたトラクタに適用しても良い。
【0075】
つまり、このような形態の強制昇降制御を行うトラクタにおいて、ステアリングホイール32の操作に基づいて強制上昇制御を行う際には、この強制上昇制御を開始するタイミングから第1遅延時間T1(上昇遅延時間)の経過後に減速制御を行う。この後、ステアリングホイール32の直進姿勢方向への操作に基づいて強制下降制御を行う際には、第2遅延時間T2(下降遅延時間)の経過後にロータリ耕耘装置Rの強制下降制御を開始する。
【0076】
(b)強制上昇制御時には、エンジンEの回転速度を低減させる減速制御のみを行い、強制下降制御時には、エンジンEの回転速度のみを復帰させる復帰制御のみを行い、変速装置Mtによる変速を行わないように制御形態を設定しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、ロータリ耕耘装置の強制昇降が可能に構成されたトラクタ全般に利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1,2 走行装置(前車輪・後車輪)
23 耕深検出手段(カバーセンサ)
36 変速操作具(変速レバー)
41 人為操作具(遅延時間設定ダイヤル)
51 回転速度制御手段
52 回転速度変更手段
62 自動耕深制御手段
63 強制昇降制御手段
65 遅延時間設定手段
66 変速制御手段
67 走行速度変更手段
A 車体
E エンジン
Mt 変速装置
R ロータリ耕耘装置
T1 上昇遅延時間(第1遅延時間)
T2 下降遅延時間(第2遅延時間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体からの動力で駆動されるロータリ耕耘装置が車体に昇降自在に連結され、耕深検出手段で検出されるロータリ耕耘装置の耕深を目標耕深に維持する自動耕深制御を実現する自動耕深制御手段が備えられ、前記自動耕深制御に優先して前記ロータリ耕耘装置を所定の上限位置まで上昇させる強制上昇制御と、この強制上昇制御の後に元の自動耕深制御に復帰させる強制下降制御とを実現する強制昇降制御手段が備えられているトラクタであって、
前記車体に備えたエンジンの回転速度を目標回転速度に対応した値に設定する回転速度制御手段を備え、前記強制上昇制御時には前記エンジンの回転速度を、この強制上昇制御直前の目標回転速度より低い値に設定する減速制御を行い、前記強制下降制御時には前記エンジンの回転速度を、強制上昇制御直前の目標回転速度に復帰させる復帰制御を行う回転速度変更手段を備え、
前記復帰制御の開始タイミングから下降遅延時間が経過した後に前記ロータリ耕耘装置の下降を開始させる遅延時間設定手段を備え、この遅延時間設定手段は前記下降遅延時間の人為的な設定が可能に構成されているトラクタ。
【請求項2】
前記回転速度変更手段は、前記強制上昇制御の開始タイミングを基準にして上昇遅延時間が経過した後に、前記減速制御を行うと共に、前記上昇遅延時間が前記下降遅延時間に連係する値に設定されている請求項1記載のトラクタ。
【請求項3】
前記遅延時間設定手段は、人為操作具の設定位置に対応して前記下降遅延時間の時間を任意に設定できると共に、前記回転速度変更手段による前記エンジンの回転速度の変更の実行と非実行とを選択できる請求項1又は2記載のトラクタ。
【請求項4】
前記エンジンから前記車体の走行装置に伝えられる動力をアクチュエータの作動によって変速する変速装置と、変速操作具の設定位置に対応する変速作動を実現する変速制御手段とが備えられると共に、
前記回転速度変更手段によって前記減速制御が行われる際には前記変速操作具で設定されている変速位置より低速の変速状態を現出し、この後、前記復帰制御が行われる際には前記変速操作具で設定されている変速位置に対応する変速状態を現出する走行速度変更手段が備えられている請求項1〜3のいずれか1項に記載のトラクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−125308(P2011−125308A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289274(P2009−289274)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】