説明

ドアミラー、およびドアミラーの製造方法

【課題】部品点数の増大を防止すると共に、金型の製造コストを低減し、効果的に製造コストを低減できるドアミラー、およびドアミラーの製造方法を提供する。
【解決手段】手格用ブラケット6は、ミラーハウジングが取り付けられるベース部7と、手動格納ユニットが装着されるユニット装着部8とが一体化されたものであり、ユニット装着部8に、手格用セットプレート16を収納するセットプレート収納部15と、電動収納部14を形成し、この電動収納部14に、電格用ブラケットを電動で回動させるときに使用する電動格納ユニットの駆動部を収納可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアミラー、およびドアミラーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体のミラーベースに取り付けられるドアミラーは、ミラーを収納するミラーハウジング(ミラー本体)が使用位置から車体後方側(格納側)へ傾倒するように構成されている場合が多い。
この種のドアミラー構造の中には、ミラーベースとミラーハウジングを支持するブラケットとの間に、セットプレートが介装されているものがある。このセットプレートには、複数の凸部が形成され、一方、ブラケットのセットプレートに対応する面には、この凸部を受け入れる凹部が、各々使用位置と格納位置に対応した部位に形成されている。そして、ミラーハウジングを手動で格納側へ押圧すると、凹部が凸部を乗り上げ、ミラーハウジングがセットプレートのシャフトを回動軸として傾倒するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、ブラケットとミラーベースとの間に電動格納ユニットを設け、ミラーハウジングを使用位置から格納位置へと電動で傾倒させるものもある。この種の電動格納ユニットは、モータと、モータによって回転させられるクラッチギヤと、クラッチと、スプリングとを有する。そして、ミラーハウジングを傾倒させる際、電動格納ユニットのモータを回転させる。モータの回転は、クラッチギヤに伝達されるが、クラッチギヤの回転はクラッチが噛み合うことで規制されているので、モータ、およびブラケットがシャフトを中心にして回転する。
【0004】
ここで、ミラーハウジングを手動で格納する場合に用いられるブラケット(以下、単に手格用ブラケットという場合がある)と、電動で格納する場合に用いられるブラケット(以下、単に電格用ブラケットという場合がある)とを共有化するために、手動格納用のセットプレートや電動格納ユニットを固定部材を介してブラケットに固定可能に構成した技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)
これによれば、固定部材を変更するだけで、手動格納用のセットプレートや電動格納ユニットを同一のブラケットに取り付けることを可能とし、この結果、ドアミラーの製造コストの低減化を図ろうとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−187483号公報
【特許文献2】特開平8−34287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献2にあっては、手格用ブラケットと電格用ブラケットとを共有化できるという点では優れているが、固定部材を別途成型する必要があり、部品点数が増大する。また、固定部材を成型する金型がブラケットを成型する金型とは別に必要になる。このため、組み立て工数が増大すると共に、金型の製造コストが嵩み、効果的にドアミラーの製造コストを低減しにくいという課題がある。
【0007】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、部品点数の増大を防止すると共に、金型の製造コストを低減し、効果的に製造コストを低減できるドアミラー、およびドアミラーの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、車両のミラーベースに取り付けられ、ミラーを収納するミラーハウジングと、このミラーハウジングを支持するブラケットとを備え、前記ミラーベースと前記ブラケットとの間に、手動格納ユニット、および電動格納ユニットの何れか一方を設け、前記手動格納ユニットに設けられている手格用セットプレートのシャフト、および前記電動格納ユニットに設けられている電格用セットプレートのシャフトの何れか一方を回動軸とし、前記ミラーハウジングを前記車両の進行方向前後に傾倒させるように構成されているドアミラーであって、前記ブラケットは、前記ミラーハウジングが取り付けられるベース部と、前記手動格納ユニット、および前記電動格納ユニットの何れか一方が装着されるユニット装着部とが一体化されたものであり、前記ユニット装着部に、前記手格用セットプレート、および前記電格用セットプレートの何れか一方を収納するセットプレート収納部と、電動収納部を形成し、この電動収納部に、前記ブラケットを電動で回動させる電動格納ユニットの駆動部を収納可能としたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載のブラケットを成型するための金型を用いたドアミラーの製造方法であって、前記金型は、前記手格用セットプレートを収納するためのセットプレート収納部を成型する手格用駒と、前記電格用セットプレートを収納するためのセットプレート収納部を成型するための電格用駒とを交換可能に構成され、これら手格用駒と電格用駒とを仕様に応じて交換し、前記ブラケットを成型することを特徴とするドアミラーの製造方法とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、手格用ブラケットに電動収納部を設けることにより、手格用ブラケットと電格用ブラケットとの相違点をセットプレート収納部のみに限定することができる。すなわち、手格用ブラケットとして用いる場合、電動収納部を未使用域に設定することにより、ブラケットのベース部と電動収納部とを共有化することができる。このため、手格用ブラケットのセットプレート収納部を、電格用セットプレートを収納できるように変更するだけで電格用ブラケットとして利用することができる。
よって、ブラケットを成型する金型において、手格用セットプレートを収納するためのセットプレート収納部を成型する手格用駒と、電格用セットプレートを収納するためのセットプレート収納部を成型するための電格用駒とを交換可能に構成することにより、一つの金型で手格用ブラケットと電格用ブラケットとを成型することが可能になる。この結果、従来のように、ドアミラーを構成する部品の点数の増大を防止できると共に、金型の製造コストを低減でき、効果的にドアミラーの製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態における手動格納用のドアミラーの取り付け状態を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態における手格用ブラケット、および手動格納ユニットの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態における手格用ブラケットのユニット装着部を示し、(a)は一方からみた斜視図、(b)は他方からみた斜視図である。
【図4】本発明の実施形態におけるユニット装着部に手動格納ユニットを装着した状態の縦断面図である。
【図5】本発明の実施形態における電格用ブラケット、および電動格納ユニットの斜視図である。
【図6】本発明の実施形態における電格用ブラケットのユニット装着部を示し、(a)は一方からみた斜視図、(b)は他方からみた斜視図である。
【図7】本発明の実施形態におけるユニット装着部に電動格納ユニットを装着した状態の縦断面図である。
【図8】図7のA−A線に沿う断面図である。
【図9】本発明の実施形態における手格用ブラケット、および電格用ブラケットを成型するための金型の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(手動格納用のドアミラー)
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、手動格納用のドアミラー1の取り付け状態を示す説明図である。なお、以下の説明では、使用位置(図1における使用位置Su)でのドアミラー1の車両進行方向前後を前後方向、車幅方向を左右方向、重力方向上下を上下方向などと表現して説明する場合がある。また、左側のドアミラー1を例にして説明する。
図1に示すように、ドアミラー1は、車両2の後方に向けて開口部11を有するミラーハウジング5と、開口部11を閉塞するようにミラーハウジング5に収容され、車両2の後方を確認するためのミラー13とにより外嵌構成されている。
【0013】
そして、車両2のドア3に固定されたミラーベース4に、ミラーハウジング5がこの内部に設けられた手格用ブラケット6を介して可倒可能に支持されている。つまり、ミラーハウジング5は、車両2のバック時に障害物等に衝突した際、この衝撃を緩和するための前可倒位置Sfと、通常使用する使用位置Suと、駐車時等にミラーハウジング5を格納する格納位置Skとに可倒可能に支持されている。
手格用ブラケット6は、ドアミラー1の使用位置Suにおいて、左右方向に沿って延在するように形成されたものであって、左右方向外側に設けられたベース部7とベース部7よりもミラーベース4側に設けられたユニット装着部8とが一体化されている。
【0014】
ベース部7の前方側面7aは、ミラーハウジング5の取付け面として構成され、ここにミラーハウジング5が不図示のボルトによって締結固定される。一方、ベース部7の後方側面7bには、リモコンユニット9を介してミラー13が取り付けられるようになっている。リモコンユニット9は、ミラー13の姿勢を調整するためのものであって、車両2内に設けられた不図示の操作スイッチによって操作できるようになっている。
また、手格用ブラケット6のユニット装着部8には、手動格納ユニット10が装着されている。
【0015】
図2は、手格用ブラケット6、および手動格納ユニット10の斜視図である。図3は、手格用ブラケット6のユニット装着部8を示し、(a)は一方からみた斜視図、(b)は他方からみた斜視図である。図4は、ユニット装着部8に手動格納ユニット10を装着した状態の縦断面図である。
図2〜図4に示すように、手格用ブラケット6のユニット装着部8は、上部に開口部8aを有する箱状に形成されたものであって、底壁8bと、底壁8bにおけるベース部7の厚さ方向両端側から立ち上がり形成された前後壁8c,8cと、これら前後壁8c,8cを跨るように形成され、ベース部7側に配置された平坦な側壁8dと、前後壁8c,8cを跨るように形成され、ベース部7とは反対側に配置された円弧壁8eとを有している。
【0016】
そして、ユニット装着部8は、長手方向略中央を挟んでベース部7側が電動収納部14として構成されていると共に、ベース部7とは反対側がセットプレート収納部15として構成されている。
セットプレート収納部15には、手動格納ユニット10が収納されるようになっている。一方、電動収納部14は、後述の電動格納ユニット40の駆動部41を収納するためのものである(詳細は後述する)。ここで、手格用ブラケット6に形成されている電動収納部14は、未使用域として設定され、何ら部品が収納されない。
【0017】
手動格納ユニット10は、手格用セットプレート16と、コイルスプリング17と、菊座金18とを有している。手格用セットプレート16は樹脂で成型されたものであって、垂直に設けられた筒状のシャフト19の下端にフランジ部20が一体成形されている。
セットプレート収納部15の底壁8bには、シャフト19を挿通可能な孔22が形成されている。また、セットプレート収納部15の底壁8bには、孔22の周縁から軸方向内側に向かって立ち上がり形成された円筒部26が設けられている。
【0018】
そして、ユニット装着部8の下側から手格用セットプレート16のシャフト19を挿通するようになっている。すなわち、手格用セットプレート16のフランジ部20は、ユニット装着部8とミラーベース4との間に位置するように配置され、手動格納ユニット10は、ミラーベース4と手格用ブラケット6との間に設けられた状態になる。セットプレート収納部15の底壁8bに設けられた円筒部26は、孔22に挿通されたシャフト19の姿勢を保持する役割を有している。
【0019】
手格用セットプレート16のシャフト19は、手格用ブラケット6の回動軸となるものであって、ミラーハウジング5は、シャフト19を中心にして前後方向に傾倒する(図1参照)。また、シャフト19の先端には、段部21が形成され、ここに菊座金18が取り付けられるようになっている。
菊座金18とセットプレート収納部15の底壁8bとの間には、シャフト19の周囲を取り囲むようにコイルスプリング17が設けられる。このコイルスプリング17によって、セットプレート収納部15の底壁8bが手格用セットプレート16のフランジ部20側に向かって付勢される。
【0020】
フランジ部20のミラーベース4側には、ネジ孔23が3箇所形成されている。このネジ孔23は、手格用セットプレート16をミラーベース4に締結固定するためのものである。また、フランジ部20のミラーベース4とは反対側には、シャフト19を中心にして対向する位置に、それぞれ凸部24,24が形成されている。凸部24は、シャフト19から径方向に延出し、径方向外側ほど幅寸法が広くなる形状になるように軸方向平面視略扇状になっている。
【0021】
一方、セットプレート収納部15の底壁8bは、手格用セットプレート16のフランジ部20を受ける受け面とされ、フランジ部20の凸部24に対応する部位に凹部25が形成されている。凹部25は、凸部24に対応するように孔22から径方向に延出して軸方向平面視略扇状に形成されている。また、凹部25は、ドアミラー1が使用位置Su、格納位置Sk、および前可倒位置Sf(図1参照)に存在しているとき、凸部24に対応する位置に形成されている。すなわち、ドアミラー1が使用位置Su、格納位置Sk、およびに前可倒位置Sf存在しているとき、凸部24と凹部25とが嵌合するようになっている。これによって、手格用ブラケット6と手格用セットプレート16とがロックされた状態になり、ドアミラー1が所望の位置で保持される。
【0022】
一方、ドアミラー1が使用位置Suから格納位置Skに移動するとき、および使用位置Suから前可倒位置Sfに移動するとき、凸部24の周方向側面と凹部25の周方向側面とが当接し、セットプレート収納部15に手格用セットプレート16のフランジ部20から離反する方向に向かって力が作用する。この力によって、手動格納ユニット10のコイルスプリング17の付勢力に抗して手格用ブラケット6が浮き上がる。そして、フランジ部20の凸部24が凹部25から乗り上げ、手格用ブラケット6と手格用セットプレート16とのロックが解除される。これにより、手格用セットプレート16のシャフト19を中心にしてドアミラー1が前方向、および後方向に傾倒する。
【0023】
(電動格納用のドアミラー)
次に、図1を援用し、図5〜図8に基づいて、電動格納用のドアミラー31について説明する。なお、以下の説明において、手動格納用のドアミラー1と同一態様には、同一符号を付して説明する。
図1に示すように、電動格納用のドアミラー31において、車両2の後方に向けて開口部11を有するミラーハウジング5と、開口部11を閉塞するようにミラーハウジング5に収容され、車両2の後方を確認するためのミラー13とにより外嵌構成されている点、車両2のドア3に固定されたミラーベース4に、ミラーハウジング5が使用位置Suから前可倒位置Sf、および格納位置Skへと可倒可能に支持されている点は、前述の手動格納用のドアミラー1と同様である。
【0024】
ここで、ミラーハウジング5内には電格用ブラケット36が設けられ、この電格用ブラケット36のベース部7にミラーハウジング5、およびリモコンユニット9が取り付けられている。また、電格用ブラケット36のベース部7よりもミラーベース4側には、ユニット装着部38が一体成形されている。
【0025】
図5は、電格用ブラケット36、および電動格納ユニット40の斜視図である。図6は、電格用ブラケット36のユニット装着部38を示し、(a)は一方からみた斜視図、(b)は他方からみた斜視図である。図7は、ユニット装着部38に電動格納ユニット40を装着した状態の縦断面図である。図8は、図7のA−A線に沿う断面図である。
【0026】
図5〜図8に示すように、ユニット装着部38は、開口部38aを有する箱状に形成されたものであって、長手方向略中央を挟んでベース部7側が電動収納部14として構成されていると共に、ベース部7とは反対側がセットプレート収納部35として構成されている。このセットプレート収納部35には、電動格納ユニット40の電格用セットプレート46が収納されるようになっている。
すなわち、手格用ブラケット6と電格用ブラケット36との相違点は、手格用セットプレート16を収納するためのセットプレート収納部15が形成されているか、または、電格用セットプレート46を収納するためのセットプレート収納部35が形成されている点にある。
【0027】
電動格納ユニット40の電格用セットプレート46は、垂直に設けられた筒状のシャフト43の下端にフランジ部44が、樹脂等で一体成形されたものである。
セットプレート収納部35の底壁38bには、シャフト43を挿通可能な孔42が形成されている。そして、ユニット装着部38の下側から電格用セットプレート46のシャフト43を挿通するようになっている。すなわち、電格用セットプレート46のフランジ部44は、ユニット装着部38とミラーベース4との間に位置するように配置され、電動格納ユニット40は、ミラーベース4と電格用ブラケット36との間に設けられた状態になる。
【0028】
電格用セットプレート46のシャフト43は、電格用ブラケット36の回動軸となるものであって、ミラーハウジング5は、シャフト43を中心にして前後方向に傾倒する(図1参照)。
フランジ部44のミラーベース4側(図5における下側)には、ネジ孔45が3箇所形成されている。このネジ孔45は、電格用セットプレート46をミラーベース4に締結固定するためのものである。また、フランジ部44のミラーベース4とは反対側には、シャフト43を中心にして対向する位置に、それぞれ凸部47,47が形成されている。凸部47は、シャフト43から径方向に延出し、径方向外側ほど幅寸法が広くなる形状になるように軸方向平面視略扇状になっている。
【0029】
一方、セットプレート収納部35の底壁38bは、電格用セットプレート46のフランジ部44を受ける受け面とされ、フランジ部44の凸部47に対応する部位に凹部48が形成されている。凹部48は、凸部47に対応するように孔42から径方向に延出して軸方向平面視略扇状に形成されている。また、凹部48は、ドアミラー31が使用位置Su(図1参照)に存在しているとき、凸部47に対応する位置に形成されている。
【0030】
ここで、セットプレート収納部35の底壁38bには、手動格納用のセットプレート収納部15の底壁8bに形成されているように、ドアミラー31が格納位置Sk、および前可倒位置Sfに存在しているときの凸部47に対応する位置に凹部48が形成されていない。これは、後述する電動格納ユニット40のクラッチユニット51、および減速機構53によって、ドアミラー31を所望の位置で保持することが可能だからである。
【0031】
電動格納ユニット40は、電格用セットプレート46の他に、駆動部41と、シャフト43に挿通されて、駆動部41の駆動力が伝達されるクラッチユニット51と、駆動部41の駆動力をクラッチユニット51に伝達する減速機構53と、これら駆動部41、クラッチユニット51、および減速機構53を上方から覆うカバー57とにより主に構成されている。駆動部41は、モータ50と、このモータ50の駆動制御を行うためのドライバ回路75とを有している。
そして、モータ50、およびドライバ回路75をユニット装着部38の電動収納部14に収納する一方、クラッチユニット51、および減速機構53をユニット装着部38のセットプレート収納部35に収納するようになっている。
【0032】
電動収納部14には、モータ50を載置可能なモータ載置部28が形成されている。モータ載置部28は、電動収納部14の開口部38a側に向けて開口された凹状のものであって、モータ50の横断面形状に対応するように形成されている。モータ50は、回転軸52の出力側を下方に向けた状態で、かつ回転軸52の軸方向とシャフト43の軸方向とが略平行になるようにして載置されている。また、電動収納部14には、モータ載置部28に隣接してドライバ収納部29が形成されている。このドライバ収納部29に、ドライバ回路75が配置されている。
【0033】
クラッチユニット51は、クラッチ63と、クラッチギヤ64と、コイルスプリング65とで構成されている。これらクラッチ63、クラッチギヤ64、およびコイルスプリング65は、セットプレート収納部35の底壁38bに形成された孔42に電格用セットプレート46のシャフト43を挿通させた後、このシャフト43に順に装着される。
クラッチ63は、セットプレート収納部35の底壁38bとの間に、パッキン66を挟んでシャフト43に圧入固定されている。クラッチ63の中心部分には、シャフト43を圧入可能な開口部63aが形成されている。クラッチ63の上端部には、周方向に沿って等間隔に4つのクラッチ突起63bが突設されている。
【0034】
クラッチギヤ64には、外周にギヤ歯64aが形成されると共に、中央にシャフト43を挿通可能な開口部64bが形成されている。クラッチギヤ64の下部内周縁には、周方向に等間隔に4つのクラッチ溝(不図示)が台形状に凹設されている。これら不図示のクラッチ溝は、クラッチ63のクラッチ突起63bに噛合可能に構成されている。
【0035】
コイルスプリング65は、内部にシャフト43を挿通できるように巻き回され、その上端部が菊座金67に突き当てられる一方、下端部がクラッチギヤ64の上端面に突き当てられている。つまり、コイルスプリング65は、菊座金67とクラッチギヤ64との間で、クラッチギヤ64をクラッチ63に向けて付勢している。そして、ドアミラー1に外力が作用していない状態では、クラッチ突起63bとクラッチ溝64cとが噛み合うようになっている(ロック状態)。
【0036】
カバー57は、下部(図5における下部)が開口された箱型形状のものであって、ユニット装着部38の開口部38aを閉塞するように装着される。カバー57には、ユニット装着38を係止可能な係止爪61が形成されている。また、カバー57には、電格用セットプレート46のシャフト43に対応する部位に、シャフト43を回転自在に支持する軸受け部58が形成されている。
【0037】
ここで、セットプレート収納部35の底壁38bには、手動格納用のセットプレート収納部15の底壁8bに形成されているように、シャフト43を挿通可能な孔42の周縁にシャフト43を保持するための円筒部26が形成されていない。これは、底壁38bの孔42とカバー57の軸受け部58とによりシャフト43の軸方向両端が支持されるので、円筒部26を形成することなく、シャフト43の姿勢が保持されるためである。
【0038】
モータ50とクラッチユニット51との間には、モータ50の回転を伝達するための減速機構53が設けられている。この減速機構53は、モータ50の回転軸52の下端側(出力側)に、モータベース70を介して連結されたウォーム71と、このウォーム71に噛合されるウォームホイール72と、シャフト43の軸方向に直交するように配置され、一端側にウォームホイール72が連結される軸73と、軸73の他端側に設けられ、クラッチギヤ64に噛合される歯車74とで構成されている。
【0039】
このような構成のもと、電動格納用のドアミラー31を使用位置Suから格納位置Sk(図1参照)に移動させる際、運転席側の操作に基づいて電動格納ユニット40のドライバ回路75に駆動信号が入力されると、モータ50が回転駆動する。するとモータ50の回転軸52に連結されたウォーム71が回転し、減速機構53を介してクラッチギヤ64に回転が伝達される。
【0040】
ここで、クラッチギヤ64のクラッチ溝64cには、クラッチ63のクラッチ突起63bがコイルスプリング65の押圧力によって噛み合わされている(ロック状態)。さらに、クラッチ63は、電格用セットプレート46のシャフト43に圧入によって固定されている。したがって、クラッチギヤ64は、クラッチ63によって回転が制限されて回転することができず、代わりに減速機構53がシャフト43の周りを公転する。
【0041】
一方、ドアミラー31に外力が加わると、クラッチ溝64cとクラッチ突起63bとが周方向で当接し、クラッチギヤ64にクラッチ63が離反する方向に向かって力が作用する。この力によって、クラッチギヤ64がコイルスプリング65の付勢力に抗して浮き上がり、ロックが解除される。これによって、例えば、ドアミラー31が前可倒位置Sfに傾倒し、電動格納ユニット40等の損傷が防止される。
【0042】
(手格用ブラケット、および電格用ブラケットの製造方法)
次に、図9に基づいて、手格用ブラケット6、および電格用ブラケット36の製造方法について説明する。
図9は、手格用ブラケット6、および電格用ブラケット36を成型するための金型81の簡略図である。同図に示すように、金型81は射出成形用の金型であって固定側金型と可動側金型とからなる。また、金型81は、可動側金型の動作に応じてスライド移動する2つの手格用スライド駒82a,82bを備えている。さらに金型81は、2つの手格用スライド駒82a,82bをそれぞれ電格用スライド駒83a,83bに交換可能に構成されている。
【0043】
2つの手格用スライド駒82a,82bのうち、一方の手格用スライド駒82aは、手格用ブラケット6におけるセットプレート収納部15の内周面、および底壁8bの内面側を成型するためのものである。他方の手格用スライド駒82bは、手格用ブラケット6における底壁8bの外面側を成型するためのものである。
また、2つの電格用スライド駒83a,83bのうち、一方の電格用スライド駒83aは、電格用ブラケット36におけるセットプレート収納部35の内周面、および底壁38bの内面側を成型するためのものである。他方の電格用スライド駒83bは、電格用ブラケット36における底壁38bの外面側を成型するためのものである。
【0044】
これら手格用スライド駒82a,82b、および電格用スライド駒83a,83bは、不図示のスプリングによって、互いに離反する方向に付勢されるようになっている。
そして、例えば、金型81に2つの手格用スライド駒82a,82bを取り付けた場合、固定側金型と可動側金型とが合わさると、2つの手格用スライド駒82a,82bが互いに近接する。また、固定側金型と可動側金型とが互いに離反したとき、2つの手格用スライド駒82a,82bも互いに離反する(図9における矢印参照)。これにより、固定側金型と可動側金型とが合わさったとき、金型81内に樹脂を流し込むことによって、手格用ブラケット6を成型することができる。
【0045】
ここで、手格用ブラケット6と電格用ブラケット36との相違点は、手格用セットプレート16を収納するためのセットプレート収納部15が形成されているか、または、電格用セットプレート46を収納するためのセットプレート収納部35が形成されている点にある。すなわち、手格用ブラケット6、および電格用ブラケット36は、それぞれベース部7、および電動収納部14が共有化されている。
【0046】
さらに、手格用セットプレート16を収納するためのセットプレート収納部15と、電格用セットプレート46を収納するためのセットプレート収納部35との相違点は、底壁8b,38bの形状にある。
より具体的には、各セットプレート収納部15,35の相違点は、セットプレート収納部35の底壁38bには、手動格納用のセットプレート収納部15の底壁8bのように、ドアミラー31が格納位置Sk、および前可倒位置Sfに存在しているとき、凸部47に対応する位置に凹部48が形成されていない点である。また、セットプレート収納部35の底壁38bには、手動格納用のセットプレート収納部15の底壁8bのように、シャフト43を挿通可能な孔42の周縁にシャフト43を保持するための円筒部26が形成されていない点である。
【0047】
このため、金型81の2つの手格用スライド駒82a,82bをそれぞれ電格用スライド駒83a,83bに交換することにより、手格用ブラケット6を成型する場合と同様の手法で電格用ブラケット36を形成することができる。
すなわち、電格用ブラケット36を形成する場合、金型81に2つの電格用スライド駒83a,83bを取り付け、固定側金型と可動側金型とを重ね合わせた状態で金型81内に樹脂を流し込む。これにより、電格用ブラケット36が成型される。
【0048】
したがって、上述の実施形態によれば、手格用ブラケット6に電動収納部14を設け、この電動収納部14を未使用域に設定することにより、各ブラケット6,36のベース部7、および電動収納部14を共有化することができる。つまり、手格用ブラケット6と電格用ブラケット36との相違点をセットプレート収納部15,35のみにできる。このため、一つの金型81を用い、2つの手格用スライド駒82a,82bを電格用スライド駒83a,83bに交換することにより手格用ブラケット6と電格用ブラケット36を成型することができる。よって、従来のようにドアミラー1,31を構成する部品の点数の増大を防止できると共に、金型81の製造コストを低減でき、効果的にドアミラー1,31の製造コストを低減できる。
【0049】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、駆動部41をモータ50と、このモータ50の駆動制御を行うためのドライバ回路75とにより構成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、モータ50と、ドライバ回路75と、減速機構53の一部、または全部を駆動部41として構成し、これらを電動収納部14に収納するように構成してもよい。この場合、電動収納部14をモータ50、ドライバ回路75、および減速機構53を収納可能に形成する。
【符号の説明】
【0050】
1, 31 ドアミラー
2 車両
3 ドア
4 ミラーベース
5 ミラーハウジング
6 手格用ブラケット(ブラケット)
7 ベース部
8,38 ユニット装着部
8b,38b 底壁
10 手動格納ユニット
13 ミラー
14 電動収納部
15,35 セットプレート収納部
16 手格用セットプレート
19,43 シャフト(回動軸)
40 電動格納ユニット
41 駆動部
46 電格用セットプレート
50 モータ
75 ドライバ回路
81 金型
82a,82b 手格用スライド駒(手格用駒)
83a,83b 電格用スライド駒(電格用駒)
Sf 前可倒位置
Sk 格納位置
Su 使用位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のミラーベースに取り付けられ、ミラーを収納するミラーハウジングと、
このミラーハウジングを支持するブラケットとを備え、
前記ミラーベースと前記ブラケットとの間に、手動格納ユニット、および電動格納ユニットの何れか一方を設け、
前記手動格納ユニットに設けられている手格用セットプレートのシャフト、および前記電動格納ユニットに設けられている電格用セットプレートのシャフトの何れか一方を回動軸とし、前記ミラーハウジングを前記車両の進行方向前後に傾倒させるように構成されているドアミラーであって、
前記ブラケットは、
前記ミラーハウジングが取り付けられるベース部と、
前記手動格納ユニット、および前記電動格納ユニットの何れか一方が装着されるユニット装着部とが一体化されたものであり、
前記ユニット装着部に、前記手格用セットプレート、および前記電格用セットプレートの何れか一方を収納するセットプレート収納部と、電動収納部を形成し、
この電動収納部に、前記ブラケットを電動で回動させる電動格納ユニットの駆動部を収納可能としたことを特徴とするドアミラー。
【請求項2】
請求項1に記載のブラケットを成型するための金型を用いたドアミラーの製造方法であって、
前記金型は、
前記手格用セットプレートを収納するためのセットプレート収納部を成型する手格用駒と、
前記電格用セットプレートを収納するためのセットプレート収納部を成型するための電格用駒とを交換可能に構成され、
これら手格用駒と電格用駒とを仕様に応じて交換し、前記ブラケットを成型することを特徴とするドアミラーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−121559(P2011−121559A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283176(P2009−283176)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】