説明

ドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物およびこれを使用した積層フィルム

【課題】エッチング加工時に塩化第二鉄溶液や水酸化ナトリウム溶液にて,黄変したり白化したりすることがなく,PETフィルムと銅箔をラミネートするにあたって十分な接着性を有するドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物およびこれを使用した積層フィルムを提供することにある。
【解決手段】ポリイソシアネート(A)と,少なくとも 1個の芳香環を有するポリエステルポリオール(b1)と芳香族ポリイソシアネート(b2)とを反応させて得られるポリオール(B),とから成ることを特徴とするドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物およびこれを使用した積層フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電磁波を発生する機器に使用されるフィルム状の電磁波シールド材に関し,特に耐エッチング性および接着性に優れるドライラミネート用ポリウレタン用接着剤組成物およびこれを使用した積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来,高い電圧をかけて発光させるブラウン管(以下CRTという)やプラズマディスプレイパネル(以下PDPという)等の電子機器からは,高レベルの電磁波が発生するため,該電磁波が外部に漏洩しないようにするシールド層を設けなければならない。特に該CRTやPDPではこの前面で作業等する視認者を該電磁波障害から保護し,また他の電子機器への電磁波の影響を防止等するために,該CRTやPDPの画面の前面にシールド層を設ける必要が有り,該シールド層には表示の鮮明度等の意匠性確保のため,透光性が求められる。
【0003】
このため,該シールド層に用いられるシールド材には,高透明性のポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフィルムという)に銅箔を予めラミネートした積層フィルムを,エッチング加工して部分的に銅箔を除去したメッシュ状のシールド材が用いられ,銅箔にはPETフィルムとの接着する側の表面を黒化処理して接着性を向上させたものが使用される。またエッチング加工は通常酸性の塩化第二鉄溶液で不要な銅箔を腐食除去させた後,水酸化ナトリウム溶液で中和し,さらに水洗いすることにより行なわれる。
【0004】
また,PETフィルムに銅箔をラミネートするための接着剤としてはウレタン系の接着剤組成物が使用されることが多く,斯かる接着剤組成物としては,特許文献1に示されるドライラミネート用接着剤組成物および特許文献2に示されるポリウレタン接着剤組成物が提案され,特に特許文献1に示されるドライラミネート用接着剤組成物は,エッチング液である塩化第二鉄溶液によって生じる接着剤層の色相の変化(黄変)が生じないドライラミネート用接着剤組成物として提案されている。
【0005】
特許文献1に係るドライラミネート用接着剤組成物は,固形分換算で,ガラス転移温度が0℃〜40℃,数平均分子量が2,000〜10,000,1分子の平均水酸基数が2.01〜2.50である熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し,脂肪族イソシアネートを1〜30重量部配合してなることを特徴としている。
【0006】
また特許文献2に係るポリウレタン接着剤組成物は,数平均分子量800〜3,000のポリオール(a1)と脂肪族および/または脂環式ポリイソシアネート(a2)とから得られる末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーからなる主剤(A)と,数平均分子量1,000〜3,000のポリジエンポリオール(b1)および/またはその末端ヒドロキシル基含有誘導体(b2)とからなることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2003−277714号公報
【特許文献2】特開平9−67556号公報
【0008】
しかし,いずれの接着剤組成物であっても,PETフィルムに銅箔を該ドライラミネート用接着剤組成物またはポリウレタン接着剤組成物でラミネートした後,該銅箔をエッチング加工する際に使用する洗浄水またはアルカリ性の水酸化ナトリウム溶液の影響により,エッチング液で銅箔が除去された部分の露出した該ドライラミネート用接着剤組成物が白化する場合があるという課題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は,エッチング液で銅箔が除去された部分の露出した該ドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物層表面が,エッチング加工時の塩化第二鉄溶液や水酸化ナトリウム溶液等の影響により,黄変したり白化したりすることがなく,PETフィルムと銅箔をラミネートするにあたって十分な接着性を有するドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物およびこれを使用した積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は,ポリイソシアネート(A)と,少なくとも1個の芳香環を有するポリエステルポリオール(b1)と芳香族ポリイソシアネート(b2)とを反応して得られるポリオール(B),とから成ることを特徴とするドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物である。
【0011】
請求項2記載の発明は,前記少なくとも1個の芳香環を有するポリエステルポリオール(b1)が,フタル酸またはイソフタル酸またはテレフタル酸,とポリオールとを縮合重合したポリエステルポリオールであることを特徴とする請求項1記載のドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物である。
【0012】
請求項3記載の発明は,請求項1または請求項2記載のドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物を用いて,PETフィルムと銅箔をドライラミネートしたことを特徴とする積層フィルムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物は,高透明性のPETフィルムに銅箔をラミネート接着させるにあたって良好な接着性を有し,接着後の積層フィルムをエッチング加工する場合に,エッチング液で銅箔が除去された部分の露出した該ドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物層表面が黄変および白化することが無いという効果がある。
【0014】
また本発明のドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物を使用した積層フィルムは,上記同様にエッチング加工する場合に,エッチング液で銅箔が除去された部分の露出した該ドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物層表面が黄変および白化することが無く,PETフィルムと銅箔とが十分な接着性を有するという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明のドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物は,ポリイソシアネート(A)と,少なくとも1個の芳香環を有するポリエステルポリオール(b1)と芳香族ポリイソシアネート(b2)とを反応させて得られるポリオール(B),とから成るドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物であり,必要により溶剤,消泡剤,レベリング剤,充填材,触媒が配合される。
【0017】
ポリイソシアネート(A)
ポリイソシアネート(A)は, 芳香族ポリイソシアネート,脂肪族ポリイソシアネート,脂環式ポリイソシアネート,及びこれらのポリイソシアネート誘導体を使用することができる。
【0018】
芳香族ポリイソシアネートとしては,2, 4’−ジフェニルメタンジイソシアネート,4, 4’−ジフェニルメタンジイソシアネート,4, 4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート,4,4’−ジベンジルジイソシアネート,テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート,ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート,1,3’−フェニレンジイソシアネート,ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート,トリレンジイソシアネート,1,5−ナフチレンジイソシアネート,ナフタレンジイソシアネートやこれらの変性物が挙げられる。市販品では,例えばトリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト変性物として,デスモジュールL75(商品名,NCO含有量;13重量%,固形分;75%,住化バイエルウレタン(株)製)がある。
【0019】
脂肪族ポリイソシアネートとしては,ヘキサメチレンジイソシアネート,トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート,リジンジイソシアネート,キシリレンジイソシアネートやこれらの変性物が挙げられ,市販品では,例えばトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト変性物として,スミジュールHT(商品名,NCO含有量;13重量%,固形分;75%,住化バイエルウレタン(株)製)がある。
【0020】
脂環式ポリイソシアネートとしては,イソホロンジイソシアネート,1,4シクロヘキサンジイソシアネート,水添キシレンジイソシアネートやこれらの変性物が挙げられる。市販品では,例えばイソホロンジイソシアネートとしてデスモジュールI(商品名,NCO含有量;37.5%,固形分100%,住化バイエルウレタン(株)製)がある。
【0021】
少なくとも1個の芳香環を有するポリエステルポリオール(b1)
少なくとも1個の芳香環を有するポリエステルポリオール(b1)は,たとえば芳香族ジカルボン酸と多価アルコールからなるポリオールを縮合重合して得ることが出来る。芳香族ジカルボン酸としては,フタル酸,イソフタル酸,テレフタル酸などが挙げられる。また,多価アルコールとしてエチレングリコール,1,2−プロピレングリコール,ネオペンチルグリコール,1,3ブタンジオール,1,4−ブタンジオール,1,6−ヘキサンジオール,ジエチレングリコール,ジプロピレングリコール,ヘキシレングリコール,ネオペンチルグリコール,シクロへキサンジメタノールなどが挙げられる。少なくとも1個の芳香環を有するポリエステルポリオールの市販品では,例えばポリライトOD−X−2900(商品名,水酸基価;53,粘度;2700mPa・s/80℃,DIC(株)製)がある。
【0022】
芳香族ポリイソシアネート(b2)
芳香族ポリイソシアネート(b2)は,2, 4’−ジフェニルメタンジイソシアネート,4, 4’−ジフェニルメタンジイソシアネート,4, 4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート,4,4’−ジベンジルジイソシアネート,テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート,ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート,1,3’−フェニレンジイソシアネート,ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート,トリレンジイソシアネート,1,5−ナフチレンジイソシアネート,ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの市販品としては,例えばミリオネートMT(商品名,NCO含有量;33.6重量%,日本ポリウレタン(株)製)がある。
【0023】
ポリオール(B)
ポリオール(B)は,前記少なくとも1個の芳香環を有するポリエステルポリオール(b1)と前記芳香族ポリイソシアネート(b2)とを混合攪拌して反応させることで得られる。例えば,まず前記少なくとも1個の芳香環を有するポリエステルポリオール(b1)を脱水し,100℃にて芳香族ポリイソシアネート(b2)を2〜5時間で反応させる。反応後,赤外スペクトルでイソシアネート基が残存しないことを確認する。イソシアネート基とヒドロキシル基との当量比は0.5〜1.0未満が好ましい。当量比が0.5未満では未反応のポリエステルポリオールが残留するため好ましくなく,また当量比が1以上となると反応生成物にヒドロキシル基が無くなるため適当でない。該反応によって得られたポリオール(B)の分子量は5,000〜100,000が作業性および接着性を確保するためには好ましい。分子量が5,000未満であると初期の接着強度が低下し,分子量が100,000超となると塗布作業性が不良となる。ここでいう分子量とは数平均分子量のことをいい,下記実施例に記載のゲル浸透クロマトグラフィーHLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い,ポリスチレンで作成した検量線により求めた値である。
【0024】
ポリオール(B)にはシランカップリング剤,触媒,酸化防止剤,紫外線吸収剤,加水分解防止剤,増粘剤,希釈剤,顔料などの添加剤を必要に応じ配合することができる。
【0025】
ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)の配合比はイソシアネート基とヒドロキシル基の当量比が1.0〜6.0未満が望ましい。1.0未満の場合は未反応のヒドロキシル基の残存や架橋不足により剥離強度が低下する恐れがあり,6.0以上の場合,架橋が過剰になって接着剤層が硬くなり,剥離強度が低下する恐れがある。
【0026】
以下,実施例及び比較例にて本出願に係るドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物について具体的に説明する。
【実施例】
【0027】
ポリイソシアネート(A1)
ポリイソシアネート(A)の1実施例として,脂肪族ポリイソシアネートであるトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とトリメチロールプロパンとのアダクト変性物のスミジュールHT(商品名,NCO含有量;13重量%,固形分;75%,住化バイエルウレタン(株)製)を使用し,ポリイソシアネート(A1)とした。
【0028】
ポリイソシアネート(A2)
同様に,ポリイソシアネート(A)の他の実施例として,芳香族ポリイソシアネートであるトリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパンとのアダクト変性物のデスモジュールL75(商品名,NCO含有量;13重量%,固形分;75%,住化バイエルウレタン(株)製)を使用し,ポリイソシアネート(A2)とした。
【0029】
ポリオール(B1)
ポリオール(B)は,前述のように少なくとも1個の芳香環を有するポリエステルポリオール(b1)と前記芳香族ポリイソシアネート(b2)とを混合攪拌して反応させることにより得られるが,該ポリオール(B)の1実施例としてポリオール(B1)を合成した。該ポリオール(B1)の合成に当たっては,まず,少なくとも1個の芳香環を有するポリエステルポリオール(b1)を合成する。
【0030】
具体的には,フタル酸(5mol)とプロピレングリコール(5mol)を反応容器に入れ,反応容器内の空気を窒素ガスで置換する。反応容器内を650mmHgまで減圧すると共に180℃まで加熱し,次に180℃から4時間かけ200℃まで上昇させる。200℃においてフタル酸とプロピレングリコールを8時間反応させ,その後150mmHgまで徐々に減圧を行い,さらに,200℃150mmHg条件で8時間反応させることで,少なくとも1個の芳香環を有するポリエステルポリオール(b1)を得る。合成後の少なくとも1個の芳香環を有するポリエステルポリオールの分子量は数平均分子量(Mn)で約1,000である。なお,数平均分子量は,ゲル浸透クロマトグラフィーHLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い,ポリスチレンで作成した検量線により求めた値である(以下同じ)。
【0031】
次に,ポリオール(B1)の合成に当たっては,上記,フタル酸とプロピレングリコールの縮合重合により得られた該ポリエステルポリオール(b1)と芳香族ポリイソシアネート(b2)であるミリオネートMTを用い,イソシアネート基とヒドロキシル基の当量比を0.9として前記ポリオール(B)の説明の項に記載の方法で合成した。数平均分子量(Mn)が約10,000と成るようにプレポリマー化(両末端はヒドロキシル基)して,ポリオール(B1)を得た。
【0032】
ポリオール(B2)
ポリオール(B2)は,前記ポリオール(B1)と同様にポリオール(B)の1実施例として合成した。該ポリオール(B1)の合成に当たっては,まず,少なくとも1個の芳香環を有するポリエステルポリオール(b1)を合成する。具体的には,フタル酸とネオペンチルグリコールを用い,前記ポリオール(B1)の合成において示した合成方法と同様な方法により,少なくとも1個の芳香環を有するポリエステルポリオール(b1)を得る。合成後のポリエステルポリオールの分子量としては数平均分子量(Mn)で約1,000である。
【0033】
次に,ポリオール(B2)の合成に当たっては,上記,フタル酸とネオペンチルグリコールを縮合重合させた該ポリエステルポリオール(b1)と芳香族ポリイソシアネート(b2)であるミリオネートMTを用い,イソシアネート基とヒドロキシル基の当量比を0.9として前記ポリオール(B)の説明の項に記載の方法と同様の方法で合成した。数平均分子量(Mn)が約10,000と成るようにプレポリマー化(両末端はヒドロキシル基)して,ポリオール(B2)を得た。
【0034】
ポリオール(C)
ポリオール(B1)またはポリオール(B2)と比較評価するためのポリオールとして,脂肪族ジカルボン酸であるアジピン酸と,ネオペンチルグリコールおよびヘキサンジオールから合成された,芳香環を持たないポリエステルポリオールであるHS2F131AS(豊国製油社製,数平均分子量(Mn)1,000,OH価110)と,芳香族ポリイソシアネート(b2)であるミリオネートMTを用い,ポリオール(B1)およびポリオール(B2)と同様の方法でポリオール(C)を合成した。イソシアネート基とヒドロキシル基の当量比を0.9とし,数平均分子量(Mn)を約10,000にプレポリマー化(両末端はヒドロキシル基)して,ポリオール(C)を得た。
【0035】
ポリオール(D)
さらに,ポリオール(C)と同様の目的で,芳香環を持たないポリオールであって以下の(化1)の一般式で示されるポリカーボネートポリオールであるデュラノールT5651(旭化成ケミカルズ社製,数平均分子量(Mn)1,000,OH価110)と,芳香族ポリイソシアネート(b2)であるミリオネートMTを用い,ポリオール(B1)およびポリオール(B2)と同様の方法で,ポリオール(D)を合成した。イソシアネート基とヒドロキシル基の当量比を0.9とし,数平均分子量(Mn)を約10,000にプレポリマー化(両末端はヒドロキシル基)して,ポリオール(D)を得た。
【0036】
【化1】

【0037】
実施例1
ポリオール(B1)とポリイソシアネート(A1)をイソシアネート基とヒドロキシル基の当量比を1.5となるように混合して実施例1のドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物とした。
【0038】
実施例2
ポリオール(B2)とポリイソシアネート(A1)をイソシアネート基とヒドロキシル基の当量比を1.5となるように混合して実施例2のドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物とした。
【0039】
実施例3
ポリオール(B1)とポリイソシアネート(A2)を,イソシアネート基とヒドロキシル基の当量比を1.5となるように混合して実施例3のドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物とした。
【0040】
比較例1
ポリオール(C)とポリイソシアネート(A1)をイソシアネート基とヒドロキシル基の当量比を1.5となるように混合して比較例1のドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物とした。
【0041】
比較例2
ポリオール(D)とポリイソシアネート(A1)をイソシアネート基とヒドロキシル基の当量比を1.5となるように混合して比較例2のドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物とした。
【0042】
評価項目および評価方法
【0043】
黄変性
実施例1乃至実施例3,比較例1および比較例2のドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物を容易に塗工できるよう酢酸エチルにて固形分30%となるよう希釈する。固形分で膜厚7μmとなるようにPETフィルム東洋紡エステルフィルムA4300(東洋紡績(株)製,125μm厚み)に塗布する。酢酸エチルを揮発させた後,表面を黒化処理した銅箔(厚み12μm)の黒化処理面を接着剤層に貼り合わせ,ML−480型ラミネーター((株)エム・シー・ケー製)を用い,ロール圧力0.2MPa,ロール温度90℃にて圧着する。その後40℃7日間エージングを行い,23℃に徐冷後3cm角に裁断して試験体とする。該試験体を,50℃の塩化第二鉄(鶴見曹達株式会社性ボーメ度=45°)に5分間浸漬して銅箔を除去する。その後,試験体を水洗いし,さらに表面の水をふき取り,銅箔除去により露出したドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物層表面のb*値を紫外可視分光光度計V550(日本分光(株)製)にて測定する。
【0044】
一方,別途,実施例1乃至実施例3と比較例1および比較例2のドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物を酢酸エチルにて固形分30%となるように希釈し,固形分で膜厚7μmとなるように上記PETフィルム東洋紡エステルフィルムA4300に塗布する。酢酸エチルを揮発させ,銅箔を貼り合わせることなく40℃7日間エージングを行ない,徐冷後3cm角に裁断し比較用試験体を作製する。該比較用試験体のドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物層表面のb*値を同様に紫外可視分光光度計V550にて測定する。
【0045】
銅箔除去を行なった試験体のb*値から比較用試験体のb*値を差し引いてΔbとし,この差の大小で黄変性を評価する。該Δbは値が大きいほど黄変の割合が大きいことを示し,Δbが2未満を○とし2以上を×と判定した。なお,b*とは,CIE(国際照明委員会)で規定するL*a*b*の色空間における値であり,b*の値が低下すると青色寄りに変化したことを示し,b*の値が増加すると黄色寄りに変化したことを示す。
【0046】
白化性
実施例1乃至実施例3,比較例1および比較例2のドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物を容易に塗工できるよう酢酸エチルにて固形分30%となるよう希釈する。固形分で膜厚7μmとなるようにPETフィルム東洋紡エステルフィルムA4300に塗布する。酢酸エチルを揮発させた後,表面を黒化処理した銅箔(厚み12μm)の黒化処理面を接着剤層に貼り合わせ,ML−480型ラミネーターを用い,ロール圧力0.2MPa,ロール温度90℃にて圧着する。その後40℃7日間エージングを行い,23℃に徐冷後3cm角に裁断して試験体とする。該試験体を50℃の塩化第二鉄(鶴見曹達株式会社製,ボーメ度=45°)に5分間浸漬して銅箔を除去し,その後水洗いして表面の水をふき取る。直後の試験体において銅箔除去により露出したドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物層表面の状態を目視にて観察し,白化の有無を確認する。
【0047】
接着性
実施例1乃至実施例3,比較例1および比較例2のドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物を容易に塗工できるよう酢酸エチルにて固形分30%となるよう希釈する。固形分で膜厚7μmとなるようにPETフィルム東洋紡エステルフィルムA4300に塗布する。酢酸エチルを揮発させた後,表面を黒化処理した銅箔(厚み12μm)の黒化処理面を接着剤層に貼り合わせ,ML−480型ラミネーターを用い,ロール圧力0.2MPa,ロール温度90℃にて圧着する。その後40℃7日間エージングを行い,23℃に徐冷後,巾15mm長さ100mm(接着剤塗布部分巾15mm長さ100mm)に切り出し試験体とする。
【0048】
接着剤が塗布されていない端部のPETフィルムをチャック1で掴持し,同一端部の銅箔を180度折り返して対峙するチャック2で掴持し,23℃において引張速度100mm/分でインストロン万能試験機1186型(インストロンジャパン(株)製)を用いて両チャックを離隔方向に移動させることにより,180度方向の剥離強度を測定する。9N以上/15mmを○とし,9N未満/15mmを×と判定する。
【0049】
評価結果
評価結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
総合評価
実施例1乃至実施例3はΔbの値が小さく黄変の程度が非常に少なく全て判定は○である。また白化性の評価においては白化無しである。これに対して比較例1および比較例2はΔbの値が大きく著しい黄変があり,かつ白化性の評価においても白化が見られる。また接着性の評価における剥離強度は,実施例1乃至実施例3が全て9N以上/15mmであり判定は○であるのに対し,比較例1および比較例2は共に9N未満/15mmであり判定は×である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート(A)と,少なくとも1個の芳香環を有するポリエステルポリオール(b1)と芳香族ポリイソシアネート(b2)とを反応させて得られるポリオール(B),とから成ることを特徴とするドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1個の芳香環を有するポリエステルポリオール(b1)が,フタル酸またはイソフタル酸またはテレフタル酸,とポリオールとを縮合重合したポリエステルポリオールであることを特徴とする請求項1記載のドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のドライラミネート用ポリウレタン接着剤組成物を用いて,PETフィルムと銅箔をドライラミネートしたことを特徴とする積層フィルム。




【公開番号】特開2011−225662(P2011−225662A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94830(P2010−94830)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】