説明

ノルボルナン誘導体の加水分解に関与するDNA

【課題】(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド加水分解酵素をコードするDNAおよび光学活性2-エキソ-アセトアミドノルボルナンの新規な製造方法の提供。
【解決手段】(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解し、(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンへ変換する能力を有するタンパク質を一部にまたは全体としてコードするDNA、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する微生物から取得するその単離方法、そのDNAによりコードされるタンパク質、そのDNAを担持するプラスミド、そのプラスミドで形質転換した形質転換体、その形質転換体等を用いた光学活性2-エキソ-アセトアミドノルボルナンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンにおけるアセトアミド基の加水分解に関与するDNA、その単離方法、そのDNAによりコードされるタンパク質、そのDNAを担持するベクター、そのベクターで形質転換した形質転換体、その形質転換体等を用いた(S)-2-エキソ-アミノノルボルナン、(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンおよび(R)-2-エキソ-アミノノルボルナンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(II)
【化11】

および
式(IV)
【化12】

で表される光学活性2-エキソ-アミノノルボルナンは、医薬品の合成原料として有用であるが、安価な製造法は知られていない。一般に光学活性体を製造する技術としては、光学活性カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による光学分割法、あるいは光学活性な化合物と塩あるいは錯体を形成させ結晶化する分別結晶化法が知られている。しかし、HPLCによる光学分割は大量の移動相を必要とし製造コストが高く工業的に使用することが極めて困難である。また分別結晶化法では充分な光学純度の光学活性体を得るのが難しい。そこでより効率的かつ安価な光学分割法の確立が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンにおけるアセトアミド基の加水分解に関与するDNAを提供することであり、さらにはそのDNAおよびその改変体の一部または全体を保持する形質転換体等を用いた光学活性2-エキソ-アミノノルボルナンの新規な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下の[1]〜[13]に関する。
【0005】
[1]:式(I)
【化13】

で表わされる(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解し、
式(II)、
【化14】

で表わされる(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンへ変換する能力を有するタンパク質を一部にまたは全体としてコードするDNA、またはその改変体を含んでなる単離された純粋なDNAであって、
【0006】
下記の(a)、(b)または(c)で表わされるDNA。
(a)(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解する能力を有するタンパク質をコードするDNAであって、配列番号1の塩基200から塩基1321までの連続した塩基配列からなるDNA。
(b)前記(a)で表わされるDNAの改変体であって、
(i)前記(a)で表わされるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、
(ii)(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解する能力を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)遺伝子コドンの縮重のため、前記(a)に表わされるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズしないが、前記(a)または(b)で表わされるDNAによりコードされるタンパク質と同じアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA。
【0007】
[2]:[1]記載のDNAによりコードされるタンパク質。
[3]:[1]記載のDNAを担持する自律複製性または組み込み複製性の組み換えベクター。
[4]:[3]記載の組み換えベクターで形質転換した形質転換体。
[5]:[1]に記載されたDNAまたはその一部からなるDNAをプローブまたはプライマーとして用いることを特徴とする、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解する能力を有するタンパク質をコードするDNAの単離方法。
【0008】
[6]:式(II)、
【化15】

で表わされる(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンの製造方法であって、
(A)式(I)
【化16】

で表わされる(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を選択的に加水分解する能力を有するコリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する微生物または請求項4記載の形質転換体の培養菌体、またはそれらの調製物の存在下で、式(I)で表わされる(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンをインキュベーション処理する工程、および
(B)インキュベーション処理液から式(II)で表わされる(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンを採取する工程、
を含んでなる方法。
【0009】
[7]:コリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する微生物が、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium
ammoniagenes)またはコリネバクテリウム・ビタルーメン(Corynebacterium vitarumen)に属する微生物である[6]記載の方法。
[8]:形質転換体が、エッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)に属する微生物である[6]記載の方法。
【0010】
[9]:式(III)
【化17】

で表わされる(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンの製造方法であって、
(C)式(I)
【化18】

で表わされる(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を選択的に加水分解する能力を有する微生物の培養菌体またはその調製物の存在下で、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンおよび(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンの混合物をインキュベーション処理し、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンに選択的に変換する工程、および
(D)インキュベーション処理液から未変換の式(III)で表わされる(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを採取する工程、
を含んでなる方法。
【0011】
[10]:[9]記載の方法により製造された(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解することを特徴とする、
式(IV)、
【化19】

で表わされる(R)-2-エキソ-アミノノルボルナンの製造方法。
[11]:式(III)、
【化20】

で表わされる(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナン。
【0012】
[12]:式(II)、
【化21】

で表わされる(S)-2-エキソ-アミノノルボルナン。
[13]:式(IV)、
【化22】

で表わされる(R)-2-エキソ-アミノノルボルナン。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンにおけるアセトアミド基の加水分解活性を有する微生物を選択し、その微生物から当該活性を有するタンパク質をコードするDNAを単離して、その塩基配列を決定することができる。さらにそのDNAを担持するベクター、そのベクターで形質転換した形質転換体を作成し、その形質転換体または選択した微生物を用いて、(S)-2-エキソ-アミノノルボルナン、(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンおよび(R)-2-エキソ-アミノノルボルナンを効率よく生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンにおけるアセトアミド基を加水分解する能力を有する微生物
本発明においては、前記式(I)で表わされる(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンにおけるアセトアミド基を加水分解し、前記式(II)で表わされる(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンへ変換する活性(以下、単に「アセトアミド加水分解活性」ともいう)を有する微生物を培養した培養液から集めた菌体から、アセトアミド加水分解活性を有するタンパク質(以下、単に「アセトアミド加水分解酵素」ともいう)を一部にまたは全体としてコードするDNAを単離し、塩基配列を決定することができる。そして、このDNAを担持する自立複製性または組み込み複製性の組み換えベクターを構築し、そのベクターを用いて形質転換体を調製する。
【0016】
このようにして調製した形質転換体を培地で培養し、培養中または培養後に、増殖した形質転換体と、前記式(I)で表される(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを接触させることにより、式(II)で表される(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンに変換し、変換された(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンを採取することにより、(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンを得ることができる。
【0017】
アセトアミド加水分解活性を有する微生物としては、このような能力を有するものであれば、種および株の種類を問うことなく使用できるが、好ましい微生物として、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する微生物、例えばコリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium
ammoniagenes)NBRC12612、コリネバクテリウム・ビタルーメン(Corynebacterium vitarumen)NBRC12143等を挙げることができる。これらの微生物は、微生物の保存機関である独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部生物資源部門(NBRC)から容易に入手することができる。
【0018】
本発明のDNA
本発明者らは、前記微生物の1つであるコリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)NBRC12612からアセトアミド加水分解酵素をコードするDNAを単離し、その塩基配列を決定した。
【0019】
本発明のアセトアミド加水分解酵素をコードするDNAは、下記(a)、(b)または(c)で表わされるものである。
【0020】
(a)配列番号1の塩基200から塩基1321までの連続した塩基配列からなるDNA
(b)前記(a)で表わされるDNAの改変体であって、
(i)前記(a)で表わされるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であり、かつ、
(ii)(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンにおけるアセトアミド基の加水分解活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)遺伝子コドンの縮重のため、前記(a)に表わされるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズしないが、前記(a)または前記(b)で表わされるDNAによりコードされるタンパク質と同じアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA。
【0021】
なお、本発明において、DNAの改変体とは、構成塩基の削除、変換、付加、挿入などにより修飾されたもの、あるいはその誘導体を意味し、もとのものと同じ効果を発現するDNAを意味する。また前記DNAの説明における「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列」とは、前記(a)のDNAをプローブとして使用し、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAの塩基配列を意味し、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNAまたはそのDNAの断片を固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2×SSC溶液(1×SSC溶液は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNA等を挙げることができる。ハイブリダイゼーションは、Molecular
Cloning:A laboratory Mannual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring
Harbor,NY.,1989(以下、モレキュラークローニング第2版ともいう)等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0022】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、プローブとして使用するDNAの塩基配列と一定以上の相同性を有するDNAが挙げられ、例えば85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有するDNAが挙げられる。
【0023】
本発明のアセトアミド加水分解酵素をコードするDNAの取得方法は特に限定されない。本明細書中の配列表の配列番号1に記載した塩基配列の情報に基づいて適当なプローブやプライマーを調製し、それらを用いて細菌に属する微生物のDNAライブラリーをスクリーニングすることにより本発明のDNAを単離することができる。DNAライブラリーは、前記のアセトアミド加水分解酵素活性を発現している微生物から常法により作製することができる。
【0024】
またPCR法により本発明のアセトアミド加水分解酵素をコードするDNAを取得することもできる。前記した微生物由来のDNAライブラリーを鋳型として使用し、配列番号1に記載した塩基配列を増幅できるように設計した1対のプライマーを用いてPCRを行う。PCRの反応条件は適宜設定することができ、例えば、94℃で30秒間(変性)、55℃で30秒〜1分間(アニーリング)、72℃で2分間(伸長)からなる反応工程を1サイクルとして、例えば30サイクル行った後、72℃で7分間反応させる条件などを挙げることができる。
【0025】
前記したプローブまたはプライマーの調製、DNAライブラリーの構築、DNAライブラリーのスクリーニング、並びに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、モレキュラークローニング第2版、Current
Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38,John Wiley & Sons(1987-1997)等に記載の方法に準じて行うことができる。
【0026】
本発明のタンパク質
本発明のタンパク質の取得方法は特に制限されず、化学合成により合成したタンパク質でもよいし、遺伝子組み換え技術により作製した組み換えタンパク質でもよい。組み換えタンパク質を作製する場合には、先ず、前記した方法によりアセトアミド加水分解酵素をコードするDNAを取得する。このDNAを適当な発現系に導入することにより、本発明のタンパク質を産生することができる。発現系でのタンパク質の発現については本明細書中後記する。
【0027】
本発明の組み換えベクター
本発明のDNAは適当なベクター中に挿入して使用することができる。本発明で用いるベクターの種類は特に限定されず、例えば、自立的に複製するベクター(例えばプラスミド等)でもよいし、あるいは、宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体と共に複製されるものであってもよいが、発現ベクターが好ましい。発現ベクターにおいて本発明のDNAは、転写に必要な要素(例えば、プロモーター等)が機能的に連結されている。プロモーターは宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。
【0028】
本発明の形質転換体およびそれを用いた組み換えタンパク質の製造
本発明のDNAまたは組み換えベクターを適当な宿主に導入することによって形質転換体を作製することができる。本発明のDNAまたは組み換えベクターが導入される宿主細胞は、本発明の遺伝子を発現できれば任意の細胞でよく、細菌、酵母、真菌および高等真核細胞等が挙げられる。細菌細胞の例としては、コリネバクテリウムまたはストレプトマイセス等のグラム陽性菌または大腸菌等のグラム陰性菌が挙げられる。これら細菌の形質転換は、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法または公知の方法でコンピテント細胞を用いることにより行えばよい。例えば、エレクトロポレーション法は以下のように行うことができる。外来遺伝子が挿入されたベクターをコンピテント細胞の懸濁液に加え、この懸濁液をエレクトロポレーション法専用のキュベットに入れ、そのキュベットに高電圧の電気パルスをかける。その後選択培地で培養し、平板寒天培地上で形質転換体を単離する。
【0029】
前記の形質転換体は、導入された遺伝子の発現を可能にする条件下で適切な栄養培地中で培養する。形質転換体の培養物から、本発明のタンパク質を単離精製するには、通常のタンパク質の単離、精製法を用いればよい。例えば、本発明のタンパク質が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、通常のタンパク質の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫酸アンモニウム等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)セファロース等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、SP-Sepharose
FF(アマシャムバイオサイエンス社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィ一法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
【0030】
(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンの製造方法
本発明は、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を選択的に加水分解する能力を有するコリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する微生物またはアセトアミド基の加水分解活性を有するタンパク質をコードするDNAを導入した形質転換体を用い、これらの微生物または形質転換体あるいはそれらの調製物の存在下で前記式(I)で表される(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解させることを含む、前記式(II)で表される(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンの製造方法を包含する。なお「(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を選択的に加水分解する」とは、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基をある条件下で加水分解するが、その光学異性体である(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基は、その条件下では実質的に加水分解しないことを意味する。また、形質転換体等の「調製物」とは、これら形質転換体等の培養物それ自体、培養物を濾過もしくは遠心にかけて分離した菌体、培養物を凍結乾燥または噴霧乾燥し、必要により粉砕して得られるもの、さらにはこれらをもとに精製した酵素を意味する。
【0031】
前記微生物または形質転換体(併せて「形質転換体等」ともいう)の存在下で(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を選択的に加水分解させる条件は、以下のとおりである。まず前記形質転換体等がもつアセトアミド基の加水分解酵素をコードするDNAを必要により誘導物質を添加して培養し菌体内で発現させる。前記形質転換体等の培養に用いられる培地の組成は、使用する微生物が良好に生育し、かつ目的の酵素活性を発現させるのに適当な炭素源、窒素源、無機塩及び天然有機栄養物等により成り立っている。炭素源としては、グルコース、フラクトース、グリセロール、ソルビトール、アルコール類、酢酸、澱粉等を単独または併用することができ、その使用濃度は特に限定されず、おおよそ0.1〜10%が適当である。窒素源としてはアンモニア、尿素、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等を単独または併用することができる。無機塩としては、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸第一鉄などの塩類を使用することができる。さらに生育促進効果をもつ有機栄養源としては、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチーブリカー、カザミノ酸などが用いられ、さらにビタミン類、核酸類を少量培地に含有させることもできる。
【0032】
これらのDNAが発現した菌体を基質である(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンと接触させ、変換反応(加水分解反応)をさせる。この発明で用いることのできる基質は高純度の(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンだけでなく、(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンとの等量混合物であるラセミ体を用いることもでき、(S)体を実質的に含んでいれば(R)体と(S)体の比率は特に限定されない。
【0033】
基質の添加時期は、菌体の生育の最初からでも生育後のいずれでもよい。基質濃度は、特に制限がないが、約1〜20g/Lで用いることが望ましく、これを一括添加しても分割して添加してもよい。培養は通気撹拌培養、振盪培養等の好気的条件下、あるいは静置培養でもよい。培養中のpHは中性ないし弱アルカリ性が好適であり、このためのpH中和剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、塩酸等の公知のものが使用できる。培養温度は20〜40℃の範囲で形質転換体等の至適温度を考慮して適宜決定できる。培養時間は使用する形質転換体等の種類、原料の添加方法、添加濃度等により差はあるが、約1〜4日で(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンが生成蓄積する。また培養液から菌体を分離回収し、菌体を適当な水性媒体に懸濁させた懸濁液中に基質を添加してもよく、その際の反応条件は、培養液に直接添加する場合に準ずる。さらに、反応様式は、バッチ式でも連続式でも、いずれの形式でも実施することができる。
【0034】
生成した(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンの単離および精製は、一般に微生物代謝産物をその培養液から単離するために用いられる分離、精製の方法が利用できる。例えば、メタノール、エタノール、アセトン、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、トルエン等を用いた有機溶媒抽出、ダイヤイオンHP-20などの疎水性吸着樹脂を用いた吸脱着処理、セファデックスLH-20等を用いたゲル濾過クロマトグラフィー、活性炭、シリカゲル等による吸着クロマトグラフィー、もしくは薄層クロマトグラフィーによる吸脱着処理、あるいは逆相カラム等を用いた高速液体クロマトグラフィー等の公知のあらゆる方法がこれにあたる。また、ここに示した方法に特に限定されるものではない。これらの方法を単独あるいは任意の順序に組み合わせ、また反復して用いることにより、目的の(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンを単離精製することができる。
【0035】
(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンの製造方法
本発明は、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を選択的に加水分解する能力を有する形質転換体等を用い、これらの存在下で、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンおよび(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンの混合物をインキュベーション処理し、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解させ、反応溶液中に蓄積された未反応の(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを採取する、(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンの製造方法を包含する。この発明で用いることのできる基質は高純度の(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンだけでなく、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンとの等量混合物であるラセミ体を用いることもでき、(R)体を実質的に含んでいれば(R)体と(S)体の比率は特に限定されない。変換反応の条件、目的物の単離、精製方法は、前記「(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンの製造方法」の項で述べたものと同様である。
【0036】
(R)-2-エキソ-アミノノルボルナンの製造方法
本発明は前記の方法で製造された(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解し反応溶液から(R)-2-エキソ-アミノノルボルナンを採取する、(R)-2-エキソ-アミノノルボルナンの製造方法をも包含する。(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解する方法は、2位の立体配置を保持する反応であれば、化学反応でも生物学的変換反応でも特に制限はない。生物学的変換反応であれば、例えば、非立体選択的に2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解するスタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus
epidermidis)ATCC14990由来の酵素を用いる反応を挙げることができる。
【0037】
変換反応の温度は、使用する微生物、酵素等の至適温度を考慮して適宜決定できる。また反応時間も(R)-2-エキソ-アミノノルボルナンへの変換率(反応の進行度合い)等を考慮して、適宜決定することができる。スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus
epidermidis)ATCC14990由来の酵素は、培養菌体から精製して使用してもよく培養菌体そのものであってもよい。反応条件は、前記「(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンの製造方法」の項で述べた方法に準じて行うことができる。すなわち、使用する微生物が良好に生育し、目的の酵素活性を発現させるのに適当な培地で培養し、基質の添加時期は、菌体の生育の最初からでも生育後のいずれでもよい。基質濃度は、特に制限がないが、約1〜20g/Lで用いることが望ましく、これを一括添加しても分割して添加してもよい。培養温度は20〜40℃の範囲で微生物の生育至適温度を考慮して適宜決定できる。培養時間は使用する微生物等の種類、原料の添加方法、添加濃度等により差はあるが、約1〜4日で(R)-2-エキソ-アミノノルボルナンが生成蓄積する。また培養液から菌体を分離回収し、菌体を適当な水性媒体に懸濁させた懸濁液中に基質を添加してもよく、その際の反応条件は、培養液に直接添加する場合に準ずる。さらに、反応様式は、バッチ式でも連続式でも、いずれの形式でも実施することができる。また、(R)-2-エキソ-アミノノルボルナンは、前記「(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンの製造方法」の項で述べた方法に準じて単離、精製することができる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、アセトアミド加水分解酵素の酵素活性および2-エキソ-アミノノルボルナンの定量は以下の方法で行い、変換率、光学純度の定義は以下のとおりである。
【0039】
(アセトアミド加水分解酵素の酵素活性測定法)
2-エキソ-アセトアミドノルボルナン(化合物I:式(I)で表わされる化合物と式(III)で表わされる化合物の当量混合物)を10mM濃度で溶かした50mMリン酸緩衝液(pH6.8)180μLに酵素液20μLを加えて37℃で1時間反応させた後、2-エキソ-アセトアミドノルボルナンをHPLCで定量した。2-エキソ-アセトアミドノルボルナンの減少速度(mM/分)を酵素活性とした。HPLCの分析条件は、カラムはJ’sphere
ODS-H80(内径4.6mm×75mm、YMC社製)を用い、カラム温度は40℃、移動相は水/メタノール(50:50)、検出はUV210nm、流速は1.5mL/分で行った。
【0040】
(光学活性2-エキソ-アミノノルボルナンの定量法)
Nα-(5-フルオロ-2,4-ジニトロフェニル)-L-ロイシンアミド(以下、「L-FDLA」ともいう、東京化成工業社製)でジアステレオマーに誘導体化してからHPLC分析により行った。試料50μLに1M炭酸水素ナトリウム水溶液20μLおよびL-FDLAの1%アセトン溶液100μLを加え、40℃で一時間加温する。室温まで冷却後、反応液に1N塩酸20μL、アセトニトリル800μLを加えてHPLC試料とした。HPLC分析条件は、カラムはZORBAX
SB-aq(内径4.6mm×150mm、Agilent社製)を用い、カラム温度は40℃、移動相は0.85%リン酸/アセトニトリル(50:50)、検出はUV340nm、流速は1mL/分で行った。この分析条件で、(S)-2-エキソ-アミノノルボルナン誘導体(化合物IIa:式(II)で表わされる化合物のL-FDLA誘導体)および(R)-2-エキソ-アミノノルボルナン誘導体(化合物IIb:式(IV)で表わされる化合物のL-FDLA誘導体)の保持時間はそれぞれ13.3分と12.5分であった。濃度既知の標品の面積値に基づいて各ピークの面積値から両鏡像体の定量を行った。こうして求めた定量値から以下に示す式により変換率(%)および光学純度(鏡像体過剰率、%ee)を求めた。
【0041】
(変換率および光学純度の定義)
変換率(%)=(〔化合物IIa〕+〔化合物IIb〕)/〔化合物I〕×100
光学純度(%ee)=(〔化合物IIa〕-〔化合物IIb〕)/(〔化合物IIa〕+〔化合物IIb〕)×100
(式中、〔化合物I〕は化合物Iの添加量(モル)を、〔化合物IIa〕および〔化合物IIb〕はそれぞれ化合物IIaおよび化合物IIbの生成量(モル)を示す。)
【0042】
実施例1:コリネバクテリウム属に属する微生物による(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンの製造
2-エキソ-アセトアミドノルボルナン0.1g/Lを添加した2mLのL培地(バクトトリプトン1%、酵母エキス0.1%、NaCl 0.1%、グルコース0.1%、pH7.0)に寒天平板よりコリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612およびコリネバクテリウム・ビタルーメンNBRC12143をそれぞれ一白金耳接種し、30℃で18時間振盪培養(220rpm)した。得られた培養液を3500rpm、10分の遠心分離により上清を除いて菌体を得、菌体に10g/L濃度で2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを含む100mMトリス-塩酸緩衝液(pH7.4)を1mL加え、30℃で振盪下(220rpm)に4時間変換反応を行った。この反応液に等量のメタノールを加えて遠心分離した上清をL-FDLAで誘導体化してHPLCで分析して(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンおよび(R)-2-エキソ-アミノノルボルナンを定量した。求めた定量値から先に示した計算式により変換率(%)および主な生成物である(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンの光学純度(%ee)を求めた。その結果、コリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612およびコリネバクテリウム・ビタルーメンNBRC12143を用いて得た光学純度と変換率はそれぞれ、94.4%eeと5.5%、94.5%eeと5.0%であった。
【0043】
実施例2:コリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612による(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンの製造(1)
コリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612を寒天平板からL培地25mLを含む250mL容のエーレンマイヤーフラスコに植菌して30℃で18時間振盪培養した。この培養液1mLをL培地100mLを含む500mL容のエーレンマイヤーフラスコ8本にそれぞれ植菌して30℃で18時間振盪培養した。この培養液200mL(フラスコ2本分)ずつを最終濃度で2-エキソ-アセトアミドノルボルナン0.1g/Lと消泡剤KM75(信越化学工業社製)0.3g/Lを添加したL培地15Lを含む30Lジャー4基に植菌して30℃、240rpm、1vvmの通気量で培養を行った。4基の30Lジャーに、培養17時間後と24時間後の2回、各210gの2-エキソ-アセトアミドノルボルナン(合計1680g)を添加して先と同じ培養条件で計113時間変換培養を行った。培養終了後、3000rpmの連続遠心分離により菌体を除いて培養上清を得た。先に述べたHPLCで分析した結果、光学純度86%eeの(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンが463g生成していた(変換率、38%)。
【0044】
実施例3:コリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612による(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンの製造(2)
培養上清60Lを等量の酢酸エチルで抽出することにより未反応の2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを酢酸エチル層側に除いた。酢酸エチル層を取り除いた水層に攪拌しながら無水酢酸1020mlと9M水酸化ナトリウム水溶液3Lを1時間かけて同時に滴下することにより、生成した2-エキソ-アミノノルボルナンのアセチル化を行った。生成した2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを等量の酢酸エチルで抽出することにより酢酸エチル層に抽出して、酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下にエバポレーターで酢酸エチルを留去して光学純度86%eeの(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを521g得た(全モル収率、31%)。
【0045】
得られた光学純度86%eeの(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを用いて2回目の変換を行った。コリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612を寒天平板からL培地25mLを含む250mL容のエーレンマイヤーフラスコ2本に植菌して30℃で18時間振盪培養を行った。この培養液25mLずつを2-エキソ-アセトアミドノルボルナン0.1g/Lと消泡剤(KM75)0.3g/Lを添加したL培地1.5Lを含む3Lジャー2基に植菌して30℃、150rpm、1vvmの通気量で18時間培養を行った。各3Lジャー2基にそれぞれ16gの光学純度86%eeの2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを添加して先と同じ培養条件でさらに72時間変換培養を行った。培養終了後、6000rpmで10分の遠心分離により菌体を除いて培養上清を得た。HPLC分析の結果、光学純度98.7%eeの(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンが18.4g生成していた(変換率、36%)。
【0046】
3Lの培養上清を等量の酢酸エチルで抽出することにより未反応の2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを除いた後、水層を1N水酸化ナトリウムでpHを10にしてから等量のn-ブタノールで2回抽出して(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンをn-ブタノール層に得た。n-ブタノール層(3.4L)に濃塩酸を30mL加えてから減圧下にエバポレーターで濃縮して(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンを塩酸塩の結晶として得た。この結晶を0℃のアセトン200mLで洗浄した後、乾燥して(S)-2-エキソ-アミノノルボルナン塩酸塩を20.6g得た(工程モル収率、82.6%)。この塩酸塩の光学純度および化学純度をL-FDLA誘導体化法で測定したところそれぞれ99.0%ee、97.9%であった。
【0047】
(S)-2-エキソ-アミノノルボルナン塩酸塩の1H NMR測定結果を以下に示す。
1H NMR (500MHz, D2O)δ:3.21(1H, dd, J = 8.0, 3.5 Hz, H-2),
2.37(2H, overlapped, H-1 and H-4), 1.80(1H, ddd, J = 13.5, 8.1, 2.5 Hz),
1.61(1H, m), 1.54-1.47(2H, overlapped), 1.42 (1H, m), 1.32(1H, dq, J = 10.7,
1.3 Hz), 1.24-1.11(2H, overlapped)。なお、水のシグナルを4.79ppmとして測定した。
【0048】
実施例4:コリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612由来のアセトアミド加水分解酵素遺伝子の塩基配列の決定
(1)微生物の培養
コリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612をL培地(バクトトリプトン1%、酵母エキス0.1%、NaCl 0.1%、グルコース0.1%、pH7.0)25mLに同じ組成の寒天平板培地から一白金耳植菌し、30℃で一晩振盪培養した。この培養液1mLずつを0.1g/Lの濃度で2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを添加したL培地100mLを含む500mL容のエーレンマイヤーフラスコ8本に植菌し、30℃で18時間振盪培養した。この培養液から菌体を5000rpm、10分間の遠心分離で集菌し、50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で一回洗浄して先と同様に菌体を回収して、50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)100mLに懸濁した。この菌体懸濁液をコンスタント細胞破砕システム(コンスタント社製)にて40kPaの圧力をかけて細胞を破砕した。この破砕液から10000rpm、30分の遠心分離により細胞残渣を除いて上清を得た。
【0049】
(2)アセトアミド加水分解酵素の精製
この上清を50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したDEAE-Toyopal650カラム(100mL、東ソー社製)に通塔し、50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)100mLでカラムを洗浄後、同緩衝液中での0Mから1Mへの塩化ナトリウムの濃度勾配溶出(1.4L)により目的の酵素の溶出を行った。溶出液は15mLずつ分画した後、各フラクションの酵素活性を先に示した方法で測定して酵素溶出画分を集めた。この画分をAKTAタンパク精製装置(ファルマシア社製)に付けたHiPrep
26/10脱塩カラム(ファルマシア社製)で脱塩した後、酵素溶液をAKTAタンパク精製装置に付けた0.1Mビス-トリス塩酸緩衝液(pH7.0)で平衡化させたMono
Q HR 5/5カラム(ファルマシア社製)に通塔した後、同緩衝液中での0Mから1Mへの塩化ナトリウムの濃度勾配溶出により目的酵素を溶出させた。溶出液は0.5mLずつ分取して酵素活性を測定した。酵素溶出画分を集めて硫酸アンモニウム濃度が1Mになるように硫酸アンモニウムを溶かしてからAKTAタンパク精製装置に付けた1M硫酸アンモニウムを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したRESOURCE
PHE(6mL)(ファルマシア社製)に通塔した後、同緩衝液中での硫酸アンモニウムの1Mから0Mへの濃度勾配溶出により酵素の溶出を行った。溶出液は0.5mLずつ分取した。この操作を6回繰り返して酵素溶出画分を集めた。
【0050】
こうして精製した酵素をSDS-PAGEで電気泳動にかけたところ40.9kDaにバンドを確認した。さらに、Native-PAGEで電気泳動にかけたところ83.2kDaにバンドを確認した。これらの結果から本アセチル加水分解酵素は分子量83.2kDaのホモダイマーであることが分かった。クマッシーブリリアントブルーで染色したSDS-PAGEのゲルから本酵素のバンドを切り出し、トリプシン処理で部分加水分解した後、生じたペプチドを分取HPLCにより2つ分取してそのN末のアミノ酸配列をペプチドシークエンサーで決定したところAsnValGlyTyrLeuTrpAspThrLeuTyr(配列番号2参照)とValAlaValValAspTrpAspValHisHisGlyAsn(配列番号3参照)であった。
【0051】
(3)アセトアミド加水分解酵素をコードする遺伝子のクローニング
20mLのL培地にコリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612を接種して、30℃で24時間振とう培養して得られた培養液を3000rpm、10分間遠心して菌体を回収した。この菌体からBlood
& Cell Culture kit(QIAGEN社製)を用いて染色体DNAを調製した。(2)で得られた部分アミノ酸配列に基づいて以下のようなプライマー(Nter-1FおよびNO1mix-2R)を作成した。
Nter-1F:5’-AACGTCGGATATCTTTGGGA-3’(配列番号4参照)
NO1mix-2R:5’-TTICCRTGRTGIACRTCCCARTC-3’(配列番号5参照)
なお、コドンの揺らぎを考慮して反応性を高めるために、混合塩基I(=Inosine)、R(=A+G)を使用した。
【0052】
次に、この2種のプライマー(Nter-1FおよびNO1mix-2R)と先に得たコリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612の染色体DNAをテンプレートとして用いてPCR反応を行った。PCR反応は、Takara
LA Taq(タカラバイオ社製)とPCR増幅装置(T Gradient、バイオメトラー社製)を用い、変性を98℃、20秒間、アニーリングを50℃、30秒間、伸長を68℃、1分間で行う3段階の反応を30回繰り返した。その結果、約500bpの大きさのDNA断片(以下、DNA断片-A1)が増幅された。PCR反応にて増幅したDNA断片-A1を、反応液からQIAquick
PCR Purification Kit(QIAGEN社製)によって回収した。次にプラスミドベクターpT7Blue T(Novagen社製)にDNA
Ligation kit ver.2(タカラバイオ社製)を用いてDNA断片-A1を連結し、大腸菌JM109株を形質転換した。その後、アンピシリン50μg/mL、X-gal(5-bromo-4-chloro-3-indolyl-β-D-galactoside)40μg/mL、IPTG(isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside)100μMを含むL-Broth寒天培地(バクトトリプトン1.0%、酵母エキス0.5%、NaCl
0.5%、寒天1.5%)に形質転換体を塗布して形質転換された大腸菌を選択した。
【0053】
こうして分離した形質転換大腸菌のコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むL培地で培養した。増殖した形質転換大腸菌の菌体からQIAprep Spin
Miniprep Kit(QIAGEN社製)を用いてプラスミドDNAの分離精製を行い、一定量のDNA断片-A1を得た。得られたDNA断片-A1の塩基配列をDNA塩基配列解析装置(PRISM
310 Genetic Analyzer、ABI社製)を用い、ダイターミネーター・サイクル・シークエンス法で解析した。塩基配列解析の結果、PCR反応で増幅されたDNA断片-A1は551bpであった(配列番号1の塩基209〜塩基759参照)。
【0054】
前記のとおり、コリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612由来のアセチル加水分解活性を有するタンパク質をコードするDNAの部分塩基配列が決定されたのでインバースPCR法(細胞工学14巻、p.591-593,1995年)により、クローニング断片の上流、下流域に広がる周辺領域の塩基配列を増幅、クローニング、配列解析した。すなわち、コリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612の染色体DNAを制限酵素EcoRIとHindIIIでそれぞれ消化した。得られた各制限酵素切断DNA断片をDNA
Ligation Kit ver.2(タカラバイオ社製)を用いて自己環状化させた。一方、DNA断片-A1の塩基配列から、以下のようなプライマー(MR1-3FおよびMR1-3R)を作成した。
MR1-3F:5’-ATCCCCCGGGACATCATGCAGAAC-3’(配列番号6参照)
MR1-3R:5’-GGAACGAACCCACCACTGCCAGTGTCCATC-3’(配列番号7参照)
【0055】
次に、この2種のプライマー(MR1-3FおよびMR1-3R)と前記の自己環状化させたコリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612の染色体DNAをテンプレートとして用いてPCR反応を行った。PCR反応は、Takara
LA Taq(タカラバイオ社製)とPCR増幅装置(T Gradient、バイオメトラー社製)を用い、変性を98℃、20秒間、アニーリングを63℃、30秒間、伸長を68℃、6分間で行う反応を30回繰り返した。この結果、約2.2kbpの大きさのDNA断片(DNA断片-B1)と約2.0kbpの大きさのDNA断片(DNA断片-C1)が増幅した。このPCR増幅反応液からDNA断片-B1およびDNA断片-C1をQIAquick
PCR Purification Kit(QIAGEN社製)によって回収した。次に得られたDNA断片-B1およびDNA断片-C1について、前記と同様にプラスミドベクターpT7Blue
T(Novagen社製)、DNA Ligation kit ver.2(タカラバイオ社製)、大腸菌JM109株およびQIAprep Spin Miniprep
Kit(QIAGEN社製)を用いて、一定量の各DNA断片を得た。
【0056】
得られたDNA断片-B1およびDNA断片-C1の塩基配列をDNA塩基配列解析装置(PRISM 310 Genetic Analyzer、ABI社製)を用い、ダイターミネーター・サイクル・シークエンス法で解析した。このように塩基配列の解析を行い、得られたDNA断片-B1とDNA断片-C1の部分配列、および先の551bpの塩基配列から、配列番号1に示された1430bpの塩基配列を決定した。この塩基配列をBLAST
searchを用いて解析した結果、配列番号1の塩基200〜塩基1321にヒストンデアセチラーゼと高い相同性を有する374個のアミノ酸からなるタンパク質をコードするオープン・リーディング・フレーム(ORF)が存在した。本発明者らは、このORFにコードされる遺伝子をaaaHと名づけた。aaaHはアルカリゲナセアエ・バクテリウムFB188のヒストンデアセチラーゼ様アミドヒドロラーゼと推定される遺伝子のアミノ酸配列に最も高い相同性を有し(相同性55%)、クレブシエラ・アエロゲネスW70のデアセチラーゼと推定されるアミノ酸配列にも比較的高い相同性を有した(相同性44%)。このことからaaaHはヒストンデアセチラーゼタイプの脱アセチル化酵素をコードする遺伝子であると考えられる。
【0057】
実施例5:アセトアミド加水分解酵素遺伝子aaaHをもつ形質転換体の作製
(1)アセトアミド加水分解酵素遺伝子aaaHを含有するDNA断片の調製
先に解析した配列番号1の塩基配列を参考にして、5’末端にNdeIサイトを付加したプライマー
AaaH-NdeF(5’-CCCCATATGTCACGCAACGTCGGTTATCTC-3’:配列番号8参照)
および5’末端にXhoIサイトを付加したプライマー
AaaH-XhoR(5’-GGGCTCGAGTTATTTGGCGGGAATGTTTGC-3’:配列番号9参照)
を作成した。
【0058】
次に、この2種のプライマー(AaaH-NdeFおよびAaaH-XhoR)と先に得たコリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612の染色体DNAをテンプレートとして用いてPCR反応を行った。PCR反応は、Takara
LA Taq(タカラバイオ社製)とPCR増幅装置(T Gradient、Biometra社製)を用い、変性を98℃、20秒間、アニーリングを65℃、30秒間、伸長を68℃、2分間で行う反応を30回繰り返した。この結果、aaaHを含む1143kbpの大きさのDNA断片(以下、DNA断片-D1という)が増幅された。このPCR増幅反応液からDNA断片-D1をQIAquick
PCR Purification Kit(QIAGEN社製)によって回収した。
【0059】
(2)プラスミドpETaaaHの構築
DNA断片-D1を制限酵素NdeIとXhoIで消化して、同様に制限酵素NdeIとXhoIで消化したプラスミドpET15b(Novagen社)とDNA
Ligation Kit ver.2(宝酒造)を用いて連結した。これによって、aaaHが挿入されたプラスミドpET15b(プラスミドpETaaaHと名づける)が構築された。
【0060】
(3)大腸菌形質転換株BL21(DE3)/pETaaaHの調製
前項で調製したプラスミドpETaaaHを用いて、大腸菌BL21(DE3)コンピテントセル(Novagen社製)を形質転換した。こうして、プラスミドpETaaaHで形質転換された大腸菌BL21(DE3)/pETaaaH株を得た。
【0061】
実施例6:形質転換体による(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンの製造
本発明のアセチル加水分解酵素をコードする遺伝子で形質転換した大腸菌BL21(DE3)/pETaaaH株および対照として遺伝子を導入していないBL21(DE3)/pET15b株の各コロニーをカルベニシリン50μg/mLおよびOvernight
Express Autoinduction System(Novagen社製)を含むLB培地(バクトトリプトン1.0%、酵母エキス0.5%、NaCl 1.0%)を2mL入れた15mL容の試験管に植菌して25℃で24時間振盪培養した。この培養液1.5mLに10%2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのDMSO溶液を30μL添加して、30℃で1時間反応させた。反応液を15000rpmで5分遠心分離して得られた上清50μLをL-FDLAで誘導体化してHPLCで分析し、2-エキソ-アミノノルボルナンを定量して変換率およびS体の光学純度を求めた。その結果、大腸菌BL21(DE3)/pETaaaH株による変換で生成した(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンの光学純度(変換率)は、89.2%ee(変換率、19.8%)であった。なお、大腸菌BL21(DE3)/pET15b株では2-エキソ-アセトアミドノルボルナンの加水分解は起きなかった。
【0062】
実施例7:コリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612による(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンの製造
コリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612を寒天平板からL培地25mLを含む250mL容のエーレンマイヤーフラスコに植菌して30℃で18時間振盪培養を行った。この培養液1mLを0.1g/Lの2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを添加したL培地100mLを含む500mL容のエーレンマイヤーフラスコに植菌して30℃で18時間振盪培養を行った。1.5gの2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを添加してさらに72時間変換培養を行った。培養液から6000rpm、10分の遠心分離により菌体を除き、100mLの酢酸エチルで抽出して未反応の2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを0.5g回収した。
【0063】
こうして得た2-エキソ-アセトアミドノルボルナンの立体を決定するために以下の実験を行った。非立体選択的に2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセチル基を加水分解するスタフィロコッカス・エピデルミディスATCC14990を寒天平板から0.1g/Lの2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを添加したL培地2mLを含む試験管に植菌して30℃で18時間振盪培養を行った。培養液から3500rpm、10分の遠心分離により上清を除き、菌体を50mMリン酸緩衝液(pH6.8)2mLで洗浄後、同様にして遠心分離により菌体を回収した。この菌体に先に回収した2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを1mg/mL濃度で溶かした50mMリン酸緩衝液(pH6.8)1mLを加えて懸濁させ、37℃で2時間変換反応を行い、2-エキソ-アセトアミドノルボルナンが完全に加水分解したことをHPLC分析で確認してから、生じた2-エキソ-アミノノルボルナンの立体を決めるために反応液50μLをL-FDLAで誘導体化してHPLC分析した。その結果、生じた2-エキソ-アミノノルボルナンは99.9%eeの(R)-2-エキソ-アミノノルボルナンであった。このことから先に回収した2-エキソ-アセトアミドノルボルナンは99.9%eeの(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンであった。
【0064】
実施例8:形質転換体により得られた2-エキソ-アミノノルボルナンの立体配置の決定
組換え大腸菌BL21(DE3)/pETaaaHによる、2-エキソ-アセトアミドノルボルナンの加水分解で生成した2-エキソ-アミノノルボルナンの絶対立体配置の決定をNMR測定によるMosher法で行った。2-エキソ-アミノノルボルナン(10.5mg,0.0944mmol)を塩化メチレン(1mL)に溶解し、4,4-ジメチルアミノピリジン(23mg,0.189mmol)および(R)-α-メトキシ-α-(トリフルオロメチル)フェニルアセチルクロライド((R)-MTPA-Cl)(17.6μL,0.113mmol)を加え、室温で10分間攪拌した。反応液をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(展開液:クロロホルム:メタノール=10/1)で展開後目的のスポットをかきとりにより精製し、(R)-MTPA
エステル(25.2mg,収率77%)を得た。同様に2-エキソ-アミノルボルナン(9.3mg)と(S)-α-メトキシ-α-(トリフルオロメチル)フェニルアセチルクロライド((S)-MTPA-Cl)から(S)-MTPA
エステル(7.6mg)を得た。それぞれの1H-NMRスペクトルを測定して比較した。(S)-MTPAエステルのδ値(ppm)から(R)-MTPAエステルのδ値(ppm)を引いた差分(△δ)は、1-Hが+0.08、3-CH2が-0.05と-0.07であった。定法によりMTPAを上側で手前、α水素を下側で手前とし、△δがプラスのプロトングループ(1-H)を右側、△δがマイナスのプロトングループ(3-CH2)を右側に置くと2位の周りの立体配置はS配置であると決定した。
【0065】
(S)-2-エキソ-アミノノルボルナン-(R)-MTPA エステル のNMR測定データを以下に示す。
1H NMR (500MHz, CDCl3)δ:7.55-7.50 (2H, m, Ph), 7.42-7.37
(3H, m, Ph), 6.56 (1H, br, NH), 3.79 (1H, dt, J = 8.0, 4.0 Hz, H-2), 3.41 (3H,
s, MeO-), 2.28-2.30 (3H, overlapped, H-1 and H-4), 1.80 (1H, ddd, J = 13.5,
8.0, 2.0 Hz, H-3a), 1.58-1.11 (7H, m)
【0066】
(S)-2-エキソ-アミノノルボルナン-(S)-MTPA エステルのNMR測定データを以下に示す。
1H NMR (500MHz, CDCl3)δ:7.55-7.51 (2H, m, Ph), 7.42-7.38
(3H, m, Ph), 6.58 (1H, br, NH), 3.79 (1H, J = 8.0, 4.0 Hz, H-2), 3.40 (3H, s,
MeO-), 2.30 (1H, br, H-4), 2.20 (1H, d, J = 4.0 Hz), 1.85 (1H, ddd, J = 13.0,
8.0, 2.0 Hz, H-3a), 1.58-1.13 (7H, m)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

で表わされる(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解し、
式(II)、
【化2】

で表わされる(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンへ変換する能力を有するタンパク質を一部にまたは全体としてコードするDNA、またはその改変体を含んでなる単離された純粋なDNAであって、
下記の(a)、(b)または(c)で表わされるDNA。
(a)(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解する能力を有するタンパク質をコードするDNAであって、配列番号1の塩基200から塩基1321までの連続した塩基配列からなるDNA。
(b)前記(a)で表わされるDNAの改変体であって、
(i)前記(a)で表わされるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、
(ii)(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解する能力を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)遺伝子コドンの縮重のため、前記(a)に表わされるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズしないが、前記(a)または(b)で表わされるDNAによりコードされるタンパク質と同じアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項2】
請求項1記載のDNAによりコードされるタンパク質。
【請求項3】
請求項1記載のDNAを担持する自律複製性または組み込み複製性の組み換えベクター。
【請求項4】
請求項3記載の組み換えベクターで形質転換した形質転換体。
【請求項5】
請求項1に記載されたDNAまたはその一部からなるDNAをプローブまたはプライマーとして用いることを特徴とする、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解する能力を有するタンパク質をコードするDNAの単離方法。
【請求項6】
式(II)、
【化3】

で表わされる(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンの製造方法であって、
(A)式(I)
【化4】

で表わされる(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を選択的に加水分解する能力を有するコリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する微生物または請求項4記載の形質転換体の培養菌体、またはそれらの調製物の存在下で、式(I)で表わされる(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンをインキュベーション処理する工程、および
(B)インキュベーション処理液から式(II)で表わされる(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンを採取する工程、
を含んでなる方法。
【請求項7】
コリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する微生物が、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium
ammoniagenes)またはコリネバクテリウム・ビタルーメン(Corynebacterium vitarumen)に属する微生物である請求項6記載の方法。
【請求項8】
形質転換体が、エッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)に属する微生物である請求項6記載の方法。
【請求項9】
式(III)
【化5】

で表わされる(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンの製造方法であって、
(C)式(I)
【化6】

で表わされる(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を選択的に加水分解する能力を有する微生物の培養菌体またはその調製物の存在下で、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンおよび(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンの混合物をインキュベーション処理し、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンに選択的に変換する工程、および
(D)インキュベーション処理液から未変換の式(III)で表わされる(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを採取する工程、
を含んでなる方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法により製造された(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解することを特徴とする、
式(IV)、
【化7】

で表わされる(R)-2-エキソ-アミノノルボルナンの製造方法。
【請求項11】
式(III)、
【化8】

で表わされる(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナン。
【請求項12】
式(II)、
【化9】

で表わされる(S)-2-エキソ-アミノノルボルナン。
【請求項13】
式(IV)、
【化10】

で表わされる(R)-2-エキソ-アミノノルボルナン。

【公開番号】特開2007−14251(P2007−14251A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198027(P2005−198027)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000001915)メルシャン株式会社 (48)
【Fターム(参考)】