説明

ハイブリッド車両

【課題】車載補機類の消費電力の見込み値を電動エアコンの負荷状況に応じた値に設定することにより、車両全体における電力収支を適正に維持することができるハイブリッド車両を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車両10は、バッテリ16と、エンジン12と、エンジン12から動力供給を受けて発電可能なモータ24と、バッテリ16の高圧電力を所定の低電圧に降圧して電動エアコン49を含む車載補機類48の駆動電力として出力するDC/DCコンバータ46と、エンジン12等を作動制御するコントローラ26とを備える。コントローラ26は、電動エアコンが暖房モードで運転されるとき、車載補機類48の駆動電力の通常値である第1の値P1から、電動エアコンの負荷状況に応じた消費電力が第1の値P1に加算された第2の値P2に切り替える処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に係り、特に、電動エアコンを搭載したハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリから放電される電力によってモータを駆動して走行用動力を出力させる電動車両が知られており、そのうち走行用動力源としてエンジンとモータとを併用するハイブリッド車両が普及している。
【0003】
上記ハイブリッド車両においてモータは、電動機として機能して走行用動力を出力するのに加えて、回生制動時に車輪から入力される動力やエンジン動力を受けて発電を行う発電機としても機能するモータジェネレータであり、モータで発電された電力はバッテリに充電されるようになっている。バッテリには、高圧電力を充放電可能な例えばリチウムイオン電池等の二次電池が好適に用いられ、バッテリの充電状態(SOC(State Of Charge))が所定範囲内に維持されるようにコントローラによって管理されている。
【0004】
バッテリから放電される高圧電力は、モータの駆動電力として使用されるだけでなく、車両に搭載された各種補機類、例えば電動エアコン、冷却ファン、燃料ポンプ等の駆動電力としても消費される。これらの補機類の駆動電力は、バッテリからの高圧電力をDC/DCコンバータによって例えば12Vの低電圧に降圧して供給される。
【0005】
コントローラは、バッテリの充電が必要とされる場合にエンジン動力によってモータを駆動して発電させるが、そのときバッテリ要求充電量(kW)に補機類の消費電力見込み値(kW)を加えた値を発電電力指令として生成することがある。この場合、全補機類の最大消費電力を見込み値として用いると、発電電力の指令値と実際に補機類で消費される実消費電力とのずれが大きくなり、発電動力の無駄ひいては燃費の悪化につながる。そのため、補機類の消費電力見込み値として、車両走行時に常時必要となる各種のスイッチ、センサ、制御用コンピュータ等の駆動電力を賄える一定値が設定されることがある。
【0006】
そうした場合、車載の電動エアコンによる消費電力が見込まれていないため、発電電力指令値が実消費電力を下回る事態が生じる。通常、実消費電力はバッテリからの放電電力を監視しているために取得できるので、コントローラは発電指令値を実消費電量に迅速に一致させるようフィードバック制御を行うようになっている。具体的には、上記のように実消費電力の方が大きい場合、発電指令値をより大きく設定して上記実消費電力とのずれを解消し、エンジン回転数を上げてモータによる発電電力を増加させることになる。
【0007】
しかし、バッテリ温度が所定温度以下の低温時において、リチウムイオン電池等の二次電池では許容充電電力が極端に低下するため、バッテリ保護の観点からバッテリ充電電力を制限する制御が実行されることがある。そうした場合に、上記のようなフィードバック制御によってもモータによる発電量を十分に増加させることができず、車両全体としての電力収支バランスが崩れ、その結果、バッテリからの過放電によってバッテリ電圧が急降下して使用下限電圧を割り込み、寿命低下や性能劣化を招くことになる。このような事態は、低温環境下にあるハイブリッド車両において、電動エアコンが例えば比較的高温の温度設定で且つ風量強で運転されたとき、電動エアコンに含まれる電熱ヒータおよびブロアファン用モータでの消費電力が大きくなることにより、特に生じやすい。
【0008】
例えば特許文献1には、エンジンのアイドル回転の安定を図りつつ、低温下におけるDC/DCコンバータ起動時のバッテリからの放電を抑制して、バッテリの一時的な電圧降下を防止することを課題としたハイブリッド車両が開示されている。このハイブリッド車両では、モータコントローラ8は、エンジン7がアイドル状態でモータジェネレータ6の発電量が少なく、高電圧バッテリ1の温度が規定下限温度以下である場合、出力可変DC/DCコンバータ2を低電圧モードで起動し、その後エンジン7のアイドル回転に影響を与えない速度で徐々に発電量を増加させ、そして、モータジェネレータ6の発電量を出力可変DC/DCコンバータ2の出力の消費電力と比較して、モータジェネレータ6による発電量が確保できたことを判断し、出力可変DC/DCコンバータ2の動作モードを低電圧モードから高電圧モードへ切り替える、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−189401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載のハイブリッド車両での制御は、DC/DCコンバータの出力である消費電力を低電圧電力情報取得部で検出することでなし得るものであるため、DC/DCコンバータの出力電力(すなわち車載補機類の消費電力)を検出する構成を採用していないハイブリッド車両には適用できない。
【0011】
本発明の目的は、車載補機類の消費電力の見込み値を電動エアコンの負荷状況に応じた値に設定することにより、車両全体における電力収支を適正に維持することができるハイブリッド車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るハイブリッド車両は、高圧電力を充放電するバッテリと、走行用動力を出力するエンジンと、バッテリから電力供給を受けて走行用動力を出力可能であってエンジンから動力供給を受けて発電可能なモータと、バッテリの高圧電力を所定の低電圧に降圧して電動エアコンを含む車載補機類の駆動電力として出力するDC/DCコンバータと、バッテリ状態を管理しつつエンジン、モータおよびDC/DCコンバータを作動制御するコントローラと、を備えるハイブリッド車両であって、前記コントローラは、前記電動エアコンが暖房モードで運転されるとき、前記車載補機類の駆動電力の通常値である第1の値から、前記電動エアコンの負荷状況に応じた消費電力が前記第1の値に加算された第2の値に切り替える処理を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るハイブリッド車両によれば、コントローラは、電動エアコンが暖房モードで運転されるとき、車載補機類の駆動電力の通常値である第1の値から、電動エアコンの負荷状況に応じた消費電力が第1の値に加算された第2の値に切り替える処理を実行する。これにより、電動エアコンを含む車載補機類の消費電力に見合った発電電力指令を生成してモータを発電動作させることができ、ハイブリッド車両全体としての電力収支を適正に維持することができる。その結果、低温時にバッテリの許容充電量が低下している状況でも、バッテリの電圧下限割れによる寿命低下や性能劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態であるハイブリッド車両の概略構成図である。
【図2】車載補機類の1つである電動エアコンの概略構成図である。
【図3】モータに対する発電電力指令を生成する工程を模式的に示す図である。
【図4】電動エアコンが暖房モードで運転されているときに車載補機類の消費電力の見込み値を切り替える制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。
【0016】
下記においては、主として電動機として機能して走行用動力を出力するモータと主として発電機として機能するモータの2つのモータを搭載したハイブリッド車両を例に説明するが、本発明は、走行用動力源および発電機として用いられる1つのモータだけを搭載したハイブリッド車両に適用されてもよい。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態であるハイブリッド車両10の概略構成を示す。図1中、動力伝達系は丸棒状の軸要素として図示され、電力系は実線で図示され、信号系は破線で図示されている。
【0018】
ハイブリッド車両10は、走行用動力源としてのエンジン12と、別の走行用動力源である第2のモータ(図中「MG2」と表示)14と、エンジン12の出力軸18が連結される動力分配機構20を介して回転軸22が接続される第1のモータ24と、第1および第2のモータ24,14に駆動電力を供給可能なバッテリ16と、上記エンジン12およびモータ24,12の作動を統括的に制御するコントローラ(図1中「ECU(Electronic Control Unit)」と表示)とを備える。
【0019】
エンジン12は、ガソリン等を燃料とする内燃機関であり、コントローラ26からの指令に基づき始動、運転、停止等が制御される。また、エンジン12から動力分配機構20へと延伸する出力軸18の近傍にはエンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ28が設けられており、このセンサ28により検出されるエンジン回転数Neがコントローラ26に入力されるようになっている。
【0020】
動力分配機構20は、例えば遊星歯車機構によって好適に構成されることができる。エンジン12から出力軸18を介して動力分配機構20に入力された動力は、減速機30および車軸32を介して駆動輪34に伝達されて、ハイブリッド車両10がエンジン動力によって走行することができる。
【0021】
また、動力分配機構20は、出力軸18を介して入力されるエンジン12の動力の一部または全部を、回転軸22を介して第1のモータ24に入力することができる。このとき、例えば三相同期型交流モータによって好適に構成される第1のモータ24は発電機として機能し、発電された三相交流電圧がインバータ36によって直流電圧に変換された後、バッテリ16に充電されることができる。
【0022】
また、第1のモータ24は、バッテリ16からインバータを介して供給された電力により回転駆動される電動機としても機能することができ、第1のモータ24が回転駆動されて回転軸22に出力される動力は動力分配機構20および出力軸18を介してエンジン12に入力され、エンジン12を始動させる際にエンジン12をクラッキングさせる。すなわち、第1のモータ24は、セルモータとして機能する。
【0023】
主として電動機として機能する第2のモータ14は、例えば三相同期型交流モータによって好適に構成されることができ、バッテリ16から供給される直流電圧がインバータ38で三相交流電圧に変換されて駆動電圧として印加されることにより回転駆動される。第2のモータ14が駆動されて回転軸15に出力される動力は、減速機30および車軸32を介して駆動輪34に伝達され、これにより電動走行またはEV走行が可能になる。また、第2のモータ14は、ユーザのアクセル操作によりハイブリッド車両10に対して急加速要求があった場合等に、走行用動力を出力してエンジン出力をアシストする機能も有する。
【0024】
さらに、第2のモータ14は、車両の回生制動時に発電機として機能することができ、駆動輪34から減速機30および回転軸15を介して入力される動力によって交流電力を発電する。第2のモータ14で発電されて出力される三相交流電圧は、インバータ38によって直流電圧に変換された後、バッテリ16に充電されることができる。
【0025】
インバータ36,38は、上述したように双方向の交流・直流変換機能を有する公知構成のものを用いることができる。また、第1のモータ24によって発電された電力をインバータ36からインバータ38に直に供給して、第2のモータ14の駆動電力として用いることもできる。
【0026】
バッテリ16には、充放電可能な二次電池、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池等を好適に用いることができる。バッテリ16には、バッテリ電圧Vbを検出する電圧センサ40と、バッテリ16に出入りするバッテリ電流Ibを検出する電流センサ42、バッテリ16の温度Tbを検出する温度センサ44とが設けられている。各センサ40,42,44による検出値は、コントローラ26に入力されてバッテリ16のSOC(State Of Charge)を管理するために用いられる。
【0027】
また、バッテリ16に接続される一対の電力ラインには、DC/DCコンバータ46が接続されている。DC/DCコンバータ46は、バッテリ16から放電される例えば200Vの高圧電力を例えば12Vの低圧電力に降圧する機能を有する電圧変換器であり、電力用スイッチング素子(例えばIGBT)等を含んで構成される公知構成のものを用いることができる。DC/DCコンバータ46は、コントローラ26からの信号を受けて作動制御される。
【0028】
DC/DCコンバータ46の出力端子には車載補機類48が接続されている。車載補機類48は、DC/DCコンバータ46によって降圧された低圧電力によって駆動される。ここで、車載補機類48には、電動エアコン49(図2参照)、冷却ファン、燃料ポンプ、スイッチ類、センサ類、および制御用コンピュータ等が含まれる。
【0029】
電動エアコン49は、バッテリ16から放電される直流電力がDC/DCコンバータ46によって降圧されて供給されることで、内部に含むモータ等が駆動されて空調動作を行う電動式のエアコンである。電動エアコン49は、コントローラ26からの信号を受けて作動が制御されると共に、ユーザ操作による設定状況、具体的にはオン・オフ設定、温度設定、風量設定等を示す信号をコントローラ48に送信するようになっている。
【0030】
なお、車載補機類48への安定した電力供給を行うために、DC/DCコンバータ46と車載補機類48との間に例えば充放電可能な鉛電池(定格電圧12V)からなる補機バッテリ(図示せず)が接続されてもよい。
【0031】
コントローラ26は、各種の制御プログラムを実行するCPU、制御プログラム等を予め記憶するROM、各センサ40,42,44による検出値などを一時的に記憶するRAM等の含むマイクロコンピュータとして好適に構成されることができる。コントローラ26は、エンジン回転数Ne、バッテリ電流Ib、バッテリ電圧Vb、バッテリ温度Tb、アクセル開度信号Acc、車速Sv等が入力される入力ポート、ならびに、エンジン12、インバータ36,38、DC/DCコンバータ46および電動エアコン49の作動を制御する制御信号を出力する出力ポートを含む入出力インターフェースを有する。また、上記ROMには、電動エアコン49の負荷状況、具体的には暖房モード運転時の設定温度や風量に応じて変化する電熱ヒータおよびブロアモータの消費電力量がマップまたはテーブル等の形式で予め記憶されている。
【0032】
なお、本実施形態のハイブリッド車両10では、コントローラ26が車両全体を一括して制御するものとして説明するが、エンジン12、モータ14,24、バッテリ16等がそれぞれ個別のコントローラ(エンジン用ECU、モータ用ECU、バッテリ用ECU等)によって監視および制御され、コントローラ26が上記各個別のコントローラと通信して全体を統括制御する構成としてもよい。
【0033】
図2は、電動エアコン49の構成を概略的に示す。電動エアコン49は、空気通路形成部材50内に、ブロワモータ51によって回転駆動されるファン52、冷媒系統60の一部を構成するエバポレータ54、電力供給されて発熱する電熱ヒータ56、および、図示しないサーボモータにより回動されて空気取り込み流路を車外または車室に切り替える切り替えドア部材58を含んで構成されている。
【0034】
冷媒系統60は、エバポレータ54、コンプレッサモータ64によって駆動されるコンプレッサ66、放熱器68、および膨張弁70を冷媒配管72でループ状に接続して構成されている。冷媒は、コンプレッサ66によって圧縮されることにより高温高圧のガス状冷媒となって放熱器68に送られる。放熱器68を通過する際に、冷媒は外部に放熱することにより高温高圧の液状冷媒となる。そして、膨張弁70が所定のタイミングで開閉することにより、冷媒は低温低圧の霧状冷媒となってエバポレータ54に送られる。エバポレータ54では、内部を流れる低温低圧の冷媒がエバポレータ54を通過して流れる空気から吸熱して冷風が生成される。エバポレータ54を通過した冷媒は、コンプレッサ66に還流する。このようにして電動エアコン49が冷房モードで運転されるとき、所定の設定温度に温調された冷風が車室内送風通路63へと送られるようになっている。冷房時の冷風温度は、コンプレッサモータ64の回転数や膨張弁70の開閉タイミング等を調節することにより所望温度に設定されることができる。コンプレッサモータ64には図示しない電流センサが設けられており、コントローラ64はその電流センサの検出値に基づいてコンプレッサモータ64の消費電力を取得することができる。
【0035】
一方、電動エアコン49が暖房モードで運転されるとき、電熱ヒータ56に電力供給して発熱させ、ヒータ周囲を流れる空気を温めることにより温風を生成する。この温風の温度は、電熱ヒータ56に供給される電力によって発熱量を調節することにより所望温度に設定される。コントローラ26は、暖房モード運転中である電動エアコン49の設定温度および空気通路形成部材50内に取り込まれる空気と上記設定温度との温度差に基づいて電熱ヒータ56の消費電力を上記ROMから取得することができる。
【0036】
さらに、電動エアコン49に含まれるブロアモータ51の回転数は、ユーザ操作により又は自動的に選択される風量設定、例えば風量弱、中、強の3段階に応じて変化し、コントローラ26はそのときの風量設定に基づいてブロアモータ51の消費電力を上記ROMから取得することができる。
【0037】
続いて、上記構成からなるハイブリッド車両10の動作について簡単に説明する。ユーザによってスタートスイッチ(図示せず)がオン操作されると、バッテリ16からインバータ36を介して第1のモータ24に電力供給されて駆動され、これによりエンジン12がクランキングされて始動される。その後、発進時に車両がEV走行する場合、エンジン12は暖機運転を終了すると運転停止されることになる。
【0038】
車両速度Svが低速域から中速域にかけては、ユーザによるアクセル踏み込み量に応じた車両加速度が比較的緩やかな場合、バッテリ16に出力制限がかかっていないことを条件に、バッテリ16からインバータ38を介して電力供給されて第2のモータ14が駆動され、これによりEV走行が行われる。これに対し、車両速度Svが中速域から高速域になった場合、あるいは、ユーザのアクセル操作により比較的大きな車両加速要求がある場合等に、エンジン12を運転して走行用動力を出力させ、必要に応じて第2のモータ14からも走行用動力を出力させる。
【0039】
また、コントローラ26は、バッテリ16のSOCが例えば40〜80%内に維持されるように常時監視および制御している。具体的には、SOCが低下して40%に近づくとバッテリ充電指令を発し、エンジン動力により第1のモータ24で発電させ、その発電電力をバッテリ16に充電してSOCを回復させる制御を実行する。
【0040】
図3は、コントローラ26が第1のモータ24に対する発電電力指令を生成する工程を模式的に示す図である。上記のようにコントローラ26では、バッテリ16のSOCに基づいてバッテリ要求充電量Pin(kW)が決定される。そして、電動エアコン49が冷房モードで運転されているときは、コンプレッサモータ64の消費電力(消費パワー)Pcom(kW)が上記バッテリ要求充電量Pinに加算部740において加算処理される。ただし、電動エアコン49が運転されていないか又は暖房モードでの運転時には、上記コンプレッサモータ64の消費電力Pcomは0に設定される。
【0041】
さらに、車載補機類48の消費電力(消費パワー)Pacce(kW)が上記バッテリ要求充電量Pinに加算部76において加算処理される。ここで、車載補機類48の消費電力Pacceは、図4に示す処理手順にしたがって第1の値P1または第1の値P2に設定される。すなわち、図4を参照すると、まず電動エアコン49が暖房モードで運転されているか否かが判定され(ステップS10)、暖房モードで運転中でないとき(ステップS10でNO)、車載補機類48の消費電力Pacceは第1の値P1に設定され(ステップS12)、一方、電動エアコン49が暖房モードで運転されているとき(ステップS10でYES)、車載補機類48の消費電力Pacceは第2の値P2に設定される(ステップS14)。
【0042】
ここで、上記第1の値P1は、電動エアコン49が暖房モードで運転されていないときの車載補機類48の消費電力の通常値であり、車両走行時に常時必要となる各種のスイッチ、センサ、制御用コンピュータ等の駆動電力を賄える一定値として設定されるものである。これに対し、上記第2の値P2は、電動エアコン49が暖房モードで運転されているときの負荷状況に応じた消費電力、具体的には電熱ヒータ56の消費電力およびブロアモータ51の消費電力を上記第1の値P1に加算したものである。
【0043】
なお、この処理では電動エアコン49が冷房モードで運転されているときのブロアモータ51の消費電力が発電電力指令に反映されないことになるが、この場合、電動エアコン49が冷房運転される常温またはそれ以上の温度環境下ではバッテリ16の許容充電容量は十分に大きく、上記従来技術の欄で説明したように実消費電力と発電電力指令とのずれはフィードバック制御により迅速に解消可能であるため、ハイブリッド車両10全体としての電力収支は良好に維持されることになる。
【0044】
図3を再び参照すると、バッテリ要求充電量Pinにコンプレッサ消費電力Pcomおよび車載補機類消費電力Pacceが加算された後、システム効率補正部78においてバッテリ放電時用定数(またはバッテリ充電時用定数)が乗算されて電力損失分を考慮した補正がなされる。そして、発電電力指令は、加算部80において、アクセル開度Accおよび車速Svに基づいて算出された走行要求パワーPdr*に加算処理されてエンジン要求パワーPe*が生成される。このエンジン要求パワーPe*に基づいてエンジン12の出力が制御され、発電電力指令に相当するエンジン出力の一部(車両が停車中またはEV走行中であれば全部)が第1のモータ24に供給されて発電が行われ、車載補機類48の消費電力をカバーできる発電電力が得られる。
【0045】
このように本実施形態のハイブリッド車両10によれば、コントローラ26は、電動エアコン49が暖房モードで運転されるとき、車載補機類48の駆動電力の通常値である第1の値P1から、電動エアコン49の負荷状況に応じた消費電力が第1の値P1に加算された第2の値P2に切り替える処理を実行する。これにより、電動エアコン49を含む車載補機類48の消費電力に見合った発電電力指令を生成して第1のモータ24を発電動作させることができ、ハイブリッド車両10全体としての電力収支を適正に維持することができる。その結果、低温時にバッテリ16の許容充電量が低下している状況でも、バッテリ16の電圧下限割れによる寿命低下や性能劣化を抑制できる。
【符号の説明】
【0046】
10 ハイブリッド車両、12 エンジン、14 第2のモータ、15 回転軸、16 バッテリ、18 出力軸、20 動力分配機構、22 回転軸、24 第1のモータ、26 コントローラ、28 エンジン回転数センサ、30 減速機、32 車軸、34 駆動輪、36,38 インバータ、44 温度センサ、46 DC/DCコンバータ、48 車載補機類、49 電動エアコン、50 空気通路形成部材、51 ブロワモータ、52 ファン、54 エバポレータ、56 電気ヒータ、58,62 切り替えドア部材、60 冷媒系統、63 車室内送風通路、64 コンプレッサモータ、66 コンプレッサ、68 放熱器、70 膨張弁、72 冷媒配管、74,76,80 加算部、78 システム効率補正部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧電力を充放電するバッテリと、走行用動力を出力するエンジンと、バッテリから電力供給を受けて走行用動力を出力可能であってエンジンから動力供給を受けて発電可能なモータと、バッテリの高圧電力を所定の低電圧に降圧して電動エアコンを含む車載補機類の駆動電力として出力するDC/DCコンバータと、バッテリ状態を管理しつつエンジン、モータおよびDC/DCコンバータを作動制御するコントローラと、を備えるハイブリッド車両であって、
前記コントローラは、前記電動エアコンが暖房モードで運転されるとき、前記車載補機類の駆動電力の通常値である第1の値から、前記電動エアコンの負荷状況に応じた消費電力が前記第1の値に加算された第2の値に変更する処理を実行することを特徴とする、ハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−46279(P2011−46279A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196357(P2009−196357)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】