バイト切削装置及び被加工物のバイト切削方法
【課題】 切削刃の急速な磨耗を防止し、切削刃の寿命を延ばすことのできるバイト切削装置を提供することである。
【解決手段】 被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された被加工物の表面を切削するバイトを回転可能に支持するバイト手段と、該チャックテーブルの該保持面に対して水平方向に該チャックテーブルと該バイト手段とを相対移動させる切削送り手段と、該チャックテーブルの該保持面に対して鉛直方向に該チャックテーブルと該バイト手段とを相対移動する切り込み手段とを備えたバイト切削装置であって、純水供給源から供給される純水と添加剤供給源から供給される添加剤とを混合して切削液を生成する混合部と、該混合部で生成された切削液を該バイトと該チャックテーブルに保持された被加工物に供給する切削液供給ノズルと、を具備したことを特徴とする。
【解決手段】 被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された被加工物の表面を切削するバイトを回転可能に支持するバイト手段と、該チャックテーブルの該保持面に対して水平方向に該チャックテーブルと該バイト手段とを相対移動させる切削送り手段と、該チャックテーブルの該保持面に対して鉛直方向に該チャックテーブルと該バイト手段とを相対移動する切り込み手段とを備えたバイト切削装置であって、純水供給源から供給される純水と添加剤供給源から供給される添加剤とを混合して切削液を生成する混合部と、該混合部で生成された切削液を該バイトと該チャックテーブルに保持された被加工物に供給する切削液供給ノズルと、を具備したことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を切削するバイトを備えたバイト切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの軽薄短小化を実現するための技術には様々なものがある。一例として、半導体ウエーハに形成されたデバイス表面に10〜100μm程度の高さのバンプと呼ばれる金属突起物を複数形成し、これらのバンプを配線基板に形成された電極に相対させて直接接合するフリップチップボンディングと呼ばれる実装技術が実用化されている。
【0003】
半導体ウエーハのデバイス表面に形成されるバンプは、メッキやスタッドバンプといった方法により形成される。このため個々のバンプの高さは不均一であり、そのままでは複数のバンプを配線基板の電極に全て一様に接合するのは困難である。
【0004】
また、高密度配線を実現するために、バンプと配線基板との間に異方性導電性フィルム(ACF)を挟んで接合する集積回路実装技術がある。この実装技術の場合には、バンプの高さが不足すると接合不良を招くため、バンプの高さを一定に揃える必要がある。
【0005】
そこで、半導体ウエーハの表面に形成された複数のバンプを所望の高さへ切削することが望まれている。バンプを所望の高さへ切削する方法として、特開2010−36300号公報に開示されたようなバイト切削装置でバンプを削り取る方法が提案されている。
【0006】
バイト切削装置は、ホイール基台と、ホイール基台に配設されたダイアモンドからなる切削刃を含むバイトユニットとから構成されるバイトホイールを備えている。バイトホイールをスピンドルに装着し、バイトホイールを回転させつつ、切削刃を被加工物へ当接した状態でバイトホイールと被加工物とを摺動させることにより切削が遂行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−36300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
バイト切削装置は半導体ウエーハの表面に形成されたバンプを所望の高さへ切削するのに適しているが、ニッケルやチタン、鉄、コバール等のバイトユニットの切削刃であるダイアモンドと親和性の高い材料を含む被加工物をバイト切削装置で切削すると、高温の加工熱が発生し、切削刃が急速に磨耗してしまうという問題がある。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、切削刃の急速な磨耗を防止し、切削刃の寿命を延ばすことのできるバイト切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された被加工物の表面を切削するバイトを回転可能に支持するバイト手段と、該チャックテーブルの該保持面に対して水平方向に該チャックテーブルと該バイト手段とを相対移動させる切削送り手段と、該チャックテーブルの該保持面に対して鉛直方向に該チャックテーブルと該バイト手段とを相対移動する切り込み手段とを備えたバイト切削装置であって、純水供給源から供給される純水と添加剤供給源から供給される添加剤とを混合して切削液を生成する混合部と、該混合部で生成された切削液を該バイトと該チャックテーブルに保持された被加工物に供給する切削液供給ノズルと、を具備したことを特徴とするバイト切削装置が提供される。
【0011】
好ましくは、添加剤は、水に不溶な成分を0.1質量%以上含有せず、下記一般式(1)で表される単量体ユニットを50質量%以上有するポリマーを0.001〜50質量%含有する。
【0012】
【化1】
【0013】
好ましくは、混合部では、添加剤は500倍〜10000倍に希釈される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバイト切削装置によると、純水に添加剤を混合した切削液を切削液供給ノズルから供給しながらバイト切削を遂行するため、ダイアモンドと親和性の高い材料を含む被加工物をバイト手段の切削刃で切削しても、切削刃の急速な磨耗を防止でき、切削刃の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のバイト切削装置の斜視図である。
【図2】バイトホイールの斜視図である。
【図3】バイトユニットの分解斜視図である。
【図4】図4(A)はホイール基台へのバイトユニットの取り付け構造を示す側面図、図4(B)はその一部断面正面図である。
【図5】図5(A)はホイール基台へのバランス取り用錘の取り付け構造を示す側面図、図5(B)はその一部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明実施形態に係るバイト切削装置2の斜視図が示されている。4はバイト切削装置2のベース(ハウジング)であり、ベース4の後方にはコラム6が立設されている。コラム6には、上下方向に伸びる一対のガイドレール(一本のみ図示)8が固定されている。
【0017】
この一対のガイドレール8に沿ってバイト切削ユニット10が上下方向に移動可能に装着されている。バイト切削ユニット10は、そのハウジング20が一対のガイドレール8に沿って上下方向に移動する移動基台12に取り付けられている。
【0018】
バイト切削ユニット10は、ハウジング20と、ハウジング20中に回転可能に収容された図示しないスピンドルと、スピンドルの先端に固定されたマウント24と、マウント24に着脱可能に装着されたバイトホイール25と、スピンドルを回転駆動するモータ23とを含んでいる。バイトホイール25にはバイトユニット26が着脱可能に取り付けられている。
【0019】
バイト切削ユニット10は、バイト切削ユニット10を一対の案内レール8に沿って上下方向に移動するボールねじ14とパルスモータ16とから構成されるバイト切削ユニット送り機構18を備えている。パルスモータ16をパルス駆動すると、ボールねじ14が回転し、移動基台12が上下方向に移動される。
【0020】
ベース4の中間部分にはチャックテーブル30を有するチャックテーブル機構28が配設されており、チャックテーブル機構28は図示しないチャックテーブル移動機構によりY軸方向に移動される。33は蛇腹であり、チャックテーブル機構28をカバーする。
【0021】
ベース4の前側部分には、第1のウエーハカセット32と、第2のウエーハカセット34と、ウエーハ搬送用ロボット36と、複数の位置決めピン40を有する位置決め機構38と、ウエーハ搬入機構(ローディングアーム)42と、ウエーハ搬出機構(アンローディングアーム)44と、スピンナ洗浄ユニット46が配設されている。
【0022】
また、ベース4の概略中央部には、チャックテーブル30を洗浄する洗浄水噴射ノズル48が設けられている。この洗浄水噴射ノズル48は、チャックテーブル30が装置手前側のウエーハ搬入・搬出領域に位置づけられた状態において、チャックテーブル30に向かって洗浄水を噴射する。
【0023】
図2を参照すると、バイトホイール25の斜視図が示されている。バイトホイール25は、環状のホイール基台50と、ホイール基台50に着脱可能に取り付けられたバイトユニット26と、ホイール基台50の回転中心を基準にバイトユニット26に対して点対称位置のホイール基台50に着脱可能に取り付けられたバイトユニット26と同一重量のバランス取り用錘(カウンターバランス)66とから構成される。バイトホイール25は矢印R方向に回転されてウエーハWの表面に形成されたバンプ5を切削する。
【0024】
バイトユニット26は、図3の分解斜視図に示すように、略直方体形状のシャンク(バイトシャンク)52と、シャンク52に着脱可能に取り付けられたバイト54とから構成される。バイト54は板状を呈しており、長手方向の一端部の表面側にはダイアモンド等で所定形状に形成された切削刃56が固着されている。バイト54にはねじ58が挿入される丸穴59が形成されている。
【0025】
シャンク52の一側面には、バイト54の厚さと同等の深さを有するピット60が形成されている。ピット60にはねじ穴61が形成されている。バイト54をシャンク52のピット60内に挿入し、バイト54の丸穴59を通してねじ58をねじ穴61に螺合することにより、バイト54がシャンク52に固定される。
【0026】
図4に示すように、ホイール基台50には直方体形状の取り付け穴62と、取り付け穴62に開口するねじ穴63が形成されている。バイトユニット26のシャンク52をホイール基台50に形成された取り付け穴62中に挿入し、ねじ64をねじ穴63に螺合して締め付けることにより、バイトユニット26がホイール基台50に固定される。
【0027】
一方、バランス取り用錘66はバイトユニット26と同一重量を有しており、図2及び図5に示すように、ホイール基台50の回転中心を基準にバイトユニット26に対して点対称位置のホイール基台50に形成された取り付け用穴68中に挿入され、ねじ穴69中にねじ70を螺合して締め付けることにより、ホイール基台50に固定される。
【0028】
図1を再び参照すると、バイト切削ユニット10のバイトホイール25に隣接して、切削液供給ノズル35が配設されている。純水供給源37から供給された純水と添加剤供給源39から供給された添加剤とが混合部41で混合されて切削液が生成され、被加工物のバイト切削時にこの切削液を切削液供給ノズル35からバイトユニット26とチャックテーブル30に保持された被加工物に供給しながらバイト切削が遂行される。
【0029】
添加剤供給源39から供給される添加剤は、水に不溶な成分を0.1質量%以上含有せず、下記一般式(1)で表される単量体ユニットを50質量%以上有するポリマーを0.001〜50質量%含有する。
【0030】
【化1】
【0031】
ポリマーは、一般式(1)で表される単量体ユニットを50質量%以上有するポリマーであればよい。一般式(1)のR1〜R3はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、こうした炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ターシャリブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロベニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トルイル基、キシリル基等のアリール基が挙げられる。
【0032】
切削液用添加剤は上記ポリマーを含む水溶液であるが、水に不溶な成分を0.1質量%以上含有してはならない。水に不溶な成分とは一般的に非水溶性の物質であり、更に詳しくは水に対する溶解度が0.1質量%以下のものである。
【0033】
こうした水に不溶な成分としては、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエチレン、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂及びこれらの樹脂が任意の割合で配合された混合樹脂等の合成樹脂;ポリ−α−オレフィン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリブデン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリアルキレングリコール、ポリフェニエーテル、アルキル置換ジフェニルエーテル、ポリオールエステル、二塩基酸エステル、炭酸エステル、シリコーン油、フッ素化油等の合成油;パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油等の鉱油;ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ペンタン等の炭化水素系溶剤;トリクロロエタン、ジクロロメタン等のハロゲン系溶剤が挙げられる。
【0034】
混合部41で添加剤は純水供給源37から供給された純水により500倍〜10000倍に希釈されるのが好ましい。
【実施例1】
【0035】
ニッケルを含む被加工物をチャックテーブル30で吸引保持し、スピンドル22を約2000rpmで回転させつつ、バイトホイール送り機構18を駆動してバイトユニット26の切削刃56を被加工物に所定深さ切り込ませ、切削液供給ノズル35から750倍に希釈された切削液を供給しながらチャックテーブル30を矢印Y方向に1mm/sの送り速度で移動させて被加工物を切削した。
【0036】
その結果、バイトユニット26の切削刃56が摩滅するまで22枚の被加工物の加工が可能であった。バイト切削時に純水のみを供給しながら切削加工を行う従来のバイト切削装置では、同一条件で7枚の被加工物の加工が可能であった。
【0037】
よって、切削液供給ノズル35から純水に添加剤を混合した切削液を供給しながら切削を実施する本発明のバイト切削装置は、純水のみを供給しながらバイト切削を行う従来のバイト切削装置に比較して、バイトユニット26の切削刃56の寿命を約3倍に延ばすことができることが判明した。
【符号の説明】
【0038】
2 バイト切削装置
10 バイト切削ユニット
25 バイトホイール
26 バイトユニット
30 チャックテーブル
35 切削液供給ノズル
37 純水供給源
39 添加剤供給源
41 混合部
50 ホイール基台
52 シャンク(バイトシャンク)
54 バイト
56 切削刃
66 バランス取り用錘
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を切削するバイトを備えたバイト切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの軽薄短小化を実現するための技術には様々なものがある。一例として、半導体ウエーハに形成されたデバイス表面に10〜100μm程度の高さのバンプと呼ばれる金属突起物を複数形成し、これらのバンプを配線基板に形成された電極に相対させて直接接合するフリップチップボンディングと呼ばれる実装技術が実用化されている。
【0003】
半導体ウエーハのデバイス表面に形成されるバンプは、メッキやスタッドバンプといった方法により形成される。このため個々のバンプの高さは不均一であり、そのままでは複数のバンプを配線基板の電極に全て一様に接合するのは困難である。
【0004】
また、高密度配線を実現するために、バンプと配線基板との間に異方性導電性フィルム(ACF)を挟んで接合する集積回路実装技術がある。この実装技術の場合には、バンプの高さが不足すると接合不良を招くため、バンプの高さを一定に揃える必要がある。
【0005】
そこで、半導体ウエーハの表面に形成された複数のバンプを所望の高さへ切削することが望まれている。バンプを所望の高さへ切削する方法として、特開2010−36300号公報に開示されたようなバイト切削装置でバンプを削り取る方法が提案されている。
【0006】
バイト切削装置は、ホイール基台と、ホイール基台に配設されたダイアモンドからなる切削刃を含むバイトユニットとから構成されるバイトホイールを備えている。バイトホイールをスピンドルに装着し、バイトホイールを回転させつつ、切削刃を被加工物へ当接した状態でバイトホイールと被加工物とを摺動させることにより切削が遂行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−36300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
バイト切削装置は半導体ウエーハの表面に形成されたバンプを所望の高さへ切削するのに適しているが、ニッケルやチタン、鉄、コバール等のバイトユニットの切削刃であるダイアモンドと親和性の高い材料を含む被加工物をバイト切削装置で切削すると、高温の加工熱が発生し、切削刃が急速に磨耗してしまうという問題がある。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、切削刃の急速な磨耗を防止し、切削刃の寿命を延ばすことのできるバイト切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された被加工物の表面を切削するバイトを回転可能に支持するバイト手段と、該チャックテーブルの該保持面に対して水平方向に該チャックテーブルと該バイト手段とを相対移動させる切削送り手段と、該チャックテーブルの該保持面に対して鉛直方向に該チャックテーブルと該バイト手段とを相対移動する切り込み手段とを備えたバイト切削装置であって、純水供給源から供給される純水と添加剤供給源から供給される添加剤とを混合して切削液を生成する混合部と、該混合部で生成された切削液を該バイトと該チャックテーブルに保持された被加工物に供給する切削液供給ノズルと、を具備したことを特徴とするバイト切削装置が提供される。
【0011】
好ましくは、添加剤は、水に不溶な成分を0.1質量%以上含有せず、下記一般式(1)で表される単量体ユニットを50質量%以上有するポリマーを0.001〜50質量%含有する。
【0012】
【化1】
【0013】
好ましくは、混合部では、添加剤は500倍〜10000倍に希釈される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバイト切削装置によると、純水に添加剤を混合した切削液を切削液供給ノズルから供給しながらバイト切削を遂行するため、ダイアモンドと親和性の高い材料を含む被加工物をバイト手段の切削刃で切削しても、切削刃の急速な磨耗を防止でき、切削刃の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のバイト切削装置の斜視図である。
【図2】バイトホイールの斜視図である。
【図3】バイトユニットの分解斜視図である。
【図4】図4(A)はホイール基台へのバイトユニットの取り付け構造を示す側面図、図4(B)はその一部断面正面図である。
【図5】図5(A)はホイール基台へのバランス取り用錘の取り付け構造を示す側面図、図5(B)はその一部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明実施形態に係るバイト切削装置2の斜視図が示されている。4はバイト切削装置2のベース(ハウジング)であり、ベース4の後方にはコラム6が立設されている。コラム6には、上下方向に伸びる一対のガイドレール(一本のみ図示)8が固定されている。
【0017】
この一対のガイドレール8に沿ってバイト切削ユニット10が上下方向に移動可能に装着されている。バイト切削ユニット10は、そのハウジング20が一対のガイドレール8に沿って上下方向に移動する移動基台12に取り付けられている。
【0018】
バイト切削ユニット10は、ハウジング20と、ハウジング20中に回転可能に収容された図示しないスピンドルと、スピンドルの先端に固定されたマウント24と、マウント24に着脱可能に装着されたバイトホイール25と、スピンドルを回転駆動するモータ23とを含んでいる。バイトホイール25にはバイトユニット26が着脱可能に取り付けられている。
【0019】
バイト切削ユニット10は、バイト切削ユニット10を一対の案内レール8に沿って上下方向に移動するボールねじ14とパルスモータ16とから構成されるバイト切削ユニット送り機構18を備えている。パルスモータ16をパルス駆動すると、ボールねじ14が回転し、移動基台12が上下方向に移動される。
【0020】
ベース4の中間部分にはチャックテーブル30を有するチャックテーブル機構28が配設されており、チャックテーブル機構28は図示しないチャックテーブル移動機構によりY軸方向に移動される。33は蛇腹であり、チャックテーブル機構28をカバーする。
【0021】
ベース4の前側部分には、第1のウエーハカセット32と、第2のウエーハカセット34と、ウエーハ搬送用ロボット36と、複数の位置決めピン40を有する位置決め機構38と、ウエーハ搬入機構(ローディングアーム)42と、ウエーハ搬出機構(アンローディングアーム)44と、スピンナ洗浄ユニット46が配設されている。
【0022】
また、ベース4の概略中央部には、チャックテーブル30を洗浄する洗浄水噴射ノズル48が設けられている。この洗浄水噴射ノズル48は、チャックテーブル30が装置手前側のウエーハ搬入・搬出領域に位置づけられた状態において、チャックテーブル30に向かって洗浄水を噴射する。
【0023】
図2を参照すると、バイトホイール25の斜視図が示されている。バイトホイール25は、環状のホイール基台50と、ホイール基台50に着脱可能に取り付けられたバイトユニット26と、ホイール基台50の回転中心を基準にバイトユニット26に対して点対称位置のホイール基台50に着脱可能に取り付けられたバイトユニット26と同一重量のバランス取り用錘(カウンターバランス)66とから構成される。バイトホイール25は矢印R方向に回転されてウエーハWの表面に形成されたバンプ5を切削する。
【0024】
バイトユニット26は、図3の分解斜視図に示すように、略直方体形状のシャンク(バイトシャンク)52と、シャンク52に着脱可能に取り付けられたバイト54とから構成される。バイト54は板状を呈しており、長手方向の一端部の表面側にはダイアモンド等で所定形状に形成された切削刃56が固着されている。バイト54にはねじ58が挿入される丸穴59が形成されている。
【0025】
シャンク52の一側面には、バイト54の厚さと同等の深さを有するピット60が形成されている。ピット60にはねじ穴61が形成されている。バイト54をシャンク52のピット60内に挿入し、バイト54の丸穴59を通してねじ58をねじ穴61に螺合することにより、バイト54がシャンク52に固定される。
【0026】
図4に示すように、ホイール基台50には直方体形状の取り付け穴62と、取り付け穴62に開口するねじ穴63が形成されている。バイトユニット26のシャンク52をホイール基台50に形成された取り付け穴62中に挿入し、ねじ64をねじ穴63に螺合して締め付けることにより、バイトユニット26がホイール基台50に固定される。
【0027】
一方、バランス取り用錘66はバイトユニット26と同一重量を有しており、図2及び図5に示すように、ホイール基台50の回転中心を基準にバイトユニット26に対して点対称位置のホイール基台50に形成された取り付け用穴68中に挿入され、ねじ穴69中にねじ70を螺合して締め付けることにより、ホイール基台50に固定される。
【0028】
図1を再び参照すると、バイト切削ユニット10のバイトホイール25に隣接して、切削液供給ノズル35が配設されている。純水供給源37から供給された純水と添加剤供給源39から供給された添加剤とが混合部41で混合されて切削液が生成され、被加工物のバイト切削時にこの切削液を切削液供給ノズル35からバイトユニット26とチャックテーブル30に保持された被加工物に供給しながらバイト切削が遂行される。
【0029】
添加剤供給源39から供給される添加剤は、水に不溶な成分を0.1質量%以上含有せず、下記一般式(1)で表される単量体ユニットを50質量%以上有するポリマーを0.001〜50質量%含有する。
【0030】
【化1】
【0031】
ポリマーは、一般式(1)で表される単量体ユニットを50質量%以上有するポリマーであればよい。一般式(1)のR1〜R3はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、こうした炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ターシャリブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロベニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トルイル基、キシリル基等のアリール基が挙げられる。
【0032】
切削液用添加剤は上記ポリマーを含む水溶液であるが、水に不溶な成分を0.1質量%以上含有してはならない。水に不溶な成分とは一般的に非水溶性の物質であり、更に詳しくは水に対する溶解度が0.1質量%以下のものである。
【0033】
こうした水に不溶な成分としては、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエチレン、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂及びこれらの樹脂が任意の割合で配合された混合樹脂等の合成樹脂;ポリ−α−オレフィン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリブデン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリアルキレングリコール、ポリフェニエーテル、アルキル置換ジフェニルエーテル、ポリオールエステル、二塩基酸エステル、炭酸エステル、シリコーン油、フッ素化油等の合成油;パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油等の鉱油;ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ペンタン等の炭化水素系溶剤;トリクロロエタン、ジクロロメタン等のハロゲン系溶剤が挙げられる。
【0034】
混合部41で添加剤は純水供給源37から供給された純水により500倍〜10000倍に希釈されるのが好ましい。
【実施例1】
【0035】
ニッケルを含む被加工物をチャックテーブル30で吸引保持し、スピンドル22を約2000rpmで回転させつつ、バイトホイール送り機構18を駆動してバイトユニット26の切削刃56を被加工物に所定深さ切り込ませ、切削液供給ノズル35から750倍に希釈された切削液を供給しながらチャックテーブル30を矢印Y方向に1mm/sの送り速度で移動させて被加工物を切削した。
【0036】
その結果、バイトユニット26の切削刃56が摩滅するまで22枚の被加工物の加工が可能であった。バイト切削時に純水のみを供給しながら切削加工を行う従来のバイト切削装置では、同一条件で7枚の被加工物の加工が可能であった。
【0037】
よって、切削液供給ノズル35から純水に添加剤を混合した切削液を供給しながら切削を実施する本発明のバイト切削装置は、純水のみを供給しながらバイト切削を行う従来のバイト切削装置に比較して、バイトユニット26の切削刃56の寿命を約3倍に延ばすことができることが判明した。
【符号の説明】
【0038】
2 バイト切削装置
10 バイト切削ユニット
25 バイトホイール
26 バイトユニット
30 チャックテーブル
35 切削液供給ノズル
37 純水供給源
39 添加剤供給源
41 混合部
50 ホイール基台
52 シャンク(バイトシャンク)
54 バイト
56 切削刃
66 バランス取り用錘
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された被加工物の表面を切削するバイトを回転可能に支持するバイト手段と、該チャックテーブルの該保持面に対して水平方向に該チャックテーブルと該バイト手段とを相対移動させる切削送り手段と、該チャックテーブルの該保持面に対して鉛直方向に該チャックテーブルと該バイト手段とを相対移動する切り込み手段とを備えたバイト切削装置であって、
純水供給源から供給される純水と添加剤供給源から供給される添加剤とを混合して切削液を生成する混合部と、
該混合部で生成された切削液を該バイトと該チャックテーブルに保持された被加工物に供給する切削液供給ノズルと、
を具備したことを特徴とするバイト切削装置。
【請求項2】
前記添加剤は、水に不溶な成分を0.1質量%以上含有せず、下記一般式(1)で表される単量体ユニットを50質量%以上有するポリマーを0.001〜50質量%含有する請求項1記載のバイト切削装置。
【化1】
【請求項3】
前記混合部では、前記添加剤は500倍〜10000倍に希釈される請求項2記載のバイト切削装置。
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された被加工物の表面を切削するバイトを回転可能に支持するバイト手段と、該チャックテーブルの該保持面に対して水平方向に該チャックテーブルと該バイト手段とを相対移動させる切削送り手段と、該チャックテーブルの該保持面に対して鉛直方向に該チャックテーブルと該バイト手段とを相対移動する切り込み手段とを備えたバイト切削装置であって、
純水供給源から供給される純水と添加剤供給源から供給される添加剤とを混合して切削液を生成する混合部と、
該混合部で生成された切削液を該バイトと該チャックテーブルに保持された被加工物に供給する切削液供給ノズルと、
を具備したことを特徴とするバイト切削装置。
【請求項2】
前記添加剤は、水に不溶な成分を0.1質量%以上含有せず、下記一般式(1)で表される単量体ユニットを50質量%以上有するポリマーを0.001〜50質量%含有する請求項1記載のバイト切削装置。
【化1】
【請求項3】
前記混合部では、前記添加剤は500倍〜10000倍に希釈される請求項2記載のバイト切削装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2012−240148(P2012−240148A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111728(P2011−111728)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
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