説明

バッテリ用の電子システム

【課題】最適な充電状態を維持するように、電池の充電を管理することができ、バッテリが電力供給を要求される場合、中断することなく電力を高い信頼性で確実に放電することができるバッテリ用の電子システムを提供する。
【解決手段】バッテリ用の電子システムであって、充電器K3Cを備えるバッテリ充電回路30と、放電スイッチK2を備える第一のバッテリ放電回路20と、放電の持続性を確実にする構成部品D3と、放電スイッチK2の開動作・閉動作を制御し、また、充電器K3Cを制御する電子制御ユニットとを備え、制御ユニットは、放電を要求されない限りバッテリの充電を維持し、適用装置から電力要求が検出されると、バッテリ充電を中止して放電スイッチK2を閉位置に設定し、構成部品D3は放電スイッチK2を閉じる移行段階において放電電流を流す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの密閉型蓄電池を備えるバッテリ用の電子システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学電池あるいは蓄電池(これら二つの用語は同等のものであり、以下、蓄電池という用語を用いる)は、電気を生産する装置であって、その装置内で化学エネルギーが電気エネルギーに変換される。化学エネルギーとは、蓄電池内に設けられた電極の少なくとも一つの面上に蒸着した、電気化学的に活性化した化合物によって構成される。電気エネルギーは、蓄電池の放電中における、電気化学的な反応によって生産される。容器内に設けられた電極は、電流出力端子に電気的に接続されて、前記電極と、蓄電池が関連づけられている電気を消費する対象とを電気的に導通させる。
バッテリは、電気的エネルギーを外部の適用装置(application)に供給するように設計されている。したがって、一般的には、バッテリを構成する電池(cell)を再充電するために、バッテリを接続できる充電回路が設けられる。出力を上げるためには、バッテリを形成するためにいくつかの密閉型電池を結合させることが知られている。すると、バッテリは、直列に接続されたいくつかの電池を備えるブランチを、互いに並列に、一本、あるいは数本備えることとなる。種々の電池における充電および放電のバランスを相互に取るためにバッテリ充電および放電管理が設けられ、制御される。適用装置によって多かれ少なかれ複雑になる制御回路は、一般的には、バッテリと関連づけられて設けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
スタンバイ電力用のバッテリを採用するこれらの適用装置においては、電池が使用前に全容量まで充電されていることが必要であるが、とりわけ、電力が即座に利用可能であることが必要である。
航空機あるいは他の運搬用車両は、一般的に、車両を始動させるため、およびスタンバイ電力用に鉛酸あるいはニッケル・カドミウム・タイプ(NiCd)のバッテリを採用する。このようなバッテリは、主電源に接続されたままであることが可能であり、それらの需要がないあいだは充電され、電池の過充電のおそれはない。スタンバイ電力用として、リチウム・イオン(Liイオン)タイプのバッテリの使用が可能であることが望ましく、またこのタイプのバッテリに特有な、重量が少ないことと、保守が容易であることという利益を得るためには、航空機への適用が特に望ましいと思われる。しかしながら、リチウム・イオンタイプのバッテリは、過充電を回避するために、特別な充電管理を必要とする。リチウム・イオン蓄電池を過充電するとバッテリが早期に老化することが、実際に認識される。したがって、NiCdあるいは鉛酸バッテリをそのまま、リチウム・イオン・バッテリと置き換えることは不可能であり、リチウム・イオン電池の充電およびバランスを制御するために、電子バッテリ管理システムを設ける必要がある。
さらに、適用装置の主電源が故障するような場合、予備バッテリは、途切れることなく、迅速かつ信頼性のあるように、予備バッテリが設計された対象である適用装置に電気的エネルギーを供給できることが望ましい。
したがって、それに対して外部の適用装置による需要がないときには、過充電のおそれなく永久的に充電することが可能であって、それに対して外部の適用装置による需要があるときには、途切れることなく、電気的エネルギーを供給することが可能であるバッテリが必要である。
【0004】
本発明は、バッテリ用、特にスタンバイ電力バッテリ用の電子システムであって、過充電なく、最適な充電状態を維持するように、電池の充電を管理することを可能とし、バッテリが電力を供給するよう要求される場合、中断することなく電力を高い信頼性で確実に放電することを可能とするバッテリ用の電子システムを提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、主電源を含む適用装置に電力を供給するように設計されたバッテリ用の電子システムであって、前記電子システムは、充電器を備えるバッテリ充電回路と、前記充電回路と並列に設けられ、放電スイッチを備える第一のバッテリ放電回路と、放電の持続性を確実にする構成部品と、前記放電スイッチの開動作および閉動作を制御するように、また、前記充電器を制御するようになっている電子制御ユニットとを備え、ここで、前記制御ユニットは、放電を要求されない限り、バッテリのトリクル充電を確実に行い、適用装置から電力要求が検出されると、バッテリ充電を中止して、前記放電スイッチを閉位置に設定し、前記放電の持続性を確実にする構成部品は、前記放電スイッチの閉鎖の移行段階において、放電電流を流すことを特徴とするバッテリ用の電子システムを提供する。
一実施形態において、前記放電の持続性を確実にする構成部品は、双方向のブランチを構成する前記充電回路に設けられる。前記充電回路は、前記充電器と直列に備えられた充電スイッチと、前記充電器と並列に備えられるダイオードとを備え、前記ダイオードは、前記充電スイッチが閉位置にあり、前記充電器がシャットダウンされるときに、前記バッテリを放電できるようにする。
他の実施形態において、前記放電の持続性を確実にする構成部品は、前記放電スイッチと並列に設けられた前記バッテリ放電回路に設けられる放電ダイオードである。
他の実施形態において、前記充電回路は、80Aより大きい電流は流さない。
他の実施形態において、バッテリ電圧が適用装置の電圧より低い場合に、前記制御ユニットは、前記放電スイッチを開位置に設定する。
他の実施形態において、本電子システムは、前記第一のバッテリ放電回路と並列に設けられる第二のバッテリ放電回路と、閉位置に維持される第二の放電スイッチと、放電電流の流れを制限するレジスタと、前記第二の放電スイッチを介するバッテリの充電を妨げるダイオードとをさらに備える。
他の実施形態において、前記第二のバッテリ放電回路のレジスタは、放電電流を5Aに制限して、前記第二の放電スイッチは、バッテリの充電状態が20%より高い状態である限り、閉位置に維持される。
他の実施形態において、本電子システムは、前記第一のバッテリ放電回路と並列に設けられる第三のバッテリ放電回路と、適用装置が検出される始動段階において、閉位置に設定される第三の放電スイッチとをさらに備える。
他の実施形態において、前記第三の放電スイッチは、1500Aより大きい電流を流す。
他の実施形態において、本電子システムは、前記充電回路と直列に設けられ、前記第一のバッテリ放電回路と直列に設けられ、バッテリがユーザにとって危険な状態にあることが検出されると、開位置に設定される安全スイッチをさらに備える。前記安全スイッチは、前記第二のバッテリ放電回路と並列に設けられる。
本発明は、さらに、少なくとも一つの密閉型電気化学電池と、本発明による電子システムとから構成される再充電可能なバッテリを提供する。
前記密閉型電池は、リチウム・イオンタイプの電池である。本発明はまた、このバッテリの航空機用における使用を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、少なくとも一つの再充電可能な電気化学電池を備えるバッテリ用の電子システムを提供する。バッテリは、バッテリの使用が意図される適用装置の主電源の電力バスに永久的に接続される。本発明の電子システムは、過充電を避けるために電池の充電を制御し、バッテリが放電することを要求されたとき、電力が連続的に利用できることを確実にする。
本発明は、とりわけスタンバイ電力あるいは補助バッテリに適用される。言い換えれば、主電源が故障した場合には、バッテリが、外部適用装置に電気エネルギーを供給する。バッテリにはまた、適用装置の補助動力(APU)を始動させるように求めることもできる。この適用装置は、例えば、航空機などの車両であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第一の実施形態による電子システムの図である。(実施例)
【図2】本発明の第二の実施形態による電子システムの図である。(実施例)
【図3】本発明の第三の実施形態による電子システムの図である。(実施例)
【図4】本発明の第四の実施形態による電子システムの図である。(実施例)
【図5】本発明の第五の実施形態による電子システムの図である。(実施例)
【図6】スイッチの状態を示すグラフであり、本発明の第4の実施形態による電子システムを備えるバッテリによって適用装置を始動させるシミュレーションを行っている間の、バッテリによって供給される電流のパターンと、バッテリ端子における電圧のパターンとを示している。(実施例)
【図7】スイッチの状態を示すグラフであり、本発明の第4の実施形態による電子システムを備えるバッテリのスタンバイモードにおけるのシミュレーションを行っている間の、バッテリによって供給される電流のパターンと、バッテリ端子における電圧のパターンを示している。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のさらなる特徴および利点は、図面を参照して、例として示される以下の詳細な説明を読むことによって明らかとなろう。
【実施例】
【0009】
図1および図2は、本発明の第一および第二の実施形態を図式的に示している。図1および図2における電子システムは、並列に設けられた、バッテリ放電回路20と充電回路30とを備える。すなわち、バッテリは永久的に主電源から充電されて、適用装置によって放電するように求められたときに、直ちに電気エネルギーを供給できる。本発明の電子システムはまた、ダイオードD2あるいはD3からなり、充電回路(図1)あるいは放電回路(図2)内に設けられ得る連続放電コンポーネントを備える。
バッテリ放電回路20は、電流をバッテリから適用装置に流す電力線と、この電力線に設けられたスイッチK2とを備える。スイッチK2は、バッテリが適用装置によって放電するように求められない限り、開位置のままであり、適用装置によって電力が要求されると、閉位置となるように操作される。ここで、「開位置」とは、スイッチが電流を流さない位置にあることを意味しており、「閉位置」とは、スイッチが電流を流す位置にあることを意味している。バッテリ放電回路20はさらに、スイッチK2(図2)と並列に設けられたダイオードD2を備えてもよい。このダイオードD2は、充電電流が適用装置からバッテリに流れることを防ぎ、それによって、スイッチK2が閉じる前の移行段階において、電力が連続利用できることを確実にする。
充電回路30は充電器を備え、充電器と逆並列に設けられるダイオードD3を含んでもよい。図1に示される実施形態において、充電回路30は双方向のブランチである。すなわち、充電回路30は、充電のために、電流を適用装置からバッテリに流し、また、移行段階において電流をバッテリから適用装置に流して放電する。それにより、放電回路20のダイオードD2は必要なくなる。
【0010】
図1においては、ダイオードD3が充電回路による移行放電を確実なものとするが、このダイオードは、充電器に組み込まれた適切な回路に置き換えることもできる。一実施形態において、充電器は、充電電流を流すために閉位置に操作され、充電を中止すべき場合には開位置に操作される、単純なスイッチK3Cを組み込んでもよく、それにより、ダイオード3は、移行段階において、すなわち、スイッチK2が閉位置になるために必要とされる時間中に、放電電流を流す。一実施形態において、充電器は、指示を出す適用装置に応じて、双方向に電流を流すことができる、より複雑な回路を組み込んでもよい。スイッチK3Sによって、放電中の電流を制限することができる。バッテリの充電段階に充電器が故障した場合、このスイッチK3Sは、スイッチK3Cに冗長性も与える。スイッチK3Sは随意的なものであり、望ましい安全性の程度に応じて設けられる。
バッテリ放電回路30は、強電流、例えば、主電源が故障した場合に必要となる80Aより大きい電流を流さない。放電スイッチK3Sは強電流を流すようには設計されておらず、ダイオードD3を通って電流が流れることによって、適用装置が利用できる電流を制限するインピーダンスが生じる。したがって、充電回路30を通る放電は一時的なものであり、放電スイッチK2が閉位置に操作されるのを待つ際、すぐに電流が利用できることを確実にできるだけのものである。
【0011】
図2に示される一実施形態においては、移行段階において、すなわち、スイッチK2が閉位置になるのに必要とされる時間中に、放電電流が流れることを確実にするダイオードD2によって、移行時における放電が行なわれる。この実施形態では、充電回路30はもはや双方向ブランチではない。すなわち、充電回路30は、充電のために電流を適用装置からバッテリに流さない。
本発明の電子システムはまた、適用装置によって要求されたときに、電池の充電を調整し、またバッテリの放電を許可するために、バッテリの動作を管理する電気制御ユニットを備える。このような制御ユニットは、適用装置自身から(主電源の電圧、温度、スタンバイ電力モードへ切り替わったことの警報など)、また、バッテリ内に設けられたセンサから(各電池の電圧、電流、および温度の測定例)情報を受け取り、また、この電子システムの種々のスイッチの状態(開位置、あるいは閉位置)に関する情報を受け取る。この電子制御ユニットはまた、過充電のおそれがない状態に維持されることを保証し、適用装置から送られる電力の要求を検出でき、また、充電器のシャットダウンと、バッテリ放電回路のスイッチK2の動作とを制御することができる。
充電回路30の充電器は、適用装置の主電源に接続されている。例えば、航空機や無人飛行機のバッテリとして使用する場合、バッテリがその容量の約100%まで充電されたままであることを保証するために、充電器は、航空機の28Vのネットワークに接続される。リチウム・イオンタイプのバッテリの場合、電極上にリチウムが蒸着しないように、充電器は充電電流を制限する。電子制御ユニットは、充電器スイッチK3Cだけでなく、存在するのであれば充電スイッチK3Sも制御して、バッテリの電池ごとに、充電電圧を約4Vとする制御を保証する。電子制御ユニットは、種々のスイッチの状態(開位置、あるいは閉位置)、すなわち、K3S_状態、K3C_状態、およびK2_状態に関する信号を受け取る。
【0012】
図3は、本発明の第三の実施形態を図示している。第一の実施形態と同一である要素については、同じ参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
図3は、第一のバッテリ放電回路20と並列に設けられた、第二のバッテリ放電回路40を示している。この第二のバッテリ放電回路40は、閉位置に維持される第二の放電スイッチK4と、この第二の放電回路を流れる電流を制限するレジスタRとを備える。ダイオードD4が、この第二の放電スイッチK4を介したバッテリ充電を妨げる。
この第二のバッテリ放電回路40は、とりわけ、主な充電回路30と放電回路20のブランチの電子機器がスタンバイモードにあって休止しているとき、すなわち、スイッチK2,K3C,K3Sが開位置にあるとき、バッテリを低電流で使用することができるようにする。例えば、航空機のバッテリとして用いる場合、航空機が地上にあるとき、バッテリ制御の電子機器のすべてを起動させ、適用装置が要求する電力より多くの電力を消費させる必要がない状態で航空機が整備されている間、第二のバッテリ放電回路40は緊急照明に電力供給するために用いられ得る。トリガー電流に関連づけられるレジスタRは、このブランチ40を流れる放電電流を約5Aまでに制限することを可能にする。したがって、このような電流は、バッテリがその主なブランチ20を介して放電されるときには、大きくないが、地上において適用装置の手入れをし、整備するには十分である。このような電流はまた、バッテリが充電回路30によって充電されるときに、無視することが可能な漏電を表している。適用装置がより強い強電流を要求する場合、本システムの電子制御ユニットは、他のブランチを起動して、放電スイッチK2を操作して閉位置にする。
電子システムがスタンバイモードにあるとき、第二の放電スイッチK4は依然として、閉位置にあり、したがって、電子制御ユニットは第二の放電スイッチK4を閉位置に設定する必要がなく、この放電ブランチ40を利用することが出来る。充電状態(SOC)が20%より低いことが検出されると、漏電を除去するために第二の放電スイッチK4が開位置に設定される。
【0013】
図4は、本発明の第四の実施形態を図式的に図示している。第一の実施形態および第二の実施形態と同一である要素については、同じ参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
図4は、第一のバッテリ放電回路20と並列に設けられた、第三のバッテリ放電回路10を示している。この第三のバッテリ放電回路10は、開位置で維持され、適用装置によってバッテリが始動開始要求されると閉位置に設定される。図4は、図3に示された第二の放電回路40に付加された第三のバッテリ放電回路10を示しているが、この第三のバッテリ放電回路10は、第二の放電回路40用に限定されず、図1あるいは図2に示されたシステムにも付加され得ることはもちろんである。
補助電源ユニットAPUが始動しつつあるとき、非常に強い強電流が短期間で要求される。例えば、10秒より短い間に、1500A程度の電流をバッテリから適用装置に流すことが要求される。このような電流は、スイッチが開状態になるとき、大きな電気アークを生成して、これらのスイッチを老朽化させる。この第三の放電回路10によって、スイッチの信頼性、特に、バッテリのスタンバイ電力モードで用いられる第一の放電回路20の放電スイッチK2の信頼性を維持することができる。第三の放電スイッチK1は、第一の放電回路20の放電スイッチK2と同じ技術仕様であってもよいし、あるいは、より頑丈(robust)になされていてもよい。第三の放電スイッチK1は、1500Aより大きい電流を流すが、主放電回路20のスイッチK2は、このような強電流の流れから保護されることが可能である。
【0014】
図5は本発明の第五の実施形態を図示している。上述の三つの実施形態と同一である要素については、同じ参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
第五の実施形態では、安全スイッチK2’が充電回路30と直列に、かつ、第一の放電回路20と直列に付加されている。図5は、移行期間中のバッテリ放電が、充電回路30のダイオードD3によって処理されるのではなく、放電回路20のダイオードD2によって処理されることを除けば、図4のシステムの四つのブランチを示している。しかし、図4の場合と同様に、移行期間中のバッテリ放電を、充電回路30のダイオードD3によって処理されることが可能であることはもちろんである。この安全スイッチK2’を、図1から図3のうちの一つにおいて図示されたシステムにも付加し得ることは理解されよう。
随意的に、安全スイッチK2’は、第三の強電流放電回路10に直列に、また、第二の低電流放電回路40とは並列に設けられる。安全スイッチK2’は、閉位置に維持され、バッテリに故障が検出された場合には、開位置に切り替えられて、ユーザにとって危険な状態を生み出すことになる。安全スイッチK2’は、スイッチK1、K2、K3CおよびK3Sに冗長性を与える。
スタンバイ電力モードにおいては、安全スイッチK2’も開位置にある。これが、第二の低電流放電回路40が、安全スイッチK2’と並列に設けられるべき理由である。安全スイッチK2’が存在することにより、移行期間中のバッテリ放電を、放電回路20のダイオードD2を介するか、あるいは充電回路30のダイオードD3を介して確実に行うことができる。実際のところ、安全スイッチK2’が存在しなくても、放電スイッチK2と並列に設けられたダイオードD2が存在することによって、スタンバイ電力モードにおける放電電流が保証されるので、第二の放電ブランチ40は必要なくなる。
図5においては、放電スイッチK3Sは、放電回路30から取り除かれている。実際、移行期間中のバッテリ放電は、充電回路20のダイオード22によって確実に行われるため、スイッチK3Sは、充電回路30を通る放電電流を制限するためにはもはや必要とはされない。さらに、バッテリ充電段階において充電器が故障した場合のスイッチK3Cに対する冗長性は、安全スイッチK2’によって提供され得る。ただし、要求される安全レベルによっては、放電スイッチK3Sを依然として存在させることが可能であることは明らかである。
実際、これらのスイッチK1、K2、K3S、あるいはK3Cのうちの一つが故障して、適用装置の主電源が動作中のときに、閉位置のままであれば、バッテリを危険な状態にする使用状態となる可能性があり、バッテリの劣化は、それがもはや、スタンバイ電力モードにおいて動作できなくなることを意味する。したがってスイッチK2’は、制御用の電子機器によって、開位置に設定される。ユーザにとって危険な状態が検出されている限りは、バッテリの蓄電期間中を除いて、スイッチK2’は閉位置のままである。
【0015】
本発明の電子システムは以下のように動作する。
図6のグラフは、適用装置が始動して、その後、バッテリが再充電され、スタンバイ電力モードに設定される段階における、本発明の電子システムのシミュレーションを図示している。図6のシミュレーションは、図4に示されたような電子システムによってなされている。第一のグラフは、スイッチの状態を示しており、状態「0」は開いたスイッチに相当し、状態「1」はスイッチの閉位置に相当する。第二の放電スイッチK4および安全スイッチK2’はここには図示されていない。なぜならこれらは、上述のように、非常に低い充電状態、あるいは他のスイッチの故障という主流でない場合を除いては、同じ状態のままであるためである。第二のグラフは、バッテリによって供給される電流を示し、第三のグラフは、バッテリの端子電圧を示している。
バッテリは初めに、全容量まで充電され、その電圧は適用装置の28Vの主電力ネットワークの電圧とほぼ等しく、バッテリは電流を供給したり、受け取ったりすることはない。充電器がシャットダウンされ(スイッチK3Cが開位置になる)、放電スイッチK2が開かれる。一方、充電スイッチK3Sは閉位置にあり、適用装置が電流を要求した場合は、たとえ放電スイッチK1あるいはK2のうちの一つが操作される前であっても、充電回路30のダイオード30を介して、放電を行うことができる。それにもかかわらず、充電器スイッチK3Cが操作されない限り、バッテリの充電は不可能なままである。したがって、電流をすぐに利用できることが保証される。
補助電力ユニットAPUを始動させるために、電子制御ユニットは、強電流を流すように第三の放電スイッチK1を閉じ、また、電流がバッテリに向かって逆戻りする可能性を回避するように充電スイッチK3Sを閉じるよう指示する。サージ電流要求が、例えば、100A以下に減少すると、第一の放電回路20は、第三の放電回路10に取って代わり、電力を適用装置に供給する。第一の放電スイッチK2は閉位置に設定され、第三の放電スイッチK1は開位置に設定される。放電は、整備を行うためにバッテリの使用が求められると、電力を全く失うことなく、また充電と比較すると非常に高い電力で行うことができる。充電に利用できる電流を放電の場合と比較したときに不均整であるのは、リチウム・イオンの電気化学と、充電するときにリチウムが蒸着され得る速度が速すぎることによるものであり、これによって、バッテリの性能と寿命とがかなり低下する。
APUの始動が終了して、適用装置の主電源が起動されるると、バッテリを再充電することができる。放電スイッチK2は開位置に戻され、充電スイッチK3Sは閉位置に設定される。充電器スイッチK3Cは、電源ネットワーク上の電圧がバッテリ電圧より高い場合に、操作される。ここでバッテリ充電は、主電源ネットワークからできるようになる。充電は、充電スイッチK3Sを閉位置にしたまま充電器のスイッチK3Cを開いたり閉じたりすることによって調整される。バッテリが100%のSOC(充電状態)に到達すると、充電は中断され、スイッチK1、K2、K3S、およびK3Cを開位置にして、電子システムがスタンバイモードに設定される。第二の放電スイッチK4のみが、スタンバイモードにおいて閉じた状態のままである。
【0016】
図7のグラフは、本発明の電子システムがスタンバイ電力を適用装置に供給する段階における、その電子システムのシミュレーションを図示している。図6のシミュレーションは、図4に示されるような電子システムによってなされる。第一のグラフはスイッチの状態を示し、第二のグラフは、移行ダイオードを介して供給される電流を示し、第三のグラフは、充電ブランチを通って流れる電流を示し、第四のグラフは、放電ブランチを通って流れる電流を示し、最後のグラフは、バッテリ端子電圧を示している。
バッテリは最初に、80%のSOCに充電されて、充電器はその充電を維持し(スイッチK3Cを閉位置のままとする)、充電スイッチK3Cは閉位置にあり、放電スイッチK2Cは開位置にある。主電源の故障が検出されると、例えば、電子制御ユニットが主電気ネットワークにおける電圧降下を検出すると(最後のグラフに示されている)、あるいは、他の警告信号を受信すると、電子制御ユニットは充電を停止するために、放電スイッチK2を閉じ、充電スイッチK3Cを開くよう指示する。しかしながら、放電スイッチK2が有効に閉じる前であっても、充電回路30のダイオードD3のおかげで、放電電流は、主電源電圧が降下するとすぐにバッテリから適用装置に流れることができる。したがって、10から20msの移行期間中に、電流はバッテリから即座に利用可能となる。しかしながら、充電回路30には強電流を流すことはできない。放電スイッチK2が閉位置になると、放電回路20のインピーダンスは、充電回路30のインピーダンスより低くなり、電流は放電回路20を通って流れる。
電子制御ユニットがスタンバイ電力モードを検出している限り、電子制御ユニットは、充電スイッチK3Sを開いたままにし、またスタンバイバッテリからの電流が利用できることを妨げることのないよう、バッテリの安全装置を阻止する。
所定の状況において、例えば、主電源の起電力と比較して、バッテリが比較的低い充電状態になった結果、依然としてスタンバイモードのままである間に、適用装置での電圧がバッテリの電圧を超過することが可能となる。すると、バッテリは充電段階に入り、放電回路20の電力線を通って電流が適用装置から流れる。
このような状態は避けることが望ましい。これは、電子制御ユニットによって達成される。スタンバイモードが有効である間に、電子制御ユニットが適用装置のネットワークの電圧より低いバッテリ電圧を検出すると、電子制御ユニットは、放電回路K2を開かせて、主電源が故障している適用装置からバッテリが再充電されることを防ぐ。再度、放電が可能となるとすぐに、放電スイッチK2が再度閉じられる前であっても、バッテリからの電力は、充電回路ダイオードD3を介して、再び利用可能となる。このように、中断することなく電力が利用可能となる。
さらに、充電状態、すなわちSOCが20%であることが検出されると、電子制御ユニットは、バッテリ電池の過剰な放電を防ぐために、第二の放電スイッチK4を含むバッテリのスイッチのすべてに、開くように指示する。
このように、本発明によるスタンバイ電力バッテリはスタンバイ電力を提供するよう要求されたり、APUを始動させるよう要求されたりすることがない限り、適用装置の主電源から永久的に、100%に近い充電状態で維持されることが可能である。このようなスタンバイ電力バッテリのある特定の適用装置としては航空機用、特に、かなりの電気容量を要求する長距離無人飛行機用が考えられる。この場合、航空機の主電源が動作可能である限り、スタンバイ電力バッテリをその航空機の主電源によって充電することができ、必要とされるとすぐに航空機に電気エネルギーを供給することができ、電力が中断されない。
【産業上の利用可能性】
【0017】
上述の実施形態および図面は、非限定的な例として提供されていると考えられるべきものであり、本発明は、本明細書において詳細に述べられた例に限定されることはなく、添付の請求の範囲を超えない範囲で修正されることが可能である。特に、本明細書はリチウム・イオンタイプの電池に関連しているが、他の任意の電気化学対を採用することが可能である。同様に、スイッチは既知のタイプのいずれであってもよいし、電子ユニットは、例示されたものとは異なる電圧および電流の値で、バッテリ充電および放電を制御するようにプログラミングされてもよい。
【符号の説明】
【0018】
7 密閉型電気化学電池
10 第三のバッテリ放電回路
20 第一のバッテリ放電回路
30 バッテリ充電回路
40 第二のバッテリ放電回路
K1、K2 放電スイッチ
K2’ 安全スイッチ
K3C 充電器
D2、D3、D4 ダイオード
R レジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電源を含む適用装置に電力を供給するように設計されたバッテリ用の電子システムであって、
前記電子システムは、
充電器(K3C)を備えるバッテリ充電回路(30)と、
前記充電回路(30)と並列に設けられ、放電スイッチ(K2)を備える第一のバッテリ放電回路(20)と、
放電の持続性を確実にする構成部品(D2、D3)と、
前記放電スイッチ(K2)の開動作および閉動作を制御するように、また、前記充電器(K3C)を制御するようになっている電子制御ユニットとを備え、
ここで、前記制御ユニットは、
放電を要求されない限り、バッテリのトリクル充電を確実に行い、
適用装置から電力要求が検出されると、バッテリ充電を中止して、前記放電スイッチ(K2)を、閉位置に設定し、
前記放電の持続性を確実にする構成部品(D2、D3)は、前記放電スイッチ(K2)を閉じる移行段階において、放電電流を流すことを特徴とするバッテリ用の電子システム。
【請求項2】
前記放電の持続性を確実にする構成部品は、双方向のブランチを構成する前記充電回路(30)に設けられることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ用の電子システム。
【請求項3】
前記充電回路(30)は、前記充電器と直列に備えられた充電スイッチ(K3S)と、前記充電器と並列に備えられたダイオード(D3)とを備え、前記ダイオード(D3)は、前記充電スイッチ(K3S)が閉位置にあり、前記充電器がシャットダウンされるときに、前記バッテリを放電できるようにすることを特徴とする請求項2に記載のバッテリ用の電子システム。
【請求項4】
前記放電の持続性を確実にする構成部品は、前記放電スイッチ(K2)と並列に設けられた前記バッテリ放電回路(20)に設けられる放電ダイオード(D2)であることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ用の電子システム。
【請求項5】
前記充電回路(30)は、80Aより大きい電流は流さないことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバッテリ用の電子システム。
【請求項6】
バッテリ電圧が適用装置の電圧より低い場合に、前記制御ユニットは、前記放電スイッチ(K2)を開位置に設定することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のバッテリ用の電子システム。
【請求項7】
前記第一のバッテリ放電回路(20)と並列に設けられる第二のバッテリ放電回路(40)と、閉位置に維持される第二の放電スイッチ(K4)と、放電電流の流れを制限するレジスタ(R)と、前記第二の放電スイッチ(K4)を介するバッテリの充電を妨げるダイオード(D4)とをさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のバッテリ用の電子システム。
【請求項8】
前記第二のバッテリ放電回路(40)のレジスタ(R)は、放電電流を5Aに制限することを特徴とする請求項7に記載のバッテリ用の電子システム。
【請求項9】
前記第二の放電スイッチ(K4)は、バッテリの充電状態が20%より高い状態である限り、閉位置に維持されることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のバッテリ用の電子システム。
【請求項10】
前記第一のバッテリ放電回路(20)と並列に設けられる第三のバッテリ放電回路(10)と、適用装置が検出される始動段階において、閉位置に設定される第三の放電スイッチ(K1)とをさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のバッテリ用の電子システム。
【請求項11】
前記第三の放電スイッチ(K1)は、1500Aより大きい電流が流れるようにすることを特徴とする請求項10に記載のバッテリ用の電子システム。
【請求項12】
前記充電回路(30)と直列に設けられ、前記第一のバッテリ放電回路(20)と直列に設けられ、バッテリがユーザにとって危険な状態にあることが検出されると、開位置に設定される安全スイッチ(K2’)をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のバッテリ用の電子システム。
【請求項13】
前記安全スイッチ(K2’)は、前記第二のバッテリ放電回路(40)と並列に設けられることを特徴とする請求項7または請求項10に記載のバッテリ用の電子システム。
【請求項14】
少なくとも一つの密閉型電気化学電池(7)と、
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のバッテリ用の電子システムとを備えることを特徴とする再充電可能なバッテリ(1)。
【請求項15】
前記密閉型電池は、リチウム・イオンタイプの電池であることを特徴とする請求項14に記載の再充電可能なバッテリ。
【請求項16】
請求項14または請求項15に記載の再充電可能なバッテリの、航空機における使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−183139(P2009−183139A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16902(P2009−16902)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(507298016)
【Fターム(参考)】