説明

パティキュレートフィルタの再生方法及び装置

【課題】機械式自動変速機を備えた車両のアイドリング停車時にギヤ位置をニュートラルレンジとしたままクラッチの摩耗やドライバビリティの悪化を招くことなく昇温制御を実現し、パティキュレートフィルタの強制再生を効率良く継続させ得るようにする。
【解決手段】機械式自動変速機13を採用した車両をアイドリング状態で停車してパティキュレートフィルタ6を再生する方法に関し、機械式自動変速機13のシフトレバーのギヤ位置がドライブレンジにあっても、車速が零の停車状態でフットブレーキが踏み込まれ且つクラッチが完全切断状態となっている時には、通常のアイドリング時よりディーゼルエンジン1の回転数を上げて排気温度を高める昇温制御を許可し、該昇温制御により排気温度が必要温度まで上昇したところで前記パティキュレートフィルタ6の強制再生を許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パティキュレートフィルタの再生方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出されるパティキュレート(Particulate Matter:粒子状物質)は、炭素質から成る煤と、高沸点炭化水素成分から成るSOF分(Soluble Organic Fraction:可溶性有機成分)とを主成分とし、更に微量のサルフェート(ミスト状硫酸成分)を含んだ組成を成すものであるが、この種のパティキュレートの低減対策としては、排気ガスが流通する排気管の途中に、パティキュレートフィルタを装備することが従来より行われている。
【0003】
この種のパティキュレートフィルタは、コージェライトなどのセラミックから成る多孔質のハニカム構造となっており、格子状に区画された各流路の入口が交互に目封じされ、入口が目封じされていない流路については、その出口が目封じされるようになっており、各流路を区画する多孔質薄壁を透過した排気ガスのみが下流側へ排出されるようにしてある。
【0004】
そして、排気ガス中のパティキュレートは、前記多孔質薄壁の内側表面に捕集されて堆積するので、目詰まりにより排気抵抗が増加しないうちにパティキュレートを適宜に燃焼除去してパティキュレートフィルタの再生を図る必要があるが、通常のディーゼルエンジンの運転状態においては、パティキュレートが自己燃焼するほどの高い排気温度が得られる機会が少ない。
【0005】
このため、例えばアルミナに白金を担持させたものに適宜な量のセリウムなどの希土類元素を添加して成る酸化触媒を一体的にパティキュレートフィルタに担持させ、該パティキュレートフィルタ内に捕集されたパティキュレートの酸化反応を前記酸化触媒により促進して着火温度を低下せしめ、従来より低い排気温度でもパティキュレートを燃焼除去できるようにしている。
【0006】
ただし、このようにした場合であっても、排気温度の低い運転領域では、パティキュレートの処理量よりも捕集量が上まわってしまうので、低い排気温度での運転状態が続くと、パティキュレートフィルタの再生が良好に進まずに該パティキュレートフィルタが過捕集状態に陥る虞れがあり、パティキュレートの堆積量が増加してきた段階でパティキュレートフィルタを強制的に加熱して捕集済みパティキュレートを焼却する必要がある。
【0007】
より具体的には、パティキュレートフィルタの前段にフロースルー型の酸化触媒を備えると共に、該酸化触媒より上流側に燃料を添加するようにし、その添加燃料をパティキュレートフィルタの前段の酸化触媒で酸化反応させ、その反応熱により昇温した排気ガスをパティキュレートフィルタへと導入して触媒床温度を上げてパティキュレートを燃やし尽くし、パティキュレートフィルタの再生化を図るようにしている。
【0008】
尚、この種の燃料添加を実行するための具体的手段としては、圧縮上死点付近で行われる燃料のメイン噴射に続いて圧縮上死点より遅い非着火のタイミングでポスト噴射を追加することで排出ガス中に燃料を添加すれば良い。
【0009】
そして、従来においては、パティキュレートフィルタ内におけるパティキュレートの堆積量が許容量を超えて強制再生が必要となった時に、走行中に自動的に強制再生を実施するようにしているが、都心部等で渋滞路線を運行するバスやトラック等では、走行中に自動的にパティキュレートフィルタの強制再生がかかっても、再生が完了しないうちに停車状態となってしまう場合が起こり得る。
【0010】
車両が停車したアイドリング状態になってしまうと、排気温度が著しく低下してパティキュレートフィルタの再生の進行が遅くなってしまうので、このようなアイドリング停車時においては、ギヤ位置がニュートラルレンジにあることを条件として、通常のアイドリング時よりエンジンの回転数を上げるアイドルアップを、排気温度を高める昇温制御として行いながら強制再生を実施し、パティキュレートフィルタの再生を良好に進行させることが考えられている。
【0011】
尚、この種のパティキュレートフィルタの強制再生を図る方法に関しては、本発明と同じ出願人による下記の特許文献1や特許文献2にもとりあげられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−83139号公報
【特許文献2】特開2003−155913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、バスやトラック等の大型車両には、発進操作や変速操作をシフトユニット(例えばモータ式、油圧式、空気圧式のもの)により機械的に行い得るようにした機械式自動変速機を採用したものがあり、この種の機械式自動変速機が採用された車両では、停車の際にフットブレーキを踏み込むだけで自動変速機のシフトレバーをドライブレンジからニュートラルレンジに移行させないケースが多いため、車両を停車したアイドリング状態でギヤ位置をニュートラルレンジとした時にだけ昇温制御を許可するようにしたのでは昇温制御が行われにくく、パティキュレートフィルタの再生を完了するのに時間がかかってしまうことが懸念された。
【0014】
そこで、機械式自動変速機のシフトレバーがドライブレンジにある場合でも、確実にフットブレーキが踏まれた停車状態であれば昇温制御を許可する方式を採用することが検討されているが、前述の如き機械式自動変速機にあっては、発進操作や変速操作に伴うクラッチの断接操作についてもオートクラッチ機構により自動的に行われるようになっているため、ドライブレンジにおける停車状態において、クラッチが完全に切断状態になっているのか、それとも半クラッチの状態になっているのかが不明確であり、万一、半クラッチの状態でアイドルアップが実行されてしまうと、クラッチの摩耗やドライバビリティの悪化(運転者が意図しない発進力の急増)を招いてしまう虞れがあり、これまでドライブレンジで昇温制御を許可する方式の採用は見送られてきた。
【0015】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、機械式自動変速機を備えた車両のアイドリング停車時にギヤ位置をニュートラルレンジとしたままクラッチの摩耗やドライバビリティの悪化を招くことなく昇温制御を実現し、パティキュレートフィルタの強制再生を効率良く継続させ得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、機械式自動変速機を採用した車両をアイドリング状態で停車した条件下でパティキュレートフィルタを再生する方法であって、機械式自動変速機のシフトレバーのギヤ位置がドライブレンジにあっても、車速が零の停車状態でフットブレーキが踏み込まれ且つクラッチが完全切断状態となっている時には、通常のアイドリング時よりエンジンの回転数を上げて排気温度を高める昇温制御を許可し、該昇温制御により排気温度が必要温度まで上昇したところで前記パティキュレートフィルタの強制再生を許可することを特徴とするものである。
【0017】
而して、このようにすれば、これまで見送られてきたドライブレンジでの昇温制御が、車速が零の停車状態でフットブレーキが踏み込まれ且つクラッチが完全切断状態となっている時に許可されることになるので、運転者がアイドリング停車時にフットブレーキを踏み込むだけで自動変速機のシフトレバーをドライブレンジからニュートラルレンジに移行しなかったとしても、昇温制御により通常のアイドリング時よりエンジンの回転数を上げて排気温度を高めながらパティキュレートフィルタの強制再生を行うことが可能となり、これによって、パティキュレートフィルタの強制再生を効率良く継続させることが可能となる。
【0018】
また、この際には、車速が零の停車状態でフットブレーキが踏み込まれ且つクラッチが完全切断状態となっているので、昇温制御により通常のアイドリング時よりエンジンの回転数が上がっても、クラッチの摩耗やドライバビリティの悪化(運転者が意図しない発進力の急増)が確実に回避されることになり、しかも、車両の急発進も確実に回避されることになる。
【0019】
更に、本発明のパティキュレートフィルタの再生方法を具体的に実施するに際しては、例えば、機械式自動変速機を採用した車両をアイドリング状態で停車した条件下でパティキュレートフィルタを再生する装置であって、酸化触媒を前段に備えて排気管途中に設けられた触媒再生型のパティキュレートフィルタと、前記酸化触媒より上流側で排気ガス中に燃料を添加する燃料添加手段と、車速を検出する車速センサと、クラッチストロークを計測してクラッチの完全な切断状態を検出するクラッチストロークセンサと、フットブレーキの踏み込みを検出するブレーキスイッチと、前記機械式自動変速機のシフトレバーのギヤ位置を検出するニュートラルスイッチと、通常のアイドリング時よりエンジンの回転数を上げて排気温度を高める昇温制御を行いながら前記燃料添加手段に燃料添加を指示して前記パティキュレートフィルタの強制再生を行う制御装置とを備え、前記ニュートラルスイッチがドライブレンジを検出していても、前記車速センサが速度零を検出して前記ブレーキスイッチがフットブレーキの踏み込みを検出し且つ前記クラッチストロークセンサがクラッチの完全な切断状態を検出した時には、昇温制御を許可して該昇温制御により排気温度が必要温度まで上昇したところで前記パティキュレートフィルタの強制再生を許可し得るように前記制御装置を構成すると良い。
【発明の効果】
【0020】
上記した本発明のパティキュレートフィルタの再生方法及び装置によれば、機械式自動変速機を備えた車両のアイドリング停車時にギヤ位置をニュートラルレンジとしたままクラッチの摩耗やドライバビリティの悪化を招くことなく昇温制御を実現することができ、パティキュレートフィルタの強制再生を効率良く継続させることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す概略図である。
【図2】図1のパティキュレートフィルタの詳細を示す断面図である。
【図3】図1の酸化触媒の一部を切り欠いて示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図中1は発進操作や変速操作をシフトユニットにより機械的に行い得る機械式自動変速機13を採用した車両のディーゼルエンジンを示し、該ディーゼルエンジン1から排気マニホールド2を介して排出された排気ガス3が流通している排気管4の途中には、前段に酸化触媒5を備えた触媒再生型のパティキュレートフィルタ6がフィルタケース7により抱持されて介装されている。
【0024】
このパティキュレートフィルタ6は、図2に拡大して示す如きセラミックから成る多孔質のハニカム構造を有し、格子状に区画された各流路6aの入口が交互に目封じされ、入口が目封じされていない流路6aについては、その出口が目封じされるようになっており、各流路6aを区画する多孔質薄壁6bを透過した排気ガス3のみが下流側へ排出されるようになっている。尚、斯かるパティキュレートフィルタ6の前段に備えられた酸化触媒5は、図3に一部を切り欠いて示す如きフロースルー型の構造となっている。
【0025】
そして、フィルタケース7の入口側に圧力センサ8が装備され、該圧力センサ8の圧力信号8aがエンジン制御コンピュータ(ECU:Electronic Control Unit)を成す制御装置9に対し入力されるようになっており、この制御装置9においては、圧力センサ8からの圧力信号8aに基づきパティキュレートフィルタ6の入口側と出口側との圧力差(出口側の運転領域に応じた圧力損失は予め初期設定されている)を演算し、その圧力差に基づいてパティキュレートフィルタ6内におけるパティキュレートの堆積量を推定するようになっている。
【0026】
即ち、ここに図示している例では、パティキュレートフィルタ6内におけるパティキュレートの堆積量を推定する堆積量推定手段が圧力センサ8と制御装置9とにより構成されるようになっているが、このようなパティキュレートの堆積量を推定する手段には各種の方式があり、例えば、ディーゼルエンジン1の現在の運転状態に基づくパティキュレートの基本的な発生量を推定し、この基本的な発生量に対しパティキュレートの発生にかかわる各種の条件を考慮した補正係数を掛け且つ現在の運転状態におけるパティキュレートの処理量を減算して最終的な発生量を求め、この最終的な発生量を時々刻々積算してパティキュレートの堆積量を推定することも可能である。
【0027】
また、ここに図示している制御装置9は、エンジン制御コンピュータを兼ねていることから燃料の噴射に関する制御も担うようになっており、より具体的には、アクセル開度をディーゼルエンジン1の負荷として検出するアクセルセンサ11(負荷センサ)からのアクセル開度信号11aと、ディーゼルエンジン1の機関回転数を検出する回転センサ12からの回転数信号12aとに基づき、ディーゼルエンジン1の各気筒に燃料を噴射する燃料噴射装置10に向け燃料噴射信号10aが出力されるようになっている。
【0028】
尚、前記燃料噴射装置10は、各気筒毎に装備される複数のインジェクタにより構成されており、これら各インジェクタの電磁弁が前記燃料噴射信号10aにより適宜に開弁制御されて燃料の噴射タイミング(開弁時期)及び噴射量(開弁時間)が適切に制御されるようになっている。
【0029】
他方、前記制御装置9では、アクセル開度信号11a及び回転数信号12aに基づき通常モードの燃料噴射信号10aが決定されるようになっている一方、パティキュレートフィルタ6の強制再生を行うべき時に通常モードから再生モードに切り替わり、圧縮上死点(クランク角0゜)付近で行われる燃料のメイン噴射に続いて圧縮上死点より遅い非着火のタイミングでポスト噴射を行うような噴射パターンの燃料噴射信号10aが決定されるようになっている。
【0030】
つまり、本形態例においては、燃料噴射装置10がパティキュレートフィルタ6の強制再生のための燃料添加手段としての機能を果たすようになっており、前述のようにメイン噴射に続いて圧縮上死点より遅い非着火のタイミングでポスト噴射が行われると、このポスト噴射により排気ガス3中に未燃の燃料(主としてHC:炭化水素)が添加されることになり、この未燃の燃料がパティキュレートフィルタ6の前段の酸化触媒5上で酸化反応し、その反応熱により触媒床温度が上昇してパティキュレートフィルタ6内のパティキュレートが燃焼除去されることになる。
【0031】
そして、前記制御装置9では、圧力センサ8からの圧力信号8aに基づいて推定されたパティキュレートの堆積量が許容量を超えているか否かが判断され、許容量を超えている場合に、温度センサ16からの温度信号16aに基づきパティキュレートフィルタ6の入口排気温度が所定温度以上の条件となるのを待って燃焼噴射制御が通常モードから再生モードへ切り替わり、自動制御によるパティキュレートフィルタ6の強制再生が開始されるようになっている。
【0032】
しかも、車両をアイドリング状態で停車した条件下でパティキュレートフィルタ6の強制再生を行うに際しては、以下に詳述する条件が成立した時に、通常のアイドリング時より回転数を上げるべく圧縮上死点(クランク角0゜)付近で行われていたメイン噴射の一回当たりの噴射量を増加する昇温制御を許可し、アイドルアップを指示する燃料噴射信号10aを出力するようにしてある。
【0033】
つまり、車両が停車したアイドリング状態でパティキュレートフィルタ6の強制再生を行う場合には、排気ガス3の温度及び流量が低すぎて良好にパティキュレートの燃焼除去を行うことが難しいため、メイン噴射の一回当たりの噴射量を増加することで通常のアイドリング時より回転数を上げ、これによりエネルギー投入量を増やして排気ガス3の温度及び流量を強制再生に適したレベルまで引き上げるようにしている。
【0034】
斯かる昇温制御を許可するにあたり、前記制御装置9では、機械式自動変速機13のシフトレバーのギヤ位置を検出するニュートラルスイッチ17からの検出信号17aに基づきギヤ位置を判断し、ギヤ位置がニュートラルレンジにある場合には、ブレーキスイッチ14からの検出信号14aに基づきフットブレーキの踏み込みを確認してから昇温制御を許可するようにしている。
【0035】
また、本形態例においては、ドライブレンジでも昇温制御を実現できるように、クラッチストロークを計測してクラッチの完全な切断状態を検出し且つその検出信号15aを前記制御装置9に向け出力するクラッチストロークセンサ15を新たに設け、既存の車速センサ18が速度零を検出して前記ブレーキスイッチ14がフットブレーキの踏み込みを検出し且つ前記クラッチストロークセンサ15がクラッチの完全な切断状態を検出した時に、前記ニュートラルスイッチ17がドライブレンジを検出していても昇温制御を許可するようにしている。
【0036】
そして、前記昇温制御により排気温度が必要温度まで上昇したことが温度センサ16からの温度信号16aに基づき確認されたら、前記パティキュレートフィルタ6の強制再生が許可されて燃焼噴射制御が通常モードから再生モードへ切り替わり、ディーゼルエンジン1側でポスト噴射が開始されるようになっている。
【0037】
尚、本形態例における制御装置9では、先に説明したアクセルセンサ11、回転センサ12、車速センサ18からの検出信号11a,12a,18aに基づき車両がアイドリング状態にあるか否かが判定されるようになっており、より具体的には、アクセルセンサ11によりアクセルオフ(負荷が零)が確認され、回転センサ12により比較的低い所定の回転数域であることが確認され、車速センサ18により車速が零であることが確認された時に現在の運転状態がアイドリング状態にあると判定するようになっている。
【0038】
而して、このようにすれば、これまで見送られてきたドライブレンジでの昇温制御が、車速センサ18が速度零を検出して前記ブレーキスイッチ14がフットブレーキの踏み込みを検出し且つ前記クラッチストロークセンサ15がクラッチの完全な切断状態を検出した時に許可されることになるので、運転者がアイドリング停車時にフットブレーキを踏み込むだけで自動変速機のシフトレバーをドライブレンジからニュートラルレンジに移行しなかったとしても、昇温制御により通常のアイドリング時よりディーゼルエンジン1の回転数を上げて排気温度を高めながらパティキュレートフィルタ6の強制再生を行うことが可能となり、これによって、パティキュレートフィルタ6の強制再生を効率良く継続させることが可能となる。
【0039】
また、この際には、車速が零の停車状態でフットブレーキが踏み込まれ且つクラッチが完全切断状態となっているので、昇温制御により通常のアイドリング時よりディーゼルエンジン1の回転数が上がっても、クラッチの摩耗やドライバビリティの悪化(運転者が意図しない発進力の急増)が確実に回避されることになり、しかも、車両の急発進も確実に回避されることになる。
【0040】
従って、上記形態例によれば、機械式自動変速機13を備えた車両のアイドリング停車時にギヤ位置をニュートラルレンジとしたままクラッチの摩耗やドライバビリティの悪化を招くことなく昇温制御を実現することができ、パティキュレートフィルタ6の強制再生を効率良く継続させることができる。
【0041】
尚、本発明のパティキュレートフィルタの再生方法及び装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、燃料添加手段として燃料噴射装置を採用し、圧縮上死点付近で行われる燃料のメイン噴射に続いて圧縮上死点より遅い非着火のタイミングでポスト噴射を行うことで排気ガス中に燃料を添加するようにしているが、排気管の適宜位置(排気マニホールドでも可)に燃料添加手段としてインジェクタを貫通装着し、このインジェクタにより排気ガス中に燃料を直噴して添加するようにしても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
1 ディーゼルエンジン(エンジン)
3 排気ガス
4 排気管
5 酸化触媒
6 パティキュレートフィルタ
9 制御装置
10 燃料噴射装置(燃料添加手段)
13 機械式自動変速機
14 ブレーキスイッチ
15 クラッチストロークセンサ
16 温度センサ
17 ニュートラルスイッチ
18 車速センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式自動変速機を採用した車両をアイドリング状態で停車した条件下でパティキュレートフィルタを再生する方法であって、機械式自動変速機のシフトレバーのギヤ位置がドライブレンジにあっても、車速が零の停車状態でフットブレーキが踏み込まれ且つクラッチが完全切断状態となっている時には、通常のアイドリング時よりエンジンの回転数を上げて排気温度を高める昇温制御を許可し、該昇温制御により排気温度が必要温度まで上昇したところで前記パティキュレートフィルタの強制再生を許可することを特徴とするパティキュレートフィルタの再生方法。
【請求項2】
機械式自動変速機を採用した車両をアイドリング状態で停車した条件下でパティキュレートフィルタを再生する装置であって、酸化触媒を前段に備えて排気管途中に設けられた触媒再生型のパティキュレートフィルタと、前記酸化触媒より上流側で排気ガス中に燃料を添加する燃料添加手段と、車速を検出する車速センサと、クラッチストロークを計測してクラッチの完全な切断状態を検出するクラッチストロークセンサと、フットブレーキの踏み込みを検出するブレーキスイッチと、前記機械式自動変速機のシフトレバーのギヤ位置を検出するニュートラルスイッチと、通常のアイドリング時よりエンジンの回転数を上げて排気温度を高める昇温制御を行いながら前記燃料添加手段に燃料添加を指示して前記パティキュレートフィルタの強制再生を行う制御装置とを備え、前記ニュートラルスイッチがドライブレンジを検出していても、前記車速センサが速度零を検出して前記ブレーキスイッチがフットブレーキの踏み込みを検出し且つ前記クラッチストロークセンサがクラッチの完全な切断状態を検出した時には、昇温制御を許可して該昇温制御により排気温度が必要温度まで上昇したところで前記パティキュレートフィルタの強制再生を許可し得るように前記制御装置を構成したことを特徴とするパティキュレートフィルタの再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−7571(P2012−7571A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145813(P2010−145813)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】