説明

パネル付き机の配線装置

【課題】パネルの下端部の構造を工夫して、机の上面を広く使用することができ、机の後端部に沿って配線機構部を設け、その開口部に着脱可能且つ開閉可能に配線カバーを設ける場合にも配線カバーの着脱作業が容易であり、配線カバーの開放状態での実効開口部を広くできて、配線作業が容易になるパネル付き机の配線装置を提供する。
【解決手段】天板5の後端と幕板4の上端部間に開口部11を設け、開口部11に着脱可能且つ開閉可能に配線カバー12を設けた配線機構部10を設けるとともに、後端部にバックパネル7の板厚の一部又は全部を重ねた状態で立設した机において、バックパネル7の前面下端部が、下方になるにつれて後退した形状であり、配線カバー12は後部を回動中心として開閉可能である。バックパネル7の下枠24の両側壁板32の下部が、下方になるにつれて直線状に狭まった傾斜板34となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル付き机の配線装置に係わり、更に詳しくは配線機能を有する机の後部にバックパネル立設したパネル付き机の配線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、机の天板上に立設するバックパネル、サイドパネルあるいは床面に設置するロングパネルとして、両側枠の上下端に上枠と下枠を連結するとともに、それらでパネル体を保持した構造ものは各種提供されている。そして、前記側枠、上枠及び下枠は、アルミ押出し型材を用いて構成することも周知である。
【0003】
特許文献1には、パネルの下枠として、上部にパネル体を支持する基板を有し、該基板の両側縁に両側壁板を一体形成し、該両側壁板は下方に延び、下端部を内方へ若干湾曲させた形状とし、基板と両側壁板とで下方開放した開口溝を形成した断面形状のものが提供されている。前記側壁板の下端を内方へ湾曲させているのは、パネル全体の丸みを帯びた意匠性を統一するためであり、機能的には何ら意味をなさない。
【0004】
一方、天板の後端と幕板の上端部間に開口部を設け、その内部にコード受け部を設けるとともに、開口部に開閉可能に配線カバーを設けた配線機能付き机も各種提供されている。この場合、机の後端部には、バックパネルが立設され、前記配線カバーは該バックパネルに干渉されないように開閉可能に設けている。前記バックパネルは、その板厚の半分が机の後端部に重なった状態で立設されるので、その分だけ机の上面が狭くなることは避けられない。
【0005】
特許文献2には、前記天板の後端縁と所定距離を隔てた位置に、該後端縁と略平行に前記天板の左右方向の略全長にわたって設けられる支持部材と、該支持部材により、前記後端縁と略平行な水平軸まわりに回動可能に支持され、前記天板の左右方向の略全長にわたって設けられるカバー体と、該カバー体の前記天板の後端縁方向の両側端の少なくともどちらかに装着されたサイドキャップに設けた凸部が、前記支持部材に設けた凹部に弾性的に係合することにより、前記カバー体を開いて該カバー体が上方に略垂直となった状態において、該カバー体の位置を保持する保持手段とを備えた構造が開示されている。
【0006】
ここで、前記配線カバーを水平な閉止状態としたときには天板と略面一となり、略垂直な開放状態としたときには、前記バックパネルの前面に接近した状態となるが、当然、配線カバーの回動中心は前記バックパネルの前面より前側に設定する必要がある。また、バックパネルを立設したまま、配線カバーを着脱可能にするためにも、その着脱作業がバックパネルに干渉されないように、配線カバーの回動中心は前記バックパネルの前面より十分に前側に設定する必要がある。しかし、回動中心を前側に設定すると、配線カバーを開放した状態で配線作業に使用できる実効開口部が狭くなるといった不都合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6−34527号公報
【特許文献2】特許第4360287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、パネルの下端部の構造を工夫することにより、机の上面を広く使用することができるとともに、机の後端部に沿って配線機構部を設け、その開口部に着脱可能且つ開閉可能に配線カバーを設ける場合にも配線カバーの着脱作業が容易であるとともに、配線カバーの開放状態での実効開口部を広くできて、配線作業が容易になるパネル付き机の配線装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前述の課題解決のために、天板の後端と幕板の上端部間に開口部を設け、開口部に着脱可能且つ開閉可能に配線カバーを設けた配線機構部を設けるとともに、後端部にバックパネルの板厚の一部又は全部を重ねた状態で立設した机において、前記バックパネルの前面下端部が、下方になるにつれて後退した形状であり、前記配線カバーは後部を回動中心として開閉可能であることを特徴とするパネル付き机の配線装置を構成した(請求項1)。
【0010】
また、本発明は、天板の後端と幕板の上端部間に開口部を設け、開口部に着脱可能且つ開閉可能に配線カバーを設けた配線機構部を設けるとともに、後端部にバックパネルの板厚の半分を重ねた状態で立設した机において、前記バックパネルの下枠が、上部に基板を有し、該基板の両側縁に断面ヘ字形の側壁板が一体形成され、前記基板と両側壁板とで下方開放した開口溝を形成し、該開口溝を形成する両側壁板の下部は下方になるにつれて直線状に狭まった傾斜板となっており、前記配線カバーは後部を回動中心として開閉可能であることを特徴とするパネル付き机の配線装置を構成した(請求項3)。
【0011】
ここで、前記配線カバーは、前記バックパネルの下端部で形成される後退空間を利用して、傾斜状態で後部を前記開口部内に落とし込むことによって回動支持され、略垂直な開放状態では前記バックパネルの表面に最接近状態で保持されるものであることが好ましい(請求項2)。
【0012】
また、前記配線カバーの表面の閉塞板の後部で、開放状態のとき前記バックパネルの下端部で形成される後退空間に収容される位置に、後側が高くなった段部を形成していることもより好ましい(請求項3)。
【0013】
具体的には、前記バックパネルの下枠が、上部に基板を有し、該基板の両側縁に断面ヘ字形の側壁板が一体形成され、前記基板と両側壁板とで下方開放した開口溝を形成し、該開口溝を形成する両側壁板の下部は下方になるにつれて直線状に狭まった傾斜板となっており、前記配線カバーを、前記下枠の傾斜板に沿い且つ接近させた傾斜状態で後部を開口部内に落とし込むことによって回動支持されるように構成することがより好ましい(請求項4)。
【0014】
また、前記下枠の上部の厚みに対して傾斜板の下端の外側間隔は1/2以下となっていることが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0015】
以上にしてなる請求項1に係る発明のパネル付き机の配線装置は、天板の後端と幕板の上端部間に開口部を設け、開口部に着脱可能且つ開閉可能に配線カバーを設けた配線機構部を設けるとともに、後端部にバックパネルの板厚の一部又は全部を重ねた状態で立設した机において、前記バックパネルの前面下端部が、下方になるにつれて後退した形状であり、前記配線カバーは後部を回動中心として開閉可能であるので、バックパネルの下端部が形成する後退空間によって前記机の上面を広く使用することができ、また配線カバーの回動中心をより後側に設定することができ、それにより実効開口部を広くすることができ、配線作業が容易になるのである。また、バックパネルの下端を机の上面に接触又は最接近させて立設して目隠し作用を高めた場合でも、後退空間が存在するので配線カバーの開口部内への装着作業用空間を確保できる。
【0016】
請求項2によれば、前記配線カバーは、前記バックパネルの下端部で形成される後退空間を利用して、傾斜状態で後部を前記開口部内に落とし込むことによって回動支持され、略垂直な開放状態では前記バックパネルの表面に最接近状態で保持されるものであるので、配線カバーの回動中心を更に後側に設定しても、バックパネルに干渉されず、配線カバーを開口部内に装着することができるのである。
【0017】
請求項3によれば、前記配線カバーの表面の閉塞板の後部で、開放状態のとき前記バックパネルの下端部で形成される後退空間に収容される位置に、後側が高くなった段部を形成しているので、配線カバーの段部の高さだけ、更に配線カバーの回動中心を後側に設定することができ、しかも段部は開閉カバーが略垂直な開放状態のときに前記下枠の傾斜板で形成する後退空間に収容されるので、バックパネルに全く干渉せず、実効開口部を最大にすることができるのである。
請求項4によれば、前記バックパネルの下枠が、上部に基板を有し、該基板の両側縁に断面ヘ字形の側壁板が一体形成され、前記基板と両側壁板とで下方開放した開口溝を形成し、該開口溝を形成する両側壁板の下部は下方になるにつれて直線状に狭まった傾斜板となっており、前記配線カバーを、前記下枠の傾斜板に沿い且つ接近させた傾斜状態で後部を開口部内に落とし込むことによって回動支持されるので、バックパネルを下枠の傾斜板で後退空間が形成され、また配線カバーを傾斜板に沿った傾斜状態で後部を前記開口部内に落とし込むことができ、配線カバーの回動中心を更に後側に設定することができるとともに、外観性にも優れたものとなる。また、下枠の強度が高く、前記開口溝を利用して他の部材を受けることもできる。
【0018】
請求項5によれば、前記下枠の上部の厚みに対して傾斜板の下端の外側間隔は1/2以下となっているので、下枠の開口溝の幅を有効利用できる程度に確保しつつ、傾斜板によって形成される後退空間を広くすることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】天板の上位にバックパネルとサイドパネルを設けた机の正面図である。
【図2】同じくバックパネルとサイドパネルを設けた机の側面図である。
【図3】背後にロングパネルを設け、天板の側端上位にサイドパネルを設けた机の側面図である。
【図4】バックパネルの支持構造を示す部分分解斜視図である。
【図5】サイドパネルの後部とバックパネルとの連結構造を示す部分縦断面図である。
【図6】配線カバーの開閉機構部を示す分解斜視図である。
【図7】端部支承具に配線カバーを装着する状態を示す部分分解断面図である。
【図8】端部支承具に対して配線カバーを閉じた使用状態を示す部分断面図である。
【図9】端部支承具に対して配線カバーを開いた使用状態を示す部分断面図である。
【図10】端部支承具に対して配線カバーを閉じる途中の状態を示す部分断面図である。
【図11】配線カバーのカバー本体に形成した段部とバックパネルの下枠の傾斜板との関係を示す部分縦断面図である。
【図12】ロングパネルの袖キャビネットへの支持構造を示す部分分解斜視図である。
【図13】同じくロングパネルを袖キャビネットへ取付けた状態を示す部分縦断面図である。
【図14】ロングパネルの脚部材への支持構造を示す部分分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。図1〜図3は本発明を適用した机を示し、図4及び図5はバックパネルを取付ける構造を示し、図6〜図10は配線カバー及びその開閉機構部を示し、図12〜図14はロングパネルを取付ける構造を示し、図中符号1は机、2は脚部材、3は袖キャビネット、4は幕板、5は天板、6はサイドエッジ、7はバックパネル、8はロングパネル、9はサイドパネルをそれぞれ示している。
【0021】
本発明に係る机1は、片袖タイプを示し、一側に脚部材2を配し、他側に袖キャビネット3を配し、脚部材2と袖キャビネット3の後端部側面間に幕板4を連結し、そして脚部材2と袖キャビネット3の上面に天板5を連結したものである。平机タイプでは、両側に脚部材2,2を配設し、両袖タイプでは両側に袖キャビネット3,3を配置する。前記天板5は、大部分が金属製であり、両側面に合成樹脂製のサイドエッジ6を装着している。更に、図1及び図2は、前記机1の後端部上位にはバックパネル7を設けるとともに、両側にサイドパネル9を設けたものである。前記サイドパネル9は天板5の一側に設けることもある。また、図3は、前記机1の背後に接近させてロングパネル8を設けたものである。
【0022】
前記天板5の後端は、前記脚部材2及び袖キャビネット3の後端よりも前方に位置し、天板5の後端と幕板4の上端との間に、配線機構部10の開口部11を形成している。そして、前記開口部11の上部開口部11Aには配線カバー12が開閉可能に設けられている。前記配線カバー12を開閉可能に支持する端部支承具13,13を前記脚部材2の上面後端部及び前記袖キャビネット3の上面の後外側角部に取付けている。また、前記幕板4の上端と前記配線カバー12の下面との間には後部開口部11Bが形成されている。
【0023】
本発明のパネル付き机の配線装置は、天板5の後端と幕板4の上端部間に開口部11を設け、開口部11に着脱可能且つ開閉可能に配線カバー12を設けた配線機構部10を設けるとともに、後端部にバックパネル7の板厚の一部又は全部を重ねた状態で立設した机1において、前記バックパネル7の前面下端部が、下方になるにつれて後退した形状であり、前記配線カバー12は後部を回動中心として開閉可能であるものである。そして、前記配線カバー12は、前記バックパネル7の下端部で形成される後退空間を利用して、傾斜状態で後部を前記開口部11内に落とし込むことによって回動支持され、略垂直な開放状態では前記バックパネル7の表面に最接近状態で保持されるものである。
【0024】
図4に示すように、金属製の天板5の一側面を構成する薄金属板製の側部材14に沿って合成樹脂製の長尺サイドエッジ6を取付ける。サイドエッジ取付構造は、前記側部材14に複数の係合孔15,…を形成するとともに、側部材14の上端に複数の横長スリット孔16,…を形成する一方、前記サイドエッジ6の裏面に前記係合孔15に挿入し且つ後方向に移動させることによって抜止め状態で遊嵌する係合爪(図示せず)を突設するとともに、前記スリット孔16に密嵌する突片17,…を突設し、前記係合爪をそれぞれ係合孔15に抜止め係合するとともに、前記スリット孔16に突片17を密嵌して上下方向の位置決めを行った状態で取付ける。前記サイドエッジ6の前後端部の外側には、サイドパネル9等の他のオプションを支持するための支持金具をネジ止めする装着用凹部18,18を設け、該凹部18には着脱自在にカバー19が取付けられるようになっている。そして、前記凹部18内で通孔20を通してネジ21を側部材14に螺合する。
【0025】
前記バックパネル7、ロングパネル8及びサイドパネル9は、大きさが異なる以外は同じ構造である。図4及び図5に示すように、それぞれアルミ押出し型材で作製した両側枠22,22の上下端間に上枠23及び下枠24をネジ止め連結し、その間にパネル体25を保持した構造である。そして、前記側枠22と上枠23の端部には合成樹脂製の上部コーナーキャップ26を嵌着し、前記側枠22と下枠24の端部には合成樹脂製の下部コーナーキャップ27を嵌着している。前記側枠22は、前記パネル体25の内部に固定する固定部28と外部に露出する断面外形が略四角形の枠部29とからなり、該枠部29の長辺側面、即ちサイドパネル9の側端面に対応する面の両側部と、二つの短辺側面の中央部にそれぞれ開口縁が狭く内部が広がった形状の嵌合溝30,…を形成し、更に枠部29の内部に挿入孔35を形成している。また、前記下枠24は、図4及び図7に示すように、上部に基板31を有し、該基板31の両側縁に断面ヘ字形の側壁板32が一体形成され、前記基板31と両側壁板32,32とで下方開放した開口溝33を形成している。前記開口溝33を形成する両側壁板32,32の下部は下方になるにつれて直線状に狭まった傾斜板34,34となっている。この傾斜板34によって、バックパネル7の下端部前側に後退空間が形成される。前記下枠24の上部の厚みに対して傾斜板34,34の下端の外側間隔は1/2以下となっている。そして、前記バックパネル7は、板厚の半分が机1の後端部に重なった状態で立設されるが、前記下枠24に傾斜板34を形成しているので、該傾斜板34によって後退空間が形成され、机1の上面を広く使用することができる。前記ロングパネル8は、床面に設置するので、下端にアジャスター27Aを、前記下部コーナーキャップ27を利用して設けている。
【0026】
そして、前記サイドパネル9の前部の支持には、前記サイドエッジ6の前側の凹部18に下端部を取付けた支持金具(図示せず)の上方へ延びた支持板を、前記サイドパネル9の前側の側枠22に形成した挿入孔35をスライド係合させる。ここで、前記下部コーナーキャップ27には、前記挿入孔35に対応する部分は上下に貫通した開口36となっている。また、前記サイドパネル9の後端を前記バックパネル7の側端部に連結するには、合成樹脂製の帯状部材であり、両側縁部が膨出した断面I字形の連結部材37を用いる。前記バックパネル7の側枠22の前側の嵌合溝30と、前記サイドパネル9の後方の側枠22の後端面の内側の嵌合溝30とに、前記連結部材37の膨出部38,38をそれぞれ上方から挿入して連結する。
【0027】
一方、前記サイドパネル9の後端を前記ロングパネル8の側端部に連結するにも、前記連結部材37を用いる。この場合も、前記ロングパネル8の横幅は、机1の横幅と一致し、机1の背後に接近して立設されている。前記サイドパネル9は、前記同様に板厚の半分が天板5の上面側端部に重なった状態で天板5の上位に立設されるが、該サイドパネル9の後端位置は、前記机1の後端に一致する。従って、前記バックパネル7、あるいはロングパネル8の板厚の半分だけ、前述の場合より後方位置にサイドパネル9が取付けられる。この場合も、前記ロングパネル8の側枠22の前側の嵌合溝30と、前記サイドパネル9の後方の側枠22の後端面の内側の嵌合溝30とに、前記連結部材37の膨出部38,38をそれぞれ上方から挿入して連結する。
【0028】
次に、前記バックパネル7の取付構造を、図4及び図5に基づいて簡単に説明する。前記脚部材2の上面後端部(図5参照)及び前記袖キャビネット3の上面の後外側角部(図4参照)が取付部分となり、この部分に支持金具39をネジ止めして垂設する。支持金具39は、下端に水平な取付板40を有し、該取付板40の側縁から側面視L字形の支持板41が直角に上方へ延び、前記取付板40には取付孔42,42を形成し、前記支持板41の上下部には嵌合穴43,43を形成し、該嵌合穴43,43を利用して合成樹脂製のスライダー44,44を嵌着している。そして、前記支持金具39の取付板40を、取付孔42,42に通した固定ネジ45,45で脚部材2の上面及び袖キャビネット3の上面に螺着している。また、前記支持金具39の取付板40及び支持板41の下部は、前記配線機構部10の配線カバー12を開閉可能に支持する端部支承具13で隠蔽される。そして、前記バックパネル7の側枠22の挿入孔35に、前記支持板41を挿入し、スライダー44,44を密接しながらスライド係合させるのである。前記バックパネル7は、両側端部を両支持金具39,39で立起状態に支持される。
【0029】
本実施形態の前記机1は、図7に示すように、天板5後端と幕板4の上端との間に配線機構部10を設け、該配線機構部10の上部開口部11Aに配線カバー12の両端部を端部支承具13,13で支持して開閉可能に設けるとともに、配線機構部10内で前記幕板4の上縁に取付けたエッジ部材46に配線受け具47を設けている。また、前記配線カバー12の遊端部、即ち前端部を当止して撓みを防止するために、前記天板5の後端の左右中間部の適所にブロック状の中間支持部材48を取付けている。
【0030】
前記配線カバー12は、図6〜図10に示すように、前記配線機構部10の上部開口部11Aを開閉すべく、両端部を端部支承具13,13で回転可能に支持するとともに、該端部支承具13に対して着脱を容易にした構造である。また、前記配線カバー12は、水平な閉止状態と略垂直な開放状態とに弾性的に状態保持できるようになっている。
【0031】
具体的には、前記配線カバー12は、図6に示すように、金属製の板金加工品あるいはアルミニウム又は合成樹脂の押出し成形品からなるカバー本体49の両端に、合成樹脂製の端部材50,50を取付けて構成している。本実施形態のカバー本体49は、板金加工品であり、前記配線機構部10の上部開口部11Aを塞ぐ閉塞板51の後端部に下方斜め前方に向いた斜板52を形成するとともに、該斜板52の前縁に立上片53を形成し、閉塞板51の前縁に断面略Z字形に折曲した前片54を形成し、また閉塞板51の後部で開放状態のとき前記バックパネル7の下枠24の傾斜板34が作る後退空間に収容される位置に、後側が高くなった段部55を形成して曲げ強度を高めた構造としている。そして、前記カバー本体49の前片54には合成樹脂製の縁部材56を嵌着し、また前記立上片53の切断縁を隠蔽するように合成樹脂製の保護部材57を嵌着している。前記縁部材56は、前方へ張り出した軟質片58を二色成形によって一体形成している。前記配線カバー12を閉じた状態でも、前記軟質片58が変形して前記天板5の後端との間に配線コードを引き出せるようにしている。
【0032】
前記カバー本体49の端部に嵌着する端部材50は、図6に示すように、前記閉塞板51、斜板52及び前片54で形成される空間内に嵌合し、カバー本体49の側端縁を覆う鍔部59を形成している。そして、前記端部材50の外側面の後部には、下方斜め後方に解放した傾斜溝60を形成するとともに、該傾斜溝60の下方開放側の下側に第1係合凹部61と上側に弾性的な第2係合凹部62を形成し、更に外側面の前後中央部には下方へ向いた弾性的なリップ片63を形成している。ここで、前記傾斜溝60の深さは、前記第1係合凹部61及び第2係合凹部62よりも深く設定し、前記第1係合凹部61及び第2係合凹部62は傾斜溝60に連通している。具体的には、前記傾斜溝60の上端部を中心とした円弧溝を該傾斜溝60に交差するように形成し、その円弧溝の傾斜溝60より下方部分を前記第1係合凹部61とし、円弧溝の傾斜溝60より上方部分を前記第2係合凹部62としたのである。また、前記第2係合凹部62の一部を内外へ弾性変形可能な弾性片64で構成している。そして、両側の端部材50,50は、反対称形である。
【0033】
一方、前記端部支承具13は、前記脚部材2の上面後端部あるいは前記袖キャビネット3の上面の外側後端部に取付けて、両側の端部支承具13,13間に配置した前記配線カバー12を開閉可能に支持する。具体的には、図6に示すように、前記端部支承具13の内側面後部には、上側に前記傾斜溝60に係合して配線カバー12を回動可能に支持する軸部65を突設するとともに、その下方に前記第1係合凹部61又は第2係合凹部62に係合する規制ピン66を突設し、更に内側面中央部には配線カバー12の閉止時に前記リップ片63の先端部を係止する突部67と、該リップ片63を突部67まで案内する円弧状の案内部68を形成している。ここで、前記軸部65の突出高さは、前記規制ピン66の突出高さよりも高く設定し、前記軸部65が、前記第1係合凹部61又は第2係合凹部62に進入しないようにしている。また、前記案内部68の円弧面に対する前記軸部65の中心までの距離は、下方になるにつれて短くなるように設定している。そして、前記突部67の先端と前記軸部65の中心までの距離が最短となっている。
【0034】
そして、図7に示すように、前記配線カバー12の両側の端部材50,50に形成した傾斜溝60,60の方向を略垂直に向けた状態で、後部を上部開口部11A内に落とし込むことによって、前記傾斜溝60,60に、両側に取付けた前記端部支承具13,13のそれぞれの軸部65と規制ピン66を受け入れ、該軸部65を傾斜溝60の上端部に回動可能に係合させる。この際に、前記傾斜溝60は前記第1係合凹部61及び第2係合凹部62よりも深く形成し、前記軸部65を規制ピン66よりも突出高さを高く設定しているので、前記軸部65が不意に第2係合凹部62や第1係合凹部61に進入することがなく、スムーズに傾斜溝60の上端部まで係合させることができる。その後、前記配線カバー12を、前記軸部65を中心に下方へ回動させて略水平状態にすると、前記規制ピン66が第1係合凹部61に係合するとともに、前記リップ片63の先端部が案内部68で案内され、該リップ片63が弾性変形しながら突部67を超えて該突部67の下側に係止する。この状態で、前記配線カバー12が配線機構部10の上部開口部11Aを閉止した状態を維持する(図8参照)。この閉止状態では、前記規制ピン66に第1係合凹部61が係合しているので、配線カバー12の後部を持ち上げても外れることは全くない。また、前記リップ片63の先端が突部67に弾性係合しているので、配線カバー12をガタつきなく保持できる。
【0035】
そして、前記配線カバー12の前片54と縁部材56の間の段部に指をかけて持ち上げ、前記リップ片63の先端と突部67の係合を解除すると、該リップ片63の先端は案内部68に弾性圧接された状態となるので、該リップ片63の弾性復元力によって案内部68を摺動して配線カバー12の前部を上方へ若干持ち上げる。その状態になると、前記縁部材56に指を掛けることができ、前記配線カバー12を、前記軸部65を中心に上方へ回動させて、前記規制ピン66を傾斜溝60が通過して該配線カバー12を略垂直状態にすると、前記規制ピン66に第2係合凹部62が弾性的に係合して開放状態を維持する(図9参照)。この開放状態で前記配線カバー12を持ち上げても、前記規制ピン66に第2係合凹部62が係合しているので外れることはない。
【0036】
また、前記配線カバー12を開放状態から下方へ押し下げると、前記規制ピン66と第2係合凹部62との弾性係合状態が解除されて自由回転するが、図10に示すように、前記リップ片63の先端が前記案内部68に当接し、当該配線カバー12の下方への回転が弱まり、やがて釣り合って停止する。その状態から、前記配線カバー12の手前側を強制的に押し下げると、前記リップ片63の先端が前記突部67を乗り越えてその下方側に弾性的に係止するのである(図8参照)。
【0037】
また、図1及び図6に示すように、前記配線カバー12が閉止状態で、前縁部を当止して撓みを防止するために、前記天板5の後端部の左右中間部にブロック状の中間支持部材48を取付けて、その上面の当止部69に前記縁部材56を当止するようにしている。前記中間支持部材48を天板5の後端に取付ける構造は任意であるが、本実施形態では中間支持部材48の前側上部に前記天板5の後端下部に係合する凹陥部70を形成し、該凹陥部70の上部両側に上向きフック71,71を突設するとともに、該凹陥部70の下部中央部に上向き係合爪72を突設している。一方、前記天板5の後端面の適所には、前記中間支持部材48の上向きフック71,71を挿入する角孔(図示せず)を形成するとともに、前記天板5の下面後端部に前記上向き係合爪72を係合する係合孔(図示せず)を形成している。前記中間支持部材48を取付ける個数は任意であり、天板5の横幅の広狭に応じて決定する。
【0038】
前記バックパネル7の下枠24は、前述のように、下方に開放した開口溝33を形成し、該開口溝33を形成する両側壁板32,32の下部が下方になるにつれて直線状に狭まるように傾斜板34,34となっている。従って、図7に示すように、前記配線カバー12を両側の端部支承具13,13に装着する際に、前記カバー本体49の閉塞板51を前記傾斜板34に略平行にして上部開口部11A内に挿入することができ、前記端部支承具13の軸部65と規制ピン66が、前記バックパネル7の前面の直下近傍に位置していても、傾斜溝60に軸部65と規制ピン66を受け入れることができる。つまり、前記軸部65を最も後方に設定できるので、図9に示すように、前記配線カバー12を略垂直に開放した状態では、該配線カバー12をバックパネル7の表面に最接近状態にすることができ、それによって配線機構部10の上部開口部11Aを大きく開放して、配線作業を容易に行うことができるのである。
【0039】
そして、図11に示すように、前記配線カバー12の閉塞板51に設けた前記段部55の段差を大きくし、該配線カバー12を垂直に開放した状態で、該段部55より下部を前記バックパネル7の下枠24の傾斜板34によって後退した部分に位置させることにより、軸部65と傾斜溝60の上端部による回動中心位置を更に後方位置に設定することができ、それにより開放状態で上部開口部11Aを更に広く開放することができ、配線作業が容易になるのである。また、前記配線カバー12に段部55を設けたことによるその他の効果としては、配線カバー12の上に配線タップなどを配置するときの位置決め、配線カバー12の裏面の保護部材57の取付けの位置決め、配線カバー12のカバー本体49の強度アップなどを挙げることができる。
【0040】
次に、前記配線機構部10の内部の構造について簡単に説明する。図7及び図8に示すように、前記幕板4の上端に前方へ折曲して上縁補強枠73を形成するとともに、該幕板4の上縁補強枠73と配線カバー12の間に後部開口部11Bを設け、前記上縁補強枠73に係合する係合部74と前記後部開口部11Bを塞ぐ軟質部75とを有するとともに、前記係合部74の前面側にフック片76を形成したエッジ部材46を幕板4の上縁補強枠73の全長にわたり装着し、前記配線受け具47は下部にコード受け部77と上端部に前記フック片76に係止する係止部78を設け、該配線受け具47の係止部78を前記エッジ部材46のフック片76に係脱可能に係止した構造である。
【0041】
更に、前記配線受け具47の係止部78の上方に突出部79を設け、該配線受け具47の係止部78を前記エッジ部材46のフック片76に係止した状態で、前記突出部79で前記配線カバー12の下端を間接的又は直接的に当止するようにしている。前記配線受け具47を複数に分割して前記エッジ部材46に係止して設ける場合には、外した配線受け具47の上端部の突出部79を、他の配線受け具47のコード受け部77の下面に形成した係合溝80に側方からスライド係合させて上下に連結する。前記突出部79の先端と、前記係合溝80は、断面略T字形に形成している。前記エッジ部材46は、硬質合成樹脂からなる係合部74は、後方へ開放した凹溝部とその下側面に前記幕板4の上縁補強枠73の下側折り返し片81に係止する係止段部82とを備えている。本実施形態では、図8に示すように、前記軟質部75の舌片を介して間接的に前記配線カバー12の下端を当止し、該配線カバー12の撓みを防止している。
【0042】
前記配線受け具47は、前記係止部78を、前記エッジ部材46のフック片76に係止した状態で姿勢を保つために、コード受け部77の背面に突設した当止部83を前記幕板4の表面板84の前側に当止するようになっている。前記上縁補強枠73は、前記表面板84の上縁を前側へ直角に折曲し、その前縁を下方へ直角に折曲し、更にその下縁を後方へ直角に折曲して前記折り返し片81を形成して構成している。
【0043】
最後に、前記ロングパネル8の取付構造を、図12〜図14に基づいて簡単に説明する。前記ロングパネル8は、机1の背後に接近させて前記脚部材2の後端部(図13、図14参照)及び前記袖キャビネット3の後端部(図12参照)に取付ける。それには、下部受け金具85と上部押え金具86を用いる。前記下部受け金具85は、前記脚部材2の背面下端部と、前記袖キャビネット3の背面の外側下端部に形成した横長の角孔87に嵌合係止する係止片88を形成するとともに、該係止片88の下端に前記下枠24の一方の傾斜板34を係止する断面略コ字形の受部89を形成したものであり、棚受具と同じ構造である。また、前記上部押え金具86は、前記支持金具39の取付板40を取付ける場合と同じ場所に取付ける取付板90と、該取付板90の外側後端部から後方へ延びた上向き爪片91を形成した形状であり、取付板90には取付孔92,92を形成し、前記固定ネジ45,45で前記同様に螺着する。前記ロングパネル8の側枠22の前面側の嵌合溝30の内奥の区画壁で前記上向き爪片91の高さに縦長の角孔93を形成している。そして、前記下部受け金具85の係止片88を角孔87に係止し、その受部89で前記ロングパネル8の下枠24の一方の傾斜板34を受けた後、前記上部押え金具86の取付板90を持ち上げた状態で上向き爪片91を前面側の嵌合溝30から差し入れ角孔93に挿入し、前記取付板90を所定の取付位置まで押し上げて固定ネジ45で取付ける。つまり、前記ロングパネル8は、下部受け金具85と上部押え金具86で挟まれた状態で支持される。また、この場合も上部押え金具86の大部分は、前記端部支承具13で隠蔽される。
【符号の説明】
【0044】
1 机、 2 脚部材、
3 袖キャビネット、 4 幕板、
5 天板、 6 サイドエッジ、
7 バックパネル、 8 ロングパネル、
9 サイドパネル、 10 配線機構部、
11 開口部、 11A 上部開口部、
11B 後部開口部、 12 配線カバー、
13 端部支承具、 14 側部材、
15 係合孔、 16 スリット孔、
17 突片、 18 凹部、
19 カバー、 20 通孔、
21 ネジ、 22 側枠、
23 上枠、 24 下枠、
25 パネル体、 26 上部コーナーキャップ、
27 下部コーナーキャップ、27A アジャスター、
28 固定部、 29 枠部、
30 嵌合溝、 31 基板、
32 側壁板、 33 開口溝、
34 傾斜板、 35 挿入孔、
36 開口、 37 連結部材、
38 膨出部、 39 支持金具、
40 取付板、 41 支持板、
42 取付孔、 43 嵌合穴、
44 スライダー、 45 固定ネジ、
46 エッジ部材、 47 配線受け具、
48 中間支持部材、 49 カバー本体、
50 端部材、 51 閉塞板、
52 斜板、 53 立上片、
54 前片、 55 段部、
56 縁部材、 57 保護部材、
58 軟質片、 59 鍔部、
60 傾斜溝、 61 第1係合凹部、
62 第2係合凹部、 63 リップ片、
64 弾性片、 65 軸部、
66 規制ピン、 67 突部、
68 案内部、 69 当止部、
70 凹陥部、 71 上向きフック、
72 上向き係合爪、 73 上縁補強枠、
74 係合部、 75 軟質部、
76 フック片、 77 コード受け部、
78 係止部、 79 突出部、
80 係合溝、 81 折り返し片、
82 係止段部、 83 当止部、
84 表面板、 85 下部受け金具、
86 上部押え金具、 87 角孔、
88 係止片、 89 受部、
90 取付板、 91 爪片、
92 取付孔、 93 角孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板の後端と幕板の上端部間に開口部を設け、開口部に着脱可能且つ開閉可能に配線カバーを設けた配線機構部を設けるとともに、後端部にバックパネルの板厚の一部又は全部を重ねた状態で立設した机において、前記バックパネルの前面下端部が、下方になるにつれて後退した形状であり、前記配線カバーは後部を回動中心として開閉可能であることを特徴とするパネル付き机の配線装置。
【請求項2】
前記配線カバーは、前記バックパネルの下端部で形成される後退空間を利用して、傾斜状態で後部を前記開口部内に落とし込むことによって回動支持され、略垂直な開放状態では前記バックパネルの表面に最接近状態で保持されるものである請求項1記載のパネル付き机の配線装置。
【請求項3】
前記配線カバーの表面の閉塞板の後部で、開放状態のとき前記バックパネルの下端部で形成される後退空間に収容される位置に、後側が高くなった段部を形成している請求項1又は2記載のパネル付き机の配線装置。
【請求項4】
前記バックパネルの下枠が、上部に基板を有し、該基板の両側縁に断面ヘ字形の側壁板が一体形成され、前記基板と両側壁板とで下方開放した開口溝を形成し、該開口溝を形成する両側壁板の下部は下方になるにつれて直線状に狭まった傾斜板となっており、前記配線カバーを、前記下枠の傾斜板に沿い且つ接近させた傾斜状態で後部を開口部内に落とし込むことによって回動支持される請求項1〜3何れか1項に記載のパネル付き机の配線装置。
【請求項5】
前記下枠の上部の厚みに対して傾斜板の下端の外側間隔は1/2以下となっている請求項4記載のパネル付き机の配線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−45116(P2012−45116A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188881(P2010−188881)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】