説明

パルス幅変調回路およびスイッチングアンプ

【課題】 インバータ回路INV1、INV2の入力が共にハイレベルになり、発振動作が停止した場合に、発振動作を強制的に開始させるパルス幅変調回路を提供すること。
【解決手段】 定電流から分配された第1の電流I1と第2の電流I2とにより充電されて、インバータ回路INV1、INV2からハイレベルまたはローレベルのパルスを出力するパルス発生手段31と、入力信号に基づいて、I1とI2との分配比を制御して、I1とI2との充電時間を制御することにより、パルスのパルス幅を制御する変調手段32と、インバータ回路INV1、INV2の入力が共にハイレベルであることを検出し、ローレベル信号を出力するNAND回路N1と、NAND回路N1がローレベルの信号を出力した場合に、インバータ回路INV1またはINV2の入力レベルを反転させるレベル制御手段23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス幅変調回路に関し、詳細には、マルチバイブレータを備えるパルス幅変調回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は従来のパルス幅変調回路81を示す回路図である。パルス幅変調回路81は、コンデンサC1、C2をトランジスタQ1、Q2のコレクタ電流によって充放電することにより、インバータ回路INV1、INV2からハイレベルまたはローレベルの2つのレベルを有するパルスを出力する。そして、トランジスタQ1、Q2に入力信号であるオーディオ信号in+、in−をそれぞれ入力し、定電流からのトランジスタQ1、Q2のコレクタ電流の分配比を制御し、コンデンサC1、C2の充電時間を制御することによって、出力パルスのパルス幅を変調する。なお、インバータ回路INV3、INV4は、インバータ回路INV1、INV2の出力パルスを波形成形する。NAND回路N2、N3、インバータ回路INV5、INV6は、リセット信号Resetがハイレベルになったときにパルス幅変調回路81からパルスを出力開始する。これにより、パルス幅変調回路81の発振動作(インバータ回路INV1、INV2が、一方がハイレベルを出力するときに、他方がローレベルを出力する動作を繰り返す動作をいう)が定常状態に移行した後に、PWM(パルス幅変調信号)信号を出力することができる。
【0003】
パルス幅変調回路81は、インバータ回路INV1、INV2の入力が、一方がハイレベルであり、他方がローレベルである場合に、発振動作を継続し、PWM信号を出力することができる。しかし、インバータ回路INV1、INV2の入力が共にハイレベルになると、コンデンサC1、C2の両方が充電された状態になり、発振動作が停止し、PWM信号を出力できなくなるという問題がある。さらに、この場合、パルス幅変調回路81から共にハイレベルの2つのPWM信号が出力されるので、パルス幅変調回路81の後段に接続されるスイッチングアンプのスイッチ素子が同時にオン状態になり、貫通電流によりスイッチ素子が破壊してしまうという問題を有する。
【0004】
特に、パルス幅変調回路81の起動時において、トランジスタQ1、Q2のコレクタ電流を生成する電源VAの立ち上がり(定常状態になるまでの時間)よりも、インバータ回路INV1、INV2に電圧を供給する電源VBの立ち上がりが遅い場合に、インバータ回路INV1、INV2の入力が共にハイレベルになる可能性が高い。これは次の理由による。図9にインバータ回路INV1(INV2も同様)の内部構成を示す。電源VBがインバータ回路INV1の動作開始電圧に達するまでは、MOSFET91、92はオンオフ動作しない。そのため、パルス幅変調回路81の起動直後は、インバータ回路INV1の出力P点はハイインピーダンスであるので、トランジスタQ1のコレクタ電流はコンデンサC2には流れず、ダイオードD2を介して電源VBに流れる。もし電源VBの立ち上がりが早ければ、コンデンサC2が充電されていない状態で、インバータ回路INV1のMOSFET92が急速にオン状態(低抵抗状態)になるので、インバータ回路INV1がローレベルを出力し、インバータ回路INV2の入力をローレベルに反転させる。このことはインバータ回路INV2についても同様のことが言えるが、実際には回路諸定数のばらつきによって何れか早い方によって発振動作に移行することになる。しかし、電源VBの立ち上がりが遅い場合は、インバータ回路INV1は電源電圧VBがMOSFET92の閾値電圧を越えた時点から徐々に電流が流れ始め(抵抗値が徐々に減少していく)、コンデンサC2の充電が開始される。この時、インバータ回路INV1の出力はトランジスタQ1のコレクタ電流によるコンデンサC2の充電速度よりもゆっくりとローレベルに移行するので、インバータ回路INV2の入力をローレベルに反転させることができず、そのままコンデンサC2の満充電に至ることになる。インバータ回路INV2およびコンデンサC1についても同様であり、インバータ回路INV1、INV2の入力が共にハイレベル、出力が共にローレベルという安定状態に入り、発振動作に移行しなくなる。
【特許文献1】特開2003−249846号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、2つの出力素子の入力が同一レベルになり、発振動作が停止した場合に、2つの出力素子の発振動作を強制的に開始させるパルス幅変調回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好ましい実施形態によるパルス幅変調回路は、定電流から分配された第1の電流と第2の電流とによりコンデンサが充電されて、第1の出力素子および第2の出力素子からパルスを出力するパルス発生手段と、入力信号に基づいて、該第1の電流と該第2の電流との分配比を制御して、該第1の電流および該第2の電流による充電時間を制御することにより、該パルスのパルス幅を制御する変調手段と、
該第1の出力素子と該第2の出力素子との入力が共にハイレベルまたは共にローレベルであることを検出し、検出信号を出力する検出手段と、該検出手段が、該検出信号を出力した場合に、該第1の出力素子または該第2の出力素子の入力レベルを他方のレベルに反転させるレベル制御手段とを備える。
【0007】
検出手段が第1の出力素子の入力と第2の出力素子の入力とが同一レベル(例えば、共にハイレベル)であることを検出した場合に、レベル制御手段が第1の出力素子または第2の出力素子の入力レベルを他方のレベル(ローレベル)に反転させる(変換する)。従って、第1の出力素子および第2の出力素子に供給される電源電圧の立ち上がりが非常に遅く、第1の出力素子と第2の出力素子との発振動作が停止した場合に、第1の出力素子または第2の出力素子の一方の入力レベルをローレベルに反転させることにより、強制的に第1の出力素子と第2の出力素子との発振動作を開始させることができる。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記レベル制御手段は、上記検出手段からの検出信号が所定時間継続して入力された際に、該第1の出力素子または該第2の出力素子の入力レベルを他方のレベルに反転させる。
【0009】
第1の出力素子と第2の出力素子との発振動作のタイミングによって、瞬間的に第1の出力素子および第2の出力素子の入力が同一レベルになる場合がある。この場合、直ぐに第1の出力素子および第2の出力素子は、一方の入力がハイレベル、他方の入力がローレベルになるので、発振動作を継続できる。しかし、瞬間的に検出手段が検出信号を出力した際にも、レベル制御手段が第1の出力素子または第2の出力素子の入力レベルを反転させてしまうと、第1の出力素子と第2の出力素子との発振動作に悪影響を与える可能性がある。本実施形態では、検出手段が所定時間継続して検出信号を出力した際に、第1の出力素子または第2の出力素子の入力レベルを反転させるので、このような問題を防止することができ、出力素子の発振動作が停止した場合に発振動作を開始させることができる。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記レベル制御手段は、上記第1の出力素子の入力または上記第2の出力素子の入力と、上記反転させる側のレベルの電位(つまり上記他方のレベルを有する電源)との間に接続され、オン状態になることにより該第1の出力素子または該第2の出力素子の入力レベルを反転させるスイッチ素子と、上記検出手段からの検出信号が入力され、所定の時定数に基づいて出力を増減させ、該出力に基づいて該スイッチ素子をオン状態にする時定数回路とを有する。
【0011】
検出手段が検出信号を所定時間継続して出力すると、時定数回路の出力が検出信号に対して所定時間遅れて増減し、スイッチ素子をオン状態にする。スイッチ素子がオン状態になると、第1の出力素子または第2の出力素子の入力は、反転させる側のレベルの電位(上記の他方のレベルを有する電源)に接続された状態になって、入力レベルを反転することができる。一方、検出手段が検出信号を出力していないときは、スイッチ素子はオフ状態になっているので、第1の出力素子または第2の出力素子の入力がレベル制御手段から開放された状態になっており、レベル制御手段からの出力によって発振動作に悪影響を与えることが防止される。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記レベル制御手段は、上記スイッチ素子と上記時定数回路との間に設けられ、該スイッチ素子をオン状態にする信号を該スイッチ素子に与えてから所定時間経過後に、該スイッチ素子をオン状態にする信号の出力を停止し、該スイッチ素子をオフ状態にする微分回路をさらに有する。
【0013】
検出手段が検出信号の出力を停止してから、時定数回路がスイッチ素子をオフ状態にする信号を出力するまでに時間がかかる場合、微分回路の作用によってスイッチ素子をオフ状態にすることができる。その結果、第1の出力素子または第2の出力素子の入力レベルを反転させた後、瞬時に確実にスイッチ素子をオフ状態にすることができ、第1の出力素子と第2の出力素子との発振動作を確実に開始させることができる。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記スイッチ素子に含まれる容量成分と略同一の容量成分を有する素子が、上記第1の出力素子または上記第2の出力素子のうち、該スイッチ素子が接続されていない側の出力素子の入力に接続されている。
【0015】
第1の出力素子または第2の出力素子の入力にスイッチ素子を接続すると、第1の出力素子および第2の出力素子の入力に接続されている容量成分(つまり、パルス幅を決定する第1、第2の電流によって充電される容量成分)が不均等になり、変調度に誤差が生じる。本実施形態では、スイッチ素子を接続しない方の出力素子の入力にスイッチ素子に含まれる容量成分と略同一の容量成分を有する素子(例えば、コンデンサまたは同等のスイッチ素子等)を接続することにより、第1の出力素子および第2の出力素子の入力に接続されている容量成分が均等になり、変調度の誤差を防止できる。
【0016】
好ましい実施形態においては、上記第1の出力素子が第1のNAND回路であり、上記第2の出力素子が第2のNAND回路である。該第1のNAND回路の第1入力は、上記第1の電流によって充電される第1のコンデンサに接続されている。該第2のNAND回路の第1入力は、上記第2の電流によって充電される第2のコンデンサに接続されている。一方のNAND回路の第2入力は、前記ハイレベルの電位に接続されている。他方のNAND回路の第2入力は、該ハイレベルの電位に接続され、かつ、上記レベル制御手段の出力に接続されている。
【0017】
好ましい実施形態においては、上記レベル制御手段は、上記検出手段からの検出信号が入力され、所定の時定数に基づいて出力を増減させる時定数回路を有し、該時定数回路の出力が前記第2のNAND回路の第2入力に接続されている。
【0018】
発振動作時には、第1および第2のNAND回路の第1入力は、一方がハイレベルのとき他方がローレベルである。第1および第2のNAND回路の第2入力は、共にハイレベルである。第1および第2のNAND回路の第1入力が共にハイレベルになると発振動作を停止するが、この時、例えば、第1のNAND回路の第2入力がレベル制御手段によってローレベルに反転し、第1のNAND回路の出力がローレベルからハイレベルに反転する。次に、第1のNAND回路の第2入力がレベル制御手段によってハイレベルに反転し、第1のNAND回路の出力がハイレベルからローレベルに反転し、第2のNAND回路の第1入力がローレベルに反転し、これにより発振動作が開始する。
【0019】
発振動作時に、第1および第2のNAND回路の第2入力は共にハイレベルであるので、発振動作時にハイレベルを出力するレベル制御手段を第1のNAND回路の第2入力から開放する必要がなく、上記のスイッチ素子が不要である。スイッチ素子を有さないので、第1の出力素子および第2の出力素子の入力に接続されている容量成分が不均等にならず、変調度に誤差が生じることを防止できる。
【0020】
好ましい実施形態においては、パルス幅変調回路は、上記レベル制御手段が上記第1の出力素子または上記第2の出力素子の入力レベルを反転させた後、上記検出手段が検出信号を出力し続けた場合に、該第1の出力素子および該第2の出力素子の入力が同一レベルである旨を示す報知信号を外部に出力する報知手段をさらに備える。
【0021】
第1の出力素子または第2の出力素子の入力レベルを反転させても、検出手段が検出信号を出力し続ける場合には、レベル制御手段の作用によっても発振動作を開始することができないので、その旨を示す報知信号を外部(例えばマイコン)に出力し、マイコンによってその他の回復処理を実行することができる。
【0022】
前記レベル制御手段が、前記スイッチ素子と前記時定数回路との間に設けられ、該時定数回路の出力が所定の閾値未満になった際に、該スイッチ素子をオン状態にするハイレベルの信号を出力する比較回路をさらに有する、請求項3〜5のいずれかに記載のパルス幅変調回路。
【0023】
好ましい実施形態においては、上記第1の出力素子が第1のインバータ回路であり、上記第2の出力素子が第2のインバータ回路である。上記検出手段は、該第1のインバータ回路および該第2のインバータ回路の入力が共にハイレベルの時に、ローレベルの信号を出力するNAND回路である。上記スイッチ素子はコレクタが第1のインバータ回路の入力に接続され、エミッタがローレベルの電位に接続され、ベースが上記微分回路の出力に接続されたトランジスタである。
【0024】
本発明の別の局面においては、上記のパルス幅変調回路と、該パルス幅変調回路からの第1のPWM信号に応答してオン状態またはオフ状態になる第2のスイッチ素子と、該パルス幅変調回路からの第2のPWM信号に応答してオン状態またはオフ状態になる第3のスイッチ素子とを有するスイッチング出力回路とを備える、スイッチングアンプが提供され得る。
【0025】
好ましい実施形態においては、上記検出手段は、該第1のPWM信号が該第2のスイッチ素子をオン状態にする信号であり、かつ、該第2のPWM信号が該第3のスイッチ素子をオン状態にする信号であることを検出し、前記検出信号を出力し、該検出手段が該検出信号を出力した場合に、該第1のPWM信号を該第2のスイッチ素子をオフ状態にする信号に変換し、かつ、該第2のPWM信号を該第3のスイッチ素子をオフ状態にする信号に変換する信号変換手段をさらに備える。
【発明の効果】
【0026】
本発明のパルス幅変調回路は、第1の出力素子および第2の出力素子の入力が同一レベルになると、検出手段が検出信号を出力し、レベル制御手段が一方の入力レベルを反転させるので、第1の出力素子および第2の出力素子の発振動作を開始させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。まず、図1を参照して、本発明のパルス幅変調回路20が適用されるスイッチングアンプの概略構成を説明する。スイッチングアンプ10は、パルス幅変調回路20、ドライバ11、スイッチング出力回路12、LPF(Low Pass Filter)13および負帰還回路14を備える。
【0028】
パルス幅変調回路20は、入力信号をパルス幅変調して第1のPWM信号OUT1および第2のPWM信号OUT2を生成する。第1のPWM信号OUT1および第2のPWM信号OUT2は、通常、一方がハイレベルの信号である場合に他方がローレベルの信号である。ドライバ11は、第1のPWM信号OUT1および第2のPWM信号OUT2が入力され、電源電圧に基づいて、後述のスイッチ素子を駆動するための駆動信号DRV1およびDRV2を出力する。
【0029】
スイッチング出力回路12は、第1の電源(例えば正の電源+VD)と第2の電源(例えば負の電源−VD)との間に接続され、駆動信号に応答して正の電源+VDまたは負の電源−VDを出力する。スイッチング出力回路12は、スイッチ素子(例えば、MOSFET)15、16を有する。
【0030】
LPF13は、スイッチング出力回路12の出力端とスイッチングアンプ10の出力端との間に接続され、高周波成分を除去して、スピーカー等の負荷に出力する。LPF13は、コイル17およびコンデンサ18を有する。負帰還回路14は、スイッチング出力回路12の出力端とパルス幅変調回路20の入力との間に接続され、スイッチング出力回路12の出力に含まれる信号の歪み成分を低減する。
【0031】
図2は、本発明の好ましい実施形態によるパルス幅変調回路20を説明するブロック図である。図3は、図2のパルス幅変調回路20の具体構成を説明する回路図である。パルス幅変調回路20は、PWM信号発生手段21、検出手段22およびレベル制御手段23を備える。パルス幅変調回路20は、必要に応じて、信号変換手段24および発振停止報知手段25をさらに備える。
【0032】
PWM信号発生手段21は、無安定マルチバイブレータを使用したPWM回路であり、図3に示すとおり、パルス発生手段31および変調手段32を有する。
【0033】
パルス発生手段31は、後述する第1の電流I1および第2の電流I2により、コンデンサC1、C2に電荷を充電し、第1の出力素子および第2の出力素子からハイレベルまたはローレベルの2つのレベルを有するパルスを出力する。第1の出力素子、第2の出力素子は、本例では、インバータ回路INV1、INV2である。インバータ回路INV1、INV2の内部構成は図9の通りであり、入力が所定の閾値以上になるとローレベルの信号を出力し、入力が所定の閾値未満になるとハイレベルの信号を出力する。パルス発生手段31は、インバータ回路INV1、INV2、コンデンサC1、C2、ダイオードD1、D2を含み、コンデンサC1、C2の充電時間に対応した幅のパルスを出力する。インバータ回路INV1およびINV2は、図9に示す通り、出力パルスのハイレベルに略対応する電源VBおよびローレベルに略対応する電源(または接地電位)VCに接続されている。
【0034】
パルス発生手段31は、波形成形用のインバータ回路INV3、INV4をさらに有する。インバータ回路INV1、INV2の出力パルスは、コンデンサC1、C2の放電に伴って、ハイレベルに反転する際の立ち上がりが急峻にならない。インバータ回路INV3、INV4を用いることにより、立ち上がりの急峻なパルスを出力できる。
【0035】
変調手段32は、入力信号(例えば、オーディオ信号)in+、in−に基づいて第1の電流I1と第2電流I2との分配比を制御することにより、インバータ回路INV1、INV2の出力パルスのパルス幅を変化させる。変調手段32は、定電流回路33、トランジスタQ1、Q2を有する。定電流回路33は、電源VAに接続され、定電流Iを発生させる。第1の電流I1はトランジスタQ1のコレクタ電流であり、第2の電流I2はトランジスタQ2のコレクタ電流であり、第1の電流I1と第2の電流I2との和は、定電流回路33で発生される定電流Iに等しい。すなわち、第1の電流I1と第2の電流I2とは、定電流Iから分配されている。トランジスタQ1、Q2のベースに入力信号in+、in−が与えられることにより、第1の電流I1と第2電流I2との分配比が制御される。その結果、コンデンサC1およびC2の充電時間が制御され、インバータ回路INV1、INV2の出力パルスのパルス幅を変化させることができる。
【0036】
検出手段22は、インバータ回路INV1、INV2の入力が同一レベル(本例では、共にハイレベルであるが、共にローレレベルの場合も適用可能である)であることを検出して、検出信号(本例では、ローレベルの信号)を出力する。つまり、検出手段22は、インバータ回路INV1、INV2の発振動作(インバータ回路INV1、INV2が、一方がハイレベルを出力するときに、他方がローレベルを出力する動作を繰り返す動作をいう)が停止していることを検出して、検出信号を出力する。検出手段22は、例えば、NAND回路N1を有する。NAND回路N1は、一方の入力がインバータ回路INV3の出力に接続され、他方の入力がインバータ回路INV4の出力に接続されている。従って、インバータ回路INV1、INV2の入力が共にハイレベルである場合、NAND回路N1の両入力はハイレベルになるので、NAND回路N1はローレベルの信号を出力する。一方、インバータ回路INV1、INV2が発振動作を実行しているときは、NAND回路N1の一方の入力がローレベルになるので、NAND回路N1はハイレベルの信号を出力する(すなわち、検出信号を出力しない)。
【0037】
レベル制御手段23は、検出手段22から検出信号であるローレベルの信号が入力されると、インバータ回路INV1またはINV2のどちらか(本例では、インバータ回路INV2)の入力にトリガとなるローレベルの信号を与え、ハイレベルからローレベルに反転させて、インバータ回路INV1、INV2の発振動作を開始させるものである。つまり、レベル制御手段23は、インバータ回路INV1またはINV2の入力をローレベルに変更する。好ましくは、レベル制御手段23は、検出手段22からの検出信号の入力が所定時間継続した際に、インバータ回路INV2の入力をローレベルに反転させる。インバータ回路INV1、INV2は通常一方がハイレベルを出力するとき、他方がローレベルを出力するように動作するが、動作タイミングの問題で、瞬間的にインバータ回路INV1、INV2の入力が共にハイレベルになる場合がある。この場合は、直ぐに一方の入力がローレベルになるので、インバータ回路INV1、INV2の発振動作の障害にはならない。しかし、NAND回路N1がローレベルの信号を出力し、インバータ回路INV2の入力をローレベルに強制的に反転させてしまい、発振動作に悪影響を与える可能性がある。そこで、検出手段22からのローレベルの入力が所定時間継続した際に、インバータ回路INV2の入力をローレベルに反転させることで、インバータ回路INV1、INV2の入力が瞬間的に共にハイレベルになった際には、インバータ回路INV2の入力を反転させず、インバータ回路INV1、INV2の発振動作が実際に停止したときのみ、インバータ回路INV2の入力を反転することができる。この動作は、後述の時定数回路26によって行われる。
【0038】
レベル制御手段23は、時定数回路26、比較回路27、微分回路28およびレベル反転手段(スイッチ素子)29を有する。
【0039】
時定数回路26は、NAND回路N1からの信号を所定の時間だけ遅延させて、後段の比較回路27に出力する。具体的には、時定数回路26は、図3のとおり、抵抗R3、コンデンサC3およびダイオードD3を有する。時定数回路26は、NAND回路N1からの信号が入力されて、R3とC3とで決定される時定数に基づいて、コンデンサC3を充電することにより、出力電圧を増減させる。
【0040】
比較回路27は、インバータ回路INV7を含み、時定数回路26の出力(コンデンサC3の充電電圧)が入力され、時定数回路26の出力と所定の閾値(インバータ回路INV7の閾値)とを比較する。インバータ回路INV7は、時定数回路26の出力が閾値以上である場合にローレベルの信号を出力し、時定数回路26の出力が閾値未満になるとハイレベルの信号を出力する。その結果、NAND回路N1からローレベルの信号が時定数回路26に所定の時間入力され続けると、時定数回路26の出力がインバータ回路INV7の閾値未満になり、インバータ回路INV7はハイレベルの信号を出力する。このハイレベルの信号は、後述のスイッチ素子Q3をオン状態にするために使用される。
【0041】
微分回路28は、抵抗R4、R5、コンデンサC4を有し、インバータ回路INV7からのハイレベルの信号が入力されると、スイッチ素子Q3をオン状態にするハイレベルの信号をスイッチ素子Q3に所定時間のみ与える。つまり、微分回路28は、スイッチ素子Q3に、スイッチ素子をオン状態にするハイレベルの信号を与えたあと、R3、R4、C4で決定される時定数に基づいて、出力が減少して、スイッチ素子Q3をオン状態にするハイレベルの信号の出力を停止して、スイッチ素子Q3をオフ状態にする。レベル制御手段23がインバータ回路INV2の入力をローレベルに反転させると、NAND回路N1からハイレベルの信号が出力されるので、インバータ回路INV2の入力へのローレベルの信号の供給は停止されるが、時定数回路26の作用によりスイッチ素子Q3のオフが遅れる場合にはインバータ回路INV1、INV2の発振動作を阻害する。そこで、微分回路28を設けることにより、時定数回路26の出力がインバータ回路INV7の閾値以上になることが遅れた場合に、微分回路28によりスイッチ素子Q3をオフ状態にして、インバータ回路INV2の入力へのローレベルの信号の供給を停止できる。
【0042】
レベル反転手段29は、インバータ回路INV2の入力をローレベルに反転させる。レベル反転手段29は、本例では、スイッチ素子(例えば、バイポーラトランジスタ)Q3を有する。スイッチ素子Q3のエミッタはローレベルの電源VCに、コレクタはインバータ回路INV2の入力に、ベースは微分回路28の出力に接続されている。従って、スイッチ素子Q3は微分回路28からハイレベルの信号がベースに与えられるとオン状態になるので、インバータ回路INV2の入力が、電源VCに接続された状態になり、ハイレベルからローレベルに反転する。一方、スイッチ素子Q3はベースにローレベルの信号が与えられるとオフ状態になるので、インバータ回路INV2の入力へのローレベルの信号の供給が停止される。スイッチ素子Q3がオフ状態になると、インバータ回路INV2の入力はレベル制御手段23に対して開放されるので、レベル制御手段23からの信号によってインバータ回路INV1、INV2の発振動作に悪影響を与えることを防止できる。
【0043】
信号変換手段24は、インバータ回路INV3、INV4から出力されるパルスが共にハイレベルである場合に、これらを共にローレベルに変換して出力する。つまり、信号変換手段24は、インバータ回路INV3、INV4から出力されるパルスが図1のスイッチ素子15、16を共にオン状態にする信号である場合に、スイッチング素子15、16を共にオフ状態にする信号に変換して、出力する。従って、スイッチ素子15、16は、同時にオン状態になることが防止されるので、貫通電流によりスイッチ素子15、16が破壊することを防止できる。信号変換手段24は、NAND回路N2、N3、インバータ回路INV5、INV6、ダイオードD4、抵抗R6を有する。NAND回路N2、N3の一方の入力はNAND回路N1の出力がダイオードD4を介して接続され、NAND回路N2の他方の入力はインバータ回路INV3の出力が接続され、NAND回路N3の他方の入力はインバータ回路INV4の出力が接続されている。従って、インバータ回路INV3、INV4の出力が共にハイレベルの場合には、NAND回路N1の出力がローレベルになるので、NAND回路N2、N3は共にハイレベルを出力し、インバータ回路INV5、INV6は共にローレベルを出力する。一方、インバータ回路INV3、INV4出力の一方がローレベルで、他方がハイレベルである場合は、NAND回路N1の出力はハイレベルであるので、インバータ回路INV5、INV6(パルス幅変調回路10)の出力は、インバータ回路INV3、INV4の出力と同じになり、PWM信号を出力する。
【0044】
発振停止報知手段25は、レベル制御手段23がインバータ回路INV2の入力にローレベルの信号を与えても、インバータ回路INV1、INV2が発振を開始せずに、検出手段22が検出信号を出力し続ける場合に、その旨を示す報知信号を外部(マイコン等)に出力する。この報知信号は、例えば、インジケータに表示することにより操作者にパルス幅変調回路20の発振動作が停止していることを知らせたり、パルス幅変調回路20に供給する電源を自動的にオフ状態にしたり、あるいはマイコンをリセットして再起動することに用いられる。発振停止報知手段25は、図3に示すとおり、時定数回路(抵抗R8、コンデンサC5、ダイオードD6)、インバータ回路INV8、抵抗R7およびフォトカプラPCを有する。時定数回路は、R8およびC5によって決定される時定数が時定数回路26の時定数よりも大きい。そのため、スイッチ素子Q3がオン状態になっても、未だNAND回路N1からローレベルの信号が出力され続けている際に、時定数回路の出力電圧がインバータ回路INV8の閾値未満になり、インバータ回路INV8の出力がハイレベルになる。その結果、フォトカプラPCのフォトダイオードに電流が流れて、フォトトランジスタがオン状態になり、報知信号が出力される。
【0045】
以上の構成を有するパルス幅変調回路20について、図4を参照してその動作を説明する。図4の各波形は、図3の各点の波形に対応している。
【0046】
まず、パルス幅変調回路20の起動時に、電源VBの立ち上がりが電源VAの立ち上がりよりも遅く、インバータ回路INV1、INV2の入力が共にハイレベルになるときの動作を説明する。
【0047】
電源オン時から時刻t1までは、電源VBがインバータ回路INV1、INV2(CMOS−IC)の動作開始電圧に達していない。そのため、インバータ回路INV1、INV2の入力は電源電圧VB(ハイレベル)に略等しい。インバータ回路INV1は電源電圧VBがMOSFET92の閾値電圧を越えた時点から徐々に電流が流れ始め、コンデンサC2の充電が開始される。この時、インバータ回路INV1の出力はトランジスタQ1のコレクタ電流によるコンデンサC2の充電速度よりもゆっくりとローレベルに移行するので、インバータ回路INV2の入力をローレベルに反転させることができず、そのままコンデンサC2の満充電に至ることになる。インバータ回路INV2およびコンデンサC1についても同様であり、インバータ回路INV1、INV2の入力が共にハイレベル、出力が共にローレベルという安定状態に入り、発振動作に移行しなくなる。つまり、時刻t1で電源電圧VBがインバータ回路INV1、INV2の動作開始電圧以上になるが、インバータ回路INV1、INV2の入力(A点、B点)は共にハイレベルのままである。その結果、インバータ回路INV1、INV2は発振せず、インバータ回路INV1、INV2の出力は共にローレベルになり、インバータ回路INV3、INV4の出力(C点、D点)は共にハイレベルになる。NAND回路N1は、入力が共にハイレベルになるので、出力が減少して、ローレベルの信号(検出信号)を時定数回路26に出力する(E点)。時定数回路26は、NAND回路N1からローレベルの信号を入力し、E点に比べて所定時間遅れてコンデンサC3の充電電圧が減少する(F点)。
【0048】
コンデンサC3の充電電圧(F点)がインバータ回路INV7の閾値未満になると、インバータ回路INV7の出力はハイレベルに反転し、微分回路28の出力(G点)はt2〜t3にかけてハイレベルに反転する。その結果、t3において、微分回路28(G点)から、スイッチ素子Q3のベースにハイレベルの信号が与えられ、スイッチ素子Q3がオン状態になる。スイッチ素子Q3がオン状態になると、インバータ回路INV2の入力(B点)が電源VCに接続された状態になり、t3〜t4にかけて、ハイレベル(電源VB)からローレベル(電源VC)に反転する。
【0049】
これにより、NAND回路N1の入力はC点がハイレベル、D点がローレベルとなり、NAND回路N1の出力は上昇しハイレベルの信号に反転する(E点)。時定数回路26の出力(F点)は、E点よりも少し遅れて上昇する。時刻t4において、時定数回路26の出力がインバータ回路INV7の閾値以上になると、インバータ回路INV7の出力はローレベルに反転し、微分回路28の出力(G点)はt4からt5にかけてハイレベルからローレベルに反転し、スイッチ素子Q3をオフ状態にする。なお、時定数回路26の出力がインバータ回路INV7の閾値以上になるまでの時間が遅い場合にも、微分回路28を備えることによって、スイッチ素子Q3へのハイレベルの信号の供給を停止し、確実にスイッチ素子Q3をオフ状態にすることができる。
【0050】
以上の動作によって、インバータ回路INV1の入力(A点)はハイレベルに、インバータ回路INV2の入力(B点)はローレベルになるので、t5以降にインバータ回路INV1、INV2が発振動作を開始することになる。但し、t6までの間は、リセット信号Resetがローレベルであるので、パルス幅変調回路20は、PWM信号を出力せず、t6以降にリセット信号Resetがハイレベルになって、PWM信号を出力開始する(OUT1、OUT2)。
【0051】
次に、PWM信号発生手段21のPWM信号発生動作について時刻t7〜t9を参照して説明する。t7において、インバータ回路INV1の入力(A点)がハイレベル、インバータ回路INV2の入力(B点)がローレベルになるので、インバータ回路INV1の出力がローレベル、インバータ回路INV2の出力がハイレベルになる。つまり、インバータ回路INV3の出力(C点)はハイレベル、インバータ回路INV4の出力(D点)はローレベルになる。この時、第2の電流I2はダイオードD1を通して電源VBに流れる。一方、第1の電流I1はコンデンサC2へと流れ、コンデンサC2を充電する。コンデンサC2が充電されることにより、B点の電位は徐々に上昇していく(t7〜t8)。t8において、インバータ回路INV2の入力(B点)がインバータ回路INV2の閾値以上になると、インバータ回路INV2の出力がローレベルに反転する。インバータ回路INV2の出力がローレベルになると、コンデンサC1を介してインバータ回路INV2の出力に接続されているインバータ回路INV1の入力(A点)がローレベルになり、インバータ回路INV1の出力がハイレベルに反転する。インバータ回路INV1の出力がハイレベルに反転すると、コンデンサC2が放電され、かつ、インバータ回路INV2の入力がハイレベルになる。この後、第2の電流I2によってコンデンサC1が充電されることによって、上記と逆の動作が行われる(t8〜t9)。なお、コンデンサC2の充電によりインバータ回路INV2の入力がローレベルから閾値まで達する時間は第1の電流Iの大きさによって制御される。この動作を繰り返すことにより、インバータ回路INV1、INV2からはハイレベルまたはローレベルのパルスを交互に出力する。
【0052】
以上のように、本実施形態によると、インバータ回路INV1、INV2の入力が共にハイレベルになると、トランジスタQ3がオン状態になり、インバータ回路INV2の入力をローレベルに反転させて、発振動作を開始することができる。
【0053】
次に、本発明の別の好ましい実施形態について図5〜図7を用いて説明するが、前の実施形態と同一部分については説明を省略する。なお、図5〜図7は簡単のため、パルス幅変調回路の要部のみを記載する。図3の回路構成では、トランジスタQ3をインバータ回路INV2の入力に接続しているので、トランジスタQ3のコレクタ−ベース間に存在する容量成分(寄生容量)Cobによって、インバータ回路INV1、INV2の入力に接続されている容量(パルス幅を決定する電流I1、I2によって受電される容量)が不均等になる。その結果、同一電流を流した場合のコンデンサC1、C2の充電時間が異なってしまい、パルス幅変調回路の変調度に誤差が生じる可能性がある。図5〜図7の回路構成では、さらにその問題を解決したものである。
【0054】
図5のパルス幅変調回路51は、トランジスタQ3がインバータ回路INV2の入力に接続され、かつ、インバータ回路INV1の入力にトランジスタQ3のコレクタ−ベース間容量(寄生容量)と略同じ容量を有するコンデンサCcが接続されている。コンデンサCcをインバータ回路INV1の入力に接続することによって、インバータ回路INV1、INV2の入力に接続されている容量は等しくなる。従って、パルス幅変調回路51の変調度に誤差が生じることを防止できる。
【0055】
図6のパルス幅変調回路61は、トランジスタQ3がインバータ回路INV1の入力に接続され、かつ、トランジスタQ3と同等のトランジスタQ4がインバータ回路INV2の入力に接続されている。さらに、トランジスタQ4のベース−エミッタ間にインピーダンス素子(抵抗R4、R5、コンデンサC4、これらの各値はトランジスタQ3に接続されている抵抗R4、R5、コンデンサC4の各値と等しい)が接続されている。トランジスタQ4をインバータ回路INV2の入力に接続することによって、インバータ回路INV1、INV2の入力に接続されている容量が等しくなるので、パルス幅変調回路61の変調度に誤差が生じることを防止できる。その上、インバータ回路INV1、INV2の発振動作中は、インバータ回路INV7の出力はローレベルであるので、トランジスタQ4のベース−エミッタ間のインピーダンスが、トランジスタQ3のベース−エミッタ間のインピーダンスと等しくなる。そのため、パルス幅変調回路61の変調度に誤差が生じることをさらに良好に防止できる。
【0056】
図7のパルス幅変調回路71は、第1および第2の出力素子がNAND回路N4、N5に変更されている。レベル制御手段3は時定数回路26のみを有し、比較回路27、微分回路28およびレベル反転手段29を有していない。レベル反転手段29であるトランジスタQ3を一方の出力素子の入力に接続しなくてもよいので、パルス幅変調回路71の変調度に誤差が生じることを防止できる。
【0057】
NAND回路N4の第1入力in1はコンデンサC1に、NAND回路N5の第1入力in3はコンデンサC2にそれぞれ接続されている。NAND回路N4の第2入力in2は抵抗R11を介して電源VBに接続され、常にハイレベルの信号が入力されている。その結果、NAND回路N4は、図3のインバータ回路INV1と同じ機能を有する。一方、NAND回路N5の第2入力in4は、抵抗R12を介して電源VBに接続され、かつ、時定数回路26の出力にバッファアンプ72を介して接続されている。その結果、NAND回路N4の第1入力in1、NAND回路N5の第1入力in3が、一方にハイレベルが入力され、他方にローレベルが入力されている状態では、NAND回路N1はハイレベルの信号を出力するので、NAND回路N5の第2入力in4にハイレベルの信号が入力されて、図3のインバータ回路INV2と同じ動作を実行する。
【0058】
ここで、NAND回路N4の第1入力in1、NAND回路N5の第1入力in3が共にハイレベルになったとき、NAND回路N4、N5は共にローレベルを出力し、かつ、NAND回路N4、N5は発振動作を停止する。そして、インバータ回路INV3、INV4は共にハイレベルを出力するので、NAND回路N3は検出信号であるローレベルの信号を出力する。時定数回路26は、NAND回路N3からのローレベルの信号を受けて、コンデンサC3の充電電圧が徐々に減少する。コンデンサC3の充電電圧はNAND回路N5の第2入力in4に入力されているので、充電電圧がNAND回路N5の閾値未満になったときに、NAND回路N5の第2入力in4にはローレベルの信号が入力されたことになり、NAND回路N5の出力はローレベルからハイレベルに反転する。これにより、NAND回路N1の出力はハイレベルに反転し、所定時間後に、NAND回路N5の第2入力in4にはハイレベルの信号が入力されるので、NAND回路N5の出力はハイレベルからローレベルに反転する。これに伴い、NAND回路N4の第1入力in1がハイレベルからローレベルに反転し、コンデンサC1の充電が開始する。その結果、NAND回路N4、N5は発振動作を開始することができる。
【0059】
以上のように、図7の回路構成においては、第1または第2の出力素子の入力にトランジスタQ3を接続することなく、出力素子が発振動作を停止したことを検出して、発振動作を開始させることができる。トランジスタQ3を使用しなくても良いのは、出力素子としてNAND回路N4、N5を使用したからである。つまり、発振動作時にNAND回路N4、N5の第2の入力はハイレベルが入力される状態であるので、レベル制御手段23を切り離す必要がないからである。さらに、レベル制御手段23の時定数回路26がNAND回路N5の入力in4に接続されているが、この入力in4は入力信号とは無関係であるので、コンデンサC1、C2には接続されておらず、パルス幅を決定する容量に影響を与えないからである。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。例えば、第1および第2の出力素子は、トランジスタ等のスイッチ素子でもよい。さらに、レベル反転手段29は、インバータ回路であってもよい。さらに、検出手段22はAND回路でもよく、この場合、検出信号はハイレベルの信号であるので、インバータ回路INV7が不要になる。さらに、第1の出力素子および第2の出力素子の入力が共にローレベルのときに発振が停止する場合に、第1の出力素子または第2の出力素子の入力をハイレベルに反転させるようにしてもよい。さらに、微分回路28はなくても実現可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、例えばオーディオ用のスイッチングアンプに用いられるパルス幅変調回路として特に好適に採用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるスイッチングアンプを示すブロック図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態によるパルス幅変調回路を示すブロック図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態によるパルス幅変調回路の具体構成を示す回路図である。
【図4】本発明の好ましい実施形態によるパルス幅変調回路の動作を説明するタイムチャートである。。
【図5】本発明の別の好ましい実施形態によるパルス幅変調回路の要部を示す回路図である。
【図6】本発明の別の好ましい実施形態によるパルス幅変調回路の要部を示す回路図である。
【図7】本発明の別の好ましい実施形態によるパルス幅変調回路の要部を示す回路図である。
【図8】従来のパルス幅変調回路を示す回路図である。
【図9】インバータ回路INV1の内部構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0063】
20 パルス幅変調回路
22 検出手段
23 レベル制御手段
25 発振停止報知手段
26 時定数回路
28 微分回路
31 パルス発生手段
32 変調手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電流と第2の電流とによりコンデンサが充電されて、第1の出力素子および第2の出力素子からパルスを出力するパルス発生手段と、
入力信号に基づいて、該第1の電流と該第2の電流との分配比を制御して、該第1の電流および該第2の電流による充電時間を制御することにより、該パルスのパルス幅を制御する変調手段と、
該第1の出力素子と該第2の出力素子との入力が共にハイレベルまたは共にローレベルであることを検出し、検出信号を出力する検出手段と、
該検出手段が、該検出信号を出力した場合に、該第1の出力素子または該第2の出力素子の入力レベルを他方のレベルに反転させるレベル制御手段とを備える、パルス幅変調回路。
【請求項2】
前記レベル制御手段が、前記検出手段からの検出信号が所定時間継続して入力された際に、該第1の出力素子または該第2の出力素子の入力レベルを反転させる、請求項1に記載のパルス幅変調回路。
【請求項3】
前記レベル制御手段が、
前記第1の出力素子の入力または前記第2の出力素子の入力と、前記他方のレベルを有する電源との間に接続され、オン状態になることにより該第1の出力素子または該第2の出力素子の入力レベルを該他方のレベルに反転させるスイッチ素子と、
前記検出手段からの検出信号が入力され、所定の時定数に基づいて出力を増減させ、該出力に基づいて該スイッチ素子をオン状態にする時定数回路とを有する、請求項2に記載のパルス幅変調回路。
【請求項4】
前記レベル制御手段が、前記スイッチ素子と前記時定数回路との間に設けられ、該スイッチ素子をオン状態にする信号を該スイッチ素子に与えてから所定時間経過後に、該スイッチ素子をオン状態にする信号の出力を停止し、該スイッチ素子をオフ状態にする微分回路をさらに有する、請求項3に記載のパルス幅変調回路。
【請求項5】
前記スイッチ素子に含まれる容量成分と略同一の容量成分を有する素子が、前記第1の出力素子または前記第2の出力素子のうち、該スイッチ素子が接続されていない側の出力素子の入力に接続されている、請求項3または4に記載のパルス幅変調回路。
【請求項6】
前記第1の出力素子が第1のNAND回路であり、
前記第2の出力素子が第2のNAND回路であり、
該第1のNAND回路の第1入力が、前記第1の電流により充電される第1のコンデンサに接続され、
該第2のNAND回路の第1入力が、前記第2の電流により充電される第2のコンデンサに接続され、
一方のNAND回路の第2入力が、前記ハイレベルの電位に接続され、
他方のNAND回路の第2入力が、該ハイレベルの電位に接続され、かつ、前記レベル制御手段の出力に接続されている、請求項1または2に記載のパルス幅変調回路。
【請求項7】
前記レベル制御手段が、前記検出手段からの検出信号が入力され、所定の時定数に基づいて出力を増減させる時定数回路を有し、該時定数回路の出力が前記第2のNAND回路の第2入力に接続されている、請求項6に記載のパルス幅変調回路。
【請求項8】
前記レベル制御手段が前記第1の出力素子または前記第2の出力素子の入力レベルを反転させた後、前記検出手段が検出信号を出力し続けた場合に、該第1の出力素子および該第2の出力素子の入力が同一レベルである旨を示す報知信号を外部に出力する報知手段をさらに備える、請求項1〜7のいずれかに記載のパルス幅変調回路。
【請求項9】
前記レベル制御手段が、前記スイッチ素子と前記時定数回路との間に設けられ、該時定数回路の出力が所定の閾値未満になった際に、該スイッチ素子をオン状態にするハイレベルの信号を出力する比較回路をさらに有する、請求項3〜5のいずれかに記載のパルス幅変調回路。
【請求項10】
前記第1の出力素子が第1のインバータ回路であり、
前記第2の出力素子が第2のインバータ回路であり、
前記検出手段が、該第1のインバータ回路および該第2のインバータ回路の入力が共にハイレベルの時に、ローレベルの信号を出力するNAND回路であり、
前記スイッチ素子がコレクタが第1のインバータ回路の入力に接続され、エミッタがローレベルの電位に接続され、ベースが前記微分回路の出力に接続されたトランジスタである、請求項9に記載のパルス幅変調回路。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のパルス幅変調回路と、
該パルス幅変調回路からの第1のPWM信号に応答してオン状態またはオフ状態になる第2のスイッチ素子と、該パルス幅変調回路からの第2のPWM信号に応答してオン状態またはオフ状態になる第3のスイッチ素子とを有するスイッチング出力回路とを備える、スイッチングアンプ。
【請求項12】
前記検出手段が、該第1のPWM信号が該第2のスイッチ素子をオン状態にする信号であり、かつ、該第2のPWM信号が該第3のスイッチ素子をオン状態にする信号であることを検出し、前記検出信号を出力し、
該検出手段が該検出信号を出力した場合に、該第1のPWM信号を該第2のスイッチ素子をオフ状態にする信号に変換し、かつ、該第2のPWM信号を該第3のスイッチ素子をオフ状態にする信号に変換する信号変換手段をさらに備える、請求項11に記載のスイッチングアンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−352269(P2006−352269A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172789(P2005−172789)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】