説明

パワーオンリセット回路

【課題】充分な長さのリセット期間を安定して得ることができるパワーオンリセット回路を提供する。
【解決手段】電源電圧VDDの値が第1閾値以上になると、第1スタートアップ回路20によりバンドギャップリファレンス回路10の安定動作が開始され、バンドギャップリファレンス回路10から第1電圧値Vが出力される。電源電圧の値が第1閾値より大きい第2閾値以上になると、第2スタートアップ回路40により電圧分割回路30のPMOSトランジスタMPがオン状態となり、電圧分割回路30から出力される第2電圧値Vは、抵抗器R31,R32の抵抗比に応じて電源電圧の値が分割された値となる。電圧比較回路50から、第2電圧値Vが第1電圧値Vより小さいときにリセットレベルの電圧値が出力され、第2電圧値Vが第1電圧値V以上になると電源電圧レベルの電圧値が出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーオンリセット回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パワーオンリセット回路は、様々な電子機器において電源電圧の供給開始後の安定動作を確保するために用いられる。すなわち、電子機器に供給される電源電圧の値は、供給開始時の接地電位レベルから次第に上昇していき、やがて一定のレベルに達する。このような次第に上昇していく電源電圧値が直接に電子機器内の各回路に与えると、電子機器は正常動作し得ない場合がある。そこで、パワーオンリセット回路は、電源電圧値の上昇の過程において、電源電圧値が閾値未満であるときにはリセットレベルの電圧値を電子機器内の各回路に与え、電源電圧値が該閾値以上になれば該電源電圧レベルの電圧値を電子機器内の各回路に与えることにより、電子機器の安定動作の確保を図る。
【0003】
このようなパワーオンリセット回路は、特許文献1,2に開示されているように、一般に、バンドギャップリファレンス回路、電圧分割回路および電圧比較回路を備える。バンドギャップリファレンス回路は、供給される電源電圧の値の変動や温度変動があっても、値の変動が小さい電圧値(以下「第1電圧値」という。)を出力することができる。
【0004】
一方、電圧分割回路は、電源電圧が供給される電源電圧端子と接地端子との間に直列的に接続された第1抵抗器および第2抵抗器を備え、第1抵抗器および第2抵抗器それぞれの抵抗値の比に応じて電源電圧値を分圧した電圧値を、第1抵抗器と第2抵抗器との接続点から出力する。すなわち、電圧分割回路は、電源電圧値に比例した電圧値(以下「第2電圧値」という。)を出力する。
【0005】
そして、電圧比較回路は、バンドギャップリファレンス回路から出力された第1電圧値と、電圧分割回路から出力された第2電圧値とを入力し、第2電圧値が第1電圧値より小さいときにリセットレベルの電圧値を出力し、第2電圧値が第1電圧値以上になれば電源電圧レベルの電圧値を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,867,047号明細書
【特許文献2】米国特許第6,847,240号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パワーオンリセット回路は、電源電圧供給開始後の電源電圧値の上昇の過程において、当初は第2電圧値が第1電圧値より大きく、その後の一定期間に亘って第2電圧値が第1電圧値より小さくなり、更にその後に第2電圧値が第1電圧値以上になる。パワーオンリセット回路は、第2電圧値が第1電圧値より小さい期間(以下「リセット期間」という。)において、リセットレベルの電圧値を出力して、電子機器内の各回路をリセットし、その後の電子機器の安定動作の確保を図る。
【0008】
しかしながら、特許文献1,2に開示されたものを含め従来のパワーオンリセット回路では、上記のリセット期間の長さが不安定である。充分な長さのリセット期間が得られないと、電子機器の安定動作が得られない場合がある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、充分な長さのリセット期間を安定して得ることができるパワーオンリセット回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るパワーオンリセット回路は、(1) 電源電圧が供給され所定の第1電圧値を出力するバンドギャップリファレンス回路と、(2) 電源電圧の値が第1閾値以上になるとバンドギャップリファレンス回路の安定動作を開始させる第1スタートアップ回路と、(3) 電源電圧が供給される電源電圧端子と出力端子との間に直列的に設けられたスイッチおよび第1抵抗器と、出力端子と接地端子との間に設けられた第2抵抗器とを有し、出力端子から第2電圧値を出力する電圧分割回路と、(4) 電源電圧の値が第1閾値より大きい第2閾値以上になると電圧分割回路のスイッチを閉じさせる第2スタートアップ回路と、(5) バンドギャップリファレンス回路から出力された第1電圧値と、電圧分割回路から出力された第2電圧値とを入力し、第2電圧値が第1電圧値より小さいときにリセットレベルの電圧値を出力し、第2電圧値が第1電圧値以上になると電源電圧レベルの電圧値を出力する電圧比較回路と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るパワーオンリセット回路では、電源電圧の値が第1閾値以上になると、第1スタートアップ回路によりバンドギャップリファレンス回路の安定動作が開始され、バンドギャップリファレンス回路から所定の第1電圧値が出力される。一方、電源電圧の値が第1閾値より大きい第2閾値以上になると、第2スタートアップ回路により電圧分割回路のスイッチが閉じられ、電圧分割回路から出力される第2電圧値は、第1抵抗器および第2抵抗器それぞれの抵抗値の比に応じて電源電圧の値が分割された値となる。バンドギャップリファレンス回路から出力された第1電圧値と、電圧分割回路から出力された第2電圧値とは、電圧比較回路に入力される。そして、電圧比較回路から、第2電圧値が第1電圧値より小さいときにリセットレベルの電圧値が出力され、第2電圧値が第1電圧値以上になると電源電圧レベルの電圧値が出力される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、充分な長さのリセット期間を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係るパワーオンリセット回路1の回路図である。
【図2】本実施形態に係るパワーオンリセット回路1における各電圧値の時間的変化の様子を示す図である。
【図3】本実施形態に係るパワーオンリセット回路1におけるPMOSトランジスタMP22の閾値電圧Vthp,NMOSトランジスタMN22の閾値電圧Vthnおよび 電圧分割回路30が起動する第2閾値Vth2それぞれのプロセス条件依存性を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るパワーオンリセット回路1の回路図である。この図に示されるパワーオンリセット回路1は、バンドギャップリファレンス回路10、第1スタートアップ回路20、電圧分割回路30、第2スタートアップ回路40および電圧比較回路50を備える。これらの回路は、共通の電源電圧VDDが供給される。
【0016】
バンドギャップリファレンス回路10は、電源電圧VDDが供給され所定の第1電圧値Vを出力するものであり、PMOSトランジスタMP11〜MP13、抵抗器R11〜R17、ダイオードD10〜D1NおよびアンプAを備える。
【0017】
PMOSトランジスタMP11〜MP13それぞれのソース端子は、電源電圧VDDが供給される電源電圧端子に接続されている。PMOSトランジスタMP11〜MP13それぞれのゲート端子は、アンプAの出力端子に接続されている。
【0018】
PMOSトランジスタMP11のドレイン端子は、抵抗器R11を介してアンプAの反転入力端子に接続され、直列的に接続された抵抗器R11および抵抗器R12を介して接地端子に接続され、また、ダイオードD10を介して接地端子に接続されている。
【0019】
PMOSトランジスタMP12のドレイン端子は、抵抗器R13を介してアンプAの非反転入力端子に接続され、直列的に接続された抵抗器R13および抵抗器R14を介して接地端子に接続され、また、抵抗器R15の一端に接続されている。抵抗器R15の他端は、並列的に接続されたN個(Nは2以上の整数)のダイオードD11〜D1Nを介して接地端子に接続されている。
【0020】
抵抗器R11および抵抗器R13それぞれの抵抗値は互いに等しい。抵抗器R12および抵抗器R14それぞれの抵抗値は互いに等しい。ダイオードD10〜D1Nそれぞれの順方向電圧は電流の大きさによって異なる。
【0021】
PMOSトランジスタMP13のドレイン端子は、直列的に接続された抵抗器R16および抵抗器R17を介して接地端子に接続されている。バンドギャップリファレンス回路10は、PMOSトランジスタMP13のドレイン端子の電圧値を第1電圧値Vとして出力する。
【0022】
第1スタートアップ回路20は、電源電圧VDDの値が第1閾値Vth1以上になるとバンドギャップリファレンス回路10の安定動作を開始させるものであり。PMOSトランジスタMP21,MP22、NMOSトランジスタMN21,MN22およびインバータINV21,INV22を備える。
【0023】
PMOSトランジスタMP21,MP22それぞれのソース端子は、電源電圧VDDが供給される電源電圧端子に接続されている。PMOSトランジスタMP21のドレイン端子は、バンドギャップリファレンス回路10アンプAの反転入力端子に接続されている。PMOSトランジスタMP22のドレイン端子は、NMOSトランジスタMN22のドレイン端子と接続されている。NMOSトランジスタMN21のドレイン端子は、バンドギャップリファレンス回路10アンプAの非反転入力端子に接続されている。NMOSトランジスタMN21,MP22それぞれのソース端子は、接地端子に接続されている。
【0024】
PMOSトランジスタMP22のドレイン端子は、インバータINV21を介してMMOSトランジスタMN21のゲート端子に接続され、また、直列的に接続されたインバータINV21,INV22を介してPMOSトランジスタMP21のゲート端子に接続されている。PMOSトランジスタMP22のゲート端子は、バンドギャップリファレンス回路10のアンプAの出力端子に接続されている。NMOSトランジスタMN22のゲート端子は、電源電圧端子に接続されている。
【0025】
NMOSトランジスタMN22のオン抵抗値は、PMOSトランジスタMP22のオン抵抗値より大きい。NMOSトランジスタMN22は、オン抵抗値を大きくするために、ゲート幅Wに対してゲート長Lが長くなっていて、例えばゲート長Lがゲート幅Wの100倍である。
【0026】
電圧分割回路30は、電源電圧VDDが供給される電源電圧端子と出力端子との間に直列的に設けられたPMOSトランジスタMPおよび第1抵抗器R31と、出力端子と接地端子との間に設けられた第2抵抗器R32とを有し、出力端子から第2電圧値Vを出力する。
【0027】
PMOSトランジスタMPのソース端子は、電源電圧VDDが供給される電源電圧端子に接続されている、PMOSトランジスタMPのドレイン端子は、抵抗器R31の一端に接続されている。抵抗器R31の他端は、抵抗器R32を介して接地端子と接続されている。抵抗器R31と抵抗器R32との接続点が電圧分割回路30の出力端子となる。
【0028】
PMOSトランジスタMPはスイッチとして作用する。すなわち、PMOSトランジスタMPがオフ状態であるときには、スイッチが開いて、出力端子から出力される第2電圧値Vは接地レベルとなる。PMOSトランジスタMPがオン状態であるときには、スイッチが閉じて、出力端子から出力される第2電圧値Vは、抵抗器R31および抵抗器R32それぞれの抵抗値の比に応じて電源電圧VDDの値が分割された値となる。
【0029】
第2スタートアップ回路40は、電源電圧VDDの値が第1閾値Vth1より大きい第2閾値Vth2以上になると電圧分割回路30のスイッチを閉じさせるものであり、PMOSトランジスタMP、抵抗器R41〜R43およびインバータINVを備える。
【0030】
PMOSトランジスタMPのソース端子は、電源電圧VDDが供給される電源電圧端子に接続されている。PMOSトランジスタMPのゲート端子は、抵抗器R41を介して電源電圧端子に接続され、また、抵抗器R42を介して接地端子に接続されている。PMOSトランジスタMPのドレイン端子は、抵抗器R43を介して接地端子に接続され、また、インバータINVを介して電圧分割回路30のPMOSトランジスタMPのゲート端子に接続されている。
【0031】
電圧比較回路50は、バンドギャップリファレンス回路10から出力された第1電圧値Vと、電圧分割回路30から出力された第2電圧値Vとを入力し、第2電圧値Vが第1電圧値Vより小さいときにリセットレベルの電圧値を出力し、第2電圧値Vが第1電圧値V以上になると電源電圧レベルの電圧値を出力するものであり、アンプAおよびインバータINVを備える。
【0032】
アンプAの非反転入力端子には、バンドギャップリファレンス回路10から出力された第1電圧値Vが入力される。アンプAの反転入力端子には、電圧分割回路30から出力された第2電圧値Vが入力される。電圧比較回路50は、アンプAの出力端子からインバータINVを経た信号をパワーオンリセット信号PORとして出力する。
【0033】
次に、本実施形態に係るパワーオンリセット回路1の動作について説明する。図2は、本実施形態に係るパワーオンリセット回路1における各電圧値の時間的変化の様子を示す図である。この図には、パワーオンリセット回路1に供給される電源電圧VDD、バンドギャップリファレンス回路10から出力される第1電圧値V、電圧分割回路30から出力される第2電圧値V、および、電圧比較回路50から出力されるパワーオンリセット信号POR、それぞれの時間的変化の様子が示されている。
【0034】
パワーオンリセット回路1に供給される電源電圧VDDの値は、電源電圧供給開始時には接地電位レベルであったものが、その後、次第に上昇していく。
【0035】
バンドギャップリファレンス回路10では、電源電圧供給開始の直後の或る期間、動作が安定せず、出力される電圧値Vは接地電位レベルと電源電圧レベルとの間の不定の値をとる。
【0036】
電源電圧VDDの値が第1閾値Vth1に達すると、第1スタートアップ回路20では、NMOSトランジスタMN22がオン状態となり、PMOSトランジスタMP22とNMOSトランジスタMN22との接続点Pは接地電位レベルとなる。第1閾値Vth1は、NMOSトランジスタMN22の閾値電圧Vthnと等しい。接続点Pが接地電位レベルとなると、インバータINV21の出力端子は電源電圧レベルとなり、インバータINV22の出力端子は接地電位レベルとなる。
【0037】
これにより、PMOSトランジスタMP21がオン状態となって、バンドギャップリファレンス回路10のアンプAの反転入力端子に電源電圧レベルが入力される。また、NMOSトランジスタMN21がオン状態となって、バンドギャップリファレンス回路10のアンプAの非反転入力端子に接地電位レベルが入力される。
【0038】
アンプAでは、反転入力端子に電源電圧レベルが入力され、非反転入力端子に接地電位レベルが入力されると、出力端子から接地電位レベルが出力される。アンプAの出力端子から出力された接地電位レベルは、PMOSトランジスタMP11〜MP13,MP22それぞれのゲート端子に印加される。これにより、PMOSトランジスタMP11〜MP13,MP22それぞれがオン状態となる。
【0039】
PMOSトランジスタMP11がオン状態となると、電源電圧端子からPMOSトランジスタMP11のソース端子およびドレイン端子を経て電流I11が流れる。その電流I11は2分岐されて、一方の電流が抵抗器R11および抵抗器R12を流れ、他方の電流がダイオードD10を流れる。
【0040】
PMOSトランジスタMP12がオン状態となると、電源電圧端子からPMOSトランジスタMP12のソース端子およびドレイン端子を経て電流I12が流れる。その電流I12は2分岐されて、一方の電流が抵抗器R13および抵抗器R14を流れ、他方の電流が抵抗器R15およびN個のダイオードD11〜D1Nを流れる。
【0041】
PMOSトランジスタMP13がオン状態となると、電源電圧端子からPMOSトランジスタMP13のソース端子およびドレイン端子を経て電流I13が流れる。その電流I13は、さらに抵抗器R16および抵抗器R17を流れる。
【0042】
また、第1スタートアップ回路20のPMOSトランジスタMP22がオン状態となる。NMOSトランジスタMN22のオン抵抗値がPMOSトランジスタMP22のオン抵抗値より大きいから、接続点Pは電源電圧レベルとなる。その結果、PMOSトランジスタMP21およびNMOSトランジスタMN21それぞれがオフ状態となる。
【0043】
以上のような第1スタートアップ回路20の作用により、バンドギャップリファレンス回路10は、安定動作を開始することができる。安定動作時におけるバンドギャップリファレンス回路10では、抵抗器R11と抵抗器R12との接続点P11と、抵抗器R13と抵抗器R14との接続点P12とが、互いに等しい電位となるように、アンプAからPMOSトランジスタMP11〜MP13それぞれのゲート端子に印加される電位が設定される。これにより、電源電圧VDDの値が変動しても、安定した第1電圧値Vが出力端子から出力され得る。また、抵抗器およびダイオードそれぞれの抵抗値の温度依存性が互いに相殺する関係を有しているので、温度が変動しても、安定した第1電圧値Vが出力端子から出力され得る。
【0044】
したがって、バンドギャップリファレンス回路10から出力される第1電圧値Vは、電源電圧VDDの値が第1閾値Vth1に達するまでは接地電位レベルと電源電圧レベルとの間の不定の値をとるが、電源電圧VDDの値が第1閾値Vth1に達すると安定した一定値となる。
【0045】
一方、電圧分割回路30および第2スタートアップ回路40では、電源電圧供給開始の直後の或る期間、抵抗器R41と抵抗器R42との接続点P41は接地電位レベルに近く、PMOSトランジスタMPがオフ状態である。また、PMOSトランジスタMPと抵抗器R43との接続点P42も接地電位レベルに近く、PMOSトランジスタMPもオフ状態である。したがって、抵抗器R31と抵抗器R32との接続点P31から出力される第2電圧値Vは接地電位レベルである。
【0046】
電源電圧VDDの値が第2閾値Vth2に達すると、第2スタートアップ回路40では、PMOSトランジスタMPのソース端子とゲート端子との電位差が閾値電圧Vthp以上となって、PMOSトランジスタMPがオン状態となる。第2閾値Vth2は「Vth2=Vthp(R41+R42)/R42」なる式で表される。PMOSトランジスタMPがオン状態となると、PMOSトランジスタMPのソース端子とゲート端子との電位差が閾値以上となって、PMOSトランジスタMPがオン状態となる。
【0047】
そして、PMOSトランジスタMPがオン状態となると、電圧分割回路30から出力される第2電圧値Vは、抵抗器R31および抵抗器R32それぞれの抵抗値の比に応じて電源電圧VDDの値が分割された値となり、電源電圧VDDに比例して次第に増加していく。PMOSトランジスタMPのオン抵抗値を無視すると、第2電圧値Vは「V=VDD・R32/(R31+R32)」なる式で表される。
【0048】
図2に示されるように、バンドギャップリファレンス回路10から出力される第1電圧値Vは、電源電圧VDDの値が第1閾値Vth1に達すると、安定した一定の値となる。一方、電圧分割回路30から出力される第2電圧値Vは、電源電圧VDDの値が第2閾値Vth2に達する迄は接地電位レベルであり、電源電圧VDDの値が第2閾値Vth2以上であると電源電圧VDDに比例した値となる。ただし、第2閾値Vth2は第1閾値Vth1より大きい。
【0049】
したがって、電源電圧VDDの供給開始から安定する迄の間の或る1つの時刻tを境として、第1電圧値Vと第2電圧値Vとの大小関係が逆転する。すなわち、時刻t前では、第2電圧値Vが第1電圧値Vより小さいので、電圧比較回路50から出力されるパワーオンリセット信号PORは接地電位レベルである。時刻t後では、第2電圧値Vが第1電圧値Vより大きいので、電圧比較回路50から出力されるパワーオンリセット信号PORは電源電圧レベルとなる。このように本実施形態に係るパワーオンリセット回路1は、充分な長さのリセット期間を安定して得ることができる。
【0050】
なお、各回路を構成する抵抗器、ダイオード、PMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタそれぞれは、上記のような所望の特性が得られるよう設計され製造されることが重要である。特にPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタについては、製造条件が変動すると特性が変動するが、製造条件が変動したとしても所望の特性が得られるよう設計マージンを有していることが重要である。
【0051】
図3は、本実施形態に係るパワーオンリセット回路1におけるPMOSトランジスタMP22の閾値電圧Vthp,NMOSトランジスタMN22の閾値電圧Vthnおよび 電圧分割回路30が起動する第2閾値Vth2それぞれのプロセス条件依存性を模式的に示すグラフである。製造条件が変動したとしても、バンドギャップリファレンス回路10より後に電圧分割回路30が起動するには、この図に示されるように、プロセス条件変動の全範囲において「Vth2>Vthn」となるよう、PMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタが設計されることが重要である。
【0052】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、パワーオンリセット回路1を構成する各回路は様々な構成のものが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…パワーオンリセット回路、10…バンドギャップリファレンス回路、20…第1スタートアップ回路、30…電圧分割回路、40…第2スタートアップ回路、50…電圧比較回路。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧が供給され所定の第1電圧値を出力するバンドギャップリファレンス回路と、
前記電源電圧の値が第1閾値以上になると前記バンドギャップリファレンス回路の安定動作を開始させる第1スタートアップ回路と、
前記電源電圧が供給される電源電圧端子と出力端子との間に直列的に設けられたスイッチおよび第1抵抗器と、前記出力端子と接地端子との間に設けられた第2抵抗器とを有し、前記出力端子から第2電圧値を出力する電圧分割回路と、
前記電源電圧の値が前記第1閾値より大きい第2閾値以上になると前記電圧分割回路の前記スイッチを閉じさせる第2スタートアップ回路と、
前記バンドギャップリファレンス回路から出力された第1電圧値と、前記電圧分割回路から出力された第2電圧値とを入力し、前記第2電圧値が前記第1電圧値より小さいときにリセットレベルの電圧値を出力し、前記第2電圧値が前記第1電圧値以上になると電源電圧レベルの電圧値を出力する電圧比較回路と、
を備えることを特徴とするパワーオンリセット回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−213046(P2010−213046A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57651(P2009−57651)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(399011195)ザインエレクトロニクス株式会社 (61)
【Fターム(参考)】