説明

パン粉改良剤及びパン粉改良方法、並びに、パン粉製造方法及びパン粉

【課題】サクサクした食感や口溶けに優れ、更に長期間冷凍保存した後においても、その食感を維持することが可能なパン粉及び該パン粉製造方法、並びに前記パン粉製造方法に用いられるパン粉改良剤及びパン粉改良方法の提供。
【解決手段】ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum:寄託番号 FERM P−21534)の培養液及び処理物の少なくともいずれかを含有するパン粉改良剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン粉改良剤及び該パン粉改良剤を用いたパン粉改良方法、並びに、パン粉製造方法及び該パン粉製造方法により製造されたパン粉に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、冷凍技術の進歩に伴って、コロッケ、トンカツ、フライ等の各種揚げ物を、パン粉を付した状態で長期間冷凍保存した冷凍食品が数多く流通しており、食する際に適宜揚げることが一般的になっている。しかしながら、これらの冷凍食品においては、サクサクした食感を維持することができないことや、パン粉の口溶けが劣化し、食感が損なわれるという問題があった。
【0003】
パン粉の品質を改良する方法としては、ラクトコッカス属若しくはストレプトコッカス属に属する乳酸菌の培養物又はその処理物をパン粉生地に添加する方法が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、この改良方法を用いて製造されたパン粉は、サクサクした食感や口溶けが十分でないという点で問題であった。
【0004】
したがって、サクサクした食感や口溶けに優れ、更に長期間冷凍保存した後においても、その食感を維持することが可能なパン粉及び該パン粉製造方法、並びに前記パン粉製造方法に用いられるパン粉改良剤及びパン粉改良方法の提供が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−129786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、サクサクした食感や口溶けに優れ、更に長期間冷凍保存した後においても、その食感を維持することが可能なパン粉及び該パン粉製造方法、並びに前記パン粉製造方法に用いられるパン粉改良剤及びパン粉改良方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum:寄託番号 FERM P−21534)の培養液及び処理物の少なくともいずれかを含有するパン粉改良剤によりパン粉の口溶けを向上させることができること、更に前記パン粉改良剤に、アミロースを少なくとも30質量%含有する澱粉を含有させることで、パン粉のサクサクした食感を向上させることができること、また、前記パン粉改良剤をパン粉生地に添加して製造したパン粉は、冷凍後にフライしても、サクサクした食感及び口溶けを維持でき、良好な食感を得ることができることを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum:寄託番号 FERM P−21534)の培養液及び処理物の少なくともいずれかを含有することを特徴とするパン粉改良剤である。
<2> アミロースを少なくとも30質量%含有する澱粉を更に含有する前記<1>に記載のパン粉改良剤である。
<3> ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum:寄託番号 FERM P−21534)の培養液及び処理物の少なくともいずれかと、アミロースを少なくとも30質量%含有する澱粉とを少なくとも混合し発酵させた発酵物を含有する前記<2>に記載のパン粉改良剤である。
<4> 前記<1>から<3>のいずれかに記載のパン粉改良剤をパン粉生地に添加することを特徴とするパン粉改良方法である。
<5> パン粉生地に前記<1>から<3>のいずれかに記載のパン粉改良剤を添加し該パン粉生地を発酵させる発酵工程と、前記発酵工程により発酵させたパン粉生地を焼成しパン粉製造用パンを得る焼成工程と、前記パン粉製造用パンを冷却し老化させる老化工程と、を含むことを特徴とするパン粉製造方法である。
<6> 前記<5>に記載のパン粉製造方法により製造されることを特徴とするパン粉である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、サクサクした食感や口溶けに優れ、更に長期間冷凍保存した後においても、その食感を維持することが可能なパン粉及び該パン粉製造方法、並びに前記パン粉製造方法に用いられるパン粉改良剤及びパン粉改良方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(パン粉改良剤及びパン粉改良方法)
本発明のパン粉改良剤は、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum:寄託番号 FERM P−21534)の培養液及び処理物の少なくともいずれかを含有し、好ましくは澱粉を更に含有し、必要に応じて、更にその他の成分を含有する。
本発明のパン粉改良方法は、本発明の前記パン粉改良剤をパン粉生地に添加することにより好適に行われる。
【0011】
<パン粉改良剤>
<<ラクトバチルス・プランタラム>>
前記ラクトバチルス・プランタラムは、グラム陽性無芽胞桿菌であり、嫌気性又は通性嫌気性であるラクトバチルス属(Lactobacillus)に属する。
一般にラクトバチルス・プランタラムのタイプ・ストレイン(type strain)では、シスチン栄養要求性がなく(シスチン無添加培地で生育可能)、フェニルアラニン栄養要求性があり(フェニルアラニン無添加培地で生育不能)、トリプトファン栄養要求性がある(トリプトファン無添加培地で生育不能)のに対し、本発明の前記パン粉改良剤に用いる前記ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum:寄託番号 FERM P−21534)は、シスチン栄養要求性があり(シスチン無添加培地で生育不能)、フェニルアラニン栄養要求性がなく(フェニルアラニン無添加培地で生育可能)、トリプトファン栄養要求性がない(トリプトファン無添加培地で生育可能)。
【0012】
前記ラクトバチルス・プランタラムは、本発明者らが以前に分離した乳酸菌であり、産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所に寄託されている。その寄託番号は、FERM P−21534(受領番号:AP−21534)である。
また、前記栄養要求性を指標にしてラクトバチルス属乳酸菌の中から分離することもできる。この場合、該分離は、例えば、前記シスチン栄養要求性の有無、前記フェニルアラニン栄養要求性の有無、前記トリプトファン栄養要求性の有無等により、スクリーニングしたラクトバチルス属乳酸菌を、酵母の自己消化液(フレッシュ・イーストエキストラクト)のオートクレーブ後の上清を用いて増殖させ、前記抗菌性物質の産生の有無を調べることにより行うことができる。
【0013】
−培養液−
前記ラクトバチルス・プランタラムの培養液としては、培養終了後、培養液をそのまま用いてもよく、前記培養液を遠心分離や濾過等の方法で分離した培養上清及び菌体の少なくともいずれかを用いてもよい。また、前記培養液には、生菌が含まれていることが好ましいが、加熱殺菌を施した培養液であってもよい。
【0014】
前記ラクトバチルス・プランタラムを培養する場合、使用できる培地としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の乳酸菌培養培地の中から適宜選択することができる。
前記ラクトバチルス・プランタラムの培養温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、サクサクした食感や口溶けのよいパン粉を得ることができる観点から、20℃〜35℃が好ましく、25℃〜30℃がより好ましい。
前記ラクトバチルス・プランタラムの培養時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、サクサクした食感や口溶けのよいパン粉を得ることができる観点から、12時間以上が好ましく、16時間以上がより好ましい。前記培養時間としては、長い程ラクトバチルス・プランタラムを増殖させることができるため、その上限に臨界的な意義はないが、120時間以内が好ましい。
【0015】
−処理物−
前記ラクトバチルス・プランタラムの処理物を調製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記培養液、菌体、及び培養上清の少なくともいずれかを、乾燥させる方法、酵素処理を行う方法、超音波処理を行う方法、機械的摩砕処理を行なう方法、溶媒抽出を行う方法などが挙げられる。これらの方法は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記培養液、菌体、及び培養上清の少なくともいずれかを乾燥させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、自然乾燥法、熱風乾燥法、通風乾燥法、噴霧乾燥法、減圧乾燥法、凍結乾燥法、天日乾燥法、真空乾燥法などが挙げられる。
【0017】
前記酵素処理に用いる酵素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記酵素処理の温度及び時間としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0018】
前記機械的摩砕処理を行う方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザ−、ダイノミル等を用いる方法などが挙げられる。
【0019】
前記溶媒抽出に用いる溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノール、メタノールなどが挙げられる。
【0020】
前記パン粉改良剤における、前記ラクトバチルス・プランタラムの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1×10CFU/g以上が好ましく、1×10CFU/g以上がより好ましい。前記含有量が1×10CFU/g未満であると、サクサクした食感が得られないことや、口溶けが悪くなることがある。前記ラクトバチルス・プランタラムの含有量としては、多い程サクサクした食感や口溶けが向上するため、その上限に臨界的な意義はないが、1×10CFU/g以内が、製造効率上好ましい。
また、前記パン粉改良剤は、前記ラクトバチルス・プランタラムの培養液及び処理物の少なくともいずれかそのものであってもよい。
【0021】
<<澱粉>>
前記澱粉は、アミロースを少なくとも30質量%含有する。
後述する本発明のパン粉の製造方法にも示すようにパン粉の製造においては、原料となるパン粉製造用パンを粉砕するため、該パン粉製造用パンは、通常のパンと比較して硬い方が好ましい。そのためパン粉製造用パンは、焼成後に冷却して老化させるが、この老化を短時間で行うことができることが製造効率上好ましい。前記パン粉改良剤に、前記澱粉を含有させると、前記パン粉製造用パンの老化を促進させることができ、これにより前記パン粉製造用パンの骨格を強固にすることができ、粉砕する際にパン粉の粒子が潰れにくくなり、パン粉の口溶けを向上させることができる点で好ましい。
【0022】
前記パン粉改良剤における、前記澱粉の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜15質量%がより好ましい。前記澱粉の含有量が、1質量%未満であると、パン粉製造用パンの老化が不十分となり後述するパン粉の製造においてパン粉製造用パンを粉砕する際潰れやすくなり、パン粉の口溶けが悪くなることがあり、30質量%を超えると、パン粉製造用パンの老化が促進されすぎてパン粉が硬くなり口溶けが悪くなることがある。
【0023】
前記澱粉におけるアミロースの含有量としては、少なくとも30質量%であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、35質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、45質量%が更に好ましい。前記澱粉におけるアミロースの含有量が30質量%未満であると、パン粉製造用パンの老化を促進させることができないことがある。
【0024】
前記澱粉におけるアミロースの含有量を測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヨウ素呈色比色法、電流適定法、電圧適定法、澱粉を酵素消化した後ゲルろ過クロマトグラフィーで測定する方法などが挙げられる(澱粉科学の事典、不破英次他編集、朝倉書店、2003.3.28参照)。
【0025】
前記澱粉としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、一般に市販されているハイアミロースコーンスターチ及び/又はその誘導体などを用いることができる。
前記市販品の具体例としては、アミロメイズV(アミロース含有量:50質量%〜60質量%)、アミロメイズVI(アミロース含有量:60質量%〜70質量%)、アミロメイズVII(アミロース含有量:70質量%〜80質量%)(以上、日本食品加工株式会社製)、アミロジェル(アミロース含有量:60質量%以上、三和澱粉工業株式会社製)などが挙げられる。
ここで、前記ハイアミロースコーンスターチの誘導体とは、ハイアミロースコーンスターチに、酢酸化、コハク酸化、リン酸架橋等のエステル化、ヒドロキシプロピル化、エピクロルヒドリン架橋等のエーテル化、酸化、酸処理等の化学的処理を施して得られる澱粉誘導体を意味する。
また、大麦の中にもアミロース含有量が30質量%以上の品種のものがあり、そのような品種の大麦から得られる澱粉を用いることもできる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
また、本発明においては、アミロース含有量が少なくとも30質量%の澱粉として、前記ハイアミロースコーンスターチ及び/又はその誘導体と、アミロース含有量が30質量%未満の澱粉との混合物からなり、全体としてのアミロース含有量が30質量%以上となるように調製されたものを用いてもよい。
ハイアミロースコーンスターチ及び/又はその誘導体と、アミロース含有量が30質量%未満の澱粉とを混合して用いると、本発明の効果に加えて、例えば、粘性を増加したり、糊化温度を低下させたりするなど、物性を変化させることができる。
【0027】
前記アミロース含有量が30質量%未満の澱粉としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウルチ種コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、サゴ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、又はこれらの誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ここで、前記アミロース含有量が30質量%未満の澱粉の誘導体とは、前記アミロース含有量が30質量%未満の澱粉に、酢酸化、コハク酸化、リン酸架橋等のエステル化、ヒドロキシプロピル化、エピクロルヒドリン架橋等のエーテル化、酸化、酸処理等の化学的処理を施して得られる澱粉誘導体を意味する。
【0028】
<<その他の成分>>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の食品添加物、糖類、乳化剤、着色剤、香料、保存料、油脂、小麦粉、水などが挙げられる。また、前記ラクトバチルス・プランタラム以外の公知の食用微生物及びその培養物乃至処理物を含有していてもよい。
前記微生物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラクトバチルス・プランタラム以外のラクトバチルス属に属する乳酸菌や、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、テトラゲノコッカス(Tetragenococcus)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、クリベロマイセス(Kluyveromyces)属等に属する微生物などが挙げられる。
前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0029】
<<発酵物>>
前記パン粉改良剤は、前記ラクトバチルス・プランタラムの培養液及び処理物の少なくともいずれかを含有していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ラクトバチルス・プランタラムの培養液及び処理物の少なくともいずれかと、前記澱粉と、更に必要に応じて前記その他の成分とを混合し発酵させた発酵物を含有することが好ましく、該発酵物そのものであることが、サクサクした食感や口溶けに優れたパン粉を得ることができる点で特に好ましい。
【0030】
前記発酵物を製造する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記澱粉、更に必要に応じて前記その他の成分に、所望の量の前記ラクトバチルス・プランタラムの培養液及び処理物の少なくともいずれかを接種し、所望の温度及び時間で発酵させる方法など挙げられる。
前記ラクトバチルス・プランタラムの接種量としては、特に制限はなく、前記パン粉改良剤中の所望のラクトバチルス・プランタラムの含有量などに応じて適宜選択することができる。
前記発酵温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、サクサクした食感や口溶けに優れたパン粉を得ることができる観点から、20℃〜35℃が好ましく、25℃〜30℃がより好ましい。
前記発酵時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、サクサクした食感や口溶けに優れたパン粉を得ることができる観点から、12時間以上が好ましく、16時間以上がより好ましい。前記培養時間としては、長い程よく、その上限に臨界的な意義はない。
なお、前記発酵物は、発酵物そのものであってもよく、該発酵物に精製、希釈、濃縮、乾燥などの処理を施したものであってもよい。
【0031】
<パン粉改良方法>
本発明のパン粉改良方法は、本発明の前記パン粉改良剤をパン粉生地に添加する方法である。
前記パン粉生地としては、特に制限はなく、公知のパン粉生地の中から、目的に応じて適宜選択することができる。
前記パン粉生地に添加する、前記パン粉改良剤の添加量としても、特に制限はなく、前記パン粉改良剤中のラクトバチルス・プランタラムの含有量などに応じて適宜選択することができるが、1質量%〜10質量%が好ましく、1質量%〜5質量%がより好ましい。
【0032】
<用途>
本発明のパン粉改良剤及びパン粉改良方法は、サクサクした食感や口溶けに優れるパン粉を得ることができるため、後述する本発明のパン粉製造方法に好適に利用可能である。
【0033】
(パン粉及びパン粉製造方法)
本発明のパン粉製造方法は、発酵工程と、焼成工程と、老化工程と、を少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の工程を含む。
本発明のパン粉は、本発明のパン粉製造方法により好適に製造される。前記パン粉は、生パン粉であってもよく、乾燥パン粉であってもよい。
【0034】
<発酵工程>
前記発酵工程は、パン粉生地に、本発明の前記パン粉改良剤を添加し発酵させる工程である。
前記パン粉生地を調製する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から、適宜選択することができ、例えば、中種製パン法(中種法)、直捏法(ストレート法)、液種法などが挙げられる。なお、前記パン粉生地調製工程における各種操作、条件等については、特に制限はなく、公知の操作、条件等の中から適宜選択することができる。また、発酵に用いる酵母としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記パン粉生地は、市販の生地を用いてもよい。
【0035】
前記パン粉生地への前記パン改良剤の添加量としては、特に制限はなく、前記パン粉改良剤中のラクトバチルス・プランタラムの含有量などに応じて適宜選択することができるが、1質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜5質量%がより好ましい。前記添加量が、1質量%未満であると、サクサクした食感が得られないことや、口溶けが悪くなることがあり、30質量%を超えると、パン粉が硬くなることがある。
前記発酵温度としては、特に制限はなく、酵母の種類などに応じて適宜選択することができる。
【0036】
<焼成工程>
前記焼成工程は、前記発酵工程により発酵させたパン粉生地を焼成しパン粉製造用パンを得る工程である。
前記焼成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オーブンで焼成する焙焼式、パン粉生地を電極で挟み通電して焼成する電極式などが挙げられる。
前記焼成に用いる装置としては、特に制限はなく、公知の装置の中から目的に応じて適宜選択することができる。
前記焼成の温度及び時間としても、特に制限はなく、パン粉の製造に一般に用いられる温度及び時間の中から、目的に応じて適宜選択することができる。
【0037】
<老化工程>
前記老化工程は、前記焼成工程で得られたパン粉製造用パンを冷却し老化させる工程である。
前記老化を行う温度及び時間としては、前記パン粉製造用パンを冷却することができれば、特に制限はなく、パン粉の製造に一般に用いられる冷却温度及び時間の中から、目的に応じて適宜選択することができる。
【0038】
このようなパン粉の製造方法としては、例えば、特許第3982028号、特許第3362979号、特開2002−238485号公報、特開2001−299259号公報、特開2000−253808号公報、特開平11−127806号公報、特開平10−14481号公報などに記載の方法を用いることができる。
【0039】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記老化工程を経たパン粉製造用パンを粉砕する工程、該粉砕した生パン粉を乾燥する工程などが挙げられる。
粉砕する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から目的に応じて適宜選択することができる。前記パン粉の粒径としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記乾燥する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、自然乾燥法、熱風乾燥法、通風乾燥法、噴霧乾燥法、減圧乾燥法、凍結乾燥法、天日乾燥法、真空乾燥法などが挙げられる。
【0040】
<用途>
本発明のパン粉製造方法及び該パン粉製造方法で製造された本発明のパン粉は、サクサクした食感や口溶けに優れていることから、コロッケ、トンカツ、フライ等の各種揚げ物に好適に利用可能である。また、長期間冷凍保存した後においてもその食感を維持できることから、コロッケ、トンカツ、フライ等の各種揚げ物等の冷凍食品においても好適に利用可能である。
【実施例】
【0041】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
<パン粉(1)の製造>
−パン粉改良剤の調製−
15質量%グリセロール中にて−80℃で保存したラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum FERM P−21534)を1白金耳使用し、MRS液体培地(Difco社製)5mLに接種し、30℃にて16時間静置培養した。
小麦粉(中力粉、日清製粉株式会社製)40kg、ブドウ糖(グルファイナル、サンエイ糖化株式会社製)8kg、酵母エキス(オリエンタル酵母工業株式会社製)1.6kg、澱粉(アミロジェル:アミロース含有量 60質量%以上、三和澱粉工業株式会社製)80kg、及び水470kgを混合した。前記ラクトバチルス・プランタラムの培養液を1×10CFU/gとなるように(約3質量%)接種し、30℃にて16時間発酵した。
【0043】
−パン粉の製造−
下記組成の中種製パン法用中種を調製した。ミキンシング条件は、低速2分間、中速2分間(L2M2)であり、24℃で捏上した後、温度24℃、相対湿度80%で2時間発酵させた。
[2時間中種製パン法用中種]
小麦粉(強力粉、日清製粉株式会社製)・・・・・・・・・・・・・・70.0質量%
イースト(パン酵母FX、オリエンタル酵母工業株式会社製)・・・ 1.8質量%
パン品質改良剤(パン粉ニューフード、オリエンタル酵母工業株式会社製)・・・・・0.07質量%
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38.0質量%
【0044】
前記2時間中種製パン法用中種を用い、下記組成の本捏を調製した。
本捏のミキンシング条件は、低速2分間、中速6分間、高速1分間(L2M6H1)であり、28℃で捏上した(フロアタイム:10分間)で行った。次いで、仕上げ(分割質量:450g、ベンチタイム:15分間、山型に成型)、ホイロ発酵(温度35℃、相対湿度85%、60分間)、焼成(上火:温度160℃、下火:温度180℃、50分間)を行い、パン粉製造用パンを製造した。
[本捏]
小麦粉(強力粉、日清製粉株式会社製)・・・・・・・・・・・・・30.0質量%
グルコース・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1.0質量%
油脂(ショートニング)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.0質量%
食塩・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1.5質量%
パン粉改良剤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.0質量%
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23.5質量%
【0045】
前記パン粉製造用パンを10℃で18時間放置して老化させた後、粉砕機及びシフターを用い粉砕し、パン粉(1)を得た。
パン粉(1)の一部は、製造直後に後述する試験例1及び3に使用し、一部は、−20℃にて2週間保存し、後述する試験例2に使用した。
【0046】
(比較例1)
<パン粉(2)の製造>
実施例1において、パン粉改良剤を添加せず、本捏工程における水の配合量を25.0質量%に変えた以外は、実施例1と同様の方法で、パン粉(2)を得た。
パン粉(2)の一部は、製造直後に後述する試験例1及び3に使用し、一部は、−20℃にて2週間保存し、後述する試験例2に使用した。
【0047】
(比較例2)
実施例1において、パン粉改良剤をポテトロイヤルサワー(キリン協和フーズ株式会社製)に代えた以外は、実施例1と同様の方法で、パン粉(3)を得た。
パン粉(3)の一部は、製造直後に後述する試験例1及び3に使用し、一部は、−20℃にて2週間保存し、後述する試験例2に使用した。
【0048】
(比較例3)
<パン粉(4)の製造>
実施例1において、パン粉改良剤をポテトヨーグルト種21(キリン協和フーズ株式会社製)に代えた以外は、実施例1と同様の方法で、パン粉(4)を得た。
パン粉(4)の一部は、製造直後に後述する試験例1及び3に使用し、一部は、−20℃にて2週間保存し、後述する試験例2に使用した。
【0049】
(試験例1:製造直後のパン粉の食感の官能評価)
実施例1及び比較例1〜3で得られた製造直後のパン粉(1)〜(4)をそれぞれ180℃にて2分間フライした。
【0050】
フライしたパン粉(1)〜(4)を10名のパネリスト(A〜J)が試食し、パン粉の食感について、サクサクした食感及び軽さがあるか否か、口溶けのよさについて、比較例1を評価点1とし、表1に示す4段階の評価点で評価を行い、10名の評価点の平均値を算出した。サクサクした食感及び軽さの結果を表2に、口溶けのよさの結果を表3に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
表2〜3より、実施例1のパン粉(1)は、比較例1〜3のパン粉(2)〜(4)と比較してサクサクした食感及び軽さ、口溶けなどの食感に優れていることがわかった。
【0055】
(試験例2:冷凍後のパン粉の食感の官能評価)
実施例1及び比較例1〜3において、−20℃にて2週間保存したパン粉(1)〜(4)をそれぞれ冷凍のまま180℃にて2分間フライし、試験例1と同様の方法で官能評価を行った。サクサクした食感及び軽さの結果を表4に、口溶けのよさの結果を表5に示す。
【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
表4〜5の結果より、実施例1のパン粉(1)は、製造直後と冷凍保存後とで官能評価の結果に差はなく、冷凍保存後も良好な食感を維持できることがわかった。
一方、比較例1〜3のパン粉(2)〜(4)は、冷凍保存後はサクサク感や口溶けが悪くなり、製造直後の食感を維持できないことがわかった。
【0059】
(試験例3:製造直後のパン粉を用いたコロッケの食感の官能評価)
常法により製造したコロッケ種に、実施例1及び比較例1〜3で得られた製造直後のパン粉(1)〜(4)をそれぞれ衣付けし、180℃にて2分間フライした。このコロッケについて、試験例1と同様の方法で官能評価を行った。サクサクした食感及び軽さの結果を表6に、口溶けのよさの結果を表7に示す。
なお、パン粉(1)を用いて製造したコロッケを「コロッケ(1)」、パン粉(2)を用いて製造したコロッケを「コロッケ(2)」、パン粉(3)を用いて製造したコロッケを「コロッケ(3)」、パン粉(4)を用いて製造したコロッケを「コロッケ(4)」と称することがある。
【0060】
【表6】

【0061】
【表7】

【0062】
表6〜7より、実施例1のパン粉(1)は、コロッケに使用した場合であっても試験例1と同様にサクサクした食感及び軽さ、口溶けなどの食感に優れることがわかった。
【0063】
(試験例4:冷凍後のコロッケの食感の官能評価)
試験例3において製造直後のパン粉(1)〜(4)を衣付けしたコロッケ(1)〜(4)を−20℃にて2週間保存した後、それぞれ冷凍のまま180℃にて2分間フライした。この冷凍コロッケ(1)〜(4)について、試験例1と同様の方法で官能評価を行った。サクサクした食感及び軽さの結果を表8に、口溶けのよさの結果を表9に示す。
【0064】
【表8】

【0065】
【表9】

【0066】
表8〜9の結果より、実施例1のパン粉(1)を用いたコロッケは、冷凍後においても試験例2と同様にサクサクした食感及び軽さ、口溶けなどの食感に優れることがわかった。また、比較例1〜3のパン粉(2)〜(4)をコロッケに使用した場合も試験例2と同様の結果であり、冷凍保存後はサクサク感や口溶けが悪くなり、製造直後の食感を維持できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のパン粉改良剤及び該パン粉改良剤を用いたパン粉改良方法、並びに、パン粉製造方法及び該パン粉製造方法により製造されたパン粉は、サクサクした食感や口溶けに優れることから、コロッケ、トンカツ、フライ等の各種揚げ物に好適に利用可能である。また、長期間冷凍保存した後においてもその食感を維持できることから、コロッケ、トンカツ、フライ等の各種揚げ物の冷凍食品においても好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum:寄託番号 FERM P−21534)の培養液及び処理物の少なくともいずれかを含有することを特徴とするパン粉改良剤。
【請求項2】
アミロースを少なくとも30質量%含有する澱粉を更に含有する請求項1に記載のパン粉改良剤。
【請求項3】
ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum:寄託番号 FERM P−21534)の培養液及び処理物の少なくともいずれかと、アミロースを少なくとも30質量%含有する澱粉とを少なくとも混合し発酵させた発酵物を含有する請求項2に記載のパン粉改良剤。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のパン粉改良剤をパン粉生地に添加することを特徴とするパン粉改良方法。
【請求項5】
パン粉生地に請求項1から3のいずれかに記載のパン粉改良剤を添加し該パン粉生地を発酵させる発酵工程と、
前記発酵工程により発酵させたパン粉生地を焼成しパン粉製造用パンを得る焼成工程と、
前記パン粉製造用パンを冷却し老化させる老化工程と、
を含むことを特徴とするパン粉製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のパン粉製造方法により製造されることを特徴とするパン粉。