説明

パン粉組成物

【課題】素材に直接まぶしても容易かつ確実に付着し、少量の油で焼き揚げた場合にも素材の反りと焦げ斑を防止するパン粉組成物を提供すること。
【解決手段】乾燥パン粉100質量部と;α化澱粉及び/又は粉状蛋白4〜50質量部と;増粘多糖類0.2〜6質量部とを含むことを特徴とするパン粉組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン粉組成物及びその製造方法、並びに当該パン粉組成物を用いる調理品の製造方法に関する。更に詳しくは、畜肉や魚介等の素材に直接まぶしても容易かつ確実に付着し、少量の油で焼き揚げた場合にも素材の反りと焦げ斑を防止することで、衣に均一で適度な焦げ色とサクミのあるクリスピーな食感を与えるパン粉組成物及びその製造方法、並びに当該パン粉組成物を用いる調理品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
畜肉や魚介等を用いたパン粉付フライ食品は、通常、生の畜肉、例えば生の豚肉、牛肉、鶏肉等の素材や、生の魚介、例えばアジ、サケ等の素材にまず小麦粉をまぶし(打ち粉)、液卵に浸漬した後、パン粉を付着させて、大量の油で揚げることによって製造するのが一般的であるが、打ち粉、液卵への浸漬、パン粉の付着という調理工程は手間がかかり煩雑であるという問題があった。そこで、畜肉や魚介等の素材への付着機能を付与したパン粉またはパン粉を主体とするミックスを、打ち粉や液卵への浸漬を行なわず、直接生の畜肉や魚介等の素材に付着させ、大量の油で揚げる技術が開発されている(特許文献1〜3)。
【0003】
しかし、近年の健康志向、ダイエット志向の高まりから、大量の油で揚げる調理は、油脂の摂取量が多くなるため、健康志向上問題とされるようになった。そこで、油脂の摂取量を抑えるため、あるいはフライ調理後の大量の油処理、廃棄の手間を省くため、パン粉またはパン粉を主体とするミックスを生の畜肉や魚介等の素材に直接付着させた後、フライパン等を用いて、少量の油で焼き調理する技術が提案されている(特許文献4)。
【0004】
しかしながら、畜肉や魚介等の素材をフライパン等を用いて少量の油で焼き調理する場合は、素材全体が均一に高温で加熱される大量の油を使用した揚げ調理とは異なり、フライパンに接した面のみが主に高温で加熱されるため、加熱面の素材の筋繊維が収縮することにより素材に反りが生じて加熱斑が生じ、その結果、パン粉の焦げ目が不均一となったり、良好な衣のサクミが得られない。そのため、少量の油で焼き調理する場合は、例えばミラノカツレツのように、肉を事前に薄く叩き伸ばした後、パン粉付けを行い焼き調理を行なう必要がある。しかし、このような調理法で得られた食品には、例えばトンカツのように、大量の油で揚げる通常のパン粉付フライ食品とは外観、食感が大きく異なるという問題点がある。畜肉や魚介等の素材にパン粉またはパン粉を主体とするミックスを直接付着させ、少量の油を用いたフライパン等で焼き調理した食品において、焦げ斑、食感を効果的に改善する技術は未だなく、大量の油で揚げる通常のパン粉付フライ食品と遜色ないできばえを得るに至ってないのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭55−150870号公報
【特許文献2】特許第2888778号公報
【特許文献3】特許第3035287号公報
【特許文献4】特開2000−83614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点と実情に鑑み、畜肉や魚介等の素材への煩雑な前処理を不用とし、畜肉や魚介等の素材にパン粉またはパン粉を主体とするミックスを直接付着させ、フライパン等を用いて少量の油で焼き調理するだけで、素材の反りと焦げ斑を防止し、衣に均一で適度な焦げ色とサクミのあるクリスピーな食感を与え、大量の油で揚げる通常の肉や魚介等の素材を用いたパン粉付フライ食品と遜色ない調理食品を得ることができるパン粉組成物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、乾燥パン粉と;α化澱粉及び/又は粉状蛋白と;増粘多糖類とを含むパン粉組成物を用いれば、畜肉や魚介等の素材に直接付着させ、少量の油で焼き調理しても、素材の反りと焦げ斑を防止でき、均一で適度な焦げ色とサクミのあるクリスピーな食感のある衣を有する、パン粉付調理食品が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、乾燥パン粉100質量部と;α化澱粉及び/又は粉状蛋白4〜50質量部と;増粘多糖類0.2〜6質量部とを含むことを特徴とするパン粉組成物により、上記課題を解決したものである。
また本発明は、乾燥パン粉100質量部と;α化澱粉及び/又は粉状蛋白4〜50質量部と;増粘多糖類0.2〜6質量部との混合物を得ることを特徴とするパン粉組成物の製造方法により、上記課題を解決したものである。
また本発明は、上記パン粉組成物を素材に直接付着させた後、焼き調理することを特徴とするパン粉付調理食品の製造方法により、上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のパン粉組成物を用いれば、通常の揚げ調理、少量の油での焼き調理の如何を問わず、均一で適度な焦げ色とサクミのあるクリスピーな食感のある衣を有する、パン粉付調理食品を得ることができる。特に、本発明のパン粉組成物を直接、畜肉や魚介等の素材に付着させた後、フライパン等を用いて少量の油で焼き調理するだけで、素材を大量の油で揚げた通常のパン粉付フライ食品に対して遜色のない、均一で適度な焦げ色とサクミのあるクリスピーな食感のある衣を有する、パン粉付調理食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のパン粉組成物は、まず乾燥パン粉を必須構成成分として含む。当該乾燥パン粉は、小麦粉、イースト、砂糖、食塩、油脂等の一般に用いられるパン粉原料を用いて、焙焼法、電極法等の一般的な製法により製造することができるが、原料及び製法に特に制限はない。例えば、乾燥パン粉は、小麦粉、イースト、砂糖、食塩、油脂等の原料を混合し、発酵、焼成、放冷、粉砕した後、乾燥させることによって得ることができる。本発明のパン粉組成物に含まれる乾燥パン粉の大きさに特に限定はないが、平均粒径が、100μm〜7mm、200μm〜5mmであることが好ましい。なお、ここで平均粒径とは、マイクロトラックFSA測定による中央累積値をいう。本発明のパン粉組成物に含まれる乾燥パン粉の水分は、2〜20質量%であればよいが、3〜15質量%であることが、保存性及び食感の上で好ましい。
【0011】
更に、本発明のパン粉組成物は、α化澱粉及び/又は粉状蛋白、並びに増粘多糖類を必須構成成分として含む。α化澱粉と粉状蛋白については、いずれか一方のみが配合されていても両者が併用されていても良い。本発明に用いるα化澱粉、粉状蛋白、増粘多糖類は、粉末状で、畜肉や魚介等の素材へパン粉を均一に付着させる機能、畜肉や魚介等の素材の表面に皮膜を形成する機能を担う。α化澱粉、粉状蛋白及び増粘多糖類の平均粒径は、20μm〜500μmであればよいが、40μm〜100μmであることが好ましい。平均粒径が500μmより大きいとパン粉の付着、肉表面の皮膜が不十分であり、また、20μ未満では、パン粉と混合時のダマ発生、製造時の飛散等があり、好ましくない。
【0012】
α化澱粉としては、例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉及びこれらの化工澱粉等のα化澱粉が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
粉状蛋白としては、例えば、全卵、卵白、卵黄等の卵蛋白、脱脂粉乳、ホエー蛋白等の乳蛋白、大豆蛋白や小麦蛋白等の植物性蛋白、ゼラチン等の動物性蛋白等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
増粘多糖類としては、例えば、グルコマンナン、寒天、プルラン、カードラン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ジェランガム、グアガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム等が挙げられるが、グルコマンナン、寒天、プルラン、カードラン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ジェランガム等の冷水や熱水に溶解しゲル化機能を有するものが好ましく、これらの1種または2種以上を用いることができる。また、増粘多糖類のゲル化機能を高めるために、塩化カルシウム、乳酸カルシウム等のカルシウム塩類や塩化カリウムなどのカリウム塩類を必要に応じて併用しても良い。
【0013】
本発明のパン粉組成物は、上記パン粉、α化澱粉及び/又は粉状蛋白、並びに増粘多糖類と共に、必要に応じて、本発明のパン粉組成物により得られる調理食品の外観及び食感を害さない範囲で、調味料、乳化剤、油脂、甘味料、食塩、香辛料、色素、酵素、香料等のその他の原料を含有することもできる。
【0014】
本発明のパン粉組成物は、上述した乾燥パン粉と;α化澱粉及び/又は粉状蛋白と;増粘多糖類との混合物を得ることによって製造することができる。本発明のパン粉組成物は、当該乾燥パン粉へ、当該α化澱粉及び/又は粉状蛋白と、当該増粘多糖類と、必要に応じてその他の原料を混合することによって得てもよいが、あるいは、生パン粉へ、当該α化澱粉及び/又は粉状蛋白と、当該増粘多糖類と、必要に応じてその他の原料を混合した後、乾燥処理を行い、最終的にこれらが付着した乾燥パン粉として得てもよい。すなわち、本発明におけるパン粉組成物には、最終的に当該乾燥パン粉が含有されていれば、原料パン粉として、乾燥パン粉、生パン粉のいずれのパン粉も使用できる。
【0015】
例えば、乾燥パン粉を原料に用いて本発明のパン粉組成物を製造する場合、乾燥パン粉へのα化澱粉及び/又は粉状蛋白、増粘多糖類等の混合は、ナウタミキサー、リボンミキサー、V型ミキサー等の一般的なミキサーのような、混合処理中に過度に乾燥パン粉が粉砕されず、均一に原料が混合できる装置を用いて行うのが好ましい。
【0016】
他方、生パン粉を原料に用いて本発明のパン粉組成物を製造する場合、例えば、特許第3035287号公報に準じた方法が採用できる。すなわち、生パン粉へのα化澱粉及び/又は粉状蛋白、増粘多糖類等の混合は、生パン粉の表面が湿気を帯びているため、まずα化澱粉及び/又は粉状蛋白、増粘多糖類等を生パン粉に混合し、適宜攪拌してこれらの原料を生パン粉に付着させる。当該混合及び攪拌には、V型ミキサー等、混合処理中に生パン粉がダマになりにくく、均一に生パン粉に原料を付着できる装置を使用するのが好ましい。次いで、当該α化澱粉及び/又は粉状蛋白、増粘多糖類等が付着した生パン粉を乾燥させることにより、本発明のパン粉組成物が得られる。乾燥方法に特に制限はないが、熱風乾燥が好ましく、パン粉を常時流動または回転等させながら、乾燥ムラがないように、乾燥後のパン粉の水分が、2〜20質量%、好ましくは3〜15質量%となるように乾燥させればよい。
【0017】
本発明のパン粉組成物における、α化澱粉及び/又は粉状蛋白の配合量は、乾燥パン粉100質量部に対して、α化澱粉と粉状蛋白の総量が4〜50質量部であればよいが、12質量部〜24質量部であることが好ましい。乾燥パン粉100質量部に対するα化澱粉と粉状蛋白の総量が4質量部未満の場合、あるいは50質量部より多い場合には、畜肉類等の素材への乾燥パン粉の付着が不十分となり易い。
また、本発明のパン粉組成物における増粘多糖類の配合量は、乾燥パン粉100質量部に対して、0.2質量部〜6質量部であればよいが、1質量部〜3質量部が好ましい。乾燥パン粉100質量部に対する増粘多糖類の配合量が0.2未満であると、素材の反り又は焦げ斑の防止が不十分となり易く、他方、6質量部より多いと、衣のサクミが弱く、油っぽくなり易い。生パン粉に対するα化澱粉及び/又は粉状蛋白、並びに増粘多糖類の配合量は、乾燥後のパン粉組成物の状態で、前述した乾燥パン粉を用いた場合の配合量となるようにすればよい。さらにカルシウム塩類やカリウム塩類を併用する場合、その配合量は、乾燥パン粉100質量部に対して、0.02質量部〜0.6質量部であればよい。
【0018】
本発明のパン粉組成物は、少量の油での焼き調理による調理食品及び大量の油での揚げ調理によるフライ食品を製造するために使用することができる。少量の油での焼き調理の場合、本発明のパン粉組成物を直接、畜肉や魚介等の素材に付着させた後、これを鍋、フライパン、鉄板、オーブン等の調理器具を用いて、少量の油とともに、例えば油を薄く伸ばした上で焼き調理することにより、パン粉付調理食品を製造することができる。焼き調理する場合に必要な油の量は、畜肉や魚介等の素材100gに対して、油50ml以下であればよいが、30ml以下が好ましい。大量の油での揚げ調理の場合、本発明のパン粉組成物を直接、畜肉や魚介等の素材に付着させた後、これを油を張った揚げ鍋に投入し、通常の方法で揚げ調理することにより、フライ食品を製造することができる。焼き調理及び揚げ調理に使用する油は、一般的な食用油であれば特に制限はなく、菜種油、大豆白鮫油、米油、ゴマ油等の植物性油脂、ラード等の動物性油脂等が使用できる。
【0019】
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
実施例1〜5
表1の組成で、乾燥パン粉に、α化澱粉及び/又は粉状蛋白、ならびに増粘多糖類を混合し、均一に攪拌してパン粉組成物を調製した。
【0021】
【表1】

【0022】
比較例1〜12
表2〜3の組成で、乾燥パン粉に、α化澱粉及び/又は粉状蛋白を含むが増粘多糖類を含まない原料、あるいは、α化澱粉の代わりにα化されていない澱粉若しくは糖質を配合した、α化澱粉も粉状蛋白も含まない原料を混合し、均一に攪拌してパン粉組成物を調製した。
【0023】
【表2】

【0024】
【表3】

【0025】
試験例1(α化澱粉、粉状蛋白及び増粘多糖類の効果)
豚ロース(厚さ約1.5cm、約100g×1枚)に、実施例1〜5又は比較例1〜12で得られたパン粉組成物をそれぞれ直接まぶし、その付着量を測定した。次いで、これらを油大さじ2杯(30ml)を加えて170℃に熱したフライパン(フライパン径26cm)で片面2分半ずつ焼き、得られたトンカツについて、外観、衣の食感、及び肉質を以下の評価基準で評価した。その結果を表1〜3に示す。なお、評価の数値は、10名のパネラーによる平均値で示した。
【0026】
◎評価基準
外観
4:素材の反りがなく、均一に焦げ色がついており、極めて良好である。
3:素材の反りがほとんどなく、焦げ斑もわずかであり、良好である。
2:素材の反り、焦げ斑があり、不良である。
1:素材の反り、焦げ斑が著しく、極めて不良である。
衣の食感
4:サクミが強く、油っぽさもなく、極めて良好である。
3:サクミがあり、油っぽさも少なく、良好である。
2:サクミが弱く、油っぽく、不良である。
1:サクミに欠け、油っぽさも著しく、極めて不良である。
肉質
4:加熱斑がなく、素材のジューシーさに富み、柔かく、極めて良好である。
3:加熱斑がほとんどなく、素材はジューシーであり、柔かく、良好である。
2:加熱斑があり、素材のジューシーさ、柔かさに欠け、不良である。
1:加熱斑が著しく、素材のジューシーさ、柔かさに著しく欠け、極めて不良である。
【0027】
表1〜3より、乾燥パン粉、α化澱粉及び/又は粉状蛋白、ならびに増粘多糖類を含む本発明のパン粉組成物(実施例1〜5)を用いれば、少量の油で焼く調理法においても、素材の反り、焦げ斑がほとんどなく、衣の食感及び肉質にも優れたトンカツができることが確認された。一方、増粘多糖類を含まないパン粉組成物(比較例1〜2及び7〜9)、ならびにα化澱粉及び粉状蛋白を含まないパン粉組成物(比較例3〜6)から得られたトンカツは、衣の付着性が不十分であるか、且つ/又は外観、衣の食感及び肉質に劣ることが確認された。また、増粘多糖類を含まないパン粉組成物では、α化澱粉及び/又は粉状蛋白を大量に含んでいる場合でも、やはり効果が得られなかった(比較例10〜12)。
【0028】
試験例2(α化澱粉及び/又は粉状蛋白の量)
表4〜6の組成で、乾燥パン粉に、α化澱粉及び/又は粉状蛋白、ならびに増粘多糖類を混合し、均一に攪拌してパン粉組成物を調製した。当該パン粉組成物を用いて試験例1と同様の手順でトンカツを得、それを評価した。結果を表4〜6に記す(なお表中に実施例1、3、5を再掲した)。α化澱粉及び/又は粉状蛋白の配合量は、乾燥パン粉100質量部に対し、4〜50質量部が好ましいことが確認された(試料4〜15及び実施例1、3、5)。
【0029】
【表4】

【0030】
【表5】

【0031】
【表6】

【0032】
試験例3(増粘多糖類の種類)
表7の組成で、乾燥パン粉に、α化澱粉及び粉状蛋白、ならびに各種増粘多糖類を混合し、均一に攪拌してパン粉組成物を調製した。当該パン粉組成物を用いて試験例1と同様の手順でトンカツを得、それを評価した。結果を表7に記す(なお表中に実施例5を再掲した)。冷水や熱水に溶解してゲル化機能を有するタイプの増粘多糖類を含むパン粉組成物(実施例5、及び試料19〜22)を使用した場合は、外観や衣の食感及び肉質がより優れていることが確認された。
【0033】
【表7】

【0034】
試験例4(増粘多糖類の量)
表8の組成で、乾燥パン粉に、α化澱粉及び粉状蛋白、ならびに増粘多糖類を混合し、均一に攪拌してパン粉組成物を調製した。当該パン粉組成物を用いて試験例1と同様の手順でトンカツを得、それを評価した。結果を表8に記す(なお表中に実施例5を再掲した)。増粘多糖類の配合量は、乾燥パン粉100質量部に対し、0.2〜6質量部が好ましいことが確認された(試料28〜31、及び実施例5)。
【0035】
【表8】

【0036】
実施例6及び比較例13
表9の組成で、生パン粉(水分40%)に、α化澱粉及び粉状蛋白、ならびに増粘多糖類を混合し、均一に攪拌した後、流動させながら乾燥させ、水分含量が10質量%となるまで乾燥した。使用した原料の配合比、並びに乾燥後のパン粉組成物に占める乾燥パン粉、α化澱粉、粉状蛋白、増粘多糖類の質量比は表9の通りである。
【0037】
【表9】

【0038】
試験例5(実施例6及び比較例13)
実施例6及び比較例13で得られたパン粉組成物を用いて試験例1と同様の手順でトンカツを得、評価を行なった。結果を表9に記す。生パン粉にα化澱粉及び粉状蛋白と増粘多糖類を配合し、その後、乾燥して得られた本発明のパン粉組成物(実施例6)を用いれば、外観や衣の食感及び肉質が優れたトンカツができることが確認された。一方、生パン粉に増粘多糖類を配合しなかった場合、得られたパン粉組成物(比較例13)を用いたトンカツは、素材の反り、焦げ斑があり、衣の食感及び肉質も劣っていることが確認された。
【0039】
試験例6
鶏胸肉(厚さ約1.0cm、約50g×2枚)に、実施例5又は比較例9で得られたパン粉組成物を直接まぶし、油大さじ2杯(30ml)を加えて170℃に熱したフライパン(フライパン径26cm)で片面2分半ずつ焼き、試験例1と同様に評価を行なった。結果を表10に示す。本発明のパン粉組成物を用いれば、少量の油で焼く調理法においても、素材の反り、焦げ斑がほとんどなく、衣の食感及び肉質にも優れたチキンカツができることが確認された。
【0040】
【表10】

【0041】
試験例7
真アジを3枚に下ろしたアジの切り身(厚さ約1.0cm、約30g×3枚)に、実施例5又は比較例9で得られたパン粉組成物を直接まぶし、油大さじ2杯(30ml)を加えて170℃に熱したフライパン(フライパン径26cm)で片面2分半ずつ焼き、試験例1と同様に評価を行なった。結果を表11に示す。本発明のパン粉組成物を用いれば、少量の油で焼く調理法においても、素材の反り、焦げ斑がほとんどなく、衣の食感及び肉質にも優れたアジフライができることが確認された。
【0042】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥パン粉100質量部と;α化澱粉及び/又は粉状蛋白4〜50質量部と;増粘多糖類0.2〜6質量部とを含むことを特徴とするパン粉組成物。
【請求項2】
増粘多糖類が、冷水や熱水に溶解しゲル化機能を有するものである請求項1に記載のパン粉組成物。
【請求項3】
増粘多糖類が、グルコマンナン、寒天、プルラン、カードラン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン又はジェランガムから選択される1種または2種以上である請求項1又は2に記載のパン粉組成物。
【請求項4】
乾燥パン粉100質量部と;α化澱粉及び/又は粉状蛋白4〜50質量部と;増粘多糖類0.2〜6質量部との混合物を得ることを特徴とするパン粉組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のパン粉組成物を素材に直接付着させた後、焼き調理することを特徴とするパン粉付調理食品の製造方法。
【請求項6】
前記パン粉組成物を付着させた素材を、当該素材100gに対して50ml以下の量の油とともに焼き調理することを特徴とする請求項5に記載の製造方法。