説明

パーフルオロカーボン重合体の製造方法

含フッ素化合物からなるラジカル重合開始剤と、フッ素原子で水素原子の一部が置換されていてもよい炭素数1〜2の飽和炭化水素又は水素からなる連鎖移動剤とを用い、重合媒体中で、−SOX基(Xはフッ素原子又は塩素原子)を有しエチレン性二重結合を有するパーフルオロカーボンモノマー(エーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい)と二重結合を有しかつ炭素原子、ハロゲン原子及び酸素原子以外の原子を含まないパーハロゲノモノマーとを共重合させた後、フッ素化処理するパーフルオロカーボン重合体の製造方法。この方法により得られる−SOX基を有するパーフルオロカーボン重合体は、分子中に含有する不安定末端基が少なく、安定性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性に優れるスルホン酸型パーフルオロカーボン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(以下、スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体という)は、食塩電解用陽イオン交換膜や燃料電池用隔膜等の基材として多く用いられている。近年、燃料電池はその反応生成物が原理的に水のみであり地球環境への悪影響がほとんどない発電システムとして注目されており、特に固体高分子型燃料電池が注目されている。その理由として次の2点が挙げられる。(1)固体高分子電解質として高導電性の膜が開発された。(2)ガス拡散電極層に用いられる触媒をカーボンに担持し、さらにこれをイオン交換樹脂で被覆することにより、きわめて大きな活性が得られるようになった。そして、固体高分子型燃料電池用のプロトン伝導性樹脂として、スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体が、その耐熱性、耐薬品性、耐久性、長時間安定性等の理由で用いられている。
【0003】
しかし、スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体は、長期間の電極反応にさらされると、劣化するため、燃料電池としての出力を維持することが困難であることが知られている。このポリマーの劣化の原因として、ポリマー主鎖の末端基の少なくとも一部が不安定な−COOH基、−COF基等になっており、該不安定末端基から連鎖的に主鎖が分解することが挙げられる。ポリマーの末端基を安定化する方法としては、ポリマーをフッ素化する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この方法はフッ素化し難い末端基、例えば−COOH基、−COF基を完全に安定化することは困難である。
【0004】
【特許文献1】特公昭46−23245号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点を鑑み、ポリマーにフッ素化し難い不安定末端が生成しないように、ラジカル開始剤、連鎖移動剤を選択して重合を行い、その後フッ素化を行うことで、安定末端基を有するスルホン酸型パーフルオロカーボン重合体を効率的に得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、含フッ素化合物からなるラジカル重合開始剤と、フッ素原子で水素原子の一部が置換されていてもよい炭素数1〜2の飽和炭化水素又は水素からなる連鎖移動剤とを用い、重合媒体中で、−SOX基(Xはフッ素原子又は塩素原子)を有しエチレン性二重結合を有するパーフルオロカーボンモノマー(エーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい)と、二重結合を有しかつ炭素原子、ハロゲン原子及び酸素原子以外の原子を含まないパーハロゲノカーボンモノマーの少なくとも1種とを、共重合させた後、フッ素化処理することを特徴とするパーフルオロカーボン重合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フッ素化しやすい末端基を有するポリマーが重合され、さらにフッ素化処理を行うので、得られるポリマーは高度にパーフルオロ化されている。このポリマーを用いて加水分解、酸型化して得られるスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体は安定性に優れており、固体高分子型燃料電池の電解質に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のパーフルオロカーボン重合体の製造方法では、−SOX基を有しエチレン性二重結合を有するパーフルオロカーボンモノマーと、二重結合を有しかつ炭素原子、ハロゲン原子及び酸素原子以外の原子を含まないパーハロゲノカーボンモノマーの少なくとも1種と、を原料のモノマーとして共重合する。ここでパーフルオロカーボンモノマーは、エーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい。
【0009】
二重結合を有しかつ炭素原子、ハロゲン原子及び酸素原子以外の原子を含まないパーハロゲノカーボンモノマーとしては、例えば以下の物が挙げられる。テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロブチルエチレン等のパーフルオロオレフィン。パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテル、パーフルオロブテニルビニルエーテル等のパーフルオロエーテル。パーフルオロ(1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、パーフルオロ−(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)等の環状のパーフルオロ化合物。クロロトリフルオロエチレン等の非パーフルオロオレフィンモノマー。1,1−ジヒドロパーフルオロオクチルアクリレート、1,1−ジヒドロパーフルオロオクチルメタクリレート等のフルオロアクリルモノマー。
【0010】
なかでも、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等のパーハロゲノオレフィンと、−SOX基を有しエチレン性二重結合を有するパーフルオロカーボンモノマーとの共重合体、又はこれらのモノマーと上述のパーハロゲノオレフィン以外の二重結合を有するパーハロゲノモノマーの少なくとも1種との多元共重合体の製造において本発明の製造方法を採用すると顕著な効果が見られ好ましい。パーハロゲノオレフィンのなかでも特にテトラフルオロエチレンが好ましい。
【0011】
−SOX基を有するパーフルオロカーボンモノマーとしては、CF=CFO(CFCF(CF)O)(CFSOFで表わされるモノマー(式中、mは2〜4の整数であり、nは0〜2の整数である。)が好ましい。具体的には、CF=CFO(CFSOF、CF=CFO(CFSOF、CF=CFOCFCF(CF)O(CFSOF、CF=CFOCFCF(CF)O(CFSOF、CF=CFO(CFCF(CF)O)(CFSOF、CF=CFO(CFCF(CF)O)(CFSOF等が挙げられる。
【0012】
本発明の製造方法において、上記モノマーを共重合させる重合方法としては、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、塊状重合など公知の重合方法が限定されず採用できるが、特に溶液重合が好ましい。懸濁重合及び乳化重合では重合媒体として水を用いるため、重合媒体中にパーフルオロカーボンモノマーを溶解し難く、重合を安定的に行うことは困難である。また、塊状重合では、重合による発熱を効率的に除去し難く、重合を安定的に行うことは困難である。
【0013】
溶液重合の場合の重合媒体としては、連鎖移動係数が小さい含フッ素有機溶媒が好ましい。特に、炭素数3〜10のパーフルオロカーボン、炭素数3〜10のハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜10のハイドロクロロフルオロカーボン及び炭素数3〜10のクロロフルオロカーボンからなる群から選ばれる一種以上が好ましい。これらのハロゲノカーボンは、直鎖状、分岐状又は環状の構造のいずれも好ましく使用でき、分子中にエーテル性酸素原子を含んでもよいが、飽和化合物であることが好ましい。
【0014】
具体的な重合媒体としては以下のものが挙げられる。パーフルオロカーボンとしては、パーフルオロシクロブタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロ(ジプロピルエーテル)、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等が挙げられる。ハイドロフルオロカーボンとしては、分子中のフッ素原子の数が水素原子よりも多いことが好ましく、CHOC、CHOC、C10、C13H、C12等が挙げられる。ハイドロクロロフルオロカーボンとしては、水素原子数が3個以下であることが好ましく、CHClFCFCFCl等が挙げられる。クロロフルオロカーボンとしては、1,1,2−トリフロロトリフルオロエタン等が挙げられる。
【0015】
重合媒体の使用量は、重合反応器の容積に対して体積比で10〜90%とすることが好ましく、さらには30〜70%が好ましい。重合媒体の量が少ない場合、重合媒体に溶解しえるパーフルオロカーボンモノマーの量も少なくなり、得られるポリマーが少なくなるので生産効率が低く工業的に不利である。一方重合媒体の量が多すぎると全体を均一に撹拌することが困難となる。なお、懸濁重合および乳化重合の場合、実質的な重合媒体としては水が挙げられる。
【0016】
本発明における連鎖移動剤としては、水素、炭素数1〜2の飽和炭化水素、炭素数1〜2の飽和ハイドロフルオロカーボン等が用いられる。具体的に好ましいものとしては、メタン、エタン、CH、CHF、CHF、CHCFH、CFCHF等が挙げられる。この連鎖移動剤の使用により、末端基が容易にフッ素化できる、−SOX基を有するパーフルオロカーボン重合体が生成する。また、連鎖移動剤の使用により得られるポリマーの分子量も制御できる。連鎖移動剤のなかでも特にメタンは、連鎖移動性が高く、ポリマーの分子量制御が容易であるとともにポリマーの末端基が−CHになるため、容易にフッ素化されて−CF基に変換できる点で好ましい。
【0017】
連鎖移動剤の使用量は、−SOX基を有するパーフルオロカーボンモノマーとパーハロゲノカーボンモノマーとの混合物の合量に対し、質量比で0.1〜50%であることが好ましい。連鎖移動剤が少なすぎると連鎖移動によるポリマーの分子量制御が困難である。連鎖移動剤が多すぎると、パーフルオロカーボンモノマーとパーハロゲノカーボンモノマーとの仕込み量が少なくなるため生産効率が低くなり工業的に不利である。連鎖移動剤の最適な使用量は使用する連鎖移動剤の種類によっても異なり、メタンの場合は0.1〜10%が好ましく、CHの場合は10〜50%が好ましい。
【0018】
本発明における重合開始剤としては、含フッ素化合物からなるラジカル重合開始剤を採用するが、この重合開始剤は、安定末端基を有する共重合体を生成するので、好ましい。特に、下記式1〜7のいずれかで表わされる化合物であることが好ましい。ただし、式中Rf1は炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基であり、Rf2及びRf3は炭素数3以上のポリフルオロアルキル基であり、Xはハロゲン原子であり、Rf4はフッ素原子又は炭素数1〜2のパーフルオロアルキル基であり、n1、n2、n3はそれぞれ独立に1以上の整数である。
【0019】
【化1】

【0020】
なかでも、式1で表わされるビス(フルオロアシル)パーオキシド類が好ましい。具体的には、(CFCOO)、(CFCFCOO)、(CFCFCFCOO)、(HCFCFCOO)、(HCFCFCFCOO)等が挙げられる。
【0021】
重合開始剤の使用量は、パーハロゲノカーボンモノマーの質量に対して、質量比で0.01〜1%であることが好ましく、さらには0.01〜0.5%が好ましい。重合開始剤の量が少なすぎると、生成するポリマーの分子量が大きくなりすぎて加工性が悪化し、電解質材料として使用しにくくなるおそれがある。重合開始剤の量が多すぎると生成するポリマーの分子量が小さくなり、例えば固体高分子型燃料電池の電解質材料として使用すると、使用に耐えられる強度が得られなくなるおそれがある。
【0022】
本発明における重合温度は、使用する溶媒中における重合開始剤の10時間半減期温度(重合開始から10時間経過後に開始剤の量が半量になる温度)を目安にして選ばれるが、75℃以下が好ましい。75℃より高温では経済性が悪化するだけでなく、生成する−COF末端基数が増加する傾向にある。
【0023】
本発明における重合圧力は、0.1〜10MPaが好ましい。重合圧力が低すぎると得られるポリマーの−COF末端基の含有量が増大する傾向にあり、重合圧力が高すぎると製造設備上好ましくない。より好ましくは0.3〜5MPaが採用される。
【0024】
本発明では重合開始剤と連鎖移動剤とをそれぞれ特定のものを選択しているので、重合して得られるポリマーは、フッ素化しやすい末端基及びパーフルオロ化された末端基を有し、不安定末端基が少ない。フッ素化しやすい末端基としては、例えば−CFH、−CFH、−CH等が挙げられる。不安定末端基としては、−COF、−COOH、−CF=CF、−CHOHが挙げられる。−COF、−COOH、−CHOHは分解しやすく不安定であり、−CF=CFは空気中で容易に−COOHになる。
【0025】
本発明では、上述のとおりフッ素化容易な末端基を有するポリマーを重合した後、得られたポリマーに対してフッ素化処理を行う。フッ素化処理の方法は特に限定されず、水素原子をフッ素原子に置換する公知の方法が採用されるが、反応効率の観点から、フッ素ガスを用いるフッ素化処理が好適に採用される。フッ素ガスによるフッ素化処理の方法には、含フッ素共重合体をフッ素に対して反応性の低い四塩化炭素、クロロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン等の溶媒中に懸濁又は溶解させた後、必要により不活性ガスで希釈したフッ素ガスで直接ポリマーをフッ素化する気/液法、直接ポリマーをフッ素ガスに曝してフッ素化する、気/固法等がある。いずれの場合もフッ素ガスに対し耐食性を有する材質の反応器を用い、フッ素化させるポリマーとフッ素ガスの接触を良くすることが好ましい。具体的には、気/液法では撹拌下又は振動下に反応を行うことが好ましい。気/固法では−SOX基を有するパーフルオロカーボン重合体のフッ素ガスに曝される表面積を大きくして反応を行うことが好ましい。
【0026】
反応方法としては、フッ素化処理するポリマーの存在する反応器に所定濃度のフッ素ガスを流通させフッ素化処理を行う流通法、及び所定濃度のフッ素ガスを封じこめてフッ素化するバッチ法等が挙げられる。
【0027】
このようにして本発明の方法により得られるポリマーは高度にフッ素化される。このポリマーに対して加水分解、酸型化処理を行うことにより、−SOX基はスルホン酸基(−SOH基)に変換され、得られるスルホン酸型パーフルオロカーボン重合体は、安定性に優れる。このスルホン酸型パーフルオロカーボン重合体を電解質材料として使用する固体高分子型燃料電池は、電解質材料の安定性に優れるため耐久性に優れる。
本発明におけるスルホン酸型パーフルオロカーボン重合体からなる電解質材料は、−COF末端基の数が炭素原子10個あたり好ましくは20個以下であり、より好ましくは16個以下である。
【実施例】
【0028】
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらにより限定されない。
本実施例においては、不安定末端基の定量は次のようにして行った。すなわち、本実施例で得られた−SOF基を有するポリマー及び比較のための不安定末端基数が既知の標準品(CF=CF/CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSOF共重合体)を約250℃の温度でそれぞれ溶融し、加圧冷却することで約0.3mm厚のフィルムをそれぞれ作製し、FT−IRによる差スペクトルを測定した。そして、炭素原子10個当たりの不安定末端基の個数を下式によって算出した。
【0029】
N=f×A/t
N:不安定末端基の個数(個/炭素原子10個)、A:吸光度、f:係数、t:フィルムの厚さ(mm)。
但し係数fは下記表1の値を用いた。fの数値は、例えばJournal of Fluorine Chemistry 95(1999)71−84に記載されている。
【0030】
【表1】

【0031】
[実施例1]
撹拌機を有する1Lのステンレス製反応器に、1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン(以下、R−113という)219.4g、CF=CFOCFCF(CF)O(CFSOF(以下、PSVEという)を602.0g入れ、内部を脱気した。その後、連鎖移動剤としてCF(以下、R−32という)を64.0g仕込み、40℃の内温で、テトラフルオロエチレン(以下、TFEという)を圧力が1.30MPaGになるまで仕込んだ。次いで開始剤としての(FCFCFCFCOO)を3質量%の濃度でCHFClCFCFClに溶解した溶液を10mL仕込み、重合を開始した。重合中、開始剤の溶液は断続的に仕込み、合計45mLを仕込んだ。重合の進行に伴い、圧力が低下するので、圧力が一定になるようにTFEを連続的に後仕込みした。後仕込みのTFE量が150gになったところで内温を10℃まで冷却し、未反応TFEを空放し、圧力容器を開放した。
【0032】
このようにして、圧力容器の中にスラリー状の内容物(ポリマー)を得た。この中にメタノールを入れて撹拌し、ポリマーを凝集・沈降させた。このポリマーを80℃で10時間乾燥することにより、白色のTFE−PSVE共重合体119.1gが得られた。
【0033】
次に、この共重合体100gをフッ素化するために内容積200mLのハステロイ製反応器に入れ、反応器内を十分脱気した後、窒素で希釈した20容量%のフッ素ガスを0.3MPaGまで導入した。次に反応器を10℃のオイルバスに入れ、ゆっくりと180℃まで昇温した。180℃で4時間反応を行った後、内部を十分窒素置換し、反応生成物として白色粉体を118.3g取り出した。
【0034】
この白色粉体を240℃でフィルム化してIRを測定したところ、不安定末端基としては、−COF基が炭素原子10個あたり13個含まれており、−COOH基、−CHOH基、−CF=CF基はそれぞれ炭素原子10個あたり1個以下だった。
【0035】
[実施例2]
R−32の仕込み量を46.3gとし、反応槽の圧力を1.30MPaGとした以外は実施例1と同様に重合して、TFE−PSVE共重合体80.9gを得た。得られたTFE−PSVE共重合体を実施例1と同様にフッ素化処理し、白色のTFE−PSVE共重合体を77.4g得た。この共重合体には不安定末端の−COF基が炭素原子10個あたり11個含まれており、−COOH基、−CHOH基、−CF=CF基は炭素原子10個あたり1個以下だった。
【0036】
[実施例3]
R−32の仕込み量を25.0gとし、反応槽の圧力を1.10MPaGとした以外は実施例1と同様に重合して、TFE−PSVE共重合体112.1gを得た。得られたTFE−PSVE共重合体を実施例1と同様にフッ素化処理し、白色のTFE−PSVE共重合体を112.3g得た。この共重合体には不安定末端の−COF基が炭素原子10個あたり10個含まれており、−COOH基、−CHOH基、−CF=CF基は炭素原子10個あたり1個以下だった。
【0037】
[実施例4]
CHのかわりにCHを1.53g仕込み、反応槽の圧力を0.50MPaとした以外は実施例1と同様に重合して、TFE−PSVE共重合体79.6gを得た。得られたTFE−PSVE共重合体を実施例1と同様にフッ素化処理し、白色のTFE−PSVE共重合体を76.9g得た。この共重合体には不安定末端の−COF基が炭素原子10個あたり8個含まれており、−COOH基、−CHOH基、−CF=CF基は炭素原子10個あたり1個以下だった。
【0038】
[実施例5]
CHのかわりにCHCFHを75.0g仕込み、反応槽の圧力を0.90MPaとした以外は実施例1と同様に重合して、TFE−PSVE共重合体66.3gを得た。得られたTFE−PSVE共重合体を実施例1と同様にフッ素化処理し、白色のTFE−PSVE共重合体を66.3g得た。この共重合体には不安定末端の−COF基が炭素原子10個あたり16個含まれており、−COOH基、−CHOH基、−CF=CF2基は炭素原子10個あたり1個以下だった。
【0039】
[実施例6]
CHのかわりにCFCHFを150.0g仕込み、R−113の仕込み量を150.4g、PSVEの仕込み量を512.3gとし、反応槽の圧力を0.80MPaにした以外は実施例1と同様に重合して、TFE−PSVE共重合体120.8gを得た。得られたTFE−PSVE共重合体を実施例1と同様にフッ素化処理し、白色のTFE−PSVE共重合体を115.8g得た。この共重合体には不安定末端の−COF基が炭素原子10個あたり11個含まれており、−COOH基、−CHOH基、−CF=CF基は炭素原子10個あたり1個以下だった。
【0040】
[比較例1]
連鎖移動剤としてのR−32を使用せず、かつ重合開始剤としてのアゾイソブチロニトリルを232.9mg、重合溶媒としてCHFClCFCFClを146.8g仕込んだ以外は実施例1と同様にして、白色のTFE−PSVE共重合体105.0gを得た。得られたTFE−PSVE共重合体を実施例1と同様にフッ素化処理し、白色のTFE−PSVE共重合体を101.2g得た。この共重合体には不安定末端の−COF基が炭素原子10個あたり48個含まれており、−COOH基、−CHOH基、−CF=CF基は炭素原子10個あたり1個以下だった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明により得られるパーフルオロカーボン重合体は高度にフッ素化されており、不安定末端基の量が少ない。このポリマーを加水分解、酸型化して得られるスルホン酸型パーフルオロカーボン重合体は、安定であり、例えば固体高分子型燃料電池用電解質として使用すると、耐久性に優れる固体高分子型燃料電池が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素化合物からなるラジカル重合開始剤と、フッ素原子で水素原子の一部が置換されていてもよい炭素数1〜2の飽和炭化水素又は水素からなる連鎖移動剤とを用い、重合媒体中で、−SOX基(Xはフッ素原子又は塩素原子)を有しエチレン性二重結合を有するパーフルオロカーボンモノマー(エーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい)と、二重結合を有しかつ炭素原子、ハロゲン原子及び酸素原子以外の原子を含まないパーハロゲノカーボンモノマーの少なくとも1種とを、共重合させた後、フッ素化処理することを特徴とするパーフルオロカーボン重合体の製造方法。
【請求項2】
前記パーハロゲノカーボンモノマーは、パーハロゲノオレフィンである請求項1に記載のパーフルオロカーボン重合体の製造方法。
【請求項3】
前記パーフルオロカーボンモノマーがCF=CFO(CFCF(CF)O)(CFSOFで表わされるモノマー(式中、mは2〜4の整数であり、nは0〜2の整数である。)であり、前記パーハロゲノオレフィンがテトラフルオロエチレンである請求項2に記載のパーフルオロカーボン重合体の製造方法。
【請求項4】
共重合は溶液重合で行われる請求項1〜3のいずれかに記載のパーフルオロカーボン重合体の製造方法。
【請求項5】
炭素数3〜10のパーフルオロカーボン、炭素数3〜10のハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜10のハイドロクロロフルオロカーボン、及び炭素数3〜10のクロロフルオロカーボンからなる群から選ばれる1種以上を前記重合媒体とする請求項4に記載のパーフルオロカーボン重合体の製造方法。
【請求項6】
前記連鎖移動剤の量が、前記パーフルオロカーボンモノマーと前記パーハロゲノカーボンモノマーの合量に対し質量比で0.1〜50%である請求項1〜5のいずれかに記載のパーフルオロカーボン重合体の製造方法。
【請求項7】
前記ラジカル重合開始剤は、式1〜7のいずれかで表わされる化合物(ただし、式中Rf1は炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基であり、Rf2及びRf3は炭素数3以上のポリフルオロアルキル基であり、Xはハロゲン原子であり、Rf4はフッ素原子又は炭素数1〜2のパーフルオロアルキル基であり、n1、n2、n3はそれぞれ独立に1以上の整数である。)からなる群から選ばれる1種以上であり、前記連鎖移動剤はメタン、エタン、CH、CHF、CHCFH又はCFCHFである請求項1〜6のいずれかに記載のパーフルオロカーボン重合体の製造方法。
【化1】

【請求項8】
スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなる固体高分子型燃料電池用電解質材料の製造方法であって、請求項1〜7のいずれかの方法によりSOX基を有するパーフルオロカーボン重合体を製造した後、加水分解、酸型化処理することを特徴とする電解質材料の製造方法。
【請求項9】
−SOH基を有しエチレン性二重結合を有するパーフルオロカーボンモノマー(エーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい)に基づくモノマー単位と、二重結合を有しかつ炭素原子、ハロゲン原子及び酸素原子以外の原子を含まないパーハロゲノカーボンモノマーに基づくモノマー単位とを含む重合体からなる固体高分子型燃料電池用電解質材料であって、−COF端末基の数が炭素原子10個あたり20個以下であることを特徴とする電解質材料。

【国際公開番号】WO2005/037879
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【発行日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514792(P2005−514792)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015243
【国際出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】