説明

ヒトP2Y12受容体遺伝子解析による冠状動脈疾患関連の遺伝子型の検出方法

【課題】血栓性疾患の早期診断および罹患危険率判定を可能にする手段の提供。
【解決手段】ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位(ここで、本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152377525位に相当する)の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とする、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法、該検出方法を利用した疾患罹患危険率検査方法、血小板の脱感作を誘導する化合物の同定方法、並びに前記検出方法および前記検査方法に用いるポリヌクレオチドおよび試薬キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトP2Y12受容体をコードする遺伝子(以下、ヒトP2Y12受容体遺伝子と称する)の1塩基変異部位の解析による、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法に関する。より詳しくは、本発明は、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とする、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法に関する(ここで、ゲノム塩基配列の第152539314位はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152377525位に相当する)。本発明はまた、前記検出方法を利用する冠状動脈疾患罹患危険率の検査方法に関する。本発明はさらに、血小板の脱感作を誘導する化合物の同定方法に関する。本発明はまた、前記検出方法および前記検査方法に用いるポリヌクレオチドおよび試薬キットに関する。
【背景技術】
【0002】
P2Y12受容体は、アデノシン 5´ジホスフェート(以下、ADPと略称する)と結合することにより、血小板を活性化させる受容体である(非特許文献1および非特許文献2)。血小板活性化は止血に関わる重要な生理現象である一方、血栓形成にも関わり血管閉塞や虚血性ダメージを引き起こす。
【0003】
ADPは血小板中の濃染顆粒に含まれており、血小板活性化に伴い細胞外に放出される。放出されたADPは周辺の血小板表面に存在する2種類のADP受容体(P2Y受容体およびP2Y12受容体)に結合することにより血小板凝集を促進する。P2Y受容体は三量体G蛋白質であるGqと共役しており、細胞内カルシウム濃度の上昇を介して形態変化等の血小板凝集の初期反応に関与している。P2Y12受容体はG蛋白質であるGiと共役しており、低分子量G蛋白質のRap1bやセリンスレオニンキナーゼのAktの活性化を介して血小板凝集塊の成長や安定化に関与している。
【0004】
ヒトP2Y12受容体遺伝子は、第3染色体q24−q25遺伝子座に存在する遺伝子である。該遺伝子は2つのエキソンを含み、その全長は約3.1kbであり、342アミノ酸からなる蛋白質をコードしている。
【0005】
ヒトP2Y12受容体遺伝子にはH1ハプロタイプおよびH2ハプロタイプと呼ばれる遺伝子多型が報告されている(特許文献1、非特許文献3および非特許文献4)。H1ハプロタイプは、アリル頻度が高く、正常遺伝子型であると考えられる。一方、H2ハプロタイプを有する個体ではADP誘起血小板凝集能が亢進していること、およびH2ハプロタイプが末梢動脈障害発症の危険因子となることが報告されている(非特許文献3および非特許文献4)。P2Y12受容体遺伝子のH2ハプロタイプを有する個体で血小板凝集能が亢進するメカニズムについては明らかになっていない。恐らく、細胞表面のP2Y12受容体数が増加しているのではないかと推測されている。
【0006】
ヒトP2Y12受容体遺伝子のH2ハプロタイプには、4種類の1塩基変異が存在する(表1)。以下、これら1塩基変異を既知1塩基変異と称する。これら既知1塩基変異を同定することにより、H2ハプロタイプを特定できることが開示されている(特許文献1)。また、H2ハプロタイプと末梢動脈疾患(Peripheral Arterial Disease、以下PADと略称することがある)との間に高い相関性が存在することが開示されている(特許文献1)。さらに、H2ハプロタイプの特定により、アテローム性血栓症の罹患危険率およびチエノピリジン抗血栓薬(例えばP2Y12受容体をターゲットとするクロピドグレルやチクロピジン等)に対する低感受性の検出を実施できると考えられることが開示されている(特許文献1)。
【0007】
【表1】

【0008】
表1において、ヒトP2Y12受容体遺伝子の1塩基変異の位置を、ヒトP2Y12受容体遺伝子が存在する第3染色体のゲノム塩基配列における位置として表した。
【0009】
ヒトP2Y12受容体遺伝子が存在する第3染色体の塩基配列は、GenBankアクセッション番号NC_000003として、NCBI(National Center for Biotechnology Information)公開データベースに開示されている。GenBankアクセッション番号NC_000003に開示されている塩基配列は、版の改訂が平成16年8月24日に行われた。平成16年8月24日以前の版はNC_000003.8[gi:42406220](NC_000003.8と称する)であり、それ以降の版はNC_000003.9[gi:51511463](NC_000003.9と称する)である。
【0010】
したがって、表1において、1塩基変異が存在する位置を、ヒトP2Y12受容体遺伝子が存在する第3染色体の塩基配列、すなわちGenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列における位置、およびGenBankアクセッション番号NC_000003.9に開示されている塩基配列における位置として表した。
【0011】
ヒトP2Y12受容体遺伝子の1塩基変異にはその他、ヒトP2Y12受容体遺伝子ゲノム塩基配列第152539314位(本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152377525位に相当する)の塩基のシトシン(C)からチミン(T)への変異が知られている。本1塩基変異は、クロピドグレル治療を受けている末梢動脈疾患患者における脳血管イベントの増加に関連していることが報告されている(非特許文献5)。具体的には、クロピドグレル治療を受けている末梢動脈疾患患者において、神経系の副作用を示す患者、例えば虚血性脳梗塞を発症する患者や、頚動脈ステント留置または動脈硬化切開術を行った患者が、本1塩基変異を有する患者では本1塩基変異を有さない患者と比較して約4倍高いことが報告されている。一方、本1塩基変異を有する患者の血小板凝集能が本1塩基変異を有さない患者と比較して低く、また心筋梗塞の危険性が低くなっているという報告もある(非特許文献6)。また、本1塩基変異は、ヒトP2Y12受容体遺伝子のH1/H2ハプロタイプとは連鎖していないと考えられること(非特許文献3および非特許文献7)、および本1塩基変異とADP誘起血小板凝集との関連はないと考えられること(非特許文献3)が報告されている。
【0012】
止血機構は、生体内で血管が損傷した場合、血管の機能、血小板機能、凝固・線溶系等の密接な相互作用のもとに働く生理的機構である。止血機構の異常は各種の出血性疾患や血栓性疾患等の原因になる。病的生理条件では、例えばアテローム斑の破裂により病的な血小板活性化が惹起され、その結果、動脈血栓が形成され、ひいては心筋梗塞、虚血性脳卒中、および末梢動脈疾患が引き起こされる可能性がある。
【0013】
血栓性疾患は、血栓による血管の狭窄あるいは閉塞に起因する疾患であり、血栓症と塞栓症とに分類できる。血栓症は、血栓がその形成箇所で血流を部分的にあるいは完全に閉塞することにより起こる症状であり、塞栓症は血栓がその形成箇所から剥がれて血流により移動し、他の箇所で血流を部分的にあるいは完全に閉塞することにより起こる症状をいう。向血栓性の血液凝固異常を伴う疾患として冠動脈疾患、末梢動脈疾患(PAD)、脳梗塞、および深部静脈血栓症が例示できる。
【0014】
冠動脈疾患(coronary artery disease、以下CADと略称することがある)は、冠状動脈の閉塞による疾患として知られている。CADは虚血性心疾患(ischemic heart disease)とも呼ばれ、心筋への血液供給が著しく減少するため、心筋梗塞、狭心症あるいは不整脈等の症状が引き起こされる。
【0015】
虚血性脳卒中は虚血性脳血管障害であり、脳梗塞や一過性脳虚血発作等が含まれる。脳梗塞は、脳卒中のなかに占める割合が高い。脳梗塞はその原因により2つ、すなわち脳血栓によるものと脳塞栓によるものとに大別される。脳血栓は脳の血管が動脈硬化等の変化により狭窄し、血流が悪くなって血栓を形成することに起因する。脳塞栓は心臓内や頚動脈において形成された血栓が血流により脳血管に運ばれた結果、脳血管の閉塞を起こすことに起因する。脳梗塞は心原性と非心原性に分類される。心原性脳梗塞では抗凝固薬、非心原性脳梗塞では抗血小板薬が特に有効であることが示されている。
【0016】
末梢動脈の閉塞による疾患として末梢動脈疾患(PAD)が知られている。PADは、ほとんどの患者ではアテローム性動脈硬化が基礎にあり、CADおよび心原性を除く脳梗塞と病態生理学的には極めて近いと考えられている。急性の虚血は近位の動脈硬化性プラークの破裂、先在するアテローム性動脈硬化による急性血栓症、心臓、大動脈または他の大型の脈管から飛来した塞栓、動脈瘤解離が原因である。慢性の虚血はアテローム斑が徐々に拡大することにより起こるとされている。この病態では、抗血小板薬が有効とされている。
【0017】
静脈血栓症は全身の表在性や深部のどの静脈にも起こり得るが、下腿静脈、大腿静脈、骨盤内深在静脈等の深部静脈血栓症(Deep Vein Thrombosis、以下DVTと略称することがある)は頻度も多く、致命的となり得る肺塞栓を生じる可能性があり臨床的に重要である。DVTでは、血管内皮細胞の傷害によりコラーゲンが露出し、組織トロンボブラスチンが放出され、ここにうっ血を伴うと血液凝固が亢進して血栓が形成すると考えられている。この病態では、抗凝固薬(ヘパリンやワーファリン等)や抗血小板薬(アスピリン等)が血栓の形成や拡大の防止に有効であることが知られている。
【0018】
【特許文献1】国際特許公開WO2004/035826号パンフレット。
【非特許文献1】ドーサム(Dorsam,R.T)ら、「ザ ジャーナル オブ クリニカル インベスティゲーション(The Journal Clinical Investigation)」、2004年、第113巻、第3号、p.340−345。
【非特許文献2】クナプリ(Kunapuli,S.P.)ら、「バイオケミカル ジャーナル(Biochemical Journal)」、1998年、第336巻、p.513−523。
【非特許文献3】フォンタナ(Fontana,P.)ら、「サーキュレーション(Circlation)」、2003年、第108巻、p.989−995。
【非特許文献4】フォンタナ(Fontana,P.)ら、「サーキュレーション(Circlation)」、2003年、第108巻、p.2971−2973。
【非特許文献5】ジーグラー(Ziegler,S.)ら、「ストローク(STROKE)」、2005年、第36巻、p.1394−1399。
【非特許文献7】フォン ベッケラス(Von Veckerath N.)ら、「ブラッド コアギュレーション フィブリノリシス(Blood Coagulation Fibrinolysis)」2005年、第16巻、p.199−204。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
血栓形成における初期反応である血小板凝集に中心的役割を果たすヒトP2Y12受容体をコードする遺伝子には、H1ハプロタイプおよびH2ハプロタイプと呼ばれる遺伝子多型が報告されている。H2ハプロタイプを有する個体では、血小板凝集能の亢進が認められている(非特許文献3および非特許文献4)。さらに、ヒトP2Y12受容体遺伝子ゲノム塩基配列第152539314位(本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、本位置はNC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列においては第152377525位に相当する)の塩基のシトシン(C)からチミン(T)への変異が、クロピドグレル治療を受けているPAD患者における脳血管イベントの増加に関連していることが報告されている(非特許文献5)。
【0020】
しかしながら、これらハプロタイプや1塩基変異等の複合的な要素と血小板反応性の関連性、およびこれらハプロタイプや1塩基変異等の複合的な要素と血栓形成に起因する疾患の関連性については明らかにされていない。
【0021】
血栓形成に起因する血栓性疾患、例えば冠動脈疾患や脳卒中はヒトの死因において多くの割合を占める疾患である。冠動脈疾患や脳卒中は、これら疾患の発症リスクを高める因子、例えば喫煙、高血圧、高脂肪/高コレステロール食習慣、肥満およびストレス等の是正により予防することができる。これら疾患の発症リスクの回避、早期治療、治療法の選択および薬物の用量設定を可能にするため、当該疾患の早期診断が望まれる。
【0022】
本発明の課題は、血栓性疾患と関連するヒトP2Y12受容体遺伝子の遺伝子型を明らかにし、それにより該疾患の早期診断および罹患危険率判定を可能にする手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、ヒトP2Y12受容体遺伝子の遺伝子型と血小板凝集能および血栓性疾患との関連を解析し、冠状動脈疾患と高い関連性を有すると考えることができるヒトP2Y12受容体遺伝子の遺伝子型を見出して本発明を完成した。
【0024】
ヒトP2Y12受容体遺伝子の遺伝子型の解析は、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプおよび該遺伝子内の1塩基変異部位のヌクレオチドを同定することにより行った。
【0025】
ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプおよび該遺伝子内の1塩基変異部位のヌクレオチドの同定は、ヒトP2Y12受容体遺伝子のテンプレートとして、遺伝子変異およびハプロタイプが考慮されていないGenBankアクセッション番号NC_000003遺伝子配列(第3染色体塩基配列であり、ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム配列を含む)を用い、日本人のゲノム試料を母集団として実施した。このテンプレート配列を参照配列と呼称することがある。本明細書において、1塩基変異部位は、参照配列における塩基の位置として定義する。
【0026】
GenBankアクセッション番号NC_000003として、NCBI公開データベースに開示されている塩基配列は、版の改訂が平成16年8月24日に行われた。平成16年8月24日以前の版はNC_000003.8[gi:42406220](NC_000003.8と称する)であり、それ以降の版はNC_000003.9[gi:51511463](NC_000003.9と称する)である。
【0027】
ヒトP2Y12受容体遺伝子を含む領域の位置は、GenBankアクセッション番号NC_000003.9に開示された塩基配列ではGenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されたものと比較して161789bp下流にシフトしている。したがって、GenBankアクセッション番号NC_000003.9に開示された塩基配列におけるヒトP2Y12受容体遺伝子を含む領域内の各塩基の位置は、GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列における当該各塩基の位置と比較して、161789bp下流に位置する。
【0028】
ヒトP2Y12受容体遺伝子を含む領域は、GenBankアクセッション番号NC_000003.9に開示されている塩基配列の第152544089位から第152537783位に相当する。一方、本領域は、GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列の第152382300位から第152375994位に相当する。
【0029】
ヒトP2Y12受容体遺伝子を含む領域、すなわちGenBankアクセッション番号NC_000003.9に開示されている塩基配列の第152544089位から第152537783位の塩基配列と、GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列の第152382300位から第152375994位の塩基配列は、完全に一致している。したがって、GenBankアクセッション番号NC_000003の版の改訂前後において、ヒトP2Y12受容体遺伝子の塩基配列は変化していない。
【0030】
このように、ヒトP2Y12受容体遺伝子を含む領域は、GenBankアクセッション番号NC_000003.8とGenBankアクセッション番号NC_000003.9とでその位置が相違するのみであることから、GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されたヒト第3染色体塩基配列における位置として表示したヒトP2Y12受容体遺伝子内の1塩基変異の位置を該位置に相当するGenBankアクセッション番号NC_000003.9に開示されたヒト第3染色体塩基配列における位置として表示したとき、位置を示す塩基番号は異なるが、それぞれの塩基番号により特定されるのは同じ1塩基変異である。
【0031】
本明細書においては、特に定義しない限り、参照配列としてGenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列を用い、ヒトP2Y12受容体遺伝子の各塩基の位置は、GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列における位置として示した。これら各塩基は、GenBankアクセッション番号NC_000003.9に開示されている塩基配列においては、GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列における位置の161789bp下流に位置する。すなわち、これら各塩基の位置は、GenBankアクセッション番号NC_000003.9に開示されている塩基配列においては、GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列における塩基番号に161789を加算した塩基番号で表すことができる。
【0032】
後述するヒトP2Y12受容体遺伝子の各塩基の位置について、GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列における位置と、GenBankアクセッション番号NC_000003.9に開示されている塩基配列における位置とを対比して、表2−1、表2−2、表2−3および表2−4に示す。
【0033】
【表2−1】

【0034】
【表2−2】

【0035】
【表2−3】

【0036】
【表2−4】

【0037】
ヒトP2Y12受容体遺伝子の各塩基の位置を示す塩基番号は、上述のように、ヒト第3染色体塩基配列を開示しているGenBankアクセッション番号NC_000003の版により、その版におけるヒトP2Y12受容体遺伝子を含む領域の位置がシフトすることがあるため、異なることがある。また、ヒトP2Y12受容体遺伝子の各塩基の位置を示す塩基番号は、GenBankアクセッション番号NC_000003に開示されている塩基配列とは別の塩基配列を参照配列として用いる場合、GenBankアクセッション番号NC_000003に開示されている塩基配列におけるものとは異なることがある。
【0038】
GenBankアクセッション番号NC_000003.8またはNC_000003.9に開示されている塩基配列とは別の塩基配列を参照配列として用いる場合、該参照配列におけるヒトP2Y12受容体遺伝子の1塩基変異部位は、次に示すように特定することができる。まず、GenBankアクセッション番号NC_000003.8またはNC_000003.9に開示されている塩基配列の部分塩基配列であって該1塩基変異部位のヌクレオチドを含む部分塩基配列を指標として用い、該部分塩基配列と相同な塩基配列を参照配列中に見出し、さらに該部分塩基配列と参照配列中の該部分塩基配列と相同な塩基配列とを比較して、参照配列における該1塩基変異部位を特定することにより決定することができる。GenBankアクセッション番号NC_000003.8またはNC_000003.9に開示されている塩基配列の部分塩基配列と相同な塩基配列を参照配列において検索することは、自体公知の相同性検索法、例えばブラストサーチ(BLAST search)により実施できる。GenBankアクセッション番号NC_000003.8またはNC_000003.9に開示されている塩基配列の部分塩基配列と、参照配列中の該部分塩基配列と相同な塩基配列は、完全に相同である必要はなく、参照配列中に複数の該部分塩基配列と相同な塩基配列が存在しない限りにおいて、1ないし数個の塩基が異なっていてもよい。
【0039】
具体的には、GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列の第152377525位は、該塩基配列とは別の塩基配列を参照配列として用いる場合、該参照配列における位置を次に示すように特定することができる。まず、配列表の配列番号62に記載の塩基配列(GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列の部分塩基配列)を指標として用いて該塩基配列と相同な塩基配列を参照配列中に見出す。GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列の第152377525位は、配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する。したがって、配列表の配列番号62に記載の塩基配列と参照配列中の該塩基配列と相同な塩基配列とを比較することにより、参照配列中の該塩基配列と相同な塩基配列中で、配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位を特定でき、さらに該特定された部位の参照配列における位置を決定することができる。
【0040】
また、GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列の第152379350位は、該塩基配列とは別の塩基配列を参照配列として用いる場合、該参照配列における位置を次に示すように特定することができる。まず、配列表の配列番号58に記載の塩基配列(GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列の部分塩基配列)を指標として用いて該塩基配列と相同な塩基配列を参照配列中に見出す。GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列の第152379350位は、配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する。したがって、配列表の配列番号58に記載の塩基配列と参照配列中の該塩基配列と相同な塩基配列とを比較することにより、参照配列中の該塩基配列と相同な塩基配列中で、配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位を特定でき、さらに該特定された部位の参照配列における位置を決定することができる。
【0041】
GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列の第152377507位は、該塩基配列とは別の塩基配列を参照配列として用いる場合、該参照配列における位置を次に示すように特定することができる。まず、配列表の配列番号62に記載の塩基配列(GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列の部分塩基配列)を指標として用いて該塩基配列と相同な塩基配列を参照配列中に見出す。GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列の第152377507位は、配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する。したがって、配列表の配列番号62に記載の塩基配列と参照配列中の該塩基配列と相同な塩基配列とを比較することにより、参照配列中の該塩基配列と相同な塩基配列中で、配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位を特定でき、さらに該特定された部位の参照配列における位置を決定することができる。
【0042】
参照配列におけるヒトP2Y12受容体遺伝子の1塩基変異部位の決定に有用な塩基配列情報、すなわちNC_000003.8またはNC_000003.9に開示されている塩基配列の部分塩基配列情報と、該部分塩基配列情報におけるヒトP2Y12受容体遺伝子の1塩基変異部位を表3に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
表3中、「*」にて表示したGenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列の第152378495位は、表1に示すように、ヒトP2Y12受容体遺伝子の遺伝子型がH2ハプロタイプである場合、その位置のヌクレオチドの塩基はAであるが、H1ハプロタイプである場合、その位置のヌクレオチドは欠失している。このような場合、GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列の第152378495位(目的の塩基の位置と称することがある)は、該塩基配列とは別の塩基配列を参照配列として用いるとき、該参照配列における位置を、次に示すように特定することができる。まず、配列表の配列番号60に記載の塩基配列(GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列の部分塩基配列)を指標として用いて該塩基配列と相同な塩基配列を参照配列中に見出す。次いで、配列表の配列番号60に記載の塩基配列の第107番目から第108番目のヌクレオチド(AA)に相当する部位を指標にして、参照配列における目的の塩基の位置を特定できる。
【0045】
本発明者らは、ヒトP2Y12受容体遺伝子の遺伝子型の解析を該遺伝子のハプロタイプおよび該遺伝子内の1塩基変異部位のヌクレオチドを同定することにより行った結果、ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列においてエキソン2より上流に存在する4種類の1塩基変異が該遺伝子のH2ハプロタイプと連鎖していることを明らかにした。
【0046】
また、ヒト血小板の低濃度ADPに対する凝集能を解析した結果、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位(本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152377525位に相当する)の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である個体由来の血小板は、これら遺伝子型を有さない個体由来の血小板と比較して、血小板凝集能が低いことを見出した。一方、高濃度ADPに対する凝集能は、前者由来の血小板と後者由来の血小板との間で、ほとんど差異は認められなかった。
【0047】
ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位(本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152377525位に相当する)の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である個体由来の血小板は、上記のようにADP刺激時の凝集能が低く、そのため生体血管内で絶えず生成されている微量のADPでは活性化・脱感作されにくい。脱感作とは血小板がADP等のP2Y12受容体作動薬により刺激された後、該作動薬で再度刺激しても充分に反応(凝集)できない状態を意味する。これに対し、上記のような遺伝子型を有さない個体由来の血小板は、ADPに対する反応性が高いため、生体血管内で生成される微量ADPに絶えず反応し、脱感作された状態に陥りやすい。
【0048】
冠状動脈疾患発症時に血小板は高濃度ADPに暴露される。このとき、脱感作された血小板はADPに充分反応できず、脆弱で小さい血栓を形成するのに対し、脱感作されにくい血小板はADPに敏感に反応し、強固で大きな血栓を形成して冠動脈疾患の発症ならびにその悪化に寄与すると考えられる。
【0049】
ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位(本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152377525位に相当する)の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である個体由来の血小板は、低濃度ADPに対する凝集能が低いため、生体血管内で生成されている微量のADPでは脱感作されにくく、その結果、冠状動脈疾患発症時に暴露される高濃度ADPに敏感に反応し、強固で大きな血栓を形成して冠動脈疾患の発症ならびにその悪化に寄与すると考えられる。
【0050】
実際、冠状動脈疾患患者において、P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列第152539314位(本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152377525位に相当する)の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である頻度が、健常人における該頻度と比較して、有意に高いことを本発明において見出した。
【0051】
本発明者らは、これら知見から、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列第152539314位(本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152377525位に相当する)の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型を有する個体は、このような遺伝子型を有さない個体と比較して冠状動脈疾患を引き起こす可能性が高いと考えている。そして、ヒトP2Y12受容体遺伝子のH1ハプロタイプの同定、および、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型の検出を、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法に利用すること、並びに該疾患の早期診断および罹患危険率判定のための検査方法に利用することにより本発明を完成した。
【0052】
すなわち、本発明は、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が下記工程を含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法に関する(ここで、ゲノム塩基配列の第152539314位はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152377525位に相当する):
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプを判別し得る1塩基変異部位のヌクレオチドを含むDNA断片、および該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位のヌクレオチドを含むDNA断片をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物の配列をシークエンス法で決定する、または、前記(i)の工程で得られたPCR産物について上記位置の塩基をタイピング法で決定する工程。
【0053】
本発明はまた、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または第152539296位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が下記工程を含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法に関する(ここで、ゲノム塩基配列の第152541139位、第152539296位および第152539314位はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、これら位置はそれぞれGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152379350位、第152377507位および第152377525位に相当する):
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位および/または第152539296位のヌクレオチドを含むDNA断片、および該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位のヌクレオチドを含むDNA断片をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物の配列をシークエンス法で決定する、または、前記(i)の工程で得られたPCR産物について上記位置の塩基をタイピング法で決定する工程。
【0054】
本発明はさらに、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または第152539296位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が、下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法に関する(ここで、ゲノム塩基配列の第152541139位、第152539296位および第152539314位はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、これら位置はそれぞれGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152379350位、第152377507位および第152377525位に相当する):
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号17および配列番号34に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物について、第152541139位に相当する位置の塩基を、配列番号41または配列番号43に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてタイピング法により決定する工程。
【0055】
本発明はさらにまた、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または第152539296位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が、下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152539296位がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法に関する(ここで、ゲノム塩基配列の第152541139位、第152539296位および第152539314位はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、これら位置はそれぞれGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152379350位、第152377507位および第152377525位に相当する):
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152539296位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号23および配列番号40に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物について、第152539296位に相当する位置の塩基を、配列番号42に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてタイピング法により決定する工程。
【0056】
本発明はまた、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または第152539296位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が、下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法に関する(ここで、ゲノム塩基配列の第152541139位、第152539296位および第152539314位はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、これら位置はそれぞれGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152379350位、第152377507位および第152377525位に相当する):
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号23および配列番号40に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物について、第152539314位に相当する位置の塩基を、配列番号50または配列番号55に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてタイピング法により決定する工程。
【0057】
本発明はさらに、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または第152539296位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が、下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法に関する(ここで、ゲノム塩基配列の第152541139位、第152539296位および第152539314位はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、これら位置はそれぞれGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152379350位、第152377507位および第152377525位に相当する):
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号5および配列番号6に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物の配列を、配列番号18および配列番号34に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてシークエンス法により決定する工程。
【0058】
本発明はさらにまた、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または第152539296位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が、下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152539296位がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法に関する(ここで、ゲノム塩基配列の第152541139位、第152539296位および第152539314位はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、これら位置はそれぞれGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152379350位、第152377507位および第152377525位に相当する):
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152539296位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号7または配列番号51に記載のポリヌクレオチド、および、配列番号8または配列番号52に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物の配列を、配列番号24または配列番号53に記載のポリヌクレオチド、および、配列番号40または配列番号54に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてシークエンス法により決定する工程。
【0059】
本発明はまた、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または第152539296位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が、下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法に関する(ここで、ゲノム塩基配列の第152541139位、第152539296位および第152539314位はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、これら位置はそれぞれGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152379350位、第152377507位および第152377525位に相当する):
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号7または配列番号51に記載のポリヌクレオチド、および、配列番号8または配列番号52に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物の配列を、配列番号24または配列番号53に記載のポリヌクレオチド、および、配列番号40または配列番号54に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてシークエンス法により決定する工程。
【0060】
本発明はさらに、前記いずれかの冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法を用いることを特徴とする冠状動脈疾患の罹患危険率検査方法に関する。
【0061】
本発明はさらにまた、ヒトP2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であるP2Y12受容体遺伝子によりコードされるアミノ酸配列で表される蛋白質を保持する血小板(血小板A)と、対照血小板(血小板B、ここで血小板Bは、次の群から選ばれるいずれか1のP2Y12受容体遺伝子によりコードされるアミノ酸配列で表される蛋白質を保持する血小板である:(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列第152539314位の遺伝子型がC/TまたはT/Tである;(ii)ヒトP2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH1/H2ハプロタイプ ヘテロ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列第152539314位の遺伝子型がC/C、C/T、またはT/Tである;および(iii)ヒトP2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH2ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列第152539314位の遺伝子型がC/C、C/T、またはT/Tである)とを、それぞれある化合物の存在下でヒトP2Y12受容体作動薬と接触させて血小板凝集反応を惹起し、ついで血小板Aによる血小板凝集反応の用量依存性曲線と血小板Bによる血小板凝集凝集反応の用量依存性曲線を比較することを含む、ヒトP2Y12受容体作動薬に対する血小板の脱感作を誘導する化合物の同定方法に関する(ここで、ゲノム塩基配列の第152539314位はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152377525位に相当する)。
【0062】
本発明はまた、ヒトP2Y12受容体作動薬が、アデノシン 5´ジホスフェートである前記化合物の同定方法に関する。
【0063】
本発明はさらに、配列表の配列番号50から配列番号55のいずれか1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドに関する。
【0064】
本発明はさらにまた、配列表の配列番号50から配列番号55のいずれか1に記載のポリヌクレオチドを含む試薬キットに関する。
【0065】
本発明はまた、配列表の配列番号50から配列番号55のいずれか1に記載のポリヌクレオチドと、配列表の配列番号1から配列番号49のいずれか1に記載のポリヌクレオチドとを含む試薬キットに関する。
【0066】
本発明はさらに、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が下記工程を含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法に関する:
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位および/または該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位のヌクレオチドを含むDNA断片、および、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位のヌクレオチドを含むDNA断片をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物の配列をシークエンス法で決定する、または、前記(i)の工程で得られたPCR産物について上記位置の塩基をタイピング法で決定する工程。
【0067】
本発明はさらにまた、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法に関する:
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号17および配列番号34に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物について、ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の塩基を、配列番号41または配列番号43に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてタイピング法により決定する工程。
【0068】
本発明はまた、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法に関する:
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号23および配列番号40に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物について、ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の塩基を、配列番号42に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてタイピング法により決定する工程。
【0069】
本発明はさらに、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法に関する:
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号23および配列番号40に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物について、ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の塩基を、配列番号50または配列番号55に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてタイピング法により決定する工程。
【0070】
本発明はさらにまた、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法に関する:
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号5および配列番号6に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物の配列を、配列番号18および配列番号34に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてシークエンス法により決定する工程。
【0071】
本発明はまた、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法に関する:
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号7または配列番号51に記載のポリヌクレオチド、および、配列番号8または配列番号52に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物の配列を、配列番号24または配列番号53に記載のポリヌクレオチド、および、配列番号40または配列番号54に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてシークエンス法により決定する工程。
【0072】
本発明はさらに、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法に関する:
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号7または配列番号51に記載のポリヌクレオチド、および、配列番号8または配列番号52に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物の配列を、配列番号24または配列番号53に記載のポリヌクレオチド、および、配列番号40または配列番号54に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてシークエンス法により決定する工程。
【0073】
本発明はさらにまた、前記いずれかの冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法を用いることを特徴とする冠状動脈疾患の罹患危険率検査方法に関する。
【0074】
本発明はまた、ヒトP2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であるP2Y12受容体遺伝子によりコードされるアミノ酸配列で表される蛋白質を保持する血小板(血小板A)と、対照血小板(血小板B、ここで血小板Bは、次の群から選ばれるいずれか1のP2Y12受容体遺伝子によりコードされるアミノ酸配列で表される蛋白質を保持する血小板である:(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/TまたはT/Tである;(ii)ヒトP2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH1/H2ハプロタイプ ヘテロ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/C、C/T、またはT/Tである;および(iii)ヒトP2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH2ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/C、C/T、またはT/Tである)とを、それぞれある化合物の存在下でヒトP2Y12受容体作動薬と接触させて血小板凝集反応を惹起し、ついで血小板Aによる血小板凝集反応の用量依存性曲線と血小板Bによる血小板凝集凝集反応の用量依存性曲線を比較することを含む、ヒトP2Y12受容体作動薬に対する血小板の脱感作を誘導する化合物の同定方法に関する。
【発明の効果】
【0075】
本発明において、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位(本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152377525位に相当する)の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とする、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法を提供できる。
【0076】
冠状動脈疾患患者では、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位(本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152377525位に相当する)の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である頻度が、健常者と比較して有意に高いことを本発明において明らかにした。
【0077】
したがって、前記検出方法により、ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位(本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152377525位に相当する)の遺伝子型がC/Cであると特定された場合、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有すると判定できる。
【0078】
本発明においては、前記検出方法を用いる冠状動脈疾患の罹患危険率検査方法を提供できる。さらに、前記検出方法および前記検査方法に用いるポリヌクレオチドおよび試薬キットを提供できる。
【0079】
本発明により冠状動脈疾患の罹患危険率が高いと判定された場合、発症する前にそれらの危険因子、例えば喫煙、高血圧、高脂肪/高コレステロール食習慣、肥満およびストレス等の是正を行なうことができる。
【0080】
また、本発明においては、ヒトP2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位(本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152377525位に相当する)の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であるヒトP2Y12受容体遺伝子によりコードされるアミノ酸配列で表される蛋白質を保持する血小板を用いて、P2Y12受容体作動薬、例えばADPに対する血小板の脱感作を誘導する化合物の同定方法を提供できる。本同定方法で同定された化合物は、ADPに対する血小板の脱感作を誘導できるため、冠状動脈疾患等の血栓性疾患の発症時に見られる高濃度ADPに対する血小板の凝集反応を低下させることができ、その結果、血栓の形成を阻害または低減できる。このような化合物は、血小板の脱感作誘導剤、血栓の形成阻害剤、および冠状動脈疾患等の血栓性疾患の防止剤および治療剤の有効成分として用いることができる。また、これら薬剤を用いて血栓性疾患の防止および治療を実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0081】
本発明においては、ヒトP2Y12受容体遺伝子の遺伝子型と血小板凝集能および血栓性疾患との関連を解析し、その結果、冠状動脈疾患と高い関連性を有すると考えることができるヒトP2Y12受容体遺伝子の遺伝子型を見出した。
【0082】
ヒトP2Y12受容体遺伝子の遺伝子型の解析は、該遺伝子のハプロタイプおよび該遺伝子内の1塩基変異部位のヌクレオチドを同定することにより行った。
【0083】
以下においてヒトP2Y12受容体遺伝子の各塩基の位置を示すときには、特に定義しない限り、GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列における位置として示す。
【0084】
P2Y12受容体遺伝子とは、以下、ヒトP2Y12受容体遺伝子を意味する。
【0085】
「遺伝子型」とは、1つの遺伝座について、1つの個体に存在する2つの対立遺伝子の組合わせを意味する。
【0086】
「対立遺伝子(allele)」とは、同一遺伝子座に起こったDNA塩基配列の差に基づく差異を有する2個以上の遺伝子を意味する。
【0087】
「ハプロタイプ」とは、1本の染色体(ハプロイド;半数体)上の複数の遺伝子座の対立遺伝子の組合わせのタイプ、または同一遺伝子上の複数の1塩基変異部位の組合わせのタイプを意味する。
【0088】
「P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプ」とは、P2Y12受容体遺伝子上の複数の1塩基変異部位の組合わせのタイプを意味する。P2Y12受容体遺伝子にはH1ハプロタイプおよびH2ハプロタイプと呼ばれる遺伝子多型が報告されている(特許文献1、非特許文献3および非特許文献4)。H1ハプロタイプは、アリル頻度が高く、正常遺伝子型であると考えられる。一方、H2ハプロタイプを有する個体ではADP誘起血小板凝集能が亢進していること、およびH2ハプロタイプが末梢動脈障害発症の危険因子となることが報告されている(非特許文献3および非特許文献4)。
【0089】
「1塩基変異部位」とは、遺伝子の塩基配列内において1塩基変異が生じている位置を意味する。1塩基変異とは、置換、欠失および挿入といった変異による単一塩基の別の塩基への変化を意味する。
【0090】
P2Y12受容体遺伝子の遺伝子型と血小板凝集能および血栓性疾患との関連を解析した結果、具体的には、P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることが、冠状動脈疾患と関連することが明らかになった。
【0091】
より具体的には、健常人由来の血小板を用い、P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である個体由来の血小板と、これら遺伝子型を有さない個体由来の血小板について、ADPに対する血小板凝集能を比較した結果、前者由来の血小板は後者由来の血小板と比較して、低濃度ADPに対する凝集能が低いことが判明した。一方、高濃度ADPに対する凝集能は、前者由来の血小板と後者由来の血小板との間で、ほとんど差異は認められなかった。
【0092】
「ホモ接合体」は、同型接合体とも称され、ある遺伝子座で、同じかまたは実験的に区別のつかない対立遺伝子を持つ接合体をいう。これに対し、ある遺伝子座で、別の対立遺伝子を持つ接合体をヘテロ接合体と称する。
【0093】
「P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体である」とは、P2Y12受容体遺伝子の対立遺伝子が両方共に、H1ハプロタイプのP2Y12受容体遺伝子であることを意味する。
【0094】
「第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である」とは、P2Y12受容体遺伝子の対立遺伝子の両方において、第152377525位のヌクレオチドの塩基がシトシン(C)であることを意味する。
【0095】
本明細書において、「H1 homo & 152377525 C/C」という記載は、P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを意味する。
【0096】
「Others」という記載は、P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体ではないことおよび/または該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型ではないことを意味する。「Others」には、次の例が含まれる:(1)P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/TまたはT/Tである;(2)H1/H2ハプロタイプ ヘテロ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/C、C/T、またはT/Tである;および(3)H2ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/C、C/T、またはT/Tである。
【0097】
一方、P2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である個体由来の血小板と、該部位の遺伝子型がC/C以外の遺伝子型である個体由来の血小板について、ADPに対する血小板凝集能を比較した結果、前者由来の血小板は後者由来の血小板と比較して、ADPの濃度に拘らず凝集能が低いことが判明した。
【0098】
本明細書において、「152377525 C/C」という記載は、P2Y12受容体のハプロタイプに拘らず、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを意味する。
【0099】
「152377525 T carriers」という記載は、P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプに拘らず、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/C以外の遺伝子型であることを意味する。「152377525 T carriers」には、P2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Tである例またはT/Tである例が含まれる。
【0100】
これに対して、P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体である個体由来の血小板と、該遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体以外のハプロタイプである個体由来の血小板について、ADPに対する血小板凝集能を比較した結果、ADPの濃度に拘らず、両者の凝集能にほとんど差異は認められなかった。
【0101】
本明細書において、「H1 homo」という記載は、P2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型に拘らず、該遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを意味する。
【0102】
「H2 carriers」という記載は、P2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型に拘らず、該遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体ではないことを意味する。「H2 carriers」には、P2Y12受容体遺伝子の遺伝子型がH1/H2ハプロタイプ ヘテロ接合体である例またはH2ハプロタイプ ホモ接合体である例が含まれる。
【0103】
P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である個体由来の血小板は、上記のようにADP刺激時の凝集能が低く、そのため生体血管内で絶えず生成されている微量のADPでは活性化・脱感作されにくい。脱感作とは血小板がADP等のP2Y12受容体作動薬により刺激された後、該作動薬で再度刺激しても充分に反応(凝集)できない状態を意味する。これに対し、上記のような遺伝子型を有さない個体由来の血小板は、ADPに対する反応性が高いため、生体血管内で生成される微量ADPに絶えず反応し、脱感作された状態に陥りやすい。
【0104】
冠状動脈疾患発症時に血小板は高濃度ADPに暴露される。このとき、脱感作された血小板はADPに充分反応できず、脆弱で小さい血栓を形成するのに対し、脱感作されにくい血小板はADPに敏感に反応し、強固で大きな血栓を形成して冠動脈疾患の発症ならびにその悪化に寄与すると考えられる。
【0105】
P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である個体由来の血小板は、低濃度ADPに対する凝集能が低いため、生体血管内で生成されている微量のADPでは脱感作されにくく、その結果、冠状動脈疾患発症時に暴露される高濃度ADPに敏感に反応し、強固で大きな血栓を形成して冠動脈疾患の発症ならびにその悪化に寄与すると考えられる。
【0106】
P2Y12受容体遺伝子の遺伝子型と疾患との関連性を、冠状動脈疾患患者および健常人それぞれに由来するゲノム試料(以下、それぞれCAD群およびコントロール群と称することがある)を用いてケース−コントロール研究により解析した結果、P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である頻度が、冠状動脈疾患患者において有意に高いことが判明した。
【0107】
解析は、単変量解析および多変量解析により実施した。単変量解析は遺伝子の1塩基多型を独立変数として行った。多変量解析は、遺伝子の1塩基多型、高脂血症、高血圧、糖尿病の有無、喫煙の既往、および体格指数(BMI値)といった因子を独立変数に用い、単変量解析により有意差が検出された場合に実施した。
【0108】
具体的には、CAD群およびコントロール群それぞれの、「H1 homo & 152377525 C/C」および「Others」の例数を基に、単変量解析および多変量解析を実施した結果、単変量解析および多変量解析の両解析で高いオッズレシオ(OR)が得られ、また得られたORは95%信頼区間(95% CI)の値から信頼性があると判定できた。本結果により、「H1 homo & 152377525 C/C」はCADと関連することが信頼性をもって実証された。
【0109】
一方、CAD群およびコントロール群それぞれの、「152377525 C/C」および「152377525 T carriers」の例数を基に、単変量解析および多変量解析を実施したときは、単変量解析および多変量解析の両解析で得られたORは低く、また得られたORは95% CIの値から信頼性がないことが判明した。本結果から、「152377525 C/C」がCADと関連する可能性は低いと考えられる。
【0110】
また、CAD群およびコントロール群それぞれの、「H1 homo」および「H2 carriers」の例数を基に、単変量解析および多変量解析を実施したときは、単変量解析および多変量解析の両解析で高いORが得られたが、得られたORは95% CIの値から信頼性がないことが判明した。本結果から、「H1 homo」がCADと関連する可能性は低いと考えられる。
【0111】
このように、P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型は、その頻度が冠状動脈疾患患者において健常人と比較して有意に高いことから、冠状動脈疾患の発症と強く関連していると本発明者らは考えている。上記多変量解析で独立変数として用いた高血圧、高コレステロール、糖尿病、喫煙が冠状動脈疾患の独立危険因子であることは、多くのケース−コントロール研究で確認されている。本発明における多変量解析において、高血圧、高コレステロール、糖尿病、喫煙が独立危険因子であることが上記全ての解析で確認された。このことは、本解析における標本サンプリングならびに解析が妥当に行われていることを意味し、ゆえに、P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることが冠状動脈疾患の危険因子であることを強く支持するものである。
【0112】
本発明の1態様は、P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とする、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法に関する。
【0113】
P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることは、P2Y12受容体遺伝子についてH1ハプロタイプとH2ハプロタイプの判別を行うことにより実施できる。
【0114】
ヒト由来のゲノム試料において、H1ハプロタイプのP2Y12受容体遺伝子が検出され、かつH2ハプロタイプのP2Y12受容体遺伝子が検出されない場合、該試料中のP2Y12受容体遺伝子はH1ハプロタイプのホモ接合体であると判定できる。これに対し、ヒト由来のゲノム試料において、H2ハプロタイプのP2Y12受容体遺伝子が検出され、かつH1ハプロタイプのP2Y12受容体遺伝子が検出されない場合、該試料中のP2Y12受容体遺伝子はH2ハプロタイプのホモ接合体であると判定できる。また、ヒト由来のゲノム試料において、H1ハプロタイプのP2Y12受容体遺伝子およびH2ハプロタイプのP2Y12受容体遺伝子がいずれも検出された場合、該試料中のP2Y12受容体遺伝子はH1/H2ハプロタイプのヘテロ接合体であると判定できる。
【0115】
P2Y12受容体遺伝子のH1ハプロタイプとH2ハプロタイプの判別は、これらハプロタイプを特定し得る1塩基変異部位のヌクレオチドの種類を同定することにより実施できる。
【0116】
H2ハプロタイプに存在する1塩基変異は、既に4種類が報告されており(表1)、これら既知1塩基変異を同定することにより、H2ハプロタイプを特定できることが開示されている(特許文献1)。これら既知1塩基変異は、白色人種健常人由来のゲノム試料において見出されたものである。また、欧米人においてH1ハプロタイプおよびH2ハプロタイプのアリル頻度は、それぞれ86.2%および13.8%であることが報告されている(非特許文献3)。
【0117】
本発明においては、P2Y12受容体遺伝子のゲノム配列において、H2ハプロタイプと連鎖している4種類の新たな1塩基変異が、該遺伝子のゲノム配列においてエキソン2より上流に存在することを見出した(実施例1および表7参照)。
【0118】
また、本発明において、表1に示した既知1塩基変異のうち、エキソン2に存在する1塩基変異(第152377507位のGからTへの変異)が認められないH2ハプロタイプを有する5例を日本人健常人由来のゲノム試料において見出した。これらの例においては、P2Y12受容体遺伝子に、本発明において見出した4種類の1塩基変異(表7参照)が認められ、さらに表1に示した4種類の既知1塩基変異のうちエキソン2に存在する1塩基変異を除いた3種類の1塩基変異が認められた。このように、P2Y12受容体遺伝子のエキソン2に存在する1塩基変異(第152377507位のGからTへの変異)が従来のH2ハプロタイプと異なる遺伝子型を示す例が存在することが明らかになった(表8参照)。ここで見出したP2Y12受容体遺伝子の遺伝子型をH2´ハプロタイプと呼称する(例数=5)。H2´ハプロタイプの存在は日本人のゲノム試料を用いた解析で判明したが、既報のハプロタイプが日本人にも全く同位置に存在することから、H2´ハプロタイプは欧米人にも存在すると推察する。H2´ハプロタイプは、表1に示した既知1塩基変異のうち、エキソン2に存在する1塩基変異(第152377507位のGからTへの変異)が認められないが、本発明に係るP2Y12受容体遺伝子の1塩基変異の4種類すべてが認められた。H2´ハプロタイプは、H2ハプロタイプと1箇所の1塩基変異の有無が異なるのみであることから、H2ハプロタイプと同様に血小板凝集能の亢進に関連すると考える。
【0119】
P2Y12受容体遺伝子のH1ハプロタイプの特定は、具体的には、P2Y12受容体遺伝子の下記1塩基変異部位のヌクレオチドの1つまたは2つ以上を検出することにより実施できる:
(1)第152381673位の塩基がグアニン(G)、
(2)第152380188位の塩基がチミン(T)、
(3)第152379350位の塩基がシトシン(C)、
(4)第152379156位の塩基がシトシン(C)、
(5)第152378551位の塩基がチミン(T)、
(6)第152378495位の塩基に挿入変異がない、
(7)第152378084位の塩基がチミン(T)、
(8)第152377507位の塩基がグアニン(G)。
【0120】
P2Y12受容体遺伝子のH1ハプロタイプの同定は、好ましくは、第152379350位の塩基がシトシン(C)であること、および/または、第152377507位の塩基がグアニン(G)であることを検出することにより実施できる。該同定は、より好ましくは、第152379350位の塩基がシトシン(C)であること、および、第152377507位の塩基がグアニン(G)であることを検出することにより実施できる。
【0121】
ヒト由来のゲノム試料において、P2Y12受容体遺伝子のH1ハプロタイプとH2ハプロタイプを特定し得る上記1塩基変異部位の1つまたは2つ以上がH1ハプロタイプに存在するヌクレオチドのみで表される遺伝子型である場合、該試料中のP2Y12受容体遺伝子はH1ハプロタイプのホモ接合体であると判定できる。
【0122】
「1塩基変異部位の1つまたは2つ以上がH1ハプロタイプに存在するヌクレオチドのみで表される遺伝子型である」とは、P2Y12受容体遺伝子の対立遺伝子の両方において、該1塩基変異部位のヌクレオチドが、該遺伝子のH1ハプロタイプに存在するヌクレオチドであることを意味する。
【0123】
ヒト由来のゲノム試料において、H1ハプロタイプとH2ハプロタイプを特定し得る上記1塩基変異部位のヌクレオチドの1つまたは2つ以上がH1ハプロタイプに存在するヌクレオチドであるP2Y12受容体遺伝子が検出され、かつ該1塩基変異部位のヌクレオチドがH2ハプロタイプに存在するヌクレオチドであるP2Y12受容体遺伝子が検出されなかった場合、該試料中のP2Y12受容体遺伝子はH1ハプロタイプのホモ接合体であると判定できる。これに対し、該1塩基変異部位のヌクレオチドがH2ハプロタイプに存在するヌクレオチドであるP2Y12受容体遺伝子が検出され、該1塩基変異部位のヌクレオチドがH1ハプロタイプに存在するヌクレオチドであるP2Y12受容体遺伝子が検出されなかった場合、該試料中のP2Y12受容体遺伝子はH2ハプロタイプのホモ接合体であると判定できる。また、該1塩基変異部位のヌクレオチドがH1ハプロタイプに存在するヌクレオチドであるP2Y12受容体遺伝子と該1塩基変異部位のヌクレオチドがH2ハプロタイプに存在するヌクレオチドであるP2Y12受容体遺伝子の両方が検出された場合、該試料中のP2Y12受容体遺伝子はH1/H2ハプロタイプ ヘテロ接合体であると判定できる。
【0124】
例えば、ヒト由来のゲノム試料において、P2Y12受容体遺伝子の第152379350位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であり、および/または、第152377507位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型である場合、該試料中のP2Y12受容体遺伝子はH1ハプロタイプのホモ接合体であると判定できる。
【0125】
「第152379350の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である」とは、P2Y12受容体遺伝子の対立遺伝子の両方において、第152379350位の塩基がシトシン(C)であることを意味する。「第152377507の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型である」とは、P2Y12受容体遺伝子の対立遺伝子の両方において、第152377507位の塩基がグアニン(G)であることを意味する。
【0126】
ヒト由来のゲノム試料において、第152379350位の塩基がシトシン(C)であるP2Y12受容体遺伝子が検出され、かつ該1塩基変異部位の塩基がシトシン(C)以外の塩基であるP2Y12受容体遺伝子が検出されなかった場合、該試料中のP2Y12受容体遺伝子の遺伝子型は第152379350位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であると判定できる。また、第152377507位の塩基がグアニン(G)であるP2Y12受容体遺伝子が検出され、かつ該1塩基変異部位の塩基がグアニン(G)以外の塩基であるP2Y12受容体遺伝子が検出されなかった場合、該試料中のP2Y12受容体遺伝子の遺伝子型は第152377507位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であると判定できる。
【0127】
一方、P2Y12受容体遺伝子の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることは、P2Y12受容体遺伝子の第152377525位のヌクレオチドの同定を行い、該ヌクレオチドの塩基がシトシン(C)であることを検出することにより決定できる。
【0128】
ヒト由来のゲノム試料において、第152377525位の塩基がシトシン(C)であるP2Y12受容体遺伝子が検出され、かつ該1塩基変異部位の塩基がシトシン(C)以外の塩基であるP2Y12受容体遺伝子が検出されなかった場合、該試料中のP2Y12受容体遺伝子の遺伝子型は第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であると判定できる。
【0129】
上記のように、本発明に係る検出方法は、P2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該遺伝子のH1ハプロタイプとH2ハプロタイプを判別し得る1塩基変異部位、および該ゲノム塩基配列の第152377525位のヌクレオチドを検出し、その種類を同定することを手段とする。
【0130】
ヌクレオチドの検出およびその種類の同定は、自体公知の方法を使用して実施できる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCRと略称する)により、所望の位置の塩基を含むP2Y12受容体遺伝子の部分配列を増幅し、得られた増幅産物の塩基配列をシークエンス法、例えばダイレクトシークエンシング法により配列決定する方法を用いることができる。配列決定法としてはシークエンス法以外に、ハイブリダイゼーション法および制限酵素断片長多型(RFLP)解析法等が利用できる。
【0131】
ヌクレオチドの検出およびその種類の同定は、具体的には以下のように実施できる。第152379350位のヌクレオチドの検出およびその種類の同定は、例えば、ゲノムDNAについて、配列番号5および配列番号6に記載の各ポリヌクレオチドをプライマーとして用いてPCRを行い、得られた増幅産物の塩基配列をシークエンス法により決定することにより実施できる。シークエンス法に用いるプライマー(以下、シークエンシング用プライマーと称する)として、配列番号18および配列番号34に記載の各ポリヌクレオチドを例示できる。第152377507位のヌクレオチドの検出およびその種類の同定は、例えば、PCRプライマーとして配列番号7または配列番号51に記載の各ポリヌクレオチド、および、配列番号8または配列番号52に記載の各ポリヌクレオチドを用い、シークエンシング用プライマーとして配列番号24または配列番号53に記載の各ポリヌクレオチド、および、配列番号40または配列番号54に記載の各ポリヌクレオチドを用いて、上記同様の方法で実施できる。第152377525位のヌクレオチドの検出およびその種類の同定は、例えば、PCRプライマーとして配列番号7または配列番号51に記載の各ポリヌクレオチド、および、配列番号8または配列番号52に記載の各ポリヌクレオチドを用い、シークエンシング用プライマーとして配列番号24または配列番号53に記載の各ポリヌクレオチド、および、配列番号40または配列番号54に記載の各ポリヌクレオチドを用いて、上記同様の方法で実施できる。第152381673位のヌクレオチドの検出およびその種類の同定は、例えば、PCRプライマーとして配列番号1および配列番号2に記載の各ポリヌクレオチドを用い、シークエンシング用プライマーとして配列番号10および配列番号28に記載の各ポリヌクレオチドを用いて、上記同様の方法で実施できる。第152380188位のヌクレオチドの検出およびその種類の同定は、例えば、PCRプライマーとして配列番号3および配列番号4に記載の各ポリヌクレオチドを用い、シークエンシング用プライマーとして配列番号32に記載のポリヌクレオチドを用いて、上記同様の方法で実施できる。第152378084位のヌクレオチドの検出およびその種類の同定は、例えば、PCRプライマーとして配列番号7および配列番号8に記載の各ポリヌクレオチドを用い、シークエンシング用プライマーとして配列番号39に記載のポリヌクレオチドを用いて、上記同様の方法で実施できる。第152379156位、第152378551位、第152378495位のヌクレオチドの検出およびその種類の同定も、適当なPCRプライマーおよびシークエンシング用プライマーをP2Y12受容体遺伝子の塩基配列に基づいて設計して取得し、これらプライマーを用いて上記同様の方法で実施できる。P2Y12受容体遺伝子のこれら各位置を含む所望の領域を増幅するためのPCRに用いるプライマーは上記例示したポリヌクレオチドに限定されず、該所望の領域を増幅し得るプライマーであればいずれも使用できる。また、シークエンシング用プライマーも上記例示したポリヌクレオチドに限定されず、P2Y12受容体遺伝子のこれら各位置を含む所望の領域の塩基配列を決定し得るプライマーであればいずれも使用できる。PCRおよびシークエンス法は、一般的に知られている方法に準じて実施できる。
【0132】
ヌクレオチドの種類の同定は、その他、公知の1塩基変異検出法を利用して実施できる。1塩基変異検出法として、例えば、SNuPe法等の遺伝子タイピング法が挙げられる。SNuPe法によるヌクレオチドの種類の同定は、具体的には、第152379350位のヌクレオチドを例にすると、該塩基を含むDNA断片を配列番号17および配列番号34に記載の各ポリヌクレオチドをプライマーとして用いてゲノムDNAからPCRにより増幅し、得られた増幅産物の標的位置の塩基の種類を配列番号41または配列番号43に記載のポリヌクレオチドをタイピング用プライマーとして用いてSNuPe法でタイピングすることにより実施できる(実施例参照)。第152377507位のヌクレオチドの種類の同定は、例えば、PCRプライマーとして配列番号23および配列番号40に記載の各ポリヌクレオチドを用い、タイピング用プライマーとして配列番号42に記載のポリヌクレオチドを用いて、上記同様の方法で実施できる。第152377525位のヌクレオチドの種類の同定は、例えば、PCRプライマーとして配列番号23および配列番号40に記載の各ポリヌクレオチドを用い、タイピング用プライマーとして配列番号50または配列番号55に記載のポリヌクレオチドを用いて、上記同様の方法で実施できる。152381673位、第152380188位および第152378084位の塩基の決定も、同様に実施できる。これら位置の塩基のタイピングに用いるタイピング用プライマーは、該位置に隣接する上流または下流の塩基配列から適宜設計し取得できる。具体的には、第152381673位の塩基のタイピング用プライマーとして、配列番号44または配列番号45に記載のポリヌクレオチドを例示できる。第152380188位の位の塩基のタイピング用プライマーとして、配列番号46または配列番号47に記載のポリヌクレオチドを例示できる。第152378084位の塩基のタイピング用プライマーとして、配列番号48または配列番号49に記載のポリヌクレオチドを例示できる。第152379156位、第152378551位、第152378495位のヌクレオチドの種類の同定も、適当なPCRプライマーおよびタイピング用プライマーをP2Y12受容体遺伝子の塩基配列に基づいて設計して取得し、これらプライマーを用いて上記同様の方法で実施できる。P2Y12受容体遺伝子のこれら各位置を含む所望の領域を増幅するためのPCRに用いるプライマーは上記例示したポリヌクレオチドに限定されず、該所望の領域を増幅し得るプライマーであればいずれも使用できる。また、タイピング用プライマーも上記例示したポリヌクレオチドに限定されず、P2Y12受容体遺伝子のこれら各位置のヌクレオチドの種類を同定し得るプライマーであればいずれも使用できる。PCRおよび遺伝子タイピング法は、一般的に知られている方法に準じて実施できる。
【0133】
ヌクレオチドの検出およびその種類の同定は、その他、自体公知の1塩基変異解析方法を適用して実施できる。1塩基変異解析方法として、蛍光を用いる方法、例えばインベーダーアッセイ(リアミチェフ(Lyamichev,V.)ら、「ネイチャー バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)」、1999年、第17巻、p.292−296)やルミネックス法(チェン(Chen,J.)ら、「ゲノム リサーチ(Genome Research)」、2000年、第10巻、p.549−557)を例示できる。また、マススペクトルを用いる方法、例えばプライマー伸張法を応用した方法を用いることもできる。このような方法として、ピンポイントアッセイ(ロス(Ross,P.)ら、「ネイチャー バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)」、1998年、第16巻、p.1347−1351)やプローブ法(ブラウン(Braun,A.)ら、「クリニカル ケミストリー(Clinical Chemistry)」、1997年、第43巻、p.1151−1158)等を例示できる。さらに、ドールアッセイ(DOL assay、チェン(Chen,X.)ら、「プロシーディング オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンス オブ ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ(Proceedings of The National Academy of Sciences of The United States of America)」、1997年、第94巻、p.10756−10761)、スナイパーアッセイ(ピアテク(Piatek,A.S.)ら、「ネイチャー バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)」、1998年、第16巻、p.359−363)およびタグアレイ法(ファン(Fan,J−B.)ら、「ゲノム リサーチ(Genome Research)」、2000年、第10巻、p.853−860)等も使用できる。これら方法は、これらが報告されている引用文献を参照することにより容易に実施することができる。また、蛍光共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer、FRET)やタックマン(Taqman)法等、1塩基変異の検出方法としてよく知られた方法を用いることができる。
【0134】
ヌクレオチドの検出およびその種類の同定は、また、対立遺伝子特異的核酸プローブを用いて、それぞれハイブリダイゼーション法により実施できる。
【0135】
核酸プローブとしては、P2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において上記1塩基変異部位を含む塩基配列またはその相補的塩基配列で表されるポリヌクレオチドの、当該1塩基変異部位を含む塩基配列に実質的に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドが例示できる。「実質的に相補的な塩基配列を有する」とは、プローブとして使用したときに、調べようとする試料(以下、被検試料と称する)中において1塩基変異部位を含む塩基配列またはその相補的塩基配列を例えばストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で検出することができることを意味する。ハイブリダイゼーションの条件は、例えば成書に記載の方法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー)等に従うことができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件として具体的には、6×SSC、0.5%SDSおよび50%ホルムアミドの溶液中で42℃にて加温した後、0.1×SSC、0.5%SDSの溶液中で68℃にて洗浄する条件でも依然として陽性のハイブリダイゼーションのシグナルが観察される条件を例示できる。
【0136】
プローブとして用いるポリヌクレオチドは、好ましくは8個ないし50個のヌクレオチド、より好ましくは17個ないし35個のヌクレオチド、さらに好ましくは17個ないし30個のヌクレオチドからなる。プローブは、P2Y12受容体遺伝子の塩基配列またはその相補的塩基配列に基づいて設計し、慣用の方法、例えば化学合成等により作製できる。得られたポリヌクレオチドから、上記1塩基変異部位を含む塩基配列または該塩基配列の相補的塩基配列で表されるポリヌクレオチドの、当該1塩基変異部位を含む塩基配列で表される遺伝子断片にストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするものを選択することにより、目的とするプローブが得られる。プローブとして具体的には、P2Y12受容体遺伝子の部分塩基配列であって本発明に係る1塩基変異のいずれか1を有する塩基配列またはその相補的塩基配列からなるポリヌクレオチドを例示できる。これらプローブは、検出のためのマーカー、例えば蛍光物質や放射性同位体等の標識体で標識されたものであってもよい。標識体はこれらに限らず、プローブとそれに対応するポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが阻害されないものであればいずれも使用できる。上記1塩基変異の検出方法は例示に過ぎず、本発明において用いることのできる検出方法はこれらに限定されない。
【0137】
被検試料は、ヒト由来の血液、髄液、気管支肺胞洗浄液、痰、または他の体液、あるいは組織等から調製した核酸試料のいずれであってもよい。核酸試料の調製は、自体公知の核酸調製法により実施できる。核酸試料として、好ましくはゲノムDNAを用いる。調製した核酸は直接検出に使用してもよく、あるいは分析前に所望の領域をPCRまたはその他の増幅法を用いることにより酵素的に増幅してもよい。
【0138】
本発明の1態様は、本発明に係る冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法を用いることを特徴とする冠状動脈疾患の罹患危険率の検査方法に関する。本発明に係る冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法を用いることにより、冠状動脈疾患の早期診断を実施できる。
【0139】
冠状動脈疾患の罹患危険率の検査方法は、具体的には、被検試料中のP2Y12受容体遺伝子について、ハプロタイプの同定を行い、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型を検出することにより実施できる。被検試料中のP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることが検出された場合、冠状動脈疾患の罹患危険率が高いと判定できる。
【0140】
本発明の1態様は、P2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であるP2Y12受容体遺伝子によりコードされるアミノ酸配列で表される蛋白質を保持する血小板を用いることを特徴とする、P2Y12受容体作動薬に対する血小板の脱感作を誘導する化合物の同定方法に関する。
【0141】
P2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であるP2Y12受容体遺伝子によりコードされるアミノ酸配列で表される蛋白質を保持する血小板(以下、血小板Aと称することがある)は、対照血小板(以下、血小板Bと称することがある)と比較して、低濃度ADPに対する凝集能が低いことが明らかになった。一方、高濃度ADPに対する凝集能は、血小板Aと血小板Bとの間で、ほとんど差異は認められなかった。血小板Aは、ADP刺激時の凝集能が低く、そのため生体血管内で絶えず生成されている微量のADPでは活性化・脱感作されにくい。これに対し、血小板Bは、ADPに対する反応性が高いため、生体血管内で生成される微量ADPに絶えず反応し、脱感作された状態に陥りやすい。ここで、対照血小板(血小板B)とは、血小板Aが有するP2Y12受容体遺伝子とは異なる遺伝子型を有するP2Y12受容体遺伝子よりコードされるアミノ酸配列で表される蛋白質を保持する血小板を意味する。具体的には、血小板Bは、次の群から選ばれるいずれか1のP2Y12受容体遺伝子によりコードされるアミノ酸配列で表される蛋白質を保持する血小板である:(i)P2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/TまたはT/Tである;(ii)P2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH1/H2ハプロタイプ ヘテロ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/C、C/T、またはT/Tである;および(iii)P2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH2ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/C、C/T、またはT/Tである。
【0142】
冠状動脈疾患発症時に血小板は高濃度ADPに暴露される。このとき、脱感作された血小板、例えば上記血小板BはADPに充分反応できず、脆弱で小さい血栓を形成するのに対し、脱感作されにくい血小板、例えば上記血小板AはADPに敏感に反応し、強固で大きな血栓を形成して冠動脈疾患の発症ならびにその悪化に寄与すると考えられる。
【0143】
脱感作されにくい血小板、例えば上記血小板Aの脱感作を誘導する化合物は、該血小板を脱感作された状態にすることができ、その結果、冠状動脈疾患発症時における高濃度ADPへの暴露に対する該血小板の反応を低減させ、血栓の形成を低減することができる。
このような化合物は、冠状動脈疾患の防止および/または治療剤の有効成分として使用できる。また、このような化合物を用いて、冠状動脈疾患の防止および/または治療方法を実施できる。
【0144】
脱感作されにくい血小板、例えば上記血小板Aの脱感作を誘導する化合物の同定方法として、次のような同定方法が例示できる。まず、上記血小板Aおよび上記血小板Bを、それぞれある化合物(以下、被検化合物と称する)の存在下でP2Y12受容体作動薬と接触させて血小板凝集反応を惹起する。血小板凝集反応は、インビトロ(in vitro)で実施することもできるし、インビボ(in vivo)で実施することもできる。好ましくは、血小板凝集反応はインビトロで実施する。ついで、血小板Aによる血小板凝集反応の用量依存性曲線と血小板Bによる血小板凝集凝集反応の用量依存性曲線を作成し、両者を比較する。血小板Aによる血小板凝集反応の用量依存性曲線と血小板Bによる血小板凝集反応の用量依存性曲線とに差がない化合物は、血小板Aの脱感作を誘導すると判定できる。上記血小板Aの調製は、例えば、P2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型を有する個体由来の血液から、多血小板血漿または洗浄血小板を調製することにより実施できる。血液は、個体から抗凝固剤存在下に採血することにより取得できる。血液からの多血小板血漿または洗浄血小板の調製は汎用の方法により実施できる。上記血小板Bの調製は、例えば、P2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型を有さない個体由来の血液を用いて上記同様の方法により実施できる。
【0145】
本発明の1態様は、P2Y12受容体遺伝子のH1ハプロタイプおよびH2ハプロタイプを判別し得る1塩基変異部位のヌクレオチドの検出およびその種類の同定に用い得るプライマーや対立遺伝子特異的なプローブに関する。このようなプライマーおよびプローブとして、配列番号1から配列番号55のいずれか1に記載のポリヌクレオチドが例示できる。より好ましくは、配列番号50から55のいずれか1に記載のポリヌクレオチドが例示できる。
【0146】
例えば、P2Y12受容体遺伝子内の第152379350位を含む領域を増幅するためのプライマーとして、配列番号17および配列番号34に記載のポリヌクレオチドの組合わせを提供できる。また、該領域の塩基配列の決定に使用するためのプライマーとして配列番号23および配列番号40に記載のポリヌクレオチドの組合わせを提供できる。また、第152379350位の塩基のタイピングに使用し得るプライマーとして配列番号41または配列番号43に記載のポリヌクレオチドを提供できる。
【0147】
P2Y12受容体遺伝子内の第152377507位を含む領域を増幅するためのプライマーとして、配列番号7または配列番号51に記載のポリヌクレオチドと、配列番号8または配列番号52に記載のポリヌクレオチドとの組合わせを提供できる。また、該領域の塩基配列の決定に使用するためのプライマーとして、配列番号24または配列番号53に記載のポリヌクレオチドと、配列番号40または配列番号54に記載のポリヌクレオチドとの組合わせを提供できる。また、第152379507位の塩基のタイピングに使用し得るプライマーとして配列番号42に記載のポリヌクレオチドを提供できる。
【0148】
P2Y12受容体遺伝子内の第152377525位を含む領域を増幅するためのプライマーとして、配列番号7または配列番号51に記載のポリヌクレオチドと、配列番号8または配列番号52に記載のポリヌクレオチドとの組合わせを提供できる。また、該領域の塩基配列の決定に使用するためのプライマーとして、配列番号24または配列番号53に記載のポリヌクレオチドと、配列番号40または配列番号54に記載のポリヌクレオチドとの組合わせを提供できる。また、第152377525位の塩基のタイピングに使用し得るプライマーとして配列番号50または配列番号55に記載のポリヌクレオチドを提供できる。
【0149】
P2Y12受容体遺伝子内の第152381673位を含む領域を増幅するためのプライマーとして、配列番号1および配列番号2に記載のポリヌクレオチドの組合わせを提供できる。また、該領域の塩基配列の決定に使用するためのプライマーとして配列番号10および配列番号28に記載のポリヌクレオチドの組合わせを提供できる。また、第152381673位の塩基のタイピングに使用し得るプライマーとして配列番号44または配列番号45に記載のポリヌクレオチドを提供できる。
【0150】
P2Y12受容体遺伝子内の第152380188位を含む領域を増幅するためのプライマーとして、配列番号3および配列番号4に記載のポリヌクレオチドの組合わせを提供できる。また、該領域の塩基配列の決定に使用するためのプライマーとして配列番号32に記載のポリヌクレオチドを提供できる。また、第152380188位の塩基のタイピングに使用し得るプライマーとして配列番号46または配列番号47に記載のポリヌクレオチドを提供できる。
【0151】
P2Y12受容体遺伝子内の第152378084位を含む領域を増幅するためのプライマーとして、配列番号7および配列番号8に記載のポリヌクレオチドの組合わせを提供できる。また、該領域の塩基配列の決定に使用するためのプライマーとして配列番号39に記載のポリヌクレオチドを提供できる。また、第152378084位の塩基のタイピングに使用し得るプライマーとして配列番号48または配列番号49に記載のポリヌクレオチドを提供できる。
【0152】
本発明に係るポリヌクレオチドは、本発明により開示されたその具体的な塩基配列に関わる情報に基づいて、公知の遺伝子工学的手法(例えば、サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;および村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社等を参照)により容易に取得できる。
【0153】
プローブやプライマーは、P2Y12受容体遺伝子の塩基配列またはその相補的塩基配列に基づいて設計し、慣用の方法、例えば化学合成等により作製できる。
【0154】
本発明の1態様は、上記ポリヌクレオチドを含む試薬キットに関する。本発明に係る試薬キットの範囲には、上記ポリヌクレオチドのうちの1種またはそれ以上を充填した、1個またはそれ以上の容器を含んでなる試薬キットも包含される。本発明に係る試薬キットとして、配列表の配列番号50から配列番号55のいずれか1に記載のポリヌクレオチドを含む試薬キットが好ましく例示できる。また、本発明に係る試薬キットとして、配列表の配列番号50から配列番号55のいずれか1に記載のポリヌクレオチドに加えて、配列番号1から配列番号49のいずれか1に記載のポリヌクレオチドを含む試薬キットが例示できる。本試薬キットは、本発明に係る検出方法、検査方法、および化合物の同定方法の実施に必要とされる物質、例えば標識物質、緩衝液、並びに塩等を含むことができる。さらに、安定化剤および/または防腐剤等の物質を含んでいてもよい。製剤化にあたっては、使用する各物質、例えばポリヌクレオチドに応じた自体公知の製剤化手段を導入すればよい。このような試薬および試薬キットは、本発明に係る検出方法および検査方法に、検査剤並びに検査用キットとして使用できる。
【0155】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。本実施例においてP2Y12受容体遺伝子の各塩基の位置を示すときには、特に定義しない限り、GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列における位置として示す。
【実施例1】
【0156】
(P2Y12受容体遺伝子のゲノム配列の解析)
P2Y12受容体遺伝子のエキソン1上流3kbの地点からエキソン2の5´側約150bpについて(全長約5kb)、ゲノム配列の解析により変異の検出を行なった。試料は141例の日本人健常人から供与を受けたゲノムDNAを用いた。
【0157】
まず、20例のゲノムDNAを用い、ゲノムDNAからP2Y12受容体遺伝子の標的領域を増幅し、得られた増幅産物の塩基配列をダイレクトシークエンス法を用いて決定することにより変異の検出を実施した。
【0158】
標的領域の増幅はPCRにより行なった。標的領域は、GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されたゲノム塩基配列を参照配列として、該ゲノム塩基配列に含まれるP2Y12受容体遺伝子のゲノム配列の4箇所に設定し、PCR用プライマーは、該塩基配列に基づいて設計し作製した(表4)。ゲノムDNA試料2μlを鋳型として、Ex Taq(タカラバイオ社製)またはLA Taq(タカラバイオ社製)を用いて、20μlの反応系でPCRを行った。PCR反応条件は、各標的領域により異なる反応条件を用いた(表5)。
【0159】
【表4】

【0160】
【表5】

【0161】
PCR反応条件A
1) 94℃ 4分間
2) 94℃ 30秒間
3) 62℃ 30秒間
4) 72℃ 2分間
2)から4)の工程は40サイクル行なった。
5) 72℃ 10分間
【0162】
PCR反応条件B
1) 94℃ 4分間
2) 94℃ 30秒間
3) 58℃ 30秒間
4) 72℃ 2分間
2)から4)の工程は40サイクル行なった。
5) 72℃ 10分間
【0163】
PCR増幅産物をエキソサップ(Exo SAP、Amersham Biosciences社製)を用いて精製し、シークエンス反応の鋳型として用いた。シークエンス反応は表6に示したプライマーおよびダイナミックETダイターミネーターキット(DyEnamic ET dye terminator kit、Amersham Biosciences社製)を用いて行った。反応産物はセファデックス−50(Sephadex−50)を用いてゲルろ過法により精製した。シークエンサーは、メガベース1000(MegaBACE1000、Amersham Biosciences社製)を使用した。
【0164】
得られた配列データを用いて、フレッド/フラップ/ポリフレッド(Phred/Phrap/PolyPhred)ソフトウエアにより各塩基の精度(クオリティー値)の算出、アセンブルおよび変異の検出を行った。参照塩基配列および塩基位置として、GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列および塩基位置を使用した。
【0165】
【表6】

【0166】
塩基配列解析の結果、表7に示す4種類の1塩基変異がH2ハプロタイプと完全に連鎖していることが明らかになった。表7に示す4種類の1塩基変異が認められたゲノムDNAにおいては、既知1塩基変異(表1)のうち、イントロン1に存在する3種類の1塩基変異が全て認められた。
【0167】
【表7】

【0168】
また、塩基配列解析の結果、P2Y12受容体遺伝子のH2ハプロタイプと連鎖していると報告されている既知1塩基変異(表1、特許文献1、非特許文献3および特許文献4)のうち、エキソン2に存在する1塩基変異(第152377507位のGからTへの変異)が認められないH2ハプロタイプを有する例を見出した。すなわち、エキソン2に存在するこの1塩基変異は、H2ハプロタイプと完全に連鎖していないと考える。この例においては、P2Y12受容体遺伝子に、本発明において見出した4種類の1塩基変異(表7)が認められ、さらに表1に示した4種類の既知1塩基変異のうちエキソン2に存在する1塩基変異を除いた3種類の1塩基変異が認められた。
【0169】
このことから、P2Y12受容体遺伝子のエキソン2に存在する1塩基変異(第152377507位のGからTへの変異)が従来のH2ハプロタイプと異なる遺伝子型を示す例が存在することが明らかになった。ここで見出したP2Y12受容体遺伝子の遺伝子型をH2´ハプロタイプと呼称する。H2´ハプロタイプは、H2ハプロタイプと1箇所の1塩基変異の有無が異なるのみであることから、H2ハプロタイプと同様に血小板凝集能の亢進に関連すると考える。
【0170】
H2ハプロタイプおよびH2´ハプロタイプと連鎖するP2Y12受容体遺伝子の1塩基変異を表8にまとめて示す。
【0171】
【表8】

【0172】
表8において、#1、#2、#3および#7に示した1塩基変異は、本発明においてH2ハプロタイプと完全に連鎖することを明らかにした1塩基変異である。#4、#5および#6に示した1塩基変異は、既知1塩基変異(表1、特許文献1、非特許文献3および特許文献4)である。#8に示した1塩基変異は、H2ハプロタイプと連鎖すると報告されている1塩基変異である(特許文献1、非特許文献3および特許文献4)が、日本人においてはこの1塩基変異が認められない数例を見出した。既報のハプロタイプが日本人にも全く同位置に存在することから、H2´ハプロタイプは欧米人にも存在すると推察する。
【0173】
(第152379350位の塩基および第152377507位の塩基の解析)
次に、121例の健常人のゲノムDNAを用い、P2Y12受容体遺伝子のH2ハプロタイプと完全に連鎖している1塩基変異、およびH2ハプロタイプとの連鎖が完全ではないと判明した第152377507位の1塩基変異について解析した。P2Y12受容体遺伝子のH2ハプロタイプと完全に連鎖している1塩基変異として、第152379350位の1塩基変異を解析した。第152379350位の1塩基変異を有するP2Y12受容体遺伝子はH2ハプロタイプであることから、第152379350位の1塩基変異が認められたゲノムDNAにおいては、P2Y12受容体遺伝子のH2ハプロタイプと完全に連鎖する他の1塩基変異(第152381673位、第152380188位、第152378084位の1塩基変異等)も存在する。
【0174】
これら2種類の1塩基変異の検出は、各ゲノムDNAからPCRにより増幅したP2Y12受容体遺伝子の検出を標的位置の塩基を含むDNA断片を用いて、SNuPe反応により行った。PCRは、各ゲノムDNAを鋳型として、PCRプライマーを用いて行った。PCRプライマーは、第152379350位の塩基を含むDNA断片の増幅のために、配列番号17および配列番号34に記載の各ポリヌクレオチドを用いた。また、第152377507位の塩基を含むDNA断片の増幅のために、配列番号23および配列番号40に記載の各ポリヌクレオチドを用いた。具体的には、各鋳型2μlを使用し、Ex Taq(タカラバイオ)を用いて10μlの反応系でPCRを行った。なおポジティブコントロールは10ng/μlに調製したヒトゲノムDNA(クロンテック社製)を使用し、ネガティブコントロールには鋳型を加えずにPCRを行った。
【0175】
PCR反応条件は以下に示す。
1) 94℃ 4分間
2) 94℃ 30秒間
3) 54℃ 30秒間
4) 72℃ 45秒間
2)から4)の工程は40サイクル行なった。
5) 72℃ 4分間
【0176】
PCR増幅産物は4℃で冷却後、セファデックス G50 ファイン(Amersham Biosciences社製)を用いたゲルろ過法により精製し、SNuPe反応に使用した。
【0177】
SNuPe反応は、各1塩基変異が存在する位置の直前に設計したSNuPeプライマー、鋳型である精製PCR増幅産物およびメガベース SNuPe遺伝子タイピングキット(MegaBACE SNuPe Genotyping kit、Amersham Biosciences社製)を用いて、キットの添付資料に記載の方法に従って実施した。第152379350位および第152377507位の塩基のタイピング用SNuPeプライマーとしてそれぞれ表9に記載の各ポリヌクレオチドを用いた。なお、配列番号42に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドは、P2Y12受容体遺伝子ゲノム塩基配列の第152377532位から第152377508位までの25ヌクレオチドからなる塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチドであるが、第152377519位のヌクレオチドを含まない24ヌクレオチドからなるポリヌクレオチドである。
【0178】
【表9】

【0179】
タイピング解析は96ウエルプレートフォーマットのキャピラリーシークエンサー メガベース1000(Amersham Biosciences社製)を用いて行い、データ解析ソフトであるSNPプロファイラーを用いてタイピングを行った。
【0180】
検討した141例(上記ダイレクトシークエンス法で解析した20例を含む)において、H1ハプロタイプのホモ接合体は94例であった。また、H1/H2ハプロタイプのヘテロ接合体、H1/H2´ハプロタイプのヘテロ接合体およびH2/H2´ハプロタイプのヘテロ接合体はそれぞれ、42例、4例および1例であった。
【実施例2】
【0181】
(P2Y12受容体遺伝子の遺伝子型と血小板反応性表現型の関連性解析)
P2Y12受容体遺伝子の遺伝子型のタイピングおよび血小板反応性表現型の測定を、217例の日本人健常人から供与を受けたゲノムDNAについて実施した。
【0182】
遺伝子型のタイピングは、P2Y12受容体遺伝子のH1ハプロタイプとH2ハプロタイプとを判別し得る1塩基変異部位、および該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の1塩基変異部位について実施した。
【0183】
P2Y12受容体遺伝子のH1ハプロタイプとH2ハプロタイプの判別は、P2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152379350位および第152377507位の2つの1塩基変異部位について行った。P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプは、第152379350位および第152377507位がそれぞれCおよびGであるときH1ハプロタイプであり、これらがそれぞれTおよびTであるときH2ハプロタイプであると判定した。ゲノムDNAにおいて、H1ハプロタイプのP2Y12受容体遺伝子が検出され、かつH2ハプロタイプのP2Y12受容体遺伝子が検出されない場合、該ゲノムDNA中のP2Y12受容体遺伝子はH1ハプロタイプのホモ接合体であると判定した。これに対し、ゲノムDNAにおいて、H2ハプロタイプのP2Y12受容体遺伝子が検出され、かつH1ハプロタイプのP2Y12受容体遺伝子が検出されない場合、該ゲノムDNA中のP2Y12受容体遺伝子はH2ハプロタイプのホモ接合体であると判定した。また、ゲノムDNAにおいて、H1ハプロタイプのP2Y12受容体遺伝子およびH2ハプロタイプのP2Y12受容体遺伝子がいずれも検出された場合、該ゲノムDNA中のP2Y12受容体遺伝子はH1/H2ハプロタイプのヘテロ接合体であると判定した。
【0184】
ゲノムDNA中のP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型は、該ゲノムDNAにおいて、第152377525位の塩基がシトシン(C)であるP2Y12受容体遺伝子が検出され、かつ該1塩基変異部位の塩基がシトシン(C)以外の塩基であるP2Y12受容体遺伝子が検出されなかった場合、C/Cで表される遺伝子型であると判定した。ゲノムDNAにおいて、第152377525位の塩基がシトシン(C)であるP2Y12受容体遺伝子および該1塩基変異部位の塩基がチミン(T)であるP2Y12受容体遺伝子が検出された場合、該ゲノムDNAのP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型は、C/Tで表される遺伝子型であると判定した。ゲノムDNAにおいて、第152377525位の塩基がチミン(T)であるP2Y12受容体遺伝子および該1塩基変異部位の塩基がシトシン(C)であるP2Y12受容体遺伝子が検出された場合、該ゲノムDNAのP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型は、T/Tで表される遺伝子型であると判定した。
【0185】
P2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152379350位、第152377507位、および第152377525位の遺伝子型の決定は、SNuPe法により、次のように行った。まず、ゲノムDNAを鋳型として、PCRプライマーを用いてPCRを行い、第152379350位の1塩基変異部位を含む領域1、並びに第152377507位および第152377525位の1塩基変異部位を含む領域2を増幅した。領域1の増幅用プライマーとして、配列番号17および配列番号34にそれぞれ記載された塩基配列で表されるポリヌクレオチドの組合わせ(表10)を用いた。領域2の増幅用プライマーとして、配列番号23および配列番号40にそれぞれ記載された塩基配列で表されるポリヌクレオチドの組合わせ(表10)を用いた。PCRは、各鋳型0.5〜1μlを使用し、ThermoStart、バッファー、およびデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTPs)(いずれもAB gene社製)を用いて20μlの反応系で行った。ネガティブコントロールには鋳型を加えず、PCRを行った。PCR反応条件を以下に示す。
【0186】
【表10】

【0187】
領域1増幅のためのPCR反応条件
1) 94℃ 4分間
2) 94℃ 30秒間
3) 55℃ 30秒間
4) 72℃ 2分間
2)から4)の工程は40サイクル行なった。
5) 72℃ 4分間
【0188】
領域2増幅のためのPCR反応条件
1) 94℃ 4分間
2) 94℃ 30秒間
3) 65℃ 30秒間
4) 72℃ 2分間
2)から4)の工程は45サイクル行なった。
5) 72℃ 4分間
【0189】
PCR増幅産物はExoSAP−IT(Amersham Biosciences社製)を用いたゲルろ過法により精製し、その遺伝子型のタイピングをSNuPe法により行った。SNuPe反応は、各1塩基変異部位の直前に設計したSNuPeプライマー、鋳型である精製PCR増幅産物およびメガベース SNuPe遺伝子タイピングキット(Amersham Biosciences社製)を用いて、キットの添付資料に記載の方法に従って実施した。第152379350位、第152377507位および第152377525の1塩基変異部位のタイピング用SNuPeプライマーとしてそれぞれ配列番号41に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチド、配列番号42に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドおよび配列番号50に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドを用いた(表11)。SNuPe反応の産物は、セファデックス G50ファイン(Amersham Biosciences社製)を用いたゲルろ過法により精製した。タイピング解析は、96ウェルプレートフォーマットのキャピラリーシークエンサー メガベース1000(Amersham Biosciences社製)を用いて行い、データ解析ソフトであるSNPプロファイラーを用いてタイピングを行った。
【0190】
【表11】

【0191】
P2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の1塩基変異部位についてのみ遺伝子型のタイピングを行う場合には、ダイレクトシークエンシングまたはSNuPe法を用いた。
【0192】
ダイレクトシークエンシングによるP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型のタイピングは次のように実施した。まず、ゲノムDNAを鋳型として、配列番号51および配列番号52に記載の各塩基配列で表される2つのポリヌクレオチド(表12)をPCRプライマーとして用いてPCRを行い、第152377525位の1塩基変異部位を含む領域(1816bp)を増幅した。PCRは、各鋳型2μlを使用し、TaKaRa Ex Taq(タカラバイオ社製)を用いて20μlの反応系で、以下の反応条件で行った。
【0193】
【表12】

【0194】
PCR反応条件
1) 94℃ 4分間
2) 94℃ 30秒間
3) 56℃ 30秒間
4) 72℃ 2分間
2)から4)の工程は40サイクル行なった。
5) 72℃ 4分間
【0195】
PCR増幅産物はセファデックス G50ファイン(Amersham Biosciences社製)を用いて精製し、シークエンス反応の鋳型として用いた。シークエンス反応は、配列番号53および配列番号54に記載の各塩基配列で表される2つのポリヌクレオチド(表13)をプライマーとして用い、ダイナミックETダイターミネーターキット(Amersham Biosciences社製)を用いて行った。シークエンス反応の産物は、セファデックス G50ファイン(Amersham Biosciences社製)を用いて精製した。シークエンサーは、メガベース1000(Amersham Biosciences社製)を用いた。
【0196】
【表13】

【0197】
得られた配列データを用いて、フレッド/フラップ/ポリフレッド ソフトウエアにより各塩基の精度(クオリティー値)の算出、アセンブルおよび変異の検出を行った。参照塩基配列および塩基位置として、GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列および塩基位置を使用した。
【0198】
SNuPe法によるP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型のタイピングは次のように実施した。まず、ゲノムDNAを鋳型として、配列番号23および配列番号40に記載の各塩基配列で表される2つのポリヌクレオチド(表10)をPCRプライマーとして用いてPCRを行い、第152377525位の1塩基変異部位を含む領域(699bp)を増幅した。PCRは、各鋳型2 μlを使用し、TaKaRa Ex Taq(タカラバイオ社製)を用いて20μlの反応系で、以下の反応条件で行った。
【0199】
PCR反応条件
1) 94℃ 4分間
2) 94℃ 30秒間
3) 54℃ 30秒間
4) 72℃ 45秒間
2)から4)の工程は40サイクル行なった。
5) 72℃ 4分間
【0200】
PCR増幅産物はExoSAP−IT(Amersham Biosciences社製)を用いたゲルろ過法により精製し、その遺伝子型のタイピングをSNuPe法により行った。SNuPe反応は、SNuPeプライマーとして配列番号55に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(表14)を用いる他は、上記SNuPe反応で行った方法と同様の方法で実施した。SNuPe反応の産物は、セファデックス G50ファイン(Amersham Biosciences社製)を用いたゲルろ過法により精製した。タイピング解析は、上記同様に実施した。
【0201】
【表14】

【0202】
血小板反応性表現型は多血小板血漿(PRP)を用いて光学凝集測定法により評価した。凝集は2または5μmol/L ADPで誘導した。分析したパラメータは、最大凝集(%)および凝集曲線の0から6分までの領域の面積(AUC)である。
【0203】
P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である個体由来の血小板と、このような遺伝子型を有さない個体由来の血小板と比較した結果、前者由来の血小板は後者由来の血小板に比べて、2μmol/L ADPで誘導された最大凝集およびAUCが統計上有意に低かった(図1)。しかし、5μmol/L ADPで誘導された最大凝集およびAUCは、前者由来の血小板と後者由来の血小板との間で、ほとんど差異は認められなかった(図1)。図1中、前者を「H1 homo & 152377525 C/C」と表記し、後者を「Others」と表記する。
【0204】
一方、P2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cである個体由来の血小板と、該1塩基変異部位の遺伝子型がC/C以外の遺伝子型である個体由来の血小板とを、該遺伝子のハプロタイプに拘らずに比較した結果、2または5μmol/L ADPで誘導された最大凝集およびAUCは、前者由来の血小板は後者由来の血小板に比べて統計学上有意に低かった(図2)。図2中、前者を「152377525 C/C」と表記し、後者を「152377525 T carriers」と表記する。
【0205】
これに対して、P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体である個体由来の血小板と、ハプロタイプがH2ハプロタイプであるP2Y12受容体遺伝子を有する個体由来の血小板とを、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型に拘らずに比較した結果、ADPの濃度に拘らず、最大凝集およびAUCにほとんど差異は認められなかった(図3)。図2中、前者の遺伝子型を「H1 homo」と表記し、後者の遺伝子型を「H2 carriers」と表記する。
【実施例3】
【0206】
(P2Y12受容体遺伝子の遺伝子型に関するケース−コントロール研究)
P2Y12受容体遺伝子の遺伝子型のタイピングを、CAD患者および健常人それぞれから供与されたゲノムDNAについて行い、それにより該遺伝子の遺伝子型と疾患との関連性を解析した。
【0207】
遺伝子型のタイピングは、CAD患者194例(CAD群)および健常人325例(コントロール群)について実施した。遺伝子型のタイピングは、P2Y12受容体遺伝子のH1ハプロタイプとH2ハプロタイプとを判別し得る1塩基変異部位(第152379350位および第152377507位)、および該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位について、実施例2に記載した方法と同様の方法で実施した。
【0208】
コントロール群とCAD群との間で、年齢構成および性別構成において差異が生じないようにするため、CAD群のデータから女性に関するデータ、10代のCAD患者に関するデータ、および57歳以上の患者に関するデータを除外した。さらに、心臓カテーテルの正常例に関するデータも除外した。また、コントロール群のデータから42歳以下の患者に関するデータを除外した。その結果、ケース−コントロール研究に用いたコントロール群およびCAD群の平均年齢はそれぞれ48.6歳および48.2歳であった。
【0209】
P2Y12受容体遺伝子の遺伝子型と疾患との関連性の解析は、まず単変量解析を行い、単変量解析で有意差が検出された場合に、さらに多変量解析を実施した。単変量解析は遺伝子の1塩基多型を独立変数に用いて行った。多変量解析は、遺伝子の1塩基多型、高脂血症、高血圧、糖尿病の有無、喫煙の既往、および体格指数(BMI値)といった因子を独立変数に用いて行った。単変量解析および多変量解析の両解析で得られたオッズレシオ(OR)に有意差が検出された場合に、本遺伝子の遺伝子型と疾患との間に関連性があると判定できる。有意差はP値により判定し、P<0.05であるとき、有意差があると判定した。また、両解析において、95% 信頼区間(95% CI)を確定し、単変量解析および多変量解析の結果の信頼性を判定した。
【0210】
表15に示すように、CAD群およびコントロール群の間で、P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である例とこのような遺伝子型を有さない例について解析した結果、単変量解析におけるOR値は1.9であり、このとき95% CI値は1.2−3.1であった。多変量解析におけるOR値は2.0であり、このとき95% CI値は1.1−3.3であった。両解析における結果は、いずれも有意差が検出された。また、両解析において95% CI値がいずれも1以上であることから、両解析で得られたOR値は信頼性が高いと判定した。すなわち、CAD群では、P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である頻度が有意に高いことが信頼性をもって実証された。
【0211】
【表15】

【0212】
一方、CAD群およびコントロール群の間で、P2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である例と、該1塩基変異部位の遺伝子型がC/C以外の遺伝子型(C/TまたはT/T)である例について、該遺伝子のハプロタイプに拘らずに解析を行った結果、単変量解析におけるOR値は1.4であり、このとき95% CI値は0.8−2.2であった(表16)。多変量解析におけるOR値は1.2であり、このとき95% CI値は0.7−2.2であった。両解析における結果は、いずれも有意差が検出されなかった。また、両解析における95% CI値がいずれも1を挟む値であることから、両解析で得られたOR値は信頼性が低いと判定した(表16)。
【0213】
【表16】

【0214】
また、CAD群およびコントロール群の間で、P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体である例と、H2ハプロタイプのP2Y12受容体遺伝子を有する例(H1/H2ヘテロ接合体またはH2/H2ホモ接合体)について、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型に拘らずに解析を行った結果、単変量解析におけるOR値は1.6であり、このとき95% CI値は1.0−2.8であった(表17)。多変量解析におけるOR値は1.7であり、このとき95% CI値は0.9−3.1であった。両解析における結果は、いずれも有意差が検出されなかった。また、両解析における95% CI値がいずれも1を挟む値であることから、両解析で得られたOR値は信頼性が低いと判定した(表17)。
【0215】
【表17】

【0216】
上記結果から、P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることと、CADとの間には関連性があることが明らかになった。
【実施例4】
【0217】
(P2Y12受容体遺伝子の遺伝子型とCAD重症度との関連性解析)
CAD患者より供与されたゲノムDNAを用い、P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることとCADの重症度との関連性を解析した。
【0218】
CAD患者より供与されたゲノムDNAについての遺伝子型のタイピングのデータは実施例3で集積したデータを用いた。CADの重症度は冠状動脈分枝数により分類した。すなわち、冠状動分枝数の数が多いほど重症と判断し、冠状動分枝数が3本である場合を重症度1、2本である場合を重症度2、1本である場合を重症度3として分類した。
【0219】
その結果、表18に示すように、P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である例では、重症度1の例数が、このような遺伝子型を有さない例とを比較して、著しく高いことが判明した。
【0220】
【表18】

【0221】
この結果から、P2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である場合、CADの症状が重症になる可能性があると考える。
【産業上の利用可能性】
【0222】
本発明によれば、ヒトP2Y12受容体遺伝子の遺伝子型を同定することにより、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型を検出することができる。その結果、冠状動脈疾患の罹患危険率の判定および早期診断の実施が可能になる。本発明は、冠状動脈疾患の診断並びに当該疾患の防止および治療のための検査に有用であり、医薬分野において多大に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である(図中、H1 homo & 152377525 C/Cと表記する)個体由来の血小板と、このような遺伝子型を有さない個体(図中、Othersと表記する)由来の血小板について、ADPで誘導された最大凝集およびAUCを比較した結果を示す図である。前者由来の血小板は後者由来の血小板に比べて、2μmol/L ADPで誘導された最大凝集およびAUCが統計上有意に低かった。しかし、5μmol/L ADPで誘導された最大凝集およびAUCは、前者由来の血小板と後者由来の血小板との間で、ほとんど差異は認められなかった。本図において、ヒトP2Y12受容体遺伝子の塩基の位置は、GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列における位置として示した。(実施例2)
【図2】ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152377525位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型である(図中、152377525 C/Cと表記する)個体由来の血小板と、該1塩基変異部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型以外の遺伝子型である(図中、152377525 T carriersと表記する)個体由来の血小板について、ADPで誘導された最大凝集およびAUCを比較した結果を示す図である。2または5μmol/L ADPで誘導された最大凝集およびAUCは、前者由来の血小板は後者由来の血小板に比べて統計学上有意に低かった。本図において、ヒトP2Y12受容体遺伝子の塩基の位置は、GenBankアクセッション番号NC_000003.8に開示されている塩基配列における位置として示した。(実施例2)
【図3】ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体である(図中、H1 homoと表記する)個体由来の血小板と、ハプロタイプがH2ハプロタイプであるP2Y12受容体遺伝子を有する(図中、H2 carriersと表記する)個体由来の血小板について、ADPで誘導された最大凝集およびAUCを比較した結果を示す図である。ADPの濃度に拘らず、最大凝集およびAUCにほとんど差異は認められなかった。(実施例2)
【配列表フリーテキスト】
【0224】
配列番号1:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号2:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号3:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号4:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号5:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号6:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号7:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号8:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号9:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号10:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号11:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号12:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号13:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号14:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号15:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号16:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号17:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号18:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号19:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号20:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号21:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号22:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号23:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号24:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号25:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号26:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号27:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号28:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号29:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号30:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号31:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号32:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号33:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号34:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号35:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号36:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号37:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号38:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号39:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号40:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号41:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号42:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号43:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号44:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号45:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号46:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号47:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号48:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号49:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号50:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号51:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号52:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号53:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号54:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号55:プライマー用の設計されたポリヌクレオチド。
配列番号56:ヒトP2Y12受容体遺伝子内の1塩基変異の位置を特定するための配列情報。
配列番号57:ヒトP2Y12受容体遺伝子内の1塩基変異の位置を特定するための配列情報。
配列番号58:ヒトP2Y12受容体遺伝子内の1塩基変異の位置を特定するための配列情報。
配列番号59:ヒトP2Y12受容体遺伝子内の1塩基変異の位置を特定するための配列情報。
配列番号60:ヒトP2Y12受容体遺伝子内の1塩基変異の位置を特定するための配列情報。
配列番号60:(30):(30)NはA、C、GまたはTであり得る。
配列番号60:(68):(68)NはA、C、GまたはTであり得る。
配列番号61:ヒトP2Y12受容体遺伝子内の1塩基変異の位置を特定するための配列情報。
配列番号61:(1):(6)NはA、C、GまたはTであり得る。
配列番号62:ヒトP2Y12受容体遺伝子内の1塩基変異の位置を特定するための配列情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が下記工程を含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法(ここで、ゲノム塩基配列の第152539314位はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152377525位に相当する):
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプを判別し得る1塩基変異部位のヌクレオチドを含むDNA断片、および該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位のヌクレオチドを含むDNA断片をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物の配列をシークエンス法で決定する、または、前記(i)の工程で得られたPCR産物について上記位置の塩基をタイピング法で決定する工程。
【請求項2】
ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または第152539296位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が下記工程を含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法(ここで、ゲノム塩基配列の第152541139位、第152539296位および第152539314位はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、これら位置はそれぞれGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152379350位、第152377507位および第152377525位に相当する):
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位および/または第152539296位のヌクレオチドを含むDNA断片、および該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位のヌクレオチドを含むDNA断片をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物の配列をシークエンス法で決定する、または、前記(i)の工程で得られたPCR産物について上記位置の塩基をタイピング法で決定する工程。
【請求項3】
ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または第152539296位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が、下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法(ここで、ゲノム塩基配列の第152541139位、第152539296位および第152539314位はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、これら位置はそれぞれGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152379350位、第152377507位および第152377525位に相当する):
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号17および配列番号34に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物について、第152541139位に相当する位置の塩基を、配列番号41または配列番号43に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてタイピング法により決定する工程。
【請求項4】
ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または第152539296位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が、下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152539296位がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法(ここで、ゲノム塩基配列の第152541139位、第152539296位および第152539314位はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、これら位置はそれぞれGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152379350位、第152377507位および第152377525位に相当する):
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152539296位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号23および配列番号40に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物について、第152539296位に相当する位置の塩基を、配列番号42に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてタイピング法により決定する工程。
【請求項5】
ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または第152539296位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が、下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法((ここで、ゲノム塩基配列の第152541139位、第152539296位および第152539314位はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、これら位置はそれぞれGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152379350位、第152377507位および第152377525位に相当する):
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号23および配列番号40に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物について、第152539314位に相当する位置の塩基を、配列番号50または配列番号55に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてタイピング法により決定する工程。
【請求項6】
ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または第152539296位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が、下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法(ここで、ゲノム塩基配列の第152541139位、第152539296位および第152539314位はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、これら位置はそれぞれGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152379350位、第152377507位および第152377525位に相当する):
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号5および配列番号6に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物の配列を、配列番号18および配列番号34に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてシークエンス法により決定する工程。
【請求項7】
ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または第152539296位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が、下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152539296位がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法(ここで、ゲノム塩基配列の第152541139位、第152539296位および第152539314位はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、これら位置はそれぞれGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152379350位、第152377507位および第152377525位に相当する):
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152539296位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号7または配列番号51に記載のポリヌクレオチド、および、配列番号8または配列番号52に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物の配列を、配列番号24または配列番号53に記載のポリヌクレオチド、および、配列番号40または配列番号54に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてシークエンス法により決定する工程。
【請求項8】
ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列の第152541139位がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または第152539296位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が、下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法(ここで、ゲノム塩基配列の第152541139位、第152539296位および第152539314位はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、これら位置はそれぞれGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152379350位、第152377507位および第152377525位に相当する):
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号7または配列番号51に記載のポリヌクレオチド、および、配列番号8または配列番号52に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物の配列を、配列番号24または配列番号53に記載のポリヌクレオチド、および、配列番号40または配列番号54に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてシークエンス法により決定する工程。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法を用いることを特徴とする冠状動脈疾患の罹患危険率検査方法。
【請求項10】
ヒトP2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ該遺伝子のゲノム塩基配列の第152539314位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であるP2Y12受容体遺伝子によりコードされるアミノ酸配列で表される蛋白質を保持する血小板(血小板A)と、対照血小板(血小板B、ここで血小板Bは、次の群から選ばれるいずれか1のP2Y12受容体遺伝子によりコードされるアミノ酸配列で表される蛋白質を保持する血小板である:(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列第152539314位の遺伝子型がC/TまたはT/Tである;(ii)ヒトP2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH1/H2ハプロタイプ ヘテロ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列第152539314位の遺伝子型がC/C、C/T、またはT/Tである;および(iii)ヒトP2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH2ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列第152539314位の遺伝子型がC/C、C/T、またはT/Tである)とを、それぞれある化合物の存在下でヒトP2Y12受容体作動薬と接触させて血小板凝集反応を惹起し、ついで血小板Aによる血小板凝集反応の用量依存性曲線と血小板Bによる血小板凝集凝集反応の用量依存性曲線を比較することを含む、ヒトP2Y12受容体作動薬に対する血小板の脱感作を誘導する化合物の同定方法(ここで、ゲノム塩基配列の第152539314位はGenBankアクセッション番号NC_000003.9に記載されたゲノム塩基配列における位置として定義するが、本位置はGenBankアクセッション番号NC_000003.8に記載されたゲノム塩基配列における第152377525位に相当する)。
【請求項11】
ヒトP2Y12受容体作動薬が、アデノシン 5´ジホスフェートである請求項10に記載の化合物の同定方法。
【請求項12】
配列表の配列番号50から配列番号55のいずれか1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチド。
【請求項13】
配列表の配列番号50から配列番号55のいずれか1に記載のポリヌクレオチドを含む試薬キット。
【請求項14】
配列表の配列番号50から配列番号55のいずれか1に記載のポリヌクレオチドと、配列表の配列番号1から配列番号49のいずれか1に記載のポリヌクレオチドとを含む試薬キット。
【請求項15】
ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が下記工程を含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法:
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位および/または該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位のヌクレオチドを含むDNA断片、および、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位のヌクレオチドを含むDNA断片をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物の配列をシークエンス法で決定する、または、前記(i)の工程で得られたPCR産物について上記位置の塩基をタイピング法で決定する工程。
【請求項16】
ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法:
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号17および配列番号34に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物について、ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の塩基を、配列番号41または配列番号43に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてタイピング法により決定する工程。
【請求項17】
ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法:
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号23および配列番号40に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物について、ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の塩基を、配列番号42に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてタイピング法により決定する工程。
【請求項18】
ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法:
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号23および配列番号40に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物について、ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の塩基を、配列番号50または配列番号55に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてタイピング法により決定する工程。
【請求項19】
ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法:
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号5および配列番号6に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物の配列を、配列番号18および配列番号34に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてシークエンス法により決定する工程。
【請求項20】
ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法:
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号7または配列番号51に記載のポリヌクレオチド、および、配列番号8または配列番号52に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物の配列を、配列番号24または配列番号53に記載のポリヌクレオチド、および、配列番号40または配列番号54に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてシークエンス法により決定する工程。
【請求項21】
ヒトP2Y12受容体遺伝子のハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であることを、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号58に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることおよび/または該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第69番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がG/Gで表される遺伝子型であることを検出することにより同定し、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを手段とし、該手段が下記工程によりヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であることを検出することを含む、冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法:
(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位のヌクレオチドを含むDNA断片を、配列番号7または配列番号51に記載のポリヌクレオチド、および、配列番号8または配列番号52に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、
および
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物の配列を、配列番号24または配列番号53に記載のポリヌクレオチド、および、配列番号40または配列番号54に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてシークエンス法により決定する工程。
【請求項22】
請求項15から21のいずれか1項に記載の冠状動脈疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子型の検出方法を用いることを特徴とする冠状動脈疾患の罹患危険率検査方法。
【請求項23】
ヒトP2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/Cで表される遺伝子型であるP2Y12受容体遺伝子によりコードされるアミノ酸配列で表される蛋白質を保持する血小板(血小板A)と、対照血小板(血小板B、ここで血小板Bは、次の群から選ばれるいずれか1のP2Y12受容体遺伝子によりコードされるアミノ酸配列で表される蛋白質を保持する血小板である:(i)ヒトP2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH1ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/TまたはT/Tである;(ii)ヒトP2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH1/H2ハプロタイプ ヘテロ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/C、C/T、またはT/Tである;および(iii)ヒトP2Y12受容体遺伝子であってそのハプロタイプがH2ハプロタイプのホモ接合体であり、かつ、該遺伝子のゲノム塩基配列において、該ゲノム塩基配列の部分塩基配列であって配列表の配列番号62に記載の塩基配列の第51番目のヌクレオチドに相当する部位の遺伝子型がC/C、C/T、またはT/Tである)とを、それぞれある化合物の存在下でヒトP2Y12受容体作動薬と接触させて血小板凝集反応を惹起し、ついで血小板Aによる血小板凝集反応の用量依存性曲線と血小板Bによる血小板凝集凝集反応の用量依存性曲線を比較することを含む、ヒトP2Y12受容体作動薬に対する血小板の脱感作を誘導する化合物の同定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−97569(P2007−97569A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349301(P2005−349301)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【Fターム(参考)】