説明

ヒンジ装置

【課題】経年劣化を抑え、軸部と軸受部との接触抵抗を高めたヒンジ装置を提供する。
【解決手段】突設部42を有する軸部40と、突設部42を挿入する挿入孔22を有する軸受部20と、を備えるヒンジ装置10において、突設部42は、外周面において軸方向に延在する第1平面部46を有する。挿入孔22は、内周面において軸方向に延在する第2平面部26を有する。突設部42の軸方向に直交する断面の外周の外接円の直径は、挿入孔22の軸方向に直交する断面の内接円の直径より大きく、突設部42および挿入孔22の少なくともいずれか一方は、弾性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸部および軸受部を備えるヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のコンソールボックスのリッドに、リッドと収納箱とを連結するヒンジ装置が取り付けられる。たとえば特許文献1には、軸部に複数の凹部を形成し、軸穴部に凹部に対応する複数の凸部を形成したプラスチック一体成形型ヒンジ構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−10941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、軸穴部の凸部が軸部の凹部に落ち込んだときにいわゆるクリック感が得られる構成であるが、経年変形により凸部が摩耗した場合、クリック感が損なわれる。また軸穴部の直径が軸部の直径より大きいため凸部の先端のみによって軸部を支持する構造となっているため、軸穴部と軸部との摺動抵抗が得られにくい。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、十分なクリック感が長期的に安定して得られ、軸部および軸受部の相対回転中における軸部と軸受部との摩擦力を高めるヒンジ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のヒンジ装置は、突設部を有する軸部と、突設部を挿入して相対回動させる挿入孔を有する軸受部と、を備えるヒンジ装置であって、突設部は、外周面において軸方向に延在する第1平面部を有する。挿入孔は、内周面において軸方向に延在する第2平面部を有する。突設部の軸方向に直交する断面の外周の外接円の直径が、挿入孔の軸方向に直交する断面の内接円の直径より大きく、突設部および挿入孔の少なくともいずれか一方は、弾性を有する。
【0007】
この態様によると、突設部および挿入孔の相対回転中に第1平面部および第2平面部が合わさったときにユーザにクリック感を伝達することが可能となる。また、第1平面部および第2平面部は形状の経年変形が生じにくい。また、突設部および挿入孔のいずれか一方に弾性を有するので、突設部の軸方向に直交する断面の外周の外接円の直径が、挿入孔の軸方向に直交する断面の内接円の直径より大きいという関係を無理なく増やすことができ、クリック感が向上できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長期的に十分なクリック感が安定して得られ、軸部および軸受部の相対回転中における軸部と軸受部との摩擦力を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るコンソールボックスの斜視図である。
【図2】実施形態に係るヒンジ装置の斜視図である。
【図3】実施形態に係る突設部および挿入孔の断面図である。
【図4】(a)および(b)は実施形態に係る挿入孔に突設部を挿入した状態の断面図である。
【図5】挿入孔と突設部との摩擦により生じるトルク、およびリッドの開度の関係性を示す図である。
【図6】実施形態に係るヒンジ装置の第1変形例の一部を示す図である。
【図7】(a)および(b)は実施形態に係るヒンジ装置の第2変形例の一部を示す図である。
【図8】(a)および(b)は実施形態に係るヒンジ装置の第3変形例の一部を示す図である。
【図9】(a)および(b)は図8に示す軸部および軸受部の挿入時の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。
【0011】
図1は、実施形態に係るコンソールボックス1の斜視図である。コンソールボックス1は、たとえば車両の運転席と助手席の間に配置される。コンソールボックス1は、リッド2、収納箱3およびヒンジ装置10を備える。リッド2は、全開状態において自立する。ヒンジ装置10は、リッド2を回動自在に収納箱3に連結する。
【0012】
図2は、実施形態に係るヒンジ装置10の斜視図である。ヒンジ装置10は、軸受部20、第1軸部40aおよび第2軸部40bを備える。第1軸部40aおよび第2軸部40bを区別しない場合は「軸部40」という。
【0013】
第1軸部40aおよび第2軸部40bは、同じ形状であってよく、左右で共用可能であってよい。軸部40は、基部41に形成された固定部48にピンを挿入することで収納箱3に固定される。軸部40は、基部41から突設する突設部42を有する。突設部42は円筒形状に形成され、突設部42の外周面には軸方向に延在する第1平面部46が形成される。突設部42の先端には軸方向に伸びる脚部44が設けられる。脚部44の直径は突設部42の直径より小さい。脚部44には4つのスリット50が形成され、脚部44が4本に分かれている。脚部44の先端には脚部44より大径のフランジ部45が形成される。
【0014】
軸受部20は、軸受本体部28の左右に挿入孔22を有し、挿入孔22には軸部40の脚部44および突設部42が挿入される。これにより軸受部20は軸部40に軸支される。軸受本体部28は、軸方向に直交する断面が扇形に形成される。軸受部20のリッド連結部24にはコンソールボックスのリッドが連結され、リッドとともに一体に回動する。挿入孔22の内周面には軸方向に延在する第2平面部26が形成される。第2平面部26位置および形状は第1平面部46に応じて形成される。たとえば、挿入孔22および突設部42のそれぞれにおいて同じ幅および同じ奥行きの第2平面部26と第1平面部46とが2つずつ形成され、それぞれ2つの平面が軸心に対して対称的な位置に配置される。
【0015】
図3は、実施形態に係る突設部42および挿入孔22の断面図を示す。図3(a)は突設部42の軸方向に直交する断面図を示し、図3(b)は挿入孔22の軸方向に直交する断面図を示す。
【0016】
図3(a)に示す突設部42の断面には2つの第1平面部46が対向して形成される。なお第1平面部46の数は2つに限定するものではなく、1つであってもよく、また3つ以上であってもよい。突設部42の軸心は中空に形成され、これにより突設部42が弾性を有するように構成されている。スリットを設けることで突設部42に弾性を持たせてもよいが、本実施形態のように軸心を中空にして突設部42に弾性を持たせることで突設部42の弾性変形を抑えることができる。図3(a)では、突設部42の断面の外周に接する内接円62の直径D1と、突設部42の断面の外周に接する外接円64の直径D2とを示す。
【0017】
図3(b)に示す挿入孔22の断面には2つの第2平面部26が対向して形成される。なお第2平面部26は第1平面部46に応じて個数、位置および形状が形成される。図3(b)では、挿入孔22の断面の内周に接する内接円66の直径D3と、挿入孔22の断面の内周に接する外接円68の直径D4とを示す。
【0018】
図4は、実施形態に係る挿入孔22に突設部42を挿入した状態の断面図を示す。図4(a)はリッド2を開き始めるときの挿入孔22および突設部42の回転位置の関係を示し、図4(b)はリッド2が全開したときの挿入孔22および突設部42の回転位置の関係を示す。リッド2は閉じた水平状態から全開した起立状態になるまでに約90度回転する。
【0019】
図4(a)に示すように第1平面部46と第2平面部26とが回転中に合わさってない状態を第1状態とし、図4(b)に示す第1平面部46と第2平面部26とが回転中に合わさった状態を第2状態とする。第1平面部46と第2平面部26とが合わさった状態とは互いの平面がぴったり密着して面接触している状態をいい、第1平面部46と第2平面部26とが合わさっていない状態とは互いの平面が面接触していない状態をいう。なお、図4(a)には軸部40の曲面と軸受部20の第2平面部26とは線接触した状態を示すが、その状態に限られず面接触してもよい。
【0020】
実施形態に係るヒンジ装置10では、突設部42の断面の外周に接する外接円64の直径D2を、挿入孔22の断面に接する内接円66の直径D3より大きくなるように設ける。これにより、図4(a)に示す第1状態において、突設部42の第1平面部46が含まれない箇所と、挿入孔22の第2平面部26とを接触させて、挿入孔22と突設部42との間の摩擦力を高めることができる。これにより、リッド2が半開きの状態である第1状態でもリッド2を収納箱3に対して静止させることができる。
【0021】
また、突設部42の断面の外周に接する外接円64の直径D2を、挿入孔22の断面に接する内接円66の直径D3より所定値以上大きくなるように設ける。所定値は製造誤差に基づいて設定されてよく、製造誤差により直径D2が直径D3より小さくなる可能性を低減する。
【0022】
挿入孔22と突設部42との摺動抵抗が第2状態において高ければ、起立したリッド2に車両運転中に生じる加速度が加わった場合にもリッド2の静止状態を維持できる。図4(b)に示す第2状態では、突設部42の第1平面部46と挿入孔22の第2平面部26が合わさった状態である。そこで、突設部42の断面の外周に接する内接円の直径D1を、挿入孔22の断面に接する内接円66の直径D3より所定値以上大きくなるように設ける。これにより、全開状態のリッド2に加速度が加わった場合にリッド2が閉じてしまう可能性を低減できる。
【0023】
突設部42の断面の外周に接する外接円64の直径D2と、挿入孔22の断面に接する外接円68の直径D4とは、略同一に設けられる。これにより、全開状態のリッド2のぐらつきを抑えることができる。
【0024】
図5は、リッド2を開くのに必要なトルクおよびリッド2の開度の関係性を示す。縦軸にトルクを示し、横軸に開度を示す。開度が0度である場合はリッド2が閉じた状態を示し、開度が90度である場合はリッド2が全開した状態を示す。
【0025】
開度が0度のとき、図4(a)に示すように挿入孔22と突設部42との回転位置の関係は第1状態にあり、直径D2である突設部42の外周部分が、直径D3である挿入孔22の内周部分とが接触し、回転させようとするとトルクが発生する。
【0026】
そして一定の力でリッド2を開いていくと、開度P1において、挿入孔22の第2平面部26の端部が突設部42の第1平面部46の端部に到達し、トルクが小さくなる。リッド2の開度が90度となってリッド2が静止すると、トルクがゼロとなる。開度P1から開度90度までのトルクの傾きおよびトルクの差によってクリック感が生じる。
【0027】
実施形態では、このクリック感を突設部42の第1平面部46および挿入孔22の第2平面部26を設けたことにより生じさせることができる。第1平面部46は、突設部42に凹部を設ける場合より製造管理が容易となり製造コストを低減することが可能となる。
【0028】
また、第1平面部46および第2平面部26は、平面の形状変形を抑えることができ、クリック感の伝達を長期に維持することができる。また突設部42を挿入孔22に挿入するときに突設部42に障害物が設けられていないため組み付けが容易となる。
【0029】
図6は、実施形態に係るヒンジ装置10の第1変形例を示す。軸受本体部28の挿入孔22の外側面に、一対のスリットを介して帯状に形成され、突設部42を押圧する押圧部52が設けられる。押圧部52は、突設部42を押圧部52に対向する挿入孔22に押圧する弾性を有する。押圧部52は、円弧部52aと立設部52bとを有する。円弧部52aの一端は軸受本体部28に連結され、他端は立設部52bに連結される。円弧部52aの内周面は、突設部42の外周面に接触する。立設部52bは、軸受本体部28に立設し、円弧部52aに連結される。押圧部52を設けることで突設部42を弾性的に支持することができる。
【0030】
図7は、実施形態に係るヒンジ装置10の第2変形例を示す。図7(a)は軸部40の一部を示し、図7(b)は軸受部20の一部を示す。軸部40には突設部42の先端から軸方向に伸びる脚部44が設けられ、脚部44の先端には脚部44より大径のフランジ部56が設けられる。脚部44は突設部42より径が小さい。
【0031】
軸受部20には、円筒形状の挿入孔82が軸方向に突出するように設けられる。挿入孔82の一方の開口端部76は軸受本体部28に連結されていない。挿入孔82は、軸方向に形成され、端部が開口する4つのスリット60を有する。このスリット60により挿入孔82が突設部42を弾性的に支持することができる。挿入孔82の開口端部76の内周には小径部58が設けられる。
【0032】
挿入孔82に突設部42を挿入すると、小径部58が脚部44に嵌合し、フランジ部56が挿入孔82の開口端部76から突出して開口端部76に引っかかる。フランジ部56は、挿入孔82に挿入した際に抜け止めとして機能する。
【0033】
図8は、実施形態に係るヒンジ装置10の第3変形例を示す。図8(a)は軸部40の斜視図を示し、図8(b)は軸部40における脚部44の断面図を示し、図8(c)は軸受部20の斜視図を示す。また、図9は、図8に示す軸部40および軸受部20の挿入時の軸方向に沿った断面を示す。図9(a)は、凸部72および凹部74が設けられてない箇所の断面図を示し、図9(b)は、凸部72および凹部74が設けられた箇所の断面図を示す。軸部40には突設部42の先端から軸方向に伸びる脚部44が設けられ、脚部44の先端には脚部44より大径のフランジ部56が設けられる。
【0034】
脚部44には端部が開口した2つのスリット70が対向して設けられる。スリット70により脚部44が径方向に撓む弾性を有する。この弾性によって軸部40の挿入時にフランジ部56が縮径されて小径部58に係着し、簡単に軸部40を軸受部20に取り付けられる構造になっている。図9(a)に示すように、挿入孔22の奥に設けられた小径部58は、フランジ部56が係着される係着部として機能する。軸部40の挿入時に脚部44の外周面が小径部58の内周面に接する。
【0035】
図8(b)に示すように、脚部44には径方向に突出する凸部72が2つ形成される。図8(a)および図9(b)に示すように、凸部72は第1平面部46と周方向における同じ位置に設けられてよい。この凸部72に応じて、軸受部20の小径部58にも凹部74が2つ形成される。挿入孔22に突設部42を挿入して相対回転させ、第1平面部46および第2平面部26が合わさったときと同じときに凸部72と凹部74とが嵌るように設定することでクリック感を高めることができる。
【0036】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0037】
1 コンソールボックス、 2 リッド、 3 収納箱、 10 ヒンジ装置、 20 軸受部、 22 挿入孔、 24 リッド連結部、 26 第2平面部、 28 軸受本体部、 40 軸部、 42 突設部、 44 脚部、 46 第1平面部、 48 固定部、 50 スリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突設部を有する軸部と、前記突設部を挿入する挿入孔を有する軸受部と、を備えるヒンジ装置であって、
前記突設部は、外周面において軸方向に延在する第1平面部を有し、
前記挿入孔は、内周面において軸方向に延在する第2平面部を有し、
前記突設部の軸方向に直交する断面の外周の外接円の直径が、前記挿入孔の軸方向に直交する断面の内接円の直径より大きく、前記突設部および前記挿入孔の少なくともいずれか一方は、弾性を有することを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
前記突設部の軸方向に直交する断面の外周の内接円の直径が、前記挿入孔の軸方向に直交する断面の内接円の直径以上であることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
前記突設部は、軸心が中空に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のヒンジ装置。
【請求項4】
前記突設部の先端から軸方向に伸びる脚部が設けられ、前記脚部の先端に前記脚部より大径のフランジ部が設けられ、
前記挿入孔の奥に前記フランジ部と係着する係着部が設けられ、
前記脚部に径方向に突出する凸部が形成され、前記係着部に前記凸部に応じた凹部が形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のヒンジ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−2317(P2012−2317A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139759(P2010−139759)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】