フィラメントワインディングによる部品製造における特定組成物の使用
【課題】フィラメントワインディング法による部品製造での組成物の使用。
【解決手段】(1)少なくとも一種の熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の配合物と、(2)上記配合物中に混和可能な少なくとも一種のレオロジー制御剤とを含む組成物の使用であって、上記レオロジー制御剤は上記組成物の剪断速度C1での高温状態と剪断速度C2での低温状態との粘度の差をファクターで少なくとも100にさせ(ここで、高温状態と低温状態との温度差は少なくとも30℃であり、剪断速度C1は剪断速度C2よりも大きい)且つ上記組成物を高温状態でニュートン挙動を示すようにする。
【解決手段】(1)少なくとも一種の熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の配合物と、(2)上記配合物中に混和可能な少なくとも一種のレオロジー制御剤とを含む組成物の使用であって、上記レオロジー制御剤は上記組成物の剪断速度C1での高温状態と剪断速度C2での低温状態との粘度の差をファクターで少なくとも100にさせ(ここで、高温状態と低温状態との温度差は少なくとも30℃であり、剪断速度C1は剪断速度C2よりも大きい)且つ上記組成物を高温状態でニュートン挙動を示すようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂と特定ポリマーとを組み合わせた組成物の、フィラメントワインディングによる複合材料の製造での使用に関するものである。
本発明はさらに、上記組成物からフィラメントワインディングで部品を製造する方法に関するものである。
本発明の一般的分野は複合材料の分野である。
【背景技術】
【0002】
複合材料は下記(1)と(2)の成分の緊密な結合によって得られる:
(1)補強材:この補強材は骨組み、骨格を形成し、材料の機械的強度を保証し、フィラメント(無機繊維または有機繊維)の特性を有する。
(2)マトリクス:このマトリクスは補強繊維を互いに結合し、応力(耐曲げ力、耐圧縮力)を分散させ、化学的保護を与え、製品の形状を与える。このマトリクスは有機樹脂から成る。
【0003】
これら2つの成分(補強材、マトリクス)は相乗的な品質を示す。補強材とマトリクスの種類を変えることによって極めて多様な機械的および化学的特性を有する材料を得ることができる。従って、多くの分野、例えば航空産業、自動車産業、造船業、建設業の極めて多くの用途で複合材料は使用されている。
【0004】
現在では複合部品を製造するための技術は多数知られている。その中では特に接触成形、吹付け成形、レイアップ成形、低圧成形等が挙げられる。
ある種の場合、特に大型の中空部品を製造する場合には、ファイバーを直接巻き付けるのが有利である。ファイバーは予め樹脂を含浸したプレプレグの形で用いることができる。しかし、このファイバーは高価で、貯蔵寿命も限られ、樹脂の硬化が起こらないように維持するのが難しい。そのため、最初は乾燥しているファイバーを用いてフィラメントワインディング法で中空部品を製造するのが有利である。
【0005】
より正確には、フィラメントワインディング法では樹脂を収容した浴中に乾燥しているファイバーを通し、第2段階で、製造すべき部品に適した形状を有するマンドレル上に巻き付ける。このワインディングで得られた部品を最終段階で例えば加熱硬化させる。
【0006】
このフィラメントワインディング法の難しさは乾燥したファイバーの含浸段階にある。すなわち、十分な含浸を行うためには、組成物はファイバーを正しく含浸させ、しかも、ファイバーが浴を出た時にタレ(coulures)が起きないような十分に液体である必要がある。
従来の組成物ではこのタレ(coulures)現象を避けることはできなかった。このタレの現象は組成物を著しくロスさせ、ファイバー表面上での不均一な付着の原因となり、設備を汚損する原因となる。
従って、この欠点のない組成物が真に求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、驚くべきことに、樹脂配合物を含む組成物中に特定のレオロジー特性を有するポリマーを入れることによってフィラメントワインディングによる部品製造で用いられてきた従来組成物の上記欠点が克服できるということを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の対象は、フィラメントワインディング法による部品製造での組成物の使用において、上記組成物が下記(1)と(2):
(1)少なくとも一種の熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物、
(2)上記配合物中に混和可能な少なくとも一種のレオロジー制御剤、
を含み、上記レオロジー制御剤は上記組成物の剪断速度C1での高温状態と剪断速度C2での低温状態との粘度の差をファクターで少なくとも100にし(ここで、高温状態と低温状態との温度差は少なくとも30℃であり、剪断速度C1は剪断速度C2よりも大きい)且つ上記組成物が高温状態でニュートン挙動を示すようにすることを特徴とする組成物の使用にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
上記剪断速度C1は組成物を収容した浴中に含浸されるファイバー(繊維)の移動速度から得られ、「高温状態」とは浴の温度に相当し、この温度は一般に40〜150℃、例えば80〜100℃である。
上記剪断速度C2は組成物を収容した浴の外部でファイバー上に付着した組成物の残りの滑り物(glissement)から得られ、この剪断速度はC1よりはるかに低く、「低温状態」とはファイバーが浴からマンドレルに送られるときの浴外部の温度を示す。
【0010】
組成物の高温状態と低温状態の粘度差が大きいため、上記組成物で被覆されたファイバーが浴から出るときの上記タレ現象は著しく減り、プロセスの各種部品の汚染とロスが減り、組成物が繊維全体に均一に付着する。これによってファイバーをマンドレル上に巻付けて硬化した後に得られる複合材料の機械的および物理的特性が均一に分布する。
【0011】
さらに、本発明組成物は「高温状態」でニュートン挙動を示す。すなわち、その粘度が混合物の剪断速度によって余り変化しないので、組成物を収容した浴中でのファイバーの移動速度と無関係に均等に被覆され、従って、組成物の量がほぼ同じで組成物分布が均一なファイバーを得ることができる。
【0012】
さらに、上記レオロジー特性(粘度、ニュートン特性)は主として上記定義のレオロジー制御剤の溶液中への添加で得られるので樹脂配合物の選択の自由がより大きくなる。
【0013】
レオロジー制御剤は、例えば高温状態と低温状態との温度差が少なくとも60℃の場合に高温状態と低温状態との粘度差を少なくとも500倍にし、且つ、一般に105を超えないようにするのが有利である。
一例として、上記組成物の粘度は100℃(組成物の浴の温度)で1Pa.s以下であり、周囲温度(フィラメントワインディング法を実施する部品の温度に対応する温度)で約1000Pa.sである。
【0014】
上記レオロジー制御剤はポリマー、例えば直鎖または分岐鎖を有するポリマーにすることができる。特に、このレオロジー制御剤は少なくとも一種のブロックが上記樹脂配合物と非相溶なブロックコポリマーにすることができる。
本発明の一実施例では組成物に上記レオロジー特性を与えるポリマーは下記を含むブロックコポリマーにすることができる:
(1)上記樹脂配合物と混和可能な少なくとも一種のブロックMと、
(2)上記樹脂配合物および上記ブロックMと非相溶な少なくとも一種のブロックB。
【0015】
ブロックMは樹脂配合物と混和可能なポリマーである。
ブロックMはメチルメタクリレートのホモポリマーにすることができる。
ブロックMはメチルメタクリレートのコポリマーにすることもできる。例えば、ブロックMはメチルメタクリレートと少なくとも一種の水溶性モノマーとのコポリマーにすることができる。このコポリマーは少なくとも20重量%のメチルメタクリレート、好ましくは少なくとも50重量%のメチルメタクリレートと水溶性モノマーとを含むことができる。
【0016】
水溶性モノマーの例としてはアクリル酸またはメタクリル酸、これらの酸から得られるアミド、例えばジメチルアクリルアミド、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、必要に応じて四級化された2−アミノエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)(メタ)アクリレート、水溶性ビニルモノマー、例えばN−ビニルピロリドンまたはその他の任意の水溶性であるモノマーが挙げられる。
【0017】
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのポリエチレングリコール基の質量は400〜10000g/molであるのが有利である。
水溶性モノマーはジメチルアクリルアミドであるのが好ましい。
メチルメタクリレートのモル比は90〜5モル%、好ましくは40〜10モル%の水溶性モノマーに対して、10〜95モル%、好ましくは60〜90モル%にすることができる。
【0018】
さらに、ブロックMを構成する他のモノマーはアクリルモノマーでもなくてもよく、反応性があってもなくてもよい。「反応性モノマー」という用語はエポキシ分子のオキシラン基または硬化剤の基と反応可能な基を意味する。
反応性官能基の非限定的な例としてはオキシラン基、アミン基またはカルボキシル基を挙げることができる。反応性モノマーは(メタ)アクリル酸またはこの酸となる他の任意の加水分解可能なモノマーにすることができる。ブロックMを構成できる他のモノマーの非限定的な例としてはグリシジルメタクリレートまたはtert-ブチルメタクリレートおよびn−ブチルアクリレートを挙げることができる。
【0019】
ブロックBは樹脂配合物およびブロックMと非相溶性のポリマーである。BブロックBのTgは0℃以下、好ましくは−40℃以下であるのが有利である。ブロックBを合成するのに使用されるモノマーはジエンにすることができる。このジエンはブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエンの中から選択できる。このブロックBはポリジエン、特にポリブタジエン、ポリイソプレン、これらのランダムコポリマーまたは部分的または完全に水素化されたポリジエンの中から選択するのが好ましい。ポリブタジエンの中ではTgが最も低いもの、例えばポリ(1,2−ブタジエン)のTg(約0℃)より低いTg(約−90℃)を有するポリ(1,4−ブタジエン)を使用するのが好ましい。ブロックBは水素化されていてもよい。この水素化は標準的な技術で実行できる。ブロックBを合成するのに用いるモノマーはアルキル(メタ)アクリレート(すなわち、ブロックBはポリ(アルキル(メタ)アクリレート)にすることができる)でもよい。例えば、エチルアクリレート(Tg=−24℃)、n−ブチルアクリレート(Tg=−45℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(Tg=−60℃)、n−オクチルアクリレート(Tg=−62℃)、ヒドロキシエチルアクリレート(Tg=−15℃)、2−エチルヘキシルメタクリレート(Tg=−10℃)。n−ブチルアクリレートを使用するのが有利である。BとMは非相溶性であるので、BブロックのアクリレートはブロックMのアクリレートとは相違する。ブロックBはポリ(1,4−ブタジエン)を主とするのが好ましい。Bブロックは熱硬化性樹脂およびブロックMと非相溶性である。
【0020】
本発明の一実施例では、レオロジー制御剤がM−B−Mトリブロックコポリマーである(BおよびMは上記定義のもの)。
M−B−Mトリブロックコポリマーの2つのブロックMは同一でも異なっていてもよい。ブロックMが異なる場合は、ブロックMを構成するモノマーの種類が異なっていても、モノマーは同じで分子量が異なっていてもよい。
【0021】
M−B−Mトリブロックコポリマーの数平均分子量は10000〜500000g/モル、好ましくは20000〜200000g/molにするのが好ましい。M−B−Mトリブロックは質量分率で表した下記の組成(合計100重量%)を有するのが有利である。
ブロックM:10〜80%、好ましくは15〜70%、
ブロックB:90〜20%、好ましくは85〜30%。
【0022】
特に適したM−B−Mトリブロックコポリマーは下記のコポリマーである:
(1)ブロックMがメチルメタクリレートモノマーとジメチルアクリルアミドモノマーとを含むコポリマーで、
(2)ブロックBがn−ブチルアクリレートモノマーからなるホモポリマーで、
ブロックMは必要に応じてさらにn−ブチルアクリレートモノマーを含むことができる。
【0023】
特に適した別のコポリマーは下記のM−B−Mトリブロックコポリマーである:
(1)ブロックMがメチルメタクリレートモノマーを含むポリマーで、
(2)ブロックBがn−ブチルアクリレートモノマーからなるホモポリマーで、
ブロックMは必要に応じてさらにn−ブチルアクリレートモノマーを含むことができる。
【0024】
レオロジー制御剤として用いられるコポリマーは、ブロックBおよびブロックMの他に、上記樹脂配合物およびブロックBと非相溶なブロックSを含むことができる。
このブロックSは熱硬化性樹脂およびブロックBと非相溶である。ブロックSのTgまたはTmはブロックBのTg以上且つ23℃以上、好ましくは50℃以上であるのが有利である。ブロックSの例としてはビニル芳香族化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレンまたはビニールトルエンから得られるものや、アクリル酸および/またはメタアクリル酸から得られるアルキル鎖の炭素原子が1〜18のアルキルエステルが挙げられる。ブロックSはポリスチレンであるのが好ましい。
【0025】
本発明の一実施例では、レオロジー制御剤がS−B−Mトリブロックコポリマー(S、B、Mは上記定義のもの)である。
S−B−Mトリブロックコポリマーの数平均分子量は10000g/mol〜500000g/モル、好ましくは20000〜200000g/molにするのが好ましい。S−B−Mトリブロックは質量分率で表した下記の組成(合計100重量%)を有するのが有利である。
ブロックM:10〜80%、好ましくは15〜70%
ブロックB:2〜80%、好ましくは5〜70%
ブロックS:10〜88%、好ましくは15〜85%
【0026】
本発明ではS−B−Mの一部をS−Bジブロックで置換できる。置換可能部分はS−B−Mの70重量%までである。
特に適した一つのS−B−Mトリブロックコポリマーは下記を含むコポリマーである:
(1)スチレンモノマーからなるホモポリマーのブロックS、
(2)1,4−ブタジエンモノマーからなるホモポリマーのブロックB、
(3)メチルメタクリレートモノマーからなるホモポリマーのブロックM。
【0027】
本発明の別の実施例では、レオロジー制御剤として用いることができ且つ上記レオロジー特性を組成物に与えるポリマーを下記を含むブロックコポリマーにすることができる:
(1)上記樹脂配合物と非相溶性の少なくとも一種のブロックB、
(2)上記樹脂配合物および上記ブロックBと非相溶なの少なくとも一種のブロックS。
(ブロックSおよびブロックBは上記定義のもの)
【0028】
特に、このコポリマーは下記S−Bジブロックコポリマーにすることができる:
(1)ブロックSがスチレンモノマーからなるホモポリマー、
(2)ブロックBが1,4−ブタジエンモノマーからなるホモポリマー
【0029】
本発明で用いられる組成物は少なくとも一種の熱硬化性樹脂からなる樹脂配合物を含む。この熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂であるのが有利である。
【0030】
「エポキシ樹脂」(以下、Eで表す)は開環重合可能なオキシランタイプの少なくとも2つの官能基を有する任意の有機化合物を意味する。「エポキシ樹脂」という用語は室温(23℃)またはそれ以上の高温度で液体である任意のエポキシ樹脂を意味する。このエポキシ樹脂はモノマーでもポリマーでもよく、また、脂肪族、脂環式、複素環式、芳香族でもよい。エポキシ樹脂の例としてはレソルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリグリシジルp−アミノフェノール、ブロモビスフェノールF ジグリシジルエーテル、m−アミノフェノールトリグリシジルエーテル、テトラグリシジルメチレンジアニリン、(トリヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、フェノール−ホルムアルデヒド ノボラックポリグリシジルエーテル、オルト-クレゾール ノボラックポリグリシジルエーテル、テトラフェニルエタンテトラグリシジルエーテルを挙げることができる。これら樹脂の少なくとも2つの混合物を使うこともできる。
【0031】
特に好ましいエポキシ樹脂は1分子当り少なくとも1.5個のオキシラン基を有するエポキシ樹脂、特に1分子当り2〜4個のオキシラン基を有するものである。また、少なくとも一つの芳香環、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテルを有するエポキシ樹脂も好ましい。
【0032】
樹脂配合物は一般に硬化剤を含む。この硬化剤としては下記を挙げることができる:
(1)酸無水物、特に無水琥珀酸、
(2)芳香剤または脂肪族ポリアミン、特にジアミノジフェニルスルホン(DDS)またはメチレンジアニリンまたは4,4’−メチレンビス(3−クロル−2,6−ジエチルアニリン)(MCDEA)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)(MDEA)
(3)ジシアンジアミドとその誘導体、
(4)イミダゾール、
(5)ポリカルボン酸、
(6)ポリフェノール。
【0033】
本発明配合物に通常の添加物、例えば熱可塑性プラスチック、例えばポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、液体弾性材またはコア−シェルタイプの衝撃改質材を添加しても本発明の範囲から逸脱するものではない。
【0034】
本発明組成物は樹脂配合物とレオロジー制御剤とを混合できる従来の任意の混合方法で調製できる。熱硬化樹脂と制御剤の2つを均一にブレンドできる任意の熱可塑性樹脂の技術、例えば押出成形機を使用できる。
【0035】
樹脂配合物とレオロジー制御剤の比率は、95〜80重量%の樹脂配合物に対して5〜20重量%にするのが有利である。レオロジー制御剤の含有率は95〜85重量%の樹脂配合物に対して5〜15重量%にするのが有利である。
【0036】
上記組成物はフィラメントワインディング法による部品製造で用いられる。
従って、本発明の第2の対象はフィラメントワインディング法による部品製造方法にある。本発明のフィラメントワインディング法による部品製造方法は、
(1)熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物からなる組成物からなる浴中に部品の補強材を形成するためのファイバーを通す段階と、
(2)こうして被覆されたファイバーを所望形状のマンドレル上に巻付ける段階と、
(3)巻付けたファイバーを硬化する段階と、
をこの順番で有し、組成物が上記配合物中に混和可能な少なくとも一種のレオロジー制御剤をさらに含み、このレオロジー制御剤が、上記組成物の剪断速度C1での高温状態と剪断速度C2での低温状態との粘度の差がをファクターで少なくとも100にし(ここで、高温状態と低温状態との温度差は少なくとも30℃であり、剪断速度C1は剪断速度C2よりも大きい)且つ上記組成物を高温状態でニュートン挙動を示すようにすることを特徴とする。
【0037】
本発明の一実施例では、レオロジー制御剤を下記(1)と(2)を含むブロックコポリマーにすることができる:
(1)上記樹脂配合物と混和可能な少なくとも一種のブロックM、
(2)上記樹脂配合物および上記ブロックMと非相溶な少なくとも一種のブロックB、
(ブロックMおよびブロックBは上記定義のもの)
【0038】
別の実施例では、レオロジー制御剤を下記(1)と(2)を含むブロックコポリマーにすることができる:
(1)上記樹脂配合物と非相溶な少なくとも一種のブロックB、
(2)上記樹脂配合物およびブロックBと非相溶な少なくとも一種のブロックS、
(ブロックBおよびブロックSは上記定義のもの)
【0039】
部品の補強材を構成するファイバーはガラス繊維、炭素繊維またはアラミド繊維にすることができる。これらファイバーは先ず最初に巻出しリールから含浸浴中へ送られ、ここで上記組成物で被覆される。次の段階で、これらファイバーは案内システムを介してマンドレル上へ送られ、この上に配置される。
【0040】
この配置操作が終了した後に、被覆済みファイバーを硬化段階で硬化させる。この硬化段階は(1)周囲温度、(2)加熱、例えばオーブン内での加熱または(3)紫外線または赤外線照射によって行うことができる。硬化段階は組成物中に入れた硬化剤の種類に依存する。
【0041】
本発明組成物は多くの分野の部品の製造に適用できる。本発明の他の対象は上記方法で得られる部品にある。これらの部品は航空産業、造船業、建設業、風力タービンの製造や、化学工業の工場での流体輸送用パイプまたは炭化水素輸送用パイプの製造で使用される。
【0042】
本発明のさらに他の対象は、フィラメントワインディング法による部品製造のための上記定義の組成物にある。
本発明の一実施例では、レオロジー制御剤を下記(1)と(2)とを含むブロックコポリマーにすることができる:
(1)上記樹脂配合物と混和可能な少なくとも一種のブロックM、
(2)上記樹脂配合物および上記ブロックMと非相溶な少なくとも一種のブロックB、
(ブロックMおよびブロックBは上記定義のもの)
別の実施例では、レオロジー制御剤を下記(1)と(2)を含むブロックコポリマーにすることができる:
(1)上記樹脂配合物と非相溶な少なくとも一種のブロックB、
(2)上記樹脂配合物およびブロックBと非相溶なの少なくとも一種のブロックS、
(ブロックBおよびブロックSは上記定義のもの)
以下、本発明の実施例を示すが、これらの実施例は単なる例で、本発明をなんら限定するものではない。
【実施例】
【0043】
実施例1
この実施例では下記のS−B−Mトリブロックコポリマーを用いた:
(1)ブロックSはスチレンモノマーからなるホモポリマー、
(2)ブロックBは1,4−ブタジエンモノマーからなるホモポリマー、
(3)ブロックMはメチルメタクリレートモノマーからなるホモポリマー。
より正確には上記コポリマーは下記の分子的特徴を有する:
(1)ブロックSの含有率:コポリマーの全重量の55重量%、
(2)ブロックBの含有率:コポリマーの全重量の15重量%、
(3)ブロックMの含有率:コポリマーの全重量の30重量%、
(4)ブロックSの重量平均分子量Mw:20150
(5)S−B−Mに対するS−Bポリマーの重量%:コポリマーの全重量の36重量%。
【0044】
このコポリマーは組成物の全重量の15重量%の量で組成物中に存在する。
テストした組成物は下記をさらに含む:
(1)ビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂(Dow社からDER 332(登録商標)で市販)、
(2)4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)(MDEA)アミン(Lonza社から商品番号LONZACUREで市販)。
重量の樹脂およびアミンは組成物の全重量の85重量%の量で存在する。
【0045】
組成物の製造手順は以下の通り:
(1)Dow社の製品DER 332樹脂を160℃で攪拌し、
(2)温度が安定したら、樹脂を真空脱気し、
(3)脱気後、減圧を止め、S−B−Mコポリマーを粉末状で導入し、
(4)全てのS−B−Mがエポキシ樹脂に溶解したら、混合物を真空脱気し、
(5)脱気後、温度を120℃に下げ、減圧を止め、
(6)MDEAアミンをエポキシ樹脂に対する計算量(すなわち比r=アミンの質量/樹脂の質量=0.445)で導入する。
【0046】
この組成物の粘度の変化を温度の関数で示した[図1]に示すように、この組成物はフィラメントワインディング法で用いるのに極めて適している。すなわち、組成物は80℃で1.5Pa.s、100℃で0.4Pa.sの粘度を示す。この温度窓での上記粘度はフィラメントワインディング法で炭素繊維またはガラス繊維を被覆するのに極めて適している。
【0047】
さらに、[図2]に示すように、この温度窓で上記混合物はニュートン挙動を示す。すなわち、粘度は混合物の剪断速度によって変化しない。従って、組成物浴中でのファイバーの移動速度がどんな速度になっても均等な被覆ができるという点でこの挙動は大きな利点になる。
上記組成物はさらに、温度によって粘度が大きく変化するという利点がある。これとは逆に、従来組成物は浴から出た時の粘度が低いままであり、従って、被覆済みのファイバーが浴を出た時にタレ現象が生じ、ファイバーに付着する組成物の量の変化、場合によってはさらにプロセスの各種部品の汚染、ロスの原因となる。
本発明実施例の組成物の場合には、温度降下時に組成物の粘度が大きく増加するので上記のような問題は起こらない。
【0048】
極めて有利なことに、温度降下時に上記組成物はレオロジー挙動も変化し、低温で疑似塑性特性を示す。上記組成物のこの疑似塑性特性は剪断速度低下時の粘度の著しい増加によって表される。これは浴から出た組成物で被覆されたファイバーの場合に当てはまる(剪断速度が組成物の重量のみに起因する)。
[図3]は20℃および30℃で測定した疑似塑性特性を示している。すなわち、20℃でこの実施例の組成物の粘度は6.28rad/秒の剪断応力周波数で1000Pa.s以上である。
【0049】
実施例2
この実施例では下記のM−B−Mコポリマーを用いた:
(1)ブロックMがメチルメタクリレートモノマーとジメチルアクリルアミドモノマーとを含むコポリマー、
(2)ブロックBがn−ブチルアクリレートモノマーからなるホモポリマー。
より正確にはこのコポリマーは下記の分子的特徴を有する:
(1)n−ブチルアクリレートの含有率:コポリマーの全重量の53重量%、
(2)メチルメタクリレートの含有率:31重量%、
(3)ジメチルアクリルアミドの含有率:16重量%、
(4)ブロックBの数平均分子量Mn:23780、
(5)ブロックBの多分散度指数PDI:1.4。
【0050】
このコポリマーは組成物の全重量の5重量%の量で組成物中に存在する。
用いた組成物は下記をさらに含む:
(1)RTM6エポキシ樹脂(Hexcel社)、
この樹脂は組成物の全重量の95重量%の量で存在する。
【0051】
組成物の製造手順は以下の通り:
(1)Hexcel社の製品RTM6樹脂を100℃で攪拌し、
(2)温度が安定したら、樹脂を真空脱気し、
(3)脱気後、減圧を止め、コポリマーを粉末状で導入し、
(4)全てのコポリマーがエポキシ樹脂に溶解したら、混合物を真空脱気する。
【0052】
この組成物の粘度の変化を温度を関数として示した[図4]に示すように、この組成物はフィラメントワインディング法で用いるのに極めて適している。すなわち、この組成物は80℃で1.8Pa.s、100℃で0.6Pa.sの粘度を有する。この粘度はこの温度窓ではフィラメントワインディング法で炭素繊維またはガラス繊維を被覆するのに極めて適している。
さらに、[図5]に示すように、この温度窓では上記混合物はニュートン挙動を示す。すなわち、上記混合物は剪断速度で粘度が変化しない。従って、組成物浴中へのファイバーの移動速度がどんな速度でも均等な被覆ができる。この挙動は大きな利点になる。
上記組成物はさらに、温度によって粘度が大きく変化する。これとは逆に、従来組成物は浴から出た後も低い粘度を保持するため、被覆済みのファイバーが浴を出た時にタレ現象が生じ、ファイバーに付着する組成物の量を変化させ、プロセスの各種部品の汚損の原因となる。本発明実施例の組成物の場合には、温度降下時し、組成物のレオロジー挙動が変化したときに組成物の粘度が大幅に増加し、低温で疑似塑性特性を示すので、このような問題は起こらない。
組成物の疑似塑性特性は剪断速度低下時の粘度の著しい増加によって表される。これは浴から出た組成物で被覆されたファイバーの場合に当てはまる。すなわち、剪断速度は組成物の重量のみに起因する。
[図6]は20℃および30℃で測定したこの疑似塑性特性を示している。20℃での本実施例の組成物の粘度は6.28rad/秒の剪断応力周波数で1000Pa.s以上である。
【0053】
実施例3
この実施例では下記のM−B−Mコポリマーを用いた:
(1)ブロックMはメチルメタクリレートモノマー含むポリマー、
(2)ブロックBはn−ブチルアクリレートモノマーからなるホモポリマー。
より正確にはこのコポリマーは下記の分子的特徴を有する:
(1)n−ブチルアクリレートの含有率:コポリマーの全重量の42重量%、
(2)メチルメタクリレートの含有率:58重量%、
(3)ブロックBの数平均分子量Mn:21200、
(4)ブロックBの多分散度指数PDI:1.3。
【0054】
このコポリマーは組成物の全重量の10重量%の量で組成物中に存在する。
用いた組成物は下記をさらに含む:
(1)RTM6エポキシ樹脂(Hexcel社)、
この樹脂は組成物の全重量の90重量%の量で存在する。
組成物の製造手順は以下の通り:
(1)Hexcel社の製品RTM6樹脂を100℃で攪拌し、
(2)温度が安定したら、樹脂を真空脱気し、
(3)脱気後、減圧を止め、コポリマーを粉末状で導入し、
(4)全てのコポリマーがエポキシ樹脂に溶解したら、混合物を真空脱気する。
【0055】
この組成物の粘度の変化を温度の関数として示した[図7]に示すように、この組成物はフィラメントワインディング法で用いるのに極めて適している。すなわち、この組成物は90℃で2.3Pa.s、110℃で0.8Pa.sの粘度を有する。この粘度はこの温度窓でフィラメントワインディング法に従って炭素繊維またはガラス繊維を被覆するのに極めて適している。
さらに、[図8]に示すように、この温度窓で上記混合物はニュートン挙動を示す。すなわち、その粘度は混合物の剪断速度によって変化しない。従って、組成物浴中へのファイバーの移動速度がどんな速度の場合でも均等な被覆ができるので、この挙動は大きな利点になる。
この組成物はさらに温度によって粘度が大きく変化する。これとは逆に、従来組成物は浴から出ても低い粘度を保持する。従って、被覆されたファイバーが浴を出た時にタレ現象が生じ、ファイバーに付着する組成物の量を変化させ、プロセスの各種部品の汚損の原因となる。この実施例の組成物の場合は、温度降下時に組成物のレオロジー挙動が変化し、組成物の粘度が大幅に増加し、疑似塑性特性を示すのでこのような問題は起こらない。組成物の疑似塑性特性は剪断速度低下時の粘度の著しい増加によって表される。これは浴から出る組成物で被覆されたファイバーの場合に当てはまる。この場合、剪断速度は組成物の重量のみに起因する。
[図9]は20℃および30℃で測定したこの疑似塑性特性を示している。30℃でのこの実施例の組成物の粘度は6.28rad/秒の剪断応力周波数で1000Pa.s以上である。
【0056】
[図10]はDER 332樹脂とRTM6樹脂の粘度の変化を温度を関数として示している。[図11]は25℃での、[図12]は85℃でのこれら2つの樹脂の粘度を示している。これらは低温でもフィラメントワインディング法に最も適した範囲の外にあり、ニュートン挙動を示す。[表1]はこれら2つの樹脂の25℃および85℃での粘度の値を示している。
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1に記載の組成物の6.28rad/秒の剪断応力周波数での粘度Eta*(Pa.s)の変化を温度(℃)の関数で示したグラフ。
【図2】実施例1に記載の組成物の粘度Eta*(Pa.s)の変化を80℃および100℃での剪断応力周波数(rad/秒)の関数で示したグラフ。
【図3】実施例1に記載の組成物の粘度Eta*(Pa.s)の変化を20℃および30℃での剪断応力周波数(rad/秒)の関数で示したグラフ。
【図4】実施例2に記載の組成物の6.28rad/秒の剪断応力周波数での粘度Eta*(Pa.s)の変化を温度(℃)の関数で示したグラフ。
【図5】実施例2に記載の組成物の粘度Eta*(Pa.s)の変化を80℃および100℃での剪断応力周波数(rad/秒)の関数で示したグラフ。
【図6】実施例2に記載の組成物の粘度Eta*(Pa.s)の変化を20℃および30℃での剪断応力周波数(rad/秒)の関数で示したグラフ。
【図7】実施例3に記載の組成物の6.28rad/秒の剪断応力周波数での粘度Eta*(Pa.s)の変化を温度(℃)の関数で示したグラフ。
【図8】実施例3に記載の組成物の粘度Eta*(Pa.s)の変化を90℃および110℃での剪断応力周波数(rad/秒)の関数で示したグラフ。
【図9】実施例3に記載の組成物の粘度Eta*(Pa.s)の変化を20℃および30℃での剪断応力周波数(rad/秒)の関数で示したグラフ。
【図10】実施例3に記載の2つの樹脂の6.28rad/秒の剪断応力周波数での粘度Eta*(Pa.s)の変化を温度(℃)の関数で示したグラフ。
【図11】実施例3に記載の2つの樹脂の粘度Eta*(Pa.s)の変化を、25℃での剪断応力周波数(rad/秒)の関数で示したグラフ。
【図12】実施例3に記載の2つの樹脂の粘度Eta*(Pa.s)の変化を85℃での剪断応力周波数(rad/秒)の関数で示したグラフ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂と特定ポリマーとを組み合わせた組成物の、フィラメントワインディングによる複合材料の製造での使用に関するものである。
本発明はさらに、上記組成物からフィラメントワインディングで部品を製造する方法に関するものである。
本発明の一般的分野は複合材料の分野である。
【背景技術】
【0002】
複合材料は下記(1)と(2)の成分の緊密な結合によって得られる:
(1)補強材:この補強材は骨組み、骨格を形成し、材料の機械的強度を保証し、フィラメント(無機繊維または有機繊維)の特性を有する。
(2)マトリクス:このマトリクスは補強繊維を互いに結合し、応力(耐曲げ力、耐圧縮力)を分散させ、化学的保護を与え、製品の形状を与える。このマトリクスは有機樹脂から成る。
【0003】
これら2つの成分(補強材、マトリクス)は相乗的な品質を示す。補強材とマトリクスの種類を変えることによって極めて多様な機械的および化学的特性を有する材料を得ることができる。従って、多くの分野、例えば航空産業、自動車産業、造船業、建設業の極めて多くの用途で複合材料は使用されている。
【0004】
現在では複合部品を製造するための技術は多数知られている。その中では特に接触成形、吹付け成形、レイアップ成形、低圧成形等が挙げられる。
ある種の場合、特に大型の中空部品を製造する場合には、ファイバーを直接巻き付けるのが有利である。ファイバーは予め樹脂を含浸したプレプレグの形で用いることができる。しかし、このファイバーは高価で、貯蔵寿命も限られ、樹脂の硬化が起こらないように維持するのが難しい。そのため、最初は乾燥しているファイバーを用いてフィラメントワインディング法で中空部品を製造するのが有利である。
【0005】
より正確には、フィラメントワインディング法では樹脂を収容した浴中に乾燥しているファイバーを通し、第2段階で、製造すべき部品に適した形状を有するマンドレル上に巻き付ける。このワインディングで得られた部品を最終段階で例えば加熱硬化させる。
【0006】
このフィラメントワインディング法の難しさは乾燥したファイバーの含浸段階にある。すなわち、十分な含浸を行うためには、組成物はファイバーを正しく含浸させ、しかも、ファイバーが浴を出た時にタレ(coulures)が起きないような十分に液体である必要がある。
従来の組成物ではこのタレ(coulures)現象を避けることはできなかった。このタレの現象は組成物を著しくロスさせ、ファイバー表面上での不均一な付着の原因となり、設備を汚損する原因となる。
従って、この欠点のない組成物が真に求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、驚くべきことに、樹脂配合物を含む組成物中に特定のレオロジー特性を有するポリマーを入れることによってフィラメントワインディングによる部品製造で用いられてきた従来組成物の上記欠点が克服できるということを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の対象は、フィラメントワインディング法による部品製造での組成物の使用において、上記組成物が下記(1)と(2):
(1)少なくとも一種の熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物、
(2)上記配合物中に混和可能な少なくとも一種のレオロジー制御剤、
を含み、上記レオロジー制御剤は上記組成物の剪断速度C1での高温状態と剪断速度C2での低温状態との粘度の差をファクターで少なくとも100にし(ここで、高温状態と低温状態との温度差は少なくとも30℃であり、剪断速度C1は剪断速度C2よりも大きい)且つ上記組成物が高温状態でニュートン挙動を示すようにすることを特徴とする組成物の使用にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
上記剪断速度C1は組成物を収容した浴中に含浸されるファイバー(繊維)の移動速度から得られ、「高温状態」とは浴の温度に相当し、この温度は一般に40〜150℃、例えば80〜100℃である。
上記剪断速度C2は組成物を収容した浴の外部でファイバー上に付着した組成物の残りの滑り物(glissement)から得られ、この剪断速度はC1よりはるかに低く、「低温状態」とはファイバーが浴からマンドレルに送られるときの浴外部の温度を示す。
【0010】
組成物の高温状態と低温状態の粘度差が大きいため、上記組成物で被覆されたファイバーが浴から出るときの上記タレ現象は著しく減り、プロセスの各種部品の汚染とロスが減り、組成物が繊維全体に均一に付着する。これによってファイバーをマンドレル上に巻付けて硬化した後に得られる複合材料の機械的および物理的特性が均一に分布する。
【0011】
さらに、本発明組成物は「高温状態」でニュートン挙動を示す。すなわち、その粘度が混合物の剪断速度によって余り変化しないので、組成物を収容した浴中でのファイバーの移動速度と無関係に均等に被覆され、従って、組成物の量がほぼ同じで組成物分布が均一なファイバーを得ることができる。
【0012】
さらに、上記レオロジー特性(粘度、ニュートン特性)は主として上記定義のレオロジー制御剤の溶液中への添加で得られるので樹脂配合物の選択の自由がより大きくなる。
【0013】
レオロジー制御剤は、例えば高温状態と低温状態との温度差が少なくとも60℃の場合に高温状態と低温状態との粘度差を少なくとも500倍にし、且つ、一般に105を超えないようにするのが有利である。
一例として、上記組成物の粘度は100℃(組成物の浴の温度)で1Pa.s以下であり、周囲温度(フィラメントワインディング法を実施する部品の温度に対応する温度)で約1000Pa.sである。
【0014】
上記レオロジー制御剤はポリマー、例えば直鎖または分岐鎖を有するポリマーにすることができる。特に、このレオロジー制御剤は少なくとも一種のブロックが上記樹脂配合物と非相溶なブロックコポリマーにすることができる。
本発明の一実施例では組成物に上記レオロジー特性を与えるポリマーは下記を含むブロックコポリマーにすることができる:
(1)上記樹脂配合物と混和可能な少なくとも一種のブロックMと、
(2)上記樹脂配合物および上記ブロックMと非相溶な少なくとも一種のブロックB。
【0015】
ブロックMは樹脂配合物と混和可能なポリマーである。
ブロックMはメチルメタクリレートのホモポリマーにすることができる。
ブロックMはメチルメタクリレートのコポリマーにすることもできる。例えば、ブロックMはメチルメタクリレートと少なくとも一種の水溶性モノマーとのコポリマーにすることができる。このコポリマーは少なくとも20重量%のメチルメタクリレート、好ましくは少なくとも50重量%のメチルメタクリレートと水溶性モノマーとを含むことができる。
【0016】
水溶性モノマーの例としてはアクリル酸またはメタクリル酸、これらの酸から得られるアミド、例えばジメチルアクリルアミド、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、必要に応じて四級化された2−アミノエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)(メタ)アクリレート、水溶性ビニルモノマー、例えばN−ビニルピロリドンまたはその他の任意の水溶性であるモノマーが挙げられる。
【0017】
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのポリエチレングリコール基の質量は400〜10000g/molであるのが有利である。
水溶性モノマーはジメチルアクリルアミドであるのが好ましい。
メチルメタクリレートのモル比は90〜5モル%、好ましくは40〜10モル%の水溶性モノマーに対して、10〜95モル%、好ましくは60〜90モル%にすることができる。
【0018】
さらに、ブロックMを構成する他のモノマーはアクリルモノマーでもなくてもよく、反応性があってもなくてもよい。「反応性モノマー」という用語はエポキシ分子のオキシラン基または硬化剤の基と反応可能な基を意味する。
反応性官能基の非限定的な例としてはオキシラン基、アミン基またはカルボキシル基を挙げることができる。反応性モノマーは(メタ)アクリル酸またはこの酸となる他の任意の加水分解可能なモノマーにすることができる。ブロックMを構成できる他のモノマーの非限定的な例としてはグリシジルメタクリレートまたはtert-ブチルメタクリレートおよびn−ブチルアクリレートを挙げることができる。
【0019】
ブロックBは樹脂配合物およびブロックMと非相溶性のポリマーである。BブロックBのTgは0℃以下、好ましくは−40℃以下であるのが有利である。ブロックBを合成するのに使用されるモノマーはジエンにすることができる。このジエンはブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエンの中から選択できる。このブロックBはポリジエン、特にポリブタジエン、ポリイソプレン、これらのランダムコポリマーまたは部分的または完全に水素化されたポリジエンの中から選択するのが好ましい。ポリブタジエンの中ではTgが最も低いもの、例えばポリ(1,2−ブタジエン)のTg(約0℃)より低いTg(約−90℃)を有するポリ(1,4−ブタジエン)を使用するのが好ましい。ブロックBは水素化されていてもよい。この水素化は標準的な技術で実行できる。ブロックBを合成するのに用いるモノマーはアルキル(メタ)アクリレート(すなわち、ブロックBはポリ(アルキル(メタ)アクリレート)にすることができる)でもよい。例えば、エチルアクリレート(Tg=−24℃)、n−ブチルアクリレート(Tg=−45℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(Tg=−60℃)、n−オクチルアクリレート(Tg=−62℃)、ヒドロキシエチルアクリレート(Tg=−15℃)、2−エチルヘキシルメタクリレート(Tg=−10℃)。n−ブチルアクリレートを使用するのが有利である。BとMは非相溶性であるので、BブロックのアクリレートはブロックMのアクリレートとは相違する。ブロックBはポリ(1,4−ブタジエン)を主とするのが好ましい。Bブロックは熱硬化性樹脂およびブロックMと非相溶性である。
【0020】
本発明の一実施例では、レオロジー制御剤がM−B−Mトリブロックコポリマーである(BおよびMは上記定義のもの)。
M−B−Mトリブロックコポリマーの2つのブロックMは同一でも異なっていてもよい。ブロックMが異なる場合は、ブロックMを構成するモノマーの種類が異なっていても、モノマーは同じで分子量が異なっていてもよい。
【0021】
M−B−Mトリブロックコポリマーの数平均分子量は10000〜500000g/モル、好ましくは20000〜200000g/molにするのが好ましい。M−B−Mトリブロックは質量分率で表した下記の組成(合計100重量%)を有するのが有利である。
ブロックM:10〜80%、好ましくは15〜70%、
ブロックB:90〜20%、好ましくは85〜30%。
【0022】
特に適したM−B−Mトリブロックコポリマーは下記のコポリマーである:
(1)ブロックMがメチルメタクリレートモノマーとジメチルアクリルアミドモノマーとを含むコポリマーで、
(2)ブロックBがn−ブチルアクリレートモノマーからなるホモポリマーで、
ブロックMは必要に応じてさらにn−ブチルアクリレートモノマーを含むことができる。
【0023】
特に適した別のコポリマーは下記のM−B−Mトリブロックコポリマーである:
(1)ブロックMがメチルメタクリレートモノマーを含むポリマーで、
(2)ブロックBがn−ブチルアクリレートモノマーからなるホモポリマーで、
ブロックMは必要に応じてさらにn−ブチルアクリレートモノマーを含むことができる。
【0024】
レオロジー制御剤として用いられるコポリマーは、ブロックBおよびブロックMの他に、上記樹脂配合物およびブロックBと非相溶なブロックSを含むことができる。
このブロックSは熱硬化性樹脂およびブロックBと非相溶である。ブロックSのTgまたはTmはブロックBのTg以上且つ23℃以上、好ましくは50℃以上であるのが有利である。ブロックSの例としてはビニル芳香族化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレンまたはビニールトルエンから得られるものや、アクリル酸および/またはメタアクリル酸から得られるアルキル鎖の炭素原子が1〜18のアルキルエステルが挙げられる。ブロックSはポリスチレンであるのが好ましい。
【0025】
本発明の一実施例では、レオロジー制御剤がS−B−Mトリブロックコポリマー(S、B、Mは上記定義のもの)である。
S−B−Mトリブロックコポリマーの数平均分子量は10000g/mol〜500000g/モル、好ましくは20000〜200000g/molにするのが好ましい。S−B−Mトリブロックは質量分率で表した下記の組成(合計100重量%)を有するのが有利である。
ブロックM:10〜80%、好ましくは15〜70%
ブロックB:2〜80%、好ましくは5〜70%
ブロックS:10〜88%、好ましくは15〜85%
【0026】
本発明ではS−B−Mの一部をS−Bジブロックで置換できる。置換可能部分はS−B−Mの70重量%までである。
特に適した一つのS−B−Mトリブロックコポリマーは下記を含むコポリマーである:
(1)スチレンモノマーからなるホモポリマーのブロックS、
(2)1,4−ブタジエンモノマーからなるホモポリマーのブロックB、
(3)メチルメタクリレートモノマーからなるホモポリマーのブロックM。
【0027】
本発明の別の実施例では、レオロジー制御剤として用いることができ且つ上記レオロジー特性を組成物に与えるポリマーを下記を含むブロックコポリマーにすることができる:
(1)上記樹脂配合物と非相溶性の少なくとも一種のブロックB、
(2)上記樹脂配合物および上記ブロックBと非相溶なの少なくとも一種のブロックS。
(ブロックSおよびブロックBは上記定義のもの)
【0028】
特に、このコポリマーは下記S−Bジブロックコポリマーにすることができる:
(1)ブロックSがスチレンモノマーからなるホモポリマー、
(2)ブロックBが1,4−ブタジエンモノマーからなるホモポリマー
【0029】
本発明で用いられる組成物は少なくとも一種の熱硬化性樹脂からなる樹脂配合物を含む。この熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂であるのが有利である。
【0030】
「エポキシ樹脂」(以下、Eで表す)は開環重合可能なオキシランタイプの少なくとも2つの官能基を有する任意の有機化合物を意味する。「エポキシ樹脂」という用語は室温(23℃)またはそれ以上の高温度で液体である任意のエポキシ樹脂を意味する。このエポキシ樹脂はモノマーでもポリマーでもよく、また、脂肪族、脂環式、複素環式、芳香族でもよい。エポキシ樹脂の例としてはレソルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリグリシジルp−アミノフェノール、ブロモビスフェノールF ジグリシジルエーテル、m−アミノフェノールトリグリシジルエーテル、テトラグリシジルメチレンジアニリン、(トリヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、フェノール−ホルムアルデヒド ノボラックポリグリシジルエーテル、オルト-クレゾール ノボラックポリグリシジルエーテル、テトラフェニルエタンテトラグリシジルエーテルを挙げることができる。これら樹脂の少なくとも2つの混合物を使うこともできる。
【0031】
特に好ましいエポキシ樹脂は1分子当り少なくとも1.5個のオキシラン基を有するエポキシ樹脂、特に1分子当り2〜4個のオキシラン基を有するものである。また、少なくとも一つの芳香環、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテルを有するエポキシ樹脂も好ましい。
【0032】
樹脂配合物は一般に硬化剤を含む。この硬化剤としては下記を挙げることができる:
(1)酸無水物、特に無水琥珀酸、
(2)芳香剤または脂肪族ポリアミン、特にジアミノジフェニルスルホン(DDS)またはメチレンジアニリンまたは4,4’−メチレンビス(3−クロル−2,6−ジエチルアニリン)(MCDEA)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)(MDEA)
(3)ジシアンジアミドとその誘導体、
(4)イミダゾール、
(5)ポリカルボン酸、
(6)ポリフェノール。
【0033】
本発明配合物に通常の添加物、例えば熱可塑性プラスチック、例えばポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、液体弾性材またはコア−シェルタイプの衝撃改質材を添加しても本発明の範囲から逸脱するものではない。
【0034】
本発明組成物は樹脂配合物とレオロジー制御剤とを混合できる従来の任意の混合方法で調製できる。熱硬化樹脂と制御剤の2つを均一にブレンドできる任意の熱可塑性樹脂の技術、例えば押出成形機を使用できる。
【0035】
樹脂配合物とレオロジー制御剤の比率は、95〜80重量%の樹脂配合物に対して5〜20重量%にするのが有利である。レオロジー制御剤の含有率は95〜85重量%の樹脂配合物に対して5〜15重量%にするのが有利である。
【0036】
上記組成物はフィラメントワインディング法による部品製造で用いられる。
従って、本発明の第2の対象はフィラメントワインディング法による部品製造方法にある。本発明のフィラメントワインディング法による部品製造方法は、
(1)熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物からなる組成物からなる浴中に部品の補強材を形成するためのファイバーを通す段階と、
(2)こうして被覆されたファイバーを所望形状のマンドレル上に巻付ける段階と、
(3)巻付けたファイバーを硬化する段階と、
をこの順番で有し、組成物が上記配合物中に混和可能な少なくとも一種のレオロジー制御剤をさらに含み、このレオロジー制御剤が、上記組成物の剪断速度C1での高温状態と剪断速度C2での低温状態との粘度の差がをファクターで少なくとも100にし(ここで、高温状態と低温状態との温度差は少なくとも30℃であり、剪断速度C1は剪断速度C2よりも大きい)且つ上記組成物を高温状態でニュートン挙動を示すようにすることを特徴とする。
【0037】
本発明の一実施例では、レオロジー制御剤を下記(1)と(2)を含むブロックコポリマーにすることができる:
(1)上記樹脂配合物と混和可能な少なくとも一種のブロックM、
(2)上記樹脂配合物および上記ブロックMと非相溶な少なくとも一種のブロックB、
(ブロックMおよびブロックBは上記定義のもの)
【0038】
別の実施例では、レオロジー制御剤を下記(1)と(2)を含むブロックコポリマーにすることができる:
(1)上記樹脂配合物と非相溶な少なくとも一種のブロックB、
(2)上記樹脂配合物およびブロックBと非相溶な少なくとも一種のブロックS、
(ブロックBおよびブロックSは上記定義のもの)
【0039】
部品の補強材を構成するファイバーはガラス繊維、炭素繊維またはアラミド繊維にすることができる。これらファイバーは先ず最初に巻出しリールから含浸浴中へ送られ、ここで上記組成物で被覆される。次の段階で、これらファイバーは案内システムを介してマンドレル上へ送られ、この上に配置される。
【0040】
この配置操作が終了した後に、被覆済みファイバーを硬化段階で硬化させる。この硬化段階は(1)周囲温度、(2)加熱、例えばオーブン内での加熱または(3)紫外線または赤外線照射によって行うことができる。硬化段階は組成物中に入れた硬化剤の種類に依存する。
【0041】
本発明組成物は多くの分野の部品の製造に適用できる。本発明の他の対象は上記方法で得られる部品にある。これらの部品は航空産業、造船業、建設業、風力タービンの製造や、化学工業の工場での流体輸送用パイプまたは炭化水素輸送用パイプの製造で使用される。
【0042】
本発明のさらに他の対象は、フィラメントワインディング法による部品製造のための上記定義の組成物にある。
本発明の一実施例では、レオロジー制御剤を下記(1)と(2)とを含むブロックコポリマーにすることができる:
(1)上記樹脂配合物と混和可能な少なくとも一種のブロックM、
(2)上記樹脂配合物および上記ブロックMと非相溶な少なくとも一種のブロックB、
(ブロックMおよびブロックBは上記定義のもの)
別の実施例では、レオロジー制御剤を下記(1)と(2)を含むブロックコポリマーにすることができる:
(1)上記樹脂配合物と非相溶な少なくとも一種のブロックB、
(2)上記樹脂配合物およびブロックBと非相溶なの少なくとも一種のブロックS、
(ブロックBおよびブロックSは上記定義のもの)
以下、本発明の実施例を示すが、これらの実施例は単なる例で、本発明をなんら限定するものではない。
【実施例】
【0043】
実施例1
この実施例では下記のS−B−Mトリブロックコポリマーを用いた:
(1)ブロックSはスチレンモノマーからなるホモポリマー、
(2)ブロックBは1,4−ブタジエンモノマーからなるホモポリマー、
(3)ブロックMはメチルメタクリレートモノマーからなるホモポリマー。
より正確には上記コポリマーは下記の分子的特徴を有する:
(1)ブロックSの含有率:コポリマーの全重量の55重量%、
(2)ブロックBの含有率:コポリマーの全重量の15重量%、
(3)ブロックMの含有率:コポリマーの全重量の30重量%、
(4)ブロックSの重量平均分子量Mw:20150
(5)S−B−Mに対するS−Bポリマーの重量%:コポリマーの全重量の36重量%。
【0044】
このコポリマーは組成物の全重量の15重量%の量で組成物中に存在する。
テストした組成物は下記をさらに含む:
(1)ビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂(Dow社からDER 332(登録商標)で市販)、
(2)4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)(MDEA)アミン(Lonza社から商品番号LONZACUREで市販)。
重量の樹脂およびアミンは組成物の全重量の85重量%の量で存在する。
【0045】
組成物の製造手順は以下の通り:
(1)Dow社の製品DER 332樹脂を160℃で攪拌し、
(2)温度が安定したら、樹脂を真空脱気し、
(3)脱気後、減圧を止め、S−B−Mコポリマーを粉末状で導入し、
(4)全てのS−B−Mがエポキシ樹脂に溶解したら、混合物を真空脱気し、
(5)脱気後、温度を120℃に下げ、減圧を止め、
(6)MDEAアミンをエポキシ樹脂に対する計算量(すなわち比r=アミンの質量/樹脂の質量=0.445)で導入する。
【0046】
この組成物の粘度の変化を温度の関数で示した[図1]に示すように、この組成物はフィラメントワインディング法で用いるのに極めて適している。すなわち、組成物は80℃で1.5Pa.s、100℃で0.4Pa.sの粘度を示す。この温度窓での上記粘度はフィラメントワインディング法で炭素繊維またはガラス繊維を被覆するのに極めて適している。
【0047】
さらに、[図2]に示すように、この温度窓で上記混合物はニュートン挙動を示す。すなわち、粘度は混合物の剪断速度によって変化しない。従って、組成物浴中でのファイバーの移動速度がどんな速度になっても均等な被覆ができるという点でこの挙動は大きな利点になる。
上記組成物はさらに、温度によって粘度が大きく変化するという利点がある。これとは逆に、従来組成物は浴から出た時の粘度が低いままであり、従って、被覆済みのファイバーが浴を出た時にタレ現象が生じ、ファイバーに付着する組成物の量の変化、場合によってはさらにプロセスの各種部品の汚染、ロスの原因となる。
本発明実施例の組成物の場合には、温度降下時に組成物の粘度が大きく増加するので上記のような問題は起こらない。
【0048】
極めて有利なことに、温度降下時に上記組成物はレオロジー挙動も変化し、低温で疑似塑性特性を示す。上記組成物のこの疑似塑性特性は剪断速度低下時の粘度の著しい増加によって表される。これは浴から出た組成物で被覆されたファイバーの場合に当てはまる(剪断速度が組成物の重量のみに起因する)。
[図3]は20℃および30℃で測定した疑似塑性特性を示している。すなわち、20℃でこの実施例の組成物の粘度は6.28rad/秒の剪断応力周波数で1000Pa.s以上である。
【0049】
実施例2
この実施例では下記のM−B−Mコポリマーを用いた:
(1)ブロックMがメチルメタクリレートモノマーとジメチルアクリルアミドモノマーとを含むコポリマー、
(2)ブロックBがn−ブチルアクリレートモノマーからなるホモポリマー。
より正確にはこのコポリマーは下記の分子的特徴を有する:
(1)n−ブチルアクリレートの含有率:コポリマーの全重量の53重量%、
(2)メチルメタクリレートの含有率:31重量%、
(3)ジメチルアクリルアミドの含有率:16重量%、
(4)ブロックBの数平均分子量Mn:23780、
(5)ブロックBの多分散度指数PDI:1.4。
【0050】
このコポリマーは組成物の全重量の5重量%の量で組成物中に存在する。
用いた組成物は下記をさらに含む:
(1)RTM6エポキシ樹脂(Hexcel社)、
この樹脂は組成物の全重量の95重量%の量で存在する。
【0051】
組成物の製造手順は以下の通り:
(1)Hexcel社の製品RTM6樹脂を100℃で攪拌し、
(2)温度が安定したら、樹脂を真空脱気し、
(3)脱気後、減圧を止め、コポリマーを粉末状で導入し、
(4)全てのコポリマーがエポキシ樹脂に溶解したら、混合物を真空脱気する。
【0052】
この組成物の粘度の変化を温度を関数として示した[図4]に示すように、この組成物はフィラメントワインディング法で用いるのに極めて適している。すなわち、この組成物は80℃で1.8Pa.s、100℃で0.6Pa.sの粘度を有する。この粘度はこの温度窓ではフィラメントワインディング法で炭素繊維またはガラス繊維を被覆するのに極めて適している。
さらに、[図5]に示すように、この温度窓では上記混合物はニュートン挙動を示す。すなわち、上記混合物は剪断速度で粘度が変化しない。従って、組成物浴中へのファイバーの移動速度がどんな速度でも均等な被覆ができる。この挙動は大きな利点になる。
上記組成物はさらに、温度によって粘度が大きく変化する。これとは逆に、従来組成物は浴から出た後も低い粘度を保持するため、被覆済みのファイバーが浴を出た時にタレ現象が生じ、ファイバーに付着する組成物の量を変化させ、プロセスの各種部品の汚損の原因となる。本発明実施例の組成物の場合には、温度降下時し、組成物のレオロジー挙動が変化したときに組成物の粘度が大幅に増加し、低温で疑似塑性特性を示すので、このような問題は起こらない。
組成物の疑似塑性特性は剪断速度低下時の粘度の著しい増加によって表される。これは浴から出た組成物で被覆されたファイバーの場合に当てはまる。すなわち、剪断速度は組成物の重量のみに起因する。
[図6]は20℃および30℃で測定したこの疑似塑性特性を示している。20℃での本実施例の組成物の粘度は6.28rad/秒の剪断応力周波数で1000Pa.s以上である。
【0053】
実施例3
この実施例では下記のM−B−Mコポリマーを用いた:
(1)ブロックMはメチルメタクリレートモノマー含むポリマー、
(2)ブロックBはn−ブチルアクリレートモノマーからなるホモポリマー。
より正確にはこのコポリマーは下記の分子的特徴を有する:
(1)n−ブチルアクリレートの含有率:コポリマーの全重量の42重量%、
(2)メチルメタクリレートの含有率:58重量%、
(3)ブロックBの数平均分子量Mn:21200、
(4)ブロックBの多分散度指数PDI:1.3。
【0054】
このコポリマーは組成物の全重量の10重量%の量で組成物中に存在する。
用いた組成物は下記をさらに含む:
(1)RTM6エポキシ樹脂(Hexcel社)、
この樹脂は組成物の全重量の90重量%の量で存在する。
組成物の製造手順は以下の通り:
(1)Hexcel社の製品RTM6樹脂を100℃で攪拌し、
(2)温度が安定したら、樹脂を真空脱気し、
(3)脱気後、減圧を止め、コポリマーを粉末状で導入し、
(4)全てのコポリマーがエポキシ樹脂に溶解したら、混合物を真空脱気する。
【0055】
この組成物の粘度の変化を温度の関数として示した[図7]に示すように、この組成物はフィラメントワインディング法で用いるのに極めて適している。すなわち、この組成物は90℃で2.3Pa.s、110℃で0.8Pa.sの粘度を有する。この粘度はこの温度窓でフィラメントワインディング法に従って炭素繊維またはガラス繊維を被覆するのに極めて適している。
さらに、[図8]に示すように、この温度窓で上記混合物はニュートン挙動を示す。すなわち、その粘度は混合物の剪断速度によって変化しない。従って、組成物浴中へのファイバーの移動速度がどんな速度の場合でも均等な被覆ができるので、この挙動は大きな利点になる。
この組成物はさらに温度によって粘度が大きく変化する。これとは逆に、従来組成物は浴から出ても低い粘度を保持する。従って、被覆されたファイバーが浴を出た時にタレ現象が生じ、ファイバーに付着する組成物の量を変化させ、プロセスの各種部品の汚損の原因となる。この実施例の組成物の場合は、温度降下時に組成物のレオロジー挙動が変化し、組成物の粘度が大幅に増加し、疑似塑性特性を示すのでこのような問題は起こらない。組成物の疑似塑性特性は剪断速度低下時の粘度の著しい増加によって表される。これは浴から出る組成物で被覆されたファイバーの場合に当てはまる。この場合、剪断速度は組成物の重量のみに起因する。
[図9]は20℃および30℃で測定したこの疑似塑性特性を示している。30℃でのこの実施例の組成物の粘度は6.28rad/秒の剪断応力周波数で1000Pa.s以上である。
【0056】
[図10]はDER 332樹脂とRTM6樹脂の粘度の変化を温度を関数として示している。[図11]は25℃での、[図12]は85℃でのこれら2つの樹脂の粘度を示している。これらは低温でもフィラメントワインディング法に最も適した範囲の外にあり、ニュートン挙動を示す。[表1]はこれら2つの樹脂の25℃および85℃での粘度の値を示している。
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1に記載の組成物の6.28rad/秒の剪断応力周波数での粘度Eta*(Pa.s)の変化を温度(℃)の関数で示したグラフ。
【図2】実施例1に記載の組成物の粘度Eta*(Pa.s)の変化を80℃および100℃での剪断応力周波数(rad/秒)の関数で示したグラフ。
【図3】実施例1に記載の組成物の粘度Eta*(Pa.s)の変化を20℃および30℃での剪断応力周波数(rad/秒)の関数で示したグラフ。
【図4】実施例2に記載の組成物の6.28rad/秒の剪断応力周波数での粘度Eta*(Pa.s)の変化を温度(℃)の関数で示したグラフ。
【図5】実施例2に記載の組成物の粘度Eta*(Pa.s)の変化を80℃および100℃での剪断応力周波数(rad/秒)の関数で示したグラフ。
【図6】実施例2に記載の組成物の粘度Eta*(Pa.s)の変化を20℃および30℃での剪断応力周波数(rad/秒)の関数で示したグラフ。
【図7】実施例3に記載の組成物の6.28rad/秒の剪断応力周波数での粘度Eta*(Pa.s)の変化を温度(℃)の関数で示したグラフ。
【図8】実施例3に記載の組成物の粘度Eta*(Pa.s)の変化を90℃および110℃での剪断応力周波数(rad/秒)の関数で示したグラフ。
【図9】実施例3に記載の組成物の粘度Eta*(Pa.s)の変化を20℃および30℃での剪断応力周波数(rad/秒)の関数で示したグラフ。
【図10】実施例3に記載の2つの樹脂の6.28rad/秒の剪断応力周波数での粘度Eta*(Pa.s)の変化を温度(℃)の関数で示したグラフ。
【図11】実施例3に記載の2つの樹脂の粘度Eta*(Pa.s)の変化を、25℃での剪断応力周波数(rad/秒)の関数で示したグラフ。
【図12】実施例3に記載の2つの樹脂の粘度Eta*(Pa.s)の変化を85℃での剪断応力周波数(rad/秒)の関数で示したグラフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメントワインディング法による部品製造での組成物の使用であって、
上記組成物が、
(1)少なくとも一種の熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物と、
(2)上記組成物の剪断速度C1での高温状態と剪断速度C2での低温状態との粘度の差が少なくともファクターで100となり(ここで、高温状態と低温状態の温度差は少なくとも30℃であり、剪断速度C1は剪断速度C2よりも大きい)且つ上記組成物が高温状態でニュートン挙動を示すようにする、上記配合物と混和可能な少なくとも一種のレオロジー制御剤と、
を含むことを特徴とする使用。
【請求項2】
高温状態と低温状態との温度差が少なくとも60℃である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
粘度の差がファクターで少なくとも500である請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
上記レオロジー制御剤が、少なくとも一つのブロックが上記樹脂配合物と非相溶であるブロックコポリマーである請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
フィラメントワインディング法による部品製造での下記(1)と(2)を含む組成物の使用:
(1)少なくとも一種の熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物、
(2)この樹脂配合物と混和可能な少なくとも一種のブロックMと、上記樹脂配合物および上記ブロックMとは非相溶な少なくとも一種のブロックBとを有するブロックコポリマーの中から選択される少なくとも一種のレオロジー制御剤。
【請求項6】
上記ブロックMがメチルメタクリレートのホモポリマーまたはメチルメタクリレートのコポリマーである請求項5に記載の使用。
【請求項7】
上記ブロックMがメチルメタクリレートと少なくとも一種の水溶性モノマーとのコポリマーである請求項5または6に記載の使用。
【請求項8】
上記ブロックM中でメチルメタクリレートの比率が10〜95モル%で、上記水溶性モノマーが90〜5モル%である請求項7に記載の使用。
【請求項9】
メチルメタクリレートの比率が60〜90モル%で水溶性モノマーの比率が40〜10モル%である請求項7または8に記載の使用。
【請求項10】
上記水溶性モノマーがジメチルアクリルアミドである請求項7〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
上記ブロックBがポリ(アルキル(メタ)アクリレート)およびポリジエンの中から選択される請求項5〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
上記ブロックBがポリ(n−ブチルアクリレート)ブロックである請求項5〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
上記レオロジー制御剤がM−B−Mトリブロックコポリマーである請求項5〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
上記M−B−Mコポリマーの、
(1)ブロックMがメチルメタクリレートモノマーとジメチルアクリルアミドモノマーとを含むコポリマーであり、
(2)ブロックBがn−ブチルアクリレートモノマーからなるホモポリマーであり、
ブロックMは必要に応じてさらにn−ブチルアクリレートモノマーを含むことができる請求項13に記載の使用。
【請求項15】
上記M−B−Mコポリマーの、
(1)ブロックMがメチルメタクリレートモノマーを含むポリマーであり、
(2)ブロックBがn−ブチルアクリレートモノマーからなるホモポリマーであり、
ブロックMが必要に応じてさらにn−ブチルアクリレートモノマーを含むことができる請求項13に記載の使用。
【請求項16】
上記ブロックコポリマーが、上記樹脂配合物およびブロックBと非相溶性のあるブロックSをさらに含む請求項5〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
上記ブロックSがポリスチレンである請求項16に記載の使用。
【請求項18】
上記コポリマーが下記:
(1)スチレンモノマーからなるホモポリマーからなるブロックS、
(2)1,4−ブタジエンモノマーからなるホモポリマーからなるブロックB、
(3)メチルメタクリレートモノマーからなるホモポリマーからなるブロックM、
を含むS−B−Mコポリマーである請求項16または17に記載の使用。
【請求項19】
下記(1)および(2):
(1)少なくとも一種の熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物、
(2)(a)上記樹脂配合物と非相溶な少なくとも一種のブロックBと(b)上記樹脂配合物およびブロックBと非相溶な少なくとも一種のブロックSとを含むブロックコポリマーの中から選択される少なくとも一種のレオロジー制御剤、
を含む組成物のフィラメントワインディングによる部品製造での使用。
【請求項20】
レオロジー制御剤が下記:
(1)ブロックSがスチレンモノマーからなるホモポリマーからなり、
(2)ブロックBが1,4−ブタジエンモノマーからなるホモポリマーからなる、
S−Bジブロックコポリマーである請求項19に記載の使用。
【請求項21】
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である請求項1〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
エポキシ樹脂がレソルシノールのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ブロモビスフェノールFのジグリシジルエーテル、m−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、テトラグリシジルメチレンジアニリン、(トリヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、フェノール−ホルムアルデヒド ノボラックのポリグリシジルエーテル、オルト-クレゾール ノボラックのポリグリシジルエーテル、テトラフェニルエタンのテトラグリシジルエーテルの中から選択される請求項21に記載の組成物の使用。
【請求項23】
上記樹脂配合物が硬化剤を含む請求項1〜22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
上記硬化剤が酸無水物、芳香族または脂肪族ポリアミン、ジシアンジアミド、イミダゾール、ポリカルボン酸、ポリフェノールの中から選択される請求項23に記載の使用。
【請求項25】
下記(1)〜(3)の段階:
(1)熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物からなる組成物を入れた浴中に部品の補強材を形成するためのファイバーを通す段階、
(2)塗布済みのファイバーを所定形状のマンドレル上に巻付ける段階、
(3)巻付けたファイバーを硬化する段階、
をこの順番で有する、フィラメントワインディング法で部品を製造する方法において、上記組成物が上記配合物に混和可能な少なくとも一種のレオロジー制御剤を含み、このレオロジー制御剤は上記組成物の剪断速度C1での高温状態と剪断速度C2での低温状態との粘度の差を少なくともファクターで100とし(ここで、高温状態と低温状態の温度差は少なくとも30℃であり、剪断速度C1は剪断速度C2よりも大きい)且つ上記組成物が高温状態でニュートン挙動を示すようにするものであることを特徴とする方法。
【請求項26】
下記(1)〜(3)の段階:
(1)熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物からなる組成物からなる浴中に部品の補強材を形成するためのファイバーを通す段階、
(2)塗布済みのファイバーを所望形状のマンドレル上に巻付ける段階、
(3)巻付けたファイバーを硬化する段階、
をこの順番で有するフィラメントワインディング法によって部品を製造する方法において、上記組成物が、
(a)上記樹脂配合物と混和可能な少なくとも一種のブロックM、
(b)上記樹脂配合物および上記ブロックMと非相溶な少なくとも一種のブロックB、
を含むブロックコポリマーの中から選択される少なくとも一種のレオロジー制御剤をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
下記(1)〜(3)の段階:
(1)熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物からなる組成物からなる浴中に部品の補強材を形成するためのファイバーを通す段階、
(2)塗布済みのファイバーを所望形状のマンドレル上に巻付ける段階、
(3)巻付けたファイバーを硬化する段階、
をこの順番で有するフィラメントワインディング法によって部品を製造する方法において、上記組成物が下記:
(a)上記樹脂配合物と非相溶な少なくとも一種のブロックB、
(b)上記樹脂配合物および上記ブロックBと非相溶な少なくとも一種のブロックS
を含むブロックコポリマーの中から選択される少なくとも一種のレオロジー制御剤をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
上記ファイバーがガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、これらの繊維の混合物の中から選択される請求項25〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
請求項25〜28のいずれか一項に記載の方法によって得られる部品。
【請求項30】
航空産業用の部品である請求項29に記載の部品。
【請求項31】
流体輸送用のホースである請求項29に記載の部品。
【請求項32】
下記(1)および(2):
(1)少なくとも一種の熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の配合物、
(2)上記配合物中に混和可能な少なくとも一種のレオロジー制御剤、
を含むフィラメントワインディング法による部品製造用の組成物であって、上記レオロジー制御剤は上記組成物の剪断速度C1での高温状態と剪断速度C2での低温状態の粘度の差をファクターで少なくとも100にし(ここで、高温状態と低温状態の温度差は少なくとも30℃であり、剪断速度C1は剪断速度C2よりも大きい)且つ上記組成物が高温状態でニュートン挙動を示すようにすることを特徴とする組成物。
【請求項33】
下記(1)と(2):
(1)少なくとも一種の熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物、
(2)(a)上記樹脂配合物と混和可能な少なくとも一種のブロックMと(b)上記樹脂配合物および上記ブロックMと非相溶な少なくとも一種のブロックBを含むブロックコポリマーの中から選択される少なくとも一種のレオロジー制御剤、
を含むフィラメントワインディング法による部品製造用の組成物。
【請求項34】
下記(1)と(2):
(1)少なくとも一種の熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物、
(2)(a)上記樹脂配合物と非相溶な少なくとも一種のブロックBと(b)上記樹脂配合物および上記ブロックBと非相溶な少なくとも一種のブロックSを含むブロックコポリマーの中から選択される少なくとも一種のレオロジー制御剤
を含むフィラメントワインディング法による部品製造用の組成物。
【請求項1】
フィラメントワインディング法による部品製造での組成物の使用であって、
上記組成物が、
(1)少なくとも一種の熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物と、
(2)上記組成物の剪断速度C1での高温状態と剪断速度C2での低温状態との粘度の差が少なくともファクターで100となり(ここで、高温状態と低温状態の温度差は少なくとも30℃であり、剪断速度C1は剪断速度C2よりも大きい)且つ上記組成物が高温状態でニュートン挙動を示すようにする、上記配合物と混和可能な少なくとも一種のレオロジー制御剤と、
を含むことを特徴とする使用。
【請求項2】
高温状態と低温状態との温度差が少なくとも60℃である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
粘度の差がファクターで少なくとも500である請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
上記レオロジー制御剤が、少なくとも一つのブロックが上記樹脂配合物と非相溶であるブロックコポリマーである請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
フィラメントワインディング法による部品製造での下記(1)と(2)を含む組成物の使用:
(1)少なくとも一種の熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物、
(2)この樹脂配合物と混和可能な少なくとも一種のブロックMと、上記樹脂配合物および上記ブロックMとは非相溶な少なくとも一種のブロックBとを有するブロックコポリマーの中から選択される少なくとも一種のレオロジー制御剤。
【請求項6】
上記ブロックMがメチルメタクリレートのホモポリマーまたはメチルメタクリレートのコポリマーである請求項5に記載の使用。
【請求項7】
上記ブロックMがメチルメタクリレートと少なくとも一種の水溶性モノマーとのコポリマーである請求項5または6に記載の使用。
【請求項8】
上記ブロックM中でメチルメタクリレートの比率が10〜95モル%で、上記水溶性モノマーが90〜5モル%である請求項7に記載の使用。
【請求項9】
メチルメタクリレートの比率が60〜90モル%で水溶性モノマーの比率が40〜10モル%である請求項7または8に記載の使用。
【請求項10】
上記水溶性モノマーがジメチルアクリルアミドである請求項7〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
上記ブロックBがポリ(アルキル(メタ)アクリレート)およびポリジエンの中から選択される請求項5〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
上記ブロックBがポリ(n−ブチルアクリレート)ブロックである請求項5〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
上記レオロジー制御剤がM−B−Mトリブロックコポリマーである請求項5〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
上記M−B−Mコポリマーの、
(1)ブロックMがメチルメタクリレートモノマーとジメチルアクリルアミドモノマーとを含むコポリマーであり、
(2)ブロックBがn−ブチルアクリレートモノマーからなるホモポリマーであり、
ブロックMは必要に応じてさらにn−ブチルアクリレートモノマーを含むことができる請求項13に記載の使用。
【請求項15】
上記M−B−Mコポリマーの、
(1)ブロックMがメチルメタクリレートモノマーを含むポリマーであり、
(2)ブロックBがn−ブチルアクリレートモノマーからなるホモポリマーであり、
ブロックMが必要に応じてさらにn−ブチルアクリレートモノマーを含むことができる請求項13に記載の使用。
【請求項16】
上記ブロックコポリマーが、上記樹脂配合物およびブロックBと非相溶性のあるブロックSをさらに含む請求項5〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
上記ブロックSがポリスチレンである請求項16に記載の使用。
【請求項18】
上記コポリマーが下記:
(1)スチレンモノマーからなるホモポリマーからなるブロックS、
(2)1,4−ブタジエンモノマーからなるホモポリマーからなるブロックB、
(3)メチルメタクリレートモノマーからなるホモポリマーからなるブロックM、
を含むS−B−Mコポリマーである請求項16または17に記載の使用。
【請求項19】
下記(1)および(2):
(1)少なくとも一種の熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物、
(2)(a)上記樹脂配合物と非相溶な少なくとも一種のブロックBと(b)上記樹脂配合物およびブロックBと非相溶な少なくとも一種のブロックSとを含むブロックコポリマーの中から選択される少なくとも一種のレオロジー制御剤、
を含む組成物のフィラメントワインディングによる部品製造での使用。
【請求項20】
レオロジー制御剤が下記:
(1)ブロックSがスチレンモノマーからなるホモポリマーからなり、
(2)ブロックBが1,4−ブタジエンモノマーからなるホモポリマーからなる、
S−Bジブロックコポリマーである請求項19に記載の使用。
【請求項21】
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である請求項1〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
エポキシ樹脂がレソルシノールのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ブロモビスフェノールFのジグリシジルエーテル、m−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、テトラグリシジルメチレンジアニリン、(トリヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、フェノール−ホルムアルデヒド ノボラックのポリグリシジルエーテル、オルト-クレゾール ノボラックのポリグリシジルエーテル、テトラフェニルエタンのテトラグリシジルエーテルの中から選択される請求項21に記載の組成物の使用。
【請求項23】
上記樹脂配合物が硬化剤を含む請求項1〜22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
上記硬化剤が酸無水物、芳香族または脂肪族ポリアミン、ジシアンジアミド、イミダゾール、ポリカルボン酸、ポリフェノールの中から選択される請求項23に記載の使用。
【請求項25】
下記(1)〜(3)の段階:
(1)熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物からなる組成物を入れた浴中に部品の補強材を形成するためのファイバーを通す段階、
(2)塗布済みのファイバーを所定形状のマンドレル上に巻付ける段階、
(3)巻付けたファイバーを硬化する段階、
をこの順番で有する、フィラメントワインディング法で部品を製造する方法において、上記組成物が上記配合物に混和可能な少なくとも一種のレオロジー制御剤を含み、このレオロジー制御剤は上記組成物の剪断速度C1での高温状態と剪断速度C2での低温状態との粘度の差を少なくともファクターで100とし(ここで、高温状態と低温状態の温度差は少なくとも30℃であり、剪断速度C1は剪断速度C2よりも大きい)且つ上記組成物が高温状態でニュートン挙動を示すようにするものであることを特徴とする方法。
【請求項26】
下記(1)〜(3)の段階:
(1)熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物からなる組成物からなる浴中に部品の補強材を形成するためのファイバーを通す段階、
(2)塗布済みのファイバーを所望形状のマンドレル上に巻付ける段階、
(3)巻付けたファイバーを硬化する段階、
をこの順番で有するフィラメントワインディング法によって部品を製造する方法において、上記組成物が、
(a)上記樹脂配合物と混和可能な少なくとも一種のブロックM、
(b)上記樹脂配合物および上記ブロックMと非相溶な少なくとも一種のブロックB、
を含むブロックコポリマーの中から選択される少なくとも一種のレオロジー制御剤をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
下記(1)〜(3)の段階:
(1)熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物からなる組成物からなる浴中に部品の補強材を形成するためのファイバーを通す段階、
(2)塗布済みのファイバーを所望形状のマンドレル上に巻付ける段階、
(3)巻付けたファイバーを硬化する段階、
をこの順番で有するフィラメントワインディング法によって部品を製造する方法において、上記組成物が下記:
(a)上記樹脂配合物と非相溶な少なくとも一種のブロックB、
(b)上記樹脂配合物および上記ブロックBと非相溶な少なくとも一種のブロックS
を含むブロックコポリマーの中から選択される少なくとも一種のレオロジー制御剤をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
上記ファイバーがガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、これらの繊維の混合物の中から選択される請求項25〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
請求項25〜28のいずれか一項に記載の方法によって得られる部品。
【請求項30】
航空産業用の部品である請求項29に記載の部品。
【請求項31】
流体輸送用のホースである請求項29に記載の部品。
【請求項32】
下記(1)および(2):
(1)少なくとも一種の熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の配合物、
(2)上記配合物中に混和可能な少なくとも一種のレオロジー制御剤、
を含むフィラメントワインディング法による部品製造用の組成物であって、上記レオロジー制御剤は上記組成物の剪断速度C1での高温状態と剪断速度C2での低温状態の粘度の差をファクターで少なくとも100にし(ここで、高温状態と低温状態の温度差は少なくとも30℃であり、剪断速度C1は剪断速度C2よりも大きい)且つ上記組成物が高温状態でニュートン挙動を示すようにすることを特徴とする組成物。
【請求項33】
下記(1)と(2):
(1)少なくとも一種の熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物、
(2)(a)上記樹脂配合物と混和可能な少なくとも一種のブロックMと(b)上記樹脂配合物および上記ブロックMと非相溶な少なくとも一種のブロックBを含むブロックコポリマーの中から選択される少なくとも一種のレオロジー制御剤、
を含むフィラメントワインディング法による部品製造用の組成物。
【請求項34】
下記(1)と(2):
(1)少なくとも一種の熱硬化性樹脂を含む少なくとも一種の樹脂配合物、
(2)(a)上記樹脂配合物と非相溶な少なくとも一種のブロックBと(b)上記樹脂配合物および上記ブロックBと非相溶な少なくとも一種のブロックSを含むブロックコポリマーの中から選択される少なくとも一種のレオロジー制御剤
を含むフィラメントワインディング法による部品製造用の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2008−542493(P2008−542493A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514146(P2008−514146)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001233
【国際公開番号】WO2006/129014
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(505005522)アーケマ・フランス (335)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001233
【国際公開番号】WO2006/129014
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(505005522)アーケマ・フランス (335)
【Fターム(参考)】
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