説明

フライアイレンズ成形型、フライアイレンズ成形型加工装置、フライアイレンズ成形型加工方法

【課題】フライアイレンズの成形に用いられるフライアイレンズ成形型の寿命を向上させる。
【解決手段】フライアイレンズを成形するためのフライアイレンズ成形型の素材であるフライアイワーク8に、フライアイレンズの複数のレンズ要素の各々に対応したレンズ成形凹部1を刻設するとき、複数のレンズ成形凹部1の境界部に生じる鋭利なエッジ状の稜線部2に、互いに異なるかまたは等しい曲率半径R1、曲率半径R2、曲率半径R3の丸みを持たせるように形成する。こうして得られたフライアイレンズ成形型では、フライアイレンズ成形型のコーティングを剥がれ難くなり、寿命が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライアイレンズのプレス成形に適したフライアイレンズ成形型およびその加工技術に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、光学系において照明光を均一に照射するためにフライアイレンズ使用される場合がある。このフライアイレンズは、通常、複数の凸型のレンズ要素を二次元的に等ピッチで配列して構成され、個々のレンズ要素の境界部にはハニカム状の稜線が存在する。
【0003】
このような、フライアイレンズの研磨技術として、特許文献1には以下のような技術が開示されている。
すなわち、レンズ研磨などに多用される球心揺動式研磨装置を母体として利用し、アームに取り付けられた揺動腕であるカンザシの先端に回転自在に保持された研磨工具と、研磨対象であるフライアイレンズ成型用金型を研磨工具に対して相対的に運動させる移動機構とを備える研磨装置が開示されている。
【0004】
なお、この移動機構はフライアイレンズ成型用金型を搭載しながらX軸方向移動テーブルと、X軸方向移動テーブルを支持しながらY軸方向に移動するY軸方向移動テーブルとX軸方向移動テーブルとY軸方向移動テーブルとを保持しながらZ軸方向へ移動すると共にXY平面内で回転するXY回転テーブルと、各テーブルを駆動する駆動機構とを備える。
【0005】
一方、研磨工具は、研磨対象であるフライアイレンズ成型用金型の曲率に倣って精密に成型された作業面を有しており、この作業面がフライアイレンズ成型用金型に対して所定の研磨圧を加えるように、カンザシを介して、空気圧やおもりなどにより所定の加重が加えられる。
【0006】
こうした構成を備えた特許文献1の研磨装置によれば、研磨対象であるフライアイレンズ成型用金型の各凹面を順次研磨することができる。つまり、各テーブルを適当に駆動させることによってフライアイ成型用金型の凹面を研磨工具に対して位置決めし、その後、所定の回転数で回転テーブルを回転させることによってフライアイレンズ成型用金型に回転運動を与えると、研磨工具は、その作業面がフライアイレンズ成型用金型の各凹面をまんべんなく摺動するように、フライアイレンズ成型用金型の回転運動にひきつられて自由回転しながら、カンザシにより左右に揺動される。
【0007】
研磨工具であるポリッシャは、固体潤滑剤として黒鉛粉末を混入した硬質のエポキシ樹脂から形成されている。
この特許文献1によれば、研磨性を長時間に渡って良好に維持され、研磨対象であるフライアイレンズ成型用金型のインプレッションのエッジ部にだれ等の損傷を与える可能性も少なく、作業者の熟練を必要とすることなく製造コストを低減できる、としている。
【0008】
しかしながら、この特許文献1の場合には、複数のレンズ要素の境界部に存在する上述の稜線部に関する以下のような技術的課題は認識されていない。
すなわち、複数の凸形のレンズ要素が配列されたフライアイレンズを成形するフライアイレンズ金型では、凸型のレンズ要素に対応する成形面は凹形のレンズ成形凹部となり、このレンズ成形凹部の境界に存在する稜線部は、鋭角なエッジとなる。
【0009】
そして、このような鋭角の稜線部では、フライアイ素子をプレス成型する際に金型表面に施した高寿命化の為のコーティングが剥がれ易くなり、金型の寿命を短くする一因となっていた。
【特許文献1】特開平9−136253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、フライアイレンズの成形に用いられるフライアイレンズ成形型の寿命を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点は、複数のレンズ要素を配列してなるフライアイレンズを成形するフライアイレンズ成形型であって、
個々の前記レンズ要素に対応したレンズ成形凹部の間に存在する稜線部が連続な曲率半径もしくは不連続な曲率半径で形成されたフライアイレンズ成形型を提供する。
【0012】
本発明の第2の観点は、複数のレンズ要素を配列してなるフライアイレンズの理想形状と前記加工工具の形状から個々の前記レンズ要素に対応したレンズ成形凹部を加工するための第1加工工具軌跡情報、および前記レンズ成形凹部の間に生じる稜線部を連続な曲率半径もしくは不連続な曲率半径で形成するための第2加工工具軌跡情報の少なくとも一方を演算する演算手段と、
前記第1および/または第2加工工具軌跡情報に基づいて、前記ワークに対する前記加工工具の加工軌跡を数値制御する数値制御手段と、
を含むフライアイレンズ成形型加工装置を提供する。
【0013】
本発明の第3の観点は、複数のレンズ要素を配列してなるフライアイレンズの理想形状と前記加工工具の形状から個々の前記レンズ要素に対応したレンズ成形凹部を加工するための第1加工工具軌跡情報、および前記レンズ成形凹部の間に生じる稜線部を連続な曲率半径もしくは不連続な曲率半径で形成するための第2加工工具軌跡情報の少なくとも一方を演算する演算ステップと、
前記第1および/または第2加工工具軌跡情報に基づいて、ワークに対する前記加工工具の加工軌跡を数値制御する数値制御加工ステップと、
を含むフライアイレンズ成形型加工方法を提供する。
【0014】
上述の本発明によれば、フライアイレンズの複数のレンズ要素の各々に対応したレンズ成形凹部の間に発生する稜線部を連続な曲率半径もしくは不連続な曲率半径で形成するので、たとえば、フライアイレンズ成形形のレンズ成形形凹部や稜線の表面に塗布されるコーティングが剥がれ難くなり、フライアイレンズ成形型の寿命が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フライアイレンズの成形に用いられるフライアイレンズ成形型の寿命を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態であるフライアイレンズ成形型の構成の一例を示す平面図であり、図2は、図1における成形凹部境界領域Aを拡大して例示した平面図、図3は、成形凹部境界領域Aの異なる位置における断面形状を例示した略断面図である。
【0017】
本実施の形態のフライアイレンズ成形型8Aは、主面に複数のレンズ成形凹部1を二次元的に互いに等距離に配置した構成となっている。複数のレンズ成形凹部1の重なり合う境界部には、略ハニカム状(正六角形)の投影形状を有する稜線部2が形成されている。
【0018】
図2は、互いに隣接する3個のレンズ成形凹部1の境界における3本の稜線部2の交点(稜線交点2x)の近傍部分を拡大して示している。
個々のレンズ成形凹部1には、円形の光学有効径3が存在し、その内側が所定の精度の光学機能面の転写成形面として機能する。そして、この光学有効径3の外側に稜線部2が位置する。
【0019】
隣り合うレンズ成形凹部1が凹形であるため、その間の稜線部2が鋭利なエッジ状を呈することとなるが、本実施の形態1では、この稜線部2に所望の曲率半径で丸め加工が施されている。
【0020】
すなわち、本実施の形態1のフライアイレンズ成形型8Aの稜線部2は、光学有効径3の形状に接円となる形状で、図3に例示される断面図の様に、不連続な曲率半径(曲率半径R1、曲率半径R2、曲率半径R3)の稜線部で構成されている。
【0021】
この曲率半径R1、曲率半径R2、曲率半径R3は、図2の稜線横断位置2a、稜線横断位置2b、稜線横断位置2c、にそれぞれ対応している。
すなわち、このフライアイレンズ成形型8Aの場合には、稜線交点2xに近い稜線横断位置2aの位置の曲率半径R3から、稜線横断位置2bの曲率半径R2、稜線横断位置2cの曲率半径R1、のように稜線部2の曲率半径が段階的に変化している(R1<R2<R3)。
【0022】
このように、本実施の形態1のフライアイレンズ成形型8Aによれば、成形対象のフライアイレンズの個々のレンズ要素に対応したレンズ成形凹部1の間で生じる稜線部2が鋭角なエッジとはならないため、フライアイレンズをプレス成形する際において、フライアイレンズ成形型8Aにおける稜線部2のコーティングが剥がれ難くなり、フライアイレンズ成形型8Aを高寿命化することができる。
(実施の形態2)
図4は、本発明の一実施の形態であるフライアイレンズ成形型の構成の一例を示す平面図であり、図5は、図4における成形凹部境界領域Bを拡大して例示した平面図、図6は、成形凹部境界領域Bの異なる位置における断面形状を例示した略断面図である。
【0023】
上述の実施の形態1と同様の構成要素については同一符号を付して重複した説明は割愛する。
この実施の形態2のフライアイレンズ成形型8Bは、図5および図6に例示されるように、稜線部2の長手方向の全長において、同じ曲率半径の丸み加工が施されている。
【0024】
すなわち、稜線交点2xからの距離の異なる稜線部2の稜線横断位置2a、稜線横断位置2b、稜線横断位置2cの各々における曲率半径R3、曲率半径R2、曲率半径R1は、すべて等しい(R1=R2=R3)。
【0025】
したがって、稜線部2を構成する曲面は、稜線部2の両側に平行な稜線/成形凹部境界4の位置で個々のレンズ成形凹部1の曲面と滑らかに接続されている。
この実施の形態2のフライアイレンズ成形型8Bの場合には、上述の実施の形態1のフライアイレンズ成形型8Aと同様の効果が得られるとともに、さらに、稜線部2の丸み形状を、ほぼ全長で等しい曲率半径(R1=R2=R3)となるように単純化することにより、フライアイレンズ成形型8Bの設計及び加工、計測の一連の工程を単純化することが出来る、という利点がある。
(実施の形態3)
次に、上述のフライアイレンズ成形型8A(フライアイレンズ成形型8B)を製作するフライアイレンズ成形型加工方法およびフライアイレンズ成形型加工装置(以下、加工装置と略記する)の一例について説明する。
【0026】
図7は、本発明の一実施の形態である加工装置の概念図である。
図8Aは、本実施の形態の加工装置におけるフライアイワークの取り付けヤトイへの取り付け例を平面図、図8Bおよび図8Cは、その側面図である。
【0027】
図9Aは、フライアイワークの加工装置への取り付け例を示す平面図、図9Bは、図9Aにおける線C−Cの部分の側面図である。
図10は本実施の形態の加工装置の加工部内の一例を示す概念図である。
【0028】
図7に例示されるように、本実施の形態の加工装置5は、加工機構部6a、数値制御装置6(数値制御手段)、演算装置7(演算手段)を備えている。
加工装置5の加工機構部6aはXYZの移動軸を備え、軸移動は数値制御装置6で制御
される。
【0029】
加工機構部6aには、図示しない加工ステージと、スピンドル11、加工工具12を備えている。
図示しない加工ステージは、取り付け治具10a、取り付けヤトイ9を介してフライアイワーク8を支持して、X−Y軸平面内で移動させる。
【0030】
スピンドル11は、ZYZ軸方向および回転が可能であり、先端部に加工工具12を支持している。
図8Aないし図8Cに例示されるように、フライアイワーク8は、取り付けヤトイ9に固定される。さらに、図9Aおよび図9Bに例示されるように、この取り付けヤトイ9は、固定具10bおよびボルト10cを介して取り付け治具10aに固定されている。
【0031】
すなわち、フライアイワーク8は、取り付けヤトイ9にボルト9aにより取り付けられており、この取り付けヤトイ9を固定具10bとボルト10cにより取り付け治具10aに取り付けることにより、加工装置5のZ軸端面(図示しない加工ステージ)に固定されている。
【0032】
XY軸上にスピンドル11が固定され、スピンドル11に加工工具12が取り付けられ
ており、スピンドル11の回転により、加工工具12を回転させることが出来る。
【0033】
本実施の形態の加工装置5は直動軸スケールに0.3nm(ナノメートル)の分解能の物を使用した超精密加工装置であり、位置決め精度は0.1μm(マイクロメートル)以下の精度である。
【0034】
上述の加工装置5の構成は一例であって、加工工具12とフライアイワーク8が相対的に同時三軸以上の制御が出来る構成であれば良く、また、加工工具12も回転工具のみではなく、固定バイトでも良い。
【0035】
演算装置7は、入力された形状と加工工具形状から、形状を加工するための工具軌跡を算出すると共に、この工具軌跡を実現するためのNCプログラム20を作成し、数値制御装置6へ転送することが出来る。
【0036】
数値制御装置6は、加工装置5の加工機構部6aの各軸をNCプログラム20に従って制御することにより、フライアイワーク8を加工工具12により任意形状に加工することが出来る。
【0037】
次に、本実施の形態3の作用を図11および図12によって説明する。
図11は、本実施の形態3の加工装置5の加工対象であるフライアイワーク8において隣り合う3つのレンズ成形凹部1の境界の稜線部2の形状を拡大して示す斜視図である。
【0038】
図12は、上述の図11に例示した領域における工具経路を示す斜視図である。
演算装置7に、レンズ成形凹部1の形状、及び図11に示す稜線部2の形状と加工工具12の形状を入力し、図12に示す最短の加工時間をとる工具軌跡を算出する。
【0039】
演算装置7によって作成された加工経路に従ったNCプログラム20を数値制御装置6へ転送する。加工装置5の数値制御装置6は、NCプログラム20に従って、加工機構部6aを制御し、加工工具12とフライアイワーク8を相対的に移動させて、フライアイレンズ成形型8A(フライアイレンズ成形型8B)の加工を行う。
【0040】
すなわち、演算装置7にレンズ成形凹部1の形状及び稜線部2の形状と加工工具12の形状を入力し、連続加工軌跡21(第1および第2加工工具軌跡情報)(NCプログラム20)を算出する(ステップ100)(演算ステップ)。
【0041】
取り付けヤトイ9にフライアイワーク8を取り付け、加工工具12を上述のステップ100にて算出した連続加工軌跡21(NCプログラム20)に沿ってフライアイワーク8と加工工具12を相対移動させることによって稜線部2を含めたフライアイワーク8の複数のレンズ成形凹部1の全面を走査加工する(ステップ200)(数値制御加工ステップ)。
【0042】
図13を参照して、このステップ100の処理を、より詳細に説明する。
演算装置7は、フライアイレンズ成形型8Aを構成する複数のレンズ成形凹部1、および稜線部2の形状情報と、加工工具12の形状情報のユーザからの入力を受け付ける(ステップ101)。
【0043】
次に、加工工具12の位置情報をフライアイワーク8から離間した加工開始点(X0,Y0,Z0)に設定する(ステップ102)。なお、Y0は最初のX方向の走査開始位置であり、X方向に1回の走査が終わる毎に、後述のようにΔYだけ加算される。
【0044】
次に、レンズ成形凹部1(加工工具12)の形状情報に基づいて、X−Z軸制御によるレンズ成形凹部1の加工軌跡情報を図示しない記録媒体に出力する処理を当該レンズ成形凹部1の光学有効径3の内部で継続し(ステップ103)、加工工具12の位置が当該レンズ成形凹部1の光学有効径3の外に出たら(ステップ104)、さらに、加工方向(加工工具12の走査移動方向)に隣接するレンズ成形凹部1があるか否かを、フライアイレンズ成形型8Aの形状情報(レンズ成形凹部1のレイアウト情報)から判別する(ステップ105)。
【0045】
そして、隣接するレンズ成形凹部1が存在する場合には、現在のレンズ成形凹部1との間に稜線部2が存在するはずなので、現在のX方向の走査位置における当該稜線部2の形状に基づいて、X−Z軸制御による稜線部2の上述の曲率半径R1〜曲率半径R3によるR(丸め)加工のための加工工具12の工具軌跡情報を記録媒体に出力し(ステップ106)、この処理を、隣接するレンズ成形凹部1の光学有効径3内に入るまで行う(ステップ107)。
【0046】
一方、上述のステップ107で、隣接するレンズ成形凹部1の光学有効径3に加工工具12が移行したと判別された場合には、上述のステップ103に戻って、次のレンズ成形凹部1の加工のための工具軌跡情報を記録媒体に出力する。
【0047】
そして、上述のステップ105で隣接するレンズ成形凹部1が無いと判定された場合には、現在のX方向の走査線が、最後のY方向のステップ位置か否かを判定し(ステップ108)、最後でない場合には、ZおよびX軸の位置を、Z0、X0に初期化するとともに、Y軸方向の位置YをΔYだけ増加させ(ステップ110)、再び、上述のステップ103以降のレンズ成形凹部1の走査加工のための工具軌跡情報の生成に移行する。
【0048】
ステップ108でY方向の最後のステップ移動位置でのX方向の走査が完了したと判定された場合には、上述のステップ103およびステップ106で得られた加工工具12の工具軌跡情報に基づいてNCプログラム20を生成して(ステップ109)、NCプログラム20の作成を終了する。
【0049】
このNCプログラム20を、加工装置5の数値制御装置6に転送して加工工具12の制御に用いることにより、図12に例示されるように、フライアイレンズ成形型8Aに配置される複数のレンズ成形凹部1と、これらの境界部に位置する稜線部2の曲率半径R1〜曲率半径R3による丸め加工を連続加工軌跡21による一連の加工工具12の加工動作によって実行させることができる(上述のステップ200)。
【0050】
この実施の形態3によれば、フライアイレンズ成形型8A(フライアイレンズ成形型8B)において、成形対象のフライアイレンズを構成する複数のレンズ要素の各々に対応したレンズ成形凹部1の間で生じる稜線部2が、鋭角なエッジとはならずに、曲率半径R1〜曲率半径R3の滑らかな曲面を有する形状を呈するため、フライアイレンズをフライアイレンズ成形型8A(フライアイレンズ成形型8B)でプレス成形する際に、稜線部2のコーティングが剥がれ難くなり、フライアイレンズ成形型8A(フライアイレンズ成形型8B)を高寿命化することが出来る。
(実施の形態4)
上述の実施の形態3では、複数のレンズ成形凹部1およびその境界部に位置する稜線部2を連続した加工工具12の加工軌跡(連続加工軌跡21)によって加工する場合を例示したが、本実施の形態4では、レンズ成形凹部1の加工行うレンズ成形凹部加工軌跡21a(第1加工工具軌跡情報)と、稜線部2の加工を行う稜線部加工軌跡21b(第2加工工具軌跡情報)を別個に実行することで、フライアイレンズ成形型8Aを得る場合を説明する。
【0051】
この実施の形態4の場合、上述の実施の形態3と加工装置5の構成は同じであり、使用されるNCプログラムが異なる。
すなわち、最初に演算装置7にアレイ要素形状と加工工具12の形状を入力し、図14に示すレンズ成形凹部加工軌跡21aの加工用の工具軌跡(NCプログラム20−1)を算出する(ステップ100A)(演算ステップ)。
【0052】
このステップ100Aの場合、レンズ成形凹部加工軌跡21aに対応したNCプログラム20−1の算出では、上述の図13のフローチャートにおいて、ステップ106およびステップ107による稜線部2の部分の工具軌跡情報の出力を抑止(省略)することで、フライアイレンズ成形型8Aの複数のレンズ成形凹部1の部分のみを加工するためのレンズ成形凹部加工軌跡21a(NCプログラム20−1)を生成することができる。
【0053】
演算装置7によって作成されたレンズ成形凹部加工軌跡21aに従ったNCプログラム20−1を数値制御装置6へ転送する。加工装置5は、NCプログラム20−1に従って、加工工具12とフライアイワーク8を相対的に移動させて、フライアイレンズ成形型8Aの個々のレンズ成形凹部1の各要素の加工を行う(ステップ200A)(数値制御加工ステップ)。
【0054】
次に、演算装置7にレンズ成形凹部1の間の稜線部2の形状と加工工具12の形状を入力し、図15に示す稜線部加工軌跡21bの加工用の工具軌跡(NCプログラム20−2)を算出する(ステップ100B)(演算ステップ)。
【0055】
この、ステップ100Bにおける稜線部加工軌跡21bに対応したNCプログラム20−2の算出では、逆に、上述の図13のフローチャートのステップ103、ステップ104等のレンズ成形凹部1の加工関する処理を抑止(省略)することで、稜線部2の部分のみを加工するための稜線部加工軌跡21b(NCプログラム20−2)を生成することができる。
【0056】
この演算装置7によって作成された加工経路に従ったNCプログラム20−2を数値制御装置6へ転送する。加工装置5は、NCプログラム20−2に従って、稜線部加工軌跡21bのように、加工工具12とフライアイワーク8を相対的に移動させて、フライアイレンズ成形型8Aの複数のレンズ成形凹部1の間の稜線部2を加工する(ステップ200B)(数値制御加工ステップ)。
【0057】
この実施の形態4によれば、上述の実施の形態3の効果に加え、フライアイワーク8において個々のレンズ成形凹部1を纏めて先に加工し、その後、稜線部2を加工することにより、レンズ成形凹部1の加工における加工工具12に対するダメージが稜線部2の加工の分だけ軽減されるため、レンズ成形凹部1を、より高精度に加工することが出来る。
【0058】
以上の説明から明らかなように本発明の各実施の形態によれば、フライアイレンズの各レンズ要素に対応してフライアイレンズ成形型8A(フライアイレンズ成形型8B)に設けられる複数のレンズ成形凹部1の間に存在する稜線部2を連続な曲率半径もしくは不連続な曲率半径で形成することにより、フライアイレンズ成形型8A(フライアイレンズ成形型8B)のコーティングを剥がれ難くし、寿命を長くすることが出来る。
【0059】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施の形態であるフライアイレンズ成形型の構成の一例を示す平面図である。
【図2】図1における成形凹部境界領域Aを拡大して例示した平面図である。
【図3】図1の成形凹部境界領域Aの異なる位置における断面形状を例示した略断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態であるフライアイレンズ成形型の構成の一例を示す平面図である。
【図5】図4における成形凹部境界領域Bを拡大して例示した平面図である。
【図6】図4の成形凹部境界領域Bの異なる位置における断面形状を例示した略断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態である加工装置の概念図である。
【図8A】本発明の一実施の形態である加工装置におけるフライアイワークの取り付けヤトイへの取り付け例を平面図である。
【図8B】その側面図である。
【図8C】その側面図である。
【図9A】フライアイワークの加工装置への取り付け例を示す平面図である。
【図9B】図9Aにおける線C−Cの部分の側面図である。
【図10】本発明の一実施の形態である加工装置の加工部内の一例を示す概念図である。
【図11】本発明の実施の形態3の加工装置の加工対象であるフライアイワークにおいて隣り合う3つのレンズ成形凹部の境界領域の稜線部を拡大して示す斜視図である。
【図12】上述の図11に例示した領域における工具経路を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態3の加工装置における加工軌跡の算出方法の一例を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態4の加工装置におけるレンズ成形凹部の加工軌跡の一例を示す斜視図である。
【図15】本発明の実施の形態4の加工装置における稜線部の加工軌跡の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
1 レンズ成形凹部
2 稜線部
2a 稜線横断位置
2b 稜線横断位置
2c 稜線横断位置
2x 稜線交点
3 光学有効径
4 稜線/成形凹部境界
5 加工装置
6 数値制御装置
6a 加工機構部
7 演算装置
8 フライアイワーク
8A フライアイレンズ成形型
8B フライアイレンズ成形型
9 取り付けヤトイ
9a ボルト
10a 取り付け治具
10b 固定具
10c ボルト
11 スピンドル
12 加工工具
20 NCプログラム
20−1 NCプログラム
20−2 NCプログラム
21 連続加工軌跡
21a レンズ成形凹部加工軌跡
21b 稜線部加工軌跡
A 成形凹部境界領域
B 成形凹部境界領域
R1 曲率半径
R2 曲率半径
R3 曲率半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズ要素を配列してなるフライアイレンズを成形するフライアイレンズ成形型であって、
個々の前記レンズ要素に対応したレンズ成形凹部の間に存在する稜線部が連続な曲率半径もしくは不連続な曲率半径で形成されたことを特徴とするフライアイレンズ成形型。
【請求項2】
複数のレンズ要素を配列してなるフライアイレンズの理想形状と前記加工工具の形状から個々の前記レンズ要素に対応したレンズ成形凹部を加工するための第1加工工具軌跡情報、および前記レンズ成形凹部の間に生じる稜線部を連続な曲率半径もしくは不連続な曲率半径で形成するための第2加工工具軌跡情報の少なくとも一方を演算する演算手段と、
前記第1および/または第2加工工具軌跡情報に基づいて、前記ワークに対する前記加工工具の加工軌跡を数値制御する数値制御手段と、
を含むことを特徴とするフライアイレンズ成形型加工装置。
【請求項3】
請求項2記載のフライアイレンズ成形型加工装置において、
前記数値制御手段は、前記第1および第2工具加工軌跡を用いて、前記ワークにおける複数の前記レンズ成形凹部および当該レンズ成形凹部の間に存在する前記稜線部の全面を連続して前記加工工具によって走査加工することを特徴とするフライアイレンズ成形型加工装置。
【請求項4】
請求項2記載のフライアイレンズ成形型加工装置において、
前記数値制御手段は、前記第1工具軌跡を用いて前記ワークに対して前記加工工具を走査することにより、複数の前記レンズ成形凹部を加工した後、
前記第2工具軌跡を用いて前記ワークに対して前記加工工具を走査することにより、前記レンズ成形凹部の間に存在する前記稜線部を加工することを特徴とするフライアイレンズ成形型加工装置。
【請求項5】
複数のレンズ要素を配列してなるフライアイレンズの理想形状と前記加工工具の形状から個々の前記レンズ要素に対応したレンズ成形凹部を加工するための第1加工工具軌跡情報、および前記レンズ成形凹部の間に生じる稜線部を連続な曲率半径もしくは不連続な曲率半径で形成するための第2加工工具軌跡情報の少なくとも一方を演算する演算ステップと、
前記第1および/または第2加工工具軌跡情報に基づいて、ワークに対する前記加工工具の加工軌跡を数値制御する数値制御加工ステップと、
を含むことを特徴とするフライアイレンズ成形型加工方法。
【請求項6】
請求項5記載のフライアイレンズ成形型加工方法において、
前記数値制御加工ステップでは、前記第1および第2工具加工軌跡を用いて、前記ワークにおける複数の前記レンズ成形凹部および当該レンズ成形凹部の間に存在する前記稜線部の全面を連続して前記加工工具によって走査加工することを特徴とするフライアイレンズ成形型加工方法。
【請求項7】
請求項5記載のフライアイレンズ成形型加工方法において、
前記数値制御加工ステップでは、前記第1工具軌跡情報を用いて前記ワークに対して前記加工工具を走査することにより、複数の前記レンズ成形凹部を加工した後、
前記第2工具軌跡情報を用いて前記ワークに対して前記加工工具を走査することにより、前記レンズ成形凹部の間に存在する前記稜線部を加工することを特徴とするフライアイレンズ成形型加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−265130(P2008−265130A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110432(P2007−110432)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】