説明

フラット引戸

【課題】大重量の戸板でもバランス良く保持して円滑に移動させることのできる簡素な構造を備え、強度、施工性及び経済性にも優れたフラット引戸を提供する。
【解決手段】本発明のフラット引戸は、直線状に形成されて互いに平行に配置される二本のレールのうち、一方が固定レール3、他方が可動レール4となされ、固定レール3には第一戸板1、可動レール4には第二戸板2が、それぞれ各レールに沿って直線的にスライドしうるように吊持されるとともに、可動レール4が、レール移動手段を介して、可動レール4の軸と直交する略水平方向に移動可能に保持されることにより、可動レール4に吊持された第二戸板2が、閉止時には第一戸板1と面一に並び、開放時には第一戸板1と引き違い状態で重なるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納スペースの建具や空間の可動間仕切り等に利用可能な引き違い方式の引戸に関し、特に、隣接する2枚以上の戸板を閉じたときに戸板同士が面一に並ぶフラット引戸に関する。
【背景技術】
【0002】
レールに沿って走行する左右の戸板(障子)が、開放時には引き違い状態で重なり、閉止時には両戸板が面一の状態に並ぶように構成された、いわゆるフラット引戸が、特許文献1〜3等に開示されている。
【0003】
この種のフラット引戸の基本的な構造は、左右いずれか一方の戸板(第一戸板)を、一般的な引戸と同様に直線的なレール(第一レール)に沿って直線運動させ、他方の戸板(第二戸板)を、第一レールと平行に設置した直線的な第二レールに保持するとともに、第二レールを走行させる戸車等の走行ユニットに平行リンク機構を設け、この平行リンク機構を介して第二戸板を前後方向に平行移動させつつスライドさせるように構成されている。
【特許文献1】特開平8−121013号公報
【特許文献2】特開2003−56243号公報
【特許文献3】実開昭61−76075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術に係るフラット引戸は、レール及び走行ユニットに対して第二戸板の重心が前後に移動するため、下部レールを設けずに上部レールだけで第二戸板を吊持する構造では、第二戸板の吊持バランスの変化に伴う回転モーメントがレール及び走行ユニットに作用することになり、重量の大きい戸板を建て込むには構造的な無理が生じる。
【0005】
また、第二戸板を前後移動させる平行リンク機構も構造的に複雑になり、部品コストが嵩む。さらに、第二戸板が平行リンク機構を介して円滑に前後移動するためには、第二戸板をレールに吊り込む作業において高い精度が要求され、施工性に劣る。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、特に、重量の大きい戸板であっても、レールに対して力学的にバランスの良い状態で保持することができ、かつ、円滑に移動させることのできる簡素な構造を備え、さらに強度、施工性及び経済性にも優れるフラット引戸を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するため、本発明のフラット引戸は、直線状に形成されて互いに平行に配置される二本のレールのうち、一方が固定レール、他方が可動レールとなされ、
固定レールには第一戸板、可動レールには第二戸板が、それぞれ各レールに沿って直線的にスライドしうるように吊り戸車を介して吊持されるとともに、可動レールが、レール移動手段を介して、可動レールの軸と直交する略水平方向に移動可能に保持されることにより、可動レールに吊持された第二戸板が、閉止時には第一戸板と面一に並び、開放時には第一戸板と引き違い状態で重なるように構成される。
【0008】
すなわち、この発明は、従来のように固定されたレールに対して戸板を前後移動させるのではなく、一方の戸板(第二戸板)を吊持するレール(可動レール)そのものを前後移動させることによって第二戸板を前後移動させ、面一状態と引き違い状態とを切り換えるようにしたものである。この発明によると、可動レールに対する第二戸板の吊持状態が一定になり、可動レールや吊り戸車には、第二戸板の鉛直荷重以外の無理な荷重がほとんど作用しないので、戸板の吊持構造を簡素化することができる。その分、重量の大きい戸板も安定的に吊持し、円滑にスライドさせることが可能になる。
【0009】
固定レールと可動レールの位置関係については特に限定されず、上下や前後など様々な配置形態が可能であり、上下または前後どちらのレールを可動レールとするかについても任意である。各レールの支持構造や断面形状も特に限定されるものではなく、固定レールと可動レールとが同一の断面形状である必要もない。可動レールが固定レールに対して、少なくとも戸板の厚み以上の寸法範囲で接近・離隔し得るように保持される構造であれば、それぞれのレールに対する戸板の吊持位置を適切に設定することにより、可動レールが固定レールに接近した状態で、各レールに吊持された戸板を面一に並べることができる。
【0010】
ただし、戸板の具体的な吊持構造として、固定レールと可動レールとが、可動レールを上側にして上下に配置され、第一戸板が固定レールの直下に吊持される一方、第二戸板が、固定レールの前側または後側を迂回するように形成されたブラケットを介して、第一戸板と略同じ高さで可動レールの直下に吊持される構成とした場合には、閉止時において、固定レール、可動レール、第一戸板、第二戸板のすべてが同一鉛直面内に揃うので、戸板を立て込んでスライドさせる装置全体の奥行き寸法を最小限に納めることができる。
【0011】
また、レールの具体的な構造として、固定レール及び可動レールの断面形状が下側に開口するリップ付き溝形断面形状であり、固定レールと可動レールとの間に適宜の隙間が設けられて、第二戸板を吊持する部材の一部が上記隙間内を移動する構成とした場合には、重量の大きい戸板を吊持するのに有利となる。下側に開口するリップ付き溝形断面形状のレールは、例えば二列四個の走行輪を有する吊り戸車を、レールの両縁部に形成されたリップ上で走行させることができるので、戸板を安定的に吊持し、かつ円滑に走行させることができるからである。
【0012】
本発明におけるレール移動手段としては、可動レールの少なくとも両端部近傍を含む複数箇所に結合されたランナ部材と、該ランナ部材を可動レールの軸と直交する略水平方向に移動可能に保持するガイド部材とを備えるものとすることにより、簡素な構造でレール移動手段を構成することができる。
【0013】
ランナ部材及びガイド部材については様々な形態が可能であり、例えば、壁面や天井に固定したレール状のガイド部材に沿って、可動レールに取り付けた戸車状のランナ部材を走行させるようにしたり、あるいは、壁面や天井に取り付けたローラ状のガイド部材に沿って、可動レールに取り付けたレール状のランナ部材をスライドさせるなどの構成が可能である。重量の大きい戸板を吊持する場合のレール移動手段としては、ガイド部材の断面形状が下側に開口するリップ付き溝形断面形状であり、このガイド部材に吊り戸車型のランナ部材が走行可能に保持される構成を採用すると、可動レールの前後移動も円滑になって好ましい。
【0014】
また、上記レール移動手段には、可動レールに吊持された第二戸板が固定レールに吊持された第一戸板と面一に並ぶ方向へ可動レールを付勢的に移動させる付勢手段が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0015】
上述のように、本発明のフラット引戸は、第二戸板を吊持する可動レールが、レール移動手段を介して、可動レールの軸と直交する略水平方向、つまり開口面の前後方向に移動可能に保持され、閉止時には第二戸板が第一戸板と面一に並び、開放時には第二戸板と第一戸板とが引き違い状態で重なるように、可動レールが移動するように構成されているので、可動レールに対する第二戸板の吊持状態が一定になり、可動レールや吊り戸車には、第二戸板の鉛直荷重以外の無理な荷重がほとんど作用しない。したがって、戸板の吊持構造を簡素化することができ、その分、重量の大きい戸板も安定的に吊持し、円滑にスライドさせることができる。さらに、戸板の吊持構造が簡素化することによって、レールに対する戸板の立て込み作業も容易になり、戸板を吊持及びスライドさせる部材・部品の製作コストも低減させることができる。
【0016】
そして、戸板の吊持構造が簡素化すれば強度確保も容易になるので、従来は構造的な限界から、収納スペースの建具程度の重量までしか利用し難かったフラット引戸を、例えば宴会場のような大空間の可動間仕切り等として利用することも現実的に可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0018】
図1〜図2は、本発明の実施形態に係るフラット引戸の構造を示す図であって、図1はフラット引戸を正面から見た図、図2はフラット引戸を上から見て戸板の動きをを示す説明図である。
【0019】
このフラット引戸は、正面から見て左右二枚の戸板を有している。図1及び図2において左側に位置するのが第一戸板1であり、右側に位置するのが第二戸板2である。いずれの戸板も、上方に設置されたレールに吊持されて、左右方向にスライドする。
【0020】
レールは、第一戸板1を吊持する固定レール3と、第二戸板2を吊持する可動レール4とからなり、可動レール4を上側に、固定レール3を下側にし、両レールの間に適宜の隙間を設けて上下に配置されている。固定レール3、可動レール4とも、それぞれ一様の断面を有し、直線状に形成されている。第一戸板1は、固定レール3に沿って走行する二個以上の吊り戸車5を介して固定レール3の直下位置に吊持され、第二戸板2は、可動レール4に沿って走行する二個以上の吊り戸車6を介して可動レール4の直下位置に吊持されている。
【0021】
本発明のフラット引戸は、第二戸板2を吊持する可動レール4が、図1における前後方向に平行移動して、その直下に吊持された第二戸板2を前進・後退させる点に特徴を有している。図2(a)は、フラット引戸を閉止した状態であり、固定レール3と可動レール4とが上下に重なり合って、各レールに吊持された第一戸板1と第二戸板2とが、固定レールの中心ラインRの直下で面一に並ぶ。同図(b)は、フラット引戸を開放しはじめる状態であり、可動レール4全体が、その両端部に設けられたレール移動手段を介して、前方にせり出す。これにより、可動レール4に吊持された第二戸板2もそのまま前方にせり出し、同図(c)に示すように、第一戸板1及び第二戸板2が左右方向に引き違い可能となる。
【0022】
第二戸板2を前方にせり出させるには、第二戸板2の前面に設けられた把手2a(図1参照)を持って、第二戸板2を可動レール4と一緒に手前に引き出す。あるいは、第二戸板2を左方向に押すか、第一戸板1を右方向に押し、斜めに重なり合った第一戸板1と第二戸板2との召し合わせ面に作用する反発力を利用して、第二戸板2を前方に押し出す。
【0023】
図3〜図6は、上記のようなレール及び戸板の移動を実現するレール付近の構造を示した図であり、図3は可動レール4が固定レール3の直上にある状態の縦断面図、図4は可動レール4が前方にせり出した状態の縦断面図、図5及び図6は可動レール4の両端部に設けられたレール移動手段の構造を示す縦断面図である。
【0024】
固定レール3及び可動レール4は、いずれも、下側に開口するリップ付き溝形断面形状を有している。このレールは、戸板が軽量であればアルミニウム合金の押し出し成形や軽量形鋼、戸板の重量が大きければ形鋼材等の適当な材料によって形成される。
【0025】
下側に位置する固定レール3は、その両端部が開口部枠7(図2、図5参照)等に固着されている。間口が大きい場合には、天井面8から垂下する固定部材9や垂れ壁、梁形等に固定レール3の中間部が固定されていてもよい。
【0026】
固定レール3には、第一戸板1をスライドさせるための吊り戸車5が二個以上組み込まれる。吊り戸車5は、例えば、二列四個の走行輪5aがレールのリップ部3a上を転動するようなものが好ましい。このような吊り戸車5とリップ付き溝形断面形状の固定レール3との組み合わせによれば、第一戸板1の重量が大きい場合でも、第一戸板1を安定的に吊持し、かつ円滑に走行させることができる。吊り戸車5には、レールのリップ部3a間に遊挿されて水平方向に回転する案内輪(図示せず)等が設けられていてもよい。ただし、戸板が軽量である場合には、これに限らず、公知の形態に係る他のレールや吊り戸車を採用することも可能である。
【0027】
第一戸板1は、この吊り戸車5から垂下する吊りボルト5bを、第一戸板1の上縁部に固定した補強プレート(図示せず)に結合するなどの構造によって吊持される。吊りボルト5bや補強プレート等の詳細な構造は、本発明においては特に限定されない。
【0028】
上側に位置する可動レール4は、その材長が固定レール3の材長よりも若干短く形成され、両端部がレール移動手段を介して保持される。レール移動手段は、可動レールと直交する略水平方向(図1における前後方向)に配されたガイド部材11と、該ガイド部材11に沿って移動するランナ部材12とによって構成される。例示のガイド部材11は、固定レール3や可動レール4と同様の、下側に開口するリップ付き溝形断面形状を有した短いレール状部材からなり、その前端面及び後端面が蓋板11aによって閉塞されている。ランナ部材12は、固定レール3に組み込まれる吊り戸車5と同様の戸車状部材からなり、二列四個の走行輪12aによってガイド部材11のリップ部11b上を転動する。ランナ部材12は下方に垂下する吊りボルト12bを有しており、この吊りボルト12bに取り付けられた平坦な連結プレート13が可動レール4の端部底面に固着されることにより、可動レール4がランナ部材12と連結され、前後方向に移動可能に保持される。
【0029】
ただし、例示したレール移動手段の構造は一例であって、ガイド部材11やランナ部材12には、公知の形態に係る他のレール状部材や戸車状の部材等を採用することもでき、ランナ部材12と可動レール4との連結構造も変形可能である。また、開口面の間口が大きい場合、レール移動手段は、可動レール4の両端部だけでなく、中間部にも設けることもできる。
【0030】
可動レール4には、第二戸板2をスライドさせるための吊り戸車6が二個以上組み込まれる。例示の吊り戸車6は、上記固定レール3に組み込まれた吊り戸車5と同じである。例示の形態では、二個以上の吊り戸車6が安定板14によって連結されている。安定板14は、十分な曲げ剛性を有する帯板状の部材で、固定レール3と可動レール4との間に形成された隙間よりも厚みが小さくなるように形成されており、可動レール4上を走行する吊り戸車6の間隔を一定に保持して走行を円滑にする役割をなす。
【0031】
第二戸板2は、固定レール3との干渉を避けるため、固定レール3の前側を迂回するように形成されたブラケット15を介して、吊り戸車6に吊持される。
【0032】
ブラケット15は、例えば前板部15aと底板部15bとからなる側面視略L字形の部材で、前板部15aの上部が安定板14に固着され、底板部15bが第二戸板2の上縁部に固定した補強プレート16に結合されている。ブラケット15は、吊り戸車6の位置に対応して二ヶ所に取り付けられる。このようなブラケット15を介して第二戸板2を吊持することにより、第一戸板1と第二戸板2の高さを揃えることができるとともに、可動レール4が固定レール3の直上に移動したとき、第二戸板2が固定レール3に干渉するのを避けることができる。このようなブラケット15の構造については、固定レール3との干渉を避け得るものである限り、多少の変形は可能である。
【0033】
こうして、可動レール4及び第二戸板2を、固定レール3と干渉することなく前後移動可能とし、少なくとも第二戸板2の厚みに適宜のクリアランスを加えた寸法だけ可動レール4の移動ストロークを確保すれば、図2に示した戸板の開閉移動が実現する。
【0034】
レール移動手段には、可動レール4に吊持された第二戸板2が固定レール3に吊持された第一戸板1と面一に並ぶ方向へ、可動レール4を付勢的に移動させる付勢手段が設けられるのが好ましい。かかる付勢手段としては、例えば図6に示すように、ランナ部材12にコイルバネ17を取り付けて、ランナ部材12を後ろ向きに引っ張る構造が考えられる。反対に、ランナ部材12の前側から、コイルバネ等によってランナ部材12を後方へ押し戻すようにしてもよい。コイルバネに替えて、板バネや巻きバネによってランナ部材12を付勢することもでき、また、磁石を用いてランナ部材12を後方へ引き付けることも可能である。あるいは、ガイド部材11を、後側が低くなるように僅かに傾斜させて取り付け、その傾斜に沿ってランナ部材12が自然に後退するようにしてもよい。これらの付勢手段を設けることにより、戸板を閉止した状態で、第二戸板2が第一戸板1よりも前方に浮き上がるのを防ぐことができる。
【0035】
なお、上記実施形態に示したフラット引戸は、説明の便宜上、開放時に第二戸板2がせり出す方向を前方と規定している。可動レール4が固定レール3の上側に設置されて前方にせり出す場合、第二戸板2を吊持するブラケット15は、可動レール4のせり出し方向と同じ側、つまり固定レール3の前側を迂回する形状に形成される。このような関係が保持される限り、本発明は、各部の前後左右を任意に読み替えて適用することが可能である。つまり、第二戸板2を後側に引き込むように構成することも可能であり、その場合、第二戸板2を吊持するブラケット15は固定レール3の後側を迂回するように形成される。
【0036】
また、本発明は、固定レールと可動レールの上下関係を反対にして実施することもできる。すなわち、可動レールを固定レールよりも下方に設置して前後移動させる構成である。この場合、第二戸板は可動レールの直下に吊持し、第一戸板は固定レールにブラケットを介して吊持することにより、下側に位置する可動レールと上側から吊持される第一戸板との干渉を避ける。
【0037】
上記したようなフラット引戸は、複数本のレールを上下に配置し、その直下に戸板を吊持しうる構成となっているので、構造的には奥行き方向の寸法が小さくなる反面、上下方向の寸法が大きくなる。したがって、前面側から見た場合、レール周りの部材が露出し、全体的な意匠性が損なわれるおそれがある。このような問題を解決する手段としては、例えばレール移動手段を構成するガイド部材を天井面や壁面に埋め込んで隠したり、レールの前方にカーテンボックスのような形態の化粧部材を設置してレールを隠す、といった手段を採用することができる。
【0038】
本発明は、固定レールと可動レールとを、開口面に向かって前後にずらせて配置しても実施可能である。固定レールと可動レールとが、前後方向及び上下方向の両方にずれていてもよい。このような場合も、いずれか一方を可動レールとし、可動レールが固定レールに対して前後方向に、少なくとも戸板の厚みに適宜のクリアランスを加えた寸法だけ接近・離隔し得るように保持する。第一戸板及び第二戸板は、可動レールが固定レールに接近した状態で面一に並ぶように、それぞれのレールに吊持されるが、その吊持構造は特に限定されない。
【0039】
また、本発明は、戸板が三枚以上の場合であっても同様に実施可能である。戸板の枚数に応じてレールの本数を増やし、それら複数本のレールを上下または前後にずらせて配置して、いずれか一本のレールを固定レールとし、それ以外のレールを可動レールとして前後移動させれば、三枚以上の戸板でも、互いに干渉することなくスライドさせることができ、かつ閉止時にはすべての戸板を面一に並べることが可能になる。また、四枚の戸板を左右に二枚ずつ引き分ける方式の引戸において、左右で対をなす戸板を上下二段のレールに吊持することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のフラット引戸は、建物内の開口部や収納スペース用の建具として、あるいは大空間の可動間仕切り等として、幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に係るフラット引戸の正面図である。
【図2】上記フラット引戸を上から見て戸板の動きを示す説明図である。
【図3】上記フラット引戸の吊持構造を示すレール付近の縦断面図であって、可動レールが固定レールの直上にある状態を示す図である。
【図4】上記フラット引戸の吊持構造を示すレール付近の縦断面図であって、可動レールが前方にせり出した状態を示す図である。
【図5】上記フラット引戸におけるレール移動手段の構造を示す縦断面図であって、ガイド部材をレールと平行に切った断面を示す図である。
【図6】同じく上記フラット引戸におけるレール移動手段の構造を示す縦断面図であって、ガイド部材をレールと垂直に切った断面を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 第一戸板
2 第二戸板
3 固定レール
4 可動レール
5 固定レールの吊り戸車
6 可動レールの吊り戸車
11 ガイド部材
12 ランナ部材
15 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に形成されて互いに平行に配置される二本のレールのうち、一方が固定レール、他方が可動レールとなされ、固定レールには第一戸板、可動レールには第二戸板が、それぞれ各レールに沿って直線的にスライドしうるように吊り戸車を介して吊持されるとともに、
可動レールが、レール移動手段を介して、可動レールの軸と直交する略水平方向に移動可能に保持されることにより、可動レールに吊持された第二戸板が、閉止時には第一戸板と面一に並び、開放時には第一戸板と引き違い状態で重なるように構成されたフラット引戸。
【請求項2】
固定レールと可動レールとが、可動レールを上側にして上下に配置され、
第一戸板が固定レールの直下に吊持される一方、第二戸板が、固定レールの前側または後側を迂回するように形成されたブラケットを介して、第一戸板と略同じ高さで可動レールの直下に吊持されたことを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【請求項3】
固定レール及び可動レールの断面形状が下側に開口するリップ付き溝形断面形状であり、固定レールと可動レールとの間に適宜の隙間が設けられて、第二戸板を吊持する部材の一部が上記隙間内を移動することを特徴とする請求項2記載のフラット引戸。
【請求項4】
レール移動手段は、可動レールの少なくとも両端部近傍を含む複数箇所に結合されたランナ部材と、該ランナ部材を可動レールの軸と直交する略水平方向に移動可能に保持するガイド部材とを備えることを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【請求項5】
ガイド部材の断面形状が下側に開口するリップ付き溝形断面形状であり、このガイド部材に吊り戸車型のランナ部材が走行可能に保持されたことを特徴とする請求項4記載のフラット引戸。
【請求項6】
レール移動手段には、可動レールに吊持された第二戸板が固定レールに吊持された第一戸板と面一に並ぶ方向へ可動レールを付勢的に移動させる付勢手段が設けられたことを特徴とする請求項1に記載のフラット引戸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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