説明

フレキシブルプリント配線板用接着剤組成物およびそれを用いた接着フィルム

【課題】 短時間の熱硬化で、優れたはんだ耐熱性、接着力を発現し、かつ、Bステージ(硬化前の状態)での打ち抜き性良好なフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物およびそれを用いた接着フィルムを提供する。
【解決手段】 エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、(A)または(B)と反応する官能基を有するエラストマー(C)、マイクロカプセル型硬化剤(D)、無機充填剤(E)、及びシリコーンオリゴマー(F)を含み、かつ、マイクロカプセル型硬化剤(D)の配合量がエポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)の総計100質量部に対し、(D)の配合が5〜100質量部であるフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短時間の熱硬化で、優れたはんだ耐熱性、接着力を発現し、かつ、Bステージ(硬化前の状態)での打ち抜き性良好なフレキシブルプリント配線板(以下FPC)用接着剤組成物およびそれを用いた接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子材料業界は、目覚しい発展を遂げ、電子機器のライフサイクルが年々と短くなってきている。また、携帯機器を始めとして電気機器のグローバル化が進んだことにより、より一層のリードタイム短縮が求められている。
【0003】
しかしながら、フレキシブルプリント配線板業界で使用する従来の接着剤及び、接着フィルムは、その硬化方法がプレスまたは、オーブンによる熱硬化が主体であり、硬化時間も30分〜2時間程度の長時間が必要であった。
【0004】
また、接着剤として一般的に用いられているエポキシ樹脂系接着剤組成物は、酸無水物、芳香族アミン等を硬化剤として用いることで、良好な接着性やはんだ耐熱性が得られるものの、十分な常温保存安定性が得られないという問題点を有しており、ルイス酸、アミン錯体なども提案されているが短時間硬化には適していない(引用文献1参照)。
【0005】
熱硬化性接着剤以外に、粘着性を有した感圧タイプの接着フィルムもあるが、はんだ耐熱性が不十分であり、今後、環境問題の点から、主流となる鉛フリーはんだに対応できず、また、粘着性を有し、柔らかいために、Bステージ段階での打ち抜き性が劣るといった欠点がある。
【0006】
さらに、紫外線硬化タイプの接着フィルムも提案されているが、莫大な設備投資が必要であり、従来の設備では対応できないといった問題がある。
【0007】
フレキシブルプリント配線板は、種々の形状に打ち抜いて使用されることから、打ち抜き性が必要で、打ち抜き性を向上させるための手法として、無機充填剤を併用する方法がある。しかし、通常、無機充填剤を樹脂ワニスに配合すると、分散性や、無機充填剤が沈降する問題がある。また、沈降が著しい場合には、無機充填剤が容器の底に溜まり、凝集等により固まってしまい、撹拌だけでは充分な分散は困難となる。
【0008】
充填剤の分散性を向上させる手法としては、カップリング剤等の表面処理剤により予め表面を処理した充填剤を用いる方法がある(引用文献2、3、4参照)。しかしながら、市販されている処理充填剤の種類が非常に限られているため、各種樹脂配合系に適した処理充填剤を選択するのは困難であった。一方、更なる機能性向上を目的として、樹脂材料への充填剤の配合量は増加する傾向にある。充填剤の配合量の増加に伴い、上記の沈降はますます顕著となり、これまで以上に優れた分散性やチキソトロピー性が必要となる。これら特性を満足させることは、従来行われているカップリング剤による処理方法では困難となってきている。
【0009】
【特許文献1】特開2008−24772号公報
【特許文献2】特開昭63−230729号公報
【特許文献3】特公昭62−40368号公報
【特許文献4】特開昭61−272243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、短時間の熱硬化で、優れたはんだ耐熱性、接着力を発現し、かつ、Bステージ(硬化前の状態)での打ち抜き性良好なフレキシブルプリント配線板(以下FPC)用接着剤組成物およびそれを用いた接着フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これら問題を解決するため、本発明者は鋭意検討し、エポキシ樹脂とフェノール樹脂、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂と反応しうる官能基を有するエラストマー、マイクロカプセル型硬化剤、無機充填剤、シリコーンオリゴマーを必須成分として用いることで、短時間の熱硬化で、優れたはんだ耐熱性、接着力を発現し、かつ、Bステージ(硬化前の状態)での打ち抜き性が良好となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は、[1]エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、(A)または(B)と反応する官能基を有するエラストマー(C)、マイクロカプセル型硬化剤(D)、無機充填剤(E)、及びシリコーンオリゴマー(F)を含み、かつ、マイクロカプセル型硬化剤(D)の配合量がエポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)の総計100質量部に対し、(D)の配合が5〜100質量部であるフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物に関する。
また、本発明は、[2] 前記シリコーンオリゴマー(F)は、重合度が2〜70であり、水酸基と反応する官能基を1種以上有し、RSiO2/2、RSiO3/2及びSiO4/2よりなる群から選択される少なくとも1種のシロキサン単位を有し、前記シロキサン単位において、前記Rは有機基であり、前記Rが複数含まれる場合には、前記Rは同一であってもよいし、異なっていてもよい上記[1]に記載のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物に関する。
また、本発明は、[3] 上記[1]または上記[2]に記載のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物を用いてフィルム化した接着フィルムに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)(A)または(B)と反応する官能基を有するエラストマー(C)、マイクロカプセル型硬化剤(D)、無機充填剤(E)、及びシリコーンオリゴマー(F)を必須成分として含有したフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物とすることにより、短時間の熱硬化で、優れたはんだ耐熱性、接着力を発現し、かつ、Bステージ(硬化前の状態)での打ち抜き性が良好であるフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物およびそれを用いた接着フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0015】
本発明で使用される接着剤の主成分は、エポキシ樹脂(A)とその硬化剤であるフェノール樹脂(B)であり、特性を妨げない限り他の樹脂を配合しても良い。これらの樹脂として、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂なども用いることができる。
エポキシ樹脂(A)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物などが例示される。エポキシ樹脂は、1種類のものを単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
フェノール樹脂(B)は、フェノール類とアルデヒドを酸またはアルカリを触媒として加え反応させたもので、フェノール類としては、フェノール、メタクレゾール、パラクレゾール、オルソクレゾール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール等が使用され、アルデヒド類として、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられ、特に制限されるものではない。一般にはホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドが使用される。この他に、植物油変性フェノール樹脂を用いることもできる。植物油変性フェノール樹脂は、フェノール類と植物油とを酸触媒の存在下に反応させ、ついで、アルデヒド類をアルカリ触媒の存在下に反応させることにより得られる。酸触媒としてはパラトルエンスルホン酸などが挙げられる。アルカリ触媒としては,アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのアミン系触媒が挙げられる。
エポキシ樹脂(A)とフェノール樹脂(B)は、エポキシ樹脂のエポキシ当量に対し、
フェノール樹脂の水酸基当量が、1:0.8〜1.10の範囲で配合することが好ましい。
【0016】
本発明に使用される(A)または(B)と反応する官能基を有するエラストマー(C)としては、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)と反応する官能基を有していればよく、分子量、組成等に特に制限なく使用することができ、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂と反応する官能基としては、カルボキシル基、グリシジル基、水酸基等があげられるが、中でもこれらの樹脂がカルボキシル基を含有していることが好ましい。カルボキシル基を含有していると、得られる組成物を接着フィルムに適用した場合には、熱硬化性成分との反応性が高くなり耐熱性が高くなる傾向がある。
官能基を有することのできるエラストマーとしては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、アクリル酸アルキルエステル(メタアクリル酸エステルも含む)を主成分としビニル単量体と必要に応じてアクリロニトリル、スチレン等を含む共重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、ブチルゴム、クロロプレンゴム、二トリルゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-メタクリル酸共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体などがあげられ、具体的には、カルボキシル基含有アクリルゴム、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2−ポリブタジエン、水酸基末端1,2−ポリブタジエン、水酸基末端スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基またはモルホリン基をポリマ末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール、ポリ−ε−カプロラクトン、などがあげられる。
【0017】
マイクロカプセル型硬化剤(D)は、圧力又は温度をかけて容易にマイクロカプセルが壊れる程度に、被覆剤で薄層に被覆したものであり、例えばノバキュアHX−3612、−3722、−3741、−3748(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名)等を挙げることができる。
【0018】
マイクロカプセル型硬化剤(D)は、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)又は必要により配合される樹脂の総計100質量部に対し、5〜100質量部である。5質量部未満では所望の耐熱性が得られず、100質量部を超えて多いと未反応のマイクロカプセル型硬化剤(D)が残り、耐熱性が低下する傾向がある。
【0019】
マイクロカプセル型硬化剤(D)の平均粒径は5μm以下、好ましくは1〜3μmに微粒化されていることが望ましい。また、マイクロカプセル型硬化剤の平均粒径が5μmを超えると、接着剤組成物を構成する樹脂組成物と接触する面積が減少するために、接着に高温、長時間を要し、また、平均粒径があまりに小さくなり過ぎるとライフが短くなる傾向がある。
【0020】
本発明で使用される無機充填剤(E)として、特に制限はなく、本質的に電気絶縁性のものであれば使用することができ、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、酸化アルミニウム、酸化カルシウム等の金属酸化物、その他、シリカ、マイカ、タルク、クレー等が挙げられる。本発明においては、無機充填剤として、特に水酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素を使用することが好ましい。水酸化アルミニウムや酸化ケイ素は、イオン性不純物が少なく、低コストであることから、FPCを含め、電子材料用途として汎用されていることから好適である。これらは、単独あるいは必要に応じて2種以上併用して用いることができる。無機充填剤の形状、粒径については特に制限はなく、通常、粒径0.01〜50μm、好ましくは0.1〜15μmのものが好適に用いられる。これらの無機充填剤の配合量は、(A)+(B)+(C)の樹脂固形分の合計100質量部に対して5〜100質量部の範囲が好ましい。5質量部未満では、Bステージで切れが悪くなり、打ち抜き刃への付着等が生じ、所望の打ち抜き性が得られない傾向があり、また、100質量部を超えると、常態はく離接着強さが低下する傾向がある。
【0021】
本発明のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物は、マイクロカプセル型硬化剤(D)と併用し、反応促進剤または硬化触媒として、従来公知の種々のものを添加してもよい。例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、芳香族ポリアミン、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯体等の三フッ化ホウ素のアミン錯体、1-アルキル-2-フェニルイミダゾール、2-アルキル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-アルキルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、無水ピロメリット酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸等の有機酸、ジシアンジアミド、トリフェニルフォスフィン、ジアザビシクロウンデセン、ヒドラジン、有機リン系化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等の公知のものが使用できる。なお、これら硬化触媒は単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0022】
本発明で使用されるシリコーンオリゴマー(F)は、末端に水酸基と反応する官能基を一つ以上有していれば、その分子量や構造等に特に制限はない。
【0023】
本発明に用いられるシリコーンオリゴマー(F)は、予め3次元架橋していることが好ましく、従って、2官能性シロキサン単位(RSiO2/2)、3官能性シロキサン単位(RSiO3/2)および4官能性シロキサン単位(RSiO4/2)(式中、Rは有機基、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1又は2のアルキル基、フェニル基等の炭素数6〜12のアリール基、ビニル基等であり、シリコーンオリゴマー中のR基は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。)から選らばれる少なくとも一種類のシロキサン単位を含有し、シリコーンオリゴマーの重合度は、2〜70(GPCによる重量平均分子量からの換算)のものであると好ましい。例えば、2官能性シロキサン単位からなるもの、3官能性シロキサン単位からなるもの、4官能性シロキサン単位からなるもの、2官能性シロキサン単位と3官能性シロキサン単位からなるもの、3官能性シロキサン単位と4官能性シロキサン単位からなるもの、2官能性シロキサン単位と4官能性シロキサン単位からなるもの、及び2官能性シロキサン単位と3官能性シロキサン単位と4官能性シロキサン単位からなるものがあげられる。また、シリコーンオリゴマーの重合度は、2〜70のものであるが、好ましくは、重合度6〜70であり、より好ましくは10〜50である。重合度が2未満では、充分な3次元架橋構造が得られず、重合度が70を超えるシリコーンオリゴマーを用いると、表面処理の際に処理むらが起こり、耐熱性が低下することがある。
【0024】
ここで、2官能性シロキサン単位(RSiO2/2)、3官能性シロキサン単位(RSiO3/2)および4官能性シロキサン単位(SiO4/2)は、それぞれ下記の構造を有する。
R R O−
| | |
−O−Si−O− −O−Si−O− −O−Si−O−
| | |
R O− O−

SiO2/2 , RSiO3/2 , SiO4/2
【0025】
本発明のシリコーンオリゴマー(F)の配合量は、無機充填剤(E)に対して0.01〜50質量%が好ましい。0.01質量%未満では、界面接着性向上の効果が不充分となることがあり、50質量%を超えると、耐熱性等が低下する傾向がある。
【0026】
本発明のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物およびそれを用いた接着フィルムは、有機溶剤に溶解または分散して使用できる。有機溶剤としては特に制限はなく、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤を用いてもよい。
【0027】
本発明の接着フィルムは、フレキシブルプリント配線板用接着剤組成物の接着剤溶液を離型紙上に直接コーティングし、有機溶剤を乾燥することで得られる。コーティング方法としては、特に制限されないが、コンマコーター、リバースロールコーター等が挙げられる。
【0028】
上記の用途に用いられる離型紙としては、特に制限されるものではないが、例えば、上質紙、クラフト紙、グラシン紙などの紙の両面に、クレー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの目止剤の塗布層を設けたもの、さらにその各塗布層の上にシリコーン系、フッ素系、アルキド系の離型剤が塗布されたもの、および、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等の各種オレフィンフィルム単独、およびポリエチレンテレフタレート等のフィルム上に上記離型剤を塗布したものが挙げられるが、電子材料用途として汎用的に使用されており、また、価格等の面から、上質紙の片面もしくは両面にポリエチレンン目止処理し、その上にシリコーン系離型剤を用いたものや、ポリエチレンテレフタレート上にシリコーン系離型剤を用いたものが好ましい。
【実施例】
【0029】
次に本発明を実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
【0030】
(合成例1)
(1)シリコーンオリゴマー溶液の製造
撹拌装置、コンデンサー及び温度計を備えたガラスフラスコに、テトラメトキシシラン40g及びメタノール93gを配合した溶液を入れ、次いで、酢酸0.47g及び蒸留水18.9gを添加し、50℃で8時間撹拌し、シロキサン単位の重合度が20(GPCによる重量平均分子量から換算、以下同じ)のシリコーンオリゴマーを合成した。得られたシリコーンオリゴマーは、水酸基と反応する末端官能基としてメトキシ基及び/又はシラノール基を有するものである。
得られたシリコーンオリゴマー溶液にメタノールを加えて、固形分1重量%のシリコーンオリゴマー処理液を作製した。
【0031】
(2)フレキシブルプリント配線板用接着剤組成物の接着剤溶液の調整
無機充填剤(E)としてアエロジル200(酸化珪素;日本アエロジル株式会社製商品名)20重量部をメチルエチルケトンに分散させた後、シリコーンオリゴマーとして合成例1の(1)で作製したシリコーンオリゴマー処理液を0.2質量部となるよう加え、30分間室温(25℃)にて撹拌した溶液に、カルボキシル基含有エラストマー(C)としてニポール1072J(カルボキシル基含有NBR;日本ゼオン株式会社製商品名)50質量部、エポキシ樹脂(A)として、エポキシ樹脂YDCN703(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;東都化成株式会社製商品名)を25質量部、フェノール樹脂(B)としてTD2625(レゾール型フェノール樹脂;大日本インキ株式会社製商品名)25質量部を加えた。さらに上記混合液に、マイクロカプセル型硬化剤(D)としてノバキュアHX3612(旭化成ケミカルズ株式会社製商品名)10質量部を混合したものを接着剤溶液とした。
【0032】
(2)接着フィルムの作製
75μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムにシリコーン系離型剤を塗布したセパレータ(以下、セパレータ)に乾燥後の接着剤厚みが12.5μmになるように接着剤溶液を塗付し、熱風乾燥機中で90℃、3分間乾燥して接着フィルムを作製した。
【0033】
(実施例2)
実施例1において、ニポール1072Jを−OH,−COOHを有するアクリルゴム(WS023、ナガセケムテックス株式会社、BA-EA-AN共重合体)とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0034】
(実施例3)
実施例1において、YDCN703を0質量部、ESCN220S(住友化学製商品名、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)を25質量部、TD2625を0質量部、PR54313(住友ベークライト株式会社製商品名、レゾール型フェノール樹脂)25質量部、アエロジル200を0質量部、H42M(昭和電工株式会社製商品名、水酸化アルミニウム)を30質量部、シリコンオリゴマー処理液を0.3質量部とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0035】
(実施例4)
実施例1において、ニポール1072Jを0質量部、WS023を60質量部とし、YDCN703を30質量部、TD2625を10質量部、ノバキュアHX3612を20質量部、アエロジル200を40質量部、シリコンオリゴマー処理液を0.4質量部とした以外は実施例1と同様に行った。
【0036】
(実施例5)
実施例4において、WS023を70質量部、YDCNを20質量部、TD2625を0質量部、PR54313を10質量部、アエロジル200を50質量部、シリコンオリゴマー処理液を0.2質量部とした以外は実施例4と同様に行った。
【0037】
(比較例1)
実施例1において、ノバキュアHX3612の代わりに2E4MZ(四国化成工業株式会社製商品名、2−エチル−4−メチルイミダゾール)1質量部とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0038】
(比較例2)
実施例1において、ノバキュアHX3612を2質量部とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0039】
(比較例3)
実施例1において、ノバキュアHX3612を60質量部とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0040】
(比較例4)
実施例1において、アエロジル200を0質量部とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0041】
(評価方法)
(1)剥離接着強さ(常態)
50μmのポリイミドフィルムKapton200H(デュポン社製)とセパレータ(離型紙)のついた接着フィルムの接着フィルム面を、100℃のラミネートロール(線圧5kg/cm ラミネート速度1m/分)にて貼り合せた後、上記のセパレータをはがした接着フィルム面に50μmのポリイミドフィルムKapton100Hを100℃のラミネートロール(線圧5kg/cm ラミネート速度1m/分)にて貼り合せた。その後、プレス(温度170℃、圧力1MPa、2分間)を行ったものを試験片とした。硬化した試験片をJIS K 6854−3に準拠し、90°はく離接着強さを測定した。はく離温度は、23℃、はく離速度は10mm/分で行った。
(2)リフローはんだ耐熱
50μmのポリイミドフィルムKapton200H(デュポン社製)とセパレータ(離型紙)のついた接着フィルムの接着フィルム面を、100℃のラミネートロール(線圧5kg/cm ラミネート速度1m/分)にて貼り合せた後、上記のセパレータをはがした接着フィルム面に50μmのポリイミドフィルムKapton200Hを100℃のラミネートロール(線圧5kg/cm ラミネート速度1m/分)にて貼り合せた。その後、プレス(温度170℃、圧力1MPa、2分間)を行ったものを試験片とした。上記試験片をJIS C 6481に準拠し、加湿条件(温度40℃、相対湿度80%)に12時間放置した後、リフローはんだ付け装置(株式会社日本パルス研究所製 RF430)を用いて、サンプル表面最高温度260℃となるように、試験片を加熱し、接着剤層のフクレの有無を観測した。
そして、フクレ・ハガレがないものを「○」、フクレ・ハガレがあったものを「×」として評価した。
(3)流れ出し性
25μmのポリイミドフィルムKapton100Hとセパレータのついた接着フィルムの接着フィルム面を、100℃のラミネートロール(線圧5kg/cm、ラミネート速度1m/分)にて貼り合せた後、上記のセパレータをはがした接着フィルム面に25μmのポリイミドフィルムKapton100Hを100℃のラミネートロール(線圧5kg/cm、ラミネート速度1m/分)にて貼り合せ試験片とした。上記試験片を80mm×80mmに切出し、プレス(170℃×1MPa×2分)を行った。その後、四辺それぞれの最大はみ出し部分をノギスにて測定し、その平均を流れ出し量(mm)とした。
流れ出し量の評価は、平均の流れ出し量が、0.2mm未満を「○」として、0.2mm以上を「×」として評価した。
(4)打ち抜き性
接着フィルムの接着フィルム面を上にし、2号ダンベルで打ち抜いた。評価は10回行い、打ち抜いた際の接着フィルムの切れ、糸引きを目視にて確認した。
そして、打ち抜き性として、分母にN数(試験数)、分子に切れが良く、糸引きのない打ち抜き良好となった回数を示した。
実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例3の結果を、表1に示した。
【0042】
【表1】

表中の部数は溶剤を除いた質量部比
はんだ耐熱性の評価;○:フクレ・ハガレなし ×:フクレ・ハガレあり
流れ出し量の評価;○:0.2mm未満 ×:0.2mm以上
打ち抜き性;分母がN数(試験数)、分子が打ち抜き良好となった回数
【0043】
本発明は、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、(A)または(B)と反応する官能基を有するエラストマー(C)、マイクロカプセル型硬化剤(D)、無機充填剤(E)、及びシリコーンオリゴマー(F)を含み、かつ、マイクロカプセル型硬化剤(D)の配合量がエポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)の総計100質量部に対し、(D)の配合が5〜100質量部であるフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物である。
イミダゾール系硬化剤を用いた比較例1は、170℃、2分間では、硬化が不十分のため、剥離接着強さ、はんだ耐熱性に劣った。一方、マイクロカプセル型硬化剤(D)の配合が、(A)+(B)の総計100質量部に対し、4質量部の比較例2は、硬化剤量が少ないためか剥離接着強さ、はんだ耐熱性に劣り、120質量部の比較例3は、硬化剤量が多く可塑剤的に作用したためか流れ出し性に劣り、また、硬化が速すぎて、はんだ耐熱性に劣った。無機充填剤(E)を配合しない比較例4では、打ち抜き性に劣る。
これらの比較例に対し、本発明のエポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)(A)、(B)と反応する官能基を有するエラストマー(C)、マイクロカプセル型硬化剤(D)、無機充填剤(E)、及びシリコーンオリゴマー(F)を含み、(D)の配合量を適性にしたフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物では、短時間硬化で、剥離接着強さ、リフローはんだ耐熱性、打ち抜き性等のいずれにも優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、(A)または(B)と反応する官能基を有するエラストマー(C)、マイクロカプセル型硬化剤(D)、無機充填剤(E)、及びシリコーンオリゴマー(F)を含み、かつ、マイクロカプセル型硬化剤(D)の配合量がエポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)の総計100質量部に対し、(D)の配合が5〜100質量部であるフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物。
【請求項2】
前記シリコーンオリゴマー(F)は、重合度が2〜70であり、水酸基と反応する官能基を1種以上有し、RSiO2/2、RSiO3/2及びSiO4/2よりなる群から選択される少なくとも1種のシロキサン単位を有し、前記シロキサン単位において、前記Rは有機基であり、前記Rが複数含まれる場合には、前記Rは同一であってもよいし、異なっていてもよい請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物を用いてフィルム化したフレキシブルプリント配線板用接着フィルム。

【公開番号】特開2010−74050(P2010−74050A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242484(P2008−242484)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000233170)日立化成ポリマー株式会社 (75)
【Fターム(参考)】