ブレーキシステム
【課題】液圧ブレーキ系統に液漏れ等が生じた場合の制動力不足を抑制する。
【解決手段】ブレーキシステムが正常である場合において、ブレーキペダル10のケーブル64に対する相対移動量が設定移動量a以下である場合には、突部82が長穴84に対して相対移動させられるため、ケーブル64に引張力が加えられることはない。ブレーキ系統90の液漏れにより、ブレーキペダル10のケーブル64に対する相対移動量が設定移動量aを超えると、ブレーキペダル10の操作に伴ってケーブル64が引っ張られ、ブレーキレバー52が回動させられ、補助ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられる。それによって、液圧ブレーキ系統90の液漏れ等に起因する制動力不足を抑制することができる。
【解決手段】ブレーキシステムが正常である場合において、ブレーキペダル10のケーブル64に対する相対移動量が設定移動量a以下である場合には、突部82が長穴84に対して相対移動させられるため、ケーブル64に引張力が加えられることはない。ブレーキ系統90の液漏れにより、ブレーキペダル10のケーブル64に対する相対移動量が設定移動量aを超えると、ブレーキペダル10の操作に伴ってケーブル64が引っ張られ、ブレーキレバー52が回動させられ、補助ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられる。それによって、液圧ブレーキ系統90の液漏れ等に起因する制動力不足を抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪に設けられ、車輪の回転を抑制するブレーキを含むブレーキシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、(i)(a)サービスブレーキペダルと、(b)サービスブレーキペダルの操作により液圧を発生させるタンデム式のマスタシリンダと、(c)マスタシリンダの液圧が供給されることにより作動させられるブレーキシリンダとを有するサービスブレーキ装置と、(ii)(a)パーキングブレーキレバーと、(b)ケーブルと、(c)ケーブルの引張力により作動させられるパーキングブレーキと、(d)ケーブルの途中に設けられ、パーキングブレーキレバーが操作されなくても、ケーブルに引張力を付与する油圧シリンダとを有するパーキングブレーキ装置とを含むブレーキシステムが記載されている。このブレーキシステムにおいて、サービスブレーキペダルが踏み込まれた状態において、マスタシリンダの2つの加圧室の液圧差が規定値以上で、異常である場合には、電気的な制御により、油圧シリンダが作動させられる。ケーブルが引っ張られて、パーキングブレーキが作動させられる。
特許文献2には、(i)サービスブレーキ操作部材と、(ii)パーキングブレーキ操作部材と、(iii)これらの間に設けられ、ケーブルを有するパーキングブレーキ伝達装置とを含むブレーキシステムが記載されている。このブレーキシステムにおいて、電気系統が正常である場合には、ソレノイドに電流が供給されることにより、サービスブレーキ操作部材とパーキングブレーキ伝達装置とが分離された状態にあるが、電気系統に異常が生じると、ソレノイドに電流が供給されなくなることにより、サービスブレーキ操作部材とパーキングブレーキ伝達装置とが連結される。それにより、サービスブレーキ操作部材の操作に伴ってパーキングブレーキを作動させることができる。その結果、電気系統の異常により、サービスブレーキのブレーキ作動力の電気的な制御が不能であっても、制動力不足を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−213560号公報
【特許文献2】特開平11−334578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ブレーキ操作部材の操作により作動させられる第1ブレーキおよび第2ブレーキを備えたブレーキシステムの改良である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るブレーキシステムは、ブレーキ操作部材に加えられる操作力を第2ブレーキに伝達する伝達状態と、操作力を第2ブレーキに伝達しない非伝達状態とに機械的に切り換わるメカ切換型伝達装置を含む。
本発明に係るブレーキシステムにおいては、操作力を第2ブレーキに伝達する伝達状態と、伝達しない非伝達状態とに機械的に切り換わる。そのため、電気制御によって切り換えられる場合に比較して信頼性を向上させることができるのであり、第1ブレーキ、第2ブレーキを備えたブレーキシステムの改良を図ることができる。
【特許請求可能な発明】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組を、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
(1)ブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材の操作によって作動させられて車輪の回転を抑制する第1ブレーキおよび第2ブレーキと、
前記ブレーキ操作部材の操作力を前記第2ブレーキに伝達する伝達装置と
を含むブレーキシステム。
第1ブレーキと第2ブレーキとは、同じ車輪に設けても、異なる車輪に設けてもよい。
また、第1ブレーキと第2ブレーキとは、それぞれ、サービスブレーキとしたり、パーキングブレーキとしたりすることができるのであり、それぞれの場合において、第1ブレーキを主ブレーキとして、第2ブレーキを補助ブレーキとすることができる。また、第1ブレーキをサービスブレーキとして、第2ブレーキをパーキングブレーキとすることもできる。
同様に、ブレーキ操作部材は、サービスブレーキ操作部材であっても、パーキングブレーキ操作部材であってもよい。
さらに、第1ブレーキと第2ブレーキとは、摩擦ブレーキとすることができ、それぞれ、ディスクブレーキとしたり、ドラムブレーキとしたりすることができ、いずれか一方をディスクブレーキ、他方をドラムブレーキとすることができる。また、第1ブレーキと第2ブレーキとが同じ車輪に設けられる場合には、それぞれの構成要素の一部を共通のものとすることができるが、ドラムインディスクブレーキのように、構成要素を互いに異なるものとすることもできる。
一方、第1ブレーキは、電動モータによって作動させられる電動ブレーキであっても、ブレーキシリンダの液圧、ケーブル等によって作動させられる機械式のブレーキであってもよく、第1ブレーキのブレーキ作動力は、電気的に制御可能であっても、制御不能であってもよい。第1ブレーキとブレーキ操作部材とは、機械的に接続されていても(ケーブル、液通路等による)、分離されていてもよいのである。
伝達装置は、ブレーキ操作部材の操作力を第2ブレーキに伝達するものであり、例えば、ブレーキ操作部材と第2ブレーキとの間に設けることができる。伝達装置は、常時、ブレーキ操作部材の操作力を第2ブレーキに伝達するものであっても、伝達する状態と伝達しない状態とに切り換わるものであってもよい。伝達状態と非伝達状態との切換えは、機械的に行われるものであっても、電気制御により行われるものであってもよい。
例えば、第2ブレーキの押付装置がブレーキレバー(構成要素)を含む場合には、伝達装置は、(x)ブレーキ操作部材とブレーキレバーとの間に設けられたケーブル,連結ロッド等、(y)これらケーブル,連結ロッド等とブレーキ操作部材,ブレーキレバーとを連結する連結部等から構成されると考えることができる。
また、第2ブレーキの押付装置がブレーキシリンダ(構成要素)を含む場合において、ブレーキ操作部材がプッシュロッドを介してマスタシリンダの加圧ピストンに連携させられ、ブレーキシリンダがマスタシリンダの液圧により作動させられる場合には、(i)プッシュロッドと、(ii)マスタシリンダ(加圧ピストン)と、(iii)マスタシリンダ(加圧室)とブレーキシリンダとを接続する液通路等により伝達装置が構成されると考えることができる。
なお、液通路の途中に制御弁装置等を設けることもできる。その場合には、制御弁装置の制御により、非伝達状態と伝達状態とに切り換えられるようにしたり、ブレーキシリンダ液圧が制御されるようにしたりすることができる。
(2)前記伝達装置を、前記ブレーキ操作部材に加えられた操作力を前記第2ブレーキに伝達しない非伝達状態と、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達する伝達状態とに機械的に切り換わるメカ切換型伝達装置とすることができる。
【0008】
(3)前記伝達装置が、前記第2ブレーキと前記ブレーキ操作部材との間に設けられ、前記ブレーキ操作部材を含む操作側部材の、前記第2ブレーキの構成要素を含むブレーキ側部材に対する相対移動量が予め定められた設定移動量以下の範囲で前記非伝達状態にあり、前記相対移動量が前記設定移動量より大きい範囲で前記伝達状態にある相対移動量依拠切換伝達部を含むものとすることができる。
操作側部材は、ブレーキ操作部材およびそれと一体的に移動可能な部材をいうが、ブレーキ操作部材と一体的に移動可能な部材が設けられていない場合には、ブレーキ操作部材をいう。ブレーキ側部材についても同様であり、第2ブレーキの押付装置の構成要素およびそれと一体的に移動可能な部材をいうが、第2ブレーキの押付装置の構成要素をいう場合もある。
具体的に、操作側部材は、(i)ブレーキ操作部材としたり、(ii)(a)ブレーキ操作部材および(b)ブレーキ操作部材の操作に伴って移動可能な部材(原則として、ブレーキ操作部材に、相対移動不能な状態で連結された部材)を含むものとしたりすることができる。部材は、厳密な意味において、相対移動不能に連結された部材に限定されず、多少の相対移動は許容される部材も含まれる。例えば、ブレーキ操作部材に対する相対的な回動(がたつき)等が許容される状態で連結される場合がある。
ブレーキ側部材は、(i)第2ブレーキの押付装置の構成要素としたり、(ii)(a)第2ブレーキの押付装置の構成要素および(b)構成要素の移動に伴って移動ささせられる部材(原則として、構成要素に、相対移動不能な状態で連結された部材)とを含むものとしたりすることができる。ブレーキ側部材についても同様に、部材は、厳密な意味において相対移動不能な部材に限定されない。
そして、操作側部材のブレーキ側部材に対する相対移動量が設定移動量より大きくなると、第2ブレーキが作動させられる。設定移動量は、制動力不足が生じた場合に運転者がブレーキ操作部材を操作する場合の操作ストロークに基づいて決まる大きさとすることができる。設定移動量は、固定値であっても、可変値であってもよく、実施例において説明するように、伝達装置の構造(例えば、連結部の構造)によって決まることもある(固定値)。また、伝達装置が電気制御によって伝達状態と非伝達状態とに切り換わるものである場合には、可変値とすることもでき、例えば、車両の走行状態に基づいて決まる値とすることもできる。
本項に記載のブレーキシステムにおいては、例えば、(1)異常に起因して、第1ブレーキのブレーキ作動力が低下した場合に、第2ブレーキを作動させることができ、制動力不足を抑制することができる。(2)ドラムインディスクブレーキを含むブレーキシステムにおいて、ブレーキシステムが正常であっても、運転者が大きな制動力を要求する場合に、第2ブレーキを作動させることにより、ブレーキアシストを行うことができる。
(4)当該ブレーキシステムが、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが第1設定ストロークより小さい範囲で、前記ブレーキ操作部材の操作力を前記第1ブレーキに伝達せず、前記操作ストロークが第1設定ストロークより大きい範囲で、前記操作力を前記第1ブレーキに伝達する通常伝達装置を含み、
前記設定移動量が、前記第1設定ストロークに対応する相対移動量より大きい第2設定移動量であり、前記伝達装置が、前記相対移動量が前記第2設定移動量以下の範囲で、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達せず、前記相対移動量が前記第2設定移動量より大きい範囲で、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達するものとすることができる。
ブレーキ操作部材とブレーキとの間には、通常、遅れがあり、ブレーキ操作部材の操作に遅れてブレーキが作動させられる。例えば、ケーブルの緩み、加圧ピストンとプッシュロッドとの間の隙間、液通路内の液圧の伝達遅れ等に起因する。
ブレーキ操作部材と第1ブレーキとの間には、この通常の遅れが生じ、ブレーキ操作部材の操作に遅れて第1ブレーキが作動させられるのであり、この遅れに対応するブレーキ操作部材の操作ストロークが第1設定ストロークである。この遅れは、意図しない遅れである。
第1設定ストロークに対応する相対移動量とは、ブレーキ側部材の移動量が0である場合の操作側部材の移動量をいう。通常伝達装置における作動遅れに対応する第1設定ストロークは、第1ブレーキが作動する前のブレーキ操作部材のストロークであるため、ブレーキ側部材が移動していない場合の相対移動量を考えることが妥当であるからである。
そして、ブレーキ操作部材と第2ブレーキとの間の遅れに対応する第2設定移動量は、第1設定ストロークに対応する相対移動量より大きいものであり、意図的に設けられたものである。
【0009】
(5)前記伝達装置は、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが設定ストローク以下の範囲で、前記ブレーキ操作部材に加えられた操作力を前記第2ブレーキに伝達しない非伝達状態にあり、前記操作ストロークが前記設定ストロークより大きい範囲で、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達する伝達状態にあるストローク依拠切換伝達部を含むものとすることができる。
例えば、操作側部材をブレーキ操作部材とし、ブレーキ側部材の移動量が非常に小さい場合には、ブレーキ操作部材の操作ストロークが相対移動量に対応し、設定ストロークが設定移動量に対応すると考えることができる。また、ブレーキ側部材の移動量がほぼ一定である場合(ブレーキ側一定移動量)には、操作ストロークが「相対移動量とブレーキ側一定移動量との和」に対応し、設定ストロークが「設定移動量とブレーキ側一定移動量」との和に対応すると考えることができる。
(6)当該ブレーキシステムが、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが第1設定ストロークより小さい範囲で、前記ブレーキ操作部材の操作力を前記第1ブレーキに伝達せず、前記操作ストロークが第1設定ストロークより大きい範囲で、前記操作力を前記第1ブレーキに伝達する通常伝達装置を含み、
前記設定ストロークが前記第1設定ストロークより大きい第2設定ストロークであり、前記伝達装置が、前記操作ストロークが前記第2設定ストロークより小さい範囲で、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達せず、前記操作ストロークが前記第2設定ストローク以上の範囲で、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達するものとすることができる。
【0010】
(7)前記第1ブレーキと前記第2ブレーキとが、共通の車輪に設けられ、それぞれ、(a)その共通の車輪とともに回転させられるブレーキ回転体と、(b)そのブレーキ回転体に対向する一対の摩擦部材と、(c)それら一対の摩擦部材を前記ブレーキ回転体に押し付ける押付装置とを含む摩擦ブレーキであり、これらブレーキ回転体と一対の摩擦部材とを、第1ブレーキと第2ブレーキとで共通のものとすることができる。
第1ブレーキが、第1ブレーキ回転体、第1摩擦部材、第1押付装置を含み、第2ブレーキが、第2ブレーキ回転体、第2摩擦部材、第2押付装置を含み、第1ブレーキ回転体と第2ブレーキ回転体とが同じものであり、第2摩擦部材と第2摩擦部材とが同じ部材である。そして、共通の摩擦部材あるいはその摩擦部材を保持する部材に、第2ブレーキの押付装置の構成要素が連携させられている場合には、第1ブレーキの作動により、摩擦部材が移動させられると、それによって、第2ブレーキの押付装置の、その構成要素が移動させられる。
例えば、第1ブレーキ、第2ブレーキがドラムブレーキであり、ドラムと、一対のブレーキライニング(ブレーキシュー)とが共通であり、第1ブレーキが第1押付装置の構成要素であるブレーキシリンダあるいは電動モータを備えた駆動装置を含み、第2ブレーキが第2押付装置の構成要素であるブレーキレバーを含み、そのブレーキレバーが、ブレーキシューに回動可能に保持される(ストラットを支点として回動可能とされる)場合には、第1ブレーキの作動により一対のブレーキシューが拡開させられ、ブレーキライニングがドラムの内周面に摩擦係合させられると、それに伴って、第2ブレーキのブレーキレバーも回動させられる。
(8)前記伝達装置が、前記第1ブレーキの作動力と操作ストロークとの間に、予め定められた規定関係が成立する場合に、前記ブレーキ操作部材に加えられる操作力を前記第2ブレーキに伝達しない非伝達状態にあり、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークと前記第1ブレーキの作動力との間の実際の関係が、前記規定関係に比較して、前記操作ストロークが前記第1ブレーキの作動力に対して大きい関係にある場合に、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達する伝達状態にある異常時伝達部を含むものとすることができる。
第2ブレーキの第2押付装置の構成要素が第1ブレーキの作動に伴って移動させられる場合に、その構成要素の移動量は、第1ブレーキの作動力が大きい場合は小さい場合より大きくなると考えられる。
一方、ブレーキ操作部材の操作ストロークと第1ブレーキの作動力との間には、予め定められた規定関係が成立するようにすることができる。例えば、第1ブレーキの作動力が、ブレーキ操作部材の操作ストロークで決まる大きさに電気的に制御される場合、ブレーキ操作部材にマスタシリンダの加圧ピストンが連携させられ、マスタシリンダとブレーキシリンダとが液通路によって接続される場合等が該当する。規定関係は、操作ストロークが大きくなると第1ブレーキの作動力も大きくなる関係、例えば、比例関係とすることができる。
ここで、操作ストロークと第1ブレーキの作動力との間の実際の関係が規定関係に比較して、操作ストロークが第1ブレーキの作動力に対して大きくなる関係となる場合には、例えば、ブレーキ操作部材の操作力を第1ブレーキに伝達する伝達装置の異常(例えば、第1ブレーキがブレーキシリンダを含む場合に、そのブレーキシリンダを含むブレーキ系統に液漏れ等の失陥が生じた場合が該当する)、第1ブレーキの作動力が電気的に制御される場合に、その電気的制御が異常である場合等が該当する。
そこで、本項に記載のブレーキシステムにおいては、伝達装置が、ブレーキ操作部材の操作ストロークと第1ブレーキの作動力との間に規定関係が成立する場合には、ブレーキ操作部材の操作力を第2ブレーキに伝達せず、規定関係に比較して、ブレーキ操作部材の操作ストロークが第1ブレーキの作動力に対して大きくなる関係にある場合に、操作力を第2ブレーキに伝達するものとされる。その結果、第1ブレーキの作動力が低下する異常時の制動力不足を抑制することができる。
なお、操作側部材がブレーキ側部材に対して相対移動させられる場合の相対移動量を正の値とし、ブレーキ側部材が操作側部材に対して相対移動させられる場合の相対移動量を負の値とするとともに、設定移動量を0あるいは正の値とした場合には、操作側部材のブレーキ側部材に対する相対移動量が設定移動量以下である場合が、操作ストロークと第1ブレーキの作動力との関係が規定関係にある場合(正常である場合)に対応し、操作側部材のブレーキ側部材に対する相対移動量が設定移動量より大きい場合が、操作ストロークと第1ブレーキの作動力との関係が規定関係にない場合(異常である場合)に対応すると考えることができる。
(9)前記伝達装置が、前記第1ブレーキの作動力と前記ブレーキ操作部材の操作ストロークとが、予め定められた正常領域にある場合に、前記ブレーキ操作部材に加えられる操作力を前記第2ブレーキに伝達しない非伝達状態にあり、前記第1ブレーキの作動力と前記ブレーキ操作部材の操作ストロークとが、前記正常領域に比較して、前記操作ストロークが前記第1ブレーキの作動力に対して大きい異常領域にある場合に、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達する伝達状態にある異常時伝達部を含むものとすることができる。
正常領域は、規定関係にある操作ストローク、第1ブレーキの作動力を含む領域であり、第1ブレーキの作動力とブレーキ操作部材の操作ストロークとの間に、ほぼ規定関係が成立する領域が該当する。
異常領域は、正常領域とは異なる領域であり、第1ブレーキの作動力とブレーキ操作部材の操作ストロークとの間に、規定関係に比較して、操作ストロークが作動力に対して大きくなる関係が成立する領域が該当する。
【0011】
(10)前記メカ切換型伝達装置は、(a)前記ブレーキ操作部材を含む操作側部材と、(b)前記第2ブレーキの構成要素を含むブレーキ側部材と、(c)これら操作側部材とブレーキ側部材との間に設けられ、前記操作側部材と前記ブレーキ側部材との間の相対移動を許容する非伝達状態と、前記操作側部材と前記ブレーキ側部材との間の相対移動を阻止する伝達状態とに切り換わる遅延型連結部とを含むものとすることができる。
操作側部材とブレーキ側部材との間の相対移動が許容される状態において、ブレーキ操作部材の操作ストロークの増加に伴って第2ブレーキが作動させられることはないが、相対移動が阻止される状態において、ブレーキ操作部材の操作ストロークの増加に伴って第2ブレーキが作動させらる。
非伝達状態において、操作側部材のブレーキ側部材に対する相対移動が許容されるようにしても、ブレーキ側部材の操作側部材に対する相対移動が許容されるようにしてもよい。
(11)前記遅延型連結部は、前記ブレーキ操作部材と前記第2ブレーキとを連結する連結部材と、前記ブレーキ操作部材と前記第2ブレーキとの少なくとも一方との間に設けることができる。
遅延型連結部は、ブレーキ操作部材と連結部材との間に設けても、連結部材と第2ブレーキとの間に設けても、両方に設けてもよい。
ブレーキ操作部材と連結部材とによって操作側部材が構成され、第2ブレーキによってブレーキ側部材が構成されると考えたり、ブレーキ操作部材によって操作側部材が構成され、第2ブレーキと連結部材とによってブレーキ側部材が構成されると考えたりすることができる。
(12)前記操作側部材が、前記ブレーキ操作部材と、前記ブレーキ操作部材と前記第2ブレーキとの間に設けられた連結部材の一部とを含み、前記ブレーキ側部材が、前記第2ブレーキの構成要素と、その構成要素と前記連結部材の残りの部分とを含むものとすることができる。
連結部材の途中に連結部が設けられる。
(13)前記遅延型連結部が、前記操作側部材と前記ブレーキ側部材とのいずれか一方に設けられた突部と、他方に設けられた長穴とを含むものとすることができる。
(14)前記メカ切換型伝達装置が、前記ブレーキ操作部材、前記第2ブレーキおよびこれらの間に設けられた連結部材を含み、少なくとも、前記ブレーキ操作部材、第2ブレーキおよび連結部材を、前記第1ブレーキの作動力と前記操作ストロークとの間に予め定められた規定関係が成立する場合に前記操作力を前記第2ブレーキに伝達せず、前記操作ストロークと前記第1ブレーキの作動力との実際の関係が、前記規定関係に比較して、前記操作ストロークが前記第1ブレーキの作動力に対して大きくなる関係にある場合に、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達する構造を成したものとすることができる。
ケーブルの配策、第2ブレーキの構造(ブレーキレバーの形状、取り付け態様)、ブレーキ操作装置の構造(ブレーキ操作部材の形状、取り付け態様)等が、第1ブレーキの作動力と操作ストロークとが正常領域にある場合に、操作力を第2ブレーキに伝達せず、異常領域にある場合に伝達する構造に設計される。
ブレーキ操作部材の操作に伴って連結部材が移動させられるとともに、第1ブレーキの作動力に応じて第2ブレーキの押付装置の構成要素(連結部材が連結された要素)が移動させられる場合において、第1ブレーキの作動力と操作ストロークとの間の実際の関係が規定関係にある場合(正常である場合)には連結部材に引張力が加えられないが、実際の関係が、規定関係より、操作ストロークが第1ブレーキの作動力に対して大きくなる関係になる(異常である場合)と、引張力が加えられるように設計することができる。
例えば、規定関係にある場合において、連結部材の第1ブレーキの作動力に起因する移動量がブレーキ操作部材の操作ストロークに応じた移動量以上になるようにすることができる。このようにすれば、規定関係にある場合には、連結部材に引張力が加えられず、規定関係より、ブレーキ操作部材の操作ストロークが第1ブレーキの作動力に対して大きくなる関係にある場合において、連結部材に引張力が加えられるようにすることができる。
このように、連結部材、ブレーキ操作部材、第2ブレーキ等を、上述の条件を満たす構造を成したものとした場合には、遅延型連結部は不可欠ではない。
【0012】
(15)前記メカ切換型伝達装置に、前記ブレーキ操作部材である第1ブレーキ操作部材とは別の第2ブレーキ操作部材が連結され、前記第1ブレーキ操作部材の非操作中、かつ、前記第2ブレーキ操作部材の操作中に、前記第2ブレーキと前記メカ切換式伝達装置との少なくとも一方の異常の有無を検出する異常検出装置を設けることができる。
第2ブレーキ操作部材の操作状態においては、第2ブレーキが作動させられるはずである。それに対して、第2ブレーキが非作動状態にある場合、第2ブレーキの作動力が設定値以下である場合、連結部材に加えられる力が設定値以下である場合には、第2ブレーキとメカ切換型伝達装置との少なくとも一方が異常であると考えられる。
また、第1ブレーキの非作用中に検出されるため、第2ブレーキとメカ切換型伝達装置との少なくとも一方の異常の有無を正確に検出することができる。
【0013】
(16)前記第2ブレーキがパーキングブレーキである。
(17)当該ブレーキシステムが、前記ブレーキ操作部材の非操作状態に、前記第2ブレーキの作用力を保持する保持機構が設けられていない。
第2ブレーキがパーキングブレーキでない場合には、保持機構は不要である。この場合には、ブレーキ操作部材の操作が解除されると、第2ブレーキも解除されることになる。
(18)前記メカ切換型伝達装置は、当該ブレーキシステムが正常である場合にも前記非伝達状態から前記伝達状態に切り換わる正常時切換型伝達部を含むものとすることができる。
第2ブレーキは、当該ブレーキシステムが異常である場合に作動させられるものとしたり、当該ブレーキシステムが正常な場合に作動させられるものとしたりすることができる。本項に記載のブレーキシステムにおいては、正常である場合に作動可能なものである。
(19)ブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材の操作によって液圧を発生させるマスタシリンダと、
そのマスタシリンダの加圧室と液通路によって接続されたブレーキシリンダを備えた第1ブレーキと、
一端部が前記ブレーキ操作部材に連結され、他端部がブレーキレバーに連結されたケーブルと、
前記ブレーキレバーの回動によって作動させられる第2ブレーキと
を含むブレーキシステム。
ブレーキ操作部材には、ブレーキシリンダとブレーキレバーとが常に連結されるのであり、ブレーキ操作部材の操作に伴って第1ブレーキも第2ブレーキも作動させられる。
第1ブレーキと第2ブレーキとで摩擦部材が共通とされた場合において、ブレーキシステムが正常である場合には、ブレーキ操作部材の操作に伴って第1ブレーキと第2ブレーキとのうちの予め定められたいずれか一方が作動させられるが、第1ブレーキとブレーキ操作部材との間の伝達装置に異常が生じた場合には、第2ブレーキが作動させられ、第2ブレーキとブレーキ操作部材との間の伝達装置に異常が生じた場合には、第1ブレーキが作動させられる。
第1ブレーキ、第2ブレーキがドラムインディスクブレーキである場合には、車輪には、第1ブレーキと第2ブレーキとのブレーキ作動力の和に応じた制動力が加えられる。この場合には、第1ブレーキの作動力と第2ブレーキの作動力との和が、ブレーキ操作部材の操作ストロークに応じた大きさとなるように設計することもできる。
本項に記載のブレーキシステムには、(1)項ないし(18)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
(20)ブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材に連結され、マスタシリンダの加圧ピストンに連携させられるプッシュロッドと、
前記ブレーキ操作部材に連結され、ブレーキレバーに接続された連結部材と
を含むブレーキ操作装置。
ブレーキレバーは、ドラムブレーキに設けられるブレーキ作動部材であっても、ディスクブレーキに設けられるブレーキ作動部材であってもよい。
連結部材は、ケーブルとしたり、連結ロッドとしたりすることができる。
本項に記載のブレーキ操作装置には、(1)項ないし(18)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
(21)マスタシリンダの加圧ピストンに連携させられるプッシュロッドと、車輪の回転を抑制するブレーキのブレーキレバーに接続された連結部材との両方が連結されたブレーキ操作部材。
本項に記載のブレーキ操作部材には、(1)項ないし(18)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例であるブレーキシステム全体を概念的に示す図である(実施例1)。
【図2】上記ブレーキシステムにおける作動状態を示す図である。
【図3】本発明の別の一実施例であるブレーキシステム全体を概念的に示す図である(実施例2)。
【図4】上記ブレーキシステムの作動状態を示す図である。
【図5】本発明のさらに別の一実施例であるブレーキシステム全体を概念的に示す図である(実施例3)。
【図6】上記ブレーキシステムの作動状態を示す図である。
【図7】本発明の別の一実施例であるブレーキシステム全体を概念的に示す図である(実施例4)。
【図8】本発明のさらに別の一実施例であるブレーキシステム全体を概念的に示す図である(実施例5)。
【図9】上記ブレーキシステムのディスクブレーキの背面図である。
【図10】本発明のさらに別の一実施例であるブレーキシステム全体を概念的に示す図である(実施例6)。
【図11】本発明の別の一実施例であるブレーキシステム全体を概念的に示す図である(実施例7)。
【図12】上記ブレーキシステムのブレーキ制御装置の記憶部に記憶された異常検出プログラムを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態であるブレーキシステムについて、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
実施例1に係るブレーキシステムは、図1に示すように、ブレーキ操作部材としてのサービスブレーキペダル(以下、単にブレーキペダルと略称する)10と、マスタシリンダ12と、左右前輪に設けられたディスクブレーキ14と、左右後輪に設けられたドラムブレーキ16とを含む。
マスタシリンダ12は、2つの加圧ピストン18,19を含むタンデム式のものであり、それぞれの前方に形成された加圧室20,21に、ブレーキペダル10の操作に応じた液圧を発生させる。
<ディスクブレーキ>
左右前輪にそれぞれ設けられたディスクブレーキ14は、それぞれ、(a)前輪と共に回転させられる回転ディスク23と、(b)回転ディスク23の両側に設けられた一対の摩擦部材と、(c)キャリパと、(d)キャリパに保持されたブレーキシリンダ24とを含み、ブレーキシリンダ24の液圧により、キャリパとの協働により、摩擦部材を回転ディスク23に押し付けて摩擦係合させることにより、左右前輪の回転を、それぞれ、抑制するものである。ブレーキシリンダ24には、マスタシリンダ12の加圧室20が液通路26を介して接続される。このように、ディスクブレーキ14は液圧ブレーキであり、サービスブレーキとして作動させられる。
【0017】
<ドラムブレーキ>
左右後輪にそれぞれ設けられたドラムブレーキ16は、ブレーキシリンダ28にマスタシリンダ12の加圧室21の液圧が液通路30を介して供給されることにより作動させられる第1ブレーキであるとともに、ケーブルの引張力によりブレーキレバーが回動させられることにより作動させられる第2ブレーキでもある。
本実施例において、第1ブレーキ、第2ブレーキのいずれもサービスブレーキであるが、第1ブレーキが主ブレーキ、第2ブレーキが補助ブレーキである。
また、第1ブレーキ、第2ブレーキは、いずれも、摩擦ブレーキであり、第1ブレーキが液圧ブレーキであり、第2ブレーキがケーブル式のブレーキである。
【0018】
ドラムブレーキ16は、それぞれ、図示しない車体に取り付けられた非回転体としてのバッキングプレート32と、内周面に摩擦面34を備えて車輪と一体的に回転可能なブレーキ回転体としてのドラム36と、バッキングプレート32に固定されたアンカ部材38と、一対のブレーキシュー40a,bとを含む。
バッキングプレート32の一直径方向に隔たった位置には、アンカ部材38とブレーキシリンダ28とが設けられており、それらアンカ部材38とブレーキシリンダ28との間には、各々円弧状を成す一対のブレーキシュー40a,40bがドラム36の内周面34に対面するように取り付けられている。一対のブレーキシュー40a,40bは、シューホールドダウン装置42a,42bによってバッキングプレート32にそれの面に沿って移動可能に取り付けられている。なお、バッキングプレート32の中央に設けられた貫通穴は、図示しないアクスルシャフトの貫通を許容するためのものである。
一対のブレーキシュー40a,40bは、一端部がブレーキシリンダ28により作動的に連結される一方、各他端部がアンカ部材38と当接して回動可能に支持されるようになっている。一対のブレーキシュー40a,40bの一端部同士は、リターンスプリング44により互いに接近する向きに付勢されている。また、ブレーキシュー40a,40bの間には、ストラット46が設けられる。ストラット46は、ブレーキレバー52にも係合させられる。
ドラムブレーキ16には、それぞれ、オートアジャスタ50が設けられ、ブレーキシュー40a,40bとドラム内周面34との間のクリアランスが自動で調整される。
【0019】
また、ブレーキ作動部材としてのブレーキレバー52が、一端部においてブレーキシュー40aに回動可能に保持され、他端部にブレーキケーブル60のインナケーブル64が、連結部65を介して連結される。連結部65は、インナケーブル64とブレーキレバー52とを連結するものであり、連結部65により、インナケーブル64にB方向の引張力が加えられると、ブレーキレバー52がA方向に回動させられ、ブレーキレバー52がA方向に回動させられると、インナケーブル64はB方向に移動させられる。
【0020】
ブレーキケーブル60は、それぞれ、インナケーブル64と、インナケーブル64を案内する図示しないアウタチューブとを含み、アウタチューブは、両端部において、固定部材に長手方向に移動不能に保持される(ドラムブレーキ側においては、バッキングプレート32に保持される)。インナケーブル64は、それの一端部のアウタチューブから突出した部分において前記ブレーキレバー52に連結されるとともに、他端部のアウタチューブから突出した部分においてブレーキペダル10に連結される。なお、68はイコライザーであり、左右後輪のドラムブレーキ16のブレーキレバー52に等しい引張力が付与される。
以下、本明細書において、ブレーキケーブル60,インナーケーブル64を単にケーブルと称することがある。
【0021】
ドラムブレーキ16において、ブレーキシリンダ28に液圧が供給されると、それによって、一対のブレーキシュー40a,40bが拡開させられ、ブレーキライニング66a,66bがドラム内周面34に押し付けられ、主ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられる。ブレーキライニング66a,66bの押付力は、ブレーキシリンダ28の液圧に応じた大きさとなる。
インナケーブル64が引っ張られると、ブレーキレバー52が回動させられ、ストラット46を介して、一対のブレーキシュー40a,bが拡開させられる。ブレーキライニング66a,66bがドラム内周面34に押し付けられ、補助ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられる。ブレーキライニング66a,66bの押付力は、インナケーブル64の引張力に応じた大きさとなる。
このように、左右後輪に設けられたドラムブレーキ16は、第1ブレーキ(主ブレーキ)と第2ブレーキ(補助ブレーキ)とで共通のものとされる。具体的には、摩擦部材(ブレーキライニング66a,66b、ブレーキシュー40a,b)が主ブレーキと補助ブレーキとで共通とされる。
ブレーキシリンダ28は、主ブレーキの押付装置の構成要素であり、ブレーキレバー52は、補助ブレーキの押付装置の構成要素であり、インナーケーブル64は、ブレーキペダル10とブレーキレバー52(補助ブレーキの押付装置の構成要素)とを連結する連結部材である。本実施例においては、ブレーキレバー52が、共通の摩擦部材であるブレーキシュー40aに回動可能に保持されることになる。
【0022】
<ブレーキ操作部材>
ブレーキペダル10は、一端部において、支持部材70に保持軸72を介して回動可能に保持され、他端部にブレーキパッド74が設けられる。また、中間部には、プッシュロッド76が連結部77を介して連結され、インナケーブル64が連結部78を介して連結される。
連結部77は、ブレーキペダル10の踏込み操作に伴ってプッシュロッド76が前進する状態で連結するものであり、プッシュロッド76は、マスタシリンダ12の加圧ピストン19に連携させられる。
連結部78は、ブレーキペダル10の踏込み操作に伴ってケーブル64が引っ張られる(矢印Cの方向に移動させられる)状態と、ブレーキペダル10が踏み込まれても、ケーブル64が引っ張られない状態とに機械的に切り換え可能な状態で、これらを連結する。連結部78は、ブレーキペダル10の中間部に形成された突部82と、ケーブル64の先端に取り付けられた保持部86に形成された長穴84とを含む。長穴84は、ケーブル64の長手方向、換言すれば、ブレーキペダル10の操作方向であり、ブレーキペダル10の非操作状態において、突部82が長穴84の後退側(非操作側)の端部に位置する状態で取り付けられる。
ブレーキペダル10の踏込み操作に伴って、突部82が長穴84の内部を相対移動させられる間、ケーブル64に引張力が加えられることはない。それに対して、突部82が長穴84の前進側の端部に当接すると、ブレーキペダル10の踏込み操作に伴ってケーブル64が矢印C方向(C方向とB方向とは、ケーブル64の長手方向、すなわち、ケーブル64が引っ張られる方向という意味において同じであると考えることもできる)に移動させられ、引張力が加えられる。
【0023】
また、以下、本明細書において、連結部65,77等(これと類似する連結部)を、2つの部材を相対移動不能に連結するものと表現し、連結部78等(これと類似する連結部)を、2つの部材の相対移動可能に連結するものと表現することがある。連結部65,77は、2つの部材の多少の相対移動が許容される状態で設けられることもあり、厳密な意味において、相対移動不能に連結するとは言い難い場合もあるが、連結部78と比較すれば、相対移動不能な状態で連結するということができる。また、2つの部材の相対移動を許容する意図で設けたものではないからである。
【0024】
<ブレーキシステムにおける作動>
運転者によってブレーキペダル10の踏込み操作が行われると、マスタシリンダ12の加圧室20,21に液圧が発生させられる。加圧室20,21の液圧は、それぞれ、ディスクブレーキ14のブレーキシリンダ24、ドラムブレーキ16のブレーキシリンダ28に供給されて、左右前輪、左右後輪のサービスブレーキ14,16が作動させられ、車輪の回転が抑制される。
本実施例のブレーキシステムの液圧系においては、前後2系統とされており、前輪側のブレーキ系統88,後輪側のブレーキ系統90の各々において、それぞれ別個に、液圧が発生させられ、ブレーキシリンダ24,28に供給される。
ドラムブレーキ16において、ブレーキペダル10のケーブル64に対する相対移動量が設定移動量より小さい範囲では、図2(a)に示すように、突部82は、長穴84に沿って相対移動させられる。そのため、ケーブル64が引っ張られることはなく、補助ブレーキが作動させられることはない。ドラムブレーキ16は主ブレーキとして作動させられる。
ブレーキ系統90に液漏れ等が生じていない場合には、原則として、ブレーキシリンダ28の液圧はブレーキペダル10の操作ストローク(操作力)に応じた高さとなり、それに応じてブレーキレバー52が矢印A方向に回動し、ケーブル64がB方向に移動させられる。そのため、ケーブル64のB方向の移動量は、ブレーキペダル10の操作ストロークに応じた大きさとなる。
この事実から、ブレーキペダル10の操作ストロークとケーブル64のB方向の移動量との関係が所望の関係となるように、ドラムブレーキ16,ブレーキペダル10等を設計することが可能である。そして、これらドラムブレーキ16,ブレーキペダル10,連結部78の設計により、ブレーキ系統90が正常である場合(液漏れ等が生じていない場合)に、ブレーキペダル10のケーブル64に対する相対移動量が、寸法aで決まる設定移動量に達しないようにすることができる。
一方、寸法aを、ブレーキ系統90に液漏れ等が生じていない場合には、運転者によって操作されることがないブレーキペダル10の操作ストロークに応じた大きさとすることもできる。寸法aをそのような大きさに設定した場合には、ブレーキシリンダ28の液圧によるケーブル64のB方向の移動を考慮しなくても、ブレーキ系統90が正常である場合に、ブレーキペダル10のケーブル64に対する相対移動量が設定移動量に達しないようにすることができる。
【0025】
ブレーキ系統90の液漏れ等によりブレーキシリンダ28の液圧が低くなると、ブレーキペダル10の操作ストロークに対してケーブル64の矢印B方向の移動量が小さくなる。そして、ブレーキペダル10のケーブル64に対する相対移動量が設定移動量以上になると、図2(b)に示すように、突部82が長穴84の前進側の端部に当接する。その後、ブレーキペダル10の操作ストロークの増加に伴ってケーブル64が引っ張られ、ブレーキレバー52が回動させられる。ブレーキペダル10に加えられた操作力がケーブル64を介してドラムブレーキ16のブレーキレバー52に伝達されるのであり、それにより、補助ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられる。
【0026】
設定移動量は、後輪側のブレーキ系統90(主ブレーキのブレーキシリンダ28を含む系統)の液漏れ等により、制動力不足を感じた運転者がブレーキペダル10を操作する場合の操作ストロークに基づいて決まる大きさとすることができ、長穴84の長手方向の寸法aに応じた大きさとなる(厳密にいえば、長穴84の長手方向の寸法aから突部82を引いた大きさとなる)。
例えば、ブレーキ系統90の失陥により、ブレーキシリンダ28の液圧が非常に低く、大気圧に近い大きさである場合、すなわち、主ブレーキが非作動状態にあるとみなし得る場合には、ケーブル64のB方向の移動量は0である。ブレーキペダル10のケーブル64に対する相対移動量(ブレーキペダル10の操作ストロークと同じ)が、寸法a(設定移動量)より大きくなると、ケーブル64が引っ張られ、補助ブレーキが作動させられる。
【0027】
それに対して、ブレーキ系統90に液漏れが生じたが、ブレーキシリンダ28の液圧が大気圧より高く(正常時より低いが)、主ブレーキが作動していると考え得る状態にある場合には、主ブレーキとしてのドラムブレーキ16は作動状態にあると考えられる。一対のブレーキシュー40a,bが拡開させられ、ブレーキレバー52が、時計方向(矢印A方向)にわずかに回動させられ、ケーブル64は、B方向にわずかに移動させられる。この場合には、ブレーキペダル10のケーブル64のB方向の移動に対する相対移動量が寸法aより大きくなると、ケーブル64に引張力が加えられる。主ブレーキに代わって補助ブレーキが作動させられる。
【0028】
このように、本実施例においては、ブレーキ系統90の液漏れ等に起因して、ブレーキペダル10のケーブル64に対する相対移動量が設定移動量より大きくなると、補助ブレーキが作動させられる。そのため、主ブレーキのブレーキ作動力が非常に小さくなった場合であっても、補助ブレーキが作動させられるため、制動力不足を良好に抑制することができる。
また、ブレーキペダル10とケーブル64とが連結部78を介して連結されており、電気的な制御によることなく、機械的に、非伝達状態から伝達状態に切り換えられる。そのため、電気的な制御による場合に比較して、ブレーキシステムの信頼性を向上させることができる。
さらに、補助ブレーキが設けられる左右後輪において、主ブレーキのブレーキシリンダ28は、それぞれ、同じブレーキ系統90に属するものであるため、ブレーキ系統90に液漏れ等が生じた場合に、左後輪、右後輪の主ブレーキのブレーキシリンダ28の液圧は、それぞれ、同様に低下する。そして、イコライザー68により、左後輪、右後輪の補助ブレーキのケーブル64には、それぞれ、同じ引張力が付与される。そのため、ブレーキ系統90の液漏れ等に起因する補助ブレーキの作動により、車両にヨーモーメントが生じることがない。
また、補助ブレーキがパーキングブレーキではない場合には、ブレーキペダル10の操作が解除されれば、補助ブレーキの作動力も0となるのであり、作動力を保持する保持機構は不可欠ではない。
【0029】
さらに、ブレーキペダル10の踏込み操作に伴ってマスタシリンダ12に液圧が発生させられ、ブレーキシリンダ28に供給されて主ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられるが、プッシュロッド76と加圧ピストン19との間に図示を省略する隙間が設けられるのが普通である。また、液通路30における液圧の伝達遅れもあり、ブレーキペダル10の操作開始に伴って、直ちに、主ブレーキが作動させられるのではなく、遅れが生じるのが普通である。
一方、補助ブレーキは、前述のように、ブレーキペダル10のケーブル64に対する相対移動量が操作移動量を超えた場合に作動させられるのであり、補助ブレーキも、ブレーキペダル10の操作に遅れて作動させられる。そして、本実施例においては、この補助ブレーキの遅れは、主ブレーキの遅れより大きくされている。
すなわち、主ブレーキにおける遅れに応じたブレーキペダル10のストロークが第1設定ストロークであり、補助ブレーキの遅れに応じたブレーキペダル10の相対移動量である設定移動量(第2設定移動量)は、第1設定ストロークに対応する相対移動量より大きくされている。換言すれば、第1設定ストロークは、複数の部材のメカ的な連結、液圧の伝達等により、やむを得ず生じるものであるが、第2設定移動量は、意図的に設けたものであり、その結果、第2設定移動量が、第1設定ストロークに対応する相対移動量より大きくされるのである。
【0030】
以上のように、本実施例において、ブレーキペダル10等により操作側部材が構成され、ブレーキレバー52,連結部65,ケーブル64等によりブレーキ側部材が構成される。また、プッシュロッド76,液通路30等により通常伝達部が構成され、ケーブル64,連結部78等によりメカ切換型伝達装置、異常時伝達部、相対移動量依拠切換伝達部が構成される。連結部78(相対移動可能な状態で連結する連結部)は遅延型連結部であり、連結部65,77(相対移動不能な状態で連結する連結部)は通常連結部と称することができる。
【0031】
なお、遅延型連結部は、ケーブル64とブレーキレバー52との間に設けることができる。ケーブル64はブレーキペダル10の操作に伴って移動させられるが、ケーブル64のブレーキレバー52に対する相対移動量が設定移動量以下の場合に、ブレーキレバー52が回動させられず、相対移動量が設定移動量より大きくなると、ブレーキレバー52が回動させられ、補助ブレーキが作動させられる。
【実施例2】
【0032】
本実施例においては、遅延型連結部100が、ブレーキレバーとケーブル64との間に設けられる。その場合の一例を図3に示す。ブレーキシステムにおいて、他の部分についての構造は、実施例1における場合と同様であるため、説明を省略する。
遅延型連結部100は、ブレーキレバー102に設けられた突部104と、ケーブル64の先端部に設けられ保持部108に形成された長穴106とを含む。
また、ブレーキペダル10において、ケーブル64が通常連結部110を介して連結される。通常連結部110によって、ブレーキペダル10の踏込み操作に伴って、ケーブル64が矢印C方向に移動する状態で連結される。
【0033】
ブレーキ系統90において液漏れ等が生じていない場合には、ブレーキペダル10の踏込み操作に伴ってマスタシリンダ12に液圧が発生させられる。マスタシリンダ12の液圧はブレーキシリンダ28に供給されて、一対のブレーキシュー40a,bが拡開させられ、主ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられる。
また、一対のブレーキシュー40a,bの拡開により、ブレーキレバー52が回動させられる。ブレーキレバー52の回動量は、ブレーキシリンダ28の液圧が高い場合は低い場合より大きくなり、ブレーキシリンダ28の液圧は、マスタシリンダ12の液圧、すなわち、ブレーキペダル10の操作力、操作ストロークが大きい場合は小さい場合より大きくなる。
一方、ブレーキペダル10の踏込み操作に伴ってケーブル64が矢印C方向に移動させられる。このケーブル64の移動量は、操作ストロークが大きい場合は小さい場合より大きくなる。
さらに、ブレーキ系統90において液漏れ等が生じていない場合、ブレーキペダル10の操作ストローク(ケーブル64の移動量ΔCに対応)とブレーキシリンダ28の液圧(ブレーキレバー102の回動量ΔAに対応)との間には予め定められた規定関係が成立するのが普通である。
以上の事情から、本実施例においては、ブレーキ系統90に液漏れ等が生じておらず、操作ストロークとブレーキシリンダ液圧との関係が規定関係である場合(正常である場合)に、ケーブル64に引張力が加えられないように、ブレーキペダル10,ドラムブレーキ16の構造,ケーブル64の配策、遅延型連結部100等が設計される。
【0034】
例えば、ブレーキペダル10の操作に伴う、ブレーキシリンダ28の液圧に起因するブレーキレバー52の回動量ΔA(本明細書において、矢印B方向の移動量で表されるものとするため、ΔBと表現することもできる)がケーブル64の移動量ΔC以上になるように設計される(ΔA>ΔC)。
図4(a)に示すように、遅延型連結部100において、ブレーキレバー102がケーブル64に対して矢印B(A)の方向に相対的に移動させられ、突部104と長穴106の後退端との間に隙間ができる。この状態において、ブレーキペダル10の操作によってブレーキレバー102が回動させられることはないのであり、補助ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられることはない。操作ストロークとブレーキシリンダ28の液圧との間には、図4(c)の規定関係が成立すると考えられる。操作ストロークとブレーキシリンダ28の液圧とは、正常な領域に属する。
【0035】
また、ブレーキ系統90の液漏れ等が生じると、ブレーキシリンダ28に加えられる液圧が小さくなり、規定関係と比較して、操作ストロークがブレーキシリンダ28の液圧に対して大きくなる関係となる。操作ストロークとブレーキシリンダ28の液圧とが、図4(c)の異常な領域に属する。その結果、図4(b)に示すように、連結部100において、ケーブル64がブレーキレバー102に対して相対移動させられ、突部104と長穴106との間の隙間がなくなり、ブレーキペダル10の操作ストロークの増加に伴ってケーブル64が引っ張られ、補助ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられる。
ブレーキ系統90の液漏れ等が生じた場合には、主ブレーキが作動させられることなく、ブレーキペダル10の操作に伴って補助ブレーキが作動させられる場合や、ブレーキペダル10の操作に伴って主ブレーキが作動した後に、補助ブレーキが、主ブレーキに代わって作動させられる場合等がある。いずれにしても、補助ブレーキの作用状態において、主ブレーキが作用することはない。
このように、本実施例においては、ブレーキ系統90の液漏れ等に起因して、ブレーキシリンダ28の液圧と操作ストロークとの関係が正常でなくなった場合に、補助ブレーキとしてドラムブレーキ16を作動させることができる。その結果、ブレーキ系統90の液漏れ等による制動力不足を抑制することができる。
【0036】
なお、ブレーキペダル10およびケーブル64が操作側部材に対応し、ブレーキレバー102がブレーキ側部材に対応すると考えた場合において、ブレーキレバー102の突部104がケーブル64の長穴106に対して相対移動させられる場合に、補助ブレーキが作動させられることがないが、ケーブル64の長穴106のブレーキレバー102の突部104に対する相対移動量が0(設定移動量)より大きくなった場合に、補助ブレーキが作動させられると考えることができる。ブレーキレバー102のケーブル64に対する相対移動は、ケーブル64のブレーキレバー102に対する負の方向への相対移動であると考えて、相対移動量が負の値であると考えれば、ブレーキレバー102がケーブル64に対して相対移動させられる状態においては、相対移動量が0(設定移動量)以下の状態であると考えることができる。この場合には、操作側部材(ブレーキペダル10およびケーブル64)のブレーキ側部材(ブレーキレバー102)に対する相対移動量が設定移動量以下の場合に、補助ブレーキは作動させられることがないが、設定移動量より大きくなると、補助ブレーキが作動させられると考えることができる。
いずれにしても、本実施例においては、連結部100が遅延型連結部に対応する。また、遅延型連結部100,ケーブル64等によりメカ切換型伝達装置が構成される。メカ切換型伝達装置は、異常時伝達部、相対移動量依拠切換伝達部でもある。
【実施例3】
【0037】
遅延型連結部は、図5に示す構造を成したものとすることができる。ブレーキシステムにおいて、他の部分についての構造は、実施例1における場合と同様であるため、説明を省略する。
図5に示すように、ドラムブレーキ16において、遅延型連結部130がブレーキレバー132とケーブル64との間に設けられる。ブレーキレバー132の端部に、貫通穴136が形成されるとともに(例えば、板状部材の折り曲げによって形成することもできる)、その貫通穴136をケーブル64が貫通し、先端に頭部138が設けられる。貫通穴136の内径は、ケーブル64の外径より大きく、かつ、頭部138の外径より小さい。ブレーキレバー132の非作用位置において、ケーブル64の頭部138は、貫通穴136の開口に当接した状態にある。
【0038】
図6(a)に示すように、ブレーキペダル10の踏込み操作が行われると、それに伴ってマスタシリンダ12に液圧が発生させられ、ブレーキシリンダ28に液圧が供給され、主ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられる。ブレーキペダル10の操作ストロークとブレーキシリンダ28の液圧との関係が規定関係にあり、操作ストロークと液圧とが、正常な領域にある場合には、ブレーキレバー102がケーブル64およびブレーキペダル10に対して相対移動させられ、頭部138と、貫通穴136の開口との間に隙間が生じる。その状態において、補助ブレーキが作動させられることはない。
それに対して、図6(b)に示すように、ブレーキ系統90における液漏れ等に起因して、規定関係に対して、操作ストロークがブレーキシリンダ28の液圧に対して大きくなり、操作ストロークと液圧とが、異常な領域にある場合には、ブレーキペダル10およびケーブル64が、ブレーキレバー132に対して相対移動させられ、ケーブル64が引っ張られ、それに起因してブレーキレバー132が回動させられ、補助ブレーキが作動させられる。それによって、ブレーキ系統90の液漏れ等に起因する制動力不足を抑制することができる。
【0039】
なお、実施例2,3において、ブレーキペダル10の操作ストロークとブレーキシリンダ28の液圧との関係が規定関係にある場合に、ケーブル64が引っ張られないようにすれば、すなわち、ドラムブレーキ16,ブレーキペダル10,ケーブル64の配策等を、ブレーキペダル10の操作に伴ってケーブル64に引張力が加えられないように設計することができるのであり、その場合には、連結部100,130は不可欠ではない。
【実施例4】
【0040】
本実施例においては、遅延型連結部が、ブレーキペダル10とドラムブレーキ16とを連結する連結部材の途中に設けられる。ブレーキシステムにおいて、他の部分についての構造は、実施例1における場合と同様であるため、説明を省略する。
遅延型連結部150は、流体シリンダを含むものであり、ケーブル60が接続されたシリンダ本体152と、そのシリンダ本体152に相対移動可能に嵌合されたピストン154とを含む。ピストン154のピストンロッド156は、ブレーキペダル10に連結部77によって連結された連結ロッドである。ケーブル64は、連結部65によってブレーキレバー52に連結される。
本実施例においては、ブレーキペダル10、ピストンロッド156およびピストン154が操作側部材に対応し、シリンダ本体102,ケーブル64およびブレーキレバー52がブレーキ側部材に対応する。また、ピストンロッド156とケーブル64とによって連結部材が構成される。
ブレーキペダル10が非操作状態にあり、ドラムブレーキ16が非作用状態にある場合に、ピストン154がシリンダ本体152の後退端位置にある状態で遅延型連結部150が設けられる。遅延型連結部150は、フローティング式のものであり、シリンダ本体152には流体(エアあるいは、作動液)が収容される。
【0041】
ブレーキペダル10が操作されると、ブレーキシリンダ28にマスタシリンダ12の液圧が供給されて、主ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられる。ブレーキペダル10の操作に伴うピストン154の、ブレーキレバー52の回動に伴うシリンダ本体152に対する相対移動量がシリンダ本体152の容積で決まる設定移動量b以下の範囲においては、ブレーキペダル10の踏込み操作に伴ってケーブル60に引張力が作用することはない。
それに対して、ブレーキ系統90の液漏れ等に起因して、ピストン154のシリンダ本体152に対する相対移動量が設定移動量bに達すると、ピストン154がシリンダ本体152の前進端に当接させられる。それ以降、ブレーキペダル10の操作ストロークの増加に伴って本体152を介してケーブル64に引張力が加えられ、補助ブレーキが作動させられる。ブレーキ系統90の液漏れ等に起因する制動力不足を抑制することができる。
以上のように、本実施例においては、遅延型連結部150、ケーブル64,連結ロッド156等によりメカ切換型伝達装置、相対移動量依拠伝達部等が構成される。
【実施例5】
【0042】
本実施例においては、左右後輪にディスクブレーキ200が設けられる。その場合の一例を図8,9に示す。なお、ブレーキシステムにおいて、他の部分についての構造は、実施例1における場合と同様であるため、説明を省略する。
210は、車輪と共に回転させられるブレーキ回転体としてのディスクロータであり、212,214は、摩擦部材としてのブレーキパッドであり、216がキャリパである。キャリパ216は、非回転体218に軸方向に相対移動可能に保持される。
キャリパ216には、シリンダボア220が形成され、ピストン222が摺動可能に嵌合される。224は液圧室であり、マスタシリンダ12の加圧室21に接続された液通路30が接続される。本実施例においては、シリンダボア220,ピストン222によりブレーキシリンダ225が構成される。
ランプ機構226は、キャリパ本体230と回転駆動部材232との間に支持された複数のボール234と、回転駆動部材232に形成された傾斜溝236とを含む。また、回転駆動部材232には、押圧ロッド238が軸方向の力を伝達可能な状態で係合させられ、押圧ロッド238はナット部材239を介してピストン222に軸方向の力を伝達可能な状態で係合させられる。押圧ロッド238とナット部材239とは螺合させられ、押圧ロッド238の前進に伴ってナット部材239も前進させられる。
回転駆動部材232にはブレーキレバー240が一体的に回転可能に取り付けられ、ブレーキレバー240には、図9に示すように、ケーブル242が相対移動不能な状態で連結される。なお、244は、クリアランス調整機構である。
【0043】
ブレーキペダル10においては、図1に示す実施例1と同様に、遅延型連結部78によってケーブル242が連結される。
【0044】
ブレーキペダル10の操作によりマスタシリンダ12に液圧が発生させられ、ブレーキシリンダ225の液圧室224に供給される。ピストン222が前進させられ、キャリパ216と協働して、一対のブレーキパッド212,214がディスクロータ210に押し付けられて、主ブレーキとしてのディスクブレーキ200が作動させられる。
ブレーキペダル10の操作ストロークが、長穴84の寸法aで決まる設定ストロークより大きくなると、ケーブル242が引っ張られ、ブレーキレバー240が図9の矢印Gの方向に回転させられる。回転駆動部材232が回転させられ、ランプ機構226の作動により、押圧部材238およびナット部材239が前進させられ、ピストン222が前進させられ、補助ブレーキとしてのディスクブレーキ200も作動させられる。
【0045】
本実施例において、主ブレーキと補助ブレーキとで、ブレーキパッド212,214は共通とされているが、ブレーキシリンダ225に液圧が加えられると、ピストン222が押圧ロッド238に対して相対的に前進させられる。換言すれば、ピストン222が前進しても、それに伴って押圧ロッド238が前進させられることはない。そのため、主ブレーキの作動時に、ケーブル242が移動させられることがない。
そのため、遅延型連結部78の長穴84の長手方向の寸法aに対応するストロークが、ブレーキペダル10の設定ストロークに対応し、ブレーキペダル10の操作ストロークが設定ストロークより大きくなると、ケーブル242が引っ張られ、補助ブレーキが作動させられると考えることができる。
また、本実施例において、ピストン222には、液圧室224の液圧と押圧ロッド238によって加えられる押圧力との両方が加えられる。そのため、補助ブレーキの作動により、ディスクロータ210とブレーキパッド212,214との間の押付け力を、その分、大きくすることができ、ブレーキ系統の液漏れ等に起因する制動力不足を抑制することができる。
本実施例においては、ケーブル242,遅延型連結部78等によりメカ切換型伝達装置が構成される。メカ切換型伝達装置は、ストローク依拠切換伝達部、相対移動量依拠切換型伝達部でもある。
なお、本実施例において、ピストン222がブレーキシリンダ225の液圧により前進させられても、押圧ロッド238は前進させられることがないため、ナット部材238とピストン222との間に隙間が生じるのが普通である。そのため、押圧ロッド238の前進により隙間がなくなった後に、補助ブレーキのブレーキ作動力が加えられることになる。
【実施例6】
【0046】
本実施例においては、第1ブレーキ、第2ブレーキが、ドラムインディスクブレーキとされる。その場合の一例を図10に示す。ブレーキシステムにおいて、他の部分についての構造は、実施例1における場合と同様であるため、説明を省略する。
ドラムインディスクブレーキ260は、主ブレーキとしてのディスクブレーキ262と、補助ブレーキとしてのドラムブレーキ264とを含む。
ディスクブレーキ262は、ブレーキディスク266と、ブレーキディスク266の両側に対向して設けられた一対の摩擦部材と、キャリパ268と、キャリパ268に保持されたブレーキシリンダ269とを含み、ブレーキシリンダ269にマスタシリンダ12の加圧室21に接続された液通路30が接続される。
ドラムブレーキ264は、ブレーキシリンダ28が設けられていない点が異なるが、他の部分は実施例1における場合と同様である。
ケーブル64は、上記実施例1における場合と同様に、ブレーキペダル10に連結部78によって連結されるとともに、ブレーキレバー52に連結部65によって連結される。
【0047】
補助ブレーキとしてのドラムブレーキ264と、主ブレーキとしてのディスクブレーキ262とでは、ブレーキ回転体も、摩擦部材も、別個のものとされている。そのため、ディスクブレーキ262の作動により、ブレーキレバー52が回動させられることはない。
ブレーキペダル10の操作により、マスタシリンダ12に液圧が発生させられると、液圧がブレーキシリンダ269に供給され、ディスクブレーキ262が作動させられる。
ブレーキペダル10の操作ストロークが遅延型連結部78の寸法aで決まる設定ストロークより大きくなると、ケーブル64が引っ張られ、補助ブレーキとしてのドラムブレーキ264が作動させられる。
左右後輪には、ディスクブレーキ262によるブレーキ作動力とドラムブレーキ264によるブレーキ作動力との両方が加えられる。ディスクブレーキ262とドラムブレーキ264とを比較すると、ドラムブレーキ264においてはサーボ効果が得られるため、ブレーキペダル10の同じ操作力に対して大きなブレーキ作動力を出力することができる(倍力率を大きくすることができる)。そのため、補助ブレーキを作動させることにより、左右後輪に加えられるブレーキ作動力を大きくすることができ、ブレーキアシストとしての効果を得ることができる。
【0048】
本実施例においては、ケーブル64,連結部78等によりメカ切換型伝達装置が構成される。メカ切換型伝達装置は、ストローク依拠切換伝達部、相対移動量依拠切換伝達部でもある。
【実施例7】
【0049】
実施例7においては、パーキングブレーキが補助ブレーキとして利用される場合に、異常検出が行われる場合について説明する。ブレーキシステムにおいて、他の部分についての構造は、実施例2における場合と同様であるため、説明を省略する。
図11に示すように、ケーブル300は、それの一端部が操作側レバー302に連結部303によって連結され、他端部がブレーキレバー102に実施例2における場合と同様の遅延連結部100によって連結された状態で、配策される。
操作側レバー302は、ケーブル300が連結された側とは反対側の端部において、支持部材310に支持軸312によって、回動可能に保持される。また、中間部には、パーキング操作レバー314がケーブル316,連結部318を介して連結されるとともに、ブレーキペダル10が、連結ロッド320,連結部322を介して連結される。
パーキング操作レバー314には、ケーブル巻取部330と、ロック機構332とが設けられ、ケーブル巻取部330にケーブル316が連結される。パーキング操作レバー314の矢印P方向の回動に伴ってケーブル巻取部330が矢印Q方向に回動させられ、ケーブル316が引っ張られ、操作側レバー302が矢印R方向に回動させられる。ロック機構332は、パーキング操作レバー314の操作位置をロックするものであり、それにより、パーキング操作レバー314に操作力が加えられなくても、ケーブル316の張力が保持される。
また、連結部318は、操作側レバー302に設けられた突部340と、ケーブル316の先端に設けられた保持部342に形成された長穴344とを含み、パーキング操作レバー314の非操作状態において、突部340が長穴344の後退端位置にある状態で取り付けられる。
【0050】
同様に、ブレーキペダル10の連結ロッド320の操作側レバー302に対する連結部322は、操作側レバー302に設けられた突部350と、連結ロッド320に設けられた保持部352に形成された長穴354とを含む。ブレーキペダル10の踏込み操作に伴って連結ロット320が矢印S方向へ移動させられ、操作側レバー302が矢印R方向に回動させられる。ブレーキペダル10は、非操作状態において、連結部322における突部350が長穴354の後退端位置にある状態で、取り付けられる。
連結部318,322においては、パーキング操作レバー314,ブレーキペダル10の互いの相対回動が許容される。
【0051】
ブレーキペダル10が非操作状態にあり、パーキング操作レバー314が操作された場合には、パーキングブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられる。ブレーキペダル10が非操作状態にあるため、連結部100において、突部104と長穴106との間に隙間はない。そのため、速やかにパーキングブレーキとしてのドラムブレーキ16を作動させることができる。
また、連結部322において、突部350が長穴354に対して相対移動させられる。操作側レバー302が連結ロッド320に対して相対回動させられるのであり、パーキング操作レバー314の操作の影響がブレーキペダル10に及ぶことがない。
【0052】
パーキング操作レバー314が非操作状態にあり、ブレーキペダル10が操作されると、操作側レバー302がR方向に回動させられる。連結部318において、突部340が長穴344に沿って相対移動させられる。すなわち、操作側レバー302がケーブル316に対して相対回動させられるのであり、ブレーキペダル10の操作の影響がパーキング操作レバー314に及ぶことはない。
ブレーキ系統90に液漏れ等がない場合には、ブレーキペダル10の操作に伴ってケーブル300が引っ張られることはないが、液漏れ等の異常がある場合には、ケーブル300が引っ張られ、補助ブレーキとしてのドラムブレーキが作動させられる。パーキングブレーキを利用して補助ブレーキが作動させられる。
このように、ケーブル300は、ブレーキペダル10、パーキング操作レバー314の操作によって、それぞれ、引っ張られる。
【0053】
本実施例においては、ケーブル300の張力を検出する張力センサ350が設けられる。また、ブレーキペダル10が操作状態にあるか否かを検出するサービスブレーキスイッチ(SBSW)352,パーキング操作レバー314が操作状態にあるか否かを検出するパーキングブレーキスイッチ(PKBSW)354が設けられ、それぞれ、コンピュータを主体とするブレーキ制御装置356に接続される。ブレーキ制御装置356には、報知装置(ディスプレイ等)358も接続される。
ブレーキ制御装置356の記憶部には、異常検出プログラム等の複数のプログラム、テーブル等が記憶されている。
異常検出プログラムは、ケーブル300の破損の有無等を検出するプログラムであり、ブレーキペダル10の非操作状態、かつ、パーキング操作レバー314の操作状態において検出される。
図12のフローチャートは、異常検出プログラムを表すものである。ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップにおいても同様とする)において、サービスブレーキスイッチ352がOFFであるか否かが検出され、S2において、パーキングブレーキスイッチ354がONであるか否かが検出される。S1,2の判定がいずれもYESである場合には、S3において、張力センサ350の検出値が読み込まれ、S4において、設定値αより大きいか否かが検出される。設定値αより大きい場合には、ケーブル300は正常であると判定される。設定値α以下である場合には、ケーブル300が破損している可能性があるため、S5において、ケーブル300の異常が報知装置358を介して報知される。
【0054】
このように、ケーブル300の異常の有無が、ブレーキペダル10が非操作状態にあり、かつ、パーキング操作レバー314が操作状態にある場合に、検出されるため、緊急時に補助ブレーキが非作動状態となることを良好に回避することができる。
また、ブレーキペダル10の非操作状態において、すなわち、主ブレーキの非作用状態において検出されるため、異常の有無を正確に検出することができる。
なお、本異常検出プログラムは、イニシャルチェック時に実行されるようにしたり、イグニッションスイッチがOFFからONに切り換えられた後に1回だけ実行されるようにしたり、前回異常検出が行われてから設定時間が経過した場合に実行されるようにすることもできる。
【0055】
また、上記各実施例において、主ブレーキは、液圧ブレーキであったが、電動ブレーキでもよい。その場合には、主ブレーキのブレーキ作動力がブレーキペダル10の操作ストロークに基づいて決まる大きさに電気的に制御されるようにすることができる。
さらに、ドラムブレーキ、ディスクブレーキの構造は、上記実施例におけるそれに限定されない。
また、上述の複数の実施例を互いに組み合わせて採用することができる。
例えば、実施例1,2を組み合わせて、ケーブル64とブレーキペダル10,ブレーキレバー52との両方において、それぞれ、相対移動不能に連結することができる。ケーブル64とブレーキペダル10とが、図3に示す連結部110によって連結され、ケーブル64とブレーキレバー52とが、図1に示す連結部65にょって連結される。この場合には、ブレーキペダル10の操作に伴って、主ブレーキと補助ブレーキとのいずれか一方の予め決められた方(ドラムブレーキ16の構造、ブレーキペダル10の構造,マスタシリンダ12の構造等で決まる)が作動させられる。そして、ブレーキ系統90の液漏れ等の場合には、補助ブレーキが作動させられ、ケーブル64の破損時等には、主ブレーキが作動させられる。本実施例においては、ブレーキシステムの異常時に、主ブレーキと補助ブレーキとのいずれか一方が選択的に作動させられる。
【0056】
また、ケーブル64とブレーキペダル10とを連結部78によって連結し、ケーブル64とブレーキレバー52とを連結部100によって連結することもできる。本実施例において、ブレーキ系統90が正常である場合に、ケーブル64が移動させられることがないのであり、ケーブル64に対してブレーキレバー52が相対的に回動させられ、ブレーキペダル10がケーブル64に対して相対的に移動させられる。仮に、ブレーキペダル10の操作ストロークが寸法aで決まる設定ストロークを超えた場合には、ブレーキペダル10の操作ストロークの増加に伴ってケーブル64が移動させられるが、その状態で、ケーブル64に対してブレーキレバー52が相対回転させられるように設計されている場合には、補助ブレーキが作動させられることはない。
そして、ブレーキ系統90が失陥した場合には、ブレーキレバー52のケーブル64に対する相対移動量は非常に小さくなるため、ブレーキペダル10の操作ストロークが寸法aで決まる設定ストロークを超えると、補助ブレーキが作動させられる。
以上、本発明は、前記実施例に記載の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
10:サービスブレーキペダル 14:ディスクブレーキ 16:ドラムブレーキ 24:ブレーキシリンダ 26:ブレーキシリンダ 26:液通路摩擦面 30:液通路 40a,b:ブレーキシュー 52:ブレーキレバー 60:ケーブル 64:インナケーブル 65:連結部 78:遅延型連結部 82:突部 84:長穴 100:遅延型連結部 102;ブレーキレバー 104:突部 106:長穴 130:連結部 136:貫通穴 138:頭部 260:ディスインドラム 262:ディスクブレーキ 264:ドラムブレーキ 266:回転ディスク 268:キャリパ 150:遅延型連結部 152:シリンダ本体 154:ピストン 200:ディスクブレーキ 216:キャリパ 225:ブレーキシリンダ 226:ランプ機構 242:ケーブル 240:ブレーキレバー 300:ケーブル 302:操作側レバー 318,322:連結部 332:ロック機構 350:張力センサ 352:サービスブレーキスイッチ 354:パーキングブレーキスイッチ 356:ブレーキ制御装置 358:報知装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪に設けられ、車輪の回転を抑制するブレーキを含むブレーキシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、(i)(a)サービスブレーキペダルと、(b)サービスブレーキペダルの操作により液圧を発生させるタンデム式のマスタシリンダと、(c)マスタシリンダの液圧が供給されることにより作動させられるブレーキシリンダとを有するサービスブレーキ装置と、(ii)(a)パーキングブレーキレバーと、(b)ケーブルと、(c)ケーブルの引張力により作動させられるパーキングブレーキと、(d)ケーブルの途中に設けられ、パーキングブレーキレバーが操作されなくても、ケーブルに引張力を付与する油圧シリンダとを有するパーキングブレーキ装置とを含むブレーキシステムが記載されている。このブレーキシステムにおいて、サービスブレーキペダルが踏み込まれた状態において、マスタシリンダの2つの加圧室の液圧差が規定値以上で、異常である場合には、電気的な制御により、油圧シリンダが作動させられる。ケーブルが引っ張られて、パーキングブレーキが作動させられる。
特許文献2には、(i)サービスブレーキ操作部材と、(ii)パーキングブレーキ操作部材と、(iii)これらの間に設けられ、ケーブルを有するパーキングブレーキ伝達装置とを含むブレーキシステムが記載されている。このブレーキシステムにおいて、電気系統が正常である場合には、ソレノイドに電流が供給されることにより、サービスブレーキ操作部材とパーキングブレーキ伝達装置とが分離された状態にあるが、電気系統に異常が生じると、ソレノイドに電流が供給されなくなることにより、サービスブレーキ操作部材とパーキングブレーキ伝達装置とが連結される。それにより、サービスブレーキ操作部材の操作に伴ってパーキングブレーキを作動させることができる。その結果、電気系統の異常により、サービスブレーキのブレーキ作動力の電気的な制御が不能であっても、制動力不足を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−213560号公報
【特許文献2】特開平11−334578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ブレーキ操作部材の操作により作動させられる第1ブレーキおよび第2ブレーキを備えたブレーキシステムの改良である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るブレーキシステムは、ブレーキ操作部材に加えられる操作力を第2ブレーキに伝達する伝達状態と、操作力を第2ブレーキに伝達しない非伝達状態とに機械的に切り換わるメカ切換型伝達装置を含む。
本発明に係るブレーキシステムにおいては、操作力を第2ブレーキに伝達する伝達状態と、伝達しない非伝達状態とに機械的に切り換わる。そのため、電気制御によって切り換えられる場合に比較して信頼性を向上させることができるのであり、第1ブレーキ、第2ブレーキを備えたブレーキシステムの改良を図ることができる。
【特許請求可能な発明】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組を、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
(1)ブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材の操作によって作動させられて車輪の回転を抑制する第1ブレーキおよび第2ブレーキと、
前記ブレーキ操作部材の操作力を前記第2ブレーキに伝達する伝達装置と
を含むブレーキシステム。
第1ブレーキと第2ブレーキとは、同じ車輪に設けても、異なる車輪に設けてもよい。
また、第1ブレーキと第2ブレーキとは、それぞれ、サービスブレーキとしたり、パーキングブレーキとしたりすることができるのであり、それぞれの場合において、第1ブレーキを主ブレーキとして、第2ブレーキを補助ブレーキとすることができる。また、第1ブレーキをサービスブレーキとして、第2ブレーキをパーキングブレーキとすることもできる。
同様に、ブレーキ操作部材は、サービスブレーキ操作部材であっても、パーキングブレーキ操作部材であってもよい。
さらに、第1ブレーキと第2ブレーキとは、摩擦ブレーキとすることができ、それぞれ、ディスクブレーキとしたり、ドラムブレーキとしたりすることができ、いずれか一方をディスクブレーキ、他方をドラムブレーキとすることができる。また、第1ブレーキと第2ブレーキとが同じ車輪に設けられる場合には、それぞれの構成要素の一部を共通のものとすることができるが、ドラムインディスクブレーキのように、構成要素を互いに異なるものとすることもできる。
一方、第1ブレーキは、電動モータによって作動させられる電動ブレーキであっても、ブレーキシリンダの液圧、ケーブル等によって作動させられる機械式のブレーキであってもよく、第1ブレーキのブレーキ作動力は、電気的に制御可能であっても、制御不能であってもよい。第1ブレーキとブレーキ操作部材とは、機械的に接続されていても(ケーブル、液通路等による)、分離されていてもよいのである。
伝達装置は、ブレーキ操作部材の操作力を第2ブレーキに伝達するものであり、例えば、ブレーキ操作部材と第2ブレーキとの間に設けることができる。伝達装置は、常時、ブレーキ操作部材の操作力を第2ブレーキに伝達するものであっても、伝達する状態と伝達しない状態とに切り換わるものであってもよい。伝達状態と非伝達状態との切換えは、機械的に行われるものであっても、電気制御により行われるものであってもよい。
例えば、第2ブレーキの押付装置がブレーキレバー(構成要素)を含む場合には、伝達装置は、(x)ブレーキ操作部材とブレーキレバーとの間に設けられたケーブル,連結ロッド等、(y)これらケーブル,連結ロッド等とブレーキ操作部材,ブレーキレバーとを連結する連結部等から構成されると考えることができる。
また、第2ブレーキの押付装置がブレーキシリンダ(構成要素)を含む場合において、ブレーキ操作部材がプッシュロッドを介してマスタシリンダの加圧ピストンに連携させられ、ブレーキシリンダがマスタシリンダの液圧により作動させられる場合には、(i)プッシュロッドと、(ii)マスタシリンダ(加圧ピストン)と、(iii)マスタシリンダ(加圧室)とブレーキシリンダとを接続する液通路等により伝達装置が構成されると考えることができる。
なお、液通路の途中に制御弁装置等を設けることもできる。その場合には、制御弁装置の制御により、非伝達状態と伝達状態とに切り換えられるようにしたり、ブレーキシリンダ液圧が制御されるようにしたりすることができる。
(2)前記伝達装置を、前記ブレーキ操作部材に加えられた操作力を前記第2ブレーキに伝達しない非伝達状態と、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達する伝達状態とに機械的に切り換わるメカ切換型伝達装置とすることができる。
【0008】
(3)前記伝達装置が、前記第2ブレーキと前記ブレーキ操作部材との間に設けられ、前記ブレーキ操作部材を含む操作側部材の、前記第2ブレーキの構成要素を含むブレーキ側部材に対する相対移動量が予め定められた設定移動量以下の範囲で前記非伝達状態にあり、前記相対移動量が前記設定移動量より大きい範囲で前記伝達状態にある相対移動量依拠切換伝達部を含むものとすることができる。
操作側部材は、ブレーキ操作部材およびそれと一体的に移動可能な部材をいうが、ブレーキ操作部材と一体的に移動可能な部材が設けられていない場合には、ブレーキ操作部材をいう。ブレーキ側部材についても同様であり、第2ブレーキの押付装置の構成要素およびそれと一体的に移動可能な部材をいうが、第2ブレーキの押付装置の構成要素をいう場合もある。
具体的に、操作側部材は、(i)ブレーキ操作部材としたり、(ii)(a)ブレーキ操作部材および(b)ブレーキ操作部材の操作に伴って移動可能な部材(原則として、ブレーキ操作部材に、相対移動不能な状態で連結された部材)を含むものとしたりすることができる。部材は、厳密な意味において、相対移動不能に連結された部材に限定されず、多少の相対移動は許容される部材も含まれる。例えば、ブレーキ操作部材に対する相対的な回動(がたつき)等が許容される状態で連結される場合がある。
ブレーキ側部材は、(i)第2ブレーキの押付装置の構成要素としたり、(ii)(a)第2ブレーキの押付装置の構成要素および(b)構成要素の移動に伴って移動ささせられる部材(原則として、構成要素に、相対移動不能な状態で連結された部材)とを含むものとしたりすることができる。ブレーキ側部材についても同様に、部材は、厳密な意味において相対移動不能な部材に限定されない。
そして、操作側部材のブレーキ側部材に対する相対移動量が設定移動量より大きくなると、第2ブレーキが作動させられる。設定移動量は、制動力不足が生じた場合に運転者がブレーキ操作部材を操作する場合の操作ストロークに基づいて決まる大きさとすることができる。設定移動量は、固定値であっても、可変値であってもよく、実施例において説明するように、伝達装置の構造(例えば、連結部の構造)によって決まることもある(固定値)。また、伝達装置が電気制御によって伝達状態と非伝達状態とに切り換わるものである場合には、可変値とすることもでき、例えば、車両の走行状態に基づいて決まる値とすることもできる。
本項に記載のブレーキシステムにおいては、例えば、(1)異常に起因して、第1ブレーキのブレーキ作動力が低下した場合に、第2ブレーキを作動させることができ、制動力不足を抑制することができる。(2)ドラムインディスクブレーキを含むブレーキシステムにおいて、ブレーキシステムが正常であっても、運転者が大きな制動力を要求する場合に、第2ブレーキを作動させることにより、ブレーキアシストを行うことができる。
(4)当該ブレーキシステムが、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが第1設定ストロークより小さい範囲で、前記ブレーキ操作部材の操作力を前記第1ブレーキに伝達せず、前記操作ストロークが第1設定ストロークより大きい範囲で、前記操作力を前記第1ブレーキに伝達する通常伝達装置を含み、
前記設定移動量が、前記第1設定ストロークに対応する相対移動量より大きい第2設定移動量であり、前記伝達装置が、前記相対移動量が前記第2設定移動量以下の範囲で、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達せず、前記相対移動量が前記第2設定移動量より大きい範囲で、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達するものとすることができる。
ブレーキ操作部材とブレーキとの間には、通常、遅れがあり、ブレーキ操作部材の操作に遅れてブレーキが作動させられる。例えば、ケーブルの緩み、加圧ピストンとプッシュロッドとの間の隙間、液通路内の液圧の伝達遅れ等に起因する。
ブレーキ操作部材と第1ブレーキとの間には、この通常の遅れが生じ、ブレーキ操作部材の操作に遅れて第1ブレーキが作動させられるのであり、この遅れに対応するブレーキ操作部材の操作ストロークが第1設定ストロークである。この遅れは、意図しない遅れである。
第1設定ストロークに対応する相対移動量とは、ブレーキ側部材の移動量が0である場合の操作側部材の移動量をいう。通常伝達装置における作動遅れに対応する第1設定ストロークは、第1ブレーキが作動する前のブレーキ操作部材のストロークであるため、ブレーキ側部材が移動していない場合の相対移動量を考えることが妥当であるからである。
そして、ブレーキ操作部材と第2ブレーキとの間の遅れに対応する第2設定移動量は、第1設定ストロークに対応する相対移動量より大きいものであり、意図的に設けられたものである。
【0009】
(5)前記伝達装置は、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが設定ストローク以下の範囲で、前記ブレーキ操作部材に加えられた操作力を前記第2ブレーキに伝達しない非伝達状態にあり、前記操作ストロークが前記設定ストロークより大きい範囲で、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達する伝達状態にあるストローク依拠切換伝達部を含むものとすることができる。
例えば、操作側部材をブレーキ操作部材とし、ブレーキ側部材の移動量が非常に小さい場合には、ブレーキ操作部材の操作ストロークが相対移動量に対応し、設定ストロークが設定移動量に対応すると考えることができる。また、ブレーキ側部材の移動量がほぼ一定である場合(ブレーキ側一定移動量)には、操作ストロークが「相対移動量とブレーキ側一定移動量との和」に対応し、設定ストロークが「設定移動量とブレーキ側一定移動量」との和に対応すると考えることができる。
(6)当該ブレーキシステムが、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが第1設定ストロークより小さい範囲で、前記ブレーキ操作部材の操作力を前記第1ブレーキに伝達せず、前記操作ストロークが第1設定ストロークより大きい範囲で、前記操作力を前記第1ブレーキに伝達する通常伝達装置を含み、
前記設定ストロークが前記第1設定ストロークより大きい第2設定ストロークであり、前記伝達装置が、前記操作ストロークが前記第2設定ストロークより小さい範囲で、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達せず、前記操作ストロークが前記第2設定ストローク以上の範囲で、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達するものとすることができる。
【0010】
(7)前記第1ブレーキと前記第2ブレーキとが、共通の車輪に設けられ、それぞれ、(a)その共通の車輪とともに回転させられるブレーキ回転体と、(b)そのブレーキ回転体に対向する一対の摩擦部材と、(c)それら一対の摩擦部材を前記ブレーキ回転体に押し付ける押付装置とを含む摩擦ブレーキであり、これらブレーキ回転体と一対の摩擦部材とを、第1ブレーキと第2ブレーキとで共通のものとすることができる。
第1ブレーキが、第1ブレーキ回転体、第1摩擦部材、第1押付装置を含み、第2ブレーキが、第2ブレーキ回転体、第2摩擦部材、第2押付装置を含み、第1ブレーキ回転体と第2ブレーキ回転体とが同じものであり、第2摩擦部材と第2摩擦部材とが同じ部材である。そして、共通の摩擦部材あるいはその摩擦部材を保持する部材に、第2ブレーキの押付装置の構成要素が連携させられている場合には、第1ブレーキの作動により、摩擦部材が移動させられると、それによって、第2ブレーキの押付装置の、その構成要素が移動させられる。
例えば、第1ブレーキ、第2ブレーキがドラムブレーキであり、ドラムと、一対のブレーキライニング(ブレーキシュー)とが共通であり、第1ブレーキが第1押付装置の構成要素であるブレーキシリンダあるいは電動モータを備えた駆動装置を含み、第2ブレーキが第2押付装置の構成要素であるブレーキレバーを含み、そのブレーキレバーが、ブレーキシューに回動可能に保持される(ストラットを支点として回動可能とされる)場合には、第1ブレーキの作動により一対のブレーキシューが拡開させられ、ブレーキライニングがドラムの内周面に摩擦係合させられると、それに伴って、第2ブレーキのブレーキレバーも回動させられる。
(8)前記伝達装置が、前記第1ブレーキの作動力と操作ストロークとの間に、予め定められた規定関係が成立する場合に、前記ブレーキ操作部材に加えられる操作力を前記第2ブレーキに伝達しない非伝達状態にあり、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークと前記第1ブレーキの作動力との間の実際の関係が、前記規定関係に比較して、前記操作ストロークが前記第1ブレーキの作動力に対して大きい関係にある場合に、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達する伝達状態にある異常時伝達部を含むものとすることができる。
第2ブレーキの第2押付装置の構成要素が第1ブレーキの作動に伴って移動させられる場合に、その構成要素の移動量は、第1ブレーキの作動力が大きい場合は小さい場合より大きくなると考えられる。
一方、ブレーキ操作部材の操作ストロークと第1ブレーキの作動力との間には、予め定められた規定関係が成立するようにすることができる。例えば、第1ブレーキの作動力が、ブレーキ操作部材の操作ストロークで決まる大きさに電気的に制御される場合、ブレーキ操作部材にマスタシリンダの加圧ピストンが連携させられ、マスタシリンダとブレーキシリンダとが液通路によって接続される場合等が該当する。規定関係は、操作ストロークが大きくなると第1ブレーキの作動力も大きくなる関係、例えば、比例関係とすることができる。
ここで、操作ストロークと第1ブレーキの作動力との間の実際の関係が規定関係に比較して、操作ストロークが第1ブレーキの作動力に対して大きくなる関係となる場合には、例えば、ブレーキ操作部材の操作力を第1ブレーキに伝達する伝達装置の異常(例えば、第1ブレーキがブレーキシリンダを含む場合に、そのブレーキシリンダを含むブレーキ系統に液漏れ等の失陥が生じた場合が該当する)、第1ブレーキの作動力が電気的に制御される場合に、その電気的制御が異常である場合等が該当する。
そこで、本項に記載のブレーキシステムにおいては、伝達装置が、ブレーキ操作部材の操作ストロークと第1ブレーキの作動力との間に規定関係が成立する場合には、ブレーキ操作部材の操作力を第2ブレーキに伝達せず、規定関係に比較して、ブレーキ操作部材の操作ストロークが第1ブレーキの作動力に対して大きくなる関係にある場合に、操作力を第2ブレーキに伝達するものとされる。その結果、第1ブレーキの作動力が低下する異常時の制動力不足を抑制することができる。
なお、操作側部材がブレーキ側部材に対して相対移動させられる場合の相対移動量を正の値とし、ブレーキ側部材が操作側部材に対して相対移動させられる場合の相対移動量を負の値とするとともに、設定移動量を0あるいは正の値とした場合には、操作側部材のブレーキ側部材に対する相対移動量が設定移動量以下である場合が、操作ストロークと第1ブレーキの作動力との関係が規定関係にある場合(正常である場合)に対応し、操作側部材のブレーキ側部材に対する相対移動量が設定移動量より大きい場合が、操作ストロークと第1ブレーキの作動力との関係が規定関係にない場合(異常である場合)に対応すると考えることができる。
(9)前記伝達装置が、前記第1ブレーキの作動力と前記ブレーキ操作部材の操作ストロークとが、予め定められた正常領域にある場合に、前記ブレーキ操作部材に加えられる操作力を前記第2ブレーキに伝達しない非伝達状態にあり、前記第1ブレーキの作動力と前記ブレーキ操作部材の操作ストロークとが、前記正常領域に比較して、前記操作ストロークが前記第1ブレーキの作動力に対して大きい異常領域にある場合に、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達する伝達状態にある異常時伝達部を含むものとすることができる。
正常領域は、規定関係にある操作ストローク、第1ブレーキの作動力を含む領域であり、第1ブレーキの作動力とブレーキ操作部材の操作ストロークとの間に、ほぼ規定関係が成立する領域が該当する。
異常領域は、正常領域とは異なる領域であり、第1ブレーキの作動力とブレーキ操作部材の操作ストロークとの間に、規定関係に比較して、操作ストロークが作動力に対して大きくなる関係が成立する領域が該当する。
【0011】
(10)前記メカ切換型伝達装置は、(a)前記ブレーキ操作部材を含む操作側部材と、(b)前記第2ブレーキの構成要素を含むブレーキ側部材と、(c)これら操作側部材とブレーキ側部材との間に設けられ、前記操作側部材と前記ブレーキ側部材との間の相対移動を許容する非伝達状態と、前記操作側部材と前記ブレーキ側部材との間の相対移動を阻止する伝達状態とに切り換わる遅延型連結部とを含むものとすることができる。
操作側部材とブレーキ側部材との間の相対移動が許容される状態において、ブレーキ操作部材の操作ストロークの増加に伴って第2ブレーキが作動させられることはないが、相対移動が阻止される状態において、ブレーキ操作部材の操作ストロークの増加に伴って第2ブレーキが作動させらる。
非伝達状態において、操作側部材のブレーキ側部材に対する相対移動が許容されるようにしても、ブレーキ側部材の操作側部材に対する相対移動が許容されるようにしてもよい。
(11)前記遅延型連結部は、前記ブレーキ操作部材と前記第2ブレーキとを連結する連結部材と、前記ブレーキ操作部材と前記第2ブレーキとの少なくとも一方との間に設けることができる。
遅延型連結部は、ブレーキ操作部材と連結部材との間に設けても、連結部材と第2ブレーキとの間に設けても、両方に設けてもよい。
ブレーキ操作部材と連結部材とによって操作側部材が構成され、第2ブレーキによってブレーキ側部材が構成されると考えたり、ブレーキ操作部材によって操作側部材が構成され、第2ブレーキと連結部材とによってブレーキ側部材が構成されると考えたりすることができる。
(12)前記操作側部材が、前記ブレーキ操作部材と、前記ブレーキ操作部材と前記第2ブレーキとの間に設けられた連結部材の一部とを含み、前記ブレーキ側部材が、前記第2ブレーキの構成要素と、その構成要素と前記連結部材の残りの部分とを含むものとすることができる。
連結部材の途中に連結部が設けられる。
(13)前記遅延型連結部が、前記操作側部材と前記ブレーキ側部材とのいずれか一方に設けられた突部と、他方に設けられた長穴とを含むものとすることができる。
(14)前記メカ切換型伝達装置が、前記ブレーキ操作部材、前記第2ブレーキおよびこれらの間に設けられた連結部材を含み、少なくとも、前記ブレーキ操作部材、第2ブレーキおよび連結部材を、前記第1ブレーキの作動力と前記操作ストロークとの間に予め定められた規定関係が成立する場合に前記操作力を前記第2ブレーキに伝達せず、前記操作ストロークと前記第1ブレーキの作動力との実際の関係が、前記規定関係に比較して、前記操作ストロークが前記第1ブレーキの作動力に対して大きくなる関係にある場合に、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達する構造を成したものとすることができる。
ケーブルの配策、第2ブレーキの構造(ブレーキレバーの形状、取り付け態様)、ブレーキ操作装置の構造(ブレーキ操作部材の形状、取り付け態様)等が、第1ブレーキの作動力と操作ストロークとが正常領域にある場合に、操作力を第2ブレーキに伝達せず、異常領域にある場合に伝達する構造に設計される。
ブレーキ操作部材の操作に伴って連結部材が移動させられるとともに、第1ブレーキの作動力に応じて第2ブレーキの押付装置の構成要素(連結部材が連結された要素)が移動させられる場合において、第1ブレーキの作動力と操作ストロークとの間の実際の関係が規定関係にある場合(正常である場合)には連結部材に引張力が加えられないが、実際の関係が、規定関係より、操作ストロークが第1ブレーキの作動力に対して大きくなる関係になる(異常である場合)と、引張力が加えられるように設計することができる。
例えば、規定関係にある場合において、連結部材の第1ブレーキの作動力に起因する移動量がブレーキ操作部材の操作ストロークに応じた移動量以上になるようにすることができる。このようにすれば、規定関係にある場合には、連結部材に引張力が加えられず、規定関係より、ブレーキ操作部材の操作ストロークが第1ブレーキの作動力に対して大きくなる関係にある場合において、連結部材に引張力が加えられるようにすることができる。
このように、連結部材、ブレーキ操作部材、第2ブレーキ等を、上述の条件を満たす構造を成したものとした場合には、遅延型連結部は不可欠ではない。
【0012】
(15)前記メカ切換型伝達装置に、前記ブレーキ操作部材である第1ブレーキ操作部材とは別の第2ブレーキ操作部材が連結され、前記第1ブレーキ操作部材の非操作中、かつ、前記第2ブレーキ操作部材の操作中に、前記第2ブレーキと前記メカ切換式伝達装置との少なくとも一方の異常の有無を検出する異常検出装置を設けることができる。
第2ブレーキ操作部材の操作状態においては、第2ブレーキが作動させられるはずである。それに対して、第2ブレーキが非作動状態にある場合、第2ブレーキの作動力が設定値以下である場合、連結部材に加えられる力が設定値以下である場合には、第2ブレーキとメカ切換型伝達装置との少なくとも一方が異常であると考えられる。
また、第1ブレーキの非作用中に検出されるため、第2ブレーキとメカ切換型伝達装置との少なくとも一方の異常の有無を正確に検出することができる。
【0013】
(16)前記第2ブレーキがパーキングブレーキである。
(17)当該ブレーキシステムが、前記ブレーキ操作部材の非操作状態に、前記第2ブレーキの作用力を保持する保持機構が設けられていない。
第2ブレーキがパーキングブレーキでない場合には、保持機構は不要である。この場合には、ブレーキ操作部材の操作が解除されると、第2ブレーキも解除されることになる。
(18)前記メカ切換型伝達装置は、当該ブレーキシステムが正常である場合にも前記非伝達状態から前記伝達状態に切り換わる正常時切換型伝達部を含むものとすることができる。
第2ブレーキは、当該ブレーキシステムが異常である場合に作動させられるものとしたり、当該ブレーキシステムが正常な場合に作動させられるものとしたりすることができる。本項に記載のブレーキシステムにおいては、正常である場合に作動可能なものである。
(19)ブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材の操作によって液圧を発生させるマスタシリンダと、
そのマスタシリンダの加圧室と液通路によって接続されたブレーキシリンダを備えた第1ブレーキと、
一端部が前記ブレーキ操作部材に連結され、他端部がブレーキレバーに連結されたケーブルと、
前記ブレーキレバーの回動によって作動させられる第2ブレーキと
を含むブレーキシステム。
ブレーキ操作部材には、ブレーキシリンダとブレーキレバーとが常に連結されるのであり、ブレーキ操作部材の操作に伴って第1ブレーキも第2ブレーキも作動させられる。
第1ブレーキと第2ブレーキとで摩擦部材が共通とされた場合において、ブレーキシステムが正常である場合には、ブレーキ操作部材の操作に伴って第1ブレーキと第2ブレーキとのうちの予め定められたいずれか一方が作動させられるが、第1ブレーキとブレーキ操作部材との間の伝達装置に異常が生じた場合には、第2ブレーキが作動させられ、第2ブレーキとブレーキ操作部材との間の伝達装置に異常が生じた場合には、第1ブレーキが作動させられる。
第1ブレーキ、第2ブレーキがドラムインディスクブレーキである場合には、車輪には、第1ブレーキと第2ブレーキとのブレーキ作動力の和に応じた制動力が加えられる。この場合には、第1ブレーキの作動力と第2ブレーキの作動力との和が、ブレーキ操作部材の操作ストロークに応じた大きさとなるように設計することもできる。
本項に記載のブレーキシステムには、(1)項ないし(18)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
(20)ブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材に連結され、マスタシリンダの加圧ピストンに連携させられるプッシュロッドと、
前記ブレーキ操作部材に連結され、ブレーキレバーに接続された連結部材と
を含むブレーキ操作装置。
ブレーキレバーは、ドラムブレーキに設けられるブレーキ作動部材であっても、ディスクブレーキに設けられるブレーキ作動部材であってもよい。
連結部材は、ケーブルとしたり、連結ロッドとしたりすることができる。
本項に記載のブレーキ操作装置には、(1)項ないし(18)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
(21)マスタシリンダの加圧ピストンに連携させられるプッシュロッドと、車輪の回転を抑制するブレーキのブレーキレバーに接続された連結部材との両方が連結されたブレーキ操作部材。
本項に記載のブレーキ操作部材には、(1)項ないし(18)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例であるブレーキシステム全体を概念的に示す図である(実施例1)。
【図2】上記ブレーキシステムにおける作動状態を示す図である。
【図3】本発明の別の一実施例であるブレーキシステム全体を概念的に示す図である(実施例2)。
【図4】上記ブレーキシステムの作動状態を示す図である。
【図5】本発明のさらに別の一実施例であるブレーキシステム全体を概念的に示す図である(実施例3)。
【図6】上記ブレーキシステムの作動状態を示す図である。
【図7】本発明の別の一実施例であるブレーキシステム全体を概念的に示す図である(実施例4)。
【図8】本発明のさらに別の一実施例であるブレーキシステム全体を概念的に示す図である(実施例5)。
【図9】上記ブレーキシステムのディスクブレーキの背面図である。
【図10】本発明のさらに別の一実施例であるブレーキシステム全体を概念的に示す図である(実施例6)。
【図11】本発明の別の一実施例であるブレーキシステム全体を概念的に示す図である(実施例7)。
【図12】上記ブレーキシステムのブレーキ制御装置の記憶部に記憶された異常検出プログラムを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態であるブレーキシステムについて、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
実施例1に係るブレーキシステムは、図1に示すように、ブレーキ操作部材としてのサービスブレーキペダル(以下、単にブレーキペダルと略称する)10と、マスタシリンダ12と、左右前輪に設けられたディスクブレーキ14と、左右後輪に設けられたドラムブレーキ16とを含む。
マスタシリンダ12は、2つの加圧ピストン18,19を含むタンデム式のものであり、それぞれの前方に形成された加圧室20,21に、ブレーキペダル10の操作に応じた液圧を発生させる。
<ディスクブレーキ>
左右前輪にそれぞれ設けられたディスクブレーキ14は、それぞれ、(a)前輪と共に回転させられる回転ディスク23と、(b)回転ディスク23の両側に設けられた一対の摩擦部材と、(c)キャリパと、(d)キャリパに保持されたブレーキシリンダ24とを含み、ブレーキシリンダ24の液圧により、キャリパとの協働により、摩擦部材を回転ディスク23に押し付けて摩擦係合させることにより、左右前輪の回転を、それぞれ、抑制するものである。ブレーキシリンダ24には、マスタシリンダ12の加圧室20が液通路26を介して接続される。このように、ディスクブレーキ14は液圧ブレーキであり、サービスブレーキとして作動させられる。
【0017】
<ドラムブレーキ>
左右後輪にそれぞれ設けられたドラムブレーキ16は、ブレーキシリンダ28にマスタシリンダ12の加圧室21の液圧が液通路30を介して供給されることにより作動させられる第1ブレーキであるとともに、ケーブルの引張力によりブレーキレバーが回動させられることにより作動させられる第2ブレーキでもある。
本実施例において、第1ブレーキ、第2ブレーキのいずれもサービスブレーキであるが、第1ブレーキが主ブレーキ、第2ブレーキが補助ブレーキである。
また、第1ブレーキ、第2ブレーキは、いずれも、摩擦ブレーキであり、第1ブレーキが液圧ブレーキであり、第2ブレーキがケーブル式のブレーキである。
【0018】
ドラムブレーキ16は、それぞれ、図示しない車体に取り付けられた非回転体としてのバッキングプレート32と、内周面に摩擦面34を備えて車輪と一体的に回転可能なブレーキ回転体としてのドラム36と、バッキングプレート32に固定されたアンカ部材38と、一対のブレーキシュー40a,bとを含む。
バッキングプレート32の一直径方向に隔たった位置には、アンカ部材38とブレーキシリンダ28とが設けられており、それらアンカ部材38とブレーキシリンダ28との間には、各々円弧状を成す一対のブレーキシュー40a,40bがドラム36の内周面34に対面するように取り付けられている。一対のブレーキシュー40a,40bは、シューホールドダウン装置42a,42bによってバッキングプレート32にそれの面に沿って移動可能に取り付けられている。なお、バッキングプレート32の中央に設けられた貫通穴は、図示しないアクスルシャフトの貫通を許容するためのものである。
一対のブレーキシュー40a,40bは、一端部がブレーキシリンダ28により作動的に連結される一方、各他端部がアンカ部材38と当接して回動可能に支持されるようになっている。一対のブレーキシュー40a,40bの一端部同士は、リターンスプリング44により互いに接近する向きに付勢されている。また、ブレーキシュー40a,40bの間には、ストラット46が設けられる。ストラット46は、ブレーキレバー52にも係合させられる。
ドラムブレーキ16には、それぞれ、オートアジャスタ50が設けられ、ブレーキシュー40a,40bとドラム内周面34との間のクリアランスが自動で調整される。
【0019】
また、ブレーキ作動部材としてのブレーキレバー52が、一端部においてブレーキシュー40aに回動可能に保持され、他端部にブレーキケーブル60のインナケーブル64が、連結部65を介して連結される。連結部65は、インナケーブル64とブレーキレバー52とを連結するものであり、連結部65により、インナケーブル64にB方向の引張力が加えられると、ブレーキレバー52がA方向に回動させられ、ブレーキレバー52がA方向に回動させられると、インナケーブル64はB方向に移動させられる。
【0020】
ブレーキケーブル60は、それぞれ、インナケーブル64と、インナケーブル64を案内する図示しないアウタチューブとを含み、アウタチューブは、両端部において、固定部材に長手方向に移動不能に保持される(ドラムブレーキ側においては、バッキングプレート32に保持される)。インナケーブル64は、それの一端部のアウタチューブから突出した部分において前記ブレーキレバー52に連結されるとともに、他端部のアウタチューブから突出した部分においてブレーキペダル10に連結される。なお、68はイコライザーであり、左右後輪のドラムブレーキ16のブレーキレバー52に等しい引張力が付与される。
以下、本明細書において、ブレーキケーブル60,インナーケーブル64を単にケーブルと称することがある。
【0021】
ドラムブレーキ16において、ブレーキシリンダ28に液圧が供給されると、それによって、一対のブレーキシュー40a,40bが拡開させられ、ブレーキライニング66a,66bがドラム内周面34に押し付けられ、主ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられる。ブレーキライニング66a,66bの押付力は、ブレーキシリンダ28の液圧に応じた大きさとなる。
インナケーブル64が引っ張られると、ブレーキレバー52が回動させられ、ストラット46を介して、一対のブレーキシュー40a,bが拡開させられる。ブレーキライニング66a,66bがドラム内周面34に押し付けられ、補助ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられる。ブレーキライニング66a,66bの押付力は、インナケーブル64の引張力に応じた大きさとなる。
このように、左右後輪に設けられたドラムブレーキ16は、第1ブレーキ(主ブレーキ)と第2ブレーキ(補助ブレーキ)とで共通のものとされる。具体的には、摩擦部材(ブレーキライニング66a,66b、ブレーキシュー40a,b)が主ブレーキと補助ブレーキとで共通とされる。
ブレーキシリンダ28は、主ブレーキの押付装置の構成要素であり、ブレーキレバー52は、補助ブレーキの押付装置の構成要素であり、インナーケーブル64は、ブレーキペダル10とブレーキレバー52(補助ブレーキの押付装置の構成要素)とを連結する連結部材である。本実施例においては、ブレーキレバー52が、共通の摩擦部材であるブレーキシュー40aに回動可能に保持されることになる。
【0022】
<ブレーキ操作部材>
ブレーキペダル10は、一端部において、支持部材70に保持軸72を介して回動可能に保持され、他端部にブレーキパッド74が設けられる。また、中間部には、プッシュロッド76が連結部77を介して連結され、インナケーブル64が連結部78を介して連結される。
連結部77は、ブレーキペダル10の踏込み操作に伴ってプッシュロッド76が前進する状態で連結するものであり、プッシュロッド76は、マスタシリンダ12の加圧ピストン19に連携させられる。
連結部78は、ブレーキペダル10の踏込み操作に伴ってケーブル64が引っ張られる(矢印Cの方向に移動させられる)状態と、ブレーキペダル10が踏み込まれても、ケーブル64が引っ張られない状態とに機械的に切り換え可能な状態で、これらを連結する。連結部78は、ブレーキペダル10の中間部に形成された突部82と、ケーブル64の先端に取り付けられた保持部86に形成された長穴84とを含む。長穴84は、ケーブル64の長手方向、換言すれば、ブレーキペダル10の操作方向であり、ブレーキペダル10の非操作状態において、突部82が長穴84の後退側(非操作側)の端部に位置する状態で取り付けられる。
ブレーキペダル10の踏込み操作に伴って、突部82が長穴84の内部を相対移動させられる間、ケーブル64に引張力が加えられることはない。それに対して、突部82が長穴84の前進側の端部に当接すると、ブレーキペダル10の踏込み操作に伴ってケーブル64が矢印C方向(C方向とB方向とは、ケーブル64の長手方向、すなわち、ケーブル64が引っ張られる方向という意味において同じであると考えることもできる)に移動させられ、引張力が加えられる。
【0023】
また、以下、本明細書において、連結部65,77等(これと類似する連結部)を、2つの部材を相対移動不能に連結するものと表現し、連結部78等(これと類似する連結部)を、2つの部材の相対移動可能に連結するものと表現することがある。連結部65,77は、2つの部材の多少の相対移動が許容される状態で設けられることもあり、厳密な意味において、相対移動不能に連結するとは言い難い場合もあるが、連結部78と比較すれば、相対移動不能な状態で連結するということができる。また、2つの部材の相対移動を許容する意図で設けたものではないからである。
【0024】
<ブレーキシステムにおける作動>
運転者によってブレーキペダル10の踏込み操作が行われると、マスタシリンダ12の加圧室20,21に液圧が発生させられる。加圧室20,21の液圧は、それぞれ、ディスクブレーキ14のブレーキシリンダ24、ドラムブレーキ16のブレーキシリンダ28に供給されて、左右前輪、左右後輪のサービスブレーキ14,16が作動させられ、車輪の回転が抑制される。
本実施例のブレーキシステムの液圧系においては、前後2系統とされており、前輪側のブレーキ系統88,後輪側のブレーキ系統90の各々において、それぞれ別個に、液圧が発生させられ、ブレーキシリンダ24,28に供給される。
ドラムブレーキ16において、ブレーキペダル10のケーブル64に対する相対移動量が設定移動量より小さい範囲では、図2(a)に示すように、突部82は、長穴84に沿って相対移動させられる。そのため、ケーブル64が引っ張られることはなく、補助ブレーキが作動させられることはない。ドラムブレーキ16は主ブレーキとして作動させられる。
ブレーキ系統90に液漏れ等が生じていない場合には、原則として、ブレーキシリンダ28の液圧はブレーキペダル10の操作ストローク(操作力)に応じた高さとなり、それに応じてブレーキレバー52が矢印A方向に回動し、ケーブル64がB方向に移動させられる。そのため、ケーブル64のB方向の移動量は、ブレーキペダル10の操作ストロークに応じた大きさとなる。
この事実から、ブレーキペダル10の操作ストロークとケーブル64のB方向の移動量との関係が所望の関係となるように、ドラムブレーキ16,ブレーキペダル10等を設計することが可能である。そして、これらドラムブレーキ16,ブレーキペダル10,連結部78の設計により、ブレーキ系統90が正常である場合(液漏れ等が生じていない場合)に、ブレーキペダル10のケーブル64に対する相対移動量が、寸法aで決まる設定移動量に達しないようにすることができる。
一方、寸法aを、ブレーキ系統90に液漏れ等が生じていない場合には、運転者によって操作されることがないブレーキペダル10の操作ストロークに応じた大きさとすることもできる。寸法aをそのような大きさに設定した場合には、ブレーキシリンダ28の液圧によるケーブル64のB方向の移動を考慮しなくても、ブレーキ系統90が正常である場合に、ブレーキペダル10のケーブル64に対する相対移動量が設定移動量に達しないようにすることができる。
【0025】
ブレーキ系統90の液漏れ等によりブレーキシリンダ28の液圧が低くなると、ブレーキペダル10の操作ストロークに対してケーブル64の矢印B方向の移動量が小さくなる。そして、ブレーキペダル10のケーブル64に対する相対移動量が設定移動量以上になると、図2(b)に示すように、突部82が長穴84の前進側の端部に当接する。その後、ブレーキペダル10の操作ストロークの増加に伴ってケーブル64が引っ張られ、ブレーキレバー52が回動させられる。ブレーキペダル10に加えられた操作力がケーブル64を介してドラムブレーキ16のブレーキレバー52に伝達されるのであり、それにより、補助ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられる。
【0026】
設定移動量は、後輪側のブレーキ系統90(主ブレーキのブレーキシリンダ28を含む系統)の液漏れ等により、制動力不足を感じた運転者がブレーキペダル10を操作する場合の操作ストロークに基づいて決まる大きさとすることができ、長穴84の長手方向の寸法aに応じた大きさとなる(厳密にいえば、長穴84の長手方向の寸法aから突部82を引いた大きさとなる)。
例えば、ブレーキ系統90の失陥により、ブレーキシリンダ28の液圧が非常に低く、大気圧に近い大きさである場合、すなわち、主ブレーキが非作動状態にあるとみなし得る場合には、ケーブル64のB方向の移動量は0である。ブレーキペダル10のケーブル64に対する相対移動量(ブレーキペダル10の操作ストロークと同じ)が、寸法a(設定移動量)より大きくなると、ケーブル64が引っ張られ、補助ブレーキが作動させられる。
【0027】
それに対して、ブレーキ系統90に液漏れが生じたが、ブレーキシリンダ28の液圧が大気圧より高く(正常時より低いが)、主ブレーキが作動していると考え得る状態にある場合には、主ブレーキとしてのドラムブレーキ16は作動状態にあると考えられる。一対のブレーキシュー40a,bが拡開させられ、ブレーキレバー52が、時計方向(矢印A方向)にわずかに回動させられ、ケーブル64は、B方向にわずかに移動させられる。この場合には、ブレーキペダル10のケーブル64のB方向の移動に対する相対移動量が寸法aより大きくなると、ケーブル64に引張力が加えられる。主ブレーキに代わって補助ブレーキが作動させられる。
【0028】
このように、本実施例においては、ブレーキ系統90の液漏れ等に起因して、ブレーキペダル10のケーブル64に対する相対移動量が設定移動量より大きくなると、補助ブレーキが作動させられる。そのため、主ブレーキのブレーキ作動力が非常に小さくなった場合であっても、補助ブレーキが作動させられるため、制動力不足を良好に抑制することができる。
また、ブレーキペダル10とケーブル64とが連結部78を介して連結されており、電気的な制御によることなく、機械的に、非伝達状態から伝達状態に切り換えられる。そのため、電気的な制御による場合に比較して、ブレーキシステムの信頼性を向上させることができる。
さらに、補助ブレーキが設けられる左右後輪において、主ブレーキのブレーキシリンダ28は、それぞれ、同じブレーキ系統90に属するものであるため、ブレーキ系統90に液漏れ等が生じた場合に、左後輪、右後輪の主ブレーキのブレーキシリンダ28の液圧は、それぞれ、同様に低下する。そして、イコライザー68により、左後輪、右後輪の補助ブレーキのケーブル64には、それぞれ、同じ引張力が付与される。そのため、ブレーキ系統90の液漏れ等に起因する補助ブレーキの作動により、車両にヨーモーメントが生じることがない。
また、補助ブレーキがパーキングブレーキではない場合には、ブレーキペダル10の操作が解除されれば、補助ブレーキの作動力も0となるのであり、作動力を保持する保持機構は不可欠ではない。
【0029】
さらに、ブレーキペダル10の踏込み操作に伴ってマスタシリンダ12に液圧が発生させられ、ブレーキシリンダ28に供給されて主ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられるが、プッシュロッド76と加圧ピストン19との間に図示を省略する隙間が設けられるのが普通である。また、液通路30における液圧の伝達遅れもあり、ブレーキペダル10の操作開始に伴って、直ちに、主ブレーキが作動させられるのではなく、遅れが生じるのが普通である。
一方、補助ブレーキは、前述のように、ブレーキペダル10のケーブル64に対する相対移動量が操作移動量を超えた場合に作動させられるのであり、補助ブレーキも、ブレーキペダル10の操作に遅れて作動させられる。そして、本実施例においては、この補助ブレーキの遅れは、主ブレーキの遅れより大きくされている。
すなわち、主ブレーキにおける遅れに応じたブレーキペダル10のストロークが第1設定ストロークであり、補助ブレーキの遅れに応じたブレーキペダル10の相対移動量である設定移動量(第2設定移動量)は、第1設定ストロークに対応する相対移動量より大きくされている。換言すれば、第1設定ストロークは、複数の部材のメカ的な連結、液圧の伝達等により、やむを得ず生じるものであるが、第2設定移動量は、意図的に設けたものであり、その結果、第2設定移動量が、第1設定ストロークに対応する相対移動量より大きくされるのである。
【0030】
以上のように、本実施例において、ブレーキペダル10等により操作側部材が構成され、ブレーキレバー52,連結部65,ケーブル64等によりブレーキ側部材が構成される。また、プッシュロッド76,液通路30等により通常伝達部が構成され、ケーブル64,連結部78等によりメカ切換型伝達装置、異常時伝達部、相対移動量依拠切換伝達部が構成される。連結部78(相対移動可能な状態で連結する連結部)は遅延型連結部であり、連結部65,77(相対移動不能な状態で連結する連結部)は通常連結部と称することができる。
【0031】
なお、遅延型連結部は、ケーブル64とブレーキレバー52との間に設けることができる。ケーブル64はブレーキペダル10の操作に伴って移動させられるが、ケーブル64のブレーキレバー52に対する相対移動量が設定移動量以下の場合に、ブレーキレバー52が回動させられず、相対移動量が設定移動量より大きくなると、ブレーキレバー52が回動させられ、補助ブレーキが作動させられる。
【実施例2】
【0032】
本実施例においては、遅延型連結部100が、ブレーキレバーとケーブル64との間に設けられる。その場合の一例を図3に示す。ブレーキシステムにおいて、他の部分についての構造は、実施例1における場合と同様であるため、説明を省略する。
遅延型連結部100は、ブレーキレバー102に設けられた突部104と、ケーブル64の先端部に設けられ保持部108に形成された長穴106とを含む。
また、ブレーキペダル10において、ケーブル64が通常連結部110を介して連結される。通常連結部110によって、ブレーキペダル10の踏込み操作に伴って、ケーブル64が矢印C方向に移動する状態で連結される。
【0033】
ブレーキ系統90において液漏れ等が生じていない場合には、ブレーキペダル10の踏込み操作に伴ってマスタシリンダ12に液圧が発生させられる。マスタシリンダ12の液圧はブレーキシリンダ28に供給されて、一対のブレーキシュー40a,bが拡開させられ、主ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられる。
また、一対のブレーキシュー40a,bの拡開により、ブレーキレバー52が回動させられる。ブレーキレバー52の回動量は、ブレーキシリンダ28の液圧が高い場合は低い場合より大きくなり、ブレーキシリンダ28の液圧は、マスタシリンダ12の液圧、すなわち、ブレーキペダル10の操作力、操作ストロークが大きい場合は小さい場合より大きくなる。
一方、ブレーキペダル10の踏込み操作に伴ってケーブル64が矢印C方向に移動させられる。このケーブル64の移動量は、操作ストロークが大きい場合は小さい場合より大きくなる。
さらに、ブレーキ系統90において液漏れ等が生じていない場合、ブレーキペダル10の操作ストローク(ケーブル64の移動量ΔCに対応)とブレーキシリンダ28の液圧(ブレーキレバー102の回動量ΔAに対応)との間には予め定められた規定関係が成立するのが普通である。
以上の事情から、本実施例においては、ブレーキ系統90に液漏れ等が生じておらず、操作ストロークとブレーキシリンダ液圧との関係が規定関係である場合(正常である場合)に、ケーブル64に引張力が加えられないように、ブレーキペダル10,ドラムブレーキ16の構造,ケーブル64の配策、遅延型連結部100等が設計される。
【0034】
例えば、ブレーキペダル10の操作に伴う、ブレーキシリンダ28の液圧に起因するブレーキレバー52の回動量ΔA(本明細書において、矢印B方向の移動量で表されるものとするため、ΔBと表現することもできる)がケーブル64の移動量ΔC以上になるように設計される(ΔA>ΔC)。
図4(a)に示すように、遅延型連結部100において、ブレーキレバー102がケーブル64に対して矢印B(A)の方向に相対的に移動させられ、突部104と長穴106の後退端との間に隙間ができる。この状態において、ブレーキペダル10の操作によってブレーキレバー102が回動させられることはないのであり、補助ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられることはない。操作ストロークとブレーキシリンダ28の液圧との間には、図4(c)の規定関係が成立すると考えられる。操作ストロークとブレーキシリンダ28の液圧とは、正常な領域に属する。
【0035】
また、ブレーキ系統90の液漏れ等が生じると、ブレーキシリンダ28に加えられる液圧が小さくなり、規定関係と比較して、操作ストロークがブレーキシリンダ28の液圧に対して大きくなる関係となる。操作ストロークとブレーキシリンダ28の液圧とが、図4(c)の異常な領域に属する。その結果、図4(b)に示すように、連結部100において、ケーブル64がブレーキレバー102に対して相対移動させられ、突部104と長穴106との間の隙間がなくなり、ブレーキペダル10の操作ストロークの増加に伴ってケーブル64が引っ張られ、補助ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられる。
ブレーキ系統90の液漏れ等が生じた場合には、主ブレーキが作動させられることなく、ブレーキペダル10の操作に伴って補助ブレーキが作動させられる場合や、ブレーキペダル10の操作に伴って主ブレーキが作動した後に、補助ブレーキが、主ブレーキに代わって作動させられる場合等がある。いずれにしても、補助ブレーキの作用状態において、主ブレーキが作用することはない。
このように、本実施例においては、ブレーキ系統90の液漏れ等に起因して、ブレーキシリンダ28の液圧と操作ストロークとの関係が正常でなくなった場合に、補助ブレーキとしてドラムブレーキ16を作動させることができる。その結果、ブレーキ系統90の液漏れ等による制動力不足を抑制することができる。
【0036】
なお、ブレーキペダル10およびケーブル64が操作側部材に対応し、ブレーキレバー102がブレーキ側部材に対応すると考えた場合において、ブレーキレバー102の突部104がケーブル64の長穴106に対して相対移動させられる場合に、補助ブレーキが作動させられることがないが、ケーブル64の長穴106のブレーキレバー102の突部104に対する相対移動量が0(設定移動量)より大きくなった場合に、補助ブレーキが作動させられると考えることができる。ブレーキレバー102のケーブル64に対する相対移動は、ケーブル64のブレーキレバー102に対する負の方向への相対移動であると考えて、相対移動量が負の値であると考えれば、ブレーキレバー102がケーブル64に対して相対移動させられる状態においては、相対移動量が0(設定移動量)以下の状態であると考えることができる。この場合には、操作側部材(ブレーキペダル10およびケーブル64)のブレーキ側部材(ブレーキレバー102)に対する相対移動量が設定移動量以下の場合に、補助ブレーキは作動させられることがないが、設定移動量より大きくなると、補助ブレーキが作動させられると考えることができる。
いずれにしても、本実施例においては、連結部100が遅延型連結部に対応する。また、遅延型連結部100,ケーブル64等によりメカ切換型伝達装置が構成される。メカ切換型伝達装置は、異常時伝達部、相対移動量依拠切換伝達部でもある。
【実施例3】
【0037】
遅延型連結部は、図5に示す構造を成したものとすることができる。ブレーキシステムにおいて、他の部分についての構造は、実施例1における場合と同様であるため、説明を省略する。
図5に示すように、ドラムブレーキ16において、遅延型連結部130がブレーキレバー132とケーブル64との間に設けられる。ブレーキレバー132の端部に、貫通穴136が形成されるとともに(例えば、板状部材の折り曲げによって形成することもできる)、その貫通穴136をケーブル64が貫通し、先端に頭部138が設けられる。貫通穴136の内径は、ケーブル64の外径より大きく、かつ、頭部138の外径より小さい。ブレーキレバー132の非作用位置において、ケーブル64の頭部138は、貫通穴136の開口に当接した状態にある。
【0038】
図6(a)に示すように、ブレーキペダル10の踏込み操作が行われると、それに伴ってマスタシリンダ12に液圧が発生させられ、ブレーキシリンダ28に液圧が供給され、主ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられる。ブレーキペダル10の操作ストロークとブレーキシリンダ28の液圧との関係が規定関係にあり、操作ストロークと液圧とが、正常な領域にある場合には、ブレーキレバー102がケーブル64およびブレーキペダル10に対して相対移動させられ、頭部138と、貫通穴136の開口との間に隙間が生じる。その状態において、補助ブレーキが作動させられることはない。
それに対して、図6(b)に示すように、ブレーキ系統90における液漏れ等に起因して、規定関係に対して、操作ストロークがブレーキシリンダ28の液圧に対して大きくなり、操作ストロークと液圧とが、異常な領域にある場合には、ブレーキペダル10およびケーブル64が、ブレーキレバー132に対して相対移動させられ、ケーブル64が引っ張られ、それに起因してブレーキレバー132が回動させられ、補助ブレーキが作動させられる。それによって、ブレーキ系統90の液漏れ等に起因する制動力不足を抑制することができる。
【0039】
なお、実施例2,3において、ブレーキペダル10の操作ストロークとブレーキシリンダ28の液圧との関係が規定関係にある場合に、ケーブル64が引っ張られないようにすれば、すなわち、ドラムブレーキ16,ブレーキペダル10,ケーブル64の配策等を、ブレーキペダル10の操作に伴ってケーブル64に引張力が加えられないように設計することができるのであり、その場合には、連結部100,130は不可欠ではない。
【実施例4】
【0040】
本実施例においては、遅延型連結部が、ブレーキペダル10とドラムブレーキ16とを連結する連結部材の途中に設けられる。ブレーキシステムにおいて、他の部分についての構造は、実施例1における場合と同様であるため、説明を省略する。
遅延型連結部150は、流体シリンダを含むものであり、ケーブル60が接続されたシリンダ本体152と、そのシリンダ本体152に相対移動可能に嵌合されたピストン154とを含む。ピストン154のピストンロッド156は、ブレーキペダル10に連結部77によって連結された連結ロッドである。ケーブル64は、連結部65によってブレーキレバー52に連結される。
本実施例においては、ブレーキペダル10、ピストンロッド156およびピストン154が操作側部材に対応し、シリンダ本体102,ケーブル64およびブレーキレバー52がブレーキ側部材に対応する。また、ピストンロッド156とケーブル64とによって連結部材が構成される。
ブレーキペダル10が非操作状態にあり、ドラムブレーキ16が非作用状態にある場合に、ピストン154がシリンダ本体152の後退端位置にある状態で遅延型連結部150が設けられる。遅延型連結部150は、フローティング式のものであり、シリンダ本体152には流体(エアあるいは、作動液)が収容される。
【0041】
ブレーキペダル10が操作されると、ブレーキシリンダ28にマスタシリンダ12の液圧が供給されて、主ブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられる。ブレーキペダル10の操作に伴うピストン154の、ブレーキレバー52の回動に伴うシリンダ本体152に対する相対移動量がシリンダ本体152の容積で決まる設定移動量b以下の範囲においては、ブレーキペダル10の踏込み操作に伴ってケーブル60に引張力が作用することはない。
それに対して、ブレーキ系統90の液漏れ等に起因して、ピストン154のシリンダ本体152に対する相対移動量が設定移動量bに達すると、ピストン154がシリンダ本体152の前進端に当接させられる。それ以降、ブレーキペダル10の操作ストロークの増加に伴って本体152を介してケーブル64に引張力が加えられ、補助ブレーキが作動させられる。ブレーキ系統90の液漏れ等に起因する制動力不足を抑制することができる。
以上のように、本実施例においては、遅延型連結部150、ケーブル64,連結ロッド156等によりメカ切換型伝達装置、相対移動量依拠伝達部等が構成される。
【実施例5】
【0042】
本実施例においては、左右後輪にディスクブレーキ200が設けられる。その場合の一例を図8,9に示す。なお、ブレーキシステムにおいて、他の部分についての構造は、実施例1における場合と同様であるため、説明を省略する。
210は、車輪と共に回転させられるブレーキ回転体としてのディスクロータであり、212,214は、摩擦部材としてのブレーキパッドであり、216がキャリパである。キャリパ216は、非回転体218に軸方向に相対移動可能に保持される。
キャリパ216には、シリンダボア220が形成され、ピストン222が摺動可能に嵌合される。224は液圧室であり、マスタシリンダ12の加圧室21に接続された液通路30が接続される。本実施例においては、シリンダボア220,ピストン222によりブレーキシリンダ225が構成される。
ランプ機構226は、キャリパ本体230と回転駆動部材232との間に支持された複数のボール234と、回転駆動部材232に形成された傾斜溝236とを含む。また、回転駆動部材232には、押圧ロッド238が軸方向の力を伝達可能な状態で係合させられ、押圧ロッド238はナット部材239を介してピストン222に軸方向の力を伝達可能な状態で係合させられる。押圧ロッド238とナット部材239とは螺合させられ、押圧ロッド238の前進に伴ってナット部材239も前進させられる。
回転駆動部材232にはブレーキレバー240が一体的に回転可能に取り付けられ、ブレーキレバー240には、図9に示すように、ケーブル242が相対移動不能な状態で連結される。なお、244は、クリアランス調整機構である。
【0043】
ブレーキペダル10においては、図1に示す実施例1と同様に、遅延型連結部78によってケーブル242が連結される。
【0044】
ブレーキペダル10の操作によりマスタシリンダ12に液圧が発生させられ、ブレーキシリンダ225の液圧室224に供給される。ピストン222が前進させられ、キャリパ216と協働して、一対のブレーキパッド212,214がディスクロータ210に押し付けられて、主ブレーキとしてのディスクブレーキ200が作動させられる。
ブレーキペダル10の操作ストロークが、長穴84の寸法aで決まる設定ストロークより大きくなると、ケーブル242が引っ張られ、ブレーキレバー240が図9の矢印Gの方向に回転させられる。回転駆動部材232が回転させられ、ランプ機構226の作動により、押圧部材238およびナット部材239が前進させられ、ピストン222が前進させられ、補助ブレーキとしてのディスクブレーキ200も作動させられる。
【0045】
本実施例において、主ブレーキと補助ブレーキとで、ブレーキパッド212,214は共通とされているが、ブレーキシリンダ225に液圧が加えられると、ピストン222が押圧ロッド238に対して相対的に前進させられる。換言すれば、ピストン222が前進しても、それに伴って押圧ロッド238が前進させられることはない。そのため、主ブレーキの作動時に、ケーブル242が移動させられることがない。
そのため、遅延型連結部78の長穴84の長手方向の寸法aに対応するストロークが、ブレーキペダル10の設定ストロークに対応し、ブレーキペダル10の操作ストロークが設定ストロークより大きくなると、ケーブル242が引っ張られ、補助ブレーキが作動させられると考えることができる。
また、本実施例において、ピストン222には、液圧室224の液圧と押圧ロッド238によって加えられる押圧力との両方が加えられる。そのため、補助ブレーキの作動により、ディスクロータ210とブレーキパッド212,214との間の押付け力を、その分、大きくすることができ、ブレーキ系統の液漏れ等に起因する制動力不足を抑制することができる。
本実施例においては、ケーブル242,遅延型連結部78等によりメカ切換型伝達装置が構成される。メカ切換型伝達装置は、ストローク依拠切換伝達部、相対移動量依拠切換型伝達部でもある。
なお、本実施例において、ピストン222がブレーキシリンダ225の液圧により前進させられても、押圧ロッド238は前進させられることがないため、ナット部材238とピストン222との間に隙間が生じるのが普通である。そのため、押圧ロッド238の前進により隙間がなくなった後に、補助ブレーキのブレーキ作動力が加えられることになる。
【実施例6】
【0046】
本実施例においては、第1ブレーキ、第2ブレーキが、ドラムインディスクブレーキとされる。その場合の一例を図10に示す。ブレーキシステムにおいて、他の部分についての構造は、実施例1における場合と同様であるため、説明を省略する。
ドラムインディスクブレーキ260は、主ブレーキとしてのディスクブレーキ262と、補助ブレーキとしてのドラムブレーキ264とを含む。
ディスクブレーキ262は、ブレーキディスク266と、ブレーキディスク266の両側に対向して設けられた一対の摩擦部材と、キャリパ268と、キャリパ268に保持されたブレーキシリンダ269とを含み、ブレーキシリンダ269にマスタシリンダ12の加圧室21に接続された液通路30が接続される。
ドラムブレーキ264は、ブレーキシリンダ28が設けられていない点が異なるが、他の部分は実施例1における場合と同様である。
ケーブル64は、上記実施例1における場合と同様に、ブレーキペダル10に連結部78によって連結されるとともに、ブレーキレバー52に連結部65によって連結される。
【0047】
補助ブレーキとしてのドラムブレーキ264と、主ブレーキとしてのディスクブレーキ262とでは、ブレーキ回転体も、摩擦部材も、別個のものとされている。そのため、ディスクブレーキ262の作動により、ブレーキレバー52が回動させられることはない。
ブレーキペダル10の操作により、マスタシリンダ12に液圧が発生させられると、液圧がブレーキシリンダ269に供給され、ディスクブレーキ262が作動させられる。
ブレーキペダル10の操作ストロークが遅延型連結部78の寸法aで決まる設定ストロークより大きくなると、ケーブル64が引っ張られ、補助ブレーキとしてのドラムブレーキ264が作動させられる。
左右後輪には、ディスクブレーキ262によるブレーキ作動力とドラムブレーキ264によるブレーキ作動力との両方が加えられる。ディスクブレーキ262とドラムブレーキ264とを比較すると、ドラムブレーキ264においてはサーボ効果が得られるため、ブレーキペダル10の同じ操作力に対して大きなブレーキ作動力を出力することができる(倍力率を大きくすることができる)。そのため、補助ブレーキを作動させることにより、左右後輪に加えられるブレーキ作動力を大きくすることができ、ブレーキアシストとしての効果を得ることができる。
【0048】
本実施例においては、ケーブル64,連結部78等によりメカ切換型伝達装置が構成される。メカ切換型伝達装置は、ストローク依拠切換伝達部、相対移動量依拠切換伝達部でもある。
【実施例7】
【0049】
実施例7においては、パーキングブレーキが補助ブレーキとして利用される場合に、異常検出が行われる場合について説明する。ブレーキシステムにおいて、他の部分についての構造は、実施例2における場合と同様であるため、説明を省略する。
図11に示すように、ケーブル300は、それの一端部が操作側レバー302に連結部303によって連結され、他端部がブレーキレバー102に実施例2における場合と同様の遅延連結部100によって連結された状態で、配策される。
操作側レバー302は、ケーブル300が連結された側とは反対側の端部において、支持部材310に支持軸312によって、回動可能に保持される。また、中間部には、パーキング操作レバー314がケーブル316,連結部318を介して連結されるとともに、ブレーキペダル10が、連結ロッド320,連結部322を介して連結される。
パーキング操作レバー314には、ケーブル巻取部330と、ロック機構332とが設けられ、ケーブル巻取部330にケーブル316が連結される。パーキング操作レバー314の矢印P方向の回動に伴ってケーブル巻取部330が矢印Q方向に回動させられ、ケーブル316が引っ張られ、操作側レバー302が矢印R方向に回動させられる。ロック機構332は、パーキング操作レバー314の操作位置をロックするものであり、それにより、パーキング操作レバー314に操作力が加えられなくても、ケーブル316の張力が保持される。
また、連結部318は、操作側レバー302に設けられた突部340と、ケーブル316の先端に設けられた保持部342に形成された長穴344とを含み、パーキング操作レバー314の非操作状態において、突部340が長穴344の後退端位置にある状態で取り付けられる。
【0050】
同様に、ブレーキペダル10の連結ロッド320の操作側レバー302に対する連結部322は、操作側レバー302に設けられた突部350と、連結ロッド320に設けられた保持部352に形成された長穴354とを含む。ブレーキペダル10の踏込み操作に伴って連結ロット320が矢印S方向へ移動させられ、操作側レバー302が矢印R方向に回動させられる。ブレーキペダル10は、非操作状態において、連結部322における突部350が長穴354の後退端位置にある状態で、取り付けられる。
連結部318,322においては、パーキング操作レバー314,ブレーキペダル10の互いの相対回動が許容される。
【0051】
ブレーキペダル10が非操作状態にあり、パーキング操作レバー314が操作された場合には、パーキングブレーキとしてのドラムブレーキ16が作動させられる。ブレーキペダル10が非操作状態にあるため、連結部100において、突部104と長穴106との間に隙間はない。そのため、速やかにパーキングブレーキとしてのドラムブレーキ16を作動させることができる。
また、連結部322において、突部350が長穴354に対して相対移動させられる。操作側レバー302が連結ロッド320に対して相対回動させられるのであり、パーキング操作レバー314の操作の影響がブレーキペダル10に及ぶことがない。
【0052】
パーキング操作レバー314が非操作状態にあり、ブレーキペダル10が操作されると、操作側レバー302がR方向に回動させられる。連結部318において、突部340が長穴344に沿って相対移動させられる。すなわち、操作側レバー302がケーブル316に対して相対回動させられるのであり、ブレーキペダル10の操作の影響がパーキング操作レバー314に及ぶことはない。
ブレーキ系統90に液漏れ等がない場合には、ブレーキペダル10の操作に伴ってケーブル300が引っ張られることはないが、液漏れ等の異常がある場合には、ケーブル300が引っ張られ、補助ブレーキとしてのドラムブレーキが作動させられる。パーキングブレーキを利用して補助ブレーキが作動させられる。
このように、ケーブル300は、ブレーキペダル10、パーキング操作レバー314の操作によって、それぞれ、引っ張られる。
【0053】
本実施例においては、ケーブル300の張力を検出する張力センサ350が設けられる。また、ブレーキペダル10が操作状態にあるか否かを検出するサービスブレーキスイッチ(SBSW)352,パーキング操作レバー314が操作状態にあるか否かを検出するパーキングブレーキスイッチ(PKBSW)354が設けられ、それぞれ、コンピュータを主体とするブレーキ制御装置356に接続される。ブレーキ制御装置356には、報知装置(ディスプレイ等)358も接続される。
ブレーキ制御装置356の記憶部には、異常検出プログラム等の複数のプログラム、テーブル等が記憶されている。
異常検出プログラムは、ケーブル300の破損の有無等を検出するプログラムであり、ブレーキペダル10の非操作状態、かつ、パーキング操作レバー314の操作状態において検出される。
図12のフローチャートは、異常検出プログラムを表すものである。ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップにおいても同様とする)において、サービスブレーキスイッチ352がOFFであるか否かが検出され、S2において、パーキングブレーキスイッチ354がONであるか否かが検出される。S1,2の判定がいずれもYESである場合には、S3において、張力センサ350の検出値が読み込まれ、S4において、設定値αより大きいか否かが検出される。設定値αより大きい場合には、ケーブル300は正常であると判定される。設定値α以下である場合には、ケーブル300が破損している可能性があるため、S5において、ケーブル300の異常が報知装置358を介して報知される。
【0054】
このように、ケーブル300の異常の有無が、ブレーキペダル10が非操作状態にあり、かつ、パーキング操作レバー314が操作状態にある場合に、検出されるため、緊急時に補助ブレーキが非作動状態となることを良好に回避することができる。
また、ブレーキペダル10の非操作状態において、すなわち、主ブレーキの非作用状態において検出されるため、異常の有無を正確に検出することができる。
なお、本異常検出プログラムは、イニシャルチェック時に実行されるようにしたり、イグニッションスイッチがOFFからONに切り換えられた後に1回だけ実行されるようにしたり、前回異常検出が行われてから設定時間が経過した場合に実行されるようにすることもできる。
【0055】
また、上記各実施例において、主ブレーキは、液圧ブレーキであったが、電動ブレーキでもよい。その場合には、主ブレーキのブレーキ作動力がブレーキペダル10の操作ストロークに基づいて決まる大きさに電気的に制御されるようにすることができる。
さらに、ドラムブレーキ、ディスクブレーキの構造は、上記実施例におけるそれに限定されない。
また、上述の複数の実施例を互いに組み合わせて採用することができる。
例えば、実施例1,2を組み合わせて、ケーブル64とブレーキペダル10,ブレーキレバー52との両方において、それぞれ、相対移動不能に連結することができる。ケーブル64とブレーキペダル10とが、図3に示す連結部110によって連結され、ケーブル64とブレーキレバー52とが、図1に示す連結部65にょって連結される。この場合には、ブレーキペダル10の操作に伴って、主ブレーキと補助ブレーキとのいずれか一方の予め決められた方(ドラムブレーキ16の構造、ブレーキペダル10の構造,マスタシリンダ12の構造等で決まる)が作動させられる。そして、ブレーキ系統90の液漏れ等の場合には、補助ブレーキが作動させられ、ケーブル64の破損時等には、主ブレーキが作動させられる。本実施例においては、ブレーキシステムの異常時に、主ブレーキと補助ブレーキとのいずれか一方が選択的に作動させられる。
【0056】
また、ケーブル64とブレーキペダル10とを連結部78によって連結し、ケーブル64とブレーキレバー52とを連結部100によって連結することもできる。本実施例において、ブレーキ系統90が正常である場合に、ケーブル64が移動させられることがないのであり、ケーブル64に対してブレーキレバー52が相対的に回動させられ、ブレーキペダル10がケーブル64に対して相対的に移動させられる。仮に、ブレーキペダル10の操作ストロークが寸法aで決まる設定ストロークを超えた場合には、ブレーキペダル10の操作ストロークの増加に伴ってケーブル64が移動させられるが、その状態で、ケーブル64に対してブレーキレバー52が相対回転させられるように設計されている場合には、補助ブレーキが作動させられることはない。
そして、ブレーキ系統90が失陥した場合には、ブレーキレバー52のケーブル64に対する相対移動量は非常に小さくなるため、ブレーキペダル10の操作ストロークが寸法aで決まる設定ストロークを超えると、補助ブレーキが作動させられる。
以上、本発明は、前記実施例に記載の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
10:サービスブレーキペダル 14:ディスクブレーキ 16:ドラムブレーキ 24:ブレーキシリンダ 26:ブレーキシリンダ 26:液通路摩擦面 30:液通路 40a,b:ブレーキシュー 52:ブレーキレバー 60:ケーブル 64:インナケーブル 65:連結部 78:遅延型連結部 82:突部 84:長穴 100:遅延型連結部 102;ブレーキレバー 104:突部 106:長穴 130:連結部 136:貫通穴 138:頭部 260:ディスインドラム 262:ディスクブレーキ 264:ドラムブレーキ 266:回転ディスク 268:キャリパ 150:遅延型連結部 152:シリンダ本体 154:ピストン 200:ディスクブレーキ 216:キャリパ 225:ブレーキシリンダ 226:ランプ機構 242:ケーブル 240:ブレーキレバー 300:ケーブル 302:操作側レバー 318,322:連結部 332:ロック機構 350:張力センサ 352:サービスブレーキスイッチ 354:パーキングブレーキスイッチ 356:ブレーキ制御装置 358:報知装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材の操作によって作動させられて車輪の回転を抑制する第1ブレーキおよび第2ブレーキと、
前記ブレーキ操作部材に加えられる操作力を前記第2ブレーキに伝達しない非伝達状態と、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達する伝達状態とに機械的に切り換わるメカ切換型伝達装置と
を含むことを特徴とするブレーキシステム。
【請求項2】
前記メカ切換型伝達装置が、前記第2ブレーキと前記ブレーキ操作部材との間に設けられ、前記ブレーキ操作部材を含む操作側部材の、前記第2ブレーキの構成要素を含むブレーキ側部材に対する相対移動量が予め定められた設定移動量以下の範囲で前記非伝達状態にあり、前記相対移動量が前記設定移動量より大きい範囲で前記伝達状態にある相対移動量依拠切換伝達部を含む請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
当該ブレーキシステムが、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが第1設定ストロークより小さい範囲で、前記ブレーキ操作部材の操作力を前記第1ブレーキに伝達せず、前記操作ストロークが第1設定ストロークより大きい範囲で、前記操作力を前記第1ブレーキに伝達する通常伝達装置を含み、
前記設定移動量が、前記第1設定ストロークに対応する相対移動量より大きい第2設定移動量であり、前記相対移動量依拠切換伝達部が、前記相対移動量が前記第2設定移動量以下の範囲で前記操作力を前記第2ブレーキに伝達せず、前記相対移動量が前記第2設定移動量より大きい範囲で前記操作力を前記第2ブレーキに伝達するものである請求項2に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記メカ切換型伝達装置が、(a)前記ブレーキ操作部材を含む操作側部材と、(b)前記第2ブレーキの構成要素を含むブレーキ側部材と、(c)これら操作側部材とブレーキ側部材との間に設けられ、前記操作側部材と前記ブレーキ側部材との間の相対移動を許容する非伝達状態と、前記操作側部材と前記ブレーキ側部材との間の相対移動を阻止する伝達状態とに切り換わる遅延型連結部とを含む請求項1ないし3のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記遅延型連結部が、前記操作側部材と前記ブレーキ側部材とのいずれか一方に設けられた突部と、他方に設けられた長穴とを含む請求項4に記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記メカ切換型伝達装置が、前記第2ブレーキと前記ブレーキ操作部材との間に設けられ、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが設定ストローク以下の範囲で前記非伝達状態にあり、前記操作ストロークが前記設定ストロークより大きい範囲で前記伝達状態にあるストローク依拠切換伝達部を含む請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項7】
前記第1ブレーキと前記第2ブレーキとの両方が、共通の車輪に設けられ、(a)その共通の車輪とともに回転させられるブレーキ回転体と、(b)そのブレーキ回転体に対向して設けられた一対の摩擦部材と、(c)その一対の摩擦部材を前記ブレーキ回転体に押し付ける押付装置とを含む摩擦ブレーキであり、これらブレーキ回転体と一対の摩擦部材とが共通とされ、前記メカ切換型伝達装置が、前記第1ブレーキの作動力と操作ストロークとの間に予め定められた規定関係が成立する場合に、前記ブレーキ操作部材に加えられる操作力を前記第2ブレーキに伝達しない非伝達状態にあり、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークと前記第1ブレーキの作動力との間の実際の関係が、前記規定関係に比較して、前記操作ストロークが前記第1ブレーキの作動力に対して大きい関係にある場合に、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達する伝達状態にある異常時伝達部を含む請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項8】
当該ブレーキシステムが、前記ブレーキ操作部材である第1ブレーキ操作部材とは別の、前記メカ切換型伝達装置に連結された第2ブレーキ操作部材を含み、前記第1ブレーキ操作部材の非操作中、かつ、前記第2ブレーキ操作部材の操作中に、前記第2ブレーキと前記メカ切換型伝達装置との少なくとも一方の異常の有無を検出する異常検出装置を含む請求項1ないし7のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項1】
ブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材の操作によって作動させられて車輪の回転を抑制する第1ブレーキおよび第2ブレーキと、
前記ブレーキ操作部材に加えられる操作力を前記第2ブレーキに伝達しない非伝達状態と、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達する伝達状態とに機械的に切り換わるメカ切換型伝達装置と
を含むことを特徴とするブレーキシステム。
【請求項2】
前記メカ切換型伝達装置が、前記第2ブレーキと前記ブレーキ操作部材との間に設けられ、前記ブレーキ操作部材を含む操作側部材の、前記第2ブレーキの構成要素を含むブレーキ側部材に対する相対移動量が予め定められた設定移動量以下の範囲で前記非伝達状態にあり、前記相対移動量が前記設定移動量より大きい範囲で前記伝達状態にある相対移動量依拠切換伝達部を含む請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
当該ブレーキシステムが、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが第1設定ストロークより小さい範囲で、前記ブレーキ操作部材の操作力を前記第1ブレーキに伝達せず、前記操作ストロークが第1設定ストロークより大きい範囲で、前記操作力を前記第1ブレーキに伝達する通常伝達装置を含み、
前記設定移動量が、前記第1設定ストロークに対応する相対移動量より大きい第2設定移動量であり、前記相対移動量依拠切換伝達部が、前記相対移動量が前記第2設定移動量以下の範囲で前記操作力を前記第2ブレーキに伝達せず、前記相対移動量が前記第2設定移動量より大きい範囲で前記操作力を前記第2ブレーキに伝達するものである請求項2に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記メカ切換型伝達装置が、(a)前記ブレーキ操作部材を含む操作側部材と、(b)前記第2ブレーキの構成要素を含むブレーキ側部材と、(c)これら操作側部材とブレーキ側部材との間に設けられ、前記操作側部材と前記ブレーキ側部材との間の相対移動を許容する非伝達状態と、前記操作側部材と前記ブレーキ側部材との間の相対移動を阻止する伝達状態とに切り換わる遅延型連結部とを含む請求項1ないし3のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記遅延型連結部が、前記操作側部材と前記ブレーキ側部材とのいずれか一方に設けられた突部と、他方に設けられた長穴とを含む請求項4に記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記メカ切換型伝達装置が、前記第2ブレーキと前記ブレーキ操作部材との間に設けられ、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが設定ストローク以下の範囲で前記非伝達状態にあり、前記操作ストロークが前記設定ストロークより大きい範囲で前記伝達状態にあるストローク依拠切換伝達部を含む請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項7】
前記第1ブレーキと前記第2ブレーキとの両方が、共通の車輪に設けられ、(a)その共通の車輪とともに回転させられるブレーキ回転体と、(b)そのブレーキ回転体に対向して設けられた一対の摩擦部材と、(c)その一対の摩擦部材を前記ブレーキ回転体に押し付ける押付装置とを含む摩擦ブレーキであり、これらブレーキ回転体と一対の摩擦部材とが共通とされ、前記メカ切換型伝達装置が、前記第1ブレーキの作動力と操作ストロークとの間に予め定められた規定関係が成立する場合に、前記ブレーキ操作部材に加えられる操作力を前記第2ブレーキに伝達しない非伝達状態にあり、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークと前記第1ブレーキの作動力との間の実際の関係が、前記規定関係に比較して、前記操作ストロークが前記第1ブレーキの作動力に対して大きい関係にある場合に、前記操作力を前記第2ブレーキに伝達する伝達状態にある異常時伝達部を含む請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項8】
当該ブレーキシステムが、前記ブレーキ操作部材である第1ブレーキ操作部材とは別の、前記メカ切換型伝達装置に連結された第2ブレーキ操作部材を含み、前記第1ブレーキ操作部材の非操作中、かつ、前記第2ブレーキ操作部材の操作中に、前記第2ブレーキと前記メカ切換型伝達装置との少なくとも一方の異常の有無を検出する異常検出装置を含む請求項1ないし7のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−6440(P2012−6440A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142655(P2010−142655)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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