説明

ブレーキシュー支持アセンブリ及び方法

ブレーキシュー支持アセンブリは、車輪、通常は車輪の横移動を可能にする単軸台車上の車輪の横移動に追従することができる。動作時において、車輪のフランジはブレーキシュー支持アセンブリの一方の側面を押し、該側面をピンに沿って押すことによって弾性付勢構造体を圧縮する。車輪が中心位置又は中立位置へ戻ると、圧縮されていた弾性付勢構造体が拡張してブレーキシュー支持アセンブリを元の位置又は中立位置へ押し戻す。弾性付勢構造体はまた、通常のブレーキ負荷下でのブレーキシュー支持アセンブリの、車輪踏面に対する横移動を最小限に抑えることで、シューが外れることを防止する。弾性付勢構造体は、汚染物質の侵入を防止するように構成されたハウジング内に包囲することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用のブレーキシュー支持体に関し、より詳細には、鉄道車両の台車枠上での車輪の横移動に追従するように、関連するブレーキシューが或る程度の横移動を行うことを可能にするブレーキシュー支持体に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、鉄道車両ブレーキシステム、及び鉄道車両ブレーキシステムにおいて用いられるように構成されるブレーキハンガーにそれぞれ関するBogenshutzによる米国特許第4,406,444号及びEngleによる同第3,696,892号を参照により援用する。
【背景技術】
【0003】
例えば鉄道車両が線路の曲線区間において走行しているときに、鉄道台車が台車車輪に対して幾分周期的に横移動することが既知である。或る特定の先行特許では、ブレーキハンガーであって、ブレーキ中において、該ハンガーが回動可能に固定されている台車枠に対してブレーキシューの制限された横移動を可能にするように屈曲する、ブレーキハンガーが開示されている。そのような屈曲可能なブレーキハンガーは、例えばHokeによる特許文献1に開示されている。この特許によるブレーキハンガーは、閉リンク又は開リンクの形状の棒材で形成され、ブレーキハンガーの横方向に離間した側面は、車輪に対する台車枠の横移動に応じてより容易に屈曲するように、実質的に平坦となるように鍛造されている。そのような繰り返しの屈曲は、ブレーキハンガーの側面を結晶化(crystalize)させる傾向があり、ブレーキ装置(brake rigging)を破損させると共に鉄道線路上の車輪前方に落下させ、場合によっては脱線を引き起こすことによる、安全上の問題を引き起こす。これらの欠点は、Schaeferによる特許文献2において論じられている。該特許は、ブレーキハンガーの上端及び下端にボールジョイント接続部を必要とする関節式ブレーキハンガーの形態の改善された構造を提供しており、ブレーキハンガーの実質的に剛性である横方向に離間したサイドアームの屈曲を防止している。しかしながら、これらのボールジョイント接続部は追加の保守を必要とすると共に、それ自体、ジョイントが凍結したとき等に破損の原因となる可能性がある。
【0004】
全てがStjaerneによるものである特許文献3、特許文献4及び特許文献5では、左部支持ワッシャ、ブッシュ及び右部支持ワッシャからなる枢支部を有するブレーキハンガーが開示されている。この枢支部により、2つの依存するハンガーが、車輪踏面にブレーキブロックを当てる方向及び車輪の横方向への動きに従う方向に自在に回転又は揺動及び旋回可能にされる。
【0005】
Stjaerne他による特許文献6は、軸方向に移動可能な車輪と係合するブレーキブロックホルダーを開示している。このブレーキブロックホルダーは、それぞれが板バネの積層体からなる一対のピボットハンガーにより、ブレーキ中にブレーキ作動装置に対して横移動することが可能である。
【0006】
Bogenschutzによる特許文献7は、上側突起、下側突起及び中間の板バネ構造を備えたブレーキハンガーを開示している。板バネは、弾性材料の棒によって横方向に接続されており、それにより、下側突起を上側突起に対して横移動させている。
【0007】
Roush, Jrによる特許文献8は、弾性的に降伏可能な安定化手段を有するブレーキ装置を含む多軸鉄道車両台車を開示している。安定化手段は、それぞれの車軸が十分に横移動し、各ブレーキシューがそれぞれの車輪フランジに接触した場合、ブレーキシューがいずれも外方へ撓むことを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第1,166,521号
【特許文献2】米国特許第1,509,907号
【特許文献3】米国特許第5,277,280号
【特許文献4】米国特許第5,242,037号
【特許文献5】米国特許第5,240,091号
【特許文献6】米国特許第4,630,714号
【特許文献7】米国特許第4,406,444号
【特許文献8】米国特許第3,643,766号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ブレーキハンガーは、台車枠に対するブレーキシューの制限された横移動をブレーキ中に可能にすることが知られているが、ブレーキハンガーの分野においては、ブレーキシューのより大きい横移動に対応するように横方向に可撓性であるという改良が依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
概して、本明細書に記載されるように、本発明の実施の形態によるブレーキシュー支持アセンブリは、車輪、通常は車輪の横移動を可能にする単軸台車上の車輪の横移動に追従することができる。動作時において、車輪のフランジはブレーキシュー支持アセンブリの一方の側面を押し、該側面をピンに沿って押すことによって弾性付勢構造体を圧縮する。車輪が中心位置又は中立位置へ戻ると、圧縮されていた弾性付勢構造体が拡張してブレーキシュー支持アセンブリを元の位置へ押し戻す。弾性付勢構造体はまた、通常のブレーキ負荷下において車輪踏面に対するブレーキシュー支持アセンブリの横移動を最小限に抑え、それにより、シューが外れること(ride-off)を防止する。弾性付勢構造体は、汚染物質の侵入を防止するように構成されたハウジング内に包囲することができる。
【0011】
概して、一実施の形態では、ブレーキシュー支持アセンブリは、取り付けブラケット、ハンガー本体、ブレーキシューホルダー及び弾性付勢構造体を備える。取り付けブラケットは、ブレーキ作動装置に取り付けられるように構成することができる。ハンガー本体は、取り付けブラケットに回動可能に接続されており、収容ポケットを間に画定する対向する側面を含む。ブレーキシューホルダーは、対向する側面間に延びると共に該ブレーキシューホルダーの一部を通って延びる回動ピンによって、対向する側面に回動可能に接続されている。ブレーキシューホルダーは、収容ポケットにおけるブレーキシューホルダーと対向する側面の一方との間に間隔が存在するように回動ピンに配置されている。弾性付勢構造体は、回動ピンと関連すると共に、ブレーキシューホルダーと対向する側面の一方との間に画定されている間隔に配置されている。弾性付勢構造体は、線路の曲線区間において鉄道車両車輪に対するブレーキ動作を行った後でブレーキシューホルダーを中立位置に戻すように動作可能であり、車輪によって圧縮される。
【0012】
一実施の形態では、弾性付勢構造体は、回動ピンに配置される複数のスプリングワッシャを含むことができる。弾性付勢構造体は筐体(enclosure)に収納されることができる。筐体は、ブレーキシューホルダーと対向する側面の一方との間に画定される間隔に配置されており、回動ピンの少なくとも一部を包囲する。筐体は、重なり合う2部品の筐体のような多部品筐体とすることができる。
【0013】
1つの適用例(application)では、ブレーキシュー支持アセンブリは、鉄道車両ブレーキシステムの一部とすることができる。そのような適用例では、鉄道車両ブレーキシステムは、鉄道車両ブレーキ作動装置及びブレーキシュー支持アセンブリを備える。ブレーキシュー支持アセンブリは概して、取り付けブラケットと、ハンガー本体と、ブレーキシューホルダーと、弾性付勢構造体とを備える。取り付けブラケットは、ブレーキ作動装置に取り付けられる。ハンガー本体は、取り付けブラケットに回動可能に接続されると共に、収容ポケットを間に画定する対向する側面を含む。ブレーキシューホルダーは、対向する側面間に延びると共に該ブレーキシューホルダーの一部を通って延びる回動ピンによって、対向する側面に回動可能に接続される。ブレーキシューホルダーは、収容ポケットにおけるブレーキシューホルダーと対向する側面の一方との間に間隔が存在するように回動ピンに配置される。弾性付勢構造体は、回動ピンと関連すると共に、ブレーキシューホルダーと対向する側面の一方との間に画定された間隔に配置される。弾性付勢構造体は、線路の曲線区間において鉄道車両車輪に対するブレーキ動作を行った後でブレーキシューホルダーを中立位置に戻すように動作可能であり、車輪によって圧縮される。
【0014】
一実施の形態では、弾性付勢構造体は、回動ピンに配置されている複数のスプリングワッシャを含むことができる。弾性付勢構造体は筐体に収納されることができる。筐体は、ブレーキシューホルダーと対向する側面の一方との間に画定される間隔に配置されており、回動ピンの少なくとも一部を包囲する。筐体は、重なり合う2部品の筐体のような多部品筐体とすることができる。
【0015】
別の実施の形態では、ブレーキシュー支持アセンブリを組み立てる方法が提供される。本方法は概して、取り付けブラケットを準備すること、ハンガー本体を取り付けブラケットへ回動可能に接続すること、ブレーキシューホルダーをハンガー本体へ回動可能に接続すること、及び弾性付勢構造体とブレーキシューホルダーとを関連付けることを含む。ハンガー本体は、収容ポケットを間に画定する対向する側面を含む。ブレーキシューホルダーは、対向するアーム間に延びると共に該ブレーキシューホルダーの一部を通って延びる回動ピンによって、対向する側面に回動可能に接続される。ブレーキシューホルダーは、収容ポケットにおける該ブレーキシューホルダーと対向する側面の一方との間に間隔が存在するように回動ピンに配置される。弾性付勢構造体は、ブレーキシューホルダーと対向する側面の一方との間に画定される間隔に配置されるように、回動ピンと関連付けられる。弾性付勢構造体は、線路の曲線区間における鉄道車両車輪に対するブレーキ動作を行った後でブレーキシューホルダーを中立位置に戻すように動作可能であり、車輪の作用によって圧縮される。
【0016】
弾性付勢構造体は、回動ピンに配置される複数のスプリングワッシャを含むことができる。本方法は、弾性付勢構造体を保護筐体内に包囲するステップをさらに含むことができる。筐体は、ブレーキシューホルダーと対向する側面の一方との間に画定される間隔に配置することができ、回動リングの少なくとも一部を包囲する。筐体は、重なり合う2部品の筐体のような多部品筐体とすることができる。
【0017】
本方法は、取り付けブラケットをブレーキ作動装置に取り付けること、及びブレーキ作動装置とハンガー本体とを動作可能に関連付け、ブレーキシューホルダーを動作させることを含むことができる。
【0018】
さらなる詳細及び利点は、添付の図面と共に以下の詳細な説明を読めば明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】鉄道車両車輪用の既知のブレーキシューホルダーを組み込んだ従来のブレーキシステムの立面図である。
【図2】本発明によるブレーキシュー支持アセンブリの一実施形態の斜視図であり、鉄道車両ブレーキ作動装置と関連付けて示されている。
【図3】図1の従来のブレーキシステムにおいて用いることができる既知のブレーキシューホルダーの正面図である。
【図4】図2において鉄道車両ブレーキ作動装置と関連付けて示されているブレーキシュー支持アセンブリの立面図である。
【図5】図4に示されているブレーキシュー支持アセンブリの実施形態の部分断面立面図である。
【図6】図4に示されているブレーキシュー支持アセンブリにおいて用いられる取り付けブラケットの斜視図である。
【図7】図4に示されているブレーキシュー支持アセンブリにおいて用いられるハンガー本体の斜視図である。
【図8】図4に示されているブレーキシュー支持アセンブリの側面図である。
【図9A】図5の細部9Aの詳細図である。
【図9B】図5の細部9Bの詳細図である。
【図10】図5に示されているブレーキシュー支持アセンブリの一部の断面図であり、実施形態における変形例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明のために、空間的な向きを示す用語が用いられる場合、その用語は、添付の図面における向きであるか又は以下の詳細な説明において別様に記載されているものとして、参照されている実施形態に関するものとする。しかしながら、以下に記載される実施形態は、多くの代替的な変形及び実施形態をとることができると理解されるべきである。また、添付の図面に示されると共に以下に記載される特定のブレーキシューホルダー及び該ブレーキシューホルダーを組み込んだ鉄道車両ブレーキシステムは例示的なものにすぎず、限定するものとみなされるべきではないと理解されるべきである。
【0021】
本明細書に記載されるようなブレーキシュー支持アセンブリ20は、例えば図1に示されるようなブレーキシステム100において用いることができるか(米国特許第3,696,892号も参照されたい)、又は本明細書において説明されるような、図2に示されるような鉄道車両ブレーキ作動装置200と関連付けることができる。従来のブレーキシステム100では、台車枠114側からブレーキシュー112を懸下するためにブレーキシュー支持体110が用いられる。本明細書において記載されるような不特定の(less certain)構成要素であるブレーキシュー支持アセンブリ20は概して、ブレーキシュー112又はその詳細が本明細書に記載される同様のブレーキシューを支持するブレーキシュー支持体110の代わりに用いることができる。図1において、台車枠114は、位置118において台車枠114に固定された回動ピン116を介してブレーキシュー支持体110を支持する。台車枠114は、車軸122上で車輪120を担持し、車輪120はテーパー状の踏面124及びフランジ126を有する。ブレーキシュー112は、従来のブレーキヘッド128によって回動可能に担持されており、ブレーキヘッド128は同様に、回動ピン130を介して支持ブラケット132に回動可能に軸支されている。ブレーキシリンダーロッド134は、が回動ピン136を介して支持ブラケット132に動作可能に接続されている。Engleによる米国特許第3,696,892号に記載されているように、ブレーキシリンダーロッド134の伸張移動によって印加されるブレーキ圧は、ブレーキシュー112を車輪120に対して作用させる。
【0022】
図2は、本発明による鉄道車両ブレーキ作動装置200に関連付けられたブレーキシュー支持アセンブリ20を示す。このようなブレーキ作動装置200は当該技術分野において従来からあるものであり、本発明のブレーキシュー支持アセンブリ20を従来の方法で動作させるために用いられる。当業者には既知であるように、鉄道車両ブレーキ作動装置200は、図1に示される台車枠114のような台車枠に取り付けられることができ、それにより、ブレーキシュー支持アセンブリ20と、図1に示される一般的な配置の車輪120とを関連付けることができる。この代替的な構成では、鉄道車両ブレーキ作動装置200は概して、図1に示されるブレーキシステム100におけるブレーキシュー支持体110に取って代わる。前述したように、ブレーキシュー支持アセンブリ20は、図1に示されているブレーキシステム100に統合させることができ、それにより、本明細書において記載されるような不特定の構成要素であるアセンブリ20は概して、ブレーキシュー支持体110に取って代わる。したがって、ブレーキシュー支持アセンブリ20をブレーキシステム100に直接的に適用する場合は、本明細書に記載されるようにアセンブリ20に対する或る特定の構造的な変更が必要となる。
【0023】
次に図3を参照すると、標準的な剛性のブレーキシュー支持アセンブリ1が示されている。剛性のブレーキシュー支持アセンブリ1は、鉄道車両の台車枠において用いられることが知られている。或る特定の鉄道車両では、3軸台車枠が設けられる。3軸台車枠の中心軸は通常、カーブに対応するために横移動が大きくなる。図示される標準的な剛性のブレーキシュー支持アセンブリ1は、車輪の横移動によって関連するブレーキシューが車輪から外れることのないように、台車枠に位置決めされている。しかしながら、3軸台車枠の中心軸が移動しすぎると、ブレーキシューが車輪に対して常に保たれるように剛性のブレーキシュー支持アセンブリ1を台車枠に位置決めすることができない。この状況では、ブレーキシューを車輪と常に接触させたままに保つため、車輪と共に「浮動」することができるブレーキシューホルダー/ハンガーが必要とされる。台車枠に対するブレーキシューの制限された横移動をブレーキ中に可能にするブレーキハンガーの例は、本開示において前述した。
【0024】
ここで、図3に示される剛性のブレーキシュー支持アセンブリ1について、専ら背景にある目的をさらに説明する。ブレーキシュー支持アセンブリ1は、支持アセンブリ1を台車枠に、又は代替的には図1と関連して説明した台車枠114等の台車枠に取り付けられるブレーキ作動装置ユニットに、機械的締結具を用いて取り付けるために用いられる剛性の取り付けブラケット2を備える。ブレーキシューホルダー4が取り付けブラケット2から懸下されている。取り付けブラケット2は、ウェブ7によって接続された2つの対向する側面又はアーム6を有する剛性のハンガー本体を含む。取り付けブラケット2は、各アーム6の端部にある一体型円筒部分8及び回動ピン10を介して、台車枠に、又は代替的には台車枠に取り付けられたブレーキ作動装置ユニットに回動可能に接続されている。好適な機械的締結具を用いてハンガー本体6と回動ピン10との間の回動係合を固定することができる。
【0025】
ブレーキヘッド部分16と、例えば図1に示されるブレーキシリンダーロッド134のようなブレーキシリンダーロッドとの間の接続を用いて、図1に関連して先に概説した方法でブレーキ力をブレーキシューホルダー4に印加する。取り付けブラケット2とブレーキシューホルダー4とを接続すると共にこの接続部を安定化させるためにピン12が設けられる。ブレーキシューホルダー4はまた、ヘッド15を備える第2のピン14を介して、対向するアーム6に回動可能に接続されている。ピン14は、対向するアーム6と、ブレーキシューホルダー4のブレーキヘッド部分16とを貫通している。ピン14の終端部には、ピン14をブレーキシューホルダー4のブレーキヘッド部分16に対して固定するためのナット18又は同様の機械的締結具を受け入れるため、ねじ山を設けることができる。取り付けブレーキ2及び対向するアーム6によって与えられた剛性によって、図3の従来のブレーキシューアセンブリ1が、前述の説明において記されているような「剛性」アセンブリになる。
【0026】
さらに図4〜図9を参照すると、本発明の目下好ましい一実施形態によるブレーキシュー支持アセンブリ20が示されている。ブレーキシュー支持アセンブリ20は、図6に単独で示される、側面が開いたケーシングの一般的な形態である取り付けブラケット22を備え、この取り付けブラケット22は、図2に示されるブレーキ作動装置200に取り付けられるように構成され、ブレーキ作動装置200は、図1と関連して説明した台車枠114等の台車枠に対して同様に取り付けられる。この構成では、ブレーキ作動装置200は全体としてブレーキシュー支持体110に取って代わる。取り付けブラケット22は、ブレーキ作動装置200との機械的な相互接続のために一連の取り付けブッシュ又は要素23を備える。所望であれば、代替形態として、取り付けブラケット22をブレーキシュー支持アセンブリ20から省くことができ、それにより、取り付けブラケット22を含まないアセンブリ20を、図1に示される台車枠114への直接的な取り付けに好適とすることができる。この代替形態はブレーキ作動装置200も取り除いており、ブレーキシュー支持アセンブリ20は、Engleによる米国特許第3,696,892号に記載されると共に図3と関連して上記で説明したのと同様の方法で、ブレーキシリンダーロッド134によって動作される。
【0027】
ブレーキシューホルダー24がハンガー本体26を介して取り付けブラケット22から懸下されており、ハンガー本体26の単独の底面図が図7に見られる。図7では、ブレーキシューホルダー24は、ハンガー本体26の対向する側面27同士の間で支持されることを意図されており、対向する側面27同士は、ブレーキシューホルダー24の部分を内部に収容して支持するために、収容ポケット28を間に画定している。ハンガー本体26は、円筒状支持部分29を介して取り付けブラケット22に回動可能に接続されており、円筒状支持部分29は、取り付けブラケット22及び円筒状支持部分29を貫通する回動ピン31を受け入れる中心孔30を画定している。好適な機械的締結具を回動ピン31の対向する両端に設け、ハンガー本体26と取り付けブラケット22との間の回動係合を固定することができる。
【0028】
ハンガー本体26の対向する側面27は、ヘッド35を備える第2の回動ピン34を受け入れるため、一対の対向する開口32を画定している。回動ピン34は、ハンガー本体26の対向する側面27にある対向する開口32、及びブレーキシューホルダー24のブレーキヘッド部分36を貫通する。ブッシュ33を各開口32内に設けて、回動ピン34を開口32内で支持することができる。回動ピン34の終端部には、ナットとワッシャとの組み合わせ37又は同様の機械的締結具を受け入れて回動ピン34を対向する側面27間で固定し、それにより、ハンガー本体26に対するブレーキシューホルダー24の回動運動を可能にするように、ねじ山を設けることができる。図7に示されているように、対向する側面27は、ハンガー本体26の、円筒状支持部分29とは反対の端部において外方へ幾分突出しており、ブレーキシューホルダー24の回動動作のために、また本明細書に記載されるように回動ピン34上でのブレーキシューホルダー24の横移動を可能にするために、ブレーキシューホルダー24の両側に間隔を設けている。図4〜図9からは、取り付けブラケット22及びブレーキ作動装置200を省いてハンガー本体26を図1に示されている台車枠114のような台車枠に直接取り付けることが望まれる場合、円筒状支持部分29を、図1に示される回動点116において台車枠114に回動可能に接続できることが明らかである。この構成では、図1に示されるシリンダーロッド134は、前述のEngle特許において記載されているのと同様の方法で、回動ピン31を介してハンガー本体26と連動する。
【0029】
望ましくは、回動ピン34はヘッド35に隣接する拡径部分38を備え、この拡径部分38は、回動ピン34上での一方向へのブレーキシューホルダー24の横移動を制限する、ピン肩部39を画定する。図4に示される図では、ブレーキシューホルダー24の右側への横移動は、ピン肩部39によって制限される。ハンガー本体26によって画定されている収容ポケット28は、弾性付勢構造体40をブレーキシューホルダー24と関連付けると共に、その内部にブレーキシューホルダー24を収容して支持するのに十分なサイズである。弾性付勢構造体40は、図5に示される状態では、ブレーキシューホルダー24の左側への横移動に対応するか又可能にする(例えば左側の間隔)。一実施形態では、この付勢構造体は、回動ピン34に配置される一連のスプリングワッシャ42を備えることができ、これらのスプリングワッシャ42は、図5に示される状態においてハンガー本体26の左側側面27とブレーキシューホルダー24の左側側面との間で作用する。
【0030】
スプリングワッシャ42の存在によって、特に、上述したような3軸台車枠において用いられる場合に、ブレーキシューホルダー24が図1に示される車輪120のような車輪の横移動を追従することが可能となる。ブレーキシュー支持アセンブリ20を図1に示されるブレーキシステムに組み込むため(例えば、このブレーキシステムへの直接的な統合によって、又はこの従来技術のシステムのいくつかの部分に取って変わるブレーキ作動装置200への取り付けによって)、2つの異なる構成が上述の説明で記載されており、この両方の構成が、本開示に従って弾性付勢構造体40によって提供される、横移動に対応する特徴を組み込むことができる。動作時において、車輪120のフランジ126はブレーキシューホルダー24の右側を押し、ブレーキシューホルダー24を回動ピン34に沿って押すことによってスプリングワッシャ42を圧縮する。例えば線路の曲線区間におけるブレーキ動作を行った後、車輪120が中心位置又は中立位置に戻ると、図5に概略的に示されるように、圧縮されているスプリングワッシャ42がブレーキシューホルダー24に作用し、ブレーキシューホルダー24をその元の状態に戻す。スプリングワッシャ42は、通常のブレーキ条件下において、車輪踏面124に対するブレーキシューホルダー24の横移動を最小限に抑え、したがってブレーキシューが外れることを防止するのにも有用である。また、ブレーキシューホルダー24に対し、その通常の位置において予め負荷をかけられることも望ましい設計上の特徴である。単に可撓性のハンガーを有するだけの前述した従来技術の設計は、通常のブレーキ中に車輪踏面124が可撓性のハンガーを横方向に撓ませるという点において、あまり望ましくない。弾性付勢構造体40は、通常のブレーキ負荷下において、車輪踏面124に対するブレーキシューホルダー24の横移動を最小限に抑え、したがってブレーキシューが外れることを防止するのを助ける。
【0031】
望ましくは、スプリングワッシャ42は、環境からの汚染物質の侵入を防止するように重ねられた第1のすなわち左側側部44と第2のすなわち右側側部46とを含む2部品筐体内に収納されている。筐体44、46にシールを設け、それらの互いに係合する摺動面を清潔に保つことができる。したがって、ブレーキシューホルダー24は、カーブでのブレーキ状況時に、回動ピン34に沿っていくらか横移動することが許容されている。スプリングワッシャ42は、カーブでのブレーキ状況時に、ブレーキシューホルダー24が車輪フランジ126によって押されることを可能にする。ブレーキが解放されると、スプリングワッシャ42が作用してブレーキシューホルダー24をその元の状況又は状態に戻す。前述の説明は、回動ピン34上の弾性付勢構造体40としてのスプリングワッシャ42に関するものであるが、他の同等の機械的装置、例えばコイルスプリング、弾性変形可能なブッシュ若しくは回動ピン34に配置される同様の構造を用いることができるか、又は、ハンガー本体26の左側側面27とブレーキシューホルダー24の本体との間で作用する板バネさえも、スプリングワッシャ42の代わりに用いることができる。この列挙は網羅すること及び限定することを意図したものではなく、例示目的で提示したものである。
【0032】
最後に、ブレーキシューホルダー24のブレーキヘッド部分36は横方向凹状領域48、50を画定することができ、ブレーキヘッド部分36は、横方向凹状領域間に延びて回動ピン34が配置される中心孔52をさらに画定する。一対の低摩擦ブッシュ54を中心孔52に配置して、回動ピン34を回転可能に支持することができる。シール56が各凹状領域48、50に配置されており、中心孔52を外部環境からシールするためのOリング60を含む。図5において回動ピン34の右側に配置されているOリング60は、端部カバー62によって凹状領域48に固定されてシールされており、右側のOリング60は、スプリングワッシャ42を収納している重ねられた筐体44、46によって、凹状領域50でシールされている。端部カバー62は、ブレーキヘッド部分36の停止部も提供する。Oリングリテーナーリング64を各凹状領域48、50において2つのOリング60と共に用いて、中心孔52を外部環境からさらにシールすることができる。
【0033】
望ましくは、ブッシュ54は、GG Bearings Technology社によって製造されているDX(登録商標)軸受のような低摩擦ブッシュ軸受である。これらのブッシュ軸受54は、内側層がアセタールポリマーである金属ブッシュであり、GG Bearings Technology社によって製造されているDX(登録商標)軸受は、本開示における適用に好適なブッシュ軸受の一例である。回動ピン34は、望ましくは、ブッシュ軸受54との摩擦を最小限に抑えるために高度に研磨される。ブッシュ54にそのような低摩擦ブッシュ軸受を用いることへの代替案が図10に示されている。図10では、平坦部70が回動ピン34に機械加工されており、垂直ローラー72がピンピボット34とブレーキヘッド部分36との間に設けられている。図7に示されている代替的な実施形態は、この代替案では回転要素72がブレーキヘッド部分36と回動ピン34との間に組み込まれているため、リニア転がりブッシュ軸受と称することができる。
【0034】
鉄道車両台車のブレーキシュー支持アセンブリの実施形態が前述の説明に提供されているが、当業者は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなくこれらの実施形態に修正及び変更を加えることができる。したがって、前述の説明は、限定的ではなく例示的であることが意図される。上記の本発明は添付の特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲の意味及びその均等物の範囲内に入る本発明に対するあらゆる変形は、特許請求の範囲内に包含されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキシュー支持アセンブリであって、
取り付けブラケットと、
前記取り付けブラケットに回動可能に接続されると共に、収容ポケットを間に画定する対向する側面を含む、ハンガー本体と、
ブレーキシューホルダーであって、前記対向する側面間に延びると共に該ブレーキシューホルダーの一部を通って延びる回動ピンによって、前記対向する側面に回動可能に接続され、前記収容ポケットにおける該ブレーキシューホルダーと前記対向する側面の一方との間に間隔が存在するように前記回動ピンに配置される、ブレーキシューホルダーと、
前記回動ピンと関連すると共に、前記ブレーキシューホルダーと前記対向する側面の一方との間に画定される前記間隔に配置される弾性付勢構造体であって、線路の曲線区間において鉄道車両車輪に対するブレーキ動作を行った後で前記ブレーキシューホルダーを中立位置に戻すように動作可能であり、前記車輪によって圧縮される、弾性付勢構造体と
を備える、ブレーキシュー支持アセンブリ。
【請求項2】
前記弾性付勢構造体は、前記回動ピンに配置される複数のスプリングワッシャを含む、請求項1に記載のブレーキシュー支持アセンブリ。
【請求項3】
前記弾性付勢構造体は筐体に収納される、請求項1に記載のブレーキシュー支持アセンブリ。
【請求項4】
前記筐体は、前記ブレーキシューホルダーと前記対向する側面の一方との間に画定される前記間隔に配置されており、前記回動ピンの少なくとも一部を包囲する、請求項3に記載のブレーキシュー支持アセンブリ。
【請求項5】
前記筐体は多部品筐体である、請求項3に記載のブレーキシュー支持アセンブリ。
【請求項6】
前記多部品筐体は重なり合う2部品の筐体を含む、請求項5に記載のブレーキシュー支持アセンブリ。
【請求項7】
鉄道車両ブレーキシステムであって、
鉄道車両ブレーキ作動装置と、
ブレーキシュー支持アセンブリであって、
前記ブレーキ作動装置に取り付けられる取り付けブラケット、
前記取り付けブラケットに回動可能に接続されると共に、収容ポケットを間に画定する対向する側面を含む、ハンガー本体、
ブレーキシューホルダーであって、前記対向する側面間に延びると共に該ブレーキシューホルダーの一部を通って延びる回動ピンによって、前記対向する側面に回動可能に接続され、前記収容ポケットにおける該ブレーキシューホルダーと前記対向する側面の一方との間に間隔が存在するように前記回動ピンに配置される、ブレーキシューホルダー、及び
前記回動ピンと関連すると共に、前記ブレーキシューホルダーと前記対向する側面の一方との間に画定される前記間隔に配置される弾性付勢構造体であって、線路の曲線区間において鉄道車両車輪に対するブレーキ動作を行った後で前記ブレーキシューホルダーを中立位置に戻すように動作可能であり、前記車輪によって圧縮される、弾性付勢構造体、
を備える、ブレーキシュー支持アセンブリと、
を備える、鉄道車両ブレーキシステム。
【請求項8】
前記弾性付勢構造体は、前記回動ピンに配置される複数のスプリングワッシャを含む、請求項7に記載の鉄道車両ブレーキシステム。
【請求項9】
前記弾性付勢構造体は筐体に収納される、請求項7に記載の鉄道車両ブレーキシステム。
【請求項10】
前記筐体は、前記ブレーキシューホルダーと前記対向する側面の一方との間に画定される前記間隔に配置されており、前記回動ピンの少なくとも一部を包囲する、請求項9に記載の鉄道車両ブレーキシステム。
【請求項11】
前記筐体は多部品筐体である、請求項9に記載の鉄道車両ブレーキシステム。
【請求項12】
前記多部品筐体は重なり合う2部品の筐体を含む、請求項11に記載の鉄道車両ブレーキシステム。
【請求項13】
ブレーキシュー支持アセンブリを組み立てる方法であって、
取り付けブラケットを準備すること、
ハンガー本体を前記取り付けブラケットに回動可能に接続することであって、該ハンガー本体は、収容ポケットを間に画定する対向する側面を含む、回動可能に接続すること、
ブレーキシューホルダーを、前記対向するアーム間に延びると共に該ブレーキシューホルダーの一部を通って延びる回動ピンによって、前記対向する側面に回動可能に接続することであって、該ブレーキシューホルダーは、前記収容ポケットにおける該ブレーキシューホルダーと前記対向する側面の一方との間に間隔が存在するように前記回動ピンに配置される、回動可能に接続すること、及び
弾性付勢構造体を、前記ブレーキシューホルダーと前記対向する側面の一方との間に画定される前記間隔に配置されるように、前記回動ピンと関連付けることであって、該弾性付勢構造体は、線路の曲線区間における鉄道車両車輪に対するブレーキ動作を行った後で前記ブレーキシューホルダーを中立位置に戻すように動作可能であり、前記車輪によって圧縮される、関連付けること、
を含む、方法。
【請求項14】
前記弾性付勢構造体は、前記回動ピンに配置される複数のスプリングワッシャを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記弾性付勢構造体を保護筐体内で包囲することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記筐体は、前記ブレーキシューホルダーと前記対向する側面の一方との間に画定される前記間隔に配置されており、前記回動リングの少なくとも一部を包囲する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記筐体は多部品筐体である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記多部品筐体は重なり合う2部品の筐体を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記取り付けブラケットをブレーキ作動装置に取り付けることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記ブレーキシューホルダーを動作させるように、前記ブレーキ作動装置と前記ハンガー本体とを動作可能に関連付けることをさらに含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−523528(P2012−523528A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504676(P2012−504676)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/023174
【国際公開番号】WO2010/117483
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(506190681)ワブテク・ホールディング・コーポレイション (13)
【氏名又は名称原語表記】WABTEC HOLDING CORP.
【住所又は居所原語表記】1001 Air Brake Avenue, Wilmerding, PA 15148, U.S.A.
【Fターム(参考)】