ブレーキ装置及びそれを用いた巻上機,エレベーター
【課題】
低コストでメンテナンスの容易なブレーキ装置を提供する。
【解決手段】
本発明のブレーキ装置は、出力軸18を挿入固定するための挿入部を有する円盤状の回転体17と、上制動子3a及び下制動子3bを有し、上制動子3aが取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネ6aにより上制動子3aを回転体17に押し付ける方向に付勢された上制動レバー7a及び下制動子3bが取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネ6bにより下制動子3bを回転体17に押し付ける方向に付勢された下制動レバー7bと、制動バネ6a,6bの付勢力に抗して上下制動子3a,3bを回転体17から離す力を発生させる1つの電磁コイル13と、電磁コイル13で発生した力を上制動レバー7aの他端側に伝達する上リンク機構42及び下制動レバー7bの他端側に伝達する下リンク機構43とを備える。
低コストでメンテナンスの容易なブレーキ装置を提供する。
【解決手段】
本発明のブレーキ装置は、出力軸18を挿入固定するための挿入部を有する円盤状の回転体17と、上制動子3a及び下制動子3bを有し、上制動子3aが取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネ6aにより上制動子3aを回転体17に押し付ける方向に付勢された上制動レバー7a及び下制動子3bが取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネ6bにより下制動子3bを回転体17に押し付ける方向に付勢された下制動レバー7bと、制動バネ6a,6bの付勢力に抗して上下制動子3a,3bを回転体17から離す力を発生させる1つの電磁コイル13と、電磁コイル13で発生した力を上制動レバー7aの他端側に伝達する上リンク機構42及び下制動レバー7bの他端側に伝達する下リンク機構43とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械室レスエレベーターの場合、巻上機は昇降路内ピット,かご・昇降路壁間等に配置される。いずれもスペース的な余裕の少ない場所である。したがって、出来る限り巻上機は小型化したい。扁平モータを使用した薄型巻上機はその例である。更なる省スペース化のため従来回転体(モータの回転子)の側面に配置していたブレーキ装置を回転体の上下に配置する案が考えられる。これにより巻上機の幅を狭くすることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2000−143131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図5は従来のブレーキ装置の正面図である。図5に示す従来構造例では1対の制動子103が回転体117の両側面に配置されており、巻上機の幅は回転体117と制動子103の寸法により決まる。巻上機の狭幅化には回転体117だけでなく制動子103の小型化も必要である。従来は回転体117の小型化のみを実施してきたが限界に来ている。
【0005】
図6は従来のブレーキ装置の他の例を示す正面図である。図6に示す従来構造例では制動子103を含む1対の制動ユニット(電磁コイルを含む)123が回転体117の上下に計2個配置されている。電磁コイルは高価なためコストアップの要因になっている。また、電磁コイルが2つあるため、2つの内どちらかが故障する確率は電磁コイルが1個の構造より高くなるという欠点があった。
【0006】
本発明は前記課題鑑みなされたものであり、低コストでメンテナンスの容易なブレーキ装置を提供すること、それによりエレベーターの昇降路平面寸法縮小に好適な狭幅巻上機を提供すること、及び、その巻上機を使用してスペースを有効利用したエレベーターを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のブレーキ装置は、中心に電動機などの出力軸を挿入固定するための挿入部を有する円盤状の回転体と、前記回転体の上側外周側面に対向配置された上制動子及び前記回転体の下側外周側面に対向配置された下制動子とを備えたブレーキ装置において、前記上制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記上制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された上制動レバー及び前記下制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記下制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された下制動レバーと、前記制動バネの付勢力に抗して前記上制動子及び下制動子を回転体から離す力を発生させる1つの電磁コイルと、前記1つの電磁コイルで発生した力を前記上制動レバーの他端側に伝達する上リンク機構及び下制動レバーの他端側に伝達する下リンク機構とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の巻上機は、出力軸を有する電動機と、中心に前記電動機の出力軸が挿入固定された円盤状の回転体と、前記回転体に固定されてロープを巻きかけられる綱車と、前記回転体の上側外周側面に対向配置された上制動子及び前記回転体の下側外周側面に対向配置された下制動子とを備えた巻上機において、前記上制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記上制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された上制動レバー及び前記下制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記下制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された下制動レバーと、前記制動バネの付勢力に抗して前記上制動子及び下制動子を回転体から離す力を発生させる1つの電磁コイルと、前記1つの電磁コイルで発生した力を前記上制動レバーの他端側に伝達する上リンク機構及び下制動レバーの他端側に伝達する下リンク機構とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明のエレベーターは、昇降路内を上下に駆動する乗りかご及びつり合い錘と、前記乗りかごとつり合い錘を連結するロープと、前記ロープが巻きかけられ、前記ロープを駆動することで前記乗りかごとつり合い錘を上下に駆動させる巻上機とを備えたエレベーターにおいて、前記巻上機は、出力軸を有する電動機と、中心に前記電動機の出力軸が挿入固定された円盤状の回転体と、前記回転体に固定されてロープを巻きかけられる綱車と、前記回転体の上側外周側面に対向配置された上制動子及び前記回転体の下側外周側面に対向配置された下制動子と、前記上制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記上制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された上制動レバー及び前記下制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記下制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された下制動レバーと、前記制動バネの付勢力に抗して前記上制動子及び下制動子を回転体から離す力を発生させる1つの電磁コイルと、前記1つの電磁コイルで発生した力を前記上制動レバーの他端側に伝達する上リンク機構及び下制動レバーの他端側に伝達する下リンク機構とから構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば低コストでメンテナンスの容易なブレーキ装置を提供することができる。
【0011】
また、本発明によれば、エレベーターの昇降路平面寸法縮小に好適な狭幅巻上機を提供することができる。
【0012】
さらに、本発明によればスペースを有効利用したエレベーターを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例を用いて、本発明を詳しく説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施例にかかるエレベーターの全体概要断面図である。同図に示すエレベーター30は、建屋31内に設けられた昇降路32内を上下移動する乗りかご33及び釣合いおもり34と、乗りかご33及び釣合いおもり34を吊持するロープ35と、乗りかご33及び釣合いおもり34を上下移動させる巻上機36と、ロープ35が巻き掛けられたプーリ37とを有している。そして巻上機36が駆動することで、乗りかご33は建屋31の最上階38と最下階39の間を上下移動可能となっている。このときつり合いおもり34は乗りかご33の移動方向とは反対方向に上下移動する。
【0015】
図2は本発明の一実施例にかかるブレーキ装置を含む巻上機の左側面図である。同図に示すように本実施例における巻上機36は、出力軸18を有する電動機40と、中心に電動機40の出力軸18が挿入固定されたブレーキ装置部41から構成されている。また、綱車16と一体の回転体17は、軸受20によりブレーキ装置部41の本体1に固定された出力軸18に回転自由に固定されている。
【0016】
図3は本発明の一実施例にかかるブレーキ装置の正面図である。図3に示すように、ブレーキ装置部41は中心に電動機40などの出力軸18を挿入固定するための挿入部を有する円盤状の回転体17と、回転体17の上側外周側面に対向配置された上制動子3a及び回転体17の下側外周側面に対向配置された下制動子3bと、上制動子3aが取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネ6aにより上制動子3aを回転体17に押し付ける方向に付勢された上制動レバー7a及び下制動子3bが取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネ6bにより下制動子3bを回転体17に押し付ける方向に付勢された下制動レバー7bと、制動バネ6a,6bの付勢力に抗して上制動子3a及び下制動子3bを回転体17から離す力を発生させる1つの電磁コイル13と、1つの電磁コイル13で発生した力を上制動レバー7aの他端側に伝達する上リンク機構42及び下制動レバーの他端側に伝達する下リンク機構43とを備えている。
【0017】
さらに詳しく説明すると、回転体17の上下に制動子3a,3bとその固定用の制動子おさえ2が配置され、制動子おさえ2はレバー7a,7bにそれぞれ固定されている。レバー7a,7bは一端をピン9により本体1に、他端を制動バネ6a,6b,バネ力調整用ダブルナット4を介してリンク5、またはリンク15と結合されている。
【0018】
図4は本発明の一実施例にかかるブレーキ装置の右側面図である。同図に示すようにリンク5は回転体17との接触を避けるため回転体17をまたぐように曲げられている。このような構造をとることによって、回転体17の上下に配置した1対の制動子3a,3bのうち電磁コイル13から遠いほうの上制動子3aと電磁コイル13を結ぶリンク5は回転体17との干渉を避ける必要があるが、回転体17の側面(円柱面)に配置すると巻上機の幅が増加する。そこで、リンクを曲げ、回転体をまたぐ構造とする。これにより巻上機の幅を回転体の径まで縮小可能となり、ブレーキ装置部41の幅方向の寸法が大型化するのが防止され、結果的にそれを用いた巻上機がより小型化される。さらには、エレベーターの昇降路のスペースがより有効に利用することが可能となる。
【0019】
また、図3に示すように、本実施例におけるブレーキ装置部41は回転体17を正面方向から見たときに、上制動子3a,下制動子3b,電磁コイル13及び回転体17の中心が、略直線状に並んでいる。エレベーターの昇降路では、例えば機械室レスのエレベーターで巻上機を昇降路内に配置するものであったとしても、比較的上下方向には余裕があるが、幅方向には非常に制限が大きい。従ってブレーキ装置部41をこのように構成することにより、幅方向の大きさを実施的に回転体17の径の大きさに近い幅にまで縮めることが可能となっている。
【0020】
さらに、上制動レバー7aと下制動レバー7bの回動自在に固定される位置,制動バネ6a,6bで付勢される位置、及び、上リンク機構42から上制動レバー7aに力の伝達される位置と下リンク機構43から下制動レバー7bに力の伝達される位置が、それぞれ回転体17の中心に対して略点対称位置に存在するように配置されている。このような構成により、1つの電磁コイル13であっても幅方向に機器の大きさを増大させることなく効率的に電磁コイル13の駆動力を伝達することが可能となっている。
【0021】
また、リンク機構42,43の詳細な構造を、図3を用いて説明する。角部がピン14で本体1に回転自由に固定されたL型レバー10の一端と、電磁コイル13のプランジャ8,12はピン11で結合されている。またL型レバー10の他端とリンク5,15はピン11で結合されている。電磁コイル13は図2,図4に示すように、本体1の裏面からボルト19により本体1に固定されている。制動バネ6a,6bの力はレバー7a,7bを介して、制動子3a,3bを回転体17に押し付けるように働く。この結果生じる回転体17と制動子3の摩擦力により回転体17を制動する力が発生する。
【0022】
電磁コイル13に通電されるとプランジャ8,12が本体幅方向に伸び、L型レバー10がピン14を中心に回転し、リンク5が図中の上方向へ、リンク15が下方向へ引かれる。このとき制動バネ6a,6bは圧縮変位を受け、リンク5,15はその圧縮力に逆らってレバー7a,7bとこれに固定された制動子3a,3bを回転体17から離れる方向に変位させる。この結果、回転体17の制動力が開放され、回転体17は自由に回転可能となる。
【0023】
このように上リンク機構42及び下リンク機構43は、電磁コイル13への通電により駆動するプランジャ8,12,角部が回転自在に固定されたL型レバー10,上制動レバー7a及び下制動レバー7bの他端側に一端が固定されたリンク5,15とから構成され、プランジャ8,12にL型レバー10の一端を固定し、L型レバー10の他端はリンク5,15の他端に固定されて構成されている。このような構成により、1つの電磁コイル13によって確実な動作を行うことが可能なブレーキ装置,巻上機、及びエレベーターを提供することが可能となる。
【0024】
以上説明したように、本発明のブレーキ装置及びそれを用いた巻上機,エレベーターによれば、電磁コイルが1個ですむためコストを低減できる。なお、リンク機構が増えるが、電磁コイルのコストよりも低減することが可能である。また、信頼性についてリンク機構は従来から使用され、実績があり、機構部品の集合体である制動ユニットと比べても信頼性が高い。また電磁コイルが1個であり、比較的簡易な構成のリンク機構から構成されているため、メンテナンスの容易なブレーキ装置とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例にかかるエレベーターの全体概要断面図である。
【図2】本発明の一実施例にかかるブレーキ装置を含む巻上機の左側面図である。
【図3】本発明の一実施例にかかるブレーキ装置の正面図である。
【図4】本発明の一実施例にかかるブレーキ装置の右側面図である。
【図5】従来のブレーキ装置の正面図である。
【図6】従来のブレーキ装置の他の例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ブレーキ装置部本体
3a 上制動子
3b 下制動子
6a,6b 制動バネ
7a 上制動レバー
7b 下制動レバー
13 電磁コイル
17 回転体
18 出力軸
30 エレベーター
36 巻上機
40 電動機
42 上リンク機構
43 下リンク機構
【技術分野】
【0001】
本発明はブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械室レスエレベーターの場合、巻上機は昇降路内ピット,かご・昇降路壁間等に配置される。いずれもスペース的な余裕の少ない場所である。したがって、出来る限り巻上機は小型化したい。扁平モータを使用した薄型巻上機はその例である。更なる省スペース化のため従来回転体(モータの回転子)の側面に配置していたブレーキ装置を回転体の上下に配置する案が考えられる。これにより巻上機の幅を狭くすることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2000−143131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図5は従来のブレーキ装置の正面図である。図5に示す従来構造例では1対の制動子103が回転体117の両側面に配置されており、巻上機の幅は回転体117と制動子103の寸法により決まる。巻上機の狭幅化には回転体117だけでなく制動子103の小型化も必要である。従来は回転体117の小型化のみを実施してきたが限界に来ている。
【0005】
図6は従来のブレーキ装置の他の例を示す正面図である。図6に示す従来構造例では制動子103を含む1対の制動ユニット(電磁コイルを含む)123が回転体117の上下に計2個配置されている。電磁コイルは高価なためコストアップの要因になっている。また、電磁コイルが2つあるため、2つの内どちらかが故障する確率は電磁コイルが1個の構造より高くなるという欠点があった。
【0006】
本発明は前記課題鑑みなされたものであり、低コストでメンテナンスの容易なブレーキ装置を提供すること、それによりエレベーターの昇降路平面寸法縮小に好適な狭幅巻上機を提供すること、及び、その巻上機を使用してスペースを有効利用したエレベーターを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のブレーキ装置は、中心に電動機などの出力軸を挿入固定するための挿入部を有する円盤状の回転体と、前記回転体の上側外周側面に対向配置された上制動子及び前記回転体の下側外周側面に対向配置された下制動子とを備えたブレーキ装置において、前記上制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記上制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された上制動レバー及び前記下制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記下制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された下制動レバーと、前記制動バネの付勢力に抗して前記上制動子及び下制動子を回転体から離す力を発生させる1つの電磁コイルと、前記1つの電磁コイルで発生した力を前記上制動レバーの他端側に伝達する上リンク機構及び下制動レバーの他端側に伝達する下リンク機構とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の巻上機は、出力軸を有する電動機と、中心に前記電動機の出力軸が挿入固定された円盤状の回転体と、前記回転体に固定されてロープを巻きかけられる綱車と、前記回転体の上側外周側面に対向配置された上制動子及び前記回転体の下側外周側面に対向配置された下制動子とを備えた巻上機において、前記上制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記上制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された上制動レバー及び前記下制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記下制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された下制動レバーと、前記制動バネの付勢力に抗して前記上制動子及び下制動子を回転体から離す力を発生させる1つの電磁コイルと、前記1つの電磁コイルで発生した力を前記上制動レバーの他端側に伝達する上リンク機構及び下制動レバーの他端側に伝達する下リンク機構とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明のエレベーターは、昇降路内を上下に駆動する乗りかご及びつり合い錘と、前記乗りかごとつり合い錘を連結するロープと、前記ロープが巻きかけられ、前記ロープを駆動することで前記乗りかごとつり合い錘を上下に駆動させる巻上機とを備えたエレベーターにおいて、前記巻上機は、出力軸を有する電動機と、中心に前記電動機の出力軸が挿入固定された円盤状の回転体と、前記回転体に固定されてロープを巻きかけられる綱車と、前記回転体の上側外周側面に対向配置された上制動子及び前記回転体の下側外周側面に対向配置された下制動子と、前記上制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記上制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された上制動レバー及び前記下制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記下制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された下制動レバーと、前記制動バネの付勢力に抗して前記上制動子及び下制動子を回転体から離す力を発生させる1つの電磁コイルと、前記1つの電磁コイルで発生した力を前記上制動レバーの他端側に伝達する上リンク機構及び下制動レバーの他端側に伝達する下リンク機構とから構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば低コストでメンテナンスの容易なブレーキ装置を提供することができる。
【0011】
また、本発明によれば、エレベーターの昇降路平面寸法縮小に好適な狭幅巻上機を提供することができる。
【0012】
さらに、本発明によればスペースを有効利用したエレベーターを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例を用いて、本発明を詳しく説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施例にかかるエレベーターの全体概要断面図である。同図に示すエレベーター30は、建屋31内に設けられた昇降路32内を上下移動する乗りかご33及び釣合いおもり34と、乗りかご33及び釣合いおもり34を吊持するロープ35と、乗りかご33及び釣合いおもり34を上下移動させる巻上機36と、ロープ35が巻き掛けられたプーリ37とを有している。そして巻上機36が駆動することで、乗りかご33は建屋31の最上階38と最下階39の間を上下移動可能となっている。このときつり合いおもり34は乗りかご33の移動方向とは反対方向に上下移動する。
【0015】
図2は本発明の一実施例にかかるブレーキ装置を含む巻上機の左側面図である。同図に示すように本実施例における巻上機36は、出力軸18を有する電動機40と、中心に電動機40の出力軸18が挿入固定されたブレーキ装置部41から構成されている。また、綱車16と一体の回転体17は、軸受20によりブレーキ装置部41の本体1に固定された出力軸18に回転自由に固定されている。
【0016】
図3は本発明の一実施例にかかるブレーキ装置の正面図である。図3に示すように、ブレーキ装置部41は中心に電動機40などの出力軸18を挿入固定するための挿入部を有する円盤状の回転体17と、回転体17の上側外周側面に対向配置された上制動子3a及び回転体17の下側外周側面に対向配置された下制動子3bと、上制動子3aが取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネ6aにより上制動子3aを回転体17に押し付ける方向に付勢された上制動レバー7a及び下制動子3bが取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネ6bにより下制動子3bを回転体17に押し付ける方向に付勢された下制動レバー7bと、制動バネ6a,6bの付勢力に抗して上制動子3a及び下制動子3bを回転体17から離す力を発生させる1つの電磁コイル13と、1つの電磁コイル13で発生した力を上制動レバー7aの他端側に伝達する上リンク機構42及び下制動レバーの他端側に伝達する下リンク機構43とを備えている。
【0017】
さらに詳しく説明すると、回転体17の上下に制動子3a,3bとその固定用の制動子おさえ2が配置され、制動子おさえ2はレバー7a,7bにそれぞれ固定されている。レバー7a,7bは一端をピン9により本体1に、他端を制動バネ6a,6b,バネ力調整用ダブルナット4を介してリンク5、またはリンク15と結合されている。
【0018】
図4は本発明の一実施例にかかるブレーキ装置の右側面図である。同図に示すようにリンク5は回転体17との接触を避けるため回転体17をまたぐように曲げられている。このような構造をとることによって、回転体17の上下に配置した1対の制動子3a,3bのうち電磁コイル13から遠いほうの上制動子3aと電磁コイル13を結ぶリンク5は回転体17との干渉を避ける必要があるが、回転体17の側面(円柱面)に配置すると巻上機の幅が増加する。そこで、リンクを曲げ、回転体をまたぐ構造とする。これにより巻上機の幅を回転体の径まで縮小可能となり、ブレーキ装置部41の幅方向の寸法が大型化するのが防止され、結果的にそれを用いた巻上機がより小型化される。さらには、エレベーターの昇降路のスペースがより有効に利用することが可能となる。
【0019】
また、図3に示すように、本実施例におけるブレーキ装置部41は回転体17を正面方向から見たときに、上制動子3a,下制動子3b,電磁コイル13及び回転体17の中心が、略直線状に並んでいる。エレベーターの昇降路では、例えば機械室レスのエレベーターで巻上機を昇降路内に配置するものであったとしても、比較的上下方向には余裕があるが、幅方向には非常に制限が大きい。従ってブレーキ装置部41をこのように構成することにより、幅方向の大きさを実施的に回転体17の径の大きさに近い幅にまで縮めることが可能となっている。
【0020】
さらに、上制動レバー7aと下制動レバー7bの回動自在に固定される位置,制動バネ6a,6bで付勢される位置、及び、上リンク機構42から上制動レバー7aに力の伝達される位置と下リンク機構43から下制動レバー7bに力の伝達される位置が、それぞれ回転体17の中心に対して略点対称位置に存在するように配置されている。このような構成により、1つの電磁コイル13であっても幅方向に機器の大きさを増大させることなく効率的に電磁コイル13の駆動力を伝達することが可能となっている。
【0021】
また、リンク機構42,43の詳細な構造を、図3を用いて説明する。角部がピン14で本体1に回転自由に固定されたL型レバー10の一端と、電磁コイル13のプランジャ8,12はピン11で結合されている。またL型レバー10の他端とリンク5,15はピン11で結合されている。電磁コイル13は図2,図4に示すように、本体1の裏面からボルト19により本体1に固定されている。制動バネ6a,6bの力はレバー7a,7bを介して、制動子3a,3bを回転体17に押し付けるように働く。この結果生じる回転体17と制動子3の摩擦力により回転体17を制動する力が発生する。
【0022】
電磁コイル13に通電されるとプランジャ8,12が本体幅方向に伸び、L型レバー10がピン14を中心に回転し、リンク5が図中の上方向へ、リンク15が下方向へ引かれる。このとき制動バネ6a,6bは圧縮変位を受け、リンク5,15はその圧縮力に逆らってレバー7a,7bとこれに固定された制動子3a,3bを回転体17から離れる方向に変位させる。この結果、回転体17の制動力が開放され、回転体17は自由に回転可能となる。
【0023】
このように上リンク機構42及び下リンク機構43は、電磁コイル13への通電により駆動するプランジャ8,12,角部が回転自在に固定されたL型レバー10,上制動レバー7a及び下制動レバー7bの他端側に一端が固定されたリンク5,15とから構成され、プランジャ8,12にL型レバー10の一端を固定し、L型レバー10の他端はリンク5,15の他端に固定されて構成されている。このような構成により、1つの電磁コイル13によって確実な動作を行うことが可能なブレーキ装置,巻上機、及びエレベーターを提供することが可能となる。
【0024】
以上説明したように、本発明のブレーキ装置及びそれを用いた巻上機,エレベーターによれば、電磁コイルが1個ですむためコストを低減できる。なお、リンク機構が増えるが、電磁コイルのコストよりも低減することが可能である。また、信頼性についてリンク機構は従来から使用され、実績があり、機構部品の集合体である制動ユニットと比べても信頼性が高い。また電磁コイルが1個であり、比較的簡易な構成のリンク機構から構成されているため、メンテナンスの容易なブレーキ装置とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例にかかるエレベーターの全体概要断面図である。
【図2】本発明の一実施例にかかるブレーキ装置を含む巻上機の左側面図である。
【図3】本発明の一実施例にかかるブレーキ装置の正面図である。
【図4】本発明の一実施例にかかるブレーキ装置の右側面図である。
【図5】従来のブレーキ装置の正面図である。
【図6】従来のブレーキ装置の他の例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ブレーキ装置部本体
3a 上制動子
3b 下制動子
6a,6b 制動バネ
7a 上制動レバー
7b 下制動レバー
13 電磁コイル
17 回転体
18 出力軸
30 エレベーター
36 巻上機
40 電動機
42 上リンク機構
43 下リンク機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心に電動機などの出力軸を挿入固定するための挿入部を有する円盤状の回転体と、前記回転体の上側外周側面に対向配置された上制動子及び前記回転体の下側外周側面に対向配置された下制動子とを有するブレーキ装置において、
前記上制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記上制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された上制動レバー及び前記下制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記下制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された下制動レバーと、
前記制動バネの付勢力に抗して前記上制動子及び下制動子を回転体から離す力を発生させる1つの電磁コイルと、
前記1つの電磁コイルで発生した力を前記上制動レバーの他端側に伝達する上リンク機構及び下制動レバーの他端側に伝達する下リンク機構とを備えたことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
前記回転体を正面方向から見たときに、前記上制動子,前記下制動子,前記電磁コイル及び前記回転体の中心が、略直線状に並んでいることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記上制動レバーと前記下制動レバーの回動自在に固定される位置,制動バネで付勢される位置、及び、前記上リンク機構から前記上制動レバーに力の伝達される位置と前記下リンク機構から前記下制動レバーに力の伝達される位置が、それぞれ前記回転体の中心に対して略点対称位置に存在するように配置されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記上リンク機構及び下リンク機構は、前記電磁コイルへの通電により駆動するプランジャ,角部が回転自在に固定されたL型レバー,前記上制動レバー及び下制動レバーの他端側に一端が固定されたリンクとから構成され、前記プランジャにL型レバーの一端を固定し、前記L型レバーの他端はリンクの他端に固定されて構成されていることを特徴とする請求項3に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
出力軸を有する電動機と、
中心に前記電動機の出力軸が挿入固定された円盤状の回転体と、
前記回転体に固定されてロープを巻きかけられる綱車と、
前記回転体の上側外周側面に対向配置された上制動子及び前記回転体の下側外周側面に対向配置された下制動子とを有する巻上機において、
前記上制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記上制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された上制動レバー及び前記下制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記下制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された下制動レバーと、
前記制動バネの付勢力に抗して前記上制動子及び下制動子を回転体から離す力を発生させる1つの電磁コイルと、
前記1つの電磁コイルで発生した力を前記上制動レバーの他端側に伝達する上リンク機構及び下制動レバーの他端側に伝達する下リンク機構とを備えたことを特徴とする巻上機。
【請求項6】
昇降路内を上下に駆動する乗りかご及びつり合い錘と、
前記乗りかごとつり合い錘を連結するロープと、
前記ロープが巻きかけられ、前記ロープを駆動することで前記乗りかごとつり合い錘を上下に駆動させる巻上機とを有するエレベーターにおいて、
前記巻上機は、出力軸を有する電動機と、中心に前記電動機の出力軸が挿入固定された円盤状の回転体と、前記回転体に固定されてロープを巻きかけられる綱車と、前記回転体の上側外周側面に対向配置された上制動子及び前記回転体の下側外周側面に対向配置された下制動子と、前記上制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記上制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された上制動レバー及び前記下制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記下制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された下制動レバーと、前記制動バネの付勢力に抗して前記上制動子及び下制動子を回転体から離す力を発生させる1つの電磁コイルと、前記1つの電磁コイルで発生した力を前記上制動レバーの他端側に伝達する上リンク機構及び下制動レバーの他端側に伝達する下リンク機構とから構成されたことを特徴とするエレベーター。
【請求項1】
中心に電動機などの出力軸を挿入固定するための挿入部を有する円盤状の回転体と、前記回転体の上側外周側面に対向配置された上制動子及び前記回転体の下側外周側面に対向配置された下制動子とを有するブレーキ装置において、
前記上制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記上制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された上制動レバー及び前記下制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記下制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された下制動レバーと、
前記制動バネの付勢力に抗して前記上制動子及び下制動子を回転体から離す力を発生させる1つの電磁コイルと、
前記1つの電磁コイルで発生した力を前記上制動レバーの他端側に伝達する上リンク機構及び下制動レバーの他端側に伝達する下リンク機構とを備えたことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
前記回転体を正面方向から見たときに、前記上制動子,前記下制動子,前記電磁コイル及び前記回転体の中心が、略直線状に並んでいることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記上制動レバーと前記下制動レバーの回動自在に固定される位置,制動バネで付勢される位置、及び、前記上リンク機構から前記上制動レバーに力の伝達される位置と前記下リンク機構から前記下制動レバーに力の伝達される位置が、それぞれ前記回転体の中心に対して略点対称位置に存在するように配置されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記上リンク機構及び下リンク機構は、前記電磁コイルへの通電により駆動するプランジャ,角部が回転自在に固定されたL型レバー,前記上制動レバー及び下制動レバーの他端側に一端が固定されたリンクとから構成され、前記プランジャにL型レバーの一端を固定し、前記L型レバーの他端はリンクの他端に固定されて構成されていることを特徴とする請求項3に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
出力軸を有する電動機と、
中心に前記電動機の出力軸が挿入固定された円盤状の回転体と、
前記回転体に固定されてロープを巻きかけられる綱車と、
前記回転体の上側外周側面に対向配置された上制動子及び前記回転体の下側外周側面に対向配置された下制動子とを有する巻上機において、
前記上制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記上制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された上制動レバー及び前記下制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記下制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された下制動レバーと、
前記制動バネの付勢力に抗して前記上制動子及び下制動子を回転体から離す力を発生させる1つの電磁コイルと、
前記1つの電磁コイルで発生した力を前記上制動レバーの他端側に伝達する上リンク機構及び下制動レバーの他端側に伝達する下リンク機構とを備えたことを特徴とする巻上機。
【請求項6】
昇降路内を上下に駆動する乗りかご及びつり合い錘と、
前記乗りかごとつり合い錘を連結するロープと、
前記ロープが巻きかけられ、前記ロープを駆動することで前記乗りかごとつり合い錘を上下に駆動させる巻上機とを有するエレベーターにおいて、
前記巻上機は、出力軸を有する電動機と、中心に前記電動機の出力軸が挿入固定された円盤状の回転体と、前記回転体に固定されてロープを巻きかけられる綱車と、前記回転体の上側外周側面に対向配置された上制動子及び前記回転体の下側外周側面に対向配置された下制動子と、前記上制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記上制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された上制動レバー及び前記下制動子が取り付けられ、一端が回動自在に固定され他端が制動バネにより前記下制動子を前記回転体に押し付ける方向に付勢された下制動レバーと、前記制動バネの付勢力に抗して前記上制動子及び下制動子を回転体から離す力を発生させる1つの電磁コイルと、前記1つの電磁コイルで発生した力を前記上制動レバーの他端側に伝達する上リンク機構及び下制動レバーの他端側に伝達する下リンク機構とから構成されたことを特徴とするエレベーター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2010−70283(P2010−70283A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237308(P2008−237308)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]