説明

プラスチック接合成形品の成形方法およびプラスチック接合成形品の成形用の金型

【課題】
硬質樹脂部材と軟質樹脂部材が容易に分離しない接合成形品の形成する方法およびそのための金型を提供する
【解決手段】
硬質樹脂部材に軟質樹脂部材を接合するプラスチック接合成形品の成形方法であって、射出により成形された硬質樹脂部材を軟質樹脂部材の成形用の金型内に配置する硬質樹脂部材配置工程と、軟質樹脂部材を金型のキャビティに射出する軟質樹脂部材射出工程とからなるなり、硬質樹脂部材の貫通孔に入り込んで堅固に装着されることにより剥離することを防止できる接合成形品を形成する金型が、固定具と保持具とバリ防止押圧具と突出装置を備えている構造である

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬度の異なるプラスチック成形品を重ねあわせ形成したプラスチック接合成形品の成形方法および硬質樹脂部材と軟質樹脂部材を積層成形するためのプラスチック接合成形品の成形用の金型に関する。
【背景技術】
【0002】
使用目的に合わせて硬度の異なるプラスチック樹脂部材を複数枚重ね合わせて硬度の異なるプラスチックの積層したプラスチックの合成体を成形することが試みられている。身体に接触する部分に軟質樹脂部材を外面の当接面に硬質樹脂部材を配置した構造のプラスチック合成品が使用されている。外部からの衝撃に耐えられる当接面には硬度のある硬質樹脂部材を利用した外側保護部を用い、また、身体等に接触する可能性のある部分には比較的柔らかい内側部材として軟質樹脂部材を利用し、これを一体とした製品がプラスチック成形できることが望ましい。
軟質樹脂部材と硬質樹脂部材を一体成形することは、可能であるが、溶融温度の異なる熱可塑性樹脂を硬化させて形成する場合、一度の成形では困難であった。このような2重構造のプラスチックの積層体を作成する場合、まず溶融温度の高い樹脂素材を事前の第一次工程として片方の樹脂部材を射出成形して用意し、第二次の工程として既に射出成形して安定状態となっている樹脂部材を第二次工程の金型のキャビティ内に配置して別の樹脂部材を金型内に射出成形することが考えられる。(特許文献1乃至2参照)
【0003】
安定状態となっている樹脂部材が加熱によって軟化するのでこのような簡便な方法では限られた硬度と溶融温度の樹脂素材しか利用できず、比較的硬めの製品しかできないのが実情であった。また従来例では、外側の硬質樹脂部材の選択は比較的自由であるが内側の衝撃吸収用の樹脂としてはエラストマのような軟質樹脂部材を利用することができず、使用に耐える適度な硬さのプラスチックの異なる硬度のプラスチックを積層した合成体を作成することは困難であった。
プラスチック製の合成体は、スポーツの保護具として利用されている。例えばサッカーのスネ当てであるシンガードにあっては、外部側に硬質樹脂が使用され、硬質樹脂でできた板部の内側面に軟質の樹脂部材からなる衝撃吸収部が設けられている。(特許文献3参照)。
【0004】
そこで、プラスチックの成形を可能にした硬度を改良した、軟質樹脂部材を接触面に装備したプラスチック製の接合成品の成形方法および接合成品の安価なる安定提供が待たれていた。
【0005】
【特許文献1】特許公開2002−361768号公報
【特許文献2】特許公開2003−103561号公報
【特許文献3】登録実用新案第3051104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題を解決するために、硬質樹脂部材と軟質樹脂部材が分離しないように接合するために、硬質樹脂部材を予め射出成形しておいて、軟質樹脂部材の射出成形にあたって、予め射出成形した硬質樹脂部材を軟質射出成形の金型のキャビティの中に配置して軟質樹脂素材を射出成形する方法をとることにより、軟質樹脂部材が硬質樹脂部材に設けられた貫通孔に入り込んで堅固に装着されることにより剥離することを防止できるプラスチック接合成形品を形成する方法およびそのための金型を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために本発明に係るプラスチック接合成形品の成形方法は、硬質樹脂部材に軟質樹脂部材を接合するプラスチック接合成形品の成形方法であって、成形された硬質樹脂部材を軟質樹脂部材の成形用の金型内に配置する硬質樹脂部材配置工程と、軟質樹脂部材を金型のキャビティに射出する軟質樹脂部材射出工程と、からなる構成である。
また、軟質樹脂部材を金型に射出する軟質樹脂部材射出工程は、射出する軟質樹脂部材の樹脂温度を170度〜230度に設定する構成である。
さらに軟質樹脂部材射出工程は、軟質樹脂部材を硬質樹脂部材の周縁部に被覆する構成でもある。
【0008】
また、硬質樹脂部材は、硬質樹脂部材は、硬質塩化ビニル樹脂、またはポリプロピレン(PP)・ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂、またはポリスチレン(PS)・アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)等のスチレン系樹脂、さらにポリカーボネート(PC)・ポリカーボネートとABSのアロイ樹脂等のポリカーボネート系樹脂、さらにまたポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレート等のテレフタレート系樹脂のような熱可塑性樹脂素材、または熱硬化樹脂等の樹脂素材を射出成形する構成でもある。
さらに軟質樹脂部材は、軟質塩化ビニル樹脂、またはスチレン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー等の熱可塑性エラストマー、からなる構成である。
【0009】
また、硬質樹脂部材は、周縁に1つ若しくは複数の孔を穿設した構成であり、周縁に本体に比べて薄く形成した周縁部を周設した構成である。さらに、硬質樹脂部材は、軟質樹脂部材の成形用の金型に確実に装着させるために、硬質樹脂部材を貫通する孔が一つ若しくは複数穿設されている構成である。
【0010】
一方、軟質樹脂部材の射出成形用の金型は、成形機用の金型であって硬質樹脂部材を金型に固定する為の細棒状の固定具が軟質樹脂部材の成形用の金型のキャビティ(空洞部)に向かって水平方向に一つ若しくは複数立設されている構成である。
また、硬質樹脂部材が軟質樹脂部材の加圧射出時に金型内に加えられる圧力により変形すること又はズレることを防ぐために、硬質樹脂部材の周縁をキャビティ側に押圧保持する凸状の保持具がキャビティ(空洞部)に向かって水平方向に一つ若しくは複数立設されている構成である。
また、前記硬質樹脂部材の周縁部に軟質部材を被覆形成する際に生じる端縁の余分なバリの発生を防止するために、硬質樹脂部材の端部付近で被覆しない部分の裏面に当接し押圧する凸状のバリ防止押圧具がキャビティ(空洞部)に向かって水平方向に一つ若しくは複数立設されている構成である。
【0011】
さらに、金型は、射出成形終了後に成形したプラスチック接合成形品を金型から確実に破損することなく剥離させるために、任意の操作で成形品が斜めに突き出されるように水平方向にピンを突出する突出装置をゲート付近に配備した構成でもある。また、軟質樹脂部材を金型に設置した前記硬質樹脂部材の横方向から射出できるように、金型の上方若しくは側面方向若しくは下方に軟質樹脂部材を射出するゲートを形成した構成か、または、軟質樹脂部材を金型に設置した前記硬質樹脂部材の被覆面の中央から射出できるように、金型の中央に軟質樹脂部材を射出するゲートを形成した構成であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるプラスチック接合成形品の成形方法およびプラスチック接合成形品の成形用の金型は上記のような構成であるので、以下のような効果を奏する。
1.予め射出成形された硬質樹脂部材を軟質樹脂部材の射出成形する金型に装着してから軟質樹脂素材を金型のキャビティに射出するので軟質樹脂部材が射出の圧力で硬質樹脂部材に十分に密着接合するので硬質樹脂部材の内側に軟質部材が装着されるので、例えば肌に接触する面に軟質部材を当てれば十分の硬度と肌にやさしい接触が得られる。
2.硬質樹脂部材と軟質樹脂部材とを重ね合わせる工程の射出する軟質樹脂部材の樹脂温度を170度〜230度に設定しているので、軟質樹脂部材が可塑状態であるのに対して硬質樹脂部材が可塑状態に近づけることにより融着させることができる利点がある。
3.軟質樹脂部材を硬質樹脂部材の周縁部にも被覆しているので、硬質樹脂部材から軟質樹脂部材が剥がれ落ちることがない。
【0013】
4.利用できる硬質樹脂素材としては、硬質塩化ビニル樹脂、またはポリプロピレン(PP)・ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂、またはポリスチレン(PS)・アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)等のスチレン系樹脂、さらにポリカーボネート(PC)・ポリカーボネートとABSのアロイ樹脂等のポリカーボネート系樹脂、さらにまたポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレート等のテレフタレート系樹脂のような熱可塑性樹脂素材、または熱硬化樹脂等の樹脂素材が利用可能であるので、殆どの素材が便利である。
5.軟質樹脂素材としては、軟質塩化ビニル樹脂、またはスチレン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー等の熱可塑性エラストマーが利用できるので充分に軟度の高い素材でも使用可能である。
【0014】
6.硬質樹脂部材の周縁に複数の孔を穿設し、その孔の中に軟質樹脂部材を埋め込むので軟質樹脂部材は硬質樹脂部材から簡単には離れることはないので激しい運動の際にも防具として充分に機能を果たすことができる。
7.また、硬質樹脂部材の周縁に本体に比べて薄く形成した周縁部を周設する構成を採用した構成では、更に多くの軟質樹脂部材が周縁を取り囲むので、硬質樹脂部材から軟質樹脂部材が外れることはない。
8.さらに、孔を硬質樹脂部材の本体の中央に貫通する孔を穿孔する構成とすることにより軟質樹脂部材はその孔にも入ってさらに硬質樹脂部材から離れ難くなる。
9.軟質樹脂部材の金型のキャビティの中に硬質樹脂素材で形成された成形品を挿入させて固定するピンが立設されているので、硬質樹脂部材に設けられた孔にそのピンを挿入するだけの簡単な機構で硬質樹脂部材を金型内で固定することができる。
【0015】
10.また、硬質樹脂部材が軟質樹脂素材を射出する際に金型内で変形したりずれるのを防ぐために、金型の硬質樹脂部材の周縁に保持ピンがキャビティ(空洞部)に向かって水平方向に一つ若しくは複数立設されているので簡単な構造で変形またはズレを防止することができる。
11.硬質樹脂部材の周縁に余分な軟質樹脂部材がバリとして入り込まないように硬質樹脂部材を強く金型に押し付けて軟質樹脂部材の流入を防いでいるので仕上がりが大変綺麗である。
12.完成品である接合成形品を金型から取り出す際に綺麗に剥離できるように軟質樹脂部材と金型との間に空気を導入する剥離のための突出装置が金型に設けられているので、充分柔らかい接合成形品であっても損傷することなく射出成形機の金型から剥離することができる。
13.軟質樹脂部材の射出ゲートは何処に設けてもよいが、圧力と破損の可能性を考えて、上端や側端に設けているので邪魔にならずに取出しが簡便である。
14.射出ゲートは、軟質樹脂部材の圧力を均等に及ぼすという観点から接合成形品の中央に設けることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明に係るプラスチック接合成形品の成形方法およびそれに使用する形成用の金型の構成を図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。図1は本発明のプラスチックプラスチック接合成形品の成形方法の工程を示すフローチャートであり、図2はプラスチック接合成形品の成形用の金型の平面図であり、図3は同じくプラスチック接合成形品の成形用の金型の平面図である。図4は軟質樹脂部材の金型に装着する硬質樹脂部材の斜視図であり、図5は同じく硬質樹脂部材の別の実施例の平面図であり、図6は硬質樹脂部材の部分断面図である。
【0017】
図1により本発明のプラスチック接合成形品の成形方法を詳細に説明する。
本発明のプラスチック接合成形品の成形方法10は、硬質樹脂部材配置工程20と、軟質樹脂部材射出工程30とからなる。
硬質樹脂部材配置工程20は、予め射出成形され、形状が安定している硬質樹脂部材を軟質樹脂部材の成形用金型に配置する工程20であり、硬質樹脂部材の射出成形については従来例による。この実施例では射出成形により皇室樹脂部材を成形しているが、成形方法には限定されない。硬質樹脂部材配置工程20で使用する硬質樹脂素材としては、ポリプロピレン、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカボネード、または熱硬化性樹脂等の樹脂材を射出成形したものである。この実施例ではポリプロピレンを使用して射出成形を行っている。
【0018】
軟質樹脂部材射出工程30は、予め射出成形されて形状が安定している硬質樹脂部材40を軟質樹脂部材50の成形用の金型に配置してから軟質樹脂素材を軟質樹脂部材の成形用の金型に射出成形する工程である。
軟質樹脂素材を金型60のキャビティに射出する工程であり、射出成形を行う軟質樹脂素材としては、主に熱可塑性エラストマーであり、スチレン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、が使用される可能性がある。ただし、この実施例ではスチレン系エラストマーを採用している。
【0019】
硬質樹脂部材に軟質樹脂部材を射出成形することは、従来では成形温度の関係で、実現不可能であった。軟質樹脂部材の温度を上げて射出成形を行うと硬質樹脂部材が変形してしまい、逆に温度を下げて射出成形を行うのでは軟質樹脂部材が完全に融着しないことが多く、剥離の原因となる不完全な製品となる可能性が高かった。
本発明のプラスチック接合成形品の成形方法では、詳細にはポリプロピレンを射出成形した硬質樹脂部材40に、190度〜230度の範囲に設定した軟質樹脂部材50を射出成形することにより、硬質樹脂部材が変形せず、確実に融着させることを可能としている。この設定温度は硬質樹脂部材としてポリプロピレン、軟質樹脂部材としてスチレン系エラストマーを選択した場合に実験の結果として得られた許容温度であり、この温度以外でも組み合わせによって他にも適宜に融着する可能性も考えられる。
【0020】
本発明では硬質樹脂部材40に軟質樹脂部材50を確実に融着させるために、硬質樹脂部材の形状を特殊な構造とすることで分離したり破損することのない接合成形品11の完成品の形成を実現可能にしている。軟質樹脂部材射出工程30で射出成形する際に、軟質樹脂部材は流体であるため、硬質樹脂部材の形状によって様々な形状の被覆を可能としている。製品としては、使用中に被覆した軟質樹脂部材が硬質樹脂部材から剥離しないことが最重要課題であり、これを実現するために硬質樹脂部材の周縁に孔を設けて、軟質樹脂部材を硬質樹脂部材の中に埋め込むと同時に周縁を上下両側および端面から被覆することにより剥離しにくい融着を実現している。図4に示すように、この接合を実現するために硬質樹脂部材40の周縁に貫通孔42を穿孔してこの孔にも軟質樹脂部材が流入することにより、より確実に硬質樹脂部材を融着させることを可能にしている。また別の貫通孔43を設けて、軟質樹脂部材を部分的に流入させることも可能である。
さらに、周縁を硬質樹脂部材の中心よりも周縁を薄く設定した周縁部44をもうけ、周縁部44にも孔42を設けることにより軟質樹脂部材を周縁だけ両面に成形されるようにすることも可能である。
【0021】
次に、本発明のプラスチック接合成品の金型について詳細に説明する。金型60は固定側60aと可動側60bに分けられる。この実施例では可動側に硬質樹脂部材40をキャビティとなる空洞(間隙)を置いて配置する構成である。可動側の金型には、硬質樹脂部材を確実に固定するための固定具62が設けられ、この実施例では確実に固定するために4本の固定具62が配置されている。この固定具は、固定側の金型のキャビティに向かって略水平方向に立設され、硬質樹脂部材40に設けられた孔42に係合して固定する。
【0022】
また、可動側金型60bには、軟質樹脂部材の射出成形時に硬質樹脂部材が変形若しくはズレを防止するための凸状の保持具66が硬質樹脂部材40を側面から押圧するように形成されている。保持具を設けずに射出成形を行うと、硬質樹脂部材も変形及びズレが生じてしまう場合がある。これを防止し、不良率を下げる効果がある。
さらに、可動側金型60bには、裏面から表面に渡って接合される軟質樹脂部材のバリを防止するために、硬質樹脂部材を裏面から固定側金型方向に押圧するバリ防止押圧部64を複数設けている。図4に開示されている形状の硬質樹脂部材で、周縁だけに軟質樹脂部材を接合させる際に、裏面から押圧することにより、表面の不必要な部分には軟質樹脂部材が接合されないように防止することが可能となる。
【0023】
さらに、射出成形終了後に成形したプラスチック接合成品を確実に破損することなく剥離させるために、任意の操作で水平方向にピンを突出する突出装置68を設けている。この実施例では、ゲート付近のバリ防止押圧部内部に突出装置68が設けられており、この突出装置により、突出させた際にプラスチック接合成品が斜めに剥がれるため、容易に空気が軟質樹脂部材と金型の間に流入することにより簡単に取り出すことを可能としている。本発明では、軟質樹脂部材にエラストマを採用しているため、水平方向の引っ張り強度は非常に強いものとなっている。従って、空隙を強制的に設けることにより、容易に取り出すことが可能となる。
【0024】
次に、本発明のプラスチック接合成品の成形方法を動作手順によって詳細に説明する。
まず、射出成形を行い安定した硬質樹脂部材40を可動側金型60bにセットする。この実施例の硬質樹脂部材は、ポリプロピレンを成形した部材となっており、薄く設定され、さらに複数の孔が穿設された周縁が設けられ、さらに、可動側金型に確実に固定されるための固定具が挿入される孔が4箇所形成されている。この4箇所の孔に固定具を挿入し、成形時に動かないように確実な固定を行う。
【0025】
また、この金型では、硬質樹脂部材を側面から保持する保持具が3箇所設けられており、確実に固定することにより、保持具が側面から当接する構成である。また、裏面ではバリ防止部が当接する構成でもある。
次に、この状態で軟質樹脂部材の射出成形を行う。この実施例ではスチレン系エラストマーを使用している。スチレン系エラストマーを190度〜230度に設定することにより、硬質樹脂部材が融解せず、確実に接合させることができるためである。固定された硬質樹脂部材に、金型のゲートから軟質樹脂部材が射出される。その時に、射出された軟質樹脂部材50は、硬質樹脂部材40の裏面全体に接合するだけでなく、周縁の孔42により、周縁の表面に流入し、周縁を覆い接合する。周縁を覆う際に、可動側金型に設けられたバリ防止押圧具64により、周縁付近では固定側金型に押圧されている状態であるため、軟質樹脂部材が周縁から広がらずに確実に周縁だけを接合させることが可能である。
この周縁の孔42により、裏面から表面に軟質樹脂部材50が固定されるので、単に裏面から表面に接合させる構造よりも、成形後に軟質樹脂部材が硬質樹脂部材から剥がれることを防止する効果がある。
【0026】
射出成形後に硬質樹脂部材40と軟質樹脂部材50が接合したプラスチック接合成品は、可動側金型に密着している状態となる。人の力で強制的に引っ張り剥がすことは可能であるが、確実に安定していない軟質樹脂部材を破損させてしまう虞がある。
また、この実施例で使用しているエラストマーは、密着した状態では簡単に剥がれないことがあるが、吸盤と同様に、空気を流入させることにより簡単に剥がすことができる。そこで、この実施例では、ゲート付近に設けられるバリ防止押圧具の2箇所を中空に設定し、内部にピンが設けられた突出装置を設けることにより、任意、若しくは自動で突出させてプラスチック接合成品を斜めに押し出し、空気を流入させて簡単に取り出せることを可能としている。
【0027】
この実施例では、硬質樹脂部材50の側面方向に設けられたゲート70により軟質樹脂部材を射出させてプラスチック接合成品を製造する方法としているが、ゲートを硬質樹脂部材の裏面中央部から射出する構成とすることにより、確実に成形させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】プラスチックプラスチック接合成形品の成形方法の工程を示すフローチャート
【図2】プラスチック接合成形品の成形用の金型の平面図
【図3】プラスチック接合成形品の成形用の金型の平面図
【図4】軟質樹脂部材の金型に装着する硬質樹脂部材の斜視図
【図5】同じく硬質樹脂部材の別の実施例の平面図
【図6】硬質樹脂部材の部分断面図
【符号の説明】
【0029】
10 プラスチック接合成形品の成形方法
11 接合成形品
20 硬質樹脂部材配置工程
30 軟質樹脂部材射出工程
40 硬質部材
42 貫通孔
43 貫通孔
44 周縁部
50 軟質樹脂部材
60 金型
60a 固定側金型
60b 移動側金型
62 固定具
64 バリ防止押圧部
66 保持具
68 突出装置
70 ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質樹脂部材に軟質樹脂部材を接合するプラスチック接合成形品の成形方法において、
成形された硬質樹脂部材を軟質樹脂部材の成形用の金型内に配置する硬質樹脂部材配置工程と、
軟質樹脂部材を金型のキャビティに射出する軟質樹脂部材射出工程と、
からなることを特徴とするプラスチック接合成形品の成形方法。
【請求項2】
前記軟質樹脂部材を金型に射出する軟質樹脂部材射出工程は、射出する軟質樹脂部材の樹脂温度を170度〜230度に設定することを特徴とする請求項1記載のプラスチック接合成形品の成形方法。
【請求項3】
前記軟質樹脂部材射出工程は、軟質樹脂部材を硬質樹脂部材の周縁部に被覆することを特徴とする請求項1記載のプラスチック接合成形品の成形方法。
【請求項4】
前記硬質樹脂部材は、硬質塩化ビニル樹脂、またはポリプロピレン(PP)・ポリエチレン(PE)を含むオレフィン系樹脂、またはポリスチレン(PS)・アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)を含むスチレン系樹脂、さらにポリカーボネート(PC)・ポリカーボネートとABSのアロイ樹脂を含むポリカーボネート系樹脂、さらにまたポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレートを含むテレフタレート系樹脂のような熱可塑性樹脂素材、または熱硬化性樹脂の樹脂素材を射出成形したことを特徴とする請求項1記載のプラスチック接合成形品の成形方法。
【請求項5】
前記軟質樹脂部材は、軟質塩化ビニル樹脂、またはスチレン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマーを含む熱可塑性エラストマー、であることを特徴とする請求項1記載のプラスチック接合成形品の成形方法。
【請求項6】
前記硬質樹脂部材は、周縁に1つ若しくは複数の孔を穿設したことを特徴とする請求項1記載のプラスチック接合成形品の成形方法。
【請求項7】
前記硬質樹脂部材は、周縁に本体に比べて薄く形成した周縁部を周設したことを特徴とする請求項1記載のプラスチック接合成形品の成形方法。
【請求項8】
前記硬質樹脂部材は、軟質樹脂部材の成形用の金型に確実に装着させるために、硬質樹脂部材を貫通する孔が一つ若しくは複数穿設されていることを特徴とする請求項1記載のプラスチック接合成形品の成形方法。
【請求項9】
軟質樹脂部材の射出成形用の金型は、成形機用の金型であって硬質樹脂部材を金型に固定する為の細棒状の固定具が軟質樹脂部材の成形用の金型のキャビティ(空洞部)に向かって水平方向に一つ若しくは複数立設されていることを特徴とするプラスチック接合成形品の成形用の金型。
【請求項10】
前記軟質樹脂部材の射出成形用の金型は、硬質樹脂部材が軟質樹脂部材の加圧射出時に金型内に加えられる圧力により変形すること又はズレることを防ぐために、硬質樹脂部材の周縁をキャビティ側に押圧保持する凸状の保持具がキャビティ(空洞部)に向かって水平方向に一つ若しくは複数立設されていることを特徴とするプラスチック接合成形品の成形用の金型。
【請求項11】
前記軟質樹脂部材の射出成形用の金型は、前記硬質樹脂部材の周縁部に軟質部材を被覆形成する際に生じる端縁の余分なバリの発生を防止するために、前記硬質樹脂部材の端部付近で被覆しない部分の裏面に当接し押圧する凸状のバリ防止押圧具がキャビティ(空洞部)に向かって水平方向に一つ若しくは複数立設されていることを特徴とするプラスチック接合成形品の成形用の金型。
【請求項12】
前記軟質樹脂部材の射出成形用の金型は、射出成形終了後に成形したプラスチック接合成形品を金型から確実に破損することなく剥離させるために、任意の操作で成形品が斜めに突き出されるように水平方向にピンを突出する突出装置をゲート付近に配備したことを特徴とする請求項9乃至11記載のプラスチック接合成形品の成形用の金型。
【請求項13】
前記軟質樹脂部材を金型に設置した前記硬質樹脂部材の横方向から射出できるように、金型の上方若しくは側面方向若しくは下方に軟質樹脂部材を射出するゲートを形成したことを特徴とする請求項9乃至11記載のプラスチック接合成形品の成形用の金型。
【請求項14】
請求項1記載のプラスチック接合成形品の成形方法において、前記軟質樹脂部材を金型に設置した前記硬質樹脂部材の被覆面の中央から射出できるように、金型の中央に軟質樹脂部材を射出するゲートを形成したことを特徴とする請求項9乃至11記載のプラスチック接合成形品の成形用の金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−188892(P2008−188892A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26191(P2007−26191)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(500505614)有限会社一色製作所 (3)
【Fターム(参考)】