説明

プリンタおよびプリンタの制御方法

【課題】遊星歯車を駆動するためのモータの動力を被駆動部に適切に伝達することが可能となるプリンタを提供すること。
【解決手段】プリンタは、被駆動部32と、被駆動部32を駆動するモータ38と、駆動歯車39と、従動歯車41と、太陽歯車や遊星歯車等から構成される遊星歯車部40と、被駆動部32の状態を検出するための検出装置31と、モータ38を制御する制御部60とを備えている。制御部60を構成するモータ駆動部63は、検出装置31からの出力信号に基づいて被駆動部32の目標停止状態を状態検出部62が検出するまで、モータ38の駆動トルクを所定の第1設定トルクから所定の第2設定トルクまで上げていくようにモータ38を駆動するとともに、第2設定トルクで駆動しても目標停止状態を検出できないときに、第2設定トルクよりも小さな駆動トルクでモータを再度、駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタおよびプリンタの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用紙等の印刷媒体へ印刷を行うインクジェットプリンタとして、インク滴を吐出する印刷ヘッドと、印刷ヘッドのインク吐出面に対向するプラテンとの隙間(ギャップ)を調整するプラテンギャップ調整装置を備えたプリンタが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のプリンタでは、3つの異なる半径を有する偏心カムが、DCモータで回転駆動され、この偏心カムの回転によって、印刷ヘッドを搭載しているキャリッジの高さ(具体的には、キャリッジを案内するガイドシャフトの高さ)を変更することで、プラテンギャップの調整が行われている。
【0003】
また、特許文献1に記載のプリンタは、プラテンギャップが所定量となる位置にキャリッジの高さを設定するために、偏心カムとともに回動する検出板と、この検出板を検出する光学式センサを備えている。検出板は、キャリッジの設定高さに対応する位置に形成された径方向外方へ突出するフラグを有する円板状の部材である。また、光学式センサは、検出板のフラグを検出する位置に配置されている。そして、特許文献1に記載のプリンタでは、設定したいキャリッジの高さに対応するフラグの端部を光学式センサが検出した後にモータを減速させ、このフラグが検出されている範囲で停止させることで、プラテンギャップを所定量に設定している。また、偏心カムを回転駆動するモータは、このモータの過加速を防止して、偏心カムの停止精度を確保するため、モータの駆動トルクが段階的に引き上げられていくように駆動されている。
【0004】
また、印刷用紙へ印刷を行うプリンタとして、モータ軸に取り付けられた太陽歯車と、この太陽歯車に咬合するとともに太陽歯車の回転中心を中心として回動可能な遊星歯車とを備えたロール紙用のプリンタが知られている(たとえば、特許文献2参照)。このプリンタでは、印刷用紙の搬送ローラを回転駆動させるための従動歯車と遊星歯車との咬合および切離しと、印刷用紙の切断を行うカッターユニットを移動させるための従動歯車と遊星歯車との咬合および切離しとが可能となっている。すなわち、特許文献2に記載のプリンタでは、太陽歯車と遊星歯車とを用いることで、1個のモータで、搬送ローラとカッターユニットとの2つの被駆動部の駆動を行うことが可能となっている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−103835号公報
【特許文献2】特開2003−118189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のように、モータの駆動トルクが段階的に引き上げられていくようにモータが駆動される場合には、モータの過加速を防止して、モータの停止精度(すなわち、被駆動部となる偏心カムの停止精度)を確保することが可能である。一方、特許文献2に記載のプリンタのように、遊星歯車を用いた場合には、1個のモータで2つの被駆動部の動作を行うことができ、プリンタの構成を簡素化することが可能となる。しかしながら、特許文献1に記載の制御方法を利用しつつ、遊星歯車を駆動するモータを適切に制御して、モータの動力を被駆動部に適切に伝達するための具体的な手段は、特許文献1および特許文献2には開示されていない。
【0007】
そこで、本発明の課題は、被駆動部の停止精度を確保するとともに、遊星歯車を用いて構成を簡素化する場合であっても、遊星歯車を駆動するためのモータの動力を被駆動部に適切に伝達することが可能となる構成を備えるプリンタを提供することにある。また、本発明の課題は、被駆動部の停止精度を確保するとともに、遊星歯車を用いてプリンタの構成を簡素化する場合であっても、遊星歯車を駆動するためのモータの動力を被駆動部に適切に伝達することが可能なプリンタの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のプリンタは、印刷媒体に印刷を行うために駆動される被駆動部と、被駆動部を駆動するモータと、モータに連結された駆動歯車と、被駆動部に連結された従動歯車と、駆動歯車に咬合する太陽歯車と、太陽歯車に咬合するとともに従動歯車に咬合可能な遊星歯車と、遊星歯車を回転可能に保持するとともにモータの動力で遊星歯車と一緒に太陽歯車の回転中心を中心に従動歯車と遊星歯車との咬合方向へ回動可能な保持部材と、摩擦力を利用するとともに保持部材へのモータの動力伝達を停止可能なクラッチ手段と、モータから被駆動部への動力伝達の方向において遊星歯車よりも被駆動部側に配置され被駆動部の状態を検出するための検出装置と、モータを制御する制御部とを備え、制御部は、検出装置からの出力信号に基づいて被駆動部の目標停止状態を検出する状態検出部と、状態検出部が目標停止状態を検出するまで、モータの駆動トルクを所定の第1設定トルクから所定の第2設定トルクまで上げていくようにモータを駆動するとともに、第2設定トルクで駆動しても状態検出部が目標停止状態を検出できないときに、第2設定トルクよりも小さな駆動トルクでモータを再度、駆動するモータ駆動部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のプリンタは、太陽歯車と遊星歯車とを備えているため、2つの被駆動部の駆動を1個のモータで行うことが可能となり、構成を簡素化することが可能となる。また、本発明では、モータ駆動部は、状態検出部が被駆動部の目標停止状態を検出するまで、モータの駆動トルクを所定の第1設定トルクから所定の第2設定トルクまで上げていくようにモータを駆動するため、モータの過加速を防止して、被駆動部の停止精度を確保することが可能になる。さらに、本発明では、保持部材へのモータの動力伝達を停止可能なクラッチ手段を備えているため、被駆動部側に予期せぬ負荷が生じる等の理由で、モータや太陽歯車あるいは遊星歯車等に過負荷が働くような状況が生じても、モータや太陽歯車あるいは遊星歯車等の損傷を防止できる。
【0010】
ここで、遊星歯車の動力が伝達される従動歯車の咬合前の停止状態によっては、咬合時に、従動歯車と遊星歯車とが適切に咬合しない場合がある。そのため、従動歯車と遊星歯車とが適切に咬合しないことに起因して、クラッチ手段で滑りが生じ、保持部材へのモータの動力伝達が停止されて、そのまま、従動歯車と遊星歯車とが咬合しないといった事態が生じうる。本発明では、モータ駆動部は、第2設定トルクでモータを駆動しても状態検出部が目標停止状態を検出できないときに、第2設定トルクよりも小さな駆動トルクでモータを再度、駆動している。そのため、クラッチ手段で滑りが生じ、保持部材へのモータの動力伝達が停止されてしまう場合であっても、モータの駆動トルクを小さくすることで、その滑りを停止させ、保持部材へのモータの動力伝達を再開させることが可能になる。その結果、従動歯車と遊星歯車とを適切に咬合させることが可能となり、遊星歯車を駆動するためのモータの動力を被駆動部に適切に伝達することが可能となる。
【0011】
本発明において、第1設定トルクは、駆動トルクの設定最小トルクであり、第2設定トルクは、駆動トルクの設定最大トルクであることが好ましい。このように第1設定トルクが駆動トルクの設定最小トルクであると、より小さな駆動トルクからモータの駆動を開始するため、より適切に、モータの過加速を防止して、被駆動部の停止精度を確保することが可能になる。また、第2設定トルクが駆動トルクの設定最大トルクであると、より大きな駆動トルクでモータを駆動できるため、被駆動部に大きな負荷がかかる場合であっても、被駆動部を駆動することが可能になる。
【0012】
本発明において、モータ駆動部は、設定最大トルクで駆動しても、目標停止状態を検出できないときに、目標停止状態を検出するまで、モータの駆動トルクを設定最小トルクから設定最大トルクまで再度上げていくようにモータを駆動することが好ましい。このように構成すると、モータの駆動トルクを設定最小トルクまで一旦下げることができるため、より効果的に、クラッチ手段での滑りを停止させ、保持部材へのモータの動力伝達を再開させることが可能になる。
【0013】
本発明において、モータ駆動部は、設定最大トルクで駆動しても、目標停止状態を検出できないときに、モータを停止させずに、モータの駆動トルクを設定最小トルクまで下げることが好ましい。このように構成すると、モータの駆動力をより早く被駆動部に伝達することが可能になる。そのため、たとえば、スループット(単位時間当たりの印刷枚数)等を向上させることが可能になる。
【0014】
本発明において、被駆動部は、たとえば、印刷前の印刷媒体が載置される媒体供給ホッパと、媒体供給ホッパから印刷媒体が印刷される印刷領域に向かって搬送される印刷媒体の重送を防止するための重送防止ローラと、指定印刷枚数以上の印刷媒体を媒体供給ホッパへと戻すための媒体戻しレバーとを備える印刷媒体供給部である。このように、被駆動部が印刷媒体供給部である場合、媒体供給ホッパに載置される印刷媒体の状態等によって、媒体戻しレバーが印刷媒体を媒体供給ホッパに戻せないような状況が生じうるが、本発明では、設定最大トルクでモータを駆動しても状態検出部が目標停止状態を検出できないときには、モータ駆動部が、モータを再度、設定最大トルクまで駆動させることができるため、媒体戻しレバーによって印刷媒体を媒体供給ホッパに戻すことが可能になる。
【0015】
また、上記の課題を解決するため、本発明は、印刷媒体に印刷を行うために駆動される被駆動部と、被駆動部を駆動するモータと、モータに連結された駆動歯車と、被駆動部に連結された従動歯車と、駆動歯車に咬合する太陽歯車と、太陽歯車に咬合するとともに従動歯車に咬合可能な遊星歯車と、遊星歯車を回転可能に保持するとともにモータの動力で遊星歯車と一緒に太陽歯車の回転中心を中心に従動歯車と遊星歯車との咬合方向へ回動可能な保持部材と、摩擦力を利用するとともに保持部材へのモータの動力伝達を停止可能なクラッチ手段と、モータから被駆動部への動力伝達の方向において遊星歯車よりも被駆動部側に配置され被駆動部の状態を検出するための検出装置とを備えるプリンタを制御するプリンタの制御方法であって、検出装置からの出力信号に基づいて被駆動部の目標停止状態を検出するまで、モータの駆動トルクを所定の第1設定トルクから所定の第2設定トルクまで上げていくようにモータを駆動する駆動ステップと、第2設定トルクで駆動しても検出装置からの出力信号に基づいて目標停止状態を検出できないときに、第2設定トルクよりも小さな駆動トルクでモータを再度、駆動する再駆動ステップとを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明のモータの制御方法では、第2設定トルクでモータを駆動しても検出装置からの出力信号に基づいて被駆動部の目標停止状態を検出できないときに、再駆動ステップにおいて、第2設定トルクよりも小さな駆動トルクでモータを再度、駆動している。そのため、クラッチ手段で滑りが生じ、保持部材へのモータの動力伝達が停止されてしまう場合であっても、モータの駆動トルクを小さくすることで、クラッチ手段での滑りを停止させ、保持部材へのモータの動力伝達を再開させることが可能になる。したがって、従動歯車と遊星歯車とを適切に咬合させることが可能となり、その結果、太陽歯車と遊星歯車とを備えることでプリンタの構成を簡素化し、かつ、駆動ステップで検出装置からの出力信号に基づいて被駆動部の目標停止状態を検出するまで、モータの駆動トルクを所定の設定最小トルクから所定の設定最大トルクまで上げていくようにモータを駆動することで、被駆動部の停止精度を確保する場合であっても、遊星歯車を駆動するためのモータの動力を被駆動部に適切に伝達することが可能となる。また、モータや太陽歯車あるいは遊星歯車等に過負荷が働くような状況が生じても、クラッチ手段によって、モータや太陽歯車あるいは遊星歯車等の損傷を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
(プリンタの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるプリンタ1の主要部の概略構成を示す側面図である。図2は、図1に示す後面給紙部32の駆動機構30および制御部60の概略構成を模式的に示す図である。図3は、図2に示す遊星歯車部40を示す部分断面図である。図4は、図3のE−E方向から遊星歯車部40を示す図である。図5は、図1に示す後面給紙部32の動作を説明するための図であり、(A)は後面給紙部32の初期状態を示し、(B)は後面給紙部32からの給紙が可能な状態を示し、(C)は紙戻しレバー29によって給紙ホッパ26へ印刷用紙Pが戻されたときの状態を示す。図6は、図2に示す位置検出装置31を示す側面図である。
【0019】
本形態のプリンタ1は、印刷媒体となる印刷用紙Pに対してインク滴を吐出して印刷を行うインクジェットプリンタであり、前面側(図1の左側)および後面側(図1の右側)の両面側からの印刷用紙Pの供給が可能となっている。このプリンタ1は、図1に示すように、インク滴を吐出する印刷ヘッド2が搭載されたキャリッジ3と、印刷用紙Pを副走査方向SSへ搬送したり排出するためのPF駆動ローラ4、PF従動ローラ5、排紙駆動ローラ6および排紙従動ローラ7と、印刷ヘッド2のインク吐出面と対向するプラテン8と、後述の給紙ホッパ26等から供給された印刷用紙Pの通過等を検出する紙検出装置9と、印刷ヘッド2で印刷が行われる印刷領域に向かって前面側から印刷用紙Pを供給するための前面給紙機構10と、印刷領域に向かって後面側から印刷用紙Pを供給するための後面給紙機構11とを備えている。なお、本形態における印刷媒体には、通常の文書印刷に使用される普通紙、写真の印刷に使用される写真用紙、普通紙や写真用紙よりも厚い厚紙等の印刷用紙Pの他に、シールやOHPシート等の透明フィルム等が含まれる。
【0020】
キャリッジ3は、不図示のCRモータに連結され、CRモータで駆動されるとともにガイドシャフト12に案内されて主走査方向(図1の紙面垂直方向)へ移動する。PF駆動ローラ4は、不図示のPFモータに連結されている。PF従動ローラ5は、不図示のバネによってPF駆動ローラ4へ向かって付勢され、PF駆動ローラ4とともに回転する。排紙駆動ローラ6は、不図示のプーリやベルト等を介してPF駆動ローラ4に連結され、PF駆動ローラ4と略同一の周速度で回転する。排紙従動ローラ7は、不図示のバネによって排紙駆動ローラ6に向かって付勢され、排紙駆動ローラ6とともに回転する。紙検出装置9は、不図示の発光素子と受光素子とが上下方向で対向配置された光学式の検出装置であり、発光素子と受光素子との間を通過する印刷用紙Pの幅方向の一端部分を検出する。
【0021】
前面給紙機構10は、前面側から供給される印刷用紙Pがセットされる給紙カセット20と、給紙カセット20内の印刷用紙Pをプリンタ1の内部へ供給する前面給紙ローラ21と、前面給紙ローラ21を回転可能に保持するアーム22と、前面給紙ローラ21によって取り込まれる印刷用紙Pが通過する搬送路23と、搬送路23を通過する印刷用紙Pを搬送するための搬送駆動ローラ24と、印刷用紙Pの重送(複数枚の印刷用紙Pがプリンタ1の内部へ1度に供給されること)を防止するための前面リタードローラ25とを備えている。
【0022】
前面給紙ローラ21は、不図示の遊星歯車列等を介してASFモータ(図示省略)に連結されている。アーム22は、回動軸22aを中心に揺動可能に構成され、不図示の付勢部材によって、図1の時計方向へ付勢されている。また、前面給紙ローラ21は、アーム22の先端に取り付けられ、印刷用紙Pの上面に圧接している。
【0023】
搬送駆動ローラ24は、不図示の歯車列等を介して、PF駆動ローラ4を駆動するPFモータ(図示省略)に連結されている。前面リタードローラ25は、回転用の駆動源に連結されていない従動ローラである。この前面リタードローラ25は、カム機構および従動歯車19(図4参照)から構成される歯車列等を介して、後述の遊星歯車部40に連結可能になっている。そして、前面リタードローラ25は、遊星歯車部40に連結される後述のASFサブモータ38から伝達される動力によって、図1の実線に示す位置と二点鎖線で示す位置との間で移動可能となっている。すなわち、前面リタードローラ25は、前面給紙ローラ21によって前面側から給紙が行われる場合には、図1の実線で示すように、搬送駆動ローラ24に近づき、前面側から給紙が行われない場合には、搬送駆動ローラ24から離れる。本形態では、前面リタードローラ25は、印刷用紙Pに印刷を行うために駆動される被駆動部となっている。すなわち、前面リタードローラ25は、印刷用紙Pを前面側から供給するために駆動される被駆動部となっている。
【0024】
後面給紙機構11は、後面側から供給される印刷前の印刷用紙Pがセットされる媒体給紙ホッパとしての給紙ホッパ26と、給紙ホッパ26上の印刷用紙Pをプリンタ1の内部へ(すなわち、印刷領域に向かって)供給する後面給紙ローラ27と、印刷用紙Pの重送を防止するための重送防止ローラとしての後面リタードローラ28と、指定印刷枚数の印刷用紙Pを給紙した後に、残りの印刷用紙Pを給紙ホッパ26へ確実に戻すための媒体戻しレバーとしての紙戻しレバー29とを備えている。本形態では、給紙ホッパ26と後面リタードローラ28と紙戻しレバー29とによって、印刷用紙Pに印刷を行うために駆動される被駆動部が構成されている。より具体的には、給紙ホッパ26と後面リタードローラ28と紙戻しレバー29とによって、印刷用紙Pを後面側から供給するための印刷媒体供給部としての後面給紙部32が構成されている。
【0025】
給紙ホッパ26、後面リタードローラ28および紙戻しレバー29は、後述のように、揺動可能に構成されている。そのため、後面給紙機構11は、図2に模式的に示すように、給紙ホッパ26、後面リタードローラ28および紙戻しレバー29を揺動させるための駆動機構30と、給紙ホッパ26、後面リタードローラ28および紙戻しレバー29の状態を検出するための検出装置としての位置検出装置31とを備えている。なお、位置検出装置31は、前面リタードローラ25の状態を検出するためにも用いられる。また、駆動機構30を構成する後述のサブモータ38と駆動歯車39と遊星歯車部40とは、前面リタードローラ25の駆動にも用いられる。
【0026】
後面給紙ローラ27は、前面給紙ローラ21と同様に、不図示の遊星歯車列等を介してASFモータに連結されている。本形態では、遊星歯車列の作用によって、ASFモータが一方向へ回転すると後面給紙ローラ27が回転して後面側から給紙が行われ、ASFモータが他方向へ回転すると前面給紙ローラ21が回転して前面側から給紙が行われる。
【0027】
給紙ホッパ26は、印刷用紙Pを載置可能な板状部材であり、上端側に設けられた回動軸26aを中心に揺動可能となっている。また、給紙ホッパ26の印刷用紙Pの載置面の下端部には、後面リタードローラ28とともに印刷用紙Pの重送を防止するため、コルク等の摩擦係数の比較的大きな材料で形成された摩擦部材33が取り付けられている。後面リタードローラ28は、後面給紙ローラ27の斜め下側に対向する位置に配置されている。後面リタードローラ28の外周は、摩擦係数の大きな部材によって形成されている。また、後面リタードローラ28は、図2に示すように、所定の回動軸34を中心に揺動可能なアーム35に回転可能に保持されている。アーム35の一端部分(図2の右端部分)は、給紙ホッパ26に向かって付勢された状態で給紙ホッパ26に当接している。紙戻しレバー29は、給紙後に残った印刷用紙Pの下端を引っ掛けて給紙ホッパ26へ戻すための爪部29aを備えている。また、紙戻しレバー29は、図2に示すように、所定の回動軸36を中心に揺動可能に構成されている。回動軸36の一端には、後述の第2カム47aに当接する当接部材37が固定されている。
【0028】
駆動機構30は、図2に模式的に示すように、後面給紙部32を駆動するサブモータ(ASFサブモータ)38と、サブモータ38に連結された(具体的には、サブモータ38の出力軸に固定された)駆動歯車39と、駆動歯車39に連結された遊星歯車部40と、遊星歯車部40と連結可能な従動歯車41とを備えている。本形態のサブモータ38は、DCモータであり、PWM制御されている。また、サブモータ38は、図4に示すように、プリンタ1の不図示の本体フレームに取り付けられた取付部材17に取り付けられている。
【0029】
本形態の従動歯車41は、遊星歯車部40を構成する後述の遊星歯車50に咬合可能な第1従動歯車42と、第1従動歯車42とともに回転する第2従動歯車43と、第2従動歯車43に咬合する第3従動歯車44と、第3歯車44とともに回転する第4従動歯車45と、第4従動歯車45に咬合する第5従動歯車46と、第5従動歯車46に咬合する第6従動歯車47とから構成されている。第4従動歯車45には、給紙ホッパ26に当接して給紙ホッパ26を揺動させる第1カム45aが形成され、第6従動歯車47には、当接部材37に当接して紙戻しレバー29を揺動させる第2カム47aが形成されている。すなわち、従動歯車41は、第1カム45aおよび第2カム47aを介して後面給紙部32に連結されている。なお、本形態では、第1カム45aが1回転すると、第2カム47aも1回転する。
【0030】
遊星歯車部40は、図3、図4に示すように、プリンタ1の不図示の本体フレームに形成された軸固定部18aに固定された固定軸48と、固定軸48に回動可能に保持され駆動歯車39に咬合する太陽歯車49と、太陽歯車49に咬合するとともに従動歯車42に咬合可能な遊星歯車50と、遊星歯車50が回動可能に保持された保持部材51とを備えている。太陽歯車49は、固定軸48に挿通され、固定軸48を回転中心として回転する。また、保持部材51も、固定軸48に挿通され、固定軸48を中心として回動可能となっている。
【0031】
保持部材51には、遊星歯車50が回動可能に支持される固定軸52が固定されている。固定軸52の先端には、遊星歯車50の抜けを防止する抜止部52aが形成されている。遊星歯車50は、固定軸52に挿通されるとともに、保持部材51と遊星歯車50との間に配置された圧縮コイルバネ53によって、保持部材51側から抜止部52aに向かって付勢されている。
【0032】
図3に示すように、固定軸48には、保持部材51および太陽歯車49が軸固定部18a側からこの順番で挿通されている。また、太陽歯車49および保持部材51は、取付部材17に形成された当接部17aによって、軸固定部18aに押し付けられている。
【0033】
本形態では、遊星歯車50や保持部材51等に過負荷等が生じていない通常の状態で、太陽歯車49が回転すると、太陽歯車49と当接部17aとの間、および、保持部材51と軸固定部18aとの間に滑りが生じて、太陽歯車49とともに保持部材51が回動する。すなわち、サブモータ38が駆動され、太陽歯車49が一方向(図4の時計方向)へ回転すると、保持部材51は固定軸48を中心に太陽歯車49と同方向へ回動して、図4の破線で示すように、遊星歯車50が第1従動歯車42に咬合する。そして、太陽歯車48および遊星歯車50を介してサブモータ38の動力が第1従動歯車42に伝達される。すなわち、サブモータ38の動力が後面給紙部32に伝達される。また、サブモータ38が逆方向へ駆動され、太陽歯車49が他方向(図4の反時計方向)へ回転すると、保持部材51は固定軸48を中心に太陽歯車49と同方向へ回動して、図4の二点鎖線で示すように、遊星歯車50が従動歯車19に咬合する。そして、太陽歯車48および遊星歯車50を介してサブモータ38の動力が従動歯車19に伝達される。すなわち、サブモータ38の動力が前面リタードローラ25に伝達される。なお、太陽歯車49とともに保持部材51が回動している間は、遊星歯車50は、固定軸52に対して回転していない。
【0034】
一方、遊星歯車50や保持部材51等に過負荷等が生じている状態、あるいは、後述のように保持部材51がロックされている状態で、太陽歯車49が回転すると、太陽歯車49の側面と保持部材51との間に滑りが生じて、太陽歯車49から保持部材51へのサブモータ38の動力伝達が停止される。すなわち、太陽歯車49は回転するが、保持部材51は回動しない。このように、本形態では、太陽歯車49と保持部材51との間には、摩擦力を利用して保持部材51へのサブモータ38の動力伝達を停止できるクラッチ手段54が構成されている。なお、太陽歯車49の側面と保持部材51との間に滑りが生じている状態で、サブモータ38が駆動している場合には、太陽歯車49の回転に伴って、遊星歯車50は、固定軸52を中心にして回転する。
【0035】
図4の破線で示すように、遊星歯車50が第1従動歯車42に咬合した状態で、サブモータ38が駆動すると、給紙ホッパ26は、第1カム45aの回動によって、回動軸26aを中心に揺動する。この揺動によって、給紙ホッパ26の下端部は、後面給紙ローラ27に向かって付勢されたり、後面給紙ローラ27から離れる。紙戻しレバー29は、第2カム47aの回動に伴う当接部材37の作用によって、回動軸36を中心に揺動する。この揺動によって、給紙時等には、爪部29aが退避し、給紙後には、爪部29aが上昇して残った印刷用紙Pを給紙ホッパ26へ戻す。後面リタードローラ28が保持されたアーム35は、第1カム45aの回動に伴って揺動する給紙ホッパ26とともに揺動する。この揺動によって、後面リタードローラ28は、後面給紙ローラ27に圧接されたり、後面給紙ローラ27から離れる。すなわち、サブモータ38は、従動歯車41に形成された第1カム45aおよび第2カム47aを回転駆動させることで、後面給紙部32を駆動する。
【0036】
具体的には、図5(A)に示すように、給紙ホッパ26の下端部および後面リタードローラ28が下降するとともに、紙戻しレバー29の爪部29aが退避した状態を初期状態とすると、初期状態から、第1カム45aおよび第2カム47aが、サブモータ38によって駆動されて所定角度、回動すると、図5(B)に示すように、給紙ホッパ26の下端部は上昇して後面給紙ローラ27に向かって付勢され、後面リタードローラ28も上昇して後面給紙ローラ27に圧接される。なお、このときは、紙戻しレバー29の爪部29aは、初期状態と同様に退避したままである。この状態が給紙可能な状態であり、この状態で、後面給紙ローラ27が回転すると、給紙ホッパ26に載置された印刷用紙Pのうち、一番上の印刷用紙Pは、後面給紙ローラ27と後面リタードローラ28との圧接部分を通過して排紙側へ送られる。また、上から2番目以降に載置された印刷用紙Pは、後面リタードローラ28の作用によって、排紙側への搬送が阻止される。
【0037】
また、図5(B)に示す状態からさらに、第1カム45aおよび第2カム47aが所定角度、回動すると、図5(C)に示すように、給紙ホッパ26の下端部は下降して後面給紙ローラ27から離れ、後面リタードローラ28も下降して後面給紙ローラ27から離れる。また、爪部29aが上昇して、残った印刷用紙Pを給紙ホッパ26へ戻す。そして、図5(B)に示す状態からさらに、第1カム45aおよび第2カム47aが所定角度、回動すると、図5(A)に示す初期状態に戻る。
【0038】
なお、本形態では、図5(A)に示す初期状態から図5(B)に示す状態に移行する過程で、保持部材51に形成された不図示の爪部が第3従動歯車44に形成された不図示のカム溝に嵌り込む。そして、図5(C)に示す状態から初期状態に移行する過程で、保持部材51の爪部が第3従動歯車44のカム溝から外れる。保持部材51の爪部が第3従動歯車44のカム溝に嵌り込んでいるときには、保持部材51はロックされた状態となり、遊星歯車50と第1従動歯車42とが常時咬合する。そして、このときには、太陽歯車49と保持部材51との間に滑りが生じて、サブモータ38の動力が、太陽歯車49および遊星歯車50を介して第1従動歯車42に伝達される。
【0039】
位置検出装置31は、第5従動歯車46とともに回転する検出板56と、フォトセンサ57とから構成された光学式の検出装置である。この位置検出装置31によって、第1カム45aおよび第2カム47aの回転位置の検出が可能となり、後面給紙部32の状態検出も可能になる。なお、本形態では、第1カム45aおよび第2カム47aが1回転すると検出板56も1回転する。
【0040】
検出板56は、図6等に示すように、薄い円板状に形成されている。また、検出板56は、径方向外方へ突出するとともに円周方向に所定の間隔をあけた状態で形成された3個の検出部56a、56b、56cを備えている。検出部56a、56b、56cはたとえば円周方向にこの順番で形成されている。フォトセンサ57は、検出部56a〜56cが検出可能となるように対向配置された不図示の発光素子および受光素子を備えている。本形態では、フォトセンサ57の受光素子と発光素子との間に検出部56a〜56cがあるか否かによって、信号レベルが正弦波状に変化する出力信号が、フォトセンサ57から出力される。このフォトセンサ57からの出力信号(すなわち、位置検出装置31からの出力信号)は、プリンタ1の各種の制御を行う制御部60に入力される。
【0041】
本形態のプリンタ1では、複数の印刷用紙Pに連続で印刷を行う連続印刷時において、解像度を落とす代わりにインクの消費量をセーブして高速印刷を行うドラフト印刷モードで後面側から供給された印刷用紙Pの印刷を行う場合、後面給紙ローラ27によって、給紙ホッパ26からPF駆動ローラ4まで搬送された後の印刷用紙Pの間欠的な搬送には、PF駆動ローラ4および排紙駆動ローラ6に加え、後面給紙ローラ27が用いられている。すなわち、ドラフト印刷モードでは、PFモータ(図示省略)で駆動されるPF駆動ローラ4および排紙駆動ローラ6と、ASFモータ(図示省略)で駆動される後面給紙ローラ27とが協働することで、キャリッジ3による印刷動作の間に、印刷用紙Pの間欠的な搬送が行われる。そのため、ドラフト印刷モードでの連続印刷時には、PF駆動ローラ4および排紙駆動ローラ6と後面給紙ローラ27とを同期させて(すなわち、同一の周速度で)回転させるシンクロ制御が行われ、複数の印刷用紙Pが連続して搬送される。
【0042】
また、ドラフト印刷モードにおける連続印刷時には、最後の1枚の印刷用紙Pの先端部分がPF駆動ローラ4およびPF従動ローラ5の配置位置まで到達するまでは、図5(B)に示すように、後面給紙ホッパ26の下端部および後面リタードローラ28は常時、上昇した状態となっている。
【0043】
(制御部の概略構成)
図7は、図2に示す位置検出装置31からの出力信号に基づいて生成される状態検出信号SGの波形を示す図である。図8は、図2に示す記憶部64に記憶されたサブモータ38の制御テーブルを示す表である。以下、図2、図7および図8等に基づいて駆動機構30に関連する制御部60の概略構成を説明する。
【0044】
制御部60は、駆動機構30に関連する構成として、位置検出装置31からの出力信号に基づいて状態検出信号SGを生成する検出信号生成部61と、状態検出信号SGに基づいて後面給紙部32の状態を検出する状態検出部62と、サブモータ38を駆動するモータ駆動部としてのサブモータ駆動部63と、サブモータ38を駆動するための各種の情報が記憶された記憶部64とを備えている。また、制御部60には、不図示の入出力手段を介して制御指令部65が接続されている。
【0045】
なお、検出信号生成部61および状態検出部62は、実際には、制御部60を構成するCPU等の演算手段と、ROMやRAM、不揮発性メモリ等の記憶手段と、IOポート等の入出力手段と等によって実現されている。また、サブモータ駆動部63は、実際には、制御部60を構成するCPU等の演算手段と、RAMや不揮発性メモリ等の記憶手段と、IOポート等の入出力手段と、モータ駆動回路と等によって実現されている。
【0046】
検出信号生成部61は、たとえば、位置検出装置31から出力される正弦波状の出力信号とこの出力信号に対して設定される閾値とから、図7に示す矩形波状の状態検出信号SGを生成して出力する。本形態では、フォトセンサ57が検出部56a〜56cを検出しているときの状態検出信号SGはハイレベルとなり、フォトセンサ57が検出部56a〜56cを検出していないときの状態検出信号SGはローレベルとなる。すなわち、第1カム45aおよび第2カム47aとともに検出板56が1回転すると、図7に示すように、状態検出信号SGは、ハイレベルとローレベルとの間で3回、レベル変化する。
【0047】
なお、以下では、遊星歯車50と第1従動歯車42とが咬合しているときの状態を例に本形態の構成を説明するが、遊星歯車50と従動歯車19とが咬合しているときには、状態検出信号SGに基づいて前面リタードローラ25の状態が検出される。すなわち、状態検出信号SGに基づいて、後述のように、後面給紙部32の目標停止状態が検出されるのと同様に、状態検出信号SGに基づいて、前面リタードローラ25の目標停止状態が検出される。
【0048】
本形態では、図7に示すハイレベルH1、H2、H3はそれぞれ、フォトセンサ57が検出部56a、56b、56cを検出したときの状態検出信号SGの信号レベルである。また、本形態では、後面給紙部32が図5(A)に示す状態にあるときに、状態検出信号SGがハイレベルH1となり、後面給紙部32が図5(B)に示す状態にあるときに、状態検出信号SGがハイレベルH2となり、後面給紙部32が図5(C)に示す状態にあるときに、状態検出信号SGがハイレベルH3となる。なお、位置検出装置31から直接、矩形波状の状態検出信号SGが出力されても良い。また、フォトセンサ57が検出部56a〜56cを検出しているときに、状態検出信号SGがローレベルとなり、フォトセンサ57が検出部56a〜56cを検出していないときに、状態検出信号SGがハイレベルとなるように構成しても良い。
【0049】
ここで、本形態の後面給紙部32は、通常動作では、フォトセンサ57が検出部56a〜56cのいずれかを検出している状態で停止する。また、通常動作では、停止状態で検出されている検出部56a〜56cに回転方向で隣接する次の検出部56a〜56cをフォトセンサ57が検出するまで、後面給紙部32は動作する。すなわち、通常動作では、サブモータ38は、フォトセンサ57が検出部56a〜56cのいずれかを検出している状態で停止し、停止状態で検出されている検出部56a〜56cに回転方向で隣接する次の検出部56a〜56cをフォトセンサ57が検出するまで駆動される。
【0050】
たとえば、後面給紙部32は、状態検出信号SGがハイレベルH1である状態で停止し、また、この停止状態から状態検出信号SGがハイレベルH2となるまで動作する。すなわち、通常動作では、たとえば、ハイレベルH1に対応する位置が後面給紙部32の動作の起点となり、ハイレベルH2に対応する位置が後面給紙部32の動作の終点(すなわち、目標停止位置)となる。換言すると、ハイレベルH1に対応する状態が後面給紙部32の停止状態となり、ハイレベルH2に対応する状態が後面給紙部32の目標停止状態となる。
【0051】
状態検出部62は、検出信号生成部61から入力される状態検出信号SGに基づいて後面給紙部32の目標停止状態を検出する。具体的には、状態検出部62は、検出信号生成部61から入力される状態検出信号SGがたとえば、後面給紙部32の目標停止状態に対応するハイレベルH2へレベル変化したことを検出する。そして、状態検出部62は、サブモータ駆動部63へ目標停止状態の検出信号を出力する。
【0052】
サブモータ駆動部63は、制御指令部65からの制御指令によってサブモータ38を起動し、状態検出部62から目標停止状態の検出信号が入力されると(すなわち、状態検出信号SGが後面給紙部32の目標停止状態に対応するハイレベルH1〜H3へレベル変化したことを状態検出部62が検出すると)、サブモータ38を減速、停止させる。本形態では、サブモータ駆動部63は、サブモータ38の駆動トルクを所定の設定最小トルクT1から所定の設定最大トルクT15まで連続的にかつ段階的に順次上げていくように、サブモータ38を駆動するとともに、状態検出部62から目標停止状態の検出信号が入力されると、所定の減速トルクT21でサブモータ38を減速し、その後、所定の停止トルクT31でサブモータ38を停止させる。なお、本形態では、設定最小トルクT1は、所定の第1設定トルクであり、設定最大トルクT15は、所定の第2設定トルクである。
【0053】
具体的には、まず、図8に示すようなサブモータ38の制御テーブルが記憶部64に記憶されている。すなわち、本形態では、記憶部64に、サブモータ38の駆動トルクとして、設定最小トルクT1から設定最大トルクT15まで順次大きくなっていく15個の設定トルクT1〜T15と、各設定トルクT1〜T15でのサブモータ38の駆動時間t1〜t15とが設定されている。また、記憶部64には、サブモータ38の減速トルクT21と減速トルクT21でのサブモータ38の駆動時間t21とが設定されるとともに、サブモータ38の停止トルクT31と停止トルクT31でのサブモータ38の駆動時間t31とが設定されている。
【0054】
そして、サブモータ駆動部63は、制御指令部65からの制御指令によってサブモータ38を起動した後、状態検出部62から目標停止状態の検出信号が入力されるまで、図8に示す制御テーブルから設定トルクT1〜T15および駆動時間t1〜t15を順次、読み出して、サブモータ38の駆動トルクを連続的に順次上げていく。すなわち、まず、設定最小トルクT1で駆動時間t1だけサブモータ38を駆動しても、目標停止状態の検出信号が入力されない場合には、サブモータ駆動部63は、設定トルクT2で駆動時間t2だけサブモータ38を駆動する。また、設定トルクT2で駆動時間t2だけサブモータ38を駆動しても、目標停止状態の検出信号が入力されない場合には、サブモータ駆動部63は、設定トルクT3で駆動時間t3だけサブモータ38を駆動するというように、サブモータ駆動部63は、順次、サブモータ38の駆動トルクを上げていく。そして、状態検出部62から目標停止状態の検出信号が入力されると、サブモータ駆動部63は、所定の減速トルクT21でサブモータ38を減速し、その後、所定の停止トルクT31でサブモータ38を停止させる。本形態では、駆動時間t1〜t15の総和はたとえば、1.3秒である。
【0055】
なお、本形態のサブモータ38は上述のように、PWM制御されているため、設定トルクT1〜T15、減速トルクT21および停止トルクT31は、サブモータ38に電圧が印加されるオンの状態から次のオンの状態までの時間間隔であるスイッチング周期に対するオン時間の割合であるデューティ比によって、設定されている。また、サブモータ38にかかる負荷が一定であれば、駆動トルクが大きくなるにしたがって、サブモータ38の回転数が高くなっていく。
【0056】
また、本形態では、図8に示すように、設定トルクT1〜T5の5個の設定トルクによって第1駆動モードが構成され、設定トルクT6〜T10の5個の設定トルクによって第2駆動モードが構成され、設定トルクT11〜T15の5個の設定トルクによって第3駆動モードが構成されている。第1駆動モードは、給紙ホッパ26への印刷用紙Pのセット枚数が所定枚数以下の通常使用時に、後面給紙部32を目標停止状態まで駆動可能な駆動モードである。第2駆動モードは、給紙ホッパ26への印刷用紙Pのセット枚数が所定枚数よりも多く、後面給紙部32の負荷が大きい場合であっても、後面給紙部32を目標停止状態まで駆動可能な駆動モードである。第3駆動モードは、サブモータ38のばらつきや後面給紙部32のばらつき等が最大となり、後面給紙部32を駆動することが最も困難な状態になった場合であっても、後面給紙部32を目標停止状態まで駆動可能な駆動モードである。
【0057】
ここで、本形態のサブモータ駆動部63は、設定最大トルクT15で駆動しても、後面給紙部32を適切に駆動することができず、状態検出部62で後面給紙部32の目標停止状態を検出できないときには、設定最大トルクT15よりも小さな駆動トルクでサブモータ38を再度、駆動する。具体的には、サブモータ駆動部63は、設定最大トルクT15で駆動しても、状態検出部62で後面給紙部32の目標停止状態を検出できないときには、目標停止状態を検出するまで、サブモータ38の駆動トルクを設定最小トルクT1から設定最大トルクT15まで再度上げていくようにサブモータ38を駆動する。すなわち、設定最大トルクT15で駆動しても、状態検出部62で後面給紙部32の目標停止状態を検出できないときには、目標停止状態を検出するまで、サブモータ駆動部63は、記憶部64に記憶された制御テーブルから再び、設定トルクT1〜T15を順次、読み出して、サブモータ38を駆動する。また、サブモータ駆動部63は、設定最大トルクT15で駆動しても、状態検出部62で目標停止状態を検出できないときには、サブモータ38を停止させずに、サブモータ38の駆動トルクを設定最小トルクT1まで下げて、サブモータ38を駆動する。
【0058】
本形態では、サブモータ駆動部63は、第1カム45aおよび第2カム47aが順次回転して最終的に1回転する間に、かかる状況が初めて生じた場合にのみ、サブモータ38の駆動トルクを設定最小トルクT1から設定最大トルクT15まで再度上げていくようにサブモータ38を駆動する。すなわち、サブモータ駆動部63は、第1カム45aおよび第2カム47aが1回転する間では、1回のみ、サブモータ38の駆動トルクを設定最小トルクT1から設定最大トルクT15まで再度上げていくようにサブモータ38を駆動する。
【0059】
たとえば、設定最大トルクT15で駆動しても、後面給紙部32が図5(A)に示す状態から図5(B)に示す状態まで駆動されず、状態検出信号SGがハイレベルH1からハイレベルH2に変化しない状況において、サブモータ38の駆動トルクを設定最小トルクT1から設定最大トルクT15まで再度上げていくようにサブモータ38を駆動しても、状態検出信号SGがハイレベルH1からハイレベルH2に変化しない場合には、プリンタ1では、エラー処理を行う。また、設定最大トルクT15で駆動しても、後面給紙部32が図5(A)に示す状態から図5(B)に示す状態まで駆動されず、状態検出信号SGがハイレベルH1からハイレベルH2に変化しない状況において、サブモータ38の駆動トルクを設定最小トルクT1から設定最大トルクT15まで再度上げていくようにサブモータ38を駆動して状態検出信号SGがハイレベルH1からハイレベルH2に変化した場合であって、その後、設定最大トルクT15で駆動しても、後面給紙部32が図5(B)に示す状態から図5(C)に示す状態まで駆動されず、状態検出信号SGがハイレベルH2からハイレベルH3に変化しない場合にも、プリンタ1では、エラー処理を行う。
【0060】
(サブモータの概略制御)
図9は、図2に示すサブモータ38の概略の制御フローを示すフローチャートである。以下、後面給紙部32を駆動するサブモータ38の制御の概略を説明する。
【0061】
制御指令部65から制御部60へ後面給紙部32の駆動指令が入力されると、サブモータ駆動部63は、後面給紙部32を駆動するため、サブモータ38を駆動する。具体的には、サブモータ駆動部63は、制御指令部65からの指令によって、まず、設定最小トルクT1でサブモータ38を駆動する(ステップS1)。そして、サブモータ38を駆動させながら、状態検出部62は、後面給紙部32が目標停止状態となったか否かを判断する(ステップS2)。すなわち、状態検出部62は、検出信号生成部61から入力される状態検出信号SGがたとえば、後面給紙部32の目標停止状態に対応するハイレベルH2へレベル変化したか否かを判断する。
【0062】
後面給紙部32が目標停止状態となった場合には、サブモータ駆動部63に状態検出部62から目標停止状態の検出信号が入力され、サブモータ駆動部63は、サブモータ38を減速、停止させて(ステップS3)、制御シーケンスが終了する。一方、後面給紙部32が目標停止状態とならない場合には、設定最小トルクT1での駆動時間t1が経過したか否かを判断する(ステップS4)。駆動時間t1が経過していない場合には、ステップS1へ戻り、サブモータ38の駆動を継続する。また、駆動時間t1が経過している場合には、サブモータ駆動部63は、駆動トルクを上げて(ステップS5)、サブモータ38を駆動する(ステップS6)。すなわち、サブモータ駆動部63は、駆動トルクを設定トルクT2に上げてサブモータ38を駆動する。
【0063】
そして、サブモータ38を駆動させながら、状態検出部62は、後面給紙部32が目標停止状態となったか否かを判断する(ステップS7)。後面給紙部32が目標停止状態となった場合には、ステップS3へ進み、後面給紙部32が目標停止状態とならない場合には、サブモータ38を駆動する設定トルクT2での駆動時間t2が経過したか否かを判断する(ステップS8)。駆動時間t2が経過していない場合には、ステップS6へ戻り、サブモータ38の駆動を継続する。一方、駆動時間t2が経過している場合には、サブモータ38の駆動トルクが設定最大トルクT15である否かを判断する(ステップS9)。
【0064】
ステップS9で、サブモータ38の駆動トルクが設定最大トルクT15でない場合には、ステップS5へ戻り、サブモータ駆動部63は、駆動トルクをさらに上げて(ステップS5)、サブモータ38を駆動する(ステップS6)。一方、ステップS9で、サブモータ38の駆動トルクが設定最大トルクT15である場合には、第1カム45aおよび第2カム47aの1回転中で初めて、サブモータ38の駆動トルクが設定最大トルクT15となったか否かを判断する(ステップS10)。
【0065】
ステップS10で、第1カム45aおよび第2カム47aの1回転中で初めて、サブモータ38の駆動トルクが設定最大トルクT15となった場合には、ステップS1へ戻り、サブモータ駆動部63は、サブモータ38の駆動トルクを設定最小トルクT1から設定最大トルクT15まで再度上げていくようにサブモータ38を駆動する。一方、ステップS10で、第1カム45aおよび第2カム47aの1回転中で、サブモータ38の駆動トルクが設定最大トルクT15となったのが2回目である場合には、所定のエラー処理を行い(ステップS11)、制御シーケンスが終了する。
【0066】
なお、本形態では、ステップS10を経ていない第1回目のステップS1、S2、S4〜S9によって、後面給紙部32の目標停止状態を検出するまで、サブモータ38の駆動トルクを設定最小トルクT1から設定最大トルクT15まで上げていくようにサブモータ38を駆動する駆動ステップが構成されている。また、ステップS10を経た第2回目のステップS1、S2、S4〜S9によって、設定最大トルクT15で駆動しても後面給紙部32の目標停止状態を検出できないときに、設定最大トルクT15よりも小さな駆動トルクT1〜T14でサブモータ38を再度、駆動する再駆動ステップが構成されている。
【0067】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、プリンタ1が、太陽歯車49と遊星歯車50とを有する遊星歯車部40を備えている。そのため、前面リタードローラ25および後面給紙部32の2つの被駆動部の駆動を1個のサブモータ38で行うことができる。そのため、本形態では、プリンタ1の構成を簡素化できる。
【0068】
また、本形態では、サブモータ駆動部63が、状態検出部62で後面給紙部32や前面リタードローラ25の目標停止状態を検出するまで、サブモータ38の駆動トルクを設定最小トルクT1から設定最大トルクT15まで順次上げていくようにサブモータ38を駆動している。そのため、本形態のように、状態検出信号SGがたとえば、後面給紙部32の目標停止状態に対応するハイレベルH2へレベル変化したことを状態検出部62が検出した後に、サブモータ駆動部63が、サブモータ38を減速、停止させるように構成されていても、後面給紙部32を駆動可能な最小の駆動トルクでサブモータ38を駆動させることが可能であるため、サブモータ38の過加速を防止して、後面給紙部32の停止精度を確保することができる。同様に、前面リタードローラ25の停止精度を確保することも可能になる。
【0069】
さらに、本形態では、太陽歯車49と保持部材51との間にクラッチ手段54が構成されている。そのため、後面給紙部32側に予期せぬ負荷が生じる等の理由で、サブモータ38や太陽歯車49あるいは遊星歯車50等に過負荷が働くような状況が生じても、サブモータ38や太陽歯車49あるいは遊星歯車50等の損傷を防止できる。
【0070】
ここで、遊星歯車50と咬合していないときの第1従動歯車42や従動歯車19の停止状態によっては、第1従動歯車42と遊星歯車50との咬合時に、第1従動歯車42と遊星歯車50とが適切に咬合しない場合、あるいは、従動歯車19と遊星歯車50との咬合時に、従動歯車19と遊星歯車50とが適切に咬合しない場合が生じうる。そのため、太陽歯車49と保持部材51との間のクラッチ手段54で滑りが生じ、保持部材51へのサブモータ38の動力伝達が停止されてしまう事態が生じる。本形態では、サブモータ駆動部63が、設定最大トルクT15で駆動しても状態検出部62で後面給紙部32等の目標停止状態を検出できないときには、設定最大トルクT15よりも小さな駆動トルクでサブモータ38を再度、駆動している。したがって、サブモータ38の駆動トルクを設定最小トルクT1から設定最大トルクT15まで順次上げていくようにサブモータ38を駆動しているために、クラッチ手段54で一旦、滑りが生じると、それ以後、保持部材51へのサブモータ38の動力伝達が停止されてしまう場合であっても、サブモータ38の駆動トルクを小さくすることで、クラッチ手段54での滑りを停止させ、保持部材51へのサブモータ38の動力伝達を再開させることができる。その結果、遊星歯車50と第1従動歯車42とを確実に咬合させ、サブモータ38の動力を後面給紙部32に適切に伝達できる。また、遊星歯車50と従動歯車19とを確実に咬合させ、サブモータ38の動力を前面リタードローラ25に適切に伝達できる。
【0071】
また、設定最大トルクT15で駆動しても、給紙ホッパ26に載置される印刷用紙Pの状態や印刷用紙Pの種類等によって、紙戻しレバー29が印刷用紙Pを給紙ホッパ26に戻せないような状況が生じる場合がある。本形態では、設定最大トルクT15までサブモータ38を再度、駆動することができるため、このような場合であっても、紙戻しレバー29で、少しずつ印刷用紙Pを移動させながら、最終的に、紙戻しレバー29によって、印刷用紙Pを給紙ホッパ26に戻すことも可能になる。あるいは、少しでも印刷用紙Pが動けば、そのまま、印刷用紙Pが給紙ホッパ26に戻ることがあるため、紙戻しレバー29によって、最終的に、印刷用紙Pを給紙ホッパ26に戻すことも可能になる。
【0072】
本形態では、サブモータ駆動部63は、設定最大トルクT15で駆動しても、後面給紙部32等の目標停止状態を検出できないときに、目標停止状態を検出するまで、サブモータ38の駆動トルクを設定最小トルクT1から設定最大トルクT15まで再度上げていくようにサブモータ38を駆動している。そのため、サブモータ38の駆動トルクを設定最小トルクT1まで一旦下げることができる。したがって、より効果的に、クラッチ手段54での滑りを停止させ、保持部材51へのサブモータ38の動力伝達を再開させることができる。
【0073】
本形態では、サブモータ駆動部63は、設定最大トルクT15で駆動しても、後面給紙部32等の目標停止状態を検出できないときに、サブモータ38を停止させずに、サブモータ38の駆動トルクを設定最小トルクT1まで下げている。そのため、印刷用紙Pを供給するための後面給紙部32あるいは前面リタードローラ25をより早く駆動することが可能となり、スループットを向上させることが可能になる。
【0074】
(他の実施の形態)
上述した形態では、設定最大トルクT15で駆動しても、状態検出部62で後面給紙部32等の目標停止状態を検出できないときに、サブモータ38の駆動トルクを一旦、設定最小トルクT1まで下げている。この他にもたとえば、設定最大トルクT15で駆動しても、後面給紙部32等の目標停止状態を検出できないときに、サブモータ38の駆動トルクを設定最小トルクT1よりも大きい、設定トルクT2〜T14にいずれかに下げて、再度、サブモータ38を駆動しても良い。
【0075】
上述した形態では、サブモータ駆動部63は、サブモータ38の駆動トルクを設定最小トルクT1から設定最大トルクT15まで連続的にかつ段階的に順次上げていくように、サブモータ38を駆動している。この他にもたとえば、サブモータ駆動部63は、サブモータ38の駆動トルクを、設定最小トルクT1以外の設定トルクT2や設定トルクT3等から設定最大トルクT15以外の設定トルクT13や設定トルクT14等まで順次上げていくように、サブモータ38を駆動しても良い。この場合、たとえば、設定トルクT2や設定トルクT3は、所定の第1設定トルクとなり、設定トルクT13や設定トルクT14は所定の第2設定トルクとなる。
【0076】
上述した形態では、設定最大トルクT15で駆動しても、状態検出部62で後面給紙部32等の目標停止状態を検出できないときに、サブモータ38を停止させずに、サブモータ38の駆動トルクを設定最小トルクT1まで下げている。この他にもたとえば、設定最大トルクT15で駆動しても、状態検出部62で目標停止状態を検出できないときに、一旦、サブモータ38を停止させ、その後に、サブモータ38の駆動トルクを設定最小トルクT1まで下げても良い。
【0077】
上述した形態では、サブモータ駆動部63は、第1カム45aおよび第2カム47aが1回転する間に初めて、サブモータ38の駆動トルクが設定最大トルクT15になった場合にのみ、サブモータ38の駆動トルクを設定最小トルクT1から設定最大トルクT15まで再度上げていくようにサブモータ38を駆動しているが、第1カム45aおよび第2カム47aが1回転する間に、2回以上、サブモータ38の駆動トルクが設定最大トルクT15になった場合であっても、サブモータ38の駆動トルクを設定最小トルクT1から設定最大トルクT15まで再度上げていくようにサブモータ38を駆動しても良い。
【0078】
上述した形態では、後面給紙部32等の状態を検出するための位置検出装置31は、検出部56a〜56cが形成された検出板56と、フォトセンサ57とよって構成されている。この他にもたとえば、円板状部材に複数のスリットあるいはマークが円周方向に隣接するように形成されたロータリエンコーダと、スリットあるいはマークを検出するフォトセンサとから構成されるロータリエンコーダを後面給紙部32等の状態を検出するための検出装置として用いても良い。
【0079】
上述した形態では、被駆動部は、後面給紙部32あるいは前面リタードローラ25である。この他にもたとえば、遊星歯車部40と同様の機構によって、モータの動力が伝達される被駆動部に本形態の構成を適用することが可能である。また、本形態の構成は、インクジェットプリンタ以外にも、遊星歯車部40と同様の機構を有するレーザプリンタ等の各種の装置等にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態にかかるプリンタの主要部の概略構成を示す側面図。
【図2】図1の後面給紙部の駆動機構および制御部の概略構成を模式的に示す図。
【図3】図2の遊星歯車部を示す部分断面図。
【図4】図3のE−E方向から遊星歯車部を示す図。
【図5】図1の後面給紙部の動作を説明するための図。
【図6】図2の位置検出装置を示す側面図。
【図7】図2の位置検出装置からの出力信号に基づいて生成される状態検出信号の波形を示す図。
【図8】図2の記憶部に記憶されたサブモータの制御テーブルを示す表。
【図9】図2のサブモータの概略の制御フローを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0081】
1 プリンタ、19 従動歯車、25 前面リタードローラ(被駆動部)、26 給紙ホッパ(媒体供給ホッパ)、28 後面リタードローラ(重送防止ローラ)、29 紙戻しレバー(媒体戻しレバー)、31 位置検出装置(検出装置)、32 後面給紙部(被駆動部、印刷媒体供給部)、38 サブモータ(モータ)、39 駆動歯車、41 従動歯車、49 太陽歯車、50 遊星歯車、51 保持部材、54 クラッチ手段、60 制御部、62 状態検出部、63 サブモータ駆動部(モータ駆動部)、P 印刷用紙(印刷媒体)、S1、S2、S4〜S9 駆動ステップ、S1、S2、S4〜S9 再駆動ステップ、T1 設定最小トルク(第1設定トルク)、T15 設定最大トルク(第2設定トルク)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に印刷を行うために駆動される被駆動部と、上記被駆動部を駆動するモータと、上記モータに連結された駆動歯車と、上記被駆動部に連結された従動歯車と、上記駆動歯車に咬合する太陽歯車と、上記太陽歯車に咬合するとともに上記従動歯車に咬合可能な遊星歯車と、上記遊星歯車を回転可能に保持するとともに上記モータの動力で上記遊星歯車と一緒に上記太陽歯車の回転中心を中心に上記従動歯車と上記遊星歯車との咬合方向へ回動可能な保持部材と、摩擦力を利用するとともに上記保持部材への上記モータの動力伝達を停止可能なクラッチ手段と、上記モータから上記被駆動部への動力伝達の方向において上記遊星歯車よりも上記被駆動部側に配置され上記被駆動部の状態を検出するための検出装置と、上記モータを制御する制御部とを備え、
上記制御部は、上記検出装置からの出力信号に基づいて上記被駆動部の目標停止状態を検出する状態検出部と、上記状態検出部が上記目標停止状態を検出するまで、上記モータの駆動トルクを所定の第1設定トルクから所定の第2設定トルクまで上げていくように上記モータを駆動するとともに、上記第2設定トルクで駆動しても上記状態検出部が上記目標停止状態を検出できないときに、上記第2設定トルクよりも小さな駆動トルクで上記モータを再度、駆動するモータ駆動部とを備えることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記第1設定トルクは、前記駆動トルクの設定最小トルクであり、前記第2設定トルクは、前記駆動トルクの設定最大トルクであることを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項3】
前記モータ駆動部は、前記設定最大トルクで駆動しても、前記目標停止状態を検出できないときに、前記目標停止状態を検出するまで、前記モータの駆動トルクを前記設定最小トルクから前記設定最大トルクまで再度上げていくように前記モータを駆動することを特徴とする請求項2記載のプリンタ。
【請求項4】
前記モータ駆動部は、前記設定最大トルクで駆動しても、前記目標停止状態を検出できないときに、前記モータを停止させずに、前記モータの駆動トルクを前記設定最小トルクまで下げることを特徴とする請求項3記載のプリンタ。
【請求項5】
前記被駆動部は、印刷前の前記印刷媒体が載置される媒体供給ホッパと、上記媒体供給ホッパから前記印刷媒体が印刷される印刷領域に向かって搬送される前記印刷媒体の重送を防止するための重送防止ローラと、指定印刷枚数以上の前記印刷媒体を上記媒体供給ホッパへと戻すための媒体戻しレバーとを備える印刷媒体供給部であることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載のプリンタ。
【請求項6】
印刷媒体に印刷を行うために駆動される被駆動部と、上記被駆動部を駆動するモータと、上記モータに連結された駆動歯車と、上記被駆動部に連結された従動歯車と、上記駆動歯車に咬合する太陽歯車と、上記太陽歯車に咬合するとともに上記従動歯車に咬合可能な遊星歯車と、上記遊星歯車を回転可能に保持するとともに上記モータの動力で上記遊星歯車と一緒に上記太陽歯車の回転中心を中心に上記従動歯車と上記遊星歯車との咬合方向へ回動可能な保持部材と、摩擦力を利用するとともに上記保持部材への上記モータの動力伝達を停止可能なクラッチ手段と、上記モータから上記被駆動部への動力伝達の方向において上記遊星歯車よりも上記被駆動部側に配置され上記被駆動部の状態を検出するための検出装置とを備えるプリンタを制御するプリンタの制御方法であって、
上記検出装置からの出力信号に基づいて上記被駆動部の目標停止状態を検出するまで、上記モータの駆動トルクを所定の第1設定トルクから所定の第2設定トルクまで上げていくように上記モータを駆動する駆動ステップと、上記第2設定トルクで駆動しても上記検出装置からの出力信号に基づいて上記目標停止状態を検出できないときに、上記第2設定トルクよりも小さな駆動トルクで上記モータを再度、駆動する再駆動ステップとを備えることを特徴とするプリンタの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−87874(P2008−87874A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267609(P2006−267609)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】