説明

プリント基板保持方法および装置

【課題】装置内部と外部との間の断熱性を向上させてカバー内の温度をすばやく所定温度に設定することができるプリント基板保持方法および装置を提供する。
【解決手段】このプリント基板保持方法および装置31は、保持部33が、保持部ベース35と、この保持部ベース35とカバー部55との間に配設されカバー部55の開口を覆うとともにコネクタ1を貫通させる貫通穴51bを有する断熱材からなる覆い板51と、保持部ベース35に移動可能に配設されコネクタ1を係止する可動爪41と、この可動爪41をコネクタ1に向かって押圧する弾性対43とを有し、可動爪41を保持部ベース35に設けられた開口部45を通して保持部ベース35の外部から操作するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持部とカバー部との間の閉空間にプリント基板を配置し、この空間を所定の環境に設定してプリント基板の種々の試験を行うプリント基板保持方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のプリント基板保持装置としては、図3に示すようなものが知られている。このプリント基板保持装置11は、図4に示すような種々の素子Dが搭載されたプリント基板Pを所定の温度条件で検査するためのものである。このプリント基板保持装置11は、保持部ベース13を有している。この保持部ベース13上には、プリント基板Pに設けられたコネクタCを嵌合する固定チャック15が設けられている。また、保持部ベース13上で固定チャック15の側方には、固定チャック嵌合部15に嵌合されたコネクタCが抜けないように係止する可動チャック17が設けられている。この可動チャック17は、可動チャックガイド部18によってコネクタCに向かって離接するようにガイドされ、弾性体19によってコネクタCに向かって押圧されている。また、この可動チャック17上面には、コネクタC装着時に可動チャックを後退させるための係止凹部17aが形成されており、この係止凹部17aに所定の冶具を係合させて可動チャック17を操作するようになっている。
【0003】
また、保持部ベース13には、上記プリント基板P等を覆うカバー21が設けられ、このカバー21の内側には断熱材21aが貼り付けられている。このカバー21内の保持部ベース13上には、このカバー21内に所定温度の空気を供給するノズル体23が設けられている。一方、コネクタCには、プリント基板Pに電気を供給する接続端子25が接続されている。
【0004】
このようなプリント基板保持装置11は、その内部空間にノズル体23を通して所定温度の空気を供給してプリント基板Pを所定温度にするとともに、接続端子25を通して通電してプリント基板を起動し、種々の試験を行うようになっている。
【0005】
しかしながら、このようなプリント基板保持装置11にあっては、可動チャック17をその上側から操作する構成であるため、可動チャック17上方が開放されている必要があり、断熱材等のカバーを設けることができなかった。したがって、カバー21内の熱が保持部ベースを伝わって外部に洩れてしまい、カバー内を所定温度に設定して内部温度を安定させるのに時間がかかる。このため、試験工程のスループットが低下するという問題点があった。
【0006】
なお、このようなプリント基板保持装置としては、特許文献1に示すようなものが知られている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−354341
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点を解決することをその課題とし、装置内部と外部との間の断熱性を向上させてカバー内の温度をすばやく所定温度に設定することができるプリント基板保持方法および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、保持部(33)は、保持部本体(35)と、この保持部本体(35)とカバー部(55)との間に配設されカバー部(55)の開口を覆うとともにコネクタ(1)を貫通させる貫通孔(51b)を有する断熱性材料からなる覆い板(51)と、保持部本体(35)に移動可能に配設されコネクタ(1)を係止する可動爪(41)とを備えた装置において、可動爪(41)を、保持部本体(35)に設けられた開口(45)を通して操作して、開状態に保持し、プリント基板(2)のコネクタ(1)を覆い板(51)の貫通孔(51b)に挿入し、可動爪(41)を保持部本体(35)に設けられた開口(45)を通して操作して、閉状態に保持してコネクタ(1)を保持し、カバー部(55)を覆い板(51)に気密に装着することによって、プリント基板(2)を閉空間に閉じ込める手段を採用することができる。
【0010】
この手段によると、簡単な操作でプリント基板(2)の装着ができるとともに、可動爪(41)を保持部本体(35)の下方から操作することができ、保持部本体(35)とカバー部(55)との間に断熱材からなる覆い板(51)を設けることができる。したがって、カバー部55内の熱が保持部ベース35を伝わって外部に洩れることを防止することができる。
【0011】
また、保持部(33)は、保持部本体(35)と、この保持部本体(35)とカバー部(55)との間に配設されカバー部(55)の開口を覆う断熱性材料からなる覆い板(51)と、保持部本体(35)に移動可能に配設されコネクタ(1)を係止する可動爪(41)とを有し、保持部本体(35)には、可動爪(41)を外部から操作するための開口(45)が形成されている手段を採用することができる。
【0012】
この手段によると、可動爪(41)を保持部本体(35)の下方から操作することができ、保持部本体(35)とカバー部(55)との間に断熱材からなる覆い板(51)を設けることができる。したがって、カバー部55内の熱が保持部ベース35を伝わって外部に洩れることを防止することができ、すみやかにカバー内を所定の温度を加熱して内部温度を安定させることができる。
【0013】
また、上記課題を解決するため、覆い板(51)はベーク材からなる手段を採用することができる。したがって、低コストで高い断熱性を実現することができる。
【0014】
また、上記課題を解決するため、覆い板(51)と保持体本体(35)および可動爪(41)との間に間隙(51a)を形成した手段を採用することができる。したがって、この部分と通っての熱の出入りを効率的に遮断して断熱性能を向上させることができる。
【0015】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図1および図2を参照して説明する。
【0017】
図1および図2中符号31は、本発明の一実施の形態であるプリント基板保持装置を示す。このプリント基板保持装置31は、保持部33を有しており、この保持部33はその下部に保持部ベース35を有している。
【0018】
この保持部ベース35の中央には、コネクタ1が挿入されるコネクタ挿入穴37が上下に貫通して形成されている。また、保持部ベース35上面には、このコネクタ挿入穴37に向かって離接する方向に形成されたガイド溝39が対向して形成されている。このガイド溝39には可動爪41が摺動可能にガイドされており、コネクタ挿入穴37に対して突出する突出位置とコネクタ挿入穴37から後退する後退位置をとりうるようになされている。ガイド溝39内の可動爪41の背後には弾性体43が装着されている。この弾性体43は、可動爪41をコネクタ挿入穴37内に向かって常時押圧するようになされている。可動爪41の下面には係止凹部41aが形成されており、保持部ベース35の係止凹部41aに対向する部分には、この係止凹部41aから保持部ベース35下面に到る開口部45が形成されている。
【0019】
一方、保持部ベース35下面には、フレーム46が設けられており、このフレーム46の係止凹部41aの下方の部分には、上面から下面に到る挿通孔46aが形成されている。このフレーム46の下面で挿通孔46aの外側には、図2に示すように、ピン駆動装置47が設けられている。このピン駆動装置47の出力部47aには、開口部45、挿通孔46aを貫通して係止凹部41aに係合する駆動ピン49が固定されている。そして、ピン駆動装置47は、駆動ピン49を介して係合している可動爪41を、弾性体43の押圧力に抗して後退位置に移動できるようになっている。
【0020】
このような保持部33の保持部ベース35の上面には、覆い板51が固定されている。この覆い板51は、ベーク材からなり、その下面には、保持部ベース35や可動爪41の上面から離間するように凹部51aが形成されている。なお、この凹部51aは、可動爪41の上方位置の全てに形成されているわけではなく、可動爪41は凹部51aが形成されていない部分の覆い板51の下面によってガイドされている。この覆い板の中央には、コネクタ1が貫通する貫通孔51bが形成されている。
【0021】
この貫通孔51bには、プリント基板2に設けられたコネクタ1のスリーブ3が挿入されている。このスリーブ3の下端両側には係止突起3a,3aが形成されている。そして、可動爪41、41が突出位置のときこの係止突起3a,3aと係合してコネクタ1を保持するようになっている。
【0022】
また、コネクタ1の側方にはノズル体53が設けられている。このノズル体53は、加熱空気供給部(図示せず)、冷却空気供給部(図示せず)に接続されており、所定の温度の空気を供給できるようになっている。
【0023】
また、覆い板51には、カバー部55のカバー57が設けられている。このカバー57は有底筒状になされ、その開口縁を覆い板51の外周部に気密に当接して装着されており、プリント基板2を閉空間Sに閉じ込めるようになっている。このカバー57の内側には、断熱材59が貼り付けられている。
【0024】
一方、このコネクタ1のスリーブ3には、接続端子61が接続されている。この接続端子61には側方に延出する鍔部63が設けられており、この鍔部61には保持部ベース35に向かって基準ピン65が植設されている。一方、この保持部ベース35の基準ピン65に対向する位置には基準穴67が形成されており、基準ピン65と嵌合することによって位置決めできるようになっている。
【0025】
このような構成のプリント基板保持装置31を使用して、プリント基板の動作試験を行う手順について説明する。
【0026】
まず、覆い板51が固定された保持部33を所定位置に位置決めする。
【0027】
ついで、ピン駆動装置47を駆動させ、駆動ピン49を介して可動爪41を弾性体43の押圧力に抗して後退位置に移動させる。すなわち、可動爪41を開状態にする。
【0028】
次に、コネクタ1のスリーブ3を覆い板51の貫通孔51bに挿入する。
【0029】
その後、ピン駆動装置47の駆動を解除すると、可動爪41が弾性体43の押圧力によって突出位置に移動する。そして、可動爪41がスリーブ3に設けられた係止突起3aと係合して、コネクタ1が固定される。
【0030】
次に、カバー部55を保持部33に取り付け、プリント基板2を装置内の閉空間Sに閉じ込める。
【0031】
次いで、プリント基板検査装置31を検査位置に移動して位置決めする。
【0032】
その後、鍔部63の基準ピン65を基準穴67に嵌合させた状態で、接続端子61をコネクタ1のスリーブ3に接続する。
【0033】
なお、コネクタ1のスリーブ3は、覆い板51の貫通孔51bにゆるく勘合しているので、スリーブ3は両可動爪41の弾性体43の押圧力によって押圧力の中立位置にバランスして保持されている。この状態で、基準ピン65と基準穴67の嵌合によって位置決めされた接続端子61がスリーブ3に接続されると、スリーブ3は接続端子61の位置にしたがって若干位置ずれするが、スリーブ3は弾性的に保持されているため接続はスムーズに行われる。
【0034】
次いで、ノズル体53を加熱空気供給部(図示せず)に接続し、加熱空気をカバー部55内の閉空間Sに供給する。例えば85℃の低露点エアーを例えば2分と8分供給する。そして、プリント基板2およびこれに搭載された素子を所定の温度に加熱する。
【0035】
この状態で、接続端子61を通してプリント基板に通電し、素子、基板等の特性を検査する。
【0036】
次に、ノズル体53を冷却空気供給部(図示せず)に接続し、冷却空気をカバー部55内の閉空間Sに供給する。例えばマイナス25℃以下の低露点エアーを例えば135秒供給する。そして、プリント基板2およびこれに搭載された素子を所定の温度に冷却する。
【0037】
この状態で、接続端子61を通してプリント基板に通電し、素子、基板等の特性を検査する。
【0038】
このような試験によってプリント基板の温度を−29℃から96℃まで変化させ特性を測定する。
【0039】
その後、接続端子61をコネクタ1のスリーブ3から取り外す。
【0040】
次いで、プリント基板保持装置31を取り出し位置に移動し位置決めする。
【0041】
次に、カバー部55を保持部から取り外す。
【0042】
その後、ピン駆動装置47を駆動させ、可動爪41を弾性体43の押圧力に抗して後退させて開状態にし、可動爪41とスリーブ3の係止突起3aとの係合を解除する。
【0043】
そして、プリント基板2が固定されたコネクタ1を取り外す。
【0044】
分離したカバー部55と保持部33とは、それぞれリターンコンベアに載せて回収する。
【0045】
以上説明したように、このプリント基板保持装置31にあっては、保持部33は、
保持部ベース35と、この保持部ベース35とカバー部55との間に配設され、カバー部55の開口を覆うとともにコネクタを貫通させる貫通孔を有する断熱材からなる覆い板51と、保持部ベース35に移動可能に配設されコネクタ1を係止する可動爪41と、この可動爪41をコネクタ1に向かって押圧する弾性体43とを有し、保持部ベース35には、可動爪41を外部から操作するための開口部45が形成されているから、可動爪41を保持部ベース35の下方から操作することができ、したがって保持部ベース35とカバー部55との間に断熱材からなる覆い板51を設けることができる。このため、カバー部55内の熱が保持部ベース35を伝わって外部に洩れることを防止することができる。したがって、すみやかにカバー内を所定の温度に加熱して内部温度を安定させることができ、試験工程のスループットを向上させることができる。
【0046】
また、このプリント基板保持方法にあっては、ピン駆動装置47を駆動させ、可動爪41を弾性体43の押圧力に抗して後退位置に移動させて開状態にし、コネクタ1のスリーブ3を覆い板51の貫通孔51bに挿入し、その後ピン駆動装置47の駆動を解除することによって可動爪41が弾性体43の押圧力によって突出位置に移動し、可動爪41が係止突起3aと係合してコネクタ1を固定し、カバー部55を保持部33に取り付け、プリント基板2を装置内の閉空間Sに閉じ込める。
【0047】
したがって、上記プリント基板保持装置と同様の効果を奏すると共に、プリント基板の装着を自動的に容易に行うことができる。
【0048】
また、覆い板51をベーク材で構成しているから、低コストで断熱性の高い遮蔽板を構成することができる。
【0049】
さらに、覆い板51の下面に凹部51aを形成し、保持体ベース35や可動爪41との間に間隙を形成しているから、この部分を通っての熱の出入りを効率的に遮断して、断熱性を向上させることができる。
【0050】
なお、上記実施の形態によれば、可動爪41をピン駆動装置47を用いて作動させているが、これに限る必要はなく、可動爪41の係止凹部41aにピンを挿入して手動で操作するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態であるプリント基板保持装置を示す概略断面図。
【図2】図1に示すプリント基板保持装置のうちピン駆動装置の部分を示した断面図。
【図3】従来のプリント基板保持装置を示す概略断面図。
【図4】プリント基板保持装置で試験されるプリント基板を示す斜視図。
【符号の説明】
【0052】
31 プリント基板保持装置
33 保持部
35 保持部ベース
41 可動爪
43 弾性体
45 開口部
51 覆い板
51a 凹部
51b 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板(2)に固定されたコネクタ(1)を保持する保持部(33)と、前記プリント基板(2)を閉空間に閉じ込めるカバー部(55)とを備え、前記保持部(33)は、保持部本体(35)と、この保持部本体(35)と前記カバー部(55)との間に配設され前記カバー部(55)の開口を覆うとともに、前記コネクタ(1)を貫通させる貫通孔(51b)を有する断熱性材料からなる覆い板(51)と、前記保持部本体(35)に移動可能に配設され前記コネクタ(1)を係止する可動爪(41)とを備えた装置において、
前記可動爪(41)を、前記保持部本体(35)に設けられた開口(45)を通して操作して、開状態に保持し、
前記プリント基板(2)のコネクタ(1)を前記覆い板(51)の前記貫通孔(51b)に挿入し、
前記可動爪(41)を前記保持部本体(35)に設けられた前記開口(45)を通して操作して、閉状態に保持して前記コネクタ(1)を保持し、
カバー部(55)を前記覆い板(51)に気密に装着することによって、前記プリント基板(2)を閉空間に閉じ込めることを特徴とするプリント基板保持方法。
【請求項2】
プリント基板(2)に固定されたコネクタ(1)を保持する保持部(33)と、
前記プリント基板(2)を閉空間に閉じ込めるカバー部(55)と、
を備えたプリント基板保持装置であって、
前記保持部(33)は、
保持部本体(35)と、
この保持部本体(35)と前記カバー部(55)との間に配設され、前記カバー部(55)の開口を覆うとともに、前記コネクタ(1)を貫通させる貫通孔(51b)を有する断熱性材料からなる覆い板(51)と、
前記保持部本体(35)に移動可能に配設され前記コネクタ(1)を係止する可動爪(41)とを有し、
前記保持部本体(35)には、前記可動爪(41)を外部から操作するための開口(45)が形成されていることを特徴とするプリント基板保持装置。
【請求項3】
前記覆い板(51)はベーク材からなることを特徴とする請求項2に記載のプリント基板保持装置。
【請求項4】
前記覆い板(51)と前記保持体本体(35)および前記可動爪(41)との間に間隙(51a)を形成したことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のプリント基板保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−170181(P2008−170181A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1400(P2007−1400)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】