説明

プローブとその製造方法とプローブを用いたコンタクト装置とその製造方法

【課題】 配線基板4上の配線膜10に接触子を成す金属製のプローブ6を配置したタイプのコンタクト装置のプローブ6の摩耗による被測定電子機器等の電極との電気的接続性の低下を生じないようにする。
【解決手段】 被測定体の電極と接するプローブ6は、第1の金属膜30の両面に貴金属、例えば金からなる第2の金属膜32、32を形成した積層金属構造体からなり、その平面パターン(形状)が、前記配線基板側の端部を成す基部34と、リング状の弾性部36と、を少なくとも有する。
このプローブ6は、配線基板4の配線膜10のプローブ接続領域12上に基部34にてプローブ接続用金属膜(例えば錫或いは半田)24を介して接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブとその製造方法とプローブを用いたコンタクト装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI、VLSI等の半導体装置、プリント基板、或いは半導体装置、プリント基板等を用いた各種電子機器、例えば液晶表示装置等の被測定体を検査するには、その被測定体の各電極をテスター等と称される測定回路に電気的に接続する必要があり、その接続にはプローブを用いたコンタクト装置が使用される。
従来のコンタクト装置としては、スリーブに微細な1個乃至複数の接触子とスプリングを組み付けてプローブを構成し(特開2002−323515公報)、各プローブを、例えばプローブ収納部を被測定体の電極に対応して配置したプレート等のその各プローブ収納部に配置したものがある。
【0003】
また、配線基板上の配線膜に接触子を成す金属製のプローブを配置したタイプのコンタクト装置も現れている。
【特許文献1】特開2002−323515公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スリーブに微細な1個乃至複数の接触子とスプリングを組み付けたプローブを用いたコンタクト装置には、プローブを構成する各部材が機械加工技術で製造されることから微細なのでその製造が難しく、また、部材の組立も難しいので、高価になりがちであり、また、電極配置ピッチの微細化に対応することが難しくなりつつあるという問題があった。
それに対して、配線基板上の配線膜に接触子を成す金属製のプローブを配置したタイプのコンタクト装置によれば、既に微細化に充分に対応できる配線基板製造技術を駆使できるので、安価で且つ微細化にも充分に対応できるという利点がある。
【0005】
しかし、配線基板上の配線膜に接触子を成す金属製のプローブを配置したタイプのコンタクト装置には、第1には、プローブと被測定体の電極との良好な接続に必要な弾性(スプリング性)を得るようにすることが難しいという問題があった。
第2に、プローブと被測定電子機器等の電極との良好な電気的接続には、プローブの表面に貴金属、例えば金からなる膜を形成することが好ましいが、そのようにした場合、コンタクト装置の使用の繰り返しによりプローブの被測定体の電極との接触点が摩耗し、表面を覆う貴金属の膜が薄くなり、やがてその接触点において貴金属膜が完全に消失し、下地を成す金属が露出してしまうという問題があった。これは必然的に、電気的接続性の低下をもたらし、精確な検査、測定を妨げることになり、延いてはコンタクト装置の低寿命化をもたらす要因になる。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決すべく為されたものであり、配線基板上の配線膜に接触子を成す金属製のプローブを配置したタイプのコンタクト装置において、そのプローブの摩耗による被測定体の電極との電気的接続性が低下しないようにすることを第1の目的とし、被測定体の電極との良好な接続に必要な弾性(スプリング性)をのあるプローブを容易に得ることができるようにすることを第2の目的とし、電極の配置ピッチの微細化に容易に対応したコンタクト装置を低価格で提供することができるようにすることを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のプローブは、第1の金属膜と貴金属からなる第2の金属膜による二層以上の積層金属構造体が構成され、該積層金属構造体が積層方向側から視て、一端部が配線基板側の端部を成し、他端部が被測定体電極側の端部を成す所定パターンに形成されてなることを特徴とする。尚、積層金属構造体を積層方向(厚み方向)側から視たパターン(形状)を、本明細書において以後「平面パターン」ということとする。
請求項2のプローブは、請求項1記載のプローブにおいて、前記パターンが、前記配線基板側の端部を成す基部と、その基部と一体であって該基部とは反対側の端部に力を受けたときに弾力を蓄える弾性部と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3のプローブは、請求項2記載のプローブにおいて、前記弾性部が一又は複数のリングからなることを特徴とする。
請求項4のプローブは、請求項2記載のプローブにおいて、前記弾性部が蛇行状又はS字状であることを特徴とする。
請求項5のプローブは、請求項2、3又は4記載のプローブにおいて、少なくとも一部に、プローブ移送用把持代(しろ)を有することを特徴とする。
【0009】
請求項6のプローブは、第1の金属膜と貴金属からなる第2の金属膜による二層以上の積層金属構造体が構成され、上記積層金属構造体の一端部が配線基板に片持ちで支持され、他端部側面に被測定体電極に接触する接触部が形成されてなることを特徴とする。
請求項7のプローブは、請求項1、2、3、4、5又は6記載のプローブにおいて、前記第1の金属膜がニッケル又はロジウムからなり、前記第2の金属膜が金からなることを特徴とする。
【0010】
請求項8のプローブの製造方法は、仮基板上に、形成すべきパターンに対してネガのパターンを有するレジスト膜を形成する工程と、上記仮基板上に上記レジスト膜をマスクとして貴金属からなる第1の金属膜及び第2の金属膜を適宜な順序でメッキすることにより、第1の金属膜と貴金属からなる第2の金属膜による二層以上の積層金属構造体を得る工程と、上記積層金属構造体を上記仮基板及びレジスト膜から離型する工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
請求項9のコンタクト装置は、ベースの一方の表面上に複数の配線膜が形成され、その各配線膜の一部がプローブ接続領域とされた配線基板と、第1の金属膜と貴金属からなる第2の金属膜による二層以上の積層金属構造体が構成され、上記積層金属構造体が積層方向側から視て、一端部が配線基板側の端部を成し、他端部が被測定体電極側の端部を成す所定パターンに形成されてなる複数のプローブと、を備え、上記各プローブが、その配線基板側の端面にて上記配線基板の上記各配線膜の上記プローブ接続領域に、略垂直に接続されてなることを特徴とする。
請求項10のコンタクト装置は、請求項9記載のコンタクト装置において、前記ベースが透明乃至半透明であることを特徴とする。
【0012】
請求項11のコンタクト装置は、請求項8又は9記載のコンタクト装置において、前記各プローブの第2金属膜が金からなり、前記配線膜の表面に錫或いは半田が形成され、上記プローブと上記配線膜の端面との接続が、金錫共晶合金を介して為されていることを特徴とする。
請求項12のコンタクト装置の製造方法は、ベースの一方の表面上に複数の配線膜が形成され、その各配線膜の一部がプローブ接続領域とされ、そのベースの上記表面上に、少なくとも各プローブ接続領域を露出させる開口を有するパターンのレジスト膜を形成し、更にその開口に接続用金属膜を形成した配線基板を用意する工程と、第1の金属膜と貴金属からなる第2の金属膜による二層以上の積層金属構造体が構成され、上記積層金属構造体が積層方向側から視て、一端部が配線基板側の端部を成し、他端部が被測定体電極側の端部を成す所定パターンに形成されてなる複数のプローブを用意する工程と、上記各プローブを、その配線基板側の端面にて上記配線基板の上記レジスト膜の上記各開口に露出する各プローブ接続領域上に移送し、そこに垂直に保持する工程と、上記各プローブの配線基板側端面を上記配線基板の各配線膜のプローブ接続領域に上記接続用金属膜を介して接続する熱処理を行う工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
請求項13のコンタクト装置の製造方法は、請求項12記載のコンタクト装置の製造方法において、前記レジスト膜の各開口を、プローブ厚さよりも幅が稍広く形成されたプローブ受け入れ部分と、その部分から先に行く程狭くなりプローブと接して該プローブを上記プローブ接続領域にて垂直に保持するプローブ保持部分とからなる形状に形成し、上記各プローブを、上記プローブ受け入れ部分に垂直に置き、その後、上記各プローブを上記プローブ保持部分まで移動して上記レジスト膜の開口の内側面に接することによって保持された状態にし、その後、上記各プローブが保持された状態の配線基板を加熱装置にて前記熱処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1のプローブによれば、第1の金属膜と貴金属からなる第2の金属膜による二層以上の積層金属構造体が構成され、該積層金属構造体の平面パターンが、一端部が配線基板側の端部を成し、他端部が被測定体電極側の端部を成すパターンに形成されてなるので、被測定体電極側の端部を成す上記他端部は、どんなに摩耗しても常に貴金属からなる第2の金属膜が表面に露出する積層金属構造を有し続ける。
従って、上記他端部は、第1の金属膜とで積層金属構造を形成する、貴金属からなる第2の金属膜にて被測定体の電極と接した状態になり、接触点が摩耗しても電気的接続性は変化がなく、低下しない。
【0015】
請求項2のプローブによれば、請求項1のプローブにおいて、プローブの平面パターンが、弾性部を有するので、プローブが被測定体の電極との電気的接続性を良好にするために必要な弾性を容易に得ることができる。
即ち、弾性部となるべき部分の平面パターンを適宜に選ぶ(設定する)ことによってプローブに弾性を得ることができるのである。従って、容易に弾力を得ることができる。
【0016】
請求項3のプローブによれば、請求項2のプローブにおいて、弾性部がリングからなるので、頂部から基部に至る方向の力を受けたときにリングがその力により潰れる変形がし易く、変形することにより強い弾発力を蓄えることができ、充分な弾力を得ることがででき、延いては容易に強い弾力を得ることが可能である。
請求項4のプローブによれば、請求項2のプローブにおいて、弾性部がS字状又は蛇行状なので、頂部から基部に至る方向の力を受けたときに蛇行状或いはS字状部分がその力により潰れる変形がし易く、変形することにより強い弾発力を蓄えることができ、充分な弾力を得ることがででき、延いては容易に強い弾力を得ることが可能である。
【0017】
請求項5のプローブによれば、一部に移送用把持代(しろ)を有するので、プローブを配線基板のプローブ接続領域に接続するために必要なプローブの移送をその移送用把持代にて把持して行うことができ、プローブの移送がし易い。
請求項6のプローブによれば、片持ちタイプのプローブにおいて、第1の金属膜と貴金属からなる第2の金属膜による二層以上の積層金属構造を有するので、他端部の被測定体の電極と接する部分が摩耗しても、その接する部分において常に第1の金属膜と貴金属からなる第2の金属膜とによる二層以上の積層金属構造部分が露出し続け、その第2の金属膜にて被測定体の電極と接した状態になり、摩耗による電気的接続性の低下が全く生じない。
【0018】
請求項7のプローブによれば、請求項1、2、3、4、5又は6記載のプローブにおいて、第1の金属膜をニッケル又はロジウムで形成し、第2の金属膜を金により形成したので、金からなる第2の金属膜によりプローブと被測定体の電極との接触による電気的接続性を良好に得ることができる。
そして、第1の金属膜がニッケル又はロジウムからなるので、必要な弾性を得ることが容易である。
因みに、全部を金で構成した場合、金の剛性が強いので、必要な弾性を得ることが難しいが、しかし、プローブを第1の金属膜を成すニッケル又はロジウムと、その片面又は両面に形成した第2の金属膜を成す金とで構成することにより、プローブと被測定体の電極との接触による電気的導電性を良好に得ると共に、弾性も確保できるのである。
【0019】
請求項8のプローブの製造方法によれば、仮基板上に、形成すべきパターンに対してネガのパターンを有するレジスト膜を形成し、このレジスト膜をマスクとして貴金属からなる第2の金属膜、第1の金属膜を順次メッキすることにより、第1の金属膜と貴金属からなる第2の金属膜による二層以上の積層金属構造体をつくり、その後、積層金属構造体を上記仮基板及びレジスト膜から離型するので、微細なプローブを配線基板製造技術を駆使することにより容易に得ることができる。
【0020】
請求項9のコンタクト装置は、微細化技術が確立し、成熟した配線基板製造技術を駆使して容易に製造できる配線基板を母体とし、更に、そのような配線基板製造技術を応用して容易に製造できるプローブを用意し、そのプローブを配線基板の配線膜の一部、即ちプローブ接続領域にプローブを接続することにより構成できる。
従って、微細で高集積密度で電極が配置された被測定体の測定、検査に対応できるコンタクト装置を比較的安価に提供することができる。
そして、プローブは、第1の金属膜と貴金属からなる第2の金属膜とで形成した二層以上の積層金属構造を有するので、その構造を有するが故の上述した上記プローブの効果をコンタクト装置が享受する。
【0021】
請求項10のコンタクト装置は、配線基板のベースが透明乃至半透明なので、ベース越しに、プローブと被測定体の電極の位置を視認することができる。
従って、コンタクト装置の各プローブを被測定体の電極に接触させるための位置合わせがベース越しの視認により容易に為し得る。
請求項11のコンタクト装置によれば、請求項8又は9のコンタクト装置において、プローブと配線基板の配線膜のプローブ接続領域とを、金錫共晶合金を介して接続するので、機械的にも電気的にも良好な接続性を確保することができる。
【0022】
請求項12のコンタクト装置の製造方法によれば、配線基板とプローブを用意し、そのプローブをその配線基板の配線膜のプローブ接続領域上に接続用金属膜を介して垂直に配置し、その後、加熱処理するので、そのプローブが上記プローブ接続領域上に接続用金属膜を介して接続される。
従って、請求項9等のコンタクト装置を容易に得ることができる。
請求項13のコンタクト装置の製造方法によれば、請求項12のコンタクト装置の製造方法において、レジスト膜の各開口を、プローブ厚さよりも稍広く形成されたプローブ受け入れ部分と、その部分から先に行く程狭くなりプローブと接して該プローブを上記プローブ接続領域にて垂直に保持するプローブ保持部分とからなる形状に形成し、各プローブを、上記各開口のプローブ厚さよりも稍広く形成された部分に垂直に置き、その後、上記各プローブを上記プローブ保持部分まで移動して上記レジスト膜の開口の内側面に接することによって保持された状態にし、その後、上記各プローブが保持された状態の配線基板を加熱装置内に移動して前記熱処理を行うので、プローブを配線基板の所定位置に垂直に置いた後、その配線基板を加熱装置により加熱処理するまでの間にそのプローブが倒れることを、レジスト膜によるプローブ保持部分にての保持により防止することができ、不良の発生率を低めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のプローブの一つは、基本的に、第1の金属膜と貴金属からなる第2の金属膜による二層以上の積層金属構造体を構成し、該積層金属構造体の平面パターンを、一端部が配線基板側の端部を成し、他端部が被測定体電極側の端部を成すパターンに形成したものであるが、より良好な形態は、第1の金属膜をニッケル又はロジウムにより形成し、その両面に金からなる第2の金属膜を形成した態様であり、後述する実施例の項で記載するプローブもそのような態様を有する。尚、第1の金属膜の片面のみに第2の金属膜を形成した態様は最良の形態とは言えないので、実施例の項には記載しなかった。しかし、本発明のプローブは、第1の金属膜の片面のみに第2の金属膜を形成したという態様でも実施することができることはいうまでもない。
また、第2の金属膜、例えば金膜の片面或いは両面に第1の金属膜、例えばニッケル膜又はロジウム膜を形成するようにしても良い。勿論、積層数を2或いは3にするのではなく、4以上にするようにしても良い。
【0024】
例えば、第2の金属膜(例えば金膜)/第1の金属膜(例えばニッケル膜或いはロジウム膜)/第2の金属膜(例えば金膜)/第1の金属膜(例えばニッケル膜或いはロジウム膜)/第2の金属膜(例えば金膜)というような態様で第1の金属膜と貴金属からなる第2の金属膜による二層以上の積層金属構造体を構成することもできる。
ところで、第1の金属膜をニッケル又はロジウムにより形成し、その両面に金からなる第2の金属膜を形成したという態様の場合においては、第1の金属膜の厚さは10μm程度、例えば8〜12μm程度が好適であり、その両面の第2の金属膜は各々4〜6μmが好適である。
【0025】
上記平面パターンは、基部と弾性部からなり、弾性部はリング状、S字状或いは蛇行状が好適である。というのは、プローブを被測定体の電極の電極に接触させるとき加える力によって容易に変形し、復元力を蓄えることができるので、その復元力が弾力となり、プローブと電極を接触させたとき良好な電気的接続性を得る上で必要な弾力を得ることができるからである。
また、プローブの平面パターンは、把持代を有することが好ましい。というのは、弾性部を、例えばリング状、S字状或いは蛇行状に形成しただけに留めると、プローブを配線基板へ、それに接続するために移送する時、プローブを掴みにくいが、把持代(しろ)を設けるとその把持代にて安定にプローブを把持することができるからである。
【0026】
本発明のプローブの別の一つは、上記プローブと同じ積層構造の積層構造体からなるが、片持ちにしたものであり、その点で、上記プローブとは異なる。従って、被測定体の電極と接する接触点は、上記積層構造体(第2の金属膜、第1の金属膜)の側面に形成される。
本発明のコンタクト装置の配線基板は、ベースがガラスであることが好ましい。また、そのガラスからなるベースの一方の表面に形成される配線膜は、下層がクロム層(厚さ例えば0.1μm程度)、上層が金層(厚さ1.1μm程度)からなる二層構造にすると好ましい。
そして、その二層構造の配線膜の形成後、そのガラスからなる配線膜状を含むベース上にレジスト膜を形成し、そのレジスト膜の配線膜のプローブ接続領域上を露出させる開口部分に、半田或いは錫からなる接続用金属膜を形成し、この接続用金属膜を介してプローブを接続するようにすると良い。
この接続用金属膜は錫或いは半田が好適である。というのは、錫(半田の場合、半田のなかの錫)とプローブの第2の金属膜を成す貴金属として最も好適な金とで共晶合金が構成され、その共晶合金を介してプローブと配線基板の配線膜との接続ができるからである。その接続のための熱処理はホットプレートを用いて行うのがよい。
【実施例1】
【0027】
以下、本発明を図示実施例に従って詳細に説明する。
図1(A)〜(C)は本発明コンタクト装置の一つの実施例2を示すもので、(A)は側面図、(B)は(A)のB−B線視断面図、(C)はプローブ接続前における配線基板4の一部を拡大して示す断面図である。
本実施例2は、配線基板4と、それに組み付けられた複数のプローブ6、6、・・・からなる。先ず、配線基板4について説明する。
8は配線基板4のベースであり、本実施例においては、ガラスからなり、透明である。
10、10、・・・は上記ベー8上に形成された配線膜であり、その一端部がプローブ接続領域12となっており、他端は図面に現れないが、ソケットを介してテスター等と称される測定回路と接続される。
【0028】
各配線膜10は図1(C)に示すように多層構造を有し、14は配線膜10の下層を成すクロム膜であり、厚さは例えば0.1μmである。16はクロム膜14の表面に形成された金膜で、厚さは例えば0.1μmである。この膜14及び16は例えばスパッタリングによりガラスベース8上に全面的に形成された後、選択的エッチングによりパターニングされることにより形成されたものである。18は上記金膜14上に電解メッキにより形成された金膜で、厚さは例えば1.0μm程度である。
【0029】
20は配線膜10上を含めベース8上に選択的に形成されたレジスト膜で、各配線膜10、10、・・・のプローブ接続領域12、12、・・・を露出させる開口22、22、・・・を有し、厚さは例えば40μm程度である。
24はプローブ接続用金属膜であり、厚さが例えば3μm程度であり、錫或いは半田からなり、加熱されて、後述するプローブ6の第2の金属膜を成す金膜(32、32)とで金錫共晶合金をつくり、プローブ6を強固に配線膜10のプローブ接続領域12上に垂直に固定する役割を果たす。
【0030】
次に、プローブ6、6、・・・について説明する。
各プローブ6は、図1(B)から明らかなようにその断面構造が三層構造を有している。30は第1の金属膜で、本実施例ではニッケルからなり、厚さは例えば10μm程度である。尚、第1の金属膜30をニッケルに代えてロジウムで形成するようにしても良い。
32、32はその第1の金属膜30の両面に形成された貴金属である金からなる第2の金属膜で、各々の厚さは例えば5μm程度である。従って、各プローブ6の厚さは20μm程度である。
そして、各プローブ6の平面パターン(プローブをの厚さ方向側から視たパターン)は、図1(C)に示すようなパターンになっている。この平面パターンを具体的に説明すると、上記配線膜10に接続された基部34と、該基部34に形成されたリング部36と、該リング部36の頂部に形成された突起38と、上記リング部36の内側に設けられた把持代40で各プローブ6の平面パターンが構成されている。
【0031】
基部34はプローブ6を強固且つ確実に配線膜10に接続できるように、更にプローブ6、6、・・・を配線基板4の配線膜10にプローブ接続用金属膜24を介して接続するべくその金属膜24を溶融させるためにホットプレート(60)で加熱、加圧ができるように幅を広く且つ厚く形成されている。即ち、プローブ6は基部34にて加圧され、加熱される。
リング部36は突起38にて図示しない被測定体の電極に接し、図1における上方向からの力を受けたときその力により変形してその復元力により弾性を持ち、プローブ6と電極とを弾力をもって接触して良好な電気的接続が得られるようにする。このリング部32は特許請求の範囲の弾性部に該当する。
また、突起38は電極とより強固に接するように設けられている。また、把持代40はプローブ6を配線基板4に組み付けるべく移送する際に器具により良好に把持できるように設けられている。
【0032】
図2(A)〜(D)は上記各プローブ6の製造方法を工程順に示す断面図である。
(A)図2(A)に示すように、プローブ製造用の例えばステンレス(SUS)からなる仮基板50を用意し、この仮基板50上にレジスト膜52を選択的に形成する。具体的には、プローブ6の平面パターンに対してネガのパターンになるようにレジスト膜52を形成する。
(B)次に、上記レジスト膜52をマスクとして、上記仮基板50上に金からなる第2の金属膜(厚さ例えば5μm程度)32を電解メッキにより形成し、引き続いて、ニッケルからなる第1の金属膜(厚さ例えば10μm程度)30を電解メッキにより形成し、引き続いて、金からなる第2の金属膜(厚さ例えば5μm程度)32を電解メッキにより形成する。図2(B)はその電解メッキ終了後の状態を示す。
【0033】
(C)次に、図2(C)に示すように、第2の金属膜32、第1の金属膜30、第2の金属膜32からなる積層体、即ちプローブ6を真空ピンセット54を用いて吸着し、仮基板50から離型する。
このように、プローブ6は、微細加工技術として確立し、成熟したフォトリソグラフィ技術、電解メッキ技術を駆使して製造するので、極めて微細に且つ安価に製造することができる。
(D)次に、真空ピンセット54で吸着したプローブ6を、図2(D)に示すように、配線基板4に仮固定するための治具60に渡す。この場合、真空ピンセット54がプローブ6を水平方向に受けるのに対して、配線基板4には垂直な向きで仮固定する必要があるので、真空ピンセット54の向きを90度回転させ、それによって治具60がプローブ6を仮固定する垂直な向きに把持できるようにする。
【0034】
図3(A)〜(E)は上記配線基板4の製造方法の概略を工程順に示す断面図である。
(A)先ず、ガラスからなるベース8を用意し、このベース8の一方の表面にクロム膜(厚さ例えば0.1μm程度)14を例えばスパッタリングにより全面的に形成し、更に、金膜(厚さ例えば0.1μm程度)16を例えばスパッタリングにより全面的に形成する。図3(A)は金膜16を形成した後の状態を示す。
(B)次に、図3(B)に示すように、上記クロム膜14及び金膜16をフォトエッチングによりパターニングして配線膜10を得る。
(C)次に、図3(C)に示すように、上記金膜16上に例えば電解メッキにより金膜(厚さ例えば1.0μm程度)18を形成する。この電解メッキは、配線膜を10を本来必要な配線膜の外にこれらを短絡するダミーパターンを周辺部に有するパターンに形成し、電解メッキ後にそのダミーパターンを有する周辺部をカットして本来必要な配線膜をそれぞれ電気的に独立させるという方法で形成することができる。
【0035】
(D)次に、図3(D)に示すように、レジスト膜20を選択的に形成する。各開口22は各配線膜10のプローブ接続領域12を露出させる位置に設けられている。尚、各開口22は図4(B)に示す平面形状を有するが、その理由については後で明らかにする。
(E)次に、金膜18の上記各開口22に露出する面に錫或いは半田からなるプローブ接続用金属膜24を例えばメッキにより形成する。
これにより、配線基板4が出来上がる。
【0036】
図4(A)、(B)は上記各プローブ6、6、・・・を配線基板4へ取付る取付方法を説明するためのものであり、(A)はプローブ6を治具60にて配線基板4の配線膜10の開口22に露出する部分に置く状態を示す断面図であり、(B)はプローブの仮固定を説明する平面図である。
図2に示す方法で製造したプローブ6を、治具60を用いて、基部34が下を、突起38が上を向く向きで把持代40にて把持し、配線基板4の配線膜10の各プローブ接続領域12を露出させる開口22上に移送する。
【0037】
ところで、上記各開口22は図4(B)に示すように、プローブ6よりも稍広くその基部34を受け入れるに充分な幅のプローブ受け入れ部分22aと、その部分22aと連通し先に行く程幅が狭くなるように形成されたテーパー状のプローブ保持部分22bとからなる平面パターンを有し、各プローブ6を上記治具60により上記プローブ受け入れ部分22b上に垂直に置き、その後、そのプローブ6をテーパー部分22b側に適宜移動させる。
すると、そのプローブ6はレジスト膜20の開口22の幅が狭められたテーパー状のプローブ保持部分22bの内側面に接して位置、向きがレジスト膜20により規定された状態、換言すれば仮固定された状態になる。
【0038】
図5は全プローブ6、6、・・・に対する仮固定が済んだ配線基板4についてホットツール64を用いて加熱処理する状態を示す断面図である。
該ホットツール64は全プローブ6、6、・・・をその基部34、34、・・・にて配線基板4の各配線膜10、10、・・・・のプローブ接続領域12、12、・・・へ所定圧力で押圧し、且つ所定温度に加熱する。例えば、1個のプローブ6当たり20gで加圧し、280℃に10秒間加熱する。
すると、上記各プローブ接続用金属膜24、24、・・・が溶融し、各プローブ6の基部34の第2金属膜32、32を成す金と金属膜24を成す錫(或いは半田の錫成分)とで金錫共晶合金が生じ、その共晶合金を介してプローブ6が基部34にて配線膜10に接続された状態になる。
これで、コンタクト装置が完成する。
【実施例2】
【0039】
図6(A)〜(C)は本発明プローブの各々別の実施例6a〜6cを示すプローブの平面図である。
(A)は弾性部がリングを複数連接した形状に形成されたもの6aを、(B)は弾性部70がS字状に形成されたもの6bを、(C)は弾性部が蛇行状に形成されたもの6cを、それぞれ示す。尚、プローブ6a〜6cの断面構造は図1に示したプローブ6と同じ三層構造であるので、その図示、説明は省略する。
いずれも、プローブ6a、6b、6cの突起100が図示しない電極に接したとき弾性部を構成する部分(リング或いは蛇行状部分)が変形して復元力を蓄え、それが弾力となってプローブ6と電極との接触の電気的接続性を良好にする。
【実施例3】
【0040】
図7は本発明プローブの更に別の実施例106を示す斜視図である。
本実施例は、プローブ106が片持ちで配線基板104の配線膜108に接続金属膜110に基部(突起が形成された側と反対側の部分)にて接続されるようにしたものであり、突起112はプローブ106の端面114ではなく一方の側面116に形成される。
この実施例106もその断面構造は図1に示したプローブ6と同じ三層構造であるので、その図示、説明は省略する。
この実施例106においても、接触点となる突起112において摩耗が生じても常に貴金属からなる第2の金属層32、32が存在し表面に露出し続けるので、プローブ106の被測定体の電極との電気的接続性が低下するおそれがない。
このように、本発明は片持ちタイプのプローブ106にも適用できるのである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、プローブとその製造方法とプローブを用いたコンタクト装置とその製造方法に一般的に利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(A)、(B)は本発明コンタクト装置の一つの実施例を示すもので、(A)は側面図、(B)は(A)のB−B線視断面図、(C)はプローブ接続前における配線基板4の一部を拡大して示す断面図である。
【図2】(A)〜(D)は上記各プローブの製造方法を工程順に示す断面図である。
【図3】(A)〜(E)は上記配線基板4の製造方法の概略を工程順に示す断面図である。
【図4】(A)、(B)は上記各プローブを配線基板へ取付る取付方法を説明するためのものであり、(A)はプローブを治具にて配線基板の配線膜の開口に露出する部分に置く動作を説明する断面図であり、(B)はプローブの仮固定を説明する平面図である。
【図5】全プローブの仮固定が済んだ配線基板についてホットツールを用いて加熱処理する状態を示す断面図である。
【図6】(A)〜(C)は本発明プローブの各々別の実施例6a〜6cを示すプローブの平面図である。
【図7】本発明プローブの更に別の実施例(片持ちタイプのプローブ)を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
2・・・コンタクト装置、4・・・配線基板、6、6a〜6c・・・プローブ、
8・・・ベース、10・・・配線膜、12・・・プローブ接続領域、
20・・・レジスト膜、22・・・開口、22a・・・プローブ受け入れ部分、
22b・・・プローブ保持部分、24・・・プローブ接続用金属膜(錫或いは半田)、
30・・・第1の金属膜、32・・・第2の金属膜(貴金属、例えば金)、
34・・・基部、36・・・リング部、38・・・突起、40・・・把持代、
50・・・仮基板、52・・・レジスト膜、54・・・真空ピンセット、
60・・・プローブ把持用治具、64・・・加熱処理装置(ホットプレート)。
106・・・片持ちタイプのプローブ、104・・・配線基板、108・・・配線膜、
110・・・プローブ接続用金属膜、112・・・突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属膜と貴金属からなる第2の金属膜とによる二層以上の積層金属構造体が構成され、
上記積層金属構造体が積層方向側から視て、一端部が配線基板側の端部を成し、他端部が被測定体電極側の端部を成すパターンに形成されてなる
ことを特徴とするプローブ。
【請求項2】
前記パターンは、
前記配線基板側の端部を成す基部と、
その基部と一体であって該基部とは反対側の端部が力を受けたときに弾力を蓄える弾性部と、
を有することを特徴とする請求項1記載のプローブ。
【請求項3】
前記弾性部が一又は複数のリングからなる
ことを特徴とする請求項2記載のプローブ。
【請求項4】
前記弾性部がS字状又は蛇行状である
ことを特徴とする請求項2記載のプローブ。
【請求項5】
少なくとも一部に、プローブ移送用把持代を有する
ことを特徴とする請求項2、3又は4記載のプローブ。
【請求項6】
第1の金属膜と貴金属からなる第2の金属膜とによる二層以上の積層金属構造体が構成され、
上記積層金属構造体の一端部が配線基板に片持ちで支持され、他端部側面に被測定体電極に接触する接触部が形成されてなる
ことを特徴とするプローブ。
【請求項7】
前記第1の金属膜がニッケル又はロジウムからなり、前記第2の金属膜が金からなる
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載のプローブ。
【請求項8】
仮基板上に、形成すべきパターンに対してネガのパターンを有するレジスト膜を形成する工程と、
上記仮基板上に上記レジスト膜をマスクとして貴金属からなる第1の金属膜と第2の金属膜のメッキを順次行うことにより、第1の金属膜と第2の金属膜による二層以上の積層金属構造体を得る工程と、
上記積層金属構造体を上記仮基板及びレジスト膜から離型する工程と、
を有することを特徴とするプローブの製造方法。
【請求項9】
ベースの一方の表面上に複数の配線膜が形成され、その各配線膜の一部がプローブ接続領域とされた配線基板と、
第1の金属膜と貴金属からなる第2の金属膜による二層以上の積層金属構造体が構成され、該積層金属構造体が積層方向側から視て、一端部が配線基板側の端部を成し、他端部が被測定体電極側の端部を成す所定パターンに形成されてなる複数のプローブと、
を備え、
上記各プローブが、その配線基板側の端面にて上記配線基板の上記各配線膜の上記プローブ接続領域に、略垂直に接続されてなる
ことを特徴とするコンタクト装置
【請求項10】
前記ベースが透明乃至半透明である
ことを特徴とする請求項9記載のコンタクト装置。
【請求項11】
前記各プローブの第2金属膜が金からなり、
前記配線膜の表面に錫或いは半田が形成され、
上記プローブと上記配線膜の端面との接続が、金錫共晶合金を介して為されている
ことを特徴とする請求項8又は9記載のコンタクト装置。
【請求項12】
ベースの一方の表面上に複数の配線膜が形成され、その各配線膜の一部がプローブ接続領域とされ、そのベースの上記表面上に、少なくとも各プローブ接続領域を露出させる開口を有するパターンのレジスト膜を形成し、更にその開口に接続用金属膜を形成した配線基板を用意する工程と、
第1の金属膜と貴金属からなる第2の金属膜とによる2層以上の積層金属構造体が構成され、この積層金属構造体が積層方向側から視て、一端部が配線基板側の端部を成し、他端部が被測定体電極側の端部を成す所定パターンに形成されてなる複数のプローブを用意する工程と、
上記各プローブを、その配線基板側の端面にて上記配線基板の上記レジスト膜の上記各開口に露出する各プローブ接続領域上に移送し、そこに垂直に保持する工程と、
上記各プローブの配線基板側端面を上記配線基板の各配線膜のプローブ接続領域に上記接続用金属膜を介して接続する熱処理を行う工程と、
を有することを特徴とするコンタクト装置の製造方法。
【請求項13】
前記レジスト膜の前記各開口を、プローブ厚さよりも幅が稍広く形成されたプローブ受け入れ部分と、そのプローブ受け入れ部分から先に行く程狭くなりプローブと接して該プローブを前記プローブ接続領域にて垂直に保持するプローブ保持部分とからなる形状に形成し、
上記各プローブを、上記プローブ受け入れ部分に垂直に置き、
その後、上記各プローブを上記プローブ保持部分まで移動して上記レジスト膜の開口の内側面に接することによって保持された状態にし、
その後、上記各プローブが保持された状態の配線基板を加熱装置によって前記熱処理を行う
ことを特徴とする請求項12記載のコンタクト装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−57445(P2007−57445A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245100(P2005−245100)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(591245141)株式会社渕上ミクロ (26)
【Fターム(参考)】