説明

プローブユニット構造

【課題】接触抵抗の不安定さを解消でき、被検査体との測定精度に優れた低コストのプローブユニット構造を提供する。
【解決手段】ガイドプレート20に装着された複数のリード線一体型のワイヤー型プローブ10の先端11を被検査体に押し当て、湾曲したプローブ10の反発力を検査圧力として利用し、プローブ10の後端12側をリード線として利用するプローブユニット構造1であり、ガイドプレート20を構成する複数のプレートは、被検査体側から、プローブ先端11を所定長さL1だけ突出させるプローブ先端側プレート21と、プローブ先端側プレート21から離間して配置され、そのプローブ先端側プレート21との間でプローブ10が湾曲する湾曲部13の長さL2を決定する中間プレート22と、中間プレート22から離間して配置され、その中間プレート側にスライド可能な調整機構を有し且つプローブ10を固定するプローブ後端側プレート23とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード線一体型のワイヤー型プローブを使用したプローブユニット構造に関し、さらに詳しくは、低コストで、被検査体との測定精度に優れたプローブユニット構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等に使用される高密度実装基板、又は、パソコン等に組み込まれるBGA(Ball Grid Array)やCSP(Chip Size Package)等のICパッケージ基板等、様々な回路基板が多く用いられている。このような回路基板は、実装の前後の工程において、例えば直流抵抗値の測定や導通検査等が行われ、その電気特性の良否が検査されている。電気特性の良否の検査は、電気特性を測定する検査装置に接続された検査装置用治具(以下、「プローブユニット」という。)を用いて行われ、例えば、プローブユニットに装着されたピン形状のプローブ針の先端を、その回路基板の電極(以下「被測定体」ともいう。)に接触させることにより行われている(例えば特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−322369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の図6、図7及び図9には、各種形態のプローブ針1,101を装着したプローブユニット10,110が記載されているが、プローブユニット10,110に組み付けられたプローブ針1,101はリード線50,150に接触し、測定時の電気信号はそのリード線50,150を経て検査装置に送られる。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1等に記載の従来型のプローブユニットでは、プローブとリード線とが分かれており、接触圧力が変動したり接触自体が繰り返されたりすることにより、プローブとリード線との接触抵抗が不安定になるという問題がある。同様に、被検査体に接触するプローブ先端やリード線に接触するプローブ後端が汚れや酸化等により電気接触性が悪化した場合は、プローブを交換しなければならなかった。
【0006】
また、従来型の4端子抵抗測定用プローブユニットは、一つのプレート穴にプローブを1本差し込む構造であるため、プレート穴の径を小さくするとともにプレート穴の間隔を狭める必要があり、その結果、小さい径の穴を数多く穴開けしなければならず、穴加工コストが高かった。一方、低コストの4端子抵抗測定用プローブユニットとして、プレート穴の径を大きくし、一つのプレート穴に複数本のプローブを差し込む構造も考えられるが、同一穴に差し込んだ各プローブ先端と各リード線に対応するリード線との安定接続が不安定且つ困難になるため、実用できていなかった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決したものであって、その目的は、接触抵抗の不安定さを解消でき、被検査体との測定精度に優れた低コストのプローブユニット構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明のプローブユニット構造は、ガイドプレートに装着された複数のプローブの先端を被検査体に押し当て、湾曲したプローブの反発力を検査圧力として利用し、該プローブの後端側をリード線として利用するプローブユニット構造であって、前記プローブは、金属線と該金属線上に設けられた絶縁層とを有するリード線一体型のワイヤー型プローブであり、前記ガイドプレートは、前記プローブを差し込む穴が形成された複数のプレートで構成され、前記複数のプレートは、前記被検査体側から、プローブ先端を所定長さだけ突出させるプローブ先端側プレートと、該プローブ先端側プレートから離間して配置され、該プローブ先端側プレートとの間で前記プローブが湾曲する湾曲部の長さを決定する中間プレートと、該中間プレートから離間して配置され、該中間プレート側にスライド可能な調整機構を有し且つ前記プローブを固定するプローブ後端側プレートと、を少なくとも有することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、プローブの先端が被検査体に押し当たり、プローブの後端側をリード線として利用するリード線一体型のワイヤー型プローブを使用するので、従来のようなプローブとリード線との接触抵抗の不安定さが問題になることがない。さらに、ガイドプレートを構成する複数のプレートが、上記したプローブ先端側プレートと中間プレートとプローブ後端側プレートとを有するので、例えばプローブ先端が汚れ又は酸化してプローブ先端を研削し、そのプローブ先端の突出長さが短くなってしまった場合に、プローブ後端側プレートを中間プレート側にスライドさせることにより、従来のようにプローブピンを交換しなくてもプローブ先端及びプローブ先端の突出長さを元の状態に再生できる。その結果、定期的又は不定期にプローブ先端を研削すればプローブの交換も不要となり、しかも、従来のようなプローブピンの長さバラツキに基づいた突出長さの不均一さを原因とする被検査体への接触圧力の変化もないという格別の利点があるので、一定の接触圧力で被検査体に押し当てることができ、被検査体との測定精度に優れた低コストのプローブユニット構造を提供することができる。
【0010】
本発明のプローブユニット構造において、前記プローブ後端側プレートが有する調整機構は、前記プローブ先端が前記被検査体に押し当たって汚れ又は酸化等した場合に、前記プローブ先端を研削し、研削して短くなった突出長さを元の突出長さに戻すために前記中間プレート側にスライドさせる調整機構であるように構成する。
【0011】
本発明のプローブユニット構造において、前記検査圧力の調整は、前記プローブ先端側プレートと前記中間プレートとの間の距離を変化させて行うように構成する。
【0012】
本発明のプローブユニット構造において、前記プローブ先端側プレート、前記中間プレート、及び前記プローブ固定プレートは、それぞれ少なくとも1枚以上のプレートで構成されているように構成する。
【0013】
本発明のプローブユニット構造において、前記複数のプローブに開けられた穴は、1本以上3本以下のプローブを差し込むことができる所定の直径で開けられているように構成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のプローブユニット構造によれば、リード線一体型のワイヤー型プローブを使用するので従来のようなプローブとリード線との接触抵抗の不安定さが問題になることがなく、さらに、例えばプローブ先端が汚れ又は酸化してプローブ先端を研削し、そのプローブ先端の突出長さが短くなってしまった場合に、プローブ先端側プレートを中間プレート側にスライドさせることにより、従来のようにプローブピンを交換しなくてもプローブ先端側を元の状態に再生できるので、定期的又は不定期にプローブ先端を研削すればプローブの交換も不要となる。さらに、従来のようなプローブピンの長さバラツキに基づいた被検査体への接触圧力の変化もないので、一定の接触圧力で被検査体に押し当てることができ、被検査体との測定精度に優れた低コストのプローブユニット構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のプローブユニット構造の基本構造の一例を示す模式的な正面図である。
【図2】本発明のプローブユニット構造を被検査体側から見たときの例を示す模式的な平面図である。
【図3】本発明のプローブユニット構造において、多数のワイヤー型プローブを装着した実施態様の模式的な正面図である。
【図4】図1で例示した本発明のプローブユニット構造の組み立て手順の態様を示す模式的な正面図である。
【図5】図4で示した組み立て手順後の態様を示す模式的な正面図である。
【図6】本発明のプローブユニット構造によって被検査体の電気特性を検査する態様を示す模式的な断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のプローブユニット構造について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は、本発明のプローブユニット構造の基本構造の一例を示す模式的な正面図である。図2は、本発明のプローブユニット構造を被検査体側から見たときの例を示す模式的な平面図である。図3は、本発明のプローブユニット構造において、多数のワイヤー型プローブを装着した実施態様の模式的な正面図である。図4は、図1で例示した本発明のプローブユニット構造の組み立て手順の態様を示す模式的な正面図であり、図5は、図4で示した組み立て手順後の態様を示す模式的な正面図である。図6は、本発明のプローブユニット構造によって被検査体の電気特性を検査する態様を示す模式的な断面構成図である。なお、本発明は図示の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本発明のプローブユニット構造1は、図1及び図3に示すように、ガイドプレート20に装着された複数のプローブ10の先端11を被検査体50に押し当て、湾曲したプローブ10の反発力を検査圧力として利用し、プローブ10の後端12側をリード線として利用する構造に係るものである。そして、その特徴とするところは、プローブ10が、金属線15と、金属線15上に設けられた絶縁層16とを有するリード線一体型のワイヤー型プローブであること、及び、ガイドプレート20が、プローブ10を差し込む穴24が形成された下記の複数のプレート(21,22,23)で構成されていることにある。
【0019】
ガイドプレート20を構成する複数のプレートは、被検査体50(図6参照)側から、プローブ先端11を所定長さL1だけ突出させるプローブ先端側プレート21と、プローブ先端側プレート21から離間して配置され、そのプローブ先端側プレート21との間でプローブ10が湾曲する湾曲部13の長さL2を決定する中間プレート22と、中間プレート22から離間して配置され、その中間プレート側にスライド可能な調整機構(図示しない)を有し且つプローブ10を固定するプローブ後端側プレート23とを少なくとも有している。
【0020】
本発明のプローブユニット構造1において、図2(A)に示すように、一つのプレート穴24に2本のプローブ10a,10bを差し込む場合は主に4端子抵抗測定用として好ましく用いることができ、図2(B)に示すように、一つのプレート穴24に1本のプローブ10を差し込む場合は主に2端子抵抗測定用として好ましく用いることができ、図2(C)に示すように、一つのプレート穴24に3本のプローブ10a,10b,10cを差し込む場合は主に4端子抵抗測定用として好ましく用いることができる。
【0021】
なお、図1において、符号14は、プローブ10がリード部として機能する領域を指し、符号31は、プローブ10をプローブ先端側プレート23に固定する接着剤を指し、符号40は、検査装置を指している。
【0022】
以下、各構成要素について説明する。
【0023】
(リード線一体型のプローブ)
プローブ10は、リード線一体型のワイヤー型プローブである。ここでの「ワイヤー型」は従来の短いピン型プローブに対して、ある程度の長さを持っていることを表す用語として用い、「リード線一体型」はピン型プローブとリード線とで構成された従来の信号伝達導体構造に対する用語として用いている。すなわち、リード線一体型のワイヤー型プローブとは、従来のようにプローブとリード線とが分かれておらず、接触圧力が変動したり接触自体が繰り返されたりすることによりプローブとリード線との接触抵抗が不安定になるという問題が生じない長尺の信号伝達導体であって、金属線15と、金属線15上に設けられた絶縁層16とを有するものである。
【0024】
金属線15は、所定の長さに加工されてなる線状導体であり、高い導電性と高い弾性率を有する金属線(「金属ばね線」ともいう。)を切断加工して形成されている。金属線15に用いられる金属としては、広い弾性域を持つ金属を挙げることができ、例えばベリリウム銅等の銅合金、タングステン、レニウムタングステン、鋼(例えば高速度鋼:SKH)等を好ましく用いることができる。金属線15が弾性材で構成される理由は、本発明のプローブユニット構造1がプローブ10の先端11を被検査体50に押し当て、湾曲したプローブ10の反発力を検査圧力として利用しているからである。
【0025】
プローブユニット構造1においては、被検査体50に押し当たるプローブ先端11の長さと、被検査体にプローブ先端11が押し当たって湾曲する湾曲部13の長さと、リード線として機能するリード部14の長さとを少なくとも確保する必要があるので、プローブ10はある程度の長さが必要であり、特にリード部14が長い必要があるため、金属線11の長さとしては、数百mm、例えば200mm程度から500mm程度の長さは最低限必要である。こうした長さの金属線15は、先端11から後端12まで継ぎ目がないものが通常用いられるが、融着やカシメ等によって継ぎ目を持たせたものであってもよい。ただし、継ぎ目を持たせる場合は、リード部14である必要がある。
【0026】
金属線15は、通常、上記の金属が所定の径の線状導体となるまで冷間又は熱間伸線等の塑性加工が施される。金属線15の外径は、接触させる被検査体の大きさ、プレート穴24の直径、プレート穴への挿入本数、リード線としての取り扱い易さ等によって任意に設定されるが、通常、20μm以上500μm以下、好ましくは25μm以上200μm以下の範囲内から任意に選択することができる。なお、金属線15の先端側の端部と後端側の端部の形状は特に限定されないが、図5(B)に示すように、使用時に研削されるので、通常は平坦面又はやや湾曲した平面形状であればよい。
【0027】
(絶縁層)
絶縁層16は、金属線15上に設けられる。絶縁層16は、基本的には、被検査体50の電気特性を検査する際のプローブ同士の接触を防いで短絡を防止するように作用するものであるが、更に加えて、プローブ全体としての被膜強度と耐電圧を確保するとともに、プローブユニットへの装着時や使用時の穴への挿入の容易化、摺動不良・検査不良の低減等を実現するために設けられる。さらに、この絶縁層16は、図2(A)(C)に示すように、プレート穴24に2本以上挿入される場合には、同時に挿入された他のプローブ10の金属線15との間に所定の絶縁ギャップ(間隔)を確保するために設けられる。その絶縁ギャップは、隣り合うプローブ10の絶縁層16の厚さとなる。絶縁層16は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。多層構造で絶縁層16を構成する場合は、絶縁性の異なる層で構成してもよいし、滑り性を付与する層を外層に形成してもよいし、熱融着性を有する層を外層に形成してもよい。
【0028】
絶縁層16の構成材料は特に限定されないが、例えばポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂から選ぶことができ、より耐熱性を持たせる場合にはポリエステルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を選ぶことができる。また、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等であってもよい。また、多層構造としたときの外層として、滑り性を確保する層を形成する場合には、フッ素系の樹脂材料を用いることができ、熱融着性を持たせるために形成する場合には、ポリアミド系、ブチラール系、エポキシ系の熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0029】
絶縁層16の厚さは、金属線15の種類と外径、どの程度の被膜強度と耐電圧を持たせるか、プレート穴24に2本以上挿入される場合に同時に挿入した他のプローブ10の金属線15との間にどの程度の絶縁ギャップ(間隔)を確保させるか等によって任意に設定されるが、通常は1μm以上50μm以下程度、好ましくは3μm以上40μm以下程度の範囲を例示できる。金属線15上への絶縁層16の形成は、通常、長尺の金属線15上に連続エナメル焼き付け方法によって行うことが好ましいが、もちろん他の方法で形成したものであってもよい。
【0030】
(ガイドプレート)
ガイドプレート20は、図1等に示すように、プローブ10を差し込む穴24が形成された複数のプレート(21,22,23)で構成され、複数のプローブ10を装着している。こうしたガイドプレート20は、図6に示すように、装着したプローブ10の先端11を被検査体50に押し当てるように動作し、その結果、プローブ10の湾曲部13を湾曲させ、湾曲したプローブ10の反発力を検査圧力として利用し、被検査体50の電気特性を検査する。
【0031】
ガイドプレート20を構成する複数のプレートとしては、被検査体50側から、プローブ先端11を所定長さL1だけ突出させるプローブ先端側プレート21と、プローブ先端側プレート21から離間して配置され、そのプローブ先端側プレート21との間でプローブ10が湾曲する湾曲部13の長さL2を決定する中間プレート22と、中間プレート22から離間して配置され、その中間プレート側にスライド可能な調整機構(図示しない)を有し且つプローブ10を固定するプローブ後端側プレート23とが少なくとも挙げられる。
【0032】
これらの各プレート20(21,22,23)の材質としては、絶縁性基材を好ましく用いることができ、例えばプラスチック基材や、アルミナ等のセラミックス基材を好ましく用いることができる。また、各プレート20は、1枚で構成したものであってもよいし、例えば図1の中間プレート22のように2枚の複数の板部材22a,22bで構成したものであってもよいし、3枚以上の板部材で構成したものであってもよい。各プレート20を2枚以上の板部材で構成する場合は、各板部材をUV硬化樹脂やエポキシ樹脂等の接着剤で貼り合わせてもよいし、ネジ等で一体化させてもよい。プレート20を1枚構成とするか2枚構成とするかは、用いる板部材の厚さ、剛性、加工のし易さ等を考慮して任意に設定することができる。
【0033】
各プレート20(21,22,23)には、プローブ10を貫通させるための穴24が同じ位置に開けられている。同じ位置に穴を開ける場合は、全てのプレート20(21,22,23)を図4に示した態様で重ね合わせて穴開け加工することが好ましく、全てのプレート20(21,22,23)の同じ位置に同じ大きさで容易に穴24を開けることができる。穴24の大きさは、その穴24に通すプローブ10の直径と本数によって任意に設定し、所定の直径のプローブ10を1本以上3本以下のプローブ10を差し込むことができる所定の直径、例えば0.03mm〜0.25mm程度で開けられる。
【0034】
プローブ先端側プレート21は、図1に示すように、被検査体50に対向する側に配置され、このプローブ先端側プレート21から突出したプローブ10の先端11を、被検査体50に押し当てるガイドプレートとして作用する。プローブ先端側プレート21からのプローブ10先端11の突出長さL1は、図1から分かるように、プローブ後端側プレート23にプローブ10が固定された固定部分から被検査体側のプローブ先端11までの長さと、その固定部分からプローブ先端側プレート21の被検査体側面までの長さとの差で規制できる。その突出長さL1は、実際には、プローブ10を被検査体側に長めになるように準備しておき、各プレート20の位置をセッティングした後にプローブ先端11側を切断し、研削することによって調整される。その突出長さL1は、プローブ10の剛性、直径等にもよるので特に限定されないが、通常、例えば0.1mm〜0.5mm程度である。
【0035】
このプローブ先端側プレート21は、中間プレート22との間に所定の長さL2を確保するように中間プレート22から離間して配置される。プローブ先端側プレート21と中間プレート22とが離間した部分(長さL2で表される部分)は、図6に示すように、被検査体50にプローブ先端11が押し当たったときに、プローブ先端11側から加わる力によりプローブ10が湾曲する部分(湾曲部13)である。つまり、その長さL2は湾曲部13の長さである。本発明のプローブユニット構造1は、湾曲部13で湾曲したプローブ10の反発力を検査圧力として利用しているので、その湾曲部13の長さL2によっても検査圧力を調整できる。なお、上記のように、プローブ10の剛性や直径も検査圧力の大小に影響することは言うまでもないが、同じプローブ10を用いた場合は湾曲部13の長さL2で検査圧力を調整することができる。このように、湾曲部13の長さL2は、どの程度の検査圧力で検査するかを考慮するとともにプローブ10の剛性、直径等も加味して設定されるので一概に規定できないが、通常、例えば5mm〜30mm程度である。
【0036】
中間プレート22は、図1に示すように、プローブ先端側プレート21から離間して配置され、上記のように、プローブ先端側プレート21との間でプローブ10が湾曲する湾曲部13の長さL2を決定する。その長さL2については前記したとおりであるが、中間プレート22はプローブユニット構造1内に固定されており、したがって、その長さL2は、例えばプレート20の穴24にプローブ10を挿入した後に、プローブ先端側プレート21を被検査体50側に移動させることによって調整される。プローブ先端側プレート21を移動した後においては、プローブ先端側プレート21と中間プレート22とを例えば金属製の支柱や枠でネジ固定等する規制部材25で固定し、湾曲部13の長さL2を規制する。
【0037】
プローブ後端側プレート23は、中間プレート22から離間して配置されている。そして、このプローブ後端側プレート23は、中間プレート22側にスライド可能な調整機構(図示しない)を有し、且つプローブ10を接着剤等で固定する。このプローブ後端側プレート23は、例えばプローブ先端11が汚れ又は酸化して被検査体50との間の電気的な接触特性が悪化した場合や悪化するおそれのあるような場合に、プローブ先端11を研削し、そのプローブ先端11の突出長さL1が短くなってしまった場合に、プローブ後端側プレート24を中間プレート22の側にスライドさせることにより、プローブ先端11を元の性状(接触特性に影響を与える汚れや酸化がない状態)に再生し、さらにプローブ先端11の突出長さを元の長さL1に再生するように機能する。したがって、このプローブ後端側プレート23は、中間プレート22側にスライド可能な調整機構(図示しない)を有し、さらに、スライドできる一定長さL3だけ離間して配置される。
【0038】
プローブ後端側プレート23と中間プレート22との間の長さL3は、プローブ先端11を再生させるための研削処理を何回行うようにできるか、また、一回の研削処理で先端11が減る寸法がどの程度であるか等によって異なり、必ずしも限定されないが、通常は数mm、例えば2mm〜5mm程度とすることができる。
【0039】
プローブ後端側プレート23が有する調整機構(図示しない)は、上記のように、研削して短くなった突出長さL1’(図示しない)を元の突出長さL1に戻すために中間プレート22側にスライドさせる調整機構である。こうした調整機構としては種々の手段を適用可能であるが、例えば、ダイヤル式マイクロメータでプローブ後端側プレート23を所定量押し出して位置調整する手段を挙げることができる。
【0040】
また、プローブ後端側プレート23へのプローブ10の固定は、種々の方法が可能であるが、好ましくはUV硬化樹脂やエポキシ樹脂等の接着剤31で固定する。接着剤31は、図4に示すように、プレート20の穴24にプローブ10を通した後に、プローブ後端側プレート23の、中間プレート22側の反対面の穴の部分に塗布し、その後に硬化させる。
【0041】
(組み立て手順/製造方法)
次に、プローブユニット構造の組み立て手順、すなわちプローブユニット構造の製造方法について説明する。図4及び図5は、本発明のプローブユニット構造の組み立て手順の態様を示す模式断面図である。
【0042】
最初に、プローブ先端側プレート21、中間プレート22及びプローブ後端側プレート23を重ね合わせ、所定の位置に穴24の開いたものを準備する。プレート20の穴開けは、重ね合わせた後に一括して行ってもよいし、プレート毎に行ったものであってもよい。その後、図4(A)に示すように、その穴24にプローブ10を通す。プローブ10は、プローブ先端11側をプローブ後端側プレート23の穴24から通してもよいし、プローブ後端12側をプローブ先端側プレート21の穴24から通してもよいが、図4に示すように、リード部14として機能するプローブ後端12側をプローブ先端側プレート21から通すことが好ましい。このとき、図4に示す4端子測定用の場合のように、2本以上のプローブ10a,10bからなるプローブ10を同じ穴に挿入する場合には、プローブ後端12のそれぞれのプローブ10a,10bを長さ方向に数mmから十数mm程度ずらして固定しておけば、プローブ10の外径と穴24の直径とのクリアランスが小さい場合であっても、プローブ10を穴24に容易に挿入することができる。このときの固定は、UV硬化樹脂やエポキシ樹脂等の接着剤32によるものであってもよいし、はんだ等でろう付けしたものであってもよいし、絶縁層16を融着させたものであってもよい。なお、プローブ先端11は図4(A)に示すように揃っていても揃っていなくてもよい。
【0043】
次に、図4(B)に示すように、プローブ10を所定の位置まで挿入し、プローブ後端側プレート23に固定する。プローブ10の先端側をどの程度残して挿入するかは、プローブ先端側プレート21との間の長さL2と、プローブ先端側プレート21からのプローブ先端11の突出長さL1とにもよるが、少なくとも最終的な構造寸法を上回る長さを残した状態で挿入する。挿入後は、プローブ後端側プレート23にプローブ10を固定するが、この固定は上記したとおりであるが、好ましくはUV硬化樹脂やエポキシ樹脂等の接着剤31で固定する。接着剤31は、図4(B)に示すように、プローブ後端側プレート23の、中間プレート22側の反対面の穴24の部分に塗布し、その後に硬化させる。
【0044】
次に、図5(A)に示すように、プローブ先端側プレート21と中間プレート22との間に所定長さL2の湾曲部13を形成するようにプローブ先端側プレート21を移動させるとともに、プローブ後端側プレート23を中間プレート22から所定長さL3離間する。このとき、プローブ先端側プレート21と中間プレート22とは、図6に示すように、湾曲部13の長さL2を一定に保てるように、金属支柱のような規制部材25で固定する。一方、プローブ後端側プレート23は、図示しない調整機構によって、所定の長さL3を確保するように検査装置40(図1参照)側に後退させる。こうして、各プレート21,22,23を所定の位置に配置する。
【0045】
次に、図5(B)に示すように、プローブ先端11を、研磨材60で研削する。研磨材60は、通常、基材61上に設けられており、各種の研磨材を用いることができる。一例としては、例えば#2000ダイヤモンド砥石等を挙げることができる。こうした研磨材60でプローブ先端11を研削し、プローブ先端11の高さを揃える。なお、研削により先端11が減る寸法は金属線15の種類や研磨材60の種類によっても異なるが、例えば数μmから数十μmの範囲で研削することができる。その後は、アルコール洗浄を行い、研削加工ゴミを除去する。
【0046】
最後に、図1に示すように、プローブ後端12を検査装置40に接続して、本発明に係るプローブユニット構造を組み立てることができる。なお、検査装置40への接続は、接着剤32部を切断した後に端末加工する等して行う。
【0047】
以上説明したように、本発明のプローブユニット構造1によれば、プローブ10の先端11が被検査体50に押し当たり、プローブ10の後端12側をリード線として利用するリード線一体型のワイヤー型プローブ10を使用するので、従来のようなプローブとリード線との接触抵抗の不安定さが問題になることがなく、接続安定性を向上させることができる。こうした接続安定性を確保できる本発明のプローブユニット構造1は、高い測定精度が要求される4端子抵抗測定用プローブユニットとして好ましく用いることができ、一つの穴24に複数本のプローブ10を差込んでユニット化することで、低コスト化・狭ピッチ化においても好ましい。
【0048】
さらに、ガイドプレート20を構成する複数のプレート21,22,23が、上記したプローブ先端側プレート21と中間プレート22とプローブ後端側プレート23とを有するので、例えばプローブ先端11が汚れ又は酸化してプローブ先端11を研削し、そのプローブ先端11の突出長さL1が短くなってしまった場合に、プローブ後端側プレート23を中間プレート22側にスライドさせることにより、従来のようにプローブピンを交換しなくてもプローブ先端11及びプローブ先端11の突出長さL1を元の状態に再生できる。その結果、定期的又は不定期にプローブ先端11を研削すればプローブの交換も不要となる。その結果、メンテナンコスト等を抑えることができる。
【0049】
特に本発明のプローブユニット構造1は、プローブ後端側プレート23にプローブ10を接着剤31で固定しており、その固定箇所からプローブ先端11までが一体のワイヤー型プローブ10であるので、被検査体50に押し当たるプローブ先端11の高さL1にほとんどバラツキがないという優れた効果がある。一方、従来のようにプローブとリード線とが別体である場合は、個々のプローブの長さ精度(バラツキ)が通常十数μm程度あるので、隣り合うプローブとの長さバラツキは数十μmになる場合がある。このような場合、それぞれのプローブ先端が被検査体50に押し当たるときの圧力に違いが生じて不均一になるので、被検査体50への接触抵抗にバラツキが生じるおそれがあり、さらに、押し当たった後の湾曲の大きさも異なるので、長い方のプローブが短い方のプローブを押し上げて被検査体50との接触を妨げるおそれもあった。しかし、本発明では、被検査体50に押し当たるプローブ先端11の高さL1にほとんどバラツキがないので、それぞれのプローブ先端が被検査体50に押し当たるときの圧力が均一であり、被検査体50への接触抵抗が安定し、前記した従来の問題は起こらない、高精度で安定した測定を実現できるという格別の利点がある。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
プローブ10としては、ウレタン被覆ベリリウム銅線材(絶縁層を含む総外径φ0.11mm、金属線径φ0.09mm)を用い、長さ約300mmの2本ペアとした。ガイドプレート20としては、厚さ1mmのスミカスーパー材(住友化学製 ポリエステル樹脂 スミカスーパーS1000)を用い、プローブ先端側プレート21は1枚で構成し、中間プレート22は接着剤で貼り合わせた2枚組で構成し、プローブ後端側プレート24は1枚で構成した。これらの各プレートを重ね合わせた。なお、穴開け加工は、それらを重ね合わせた後に穴径0.23mmの複数の穴を一括で行い、その穴数は被検査体に合わせた。その後、上記した「組み立て手順/製造方法」の欄に示した手順で組み立て、本発明に係るプローブユニット構造を作製した。
【0052】
図4は、多数のワイヤー型プローブを装着したプローブユニット構造の基本的な態様であり、図6は、被検査体の電気特性を検査する基本的な態様である。本発明のプローブユニット構造は、こうした態様により被検査体50の電気特性を測定する。測定は、プローブ先端側プレート21から突出したプローブ先端11が被検査体50に押し当たって行うが、その測定は繰り返し行われるため、プローブ先端11が汚れ又は酸化することがある。そこで、定期的に又は測定異常が発生した場合毎のような不定期に、プローブ先端11を研削する。この研削により、プローブ先端11の突出長さL1は短くなるが、調整機構によってプローブ後端側プレート23を中間プレート22側にスライドさせることにより、プローブ先端11の性状及びプローブ先端11の突出長さL1を元の状態に再生する。
【符号の説明】
【0053】
1 プローブユニット構造
10,10a,10b,10c リード線一体型のワイヤー型プローブ
11 先端
12 後端
13 湾曲部
14 リード部
15 金属線
16 絶縁層
20 プレート
21 プローブ先端側プレート
22 中間プレート
22a,22b 中間プレートを構成する板部材
23 プローブ後端側プレート
24 穴
25 規制部材
31,32 接着剤
40 検査装置
50 被検査体(電極)
60 研磨材
61 基材
L1 突出長さ
L2 湾曲部の長さ
L3 中間プレートとプローブ後端側プレートとの間の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドプレートに装着された複数のプローブの先端を被検査体に押し当て、湾曲したプローブの反発力を検査圧力として利用し、該プローブの後端側をリード線として利用するプローブユニット構造であって、
前記プローブは、金属線と該金属線上に設けられた絶縁層とを有するリード線一体型のワイヤー型プローブであり、
前記ガイドプレートは、前記プローブを差し込む穴が形成された複数のプレートで構成され、
前記複数のプレートは、前記被検査体側から、プローブ先端を所定長さだけ突出させるプローブ先端側プレートと、該プローブ先端側プレートから離間して配置され、該プローブ先端側プレートとの間で前記プローブが湾曲する湾曲部の長さを決定する中間プレートと、該中間プレートから離間して配置され、該中間プレート側にスライド可能な調整機構を有し且つ前記プローブを固定するプローブ後端側プレートと、を少なくとも有することを特徴とするプローブユニット構造。
【請求項2】
前記プローブ後端側プレートが有する調整機構は、前記プローブ先端が前記被検査体に押し当たって汚れ又は酸化等した場合に、前記プローブ先端を研削し、研削して短くなった突出長さを元の突出長さに戻すために前記中間プレート側にスライドさせる調整機構である、請求項1に記載のプローブユニット構造。
【請求項3】
前記検査圧力の調整は、前記プローブ先端側プレートと前記中間プレートとの間の距離を変化させて行う、請求項1又は2に記載のプローブユニット構造。
【請求項4】
前記プローブ先端側プレート、前記中間プレート、及び前記プローブ固定プレートは、それぞれ少なくとも1枚以上のプレートで構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプローブユニット構造。
【請求項5】
前記複数のプローブに開けられた穴は、1本以上3本以下のプローブを差し込むことができる所定の直径で開けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプローブユニット構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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