説明

ベビーシューズ

【課題】乳幼児等の使用者が履き易く、脱ぎ易いと共に、その足をしっかり保持することができ、歩行等をし易いベビーシューズを提供する。
【解決手段】アッパー本体部20は、履き口部30と足挿入用開口部40を有し、足挿入用開口部を覆うように配置される舌状当接部50は、舌状当接部を足挿入用開口部側に押し付けるための押し付け部60を有し、押し付け部には、舌状当接部を足挿入用開口部を覆う状態で維持させると共に、舌状当接部を踵側に向かって、使用者の足の甲に押し付けるように固定させるための位置固定部70a、70bが接続され、押し付け部は、舌状当接部との相対位置が変更可能な構成となっており、アッパー本体部に沿って、舌状当接部から離間する方向に位置固定部が移動すると舌状当接部が足挿入用開口部側により押し付けられる構成となっているベビーシューズ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に乳幼児等が歩行等の際に使用するベビーシューズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から乳幼児等のための靴としてベビーシューズが広く使用されている。このようなベビーシューズについては、近年、研究が進み、単に大人靴を小型化したような靴ではなく、乳幼児等が履きやすく、歩きやすい構成となっているベビーシューズが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このようなベビーシューズは、乳幼児等が履き易いように、足を挿入するための履き口部と、この履き口部からアッパーの爪先側に向かって伸びるように形成されている開口である足挿入用開口部を備えている。
また、この足挿入用開口部を覆うように舌状当接部が配置可能となっており、さらに、この舌状当接部の両側には、舌状当接部をアッパーに固定するための固定ベルトが形成されている。
このため、ベビーシューズを履こうとする乳幼児等は、自ら又は保護者等が、固定ベルトを操作し、舌状当接部を足挿入用開口部から離間方向に移動させることで、その足を入れ易い構成となっている。
そして、足を挿入した後は、保護者等が、舌状当接部を足挿入用開口部を覆うように移動、配置させ、固定用ベルトをアッパーに固定することで、乳幼児等が速やかにベビーシューズを履くことができる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−105526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乳幼児等の歩行について、出願人が鋭意研究した結果、乳幼児等は、その月齢によって歩行又は動作が異なることが分かっている。
すなわち、例えば、月齢9ヶ月頃から1歳程度までの乳幼児は、まだ完全な歩行を習得しておらず、所謂「つかまり立ちや伝い歩き等」を行いながら歩行練習をする時期となっている。
しかし、その後、月齢14ヶ月頃以降は、歩行を習得し、ジャンプや方向変換等を行う所謂「幼児歩き走り時期」となる。
この「幼児歩き走り時期」の乳幼児等は、活発に歩行等を行うため、ベビーシューズ内に足をしっかり、確実に保持させる必要がある。
【0006】
しかし、上記の従来のベビーシューズでは、乳幼児等の足の甲側に配置され、足を踵部側に押しつけるように配置される舌状当接部が、その両側に配置されている固定用ベルトでアッパーに固定されているに過ぎない。
このため、舌状当接部がベビーシューズ内の足を踵部側にしっかり、確実に押しつけることができず、その結果、ベビーシューズ内に足をしっかり保持することができず、乳幼児等が歩行し難いという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、乳幼児等の使用者が履き易く、脱ぎ易いと共に、その足をしっかり保持することができ、歩行等をし易いベビーシューズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明によれば、使用者の足の足裏側を配置するための靴底部と、前記靴底部から立ち上がるように、且つ、使用者の足を包むように形成されるアッパー本体部とを有するベビーシューズであって、前記アッパー本体部は、使用者の足を挿入するための履き口部と、前記履き口部の一部を切り欠いて爪先側方向に向かって形成されている足挿入用開口部と、前記足挿入用開口部を覆うように配置される舌状当接部は、前記舌状当接部を前記足挿入用開口部側に押し付けるための押し付け部を有し、前記押し付け部には、前記舌状当接部を前記足挿入用開口部を覆う状態で維持させると共に、前記アッパー本体部に沿って、前記舌状当接部を踵側に向かって、使用者の足の甲に押し付けるように固定させるための位置固定部が接続され、前記押し付け部は、前記舌状当接部との相対位置が変更可能な構成となっていると共に、前記舌状当接部から離間する方向に前記位置固定部が移動するにしたがい前記舌状当接部を前記足挿入用開口部側により押し付ける構成となっていることを特徴とするベビーシューズにより達成される。
【0009】
前記構成によれば、舌状当接部に押し付け部が配置され、この押し付け部に接続されている位置固定部を利用者等が操作し、位置固定部をアッパー本体部に沿って、舌状当接部から離間する方向に移動させることで、舌状当接部を足挿入用開口部に押し付けることができる。また、この押し付け方向は、ベビーシューズの踵側となっているので、乳幼児等の足をベビーシューズ内に確実にしっかりと保持することができる。
したがって、乳幼児等の使用者が活発に歩行等を行っても、その足がベビーシューズ内に確実に保持されるので、乳幼児等にとって歩行し易いベビーシューズとなる。
一方、前記構成によれば、乳幼児等がベビーシューズを履く際や脱ぐ際は、位置固定部を操作し、舌状当接部を足挿入用開口部に近接又は離間させるだけでよく、特に紐を結ぶ等の煩雑な操作を求めないので、極めて履き易く、脱ぎ易いベビーシューズとなる。
【0010】
好ましくは、前記押し付け部は、ループ状に形成された紐状部材からなり、この紐状部材は、複数の交差部を形成することで、複数の囲繞形状を形成して前記舌状当接部上に配置され、前記囲繞形状の両側の前記紐状部材に対して前記位置固定部がそれぞれ配置され、前記位置固定部を前記アッパー本体部に沿って、前記舌状当接部から離間する方向に移動させることで、前記囲繞形状を形成する前記紐状部材の前記舌状当接部に対する押し付け力が強くなる構成となっていることを特徴とするベビーシューズである。
【0011】
前記構成によれば、押し付け部が、舌状当接部上に配置された紐状部材を交差して成す囲繞形状として形成され、この囲繞形状の両側の紐状部材に位置固定部を配置させている。このため、位置固定部をアッパー本体部に沿って、舌状当接部から離間する方向に移動させると、この囲繞形状の紐状部材によって、舌状当接部が使用者の甲及び踵側に向かって押し付けられ、使用者の足を確実に保持できるベビーシューズとなる。
【0012】
好ましくは、前記位置固定部が配置されていない前記囲繞形状の両側には、前記囲繞形状を形成する前記紐状部材を保持する紐状部材保持部が配置されていることを特徴とするベビーシューズである。
【0013】
位置固定部が配置されている囲繞形状の紐状部材が、位置固定部の移動により舌状当接部から離間する方向に移動するように引っ張られると、当該紐状部材と繋がっており、且つ、位置固定部が配置されていない囲繞形状を構成する紐状部材も引っ張られることになる。
このとき、この引っ張り力で、位置固定部が配置されていない囲繞形状が過剰に小さくなると、位置固定部の移動により発生する紐状部材の舌状当接部を押し付ける力は、この囲繞形状の縮小で発散されてしまうことになる。
そこで、前記構成では、位置固定部が配置されていない囲繞形状の両側には、前記囲繞形状を形成する前記紐状部材を保持する紐状部材保持部を配置し、かかる押し付け力の発散を防止する構成となっている。
【0014】
好ましくは、前記舌状当接部には、その前記履き口部側と前記爪先側とを結ぶ方向である舌状当接部長手方向と交差して配置される前記紐状部材の前記舌状当接部長手方向における移動を規制するための移動規制部が形成されていることを特徴とするベビーシューズである。
【0015】
前記構成によれば、舌状当接部の履き口部側と爪先側とを結ぶ方向である舌状当接部長手方向と交差して配置される紐状部材の舌状当接部長手方向における移動を規制するための移動規制部が舌状当接部に形成されている。
このため、囲繞形状を成す紐状部材のうち舌状当接部長手方向と交差して配置される紐状部材(例えば、舌状当接部の短手方向に配置される紐状部材)の位置が、舌状当接部長手方向に大きく外れることを未然に防ぐことができる。
すなわち、紐状部材は、舌状当接部上に非固定状態で配置されているので、位置固定部の移動に伴う引っ張り力の影響で、その舌状当接部上の位置が移動させられるおそれがある。
そして、舌状当接部に対する押し付け力は、紐状部材を介して加わるため、この紐状部材の位置が大きく移動すると、偏った押し付け力となり、適切に舌状当接部を使用者の足に押し付けることができない。
このため、前記構成では、紐状部材が適当な間隔を開けて、舌状当接部上に配置されるように、移動規定部が設けられている。
【0016】
好ましくは、前記舌状当接部長手方向と交差して配置される前記紐状部材が、少なくとも、使用者の足が最も屈曲する部分である足指屈曲部の前記アッパー本体部における対応領域に配置されていると共に、前記足指屈曲部の前記靴底部における対応領域には、屈曲溝部が形成されていることを特徴とするベビーシューズである。
【0017】
前記構成によれば、紐状部材が足指屈曲部に対応するアッパー本体部に形成されているので、歩行等の際、アッパー本体部が足指の屈曲に追従して変形し易い構成となっている。また、屈曲溝部が、足指屈曲部に対応する靴底部に形成されているので、使用者が歩行等する際、その足指の屈曲動作に追従して、屈曲溝部が変形可能な構成となっている。
したがって、使用者の足の屈曲動作を妨げ難く、使用者にとって歩行等し易いベビーシューズとなっている。
【0018】
好ましくは、前記移動規制部が、前記舌状当接部の略中央部を前記舌状当接部長手方向に沿って配置され、前記紐状部材からなる前記囲繞形状は、前記移動規制部の両側に略対称に形成される構成となっていることを特徴とするベビーシューズである。
【0019】
前記構成によれば、紐状部材からなる囲繞形状は、移動規制部の両側に略対称に形成されるので、使用者やその保護者等が、紐状部材に配置されている位置固定部をアッパー本体部に沿って、舌状当接部から離間する方向に移動させたとき、舌状当接部上の紐状部材は、両側に略均等に引っ張られ、この結果、紐状部材は、舌状当接部を偏ることなく、略均等に押し付けることになる。
したがって、舌状当接部による使用者の足の甲に対する押し付け力も均等となり、偏った押し付け力が働かないので、使用者はより円滑な歩行等を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、乳幼児等の使用者が履き易く、脱ぎ易いと共に、その足をしっかり保持することができ、歩行等をし易いベビーシューズを提供することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態にかかるベビーシューズを示す概略斜視図である。
【図2】図1のベビーシューズ1の概略側面図である。
【図3】図1のベビーシューズ1の舌状当接部をアッパー本体部から離間する方向に移動させた状態を示す概略図である。
【図4】固定ベルトの裏面側を示す概略説明図である。
【図5】人の足指屈曲部の位置を示す概略説明図である。
【図6】図1の靴底部を示す概略図である。
【図7】乳幼児等の底屈動作を示す概略説明図である。
【図8】図2のベビーシューズの爪先側である爪先部の概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0023】
図1及び図2に示すベビーシューズ1は、月齢14ヶ月程度以降(足のサイズが13.0cm程度から15.0cm程度)の乳幼児で、歩行を習得し、走りや早歩きができるようになり、後歩き、ジャンプ、回転、大股歩きなどで移動が可能な所謂「幼児歩き走り期」の乳幼児等のためのシューズとなっている。
【0024】
図1及び図2に示すように、本実施の形態のベビーシューズ1は、使用者である例えば、上記「幼児歩き走り期」の乳幼児の足裏側を配置するための靴底部10を有している。
また、この靴底部10から立ち上がるように、且つ乳幼児の足を包むように形成されるアッパー本体部20が形成されている。
さらに、このアッパー本体部20には、乳幼児等の足を挿入するための履き口部30が形成されている。
また、アッパー本体部20には、その上方を覆うように、舌状当接部50が配置されている。
【0025】
図3に示すように、アッパー本体部20には、履き口部30の一部を爪先側方向に切り欠いて足挿入用開口部40が形成されている。
すなわち、舌状当接部50は、この足挿入用開口部40を覆うように配置可能であると共に、この舌状当接部50を、足挿入用開口部40から離間方向に移動させることで、足挿入用開口部40を開放状態とすることもできる構成となっている。
【0026】
このように、本実施の形態のベビーシューズ1は、乳幼児が歩行練習等をする時期に履くため、靴を履くときは、主に保護者が乳幼児にベビーシューズ1を履かせることになる。
そこで、本実施の形態のベビーシューズ1の図3に示す足挿入用開口部40の長手方向の長さは、従来のベビーシューズより長く形成されている。
すなわち、足挿入用開口部40の履き口部30の踵部側端部から爪先側端部までの長さL2と、履き口部30の踵部側端部からベビーシューズ1の爪先までの長さL1との比率が、従来のベビーシューズに比べ、長く形成されている。
【0027】
また、図1等に示すように、ベビーシューズ1の舌状当接部50上には、押し付け部である、例えば長尺状の紐状部材60が配置されている。この紐状部材60は、図1等に示すように、その両端部が連結された1本の紐からなり、この紐状部材60が交差する2つの交差部61a、61bを有している。
そして、この紐状部材60の2つの交差部61a、61bにより、紐状部材60は3つの略長方形の囲繞形状62a、62b、62cを形成している。
この3つの囲繞形状62a等は、以下、図1の舌状当接部50の上端部側(履き口部30側)から上部囲繞形状62a、中部囲繞形状62b、そして、下部囲繞形状62cと呼ぶ。
【0028】
そして、本実施の形態では、図1及び図3に示すように、上部囲繞形状62a及び中部囲繞形状62bの両側(舌状当接部50の短手方向、ベビーシューズ1の幅方向)の紐状部材60には、それぞれ、位置固定部である例えば、固定ベルト70a、70bが接続されている。
【0029】
これら固定ベルト70a、70bの裏面側(アッパー本体部20と対向する側)である図3の固定ベルト裏面部70ab、70bbには、図4のクロスハッチングで示すように、固定ベルト側面ファスナ71が設けられている。すなわち、固定ベルト70a、70bは、そのベースとなる生地と、固定ベルト側面ファスナ71とから形成されている。
また、図4に示すように、1本の紐状部材60の両端部である紐端部63は、固定ベルト裏面部70bb上に、固定ベルト側面ファスナ71に挟まれるようにして固定され、全体がループ状の紐状部材60となっている。
【0030】
なお、本発明では、紐状部材60の両端部(紐端部63)が開放端とならない構成であれば良く、両端部が連結された1本の紐状部材とし、固定ベルト裏面部70bbには、非固定の状態としても構わない。また、両端部を相互に直接当接させずに、固定ベルト裏面部70bbを介して、全体をループ状にする構成としても良い。
すなわち、紐状部材の両端部を、端部として使用者が自由に操作できる構成となっていなければ構わない。
【0031】
一方、図3に示すように、アッパー本体部20側には、固定ベルト側面ファスナ71に対応して、アッパー本体部側面ファスナ21が2カ所形成されている。
したがって、先ず、利用者等が、この固定ベルト70a、70bをつかみ、これら固定ベルト70a等をアッパー本体部20に沿って、図1等の舌状当接部50から離間する方向に移動させる。
そして、固定ベルト側面ファスナ71、71とアッパー本体部側面ファスナ21、21を当接させ、固定ベルト70a等の位置を固定すると、これら固定ベルト70a等に接続されている、図1の上部囲繞形状62a及び中部囲繞形状62bの紐状部材60が、舌状当接部50の幅方向に移動すると共に、この紐状部材60が舌状当接部50を押し付けることになる。
このとき、固定ベルト70a等は、図2の矢印kに示すように、ベビーシューズ1の踵部80に向かって配置される。
【0032】
すると、舌状当接部50は、使用者の足の甲を踵側に押し付けるので、使用者の足が適切に、しっかりとベビーシューズ1内に保持されることになる。
このように、本実施の形態では、舌状当接部50上に配置されている紐状部材60は、全体がループ状とされているので、利用者等が紐を結ぶ手間がなく、足の固定をしっかり行うことができるので、履き易いベビーシューズとなっている。
また、本実施の形態は、紐状部材60は舌状当接部50上に固定されておらず、その相対位置が変更可能、すなわち、紐状部材60が舌状当接部50上を移動可能となっている。
このため、固定ベルト70a等の移動に伴い、紐状部材60もその位置を移動させることができ、舌状当接部50を適切な力でアッパー本体部20に押し付けることができる。
このように、本実施の形態では、紐を利用する欠点である紐を結ぶ動作を強いることなく、紐を利用する利点である、舌状当接部50を適切に足の甲に押し付けることができるという効果を享受することができる。
したがって、乳幼児にとって、履き易く、脱ぎ易いだけでなく、歩き易いベビーシューズ1となっている。
【0033】
また、本実施の形態では、図1及び図2等に示すように、下部囲繞形状62cのベビーシューズ1の幅方向の両側には、それぞれ紐状部材保持部である例えば、保持ベルト90、90が接続されている。
上述のように、固定ベルト70a等が、アッパー本体部20のアッパー本体部側面ファスナ21と当接し、固定され、上部囲繞形状62a及び中部囲繞形状62bがベビーシューズ1の幅方向に引っ張られているとき、舌状当接部50上の紐状部材60は、ループ状の紐状部材60で、且つ、舌状当接部50上を移動可能な構成となっているので、図1の下部囲繞形状62cの紐状部材60は、引っ張られて、その形状の面積を小さくする方向に変形する。
すなわち、下部囲繞形状62cは、ベビーシューズ1の幅方向の内側に向かって変形しようとする。
この状態を放置すると、紐状部材60の舌状当接部50を押さえつける力が発散されてしまい、舌状当接部50を適切に押さえつけることができない。
【0034】
そこで、本実施の形態では、図1等に示すように、下部囲繞形状62cの両側に、それぞれ保持ベルト90、90を配置することで、下部囲繞形状62cの縮小等の過剰変形を防止し、押し付け力の発散を防止する構成となっている。
【0035】
また、この保持ベルト90、90によって、下部囲繞形状62cの過剰変形を防止することで、下部囲繞形状62cの紐状部材60も乳幼児等の使用者の甲を適切に押さえることができる構成となっている。
【0036】
ところで、乳幼児が歩行運動をする際に、足指の根元近傍を屈曲させるが、この屈曲部分が図5に示す足指屈曲部Cである。
図5に示すように、足指屈曲部Cは人の足指の第1趾から第5趾の根元付近に渡って形成されている。そして、この部分が、歩行に際し、最も屈曲する部分となる。
【0037】
そして、本実施の形態では、図1及び図2に示す保持ベルト90が、図5の足指屈曲部Cの対応位置よりやや踵部寄りに設けられる。
このため、この保持ベルト90により保持されている図1及び図2に示す下部囲繞形状62cのベビーシューズ1の幅方向に配置されている紐状部材60のうち、最も爪先側に配置されている紐状部材60である最下部紐状部材64が、足指屈曲部Cの対応領域である例えば、上部に配置されることになる。
そして、乳幼児等の歩行動作に伴い足指屈曲部Cが屈曲すると、同時にアッパー本体部20側も、この保持ベルト90の部分で屈曲し易い構成となっており、乳幼児等の歩行動作を妨げ難い構成となっている。
【0038】
図6に示すように、上述の足指屈曲部Cの下方の靴底部10に対応する領域には、靴底部10が屈曲し易いように屈曲溝部11が形成されている。
このため、乳幼児等の歩行動作に伴い足指屈曲部Cが屈曲すると靴底部10も屈曲溝部11で屈曲するため、靴底部10も、アッパー本体部20と同様に、乳幼児等の歩行動作を妨げない構成となっている。
【0039】
なお、図6に示すように、靴底部10には、滑り止め用の凹凸部が全面にわたって形成されており、屈曲溝部11も滑り止めとしての機能も発揮する構成となっている。
【0040】
また、本実施の形態では、図1等に示すように、舌状当接部50上には、紐状部材60の舌状当接部50の長手方向における移動を規制するための移動規制部である例えば、移動規制ベルト100が形成されている。
すなわち、図1に示すように、移動規制ベルト100は、舌状当接部50と部分的に固定、例えば、縫合されている。
本実施の形態では、図1に示すように、5カ所の縫合部101a、101b、101c、101d、101eで、移動規制ベルト100は、舌状当接部50に縫合、固定されている。
【0041】
そして、この縫合部101a等の間に形成される舌状当接部50と縫合されていない部分、すなわち、非縫合部102a、102b、102c、102dに、紐状部材60の交差部61a、61bや最下部紐状部材64、そして、舌状当接部50の幅方向に配置される紐状部材60のうち、最も履き口部30側に配置される最上部紐状部材65が配置される。
これらの紐状部材60は、舌状当接部50の幅方向の移動は規制されないが、舌状当接部50の長手方向の移動は、各縫合部101a等により規制される構成となっている。
【0042】
また、これら非縫合部102a等内に配置される紐状部材60は、この非縫合部102a等と舌状当接部50との間に配置されると共に、非縫合部102a等によって、舌状当接部50側に押し付けられるように配置される。
すなわち、非縫合部102a等は、その内側が紐状部材60と当接して配置され、又は容易に当接する程度の間隔を持って配置されている。
【0043】
したがって、利用者が固定ベルト70a、70bを持って操作すると、この操作により影響を受ける紐状部材60の動きが、これと当接等している非縫合部102a等に伝わり、移動規制ベルト100を介して、舌状当接部50に伝搬することになる。
このように、利用者の固定ベルト70a等の操作が、迅速に舌状当接部50に伝わるので、利用者は、足挿入用開口部40を、迅速に開放又は被覆させることができる。
【0044】
ところで、上述のように、固定ベルト70a、70bを利用者等が、アッパー本体部20に沿って動かすと、舌状当接部50上の紐状部材60が引っ張られ、この引っ張り力により、舌状当接部50上の上部囲繞形状62a、中部囲繞形状62b等が著しく変形し、紐状部材60が舌状当接部50上の偏った位置に配置されるおそれがある。
【0045】
この場合、紐状部材60による舌状当接部50に対する押し付け力も偏ったものとなり、舌状当接部50が適切に乳幼児等の足の甲を押し付けることができなくなり、乳幼児等の歩行動作を妨げるおそれがある。
そこで、本実施の形態では、図1の縫合部101a等により、紐状部材60が適切な間隔を保持して、舌状当接部50上に配置される構成となっている。
これにより、舌状当接部50上の紐状部材60の偏りを未然に防ぐことができる。
【0046】
また、図1に示すように、移動規制ベルト100は、舌状当接部50の幅方向の略中央部分を長手方向に沿って配置されている。このため、舌状当接部50上に配置されている紐状部材60は、この移動規制ベルト100の両側に略対称に配置され、上部囲繞形状62a等も略対称の形状となっている。
したがって、利用者等が、図1の固定ベルト70a、70bを動かした場合、舌状当接部50上の紐状部材60も両側に略均一に引っ張られると共に、舌状当接部50も紐状部材60により、略均一に押し付けられることになり、乳幼児等の足に対する適切な押し付け力を確保でき、足がベビーシューズ1内に適切に保持されることになる。
【0047】
また,図2に示すように、ベビーシューズ1の履き口部30の上端部には、乳幼児等の足首等を保護し、保持するため柔軟な材質から成る柔軟部31が配置されている。
この柔軟部31の上端は、図2に示すように、その側面側から見ると、足挿入用開口部40側(図2の右側)から踵部80側(図2の左側)にかけて斜めに下降する形状となっている。
【0048】
ところで、乳幼児等は、その歩行練習等の一環として、図7に示すような底屈動作を行う。すなわち、足の甲の部分を真っ直ぐに伸ばし、足裏を丸めるような動きをする。このとき、足の踵はふくらはぎに近づくような動きとなる。
したがって、乳幼児等がベビーシューズ1を履いて、底屈動作をした場合、図2の履き口部30の後端側(踵部80側)に、乳幼児等の足首のアキレス腱側が押し付けられて、この底屈動作を妨げるおそれがある。
しかし,本実施の形態では、履き口部30の上端側である柔軟部31の後端側は、足挿入用開口部40側より低く形成されているため、この後端側が乳幼児等の足のアキレス腱側に過度に当接して、その底屈動作を妨げることがない構成となっている。
したがって、乳幼児等は、その歩行動作練習の一環である「底屈動作」を十分に行うことができる。
【0049】
図8に示すように、ベビーシューズ1の爪先部110の内部における乳幼児等の足指との間の上下方向の隙間部hは、親指との間の隙間部hが最も大きく、小指の配置される部分に向かって、隙間部hが漸次小さくなる構成となっている。
また、図8に示すように、爪先部110内の乳幼児等の小指の外側の側方に相当する部分に、小指の外方への動きを可能にする空間Wが形成されている。
【0050】
このため、乳幼児等が歩行練習に際し、そのバランス等をとるために、親指を上に向ける「背屈」をすることができる。また、同様にバランスをとるために、小指を外側に広げる動作もすることができる。
したがって、乳幼児等が歩行練習等の動作を行い易い構成となっている。
【0051】
また、図2に示すように、ベビーシューズ1の爪先部110の先端側は、接地面から上方に角度θだけ反り上がる構成となっている。具体的には、ベビーシューズ1は、屈曲溝部11の爪先側端部から角度θだけ反り上がる。この角度θは、乳幼児等が歩行に際し、つまずき難い角度となっている。
【0052】
なお、図1に示すように、履き口部30の踵部80側である後側には、履き口部30内に乳幼児の足を挿入する際に用いるループ120が形成されている。
【0053】
ところで、図3等に示すように、本実施の形態では、舌状当接部50は、その先端側(爪先側)がアッパー本体部20に縫合等されて接続されている。したがって、舌状当接部50は、この接続部分を支点に揺動することで、足挿入用開口部40を開放又は被覆させることができる構成となっている。
しかし、本発明は、上述の実施の形態のみならず、舌状当接部50がアッパー本体部20と接続されていない構成も含まれる。この場合を本実施の形態の構成を用いて以下、説明する。
すなわち、舌状当接部50は、その上に移動規制ベルト100が形成されていれば、この移動規制ベルト100を介して、紐状部材60と連結される。また、アッパー本体部20は、保持ベルト90を介して、紐状部材60と連結されている。
したがって、舌状当接部50は、その一端部が直接、アッパー本体部20に接続されていなくても、適切に足挿入用開口部40を開放又は被覆することができる。
【符号の説明】
【0054】
1・・・ベビーシューズ、10・・・靴底部、11・・・屈曲溝部、20・・・アッパー本体部、21・・・アッパー本体部側面ファスナ、30・・・履き口部、31・・・柔軟部、40・・・足挿入用開口部、50・・・舌状当接部、60・・・紐状部材、61a、61b・・・交差部、62a・・・上部囲繞形状、62b・・・中部囲繞形状、62c・・・下部囲繞形状、63・・・紐端部、64・・・最下部紐状部材、65・・・最上部紐状部材、70a、70b・・・固定ベルト、70ab、70bb・・・固定ベルト裏面部、71・・・固定ベルト側面ファスナ、80・・・踵部、90・・・保持ベルト、100・・・移動規制ベルト、101a、101b、101c、101d、101e・・・縫合部、102a、102b、102c、102d・・・非縫合部、110・・・爪先部、120・・・ループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の足の足裏側を配置するための靴底部と、
前記靴底部から立ち上がるように、且つ、使用者の足を包むように形成されるアッパー本体部とを有するベビーシューズであって、
前記アッパー本体部は、使用者の足を挿入するための履き口部と、
前記履き口部の一部を切り欠いて爪先側方向に向かって形成されている足挿入用開口部とを有し、
前記足挿入用開口部を覆うように配置される舌状当接部は、前記舌状当接部を前記足挿入用開口部側に押し付けるための押し付け部を有し、
前記押し付け部には、前記舌状当接部を前記足挿入用開口部を覆う状態で維持させると共に、前記舌状当接部を踵側に向かって、使用者の足の甲に押し付けるように固定させるための位置固定部が接続され、
前記押し付け部は、前記舌状当接部との相対位置が変更可能な構成となっていると共に、前記アッパー本体部に沿って、前記舌状当接部から離間する方向に前記位置固定部が移動するにしたがい前記舌状当接部を前記足挿入用開口部側により押し付ける構成となっていることを特徴とするベビーシューズ。
【請求項2】
前記押し付け部は、ループ状に形成された紐状部材からなり、この紐状部材は、複数の交差部を形成することで、複数の囲繞形状を形成して前記舌状当接部上に配置され、
前記囲繞形状の両側の前記紐状部材に対して前記位置固定部がそれぞれ配置され、
前記位置固定部を前記アッパー本体部に沿って、前記舌状当接部から離間する方向に移動させることで、前記囲繞形状を形成する前記紐状部材の前記舌状当接部に対する押し付け力が強くなる構成となっていることを特徴とする請求項1に記載のベビーシューズ。
【請求項3】
前記位置固定部が配置されていない前記囲繞形状の両側には、前記囲繞形状を形成する前記紐状部材を保持する紐状部材保持部が配置されていることを特徴とする請求項2に記載のベビーシューズ。
【請求項4】
前記舌状当接部には、前記履き口部側と前記爪先側とを結ぶ方向である舌状当接部長手方向と交差して配置される前記紐状部材の前記舌状当接部長手方向における移動を規制するための移動規制部が形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のベビーシューズ。
【請求項5】
前記舌状当接部長手方向と交差して配置される前記紐状部材が、少なくとも、使用者の足が最も屈曲する部分である足指屈曲部の前記アッパー本体部におけるに対応領域に配置されていると共に、前記足指屈曲部の前記靴底部における対応領域には、屈曲溝部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のベビーシューズ。

【請求項6】
前記移動規制部が、前記舌状当接部の略中央部を前記舌状当接部長手方向に沿って配置され、前記紐状部材からなる前記囲繞形状は、前記移動規制部の両側に略対称に形成される構成となっていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のベビーシューズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−250872(P2011−250872A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125057(P2010−125057)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000112288)ピジョン株式会社 (144)
【Fターム(参考)】