説明

ベルト型濃縮機

【課題】濃縮促進部材によって汚泥を鋤き返す濃縮促進操作の頻度を、ベルト搬送面上における汚泥の含水率の変化に対応して調整することにより、含水率の低減を促進させることができるベルト型濃縮機を提供する。
【解決手段】複数のバタフライスクレーパ56をベルト幅方向およびベルト搬送方向に間隔をあけて配列し、かつ隣接して配置する搬送方向上流側のバタフライスクレーパ56と搬送方向下流側のバタフライスクレーパ56とをベルト搬送方向で異なる列中に配置し、ベルト搬送面の単位面積当たりにおけるバタフライスクレーパ56のベルト幅方向長さの総和が異なる複数のゾーンを設定し、搬送方向上流側のゾーンにおけるバタフライスクレーパ56のベルト幅方向長さの総和に比べて搬送方向下流側のゾーンにおけるバタフライスクレーパ56のベルト幅方向長さの総和を大きく設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト型濃縮機に関し、下水汚泥等のスラリー状物質を透水性無端ベルト上で簡便に濃縮する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の濃縮機の一例を図10に示す。これは、重力脱水式のベルト型濃縮機1であり、終端の駆動スプロケット2と始端の従動スプロケット3の間に無端ベルト4を掛け渡しており、双方のスプロケット2、3の間に上方の往路軌道と下方の復路軌道を形成している。
【0003】
往路軌道の下方には複数のキャリアローラー5を配置しており、復路軌道の上方にはリターンプーリー6を配置し、無端ベルト4の復路の裏面から表面もしくは表面から裏面に向けて洗浄水を噴射する洗浄ノズル7を配置している。軌道の終端側には濃縮汚泥を排出するシューター8を配置している。
【0004】
特許文献1には、ベルトプレス型脱水機が記載されている。これは、図9に示すように、汚泥20を水切りするベルト21の上面に多数のプラウ22を千鳥状に配設して水切りゾーンを形成するものであり、ベルト21の進行方向から見て各プラウ22が隙間なく密に並んでいる。
【0005】
この構成により、ベルト21の上の汚泥20を一時的に堰き止めるとともに、堰き止めた汚泥20を跛行させる効果を発揮する。
特許文献2には、ベルトプレスにおける重力脱水装置が記載してある。これは、ベルトプレスの濃縮ゾーンのろ布上に汚泥を均一に供給し、濃縮ゾーンに配置した複数の平板状の遮閉体が汚泥を遮ることで遮閉体の後方直近におけるろ布の表面を溝状に暴露させるものであり、凝集汚泥の付着水を汚泥層表面から直接にろ布の暴露部位を通して排出するものである。
【0006】
特許文献3には、有孔コンベアベルト上に配置するプラウ組立体が記載してある。このプラウ組立体は、ベルトの幅を横切って延びる横部材と、横部材で支持するプラウと、横部材を昇降させる摺動装置を備えるものである。プラウはベルトの上面にスラッジを一様に分布させる作用を果たし、さらにベルトの上面を掻き取り、または払拭することによりベルトの孔を開いた状態に保持する作用を果たす。
【特許文献1】特開昭63−80998号公報
【特許文献2】特開2003−62695号公報
【特許文献3】特公平5−10123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の構成において、ベルト搬送面上の汚泥は、ベルトによる搬送によって搬送方向上流側にある汚泥投入部から搬送方向下流側にある汚泥排出部へ向けて移動し、脱水が進むほどに含水率が低下して汚泥容積が減少する。
【0008】
この搬送途上において、ベルト搬送面上に配置したプラウや遮閉体などの濃縮促進部材がベルトの搬送方向において汚泥の進路を遮って汚泥を鋤き返しつつ、ベルト上で汚泥の進路を変向させ、かつ濃縮促進部材の搬送方向下流側におけるベルト搬送面上に汚泥から露出する暴露部位を生じさせ、汚泥の内包水を汚泥層の表面から直接にベルト搬送面の暴露部位を通して排出する。
【0009】
ベルト搬送面上の汚泥は、搬送方向上流側であるほどにその汚泥濃度が低くて凝集汚泥のフロック間に多くの内包水を抱え、内包水が汚泥層から抜け出し易い状態にある。
このため、ベルト搬送面上に形成する暴露部位が増えることでベルトを透過するろ液量が増加して脱水効率が高まる。さらに、濃縮促進部材による鋤き返しによってそれまで汚泥層中に在った内包水が汚泥層の表面上に現出し、内包水が汚泥層の表面から容易に脱離し、多くの内包水が脱離水として速やかに流れ出し、ベルト搬送面の暴露部位を透過して多くのろ液が排出される。
【0010】
しかしながら、搬送方向上流側のゾーンで濃縮促進部材による濃縮促進操作の頻度が多くなり過ぎると、濃縮促進部材に汚泥が堰き止められて汚泥層の厚さが増し、汚泥層の表面から内包水が十分に流れ出さないうちに、汚泥層の表面の内包水が汚泥層内に埋没して内包水の脱離が阻害される。
【0011】
一方、ベルト搬送面上の汚泥は、搬送方向下流側であるほどにその含水率の低下とともに汚泥濃度が高くなって凝集汚泥のフロック間に抱える内包水が減少し、内包水が汚泥層から抜け出し難い状態にある。
【0012】
このため、濃縮促進部材による鋤き返しを行っても汚泥層の表面上に現出する内包水は乏しく、内包水が汚泥層の表面から脱離することが困難となって脱離水として流れ出す内包水が僅かとなり、ベルト搬送面の暴露部位を透過するろ液が減少する。
【0013】
このため、従来の構成におけるように、ベルト搬送面上にプラウや遮閉体などの濃縮促進部材を等間隔、等密度で配置する装置構成においては、濃縮促進部材によって汚泥を鋤き返す濃縮促進操作を同頻度で行っても所定の含水率にまで脱水することは困難である。
【0014】
本発明は上記した課題を解決するものであり、濃縮促進部材によって汚泥を鋤き返す濃縮促進操作の頻度を、ベルト搬送面上における汚泥の含水率の変化に対応して調整することにより、含水率の低減を促進させることができるベルト型濃縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明のベルト型濃縮機は、ベルト搬送面上に供給した処理対象汚泥を搬送方向上流側の汚泥投入部から搬送方向下流側の汚泥排出部へ搬送する透水性を具えた搬送ベルトと、ベルト搬送面に摺接して搬送ベルトの搬送軌道上に配置する所定形状の複数の濃縮促進部材を備えるものであって、複数の濃縮促進部材をベルト幅方向およびベルト搬送方向に間隔をあけて配列し、かつ隣接して配置する搬送方向上流側の濃縮促進部材と搬送方向下流側の濃縮促進部材とをベルト搬送方向で異なる列中に配置し、ベルト搬送面の単位面積当たりにおける濃縮促進部材のベルト幅方向長さの総和が異なる複数のゾーンを設定し、搬送方向上流側のゾーンにおける濃縮促進部材のベルト幅方向長さの総和に比べて搬送方向下流側のゾーンにおける濃縮促進部材のベルト幅方向長さの総和を大きく設定したことを特徴とする。
【0016】
また、本発明のベルト型濃縮機において、ベルト搬送面上に濃縮促進部材の配置密度が異なる複数のゾーンを設定し、搬送方向上流側のゾーンにおける濃縮促進部材の配置密度に比べて搬送方向下流側のゾーンにおける濃縮促進部材の配置密度を大きく設定したことを特徴とする。
【0017】
また、本発明のベルト型濃縮機において、濃縮促進部材はベルト搬送面上で処理対象汚泥の搬送を遮る抵抗面を有し、搬送方向上流側のゾーンにおける濃縮促進部材のベルト幅方向の抵抗面の長さに比べて搬送方向下流側のゾーンにおける濃縮促進部材のベルト幅方向の抵抗面の長さを大きく設定したことを特徴とする。
【0018】
また、本発明のベルト型濃縮機において、濃縮促進部材はベルト搬送面上で処理対象汚泥の搬送を遮る抵抗面を有し、抵抗面がベルト搬送方向に対して傾斜角度を有し、処理対象汚泥をベルト幅方向へ移動させる傾斜面を形成し、搬送方向上流側のゾーンにおける濃縮促進部材の傾斜面の傾斜角度に比べて搬送方向下流側のゾーンにおける濃縮促進部材の傾斜面の傾斜角度を大きく設定したことを特徴とする。
【0019】
また、本発明のベルト型濃縮機において、濃縮促進部材はベルト搬送面上で傾斜面の傾斜角度を可変に配置したことを特徴とする。
また、本発明のベルト型濃縮機において、ベルト搬送方向上流側からベルト搬送方向下流側を見渡して、搬送ベルトの全幅にわたって濃縮促進部材が存在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
上述した本発明によれば、ベルト搬送面上に濃縮促進部材の配置密度が異なる複数のゾーンを設定し、搬送方向上流側のゾーンにおける濃縮促進部材の配置密度に比べて搬送方向下流のゾーンにおける濃縮促進部材の配置密度を大きく設定することにより、濃縮促進部材によって汚泥を鋤き返す濃縮促進操作の頻度が、ベルト搬送面上における汚泥の含水率の変化に対応したものとなり、含水率の低減を促進させることができる。
【0021】
すなわち、搬送方向上流側のゾーンにおけるベルト搬送面上の汚泥は、その汚泥濃度が低くて凝集汚泥のフロック間に多くの内包水を抱え、内包水が汚泥層から抜け出し易い状態にあるので、濃縮促進部材による濃縮促進操作である鋤き返しによってそれまで汚泥層中に在った内包水が汚泥層の表面上に現出し、内包水が汚泥層の表面から容易に脱離し、多くの内包水が脱離水として速やかに流れ出し、濃縮促進部材により形成するベルト搬送面の暴露部位を透過して多くのろ液が排出される。
【0022】
また、搬送方向上流側のゾーンにおける濃縮促進部材による濃縮促進操作を所定頻度とすることにより、汚泥層の表面から内包水が十分に流れ出す時間を確保することができ、濃縮促進部材による鋤き返しにより汚泥層の表面の内包水が汚泥層内に埋没して内包水の脱離が阻害されることを抑制できる。
【0023】
そして、搬送方向下流側のゾーンにおけるベルト搬送面上の汚泥は、その含水率の低下とともに汚泥濃度が高くなって凝集汚泥のフロック間に抱える内包水が減少し、内包水が汚泥層から抜け出し難い状態にあるので、濃縮促進部材による濃縮促進操作の頻度を搬送方向上流側のゾーンにおけるものより多く設定することにより内包水の脱離を促進できる。
【0024】
また、濃縮促進部材がベルト搬送面上で汚泥の進路を遮って汚泥を受け止める抵抗面を有することにより、汚泥は抵抗面に沿ってベルト搬送面上をベルト幅方向およびベルト搬送方向に移動しつつ、抵抗面上に留まり、ベルト搬送方向にベルトの搬送力に因る圧搾力を受け、汚泥中の内包水が脱離する。
【0025】
このため、搬送方向上流側のゾーンにおける濃縮促進部材のベルト幅方向の抵抗面の長さに比べて搬送方向下流側のゾーンにおける濃縮促進部材のベルト幅方向の抵抗面の長さを大きく設定することにより、搬送方向下流側のゾーンにおいては、抵抗面上に留まる汚泥の滞留時間が長くなり、ベルト搬送方向にベルトの搬送力に因る圧搾力を受ける時間が長くなって内包水の脱離が促進される。
【0026】
また、濃縮促進部材の抵抗面がベルト搬送方向に対して傾斜角度を有し、処理対象汚泥をベルト幅方向に移動させる傾斜面を形成することにより、傾斜面の傾斜角度によって抵抗面上で汚泥がベルトの搬送力に因って受ける圧搾力が異なり、傾斜面の傾斜角度が大きくなるほどに、つまり抵抗面が搬送方向上流側に向くほどに、圧搾力が大きくなる。
【0027】
このため、搬送方向上流側のゾーンにおける濃縮促進部材の傾斜面の傾斜角度に比べて搬送方向下流側のゾーンにおける濃縮促進部材の傾斜面の傾斜角度を大きく設定することにより、搬送方向下流側のゾーンにおいては、抵抗面上に留まる汚泥に対してベルト搬送方向にベルトの搬送力が与える圧搾力が大きくなって内包水の脱離が促進される。
【0028】
また、濃縮促進部材の水平断面形状が円形である場合を除けば、濃縮促進部材をベルト搬送面上で支軸廻りに回動可能に配置することで、ベルト幅方向の抵抗面の長さおよび抵抗面により形成する傾斜面の傾斜角度を任意の値に設定することができ、その結果、ベルト搬送面上における汚泥の含水率の変化に対応して圧搾力の作用時間および大きさを調整して、含水率の低減を促進させることができる。
【0029】
また、ベルト搬送方向上流側からベルト搬送方向下流側を見渡して、ベルトの全幅にわたって濃縮促進部材が存在することで、搬送方向上流側の濃縮促進部材の間を通過した汚泥に対して搬送方向下流側の何れかの濃縮促進部材が確実に作用し、濃縮促進部材による濃縮促進操作を受けずに、ショートパスする汚泥がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1から図4において、重力脱水式のベルト型濃縮機は、始端と終端のロール51の間に搬送ベルト52を掛け渡しており、搬送ベルト52は透水性を具えた無端ベルトからなり、ベルト搬送面上に供給した処理対象の汚泥53を搬送方向上流側の汚泥投入部54から搬送方向下流側の汚泥排出部55へ搬送する。
【0031】
搬送ベルト52の搬送軌道上には濃縮促進部材をなす複数のバタフライスクレーパ56が配置してある。本実施の形態では濃縮促進部材として板状のバタフライスクレーパ56を用いるが、濃縮促進部材はバタフライスクレーパ56に限るものではなく、その形状には円錐型、円柱型、三角柱型、船の舳先型等の種々のものが採用可能であり、濃縮促進部材の抵抗面は平面のみに限らず、曲面または屈曲面を有していてもよく、抵抗面がベルト搬送面の法線方向に沿っていなくてもよい。
【0032】
バタフライスクレーパ56は、板状をなして下辺をベルト搬送面に摺接して立設して配置してあり、ベルト搬送面に垂直な軸方向を有する支軸57を介して固定部材58に装着し、ベルト搬送面上で支軸廻りに回動可能である。複数のバタフライスクレーパ56は、ベルト幅方向およびベルト搬送方向に間隔をあけて配列し、かつ隣接して配置する搬送方向上流側のバタフライスクレーパ56と搬送方向下流側のバタフライスクレーパ56とをベルト搬送方向で異なる列中に配置し、いわゆる千鳥格子状に設けている。
【0033】
また、隣接して配置する搬送方向上流側のバタフライスクレーパ56と搬送方向下流側のバタフライスクレーパ56とがベルト搬送方向に対して互いに異なった傾斜方向となるように設けられている。
【0034】
図5に示すように、バタフライスクレーパ56はベルト搬送面上で汚泥53のベルト搬送方向への搬送を遮る抵抗面59を有し、抵抗面59がベルト搬送方向に対して傾斜角度θを有し、汚泥をベルト幅方向に移動させる傾斜面を形成しており、抵抗面59は傾斜角度θに応じてベルト幅方向の長さLwが変化する。
【0035】
本実施の形態では、搬送方向上流側の列中において隣り合うバタフライスクレーパ56の支軸57と支軸57の中間位置に搬送方向下流側のバタフライスクレーパ56の支軸57が対応し、搬送方向上流側のバタフライスクレーパ56の間隙、つまりベルト幅方向におけるバタフライスクレーパ56の相互の離間距離に対して搬送方向下流側のバタフライスクレーパ56のベルト幅方向の長さが隙間なく対応しており、ベルト搬送方向上流側からベルト搬送方向下流側を見渡して、搬送ベルトの全幅にわたってバタフライスクレーパ56が存在する。
【0036】
しかしながら、搬送方向上流側のバタフライスクレーパ56と搬送方向下流側のバタフライスクレーパ56とのベルト幅方向における相対位置は任意の位置に設定可能であり、ベルト搬送方向上流側からベルト搬送方向下流側を見渡す状態で、搬送方向上流側のバタフライスクレーパ56の間隙に対して、搬送方向下流側の何れかの列のバタフライスクレーパ56が対応し、ベルト搬送面の全体として搬送ベルト52の全幅にわたってバタフライスクレーパ56が存在すればよい。
【0037】
図4(a)に示すように、ベルト搬送面上にはバタフライスクレーパ56の配置密度が異なる複数のゾーンを設定してあり、ここでは搬送方向上流側のゾーンAと搬送方向下流側のゾーンBとからなり、搬送方向上流側のゾーンAにおけるバタフライスクレーパ56の配置密度に比べて搬送方向下流側のゾーンBにおけるバタフライスクレーパ56の配置密度を大きく設定している。すなわち、搬送方向上流側のゾーンAにおけるバタフライスクレーパ56のベルト搬送方向の配置ピッチPaに対して搬送方向下流側のゾーンBにおけるバタフライスクレーパ56のベルト搬送方向の配置ピッチPbを小さく設定している。
【0038】
配置密度が異なる複数のゾーンの構成は上述した2ゾーンの構成に限らず、3ゾーン、4ゾーン等にすることも可能であり、搬送方向上流側のゾーンAにおけるバタフライスクレーパ56の配置密度に比べて搬送方向下流側のゾーンBにおけるバタフライスクレーパ56の配置密度を大きく設定すればよく、搬送方向下流側であるほどに各ゾーンのバタフライスクレーパ56の配置密度が大きくなる。
【0039】
図4(b)は、バタフライスクレーパ56の異なる配置構成を示すものである。ここでは、搬送方向上流側のゾーンAおよび搬送方向下流側のゾーンBにおけるバタフライスクレーパ56の配置ピッチPcを等間隔とし、バタフライスクレーパ56の抵抗面59がベルト搬送方向に対して傾斜角度θを有する傾斜面を形成し、搬送方向上流側のゾーンAにおけるバタフライスクレーパ56の傾斜面の傾斜角度θに比べて搬送方向下流側のゾーンBにおけるバタフライスクレーパ56の傾斜面の傾斜角度θを大きく設定している。
【0040】
このため、搬送方向上流側のゾーンAにおけるバタフライスクレーパ56のベルト幅方向の抵抗面59の長さLw(図5参照)に比べて搬送方向下流側のゾーンBにおけるバタフライスクレーパ56のベルト幅方向の抵抗面59の長さLw(図5参照)が大きくなる。
【0041】
図4(c)は、バタフライスクレーパ56の異なる配置構成を示すものである。ここでは、搬送方向上流側のゾーンAおよび搬送方向下流側のゾーンBにおけるバタフライスクレーパ56の配置ピッチPcを等間隔とし、バタフライスクレーパ56の抵抗面59がベルト搬送方向に対して傾斜角度θを有する傾斜面を形成し、搬送方向上流側のゾーンAにおけるバタフライスクレーパ56の抵抗面59の面積に比べて搬送方向下流側のゾーンBにおけるバタフライスクレーパ56の抵抗面59の面積を大きく設定している。
【0042】
このため、搬送方向上流側のゾーンAにおけるバタフライスクレーパ56のベルト幅方向の抵抗面59の長さLw(図5参照)に比べて搬送方向下流側のゾーンBにおけるバタフライスクレーパ56のベルト幅方向の抵抗面59の長さLw(図5参照)が大きくなる。
【0043】
上述した説明では、図4(a)に示す構成と図4(b)に示す構成と図4(c)に示す構成とを別途のものとして説明したが、図4(a)に示す構成と図4(b)に示す構成と図4(c)に示す構成とは組み合わせて実施することができる。
【0044】
上記した構成における作用を説明する。ベルト搬送面上の汚泥53は、搬送ベルト52による搬送によって搬送方向上流側にある汚泥投入部54から搬送方向下流側にある汚泥排出部55へ向けて移動し、脱水が進むほどに含水率が低下して汚泥容積が減少する。
【0045】
この搬送途上において、ベルト搬送面上に配置した複数のバタフライスクレーパ56が搬送ベルト52の搬送方向において汚泥53の進路を遮って汚泥53を鋤き返しつつ、図1および図4に示すように、ベルト搬送面上で汚泥53の進路を変向させて複数条の畝60を形成する。畝60の形成により、畝60の相互間には畝60の全長にわたってベルト搬送面上に汚泥から露出する暴露部位61が生じるので、汚泥53の内包水を汚泥層の表面から直接にベルト搬送面の暴露部位61を通して排出することが容易となる。
【0046】
しかしながら、図3に示すように、搬送方向上流側のバタフライスクレーパ56の傾斜角度θが小さい場合には、各バタフライスクレーパ56を通過する際に汚泥53の一部がバタフライスクレーパ56の上流側縁から溢れ出し、隣りのバタフライスクレーパ56を通過した畝60に合流する場合もあるが、少なくとも搬送方向上流側のバタフライスクレーパ56から搬送方向下流側のバタフライスクレーパ56までの間には、複数条の畝60と畝60の相互間の暴露部位61とが生じる。
【0047】
この搬送において、搬送方向上流側のゾーンAにおけるバタフライスクレーパ56の配置密度に比べて搬送方向下流のゾーンにおけるバタフライスクレーパ56の配置密度を大きく設定しているので、バタフライスクレーパ56によって汚泥53を鋤き返す濃縮促進操作の頻度が、ベルト搬送面上における汚泥53の含水率の変化に対応したものとなり、含水率の低減を促進させることができる。
【0048】
つまり、搬送方向上流側のゾーンAにおけるベルト搬送面上の汚泥53は、その汚泥濃度が低くて凝集汚泥のフロック間に多くの内包水を抱え、内包水が汚泥層から抜け出し易い状態にあるので、バタフライスクレーパ56による濃縮促進操作である鋤き返しによってそれまで汚泥層中に在った内包水が汚泥層の表面上に現出し、内包水が汚泥層の表面から容易に脱離し、多くの内包水が脱離水として速やかに流れ出し、バタフライスクレーパ56により形成するベルト搬送面の暴露部位61を透過して多くのろ液が排出される。しかも、搬送方向上流側のゾーンAにおけるバタフライスクレーパ56による濃縮促進操作を所定頻度とすることにより、汚泥層の表面から内包水が十分に流れ出す時間を確保することができ、バタフライスクレーパ56による鋤き返しにより汚泥層の表面の内包水が汚泥層内に埋没して内包水の脱離が阻害されることを抑制できる。
【0049】
一方、搬送方向下流側のゾーンBにおけるベルト搬送面上の汚泥53は、その含水率の低下とともに汚泥濃度が高くなって凝集汚泥のフロック間に抱える内包水が減少し、内包水が汚泥層から抜け出し難い状態にあるので、バタフライスクレーパ56による濃縮促進操作の頻度を搬送方向上流側のゾーンAにおけるものより多く設定することにより内包水の脱離を促進できる。
【0050】
また、バタフライスクレーパ56の抵抗面59がベルト搬送面上で汚泥53の進路を遮って汚泥53を受け止めることにより、汚泥53は抵抗面59に沿ってベルト搬送面上をベルト幅方向およびベルト搬送方向に移動しつつ、抵抗面59の上に留まり、ベルト搬送方向にベルトの搬送力に因る圧搾力を受け、汚泥53の内包水が脱離する。
【0051】
このため、図4(b)に示すように、搬送方向上流側のゾーンAにおけるバタフライスクレーパ56のベルト幅方向の抵抗面59の長さに比べて搬送方向下流側のゾーンBにおけるバタフライスクレーパ56のベルト幅方向の抵抗面の長さを大きく設定することにより、搬送方向下流側のゾーンBにおいては、抵抗面59の上に留まる汚泥53の滞留時間が長くなり、ベルト搬送方向に搬送ベルト52の搬送力に因る圧搾力を受ける時間が長くなって内包水の脱離が促進される。
【0052】
また、バタフライスクレーパ56の抵抗面59がベルト搬送方向に対して傾斜角度θを有する傾斜面を形成することにより、傾斜面の傾斜角度θによって抵抗面59の上で汚泥53が搬送ベルト52の搬送力に因って受ける圧搾力が異なり、傾斜面の傾斜角度θが大きくなるほどに、つまり抵抗面59が搬送方向上流側に向くほどに、圧搾力が大きくなる。
【0053】
このため、搬送方向上流側のゾーンAにおけるバタフライスクレーパ56の傾斜面の傾斜角度θに比べて搬送方向下流側のゾーンBにおけるバタフライスクレーパ56の傾斜面の傾斜角度θを大きく設定することにより、搬送方向下流側のゾーンBにおいては、抵抗面59の上に留まる汚泥53に対してベルト搬送方向に搬送ベルト52の搬送力が与える圧搾力が大きくなって内包水の脱離が促進される。
【0054】
また、バタフライスクレーパ56をベルト搬送面上で支軸廻りに回動可能に配置することで、ベルト幅方向の抵抗面59の長さおよび抵抗面59により形成する傾斜面の傾斜角度θを任意の値に設定することができ、その結果、ベルト搬送面上における汚泥の含水率の変化に対応して圧搾力の作用時間および大きさを調整して、含水率の低減を促進させることができる。
【0055】
また、ベルト搬送方向上流側からベルト搬送方向下流側を見渡して、搬送ベルト52の全幅にわたってバタフライスクレーパ56の抵抗面59が存在することで、バタフライスクレーパ56による濃縮促進操作を受けずに、ショートパスする汚泥53がなくなる。
【0056】
実施例1
ベルト幅500mm、バタフライスクレーパ56のサイズL100mm×H100mm、バタフライスクレーパ56の抵抗面59の傾斜角度θを45°として以下の各ケースを設定する。
ケース1. ベルト搬送面上に配置するバタフライスクレーパ56のベルト搬送方向の配置ピッチ(列ピッチ)を全て150mmとして26列配置する。
ケース2. ベルト搬送面上に配置するバタフライスクレーパ56のベルト搬送方向の配置ピッチ(列ピッチ)を全て300mmとして26列配置する。
ケース3. 図4(a)に示す構成において、搬送方向上流側のゾーンAにおけるバタフライスクレーパ56のベルト搬送方向の配置ピッチPaを300mmとし、搬送方向下流側のゾーンBにおけるバタフライスクレーパ56のベルト搬送方向の配置ピッチPbを150mmに設定する。
【0057】
結果
図6に示すように、ケース3の構成、つまり搬送方向上流側の脱水ゾーンにおいて配置ピッチ300mmとし、搬送方向下流側の濃縮ゾーンにおいて配置ピッチ150mmとするものが、濃縮汚泥濃度%において最も良い性能を発揮した。続いて配置ピッチを全て300mmとするもの、次に配置ピッチを全て150mmとするものとなった。
【0058】
実施例2
図4(b)に示す構成において、バタフライスクレーパ56のベルト搬送方向の配置ピッチPcを200mmの等間隔とし、ベルト搬送方向上流側の1、2列目を組とし、3、4列目を組とし、5、6列目を組として、1、2列目の組および3、4列目の組におけるバタフライスクレーパ56はその抵抗面59の傾斜角度θを0〜45°の範囲で操作し、5、6列目の組におけるバタフライスクレーパ56はその抵抗面59の傾斜角度θを0〜60°の範囲で操作し、何れか一つの組におけるバタフライスクレーパ56を操作し、その抵抗面59の傾斜角度θを変化させる間には他の組におけるバタフライスクレーパ56はその抵抗面59の傾斜角度θを45°に保持した。
【0059】
結果
図7に示すように、1、2列目の組のバタフライスクレーパ56を操作する場合には、バタフライスクレーパ56の抵抗面59の傾斜角度θを30°とする場合に、濃縮汚泥濃度%において高い性能を得ることができた。図8に示すように、5、6列目は、組のバタフライスクレーパ56を操作する場合には、バタフライスクレーパ56の抵抗面59の傾斜角度θを60°とする場合に、濃縮汚泥濃度%で高い性能を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態におけるベルト濃縮機の構成を示す模式図
【図2】同実施の形態におけるベルト濃縮機の構成を示す模式図
【図3】同実施の形態におけるベルト濃縮機の構成を示す模式図
【図4】同実施の形態におけるバタフライスクレーパの配置状態を示す模式図
【図5】同実施の形態におけるバタフライスクレーパを示す模式図
【図6】実施例1における結果を示し、バタフライスクレーパ列ピッチと濃縮汚泥濃度の関係を示すグラフ図
【図7】実施例2における結果を示し、1、2列目のバタフライスクレーパ角度と濃縮汚泥濃度の関係を示すグラフ図
【図8】実施例2における結果を示し、5、6列目のバタフライスクレーパ角度と濃縮汚泥濃度の関係を示すグラフ図
【図9】従来のプラウの配置状態を示す模式図
【図10】従来の濃縮機を示す模式図
【符号の説明】
【0061】
51 ロール
52 搬送ベルト
53 処理対象の汚泥
54 汚泥投入部
55 汚泥排出部
56 バタフライスクレーパ
57 支軸
58 固定部材
59 抵抗面
60 畝
61 暴露部位
A 搬送方向上流側のゾーン
B 搬送方向下流側のゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト搬送面上に供給した処理対象汚泥を搬送方向上流側の汚泥投入部から搬送方向下流側の汚泥排出部へ搬送する透水性を具えた搬送ベルトと、ベルト搬送面に摺接して搬送ベルトの搬送軌道上に配置する所定形状の複数の濃縮促進部材を備えるものであって、複数の濃縮促進部材をベルト幅方向およびベルト搬送方向に間隔をあけて配列し、かつ隣接して配置する搬送方向上流側の濃縮促進部材と搬送方向下流側の濃縮促進部材とをベルト搬送方向で異なる列中に配置し、ベルト搬送面の単位面積当たりにおける濃縮促進部材のベルト幅方向長さの総和が異なる複数のゾーンを設定し、搬送方向上流側のゾーンにおける濃縮促進部材のベルト幅方向長さの総和に比べて搬送方向下流側のゾーンにおける濃縮促進部材のベルト幅方向長さの総和を大きく設定したことを特徴とするベルト型濃縮機。
【請求項2】
ベルト搬送面上に濃縮促進部材の配置密度が異なる複数のゾーンを設定し、搬送方向上流側のゾーンにおける濃縮促進部材の配置密度に比べて搬送方向下流側のゾーンにおける濃縮促進部材の配置密度を大きく設定したことを特徴とする請求項1に記載のベルト型濃縮機。
【請求項3】
濃縮促進部材はベルト搬送面上で処理対象汚泥の搬送を遮る抵抗面を有し、搬送方向上流側のゾーンにおける濃縮促進部材のベルト幅方向の抵抗面の長さに比べて搬送方向下流側のゾーンにおける濃縮促進部材のベルト幅方向の抵抗面の長さを大きく設定したことを特徴とする請求項1または2に記載のベルト型濃縮機。
【請求項4】
濃縮促進部材はベルト搬送面上で処理対象汚泥の搬送を遮る抵抗面を有し、抵抗面がベルト搬送方向に対して傾斜角度を有し、処理対象汚泥をベルト幅方向へ移動させる傾斜面を形成し、搬送方向上流側のゾーンにおける濃縮促進部材の傾斜面の傾斜角度に比べて搬送方向下流側のゾーンにおける濃縮促進部材の傾斜面の傾斜角度を大きく設定したことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のベルト型濃縮機。
【請求項5】
濃縮促進部材はベルト搬送面上で傾斜面の傾斜角度を可変に配置したことを特徴とする請求項4に記載のベルト型濃縮機。
【請求項6】
ベルト搬送方向上流側からベルト搬送方向下流側を見渡して、搬送ベルトの全幅にわたって濃縮促進部材が存在することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のベルト型濃縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−94637(P2010−94637A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269266(P2008−269266)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】