説明

ボードカメラ用レンズマウント

【課題】簡単な操作により、レンズ枠の下部を均等に締め付けることができ、それによって、光軸ずれや光軸倒れの問題が生じない、ボードカメラ用レンズマウントを提供すること。
【解決手段】マウント枠の少なくとも上部を複数の部分に分断すると共に、マウント枠の一部の外周に雄ねじを切り、これに螺着されるレンズ締付リングを設け、レンズ締付リングの内側及びマウント枠の上部の外側に互いに当接するテーパー部を設け、レンズ締付リングを下方にねじ込むことにより、マウント枠のテーパー部が内側に押圧されてマウント枠が変形し、それによってレンズ枠の下部を締め付ける構成とすることにより、レンズ締付リングを回転させるという極めて単純な作業によりレンズ枠の下部を複数の方向から均等に締め付けることができ、それによって、光軸ずれや光軸倒れの問題を回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボードカメラのレンズを装着するボードカメラ用レンズマウントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の典型的なボードカメラ用レンズマウントの模式断面図を図3に示す。電子回路がプリントされた基板10(printed circuit board, PCB)上にCCDセンサー12が載置されている。基板10上には、CCDセンサー12を囲包する略円筒状のマウント枠(カメラマウント)14が固定される。マウント枠14の内側には、レンズ20を保持するレンズ枠16の下部16aが挿入され、一方、マウント枠14の頂部がレンズ枠16のフランジ部16bに支持される。マウント枠14には、1個〜3個のねじ孔18が設けられ、このねじ孔18に螺着されるセットビス(図示せず)をねじ込んでその先端でレンズ枠の下部16aを内側に向かって押圧し、それによってレンズ枠16を固定している。
【0003】
この従来のボードカメラ用レンズマウントでは、ネジ孔18が1個の場合、レンズ枠の下部16aが一方向から押圧されるため、レンズ枠16が傾き、光軸がずれる。さらにレンズ光軸とセンサー面との直角度も維持されず、いわゆる「光軸倒れ」が生じる。光軸ずれや光軸倒れが起きると、片ボケ等が生じ、像性能が悪影響を受ける。ねじ孔18を等間隔に配置して、等間隔に複数のセットビスで固定する場合でも、セットビスのねじ込みが手作業であるため、ねじ込み加減が不均等になって、やはり光軸ずれや光軸倒れが生じる。
【0004】
また、図4に示すようにマウント枠14の一部を切欠いてスリット部を形成し、このスリット部の位置に、対向する幅広部を設け、この幅広部を貫通するねじ孔22に1本の締付ビスをねじ込んでマウント枠を締め付けて変形させ、それによってレンズ枠の下部16aを固定するボードカメラ用レンズマウントも知られている。これによれば一本の締付ビスにより固定が可能である。
【0005】
しかしながら、このボードカメラ用レンズマウントでは、スリット部の近傍が強く締め付けられ、全周を均一に締め付けることが困難であり、上記した光軸ずれや光軸倒れの問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-125162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、簡単な操作により、レンズ枠の下部を均等に締め付けることができ、それによって、光軸ずれや光軸倒れの問題が生じない、ボードカメラ用レンズマウントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は鋭意研究の結果、マウント枠の少なくとも上部を複数の部分に分断すると共に、マウント枠の一部の外周に雄ねじを切り、これに螺着されるレンズ締付リングを設け、レンズ締付リングの内側及びマウント枠の上部の外側に互いに当接するテーパー部を設け、レンズ締付リングを下方にねじ込むことにより、マウント枠のテーパー部が内側に押圧されてマウント枠が変形し、それによってレンズ枠の下部を締め付ける構成とすることにより、レンズ締付リングを回転させるという極めて単純な作業によりレンズ枠の下部を複数の方向から均等に締め付けることができ、それによって、光軸ずれや光軸倒れの問題を回避できることに想到し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、基板と、該基板上に固定された、基本的に円筒状のマウント枠と、該マウント枠の外周に螺着されるレンズ締付リングとを具備し、前記マウント枠は、少なくともその上部が複数個の領域に分断されており、これらの複数の領域の全部又は複数のその一部がレンズ締付部を構成し、該複数のレンズ締付部は等間隔に配置され、その上部外側には、下方側の径が大きくなるテーパー部が形成されており、前記レンズ締付リングの内側には、前記テーパー部と当接するテーパー部が形成されており、該レンズ締付リングを回転させて下方に移動させると前記レンズ締付部の前記テーパー部が該レンズ締付リングの前記テーパー部により内側に押圧されて前記マウント枠が変形する、ボードカメラ用レンズマウントを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のボードカメラ用レンズマウントによれば、レンズ締付リングを回転させるという極めて単純な作業によりレンズ枠の下部を複数の方向から均等に締め付けることができ、それによって、光軸ずれや光軸倒れの問題を回避できる。さらに、本発明のレンズマウントは、カメラ側のレンズマウントという1つの部材で、フランジバック調整、光軸出し、マウント締め付けの3つの機能を一度に具備させることが可能であり、実用上、非常に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(A)は、本発明のボードカメラ用レンズマウントの好ましい1実施例の断面図、(B)は、台座を描いた平面図であり、(A)は(B)のA-A'線断面図である。
【図2】図2は、本発明のボードカメラ用レンズマウントの好ましい1実施例のマウント枠の平面図である。
【図3】従来のボードカメラ用レンズマウントの模式断面図である。
【図4】従来の他のボードカメラ用レンズマウントの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい1実施例を説明する。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「上」、「上部」、「下」、「下方」等の上下を表す語は、基板が下側、レンズが上側に来るように配置した状態での上下を表している。すなわち、図1(A)の断面図に表されている上下を示している。
【0013】
図1には、本発明のボードカメラ用レンズマウントの好ましい1実施例が示されている。図1の(B)は、この実施例における台座を示す平面図、図1の(A)は、この実施例のマウントの断面図であり、図1の(B)のA-A'線で切断した断面図である。なお、上記した従来例と同様な部材には同じ参照番号を付している。
【0014】
電子回路がプリントされた基板10上には、CCDセンサー12が搭載されている。基板10上には、台座24が複数のねじにより着脱可能に固定されている。台座24は、図1の(B)に示すように略正方形の形をしているが、後述するマウント枠14をその上に固定できる形状であれば任意の形状でよい。なお、台座24は、異なる厚さの台座と交換することにより、レンズとCCDセンサー12との距離を大きく変えることができるようにするために設けているものであり、同一のレンズを用いて量産品を生産する場合や、焦点距離のばらつきが、後述するFB調整リングにより調整可能な狭い範囲にある異なる種類のレンズを用いる場合には、必要ではなく、これらの場合には後述するマウント枠14を直接基板10上に固定してもよい。
【0015】
台座24上にはマウント枠14が固定されている。マウント枠14は、基本的に円筒状の形状をしている。「基本的に円筒状」とは、後述の通り、マウント枠14は少なくともその上部が間隙により分断されてレンズ締付部やフランジバック(FB)調整リング装着部を構成するが、これらのことを除けば全体として円筒状をしているという意味である。マウント枠は、少なくともその上部、すなわちこの実施例では、円筒の頂部(調整リング装着部(後述)の頂部)から50%〜70%程度の長さの隙間26により分断されている(図2参照)。6個の上下方向の隙間26が、等間隔に設けられており、それによってマウント枠14の上部は6個の同じ長さ(円周に沿った長さ)の部分に分断されている。分断された部分のうち、3つがレンズ締付部14aを構成し、残りの3つがFB調整リング装着部14bを構成している。レンズ締付部14aの個数は3個に限定されず、任意に設定できるが、通常、2〜4個程度である。また、この例では、レンズ締付部14aとFB調整リング装着部14bが同数である。レンズ締付部14aとFB調整リング装着部14bは互い違いに配置され、従って、レンズ締付部14aは、等間隔に配置されている。レンズ締付部14aの上端部外側には、下方側の径が大きくなるテーパー部14a’が形成されている。また、テーパー部14a’の下には、肉盗み部14cが形成され、従って、テーパー部14a’を支持する部分のレンズ締付部14aの肉厚は図1(A)に示されるように薄くなっており、これによってレンズ締付部14aの上部は、容易に内側に向かって変形することができる。一方、FB調整リング装着部14bは、レンズ締付部14aよりも高さが高く、レンズ締付部14aよりも突出している部分の外側に後述するFB調整リング28が螺着される。
【0016】
マウント枠14の外周には、レンズ締付リング30が螺着される。レンズ締付リング30の内側には、前記マウント枠のテーパー部14a’と当接するテーパー部30aが形成されており、レンズ締付リング30を回転させてレンズ締付リング30を下方に移動させるとレンズ締付部のテーパー部14a’がレンズ締付リングのテーパー部30aにより内側に押圧されて変形する構成となっている。レンズ締付リング30には、指との係りを良くする突起30bが形成されているが、これは形成しなくても特に問題はない。前記したFB調整リング装着部14bの上端部の外周には、FB調整リング28が螺着される。FB調整リング28は、回転させることにより上下方向に移動する。
【0017】
上記したレンズマウントを用いてレンズ枠を装着する場合には、レンズ枠16の円筒状の下部16aをマウント枠14の内部に挿入する。なお、この挿入は、単なる嵌挿でもよいし、レンズ枠16の円筒状の下部16aの外側とマウント枠14の内側にそれぞれ螺子を切り、螺合させて挿入してもよい。円筒状のマウント枠14の内径は、レンズ枠16の円筒状の下部16aの外径よりもやや大きいが、後述する締付によって固定できる程度にレンズ枠16の下部16aの外径とほぼ同じになっている。レンズ枠16は、そのフランジ部16bが、FB調整リング28の頂部に当接して支持されるまで挿入される。ここで、FB調整リング28を回転させ、それによってレンズ枠16を上下させてフォーカシングを行う。すなわち、フランジ部16bは、FB調整リング28の頂部に当接した状態で固定されるので、FB調整リング28を下側に移動した場合には、レンズ枠16も、フランジ部16bがFB調整リング28の頂部に当接するまで下側に移動させる。フォーカシングが完了した時点で、レンズ締付リング30を回転させて下方向に移動させる。そうすると、レンズ締付リング30のテーパー部30aの下方向への移動により、レンズ締付部のテーパー部14a’が内側方向に押圧されてレンズ締付部14aの上部が内側に向かって変形する。これにより、レンズ枠16の下部16aがレンズ締付部14aの上部によって押圧され、フォーカスが合っている位置で固定される。上記の通り、レンズ締付部14aは、等間隔に配置され、同じ長さ(円周に沿った長さ)を有しているので、レンズ枠16の下部16aは、3つの方向から同時にかつ均一に押圧される。このため、光軸ずれや光軸倒れが起きない。
【0018】
上記の通り、本発明のボードカメラ用レンズマウントによれば、レンズ締付リング30を回転させて下方向に移動させるという、熟練を要しない極めて単純な作業により、光軸ずれや光軸倒れを起こすことなくレンズ枠16を固定することができる。
【0019】
なお、上記実施例では、FB調整リング28を設け、また、これを螺着するためにFB調整リング装着部14bを設けたが、同一のレンズを用いて量産品を生産する場合などは、初めからそのレンズの焦点距離がわかっているので、フォーカシングが合った状態になるように寸法設計しておけば、FB調整リング28は不要であり、従って、FB調整リング装着部14bも不要である。この場合には、分断されたマウント枠の上部は全てレンズ締付部14aとして用いることができ、また、レンズ枠16のフランジ部16bは、レンズ締付部14aの頂部に支持される。
【符号の説明】
【0020】
10 基板
12 CCDセンサー
14 マウント枠
14a レンズ締付部
14b FB調整リング装着部
14c 肉盗み部
16 レンズ枠
16a レンズ枠の下部
16b レンズ枠のフランジ部
18 ねじ孔
20 レンズ
22 ねじ孔
24 台座
26 上下方向の隙間
28 FB調整リング
30 レンズ締付リング
30a レンズ締付リングのテーパー部
30b レンズ締付リングの突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に固定された、基本的に円筒状のマウント枠と、該マウント枠の外周に螺着されるレンズ締付リングとを具備し、前記マウント枠は、少なくともその上部が複数個の領域に分断されており、これらの複数の領域の全部又は複数のその一部がレンズ締付部を構成し、該複数のレンズ締付部は等間隔に配置され、その上部外側には、下方側の径が大きくなるテーパー部が形成されており、前記レンズ締付リングの内側には、前記テーパー部と当接するテーパー部が形成されており、該レンズ締付リングを回転させて下方に移動させると前記レンズ締付部の前記テーパー部が該レンズ締付リングの前記テーパー部により内側に押圧されて前記マウント枠が変形する、ボードカメラ用レンズマウント。
【請求項2】
前記複数個の領域の一部が前記レンズ締付部を構成し、他の領域は該レンズ締付部よりも高さが高いフランジバック(FB)調整リング装着部を構成し、該FB調整リング装着部の外周部に螺着されるFB調整リングをさらに具備する請求項1記載のボードカメラ用レンズマウント。
【請求項3】
前記マウント枠は、着脱可能な台座を介して前記基板に固定される請求項1又は2記載のボードカメラ用レンズマウント。
【請求項4】
前記レンズ締付部が2〜4個形成される請求項1ないし3のいずれか1項に記載のボードカメラ用レンズマウント。
【請求項5】
前記レンズ締付部及び前記FBリング装着部とが同数形成され、それぞれ2〜4個形成される請求項2記載のボードカメラ用レンズマウント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−15610(P2013−15610A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147055(P2011−147055)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(504378353)株式会社 ADL (3)
【Fターム(参考)】