説明

ポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、パターン硬化膜の製造方法及び電子部品

【課題】高い化学薬品耐性、及び基材に対する優れた密着性を有する硬化膜が形成できるポジ型感光性樹脂組成物であって、特に無電解めっき工程に用いられる薬品に対して高い化学薬品耐性を有し、半導体装置の層間絶縁膜等のパターン硬化膜の製造に好適に用いることのできるポジ型感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記成分(a)〜(d)を含有するポジ型感光性樹脂組成物。
(a)アルカリ性水溶液に可溶なポリマー
(b)光の照射を受けて酸を発生する化合物
(c)フェノール骨格を含有していない架橋剤
(d)ウレア結合を有するシランカップリング剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、パターン硬化膜の製造方法及び電子部品に関する。さらに詳しくは、耐熱性、耐薬品性及び優れた密着性を有する硬化膜を形成することができ、感度及び解像度に優れたポジ型感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いて得られる硬化膜及びパターン硬化膜、並びに当該パターン硬化膜を備えてなる電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の表面保護膜及び層間絶縁膜には優れた耐熱性と電気特性、機械特性等を併せ持つポリイミド樹脂膜が用いられている。
このポリイミド樹脂膜は、一般にはテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを極性溶媒中で常温常圧において反応させて得られるポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液(いわゆるワニス)を、スピンコート等で薄膜化して熱的に脱水閉環(硬化)することにより形成される(例えば非特許文献1)。
【0003】
近年、ポリイミド樹脂又はその前駆体樹脂自身に感光特性を付与した感光性ポリイミドが用いられてきている。この感光性ポリイミドを用いることにより、パターン形成工程が簡略化でき、煩雑なパターン製造工程の短縮を行うことができる(例えば特許文献1〜3)。
【0004】
従来、上記感光性ポリイミドの現像には、N−メチルピロリドン等の有機溶剤が用いられてきたが、最近では、環境やコストの観点からアルカリ水溶液で現像ができるポジ型感光性樹脂が提案されている。
【0005】
このようなアルカリ水溶液で現像可能なポジ型感光性樹脂を得る方法として、ポリイミド前駆体にエステル結合を介してo−ニトロベンジル基を導入する方法(例えば非特許文献2)、溶剤可溶性ヒドロキシルイミド又はポリベンゾオキサゾール前駆体にナフトキノンジアジド化合物を混合する方法(例えば、特許文献4、5参照)等が挙げられる。
係る方法により得られるポジ型感光性樹脂は低誘電率化が期待できることから、感光性ポリイミドと共にポリベンゾオキサゾール樹脂又はその前駆体樹脂自身に感光特性を付与したポジ型感光性樹脂である感光性ポリベンゾオキサゾールが注目されている。
【0006】
感光性ポリイミド又は感光性ポリベンゾオキサゾールは、近年の半導体装置におけるパッケージ形態の変化に伴い、表面保護膜だけではなく、再配線層等の層間絶縁膜として用いられるケースが増えている。
【0007】
このようなケースに対応するための、感光性樹脂組成物であるポリイミド及びポリベンゾオキサゾール系材料には、従来の材料以上に化学薬品に対する耐性が必要となる。特にアンダーバンプメタル(UBM)を作製するための無電解メッキ工程では、表面保護膜や層間絶縁膜の形成後、各種めっき液を含めた数種の化学薬品に曝される。しかしながら、従来の感光性樹脂組成物であるポリイミド及びポリベンゾオキサゾール系材料においては、化学薬品耐性と感光特性を両立するものは、未だ得られてないのが現状であった。
また、溶剤可溶性ヒドロキシルイミドは、感光特性、耐熱性に優れるものの、硬化膜として使用する際の基材への密着性に関しては、満足できる水準になかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭49−115541号公報
【特許文献2】特開昭59−108031号公報
【特許文献3】特開昭59−219330号公報
【特許文献4】特開昭64−60630号公報
【特許文献5】米国特許第4395482号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】日本ポリイミド研究会編「最新ポリイミド〜基礎と応用〜」(2002年)
【非特許文献2】J.Macromol.Sci.,Chem.,vol.A24,12, 1407(1987年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高い化学薬品耐性、及び基材に対する優れた密着性を有する硬化膜が形成できるポジ型感光性樹脂組成物であって、特に無電解めっき工程に用いられる薬品に対して高い化学薬品耐性を有し、半導体装置の層間絶縁膜等のパターン硬化膜の製造に好適に用いることのできるポジ型感光性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意、実験、検討を重ねた結果、アルカリ現像可能なポリマーに対し、フェノール骨格を含有していない架橋剤及びウレア結合を有するシランカップリング剤を併せて用いることで、得られる硬化膜の耐熱性、化学薬品耐性及び密着性の向上を実現すると共に、良好な感光特性を有するポジ型感光性樹脂組成物が得られることを知見するに至った。
【0012】
本発明によれば、以下のポジ型感光性樹脂組成物等が提供される。
1.下記成分(a)〜(d)を含有するポジ型感光性樹脂組成物。
(a)アルカリ性水溶液に可溶なポリマー
(b)光の照射を受けて酸を発生する化合物
(c)フェノール骨格を含有していない架橋剤
(d)ウレア結合を有するシランカップリング剤
2.前記(a)アルカリ性水溶液に可溶なポリマーが、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、及びこれらの前駆体からなる群から選択される1種以上である1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
3.前記(b)光の照射を受けて酸を発生する化合物が、ジアゾナフトキノンである1又は2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
4.前記(c)フェノール骨格を含有していない架橋剤が、尿素結合、メラミン骨格及びイソシアヌレート骨格のいずれかを含む化合物であって、1以上の−CHOR(Rは、水素原子又は一価の有機基である)で表される置換基を含む化合物である1〜3のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
5.前記(c)フェノール骨格を含有していない架橋剤が、下記式(1)で表される化合物である1〜4のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rは、それぞれ水素原子又は一価の有機基である。
は、それぞれ水素原子又は一価の有機基であり、R同士が互いに結合して環構造を形成してもよい。)
6.前記(c)フェノール骨格を含有していない架橋剤が、下記式(2)で表される化合物である1〜4のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化2】

(式中、R〜Rは、それぞれ水素原子又は−CHOR(Rは、水素原子又は一価の有機基である)で表される置換基であり、R〜Rの少なくとも1つは−CHORで表される置換基である。)
7.前記(c)フェノール骨格を含有していない架橋剤が、下記式(3)で表される化合物である1〜4のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化3】

(式中、R〜Rは、それぞれ水素原子、下記式で表される置換基又は−CHOR(Rは、水素原子又は一価の有機基である)で表される置換基であり、R〜Rの少なくとも1つは、下記式で表される置換基又は−CHORで表される置換基である)
【化4】

8.前記(d)ウレア結合を有するシランカップリング剤が、下記式(4)で表される化合物である1〜7のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化5】

(式中、R及びR10は、それぞれ炭素数1〜5のアルキル基である。
qは、1〜10の整数である。
rは、1〜3の整数である。)
9.前記(c)フェノール骨格を含有していない架橋剤の含有量が、前記(a)アルカリ性水溶液に可溶なポリマー100重量部に対して20重量部以上である1〜8のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
10.アンダーバンプメタル作製のための無電解めっきを必要とするデバイスの層間絶縁膜又は表面保護膜に使用される1〜9のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
11.1〜10のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物を塗布してなる硬化膜。
12.1〜10のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する感光性樹脂膜形成工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する露光工程と、
前記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像してパターン樹脂膜を得る現像工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を得る加熱処理工程を含むパターン硬化膜の製造方法。
13.12に記載の製造方法により得られるパターン硬化膜に、無電解めっきをしてアンダーバンプメタルを作製する工程を含む電子部品の製造方法。
14.12に記載のパターン硬化膜の製造方法により得られるパターン硬化膜を、層間絶縁膜層及び/又は表面保護膜層として有する電子部品。
15.13に記載の製造方法により得られる電子部品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高い化学薬品耐性、及び基材に対する優れた密着性を有する硬化膜が形成できるポジ型感光性樹脂組成物であって、特に無電解めっき工程に用いられる薬品に対して高い化学薬品耐性を有し、半導体装置の層間絶縁膜等のパターン硬化膜の製造に好適に用いることのできるポジ型感光性樹脂組成物が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であって、第1の工程を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であって、第2の工程を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であって、第3の工程を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であって、第4の工程を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であって、第5の工程を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る無電解めっきを用いたUBM作製工程に用いる半導体基板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、下記成分(a)〜(d)を含有する。
(a)アルカリ性水溶液に可溶なポリマー
(b)光の照射を受けて酸を発生する化合物
(c)フェノール骨格を含有していない架橋剤
(d)ウレア結合を有するシランカップリング剤
【0016】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、アルカリ性水溶液による現像が可能であり、良好な感度及び良好な解像度を示す。また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物から得られる硬化膜は、高い耐熱性を示すと共に、化学薬品耐性及び基材に対する密着性に優れる。
【0017】
(a)アルカリ性水溶液に可溶なポリマーのアルカリ性水溶液とは、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液、金属水酸化物水溶液、又は有機アミン水溶液等のアルカリ性の溶液である。
半導体製造に用いる現像液として、一般に、濃度が2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が用いられるので、本発明の(a)成分は、好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、特に好ましくは濃度が2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に可溶なポリマーである。
【0018】
また、「アルカリ性水溶液に可溶」とは、(a)成分単独を任意の溶剤に溶解して得られるワニスを、シリコンウエハ等の基板上にスピン塗布して形成することにより膜厚5μm程度の塗膜とし、この塗膜をテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、金属水酸化物水溶液及び有機アミン水溶液のいずれか1つに20〜25℃において浸漬し、この結果、均一な溶液として塗膜が溶解し得る時、(a)成分をアルカリ性水溶液に可溶と見なすことができる。
【0019】
本発明の組成物が含む(a)アルカリ性水溶液に可溶なポリマーは、特に限定されないが、加工性、耐熱性の点から、好ましくは主鎖骨格がポリイミド系又はポリオキサゾール系のポリマーである。即ち、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリオキサゾール、ポリアミド、及びこれらの前駆体(例えば、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリヒドロキシアミド等)から選ばれる少なくとも1種のポリマーである。また、アルカリ水溶液可溶性の点から、(a)アルカリ性水溶液に可溶なポリマーは、好ましくは複数のフェノール性水酸基、複数のカルボキシル基、又はこれら両方の基を有するポリマーである。
(a)アルカリ性水溶液に可溶なポリマーは、上記骨格の共重合体、又は2種以上の上記ポリマーの混合物を用いてもよい。
【0020】
本発明の組成物を用いて得られる硬化膜の耐溶剤性を高めることができることから、(a)成分は、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリオキサゾール、これらの前駆体、ポリアミド等が挙げられるが、好ましくはポリイミド、ポリオキサゾール、及びこれらの前駆体からなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくはポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、及びそれらの前駆体からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0021】
(a)アルカリ性水溶液に可溶なポリマーの具体例としては、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させ、脱水閉環することにより得られるポリイミド;ジカルボン酸ジクロリドとジヒドロキシジアミンを反応させ、脱水閉環することにより得られるポリオキサゾール;トリカルボン酸とジアミンを反応させ、脱水閉環することにより得られるポリアミドイミド;ジカルボン酸ジクロリドとジアミンを反応させることにより得られるポリアミド;テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させることにより得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体);テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンを反応させることにより得られるポリアミド酸エステル(ポリイミド前駆体);及びジカルボン酸ジクロリドとジヒドロキシジアミンを反応させることにより得られるポリヒドロキシアミド(ポリオキサゾール前駆体)が挙げられる。
上記ポリマーは、いずれも公知の方法で製造することができる。
【0022】
優れた耐熱性、機械特性及び電気特性を有し、現在、電子部品用樹脂として多用されつつあることから、加熱により閉環してポリベンゾオキサゾールとなるポリヒドロキシアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体)を(a)成分の一例として、以下説明する。
【0023】
ポリヒドロキシアミドは、例えば下記式(I)で表される繰り返し単位を含むポリマーである。式(I)で表されるヒドロキシ基を含有するアミドユニットは、硬化時の脱水閉環により、最終的には耐熱性、機械特性及び電気特性に優れるオキサゾール体に変換される。
【化6】

(式中、Uは4価の有機基である。Vは2価の有機基である。)
【0024】
ポリヒドロキシアミドのアルカリ水溶液に対する可溶性は、フェノール性水酸基に由来する。
(a)成分に用いるポリヒドロキシアミドは、好ましくは式(I)で表されるヒドロキシ基を含有するアミドユニットをある割合以上含む式(II)で表されるポリヒドロキシアミドである。
【化7】

(式中、Uは4価の有機基である。
V及びWは2価の有機基である。
j及びkは、それぞれモル分率を示し、j及びkの和は100モル%であって、jが60〜100モル%、kが40〜0モル%である。)
【0025】
式(II)で表されるポリヒドロキシアミドにおいて、j及びkのモル分率は、好ましくはj=80〜100モル%、k=20〜0モル%である。
【0026】
Uの4価の有機基は、好ましくは4価の芳香族基である。また、4価の有機基の炭素原子数は好ましくは6〜40である。Uの4価の有機基は、より好ましくは炭素原子数6〜40の4価の芳香族基である。
上記4価の芳香族基は、好ましくは4個の結合部位がいずれも芳香環上に存在する芳香族基である。
【0027】
Uで表される4価の有機基は、ポリベンゾオキサゾール前駆体であるために、例えばジカルボン酸と反応してポリアミド構造を形成する、2個のヒドロキシ基と2個のアミノ基をそれぞれ芳香環上に有し、ヒドロキシ基とアミノ基がオルト位に位置した構造を2組有するジアミンの残基である。
【0028】
上記ジアミンとしては、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
Wの2価の有機基は、例えばジカルボン酸と反応してポリアミド構造を形成するジアミンの残基であって、上記Uのジアミン以外の残基である。
Wの2価の有機基は、好ましくは2価の芳香族基若しくは2価の脂肪族基である。また、2価の有機基の炭素原子数は好ましくは4〜40である。Wの2価の有機基は、より好ましくは炭素原子数4〜40の2価の芳香族基である。
【0030】
上記ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、ベンジシン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン化合物が挙げられ、これらの他にも、シリコーン基の入ったジアミンであるLP−7100、X−22−161AS、X−22−161A、X−22−161B、X−22−161C及びX−22−161E(いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
Vの2価の有機基は、例えばジアミンと反応してポリアミド構造を形成するジカルボン酸の残基である。
Vの2価の有機基は、好ましくは2価の芳香族基である。また、2価の有機基の炭素原子数は好ましくは6〜40である。硬化膜の耐熱性の観点から、Vの2価の有機基は、より好ましくは炭素原子数6〜40の2価の芳香族基である。また、Vが炭素数6〜30の脂肪族直鎖構造を有する2価の有機基の場合は、熱硬化する際の温度を280℃以下と低くしても十分な物性が得られる点で好ましい。
上記2価の芳香族基としては、2個の結合部位がいずれも芳香環上に存在する芳香族基が好ましい。
【0032】
上記ジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(p−カルボキシフェニル)プロパン、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−ブロモイソフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、5−クロロイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族系ジカルボン酸、1,2−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、脂肪族直鎖構造を有するジカルボン酸である、マロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、イソプロピルマロン酸、ジ−n−ブチルマロン酸、スクシン酸、テトラフルオロスクシン酸、メチルスクシン酸、2,2−ジメチルスクシン酸、2,3−ジメチルスクシン酸、ジメチルメチルスクシン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3−エチル−3−メチルグルタル酸、アジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、3−メチルアジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、ピメリン酸、2,2,6,6−テトラメチルピメリン酸、スベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、1,9−ノナン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸、ドコサン二酸、トリコサン二酸、テトラコサン二酸、ペンタコサン二酸、ヘキサコサン二酸、ヘプタコサン二酸、オクタコサン二酸、ノナコサン二酸、トリアコンタン二酸、ヘントリアコンタン二酸、ドトリアコンタン二酸、ジグリコール酸及び下記式(III)で表されるジカルボン酸が挙げられる。これらの化合物を、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
【化8】

(式中、Zは、それぞれ炭素数1〜6の炭化水素基である。nは1〜6の整数である。)
【0034】
(a)アルカリ性水溶液に可溶なポリマーの分子量は、重量平均分子量で、好ましくは3,000〜200,000であり、より好ましくは5,000〜100,000である。
上記分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得られる値である。
【0035】
式(II)で表されるポリヒドロキシアミドは、一般的にジカルボン酸誘導体及びヒドロキシ基含有ジアミン類から合成できる。具体的には、ジカルボン酸誘導体をジハライド誘導体に変換後、ヒドロキシ基含有ジアミン類との反応を行うことにより合成できる。
【0036】
上記ジハライド誘導体としては、ジクロリド誘導体が好ましい。当該ジクロリド誘導体は、ジカルボン酸誘導体にハロゲン化剤を作用させて合成することができる。
ハロゲン化剤としては、通常のカルボン酸の酸クロリド化反応に使用可能な、塩化チオニル、塩化ホスホリル、オキシ塩化リン、五塩化リン等が使用できる。
【0037】
ジクロリド誘導体を合成する方法としては、ジカルボン酸誘導体と上記ハロゲン化剤を溶媒中で反応させる、又は過剰のハロゲン化剤中でジカルボン酸誘導体及びハロゲン化剤の反応を行った後、過剰分を留去する方法が挙げられる。
反応溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン等が使用できる。
【0038】
これらのハロゲン化剤の使用量は、溶媒中で反応させる場合は、ジカルボン酸誘導体1モルに対して、好ましくは1.5〜3.0モル、より好ましくは1.7〜2.5モルである。ハロゲン化剤中で反応させる場合は、ジカルボン酸誘導体1モルに対して、好ましくは4.0〜50モルであり、より好ましくは5.0〜20モルである。
反応温度は、−10〜70℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
【0039】
上記ジクロリド誘導体とジアミン類との反応は、脱ハロゲン化水素剤の存在下で、有機
溶媒中で行うことが好ましい。
脱ハロゲン化水素剤としては、通常、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基が使用される。また、有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が使用できる。
反応温度は、−10〜30℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
【0040】
本発明の組成物が含む(b)光の照射を受けて酸を発生する化合物(以下、単に光酸発生剤と言う場合がある)は、本発明の組成物から形成される硬化膜の光照射部のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有する。
【0041】
上記光酸発生剤としては、ジアゾナフトキノン、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられ、なかでもジアゾナフトキノンが感度が高く好ましい。
【0042】
(b)光酸発生剤の含有量は、感光時の感度及び解像度を良好とするために、(a)成分100重量部に対して、好ましくは0.01〜50重量部であり、より好ましくは0.01〜20重量部であり、さらに好ましくは0.5〜20重量部である。
【0043】
光酸発生剤であるジアゾナフトキノンは、例えばo−キノンジアジドスルホニルクロリド類、ヒドロキシ化合物、アミノ化合物等を脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることにより得られる。
【0044】
上記o−キノンジアジドスルホニルクロリド類としては、例えば、ベンゾキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド等が使用できる。
【0045】
上記ヒドロキシ化合物としては、例えばヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,3’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン,2,3,4,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10−テトラヒドロ−1,3,6,8−テトラヒドロキシ−5,10−ジメチルインデノ[2,1−a]インデン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が使用できる。
【0046】
上記アミノ化合物としては、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が使用できる。
【0047】
上記o−キノンジアジドスルホニルクロリドとヒドロキシ化合物及び/又はアミノ化合物は、o−キノンジアジドスルホニルクロリド1モルに対して、ヒドロキシ基とアミノ基の合計が0.5〜1当量になるようにヒドロキシ化合物及びアミノ化合物が配合されることが好ましい。
脱塩酸剤とo−キノンジアジドスルホニルクロリドの好ましい割合は、0.95/1〜1/0.95の範囲である。
また、好ましい反応温度は0〜40℃であり、好ましい反応時間は1〜10時間である。
【0048】
上記反応の反応溶媒としては、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、N−メチルピロリドン等の溶媒を用いることができる。
脱塩酸剤としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。
【0049】
本発明の組成物が含む(c)フェノール骨格を含有していない架橋剤とは、(a)成分のポリマー等と反応して橋架けをする機能を有し、フェノール骨格を含まない化合物である。
(c)成分は、感光性樹脂組成物を塗布、露光、現像後の加熱処理する工程において(c)成分である化合物がポリマーと反応して橋架けをするか、前記の加熱処理する工程において(c)成分である化合物自身が重合するものである。これらの反応により、得られる硬化膜の機械特性及び薬品耐性を向上させることができる。
【0050】
尚、フェノール骨格とは、芳香環に直接水酸基(−OH)が結合した構造を有する骨格を意味する。フェノール骨格を含む化合物である架橋剤では、十分な上記特性を得ることが困難である。
【0051】
(c)フェノール骨格を含有していない架橋剤は、好ましくは尿素結合、メラミン骨格及びイソシアヌレート骨格のいずれかを含む化合物であって、1以上の−CHOR(Rは、水素原子又は一価の有機基である)で表される置換基を含む化合物である。
(c)フェノール骨格を含有していない架橋剤は、より好ましくは下記式(1)〜(3)で表される化合物のいずれか1以上である。
【0052】
式(1)で表される化合物である化合物は、以下である。
【化9】

(式中、Rは、それぞれ水素原子又は一価の有機基である。
は、それぞれ水素原子又は一価の有機基であり、R同士が互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【0053】
式(1)で表される化合物は、より好ましくは下記式(1’)で表される化合物である。
【化10】

(式中、Zは、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基である。
Rは、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基である。)
【0054】
式(2)で表される化合物は、メラミン骨格を有する化合物である。
【化11】

(式中、R〜Rは、それぞれ水素原子又は−CHOR(Rは、水素原子又は一価の有機基である)で表される置換基であり、R〜Rの少なくとも1つは−CHORで表される置換基である。)
【0055】
Rの一価の有機基としては、炭化水素基が挙げられ、好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基である。
【0056】
式(2)で表される化合物は、多くの−CHORで表される置換基を有するとよく、式(2)で表される化合物は、より好ましくはR〜Rの全てが−CHORで表される置換基である。
【0057】
式(3)で表される化合物は、イソシアヌレート骨格を有する化合物である。
【化12】

(式中、R〜Rは、それぞれ水素原子、下記式で表される基又は−CHOR(Rは、水素原子又は一価の有機基である)で表される置換基であり、R〜Rの少なくとも1つは−CHORで表される置換基である。)
【化13】

【0058】
Rの一価の有機基としては、炭化水素基が挙げられ、好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基である。
【0059】
式(3)で表される化合物は、多くの−CHORで表される置換基を有するとよく、式(3)で表される化合物は、より好ましくはR〜Rの全てが−CHORで表される置換基である。
【0060】
現像時間、未露光部残膜率の許容幅及び硬化膜物性の観点から、(c)フェノール骨格を含有していない架橋剤の含有量は、(a)成分100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部である。一方、硬化膜の薬品耐性及びめっき液耐性の観点から、(c)フェノール骨格を含有していない架橋剤の含有量は、(a)成分100重量部に対して、特に好ましくは20重量部以上である。また、感光特性とのバランスの観点からは、(c)成分の含有量は、(a)成分100重量部に対して、好ましくは20〜50重量部である。
【0061】
本発明の組成物が含む(d)ウレア結合を有するシランカップリング剤は、感光性樹脂組成物を塗布、露光、現像後に加熱処理する工程において、ポリマーと反応して橋架けをする、又は加熱処理する工程において自身が重合すると推定される。これにより、得られる硬化膜と基板との密着性を向上させることができる。
【0062】
(d)ウレア結合を有するシランカップリング剤は、ウレア結合(−NH−CO−NH−)を有する化合物であれば特に限定されないが、好ましくは下記式(4)で表される化合物である。
【化14】

(式中、R及びR10は、それぞれ炭素数1〜5のアルキル基である。
qは、1〜10の整数である。
rは、1〜3の整数である。)
【0063】
式(4)で表される化合物の具体例としては、ウレイドメチルトリメトキシシラン、ウレイドメチルトリエトキシシラン、2−ウレイドエチルトリメトキシシラン、2−ウレイドエチルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、4−ウレイドブチルトリメトキシシラン、4−ウレイドブチルトリエトキシシラン等が挙げられ、好ましくは3−ウレイドプロピルトリエトキシシランである。
【0064】
(d)ウレア結合を有するシランカップリング剤の含有量は、(a)成分100重量部に対して、好ましくは1〜20重量部であり、より好ましくは2〜10重量部である。
【0065】
本発明の組成物は、さらに(e)熱酸発生剤を含んでもよい。(e)熱酸発生剤は、ポリベンゾオキサゾール前駆体のフェノール性水酸基含有ポリアミド構造が脱水反応を起こして環化する際の触媒として効率的に働くことができる。
例えば、(a)成分が約280℃の以下での脱水閉環率が高いポリマーである場合に、本発明の組成物が(e)酸熱発生剤を含むことにより、脱水環化反応をさらに低温化できるので、低温での硬化であっても、硬化膜の物性が、高温で硬化した硬化膜と遜色ない性能が得られる。
【0066】
上記熱酸発生剤(熱潜在酸発生剤)から発生する酸は、好ましくは強酸であり、例えばp−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸のようなアリールスルホン酸;カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸のようなパーフルオロアルキルスルホン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸のようなアルキルスルホン酸等が挙げられる。これら酸は、ポリベンゾオキサゾール前駆体のフェノール性水酸基含有ポリアミド構造が脱水反応を起こして環化する際の触媒として効率的に働く。
これに対して、塩酸、臭素酸、ヨウ素酸や硝酸が出るような酸発生剤では、発生した酸の酸性度が弱く、さらに加熱により揮発し易いこともあって、ポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応には殆ど関与しないと考えられ、本発明の十分な効果が得られにくい。
【0067】
熱酸発生剤は、例えば上述の酸をオニウム塩又はイミドスルホナートのような共有結合の形で本発明の組成物に添加できる。
【0068】
上記オニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウム塩のようなジアリールヨードニウム塩、ジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩のようなジ(アルキルアリール)ヨードニウム塩、トリメチルスルホニウム塩のようなトリアルキルスルホニウム塩、ジメチルフェニルスルホニウム塩のようなジアルキルモノアリールスルホニウム塩、ジフェニルメチルスルホニウム塩のようなジアリールモノアルキルヨードニウム塩等が好ましい。
これらオニウム塩は、分解開始温度が150〜250℃の範囲にあり、280℃以下でのポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応に際して効率的に分解することができる。
【0069】
以上の点から、本発明に用いる熱酸発生剤に好適なオニウム塩としては、例えば、アリールスルホン酸、カンファースルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸又はアルキルスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ジ(アルキルアリール)ヨードニウム塩、トリアルキルスルホニウム塩、ジアルキルモノアリールスルホニウム塩又はジアリールモノアルキルヨードニウム塩が挙げられる。これらは、保存安定性、現像性の点から好ましい。
【0070】
熱酸発生剤であるオニウム塩の好ましい具体例としては、パラトルエンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩(1%重量減少温度180℃、5%重量減少温度185℃)、トリフルオロメタンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩(1%重量減少温度151℃、5%重量減少温度173℃)、トリフルオロメタンスルホン酸のトリメチルスルホニウム塩(1%重量減少温度255℃、5%重量減少温度278℃)、トリフルオロメタンスルホン酸のジメチルフェニルスルホニウム塩(1%重量減少温度186℃、5%重量減少温度214℃)、トリフルオロメタンスルホン酸のジフェニルメチルスルホニウム塩(1%重量減少温度154℃、5%重量減少温度179℃)、ノナフルオロブタンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩、カンファースルホン酸のジフェニルヨードニウム塩、エタンスルホン酸のジフェニルヨードニウム塩、ベンゼンスルホン酸のジメチルフェニルスルホニウム塩、トルエンスルホン酸のジフェニルメチルスルホニウム塩等が挙げられる。
【0071】
尚、トリフェニルスルホニウム塩もオニウム塩であるが、本発明の組成物が含む熱酸発生剤としては望ましくない。トリフェニルスルホニウム塩は熱安定性が高く、一般に分解温度が300℃を超えているため、280℃以下でのポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応に際しては分解が起きず、環化脱水の触媒としては十分に働かないと考えられる。
【0072】
上記イミドスルホナートとしては、ナフトイルイミドスルホナートが望ましい。
熱酸発生剤であるナフトイルイミドスルホナートの好ましい具体例としては、1,8−ナフトイルイミドトリフルオロメチルスルホナート(1%重量減少温度189℃、5%重量減少温度227℃)、2,3−ナフトイルイミドトリフルオロメチルスルホナート(1%重量減少温度185℃、5%重量減少温度216℃)等が挙げられる。
【0073】
尚、フタルイミドスルホナートもイミドスルホナートであるが、熱安定性が悪いために、硬化反応よりも前に酸が出て、保存安定性等を劣化させるおそれがあるので本発明の組成物が含む熱酸発生剤として望ましくない。
【0074】
(e)熱酸発生剤として、RC=N−O−SO−R(式中、Rは、例えばp−メチルフェニル基、フェニル基等のアリール基、メチル基、エチル基、イソプロピル基等のアルキル基、トリフルオロメチル基、ノナフルオロブチル基等のパーフルオロアルキル基等である。Rは、シアノ基である。Rは、例えばメトキシフェニル基、フェニル基等である。)で表される構造を有する化合物を用いることができる。
【0075】
上記構造を有する熱酸発生剤としては、下記式(IV)で表される化合物(1%重量減少温度204℃、5%重量減少温度235℃)が挙げられる。
【化15】

【0076】
(e)熱酸発生剤として、アミド構造−HN−SO−R(式中、Rは、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、メチルフェニル基、フェニル基等のアリール基、トリフルオロメチル基、ノナフルオロブチル等のパーフルオロアルキル基等である。)を有する化合物を用いることができる。
上記アミド構造−HN−SO−Rに結合する基としては、例えば、2,2,−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2,−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ジ(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等が挙げられる。
【0077】
上記構造を有する熱酸発生剤としては、下記式(V)で表される化合物(1%重量減少温度104℃、5%重量減少温度270℃)が挙げられる。
【化16】

【0078】
(e)熱酸発生剤は、オニウム塩以外の強酸と塩基から形成された塩を用いることもできる。
上記強酸としては、例えばp−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸のようなアリールスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸のようなパーフルオロアルキルスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸のようなアルキルスルホン酸が好ましい。
また、上記塩基としては、例えばピリジン、2,4,6−トリメチルピリジンのようなアルキルピリジン、2−クロロ−N−メチルピリジンのようなN−アルキルピリジン、ハロゲン化−N−アルキルピリジン等が好ましい。
【0079】
保存安定性、現像性の観点から、オニウム塩以外の強酸と塩基から形成された塩である熱酸発生剤の好ましい具体例としては、p−トルエンスルホン酸のピリジン塩(1%重量減少温度147℃、5%重量減少温度190℃)、p−トルエンスルホン酸のL−アスパラギン酸ジベンジルエステル塩(1%重量減少温度202℃、5%重量減少温度218℃)、p−トルエンスルホン酸の2,4,6−トリメチルピリジン塩、p−トルエンスルホン酸の1,4−ジメチルピリジン塩等が挙げられる。これら熱酸発生剤も、280℃以下でのポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応に際して分解し、触媒として働くことができる。
【0080】
(e)熱酸発生剤の含有量は、(a)成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部であり、より好ましくは0.2〜20重量部であり、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。
【0081】
本発明の組成物は、(a)成分のアルカリ性水溶液に対する溶解を促進させる(i)溶解促進剤を含んでもよい。
上記溶解促進剤としては、フェノール性水酸基を有する化合物が挙げられる。フェノール性水酸基を有する化合物を、本発明の組成物に加えることにより、アルカリ性水溶液を用いて現像する際に、露光部の溶解速度が増加して感度が上げることができ、また、パターン形成後の膜の硬化時に膜の溶融を防ぐことができる。
【0082】
上記フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えばo−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、ビスフェノールA、B、C、E、F及びG、4,4’,4’’−メチリジントリスフェノール、2,6−[(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノール、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、4,4’−[1−[4−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、4,4’,4’’−エチリジントリスフェノール、4−[ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−2−エトキシフェノール、4,4’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3−ジメチルフェノール]、4,4’−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、2,2’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、2,2’−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、4,4’−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6−トリメチルフェノール]、4−[ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)メチル]−1,2−ベンゼンジオール、4,6−ビス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4,4’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3−メチルフェノール]、4,4’,4’’−(3−メチル−1−プロパニル−3−イリジン)トリスフェノール、4,4’,4’’,4’’’−(1,4−フェニレンジメチリジン)テトラキスフェノール、2,4,6−トリス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,3−ベンゼンジオール、2,4,6−トリス[(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,3−ベンゼンジオール、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ビス[(ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メチル]フェニル]−フェニル]エチリデン]ビス[2,6−ビス(ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メチル]フェノール等が挙げられる。
【0083】
現像時間及び未露光部残膜率の許容幅の観点から、(i)溶解促進剤の含有量は、(a)成分100重量部に対して、好ましくは1〜30重量部であり、より好ましくは3〜25重量部である。
【0084】
本発明の組成物は、(a)成分のアルカリ性水溶液に対する溶解性を阻害する(ii)溶解阻害剤を含んでもよい。
上記溶解阻害剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムニトラート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムニトラート、ジフェニルヨードニウムブロマイド、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヨーダイト等を挙げることができる。
【0085】
これら化合物は、発生する酸が揮発し易いこともあり、ポリベンゾオキサゾール前駆体等の環化脱水反応には関与しないが、残膜厚や現像時間をコントロールすることができる。
感度と現像時の許容幅の観点から、(ii)溶解阻害剤の含有量は、(a)成分100重量部に対して、好ましくは0.01〜50重量部であり、より好ましくは0.01〜30重量部であり、さらに好ましくは0.1〜20重量部である。
【0086】
本発明の組成物は、硬化膜の基板との接着性を高めるために、(d)成分以外の有機シラン化合物、アルミキレート化合物等の(iii)密着性付与剤を含んでもよい。
【0087】
上記(d)成分以外の有機シラン化合物としては、例えばビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n−プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n−ブチルフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert−ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n−プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n−ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert−ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn−プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n−ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert−ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n−プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n−ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert−ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4−ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジプロピルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼン等が挙げられる。
【0088】
上記アルミキレート化合物としては、例えばトリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、アセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0089】
(iii)密着性付与剤の含有量は、(a)成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部であり、より好ましくは0.5〜20重量部である。
【0090】
本発明の組成物は、例えばストリエーション(膜厚のムラ)を防いで塗布性を改善させるため、又は現像性を向上させるために、(iv)界面活性剤又はレベリング剤を含んでもよい。
【0091】
上記界面活性剤又はレベリング剤としては、例えばポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等が挙げられる。
市販品としては、商品名「メガファックスF171」、「F173」、「R−08」(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、商品名「フロラードFC430」、「FC431」(以上、住友スリーエム株式会社製)、商品名「オルガノシロキサンポリマーKP341」、「KBM303」、「KBM403」、「KBM803」(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0092】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、通常、溶剤が含まれ、上記各成分が溶解又は分散している。溶剤は特に制限はなく、γ−ブチロラクトン(BLO)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、N−メチルピロリドン(NMP)、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、アルコール等が使用できる。
上記溶剤の使用量は、特に制限されないが、好ましくは固形分(溶剤以外の成分)が5〜50重量%となるように使用する。
【0093】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物を塗布することにより硬化膜が得られる。
特に本発明の組成物は、アルカリ性水溶液による現像が可能であり、良好な感度、良好な解像度及び高い耐熱性を示すと共に、化学薬品耐性及び基材に対する密着性に優れるので、良好な形状のパターン硬化膜を製造することができる。
【0094】
本発明のパターン硬化膜の製造方法は、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する感光性樹脂膜形成工程と、感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する露光工程と、露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像してパターン樹脂膜を得る現像工程と、パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を得る加熱処理工程を含む。
【0095】
本発明の組成物を塗布する支持基板としては、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えばTiO、SiO等)、窒化ケイ素等が挙げられる。
塗布方法は、スピンナー等の塗布法が挙げられ、支持基板上に塗布した本発明の組成物からなる塗膜をホットプレート、オーブン等を用いて乾燥することで、感光性樹脂膜が形成できる。
【0096】
支持基板上で被膜となった感光性樹脂膜の露光は、所定のパターンを有するマスクを介して紫外線、可視光線、放射線等の活性光線を照射することにより行うことができる。
【0097】
露光後の感光性樹脂膜の現像は、アルカリ水溶液(アルカリ性現像液)を用いて行う。アルカリ水溶液を用いて、活性光線による感光性樹脂膜の露光部を除去することで、パターン樹脂膜が得られる。
【0098】
上記アルカリ性現像液としては、例えば水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,ケイ酸ナトリウム,アンモニア,エチルアミン,ジエチルアミン,トリエチルアミン,トリエタノールアミン,テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ水溶液が好ましい。
これらアルカリ水溶液の塩基濃度は、好ましくは0.1〜10重量%である。
【0099】
上記アルカリ性現像液に、アルコール類及び/又は界面活性剤を添加してもよい。
これらはそれぞれ、アルカリ性現像液100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部を添加することができる。
【0100】
得られたパターン樹脂膜を加熱処理することにより、パターン樹脂膜を熱硬化し、耐熱性の高い樹脂からなるパターン硬化膜が得られる。
上記加熱処理の温度は160〜400℃でよい。当該温度範囲は、従来の加熱温度より低いため、支持基板やデバイスへのダメージを小さく抑えることができ、デバイスの歩留り向上及びプロセスの省エネルギー化が可能となる。
【0101】
加熱処理時間は、脱水閉環反応が十分進行するまでの時間であるが、作業効率との兼ね合いから概ね5時間以下である。
【0102】
上記加熱処理は、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、及びマイクロ波硬化炉等を用いて行うことができる。加熱環境としては、大気中、又は窒素等の不活性雰囲気中いずれを選択することもできるが、窒素下で行う方がパターン樹脂膜の酸化を防ぐことができるので望ましい。
加熱処理を行う加熱環境としては、上述のように通常の窒素置換されたオーブンを用いる以外に、マイクロ波硬化装置や周波数可変マイクロ波硬化装置を用いることもできる。これらを用いることにより、パターン樹脂膜のみを効果的に加熱することが可能である。
【0103】
本発明のパターン硬化膜の製造方法を、パターン硬化膜を有する半導体装置の製造工程を一例に図面に基づいて説明する。
図1〜図5は、多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であり、第1の工程から第5の工程へと一連の工程を表している。
【0104】
図1〜図5において、回路素子(図示しない)を有するSi基板等の半導体基板1は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜2で被覆され、露出した回路素子上に第1導体層3が形成されている。上記半導体基板1上にスピンコート法等で層間絶縁膜層4としてのポリイミド樹脂等の膜が形成される(第1の工程、図1)。
【0105】
次に、塩化ゴム系、フェノールノボラック系等の感光性樹脂層5が、マスクとして層間絶縁膜層4上にスピンコート法で形成され、公知の写真食刻技術によって所定部分の層間絶縁膜層4が露出するように窓6Aが設けられる(第2の工程、図2)。この窓6Aに露出する層間絶縁膜層4は、酸素、四フッ化炭素等のガスを用いるドライエッチング手段によって選択的にエッチングされ、窓6Bが空けられる。次いで、窓6Bから露出した第1導体層3を腐食することなく、感光樹脂層5のみを腐食するようなエッチング溶液を用いて感光樹脂層5が完全に除去される(第3の工程、図3)。
【0106】
さらに、公知の写真食刻技術を用いて、第2導体層7を形成させ、第1導体層3との電気的接続が完全に行われる(第4の工程、図4)。3層以上の多層配線構造を形成する場合は、上記の工程を繰り返して行い各層を形成することができる。
【0107】
次に、表面保護膜8を形成する。図5では、本発明のポジ型感光性樹脂組成物をスピンコート法にて塗布、乾燥し、所定部分に窓6Cを形成するパターンを描いたマスク上から光を照射した後、アルカリ水溶液にて現像してパターン樹脂膜を形成する。その後、このパターン樹脂膜を加熱して表面保護膜層8としての感光性樹脂のパターン硬化膜とする(第5の工程、図5)。
この表面保護膜層(感光性樹脂のパターン硬化膜)8は、導体層を外部からの応力、α線等から保護し、得られる半導体装置は信頼性に優れる。
【0108】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物から得られるパターン硬化膜は、半導体装置、多層配線板、各種電子デバイス等の電子部品の層間絶縁膜層及び表面保護膜層として好適である。中でも、本発明のパターン硬化膜は高い耐薬品性を有するので、例えばUBM作製のための無電解メッキに用いるめっき液の影響の低減することができ、無電界めっきを必要とするデバイスの層間絶縁膜や表面保護膜として特に好適である。
【0109】
半導体装置の小型化に伴って、近年採用されている半導体装置の実装法であるフリップチップ方式は、半導体チップの外部端子(ボンディングパッド)と配線基板の外部端子との間をバンプ電極により電気的に接続しかつ機械的に接合する方式であり、UBMは配線基板とバンプ電極の間に形成される。このフリップチップ方式は、この半導体チップと配線基板との実装に限らず、半導体チップ同士の実装や配線基板同士の実装にも採用されている。
【0110】
UBMを作製する工程を適用する基板を図6に示す。図6では、シリコン基板102上に下地層103として複数層の配線等をまとめて示している。この下地層には、複数の配線層、それらの層間に形成される層間絶縁膜の層等が形成されている。下地層103上に外部電極端子104が形成されている。さらに本発明のポジ型感光性樹脂組成物により形成されたパターン硬化膜による表面保護膜層105が形成されている。
【0111】
この状態の外部電極端子104上に無電解めっきを用いてUBMを作製することができる。例えば、外部電極端子104がアルミパッドである場合、脱脂剤を用いて脱脂する工程、硫酸等を用いてエッチングして酸化膜を溶解する工程、亜鉛置換剤を用いてアルミニウム上に亜鉛置換する工程、無電解ニッケルめっき液を用いて亜鉛とニッケルの置換反応によりニッケルめっきをする工程、さらに無電解金めっき液を用いてニッケルと金の置換反応により金めっきをする工程を経て、UBMを作製することができる。
【0112】
次いでバンプ電極を形成するが、一般的にはんだが使用されている。はんだは、スクリーン印刷法やはんだボールを用いて搭載することができ、その後リフロー工程を経て、形状と密着性の良好なバンプ電極が形成される。
【0113】
本発明の電子部品は様々な構造をとることができ、好ましくは本発明のポジ型感光性樹脂組成物を用いて形成される表面保護膜層及び/又は層間絶縁膜層を有する。本発明の電子部品は、良好な形状と耐熱性に加えて、耐薬品性、密着性に優れたパターン硬化膜を有する信頼性の高いものである。
【実施例】
【0114】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。尚、本
発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0115】
[ポリベンゾオキサゾール前駆体((a)成分)の合成]
合成例1
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸15.48g(60mmol)、及びN−メチルピロリドン90gを仕込み、フラスコを5℃に冷却した。その後、塩化チオニル23.9g(120mmol)を滴下し、30分間反応させて、4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸クロリドの溶液を得た。
【0116】
次いで、攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン87.5gを仕込み、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン18.30g(50mmol)を攪拌溶解した。その後、ピリジン9.48g(120mmol)を添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、得られた4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリドの溶液を30分間で滴下し、30分間攪拌を続けた。攪拌した溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧乾燥してカルボキシル基末端のポリヒドロキシアミドを得た(以下、ポリマーIという)。
【0117】
ポリマーIを後述の測定条件によるGPC測定にかけ、得られた測定値をGPC法標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を求めた。得られたポリマーIの重量平均分子量は17,600であり、分散度は1.6であった。
【0118】
GPC法による重量平均分子量の測定条件は以下の通りである。
測定装置:検出器 株式会社日立製作所製L4000 UV
ポンプ:株式会社日立製作所製L6000
株式会社島津製作所製C−R4A Chromatopac
測定条件:カラム Gelpack GL−S300MDT−5 x2本
溶離液:THF/DMF=1/1 (容積比)
LiBr(0.03mol/L)、HPO(0.06mol/L)
流速:1.0mL/min、検出器:UV270nm
【0119】
合成例1では、ポリマー0.5mgに対して溶媒[THF/DMF=1/1(容積比)]1mLの溶液を用いて測定した。また、以下の合成例においても、得られたポリマーについて同様の測定を行い、重量平均分子量を求めた。
【0120】
[ポリベンゾオキサゾール前駆体((a)成分)の合成]
合成例2
ジフェニルエーテルジカルボン酸の代わりにドデカン酸を用いた他は合成例1と同様にしてポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーIIという)を合成した。
得られたポリマーIIの標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は27,200であり、分散度は1.9であった。
【0121】
[ポリイミド前駆体((a)成分)の合成]
合成例3
攪拌機及び温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA)10g(32mmol)とイソプロピルアルコール3.87g(65mmol)とをN−メチルピロリドン45gに溶解し、1,8−ジアザビシクロウンデセンを触媒量添加して、その後、60℃にて2時間加熱した。続いて室温下(25℃)で15時間攪拌し、エステル化を行った。その後、氷冷下で塩化チオニルを7.61g(64mmol)加え、室温に戻し2時間反応を行い、酸クロリドの溶液(以下、酸クロリド溶液Iという)を得た。
【0122】
次に、攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン40gを仕込み、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン10.25g(28mmol)を添加し、攪拌溶解した後、ピリジン7.62g(64mmol)を添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、調製した酸クロリド溶液Iを30分間で滴下した後、30分間攪拌を続けた。攪拌後の反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物を濾別して集め、減圧乾燥することによってカルボキシル基末端のポリアミド酸エステルを得た(以下、ポリマーIIIという)。
ポリマーIIIの重量平均分子量は19,400であり、分散度は2.2であった。
【0123】
[ポジ型感光性樹脂組成物の調製]
実施例1〜7及び比較例1〜4
合成例で調製した(a)成分であるポリマー100重量部、並びに表1の配合量の(b)、(c)、及び(d)成分を、γ−ブチロラクトン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを重量比9:1で混合した溶剤に溶解して、それぞれ感光性樹脂組成物を調製した。
尚、表1において、(b)、(c)、(d)成分の各欄における()内の数はポリマー100重量部に対する添加量(重量部)を示す。溶剤の使用量は、いずれもポリマー100重量部に対して200重量部である。
【0124】
【表1】

【0125】
表1中の(b)成分であるB1及びB2、(c)成分であるC1、C2、C3、C4及びC5、並びに(d)成分であるD1、D2、D3及びD4は以下の通りである。
【化17】

【化18】

【化19】

【0126】
[パターン硬化膜の製造]
実施例1〜7及び比較例1〜4で調製した感光性樹脂組成物を、それぞれシリコンウエハ上にスピンコートして、乾燥膜厚が7〜12μmの塗膜を形成した。得られた塗膜に、超高圧水銀灯を用いて、干渉フィルターを介して、100〜1000mJ/cmのi線を所定のパターンに照射して、露光を行った。露光後、120℃で3分間加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38重量%水溶液にて露光部のシリコンウエハが露出するまで現像した後、水でリンスして、パターン樹脂膜をそれぞれ得た。
【0127】
パターン樹脂膜形成において、未露光部の残膜率(現像前後の膜厚の比)80%で露光部のパターンが開口するのに必要な最小露光量(感度)をそれぞれ求めた。結果を表2に示す。
尚、上記露光は100mJ/cmから10mJ/cm刻みで露光量を上げていきながらパターン照射して現像を行い、最小露光量は、開口パターンを顕微鏡で観察しながら判断した。
【0128】
次に、作製したパターン樹脂膜付きウエハを縦型拡散炉μ−TF(光洋サーモシステム社製)を用いて窒素雰囲気下、150℃で1時間加熱した後、さらに320℃で1時間加熱してパターン硬化膜(硬化後膜厚5〜10μm)をそれぞれ得た。
【0129】
製造したパターン硬化膜付きウエハを、30重量%の水酸化ナトリウム水溶液に50℃で10分間浸漬し、イオン交換水で洗浄して、処理前後の開口パターン部を金属顕微鏡で観察し、処理後に変化がない場合を○として、開口パターン部に染み込みが見られる場合を×として薬品耐性をそれぞれ評価した。結果を表2に示す。
【0130】
製造したパターン硬化膜付きウエハの密着性をスタッドプル法を用いて評価した。
具体的には、PCT条件(121℃/100RH%/2atm)で300時間処理したパターン硬化膜付きウエハ上の硬化膜に、エポキシ系樹脂のついたアルミ製のピンを立て、オーブンで150℃/1時間加熱してエポキシ樹脂のついたスタッドピンを硬化膜に接着させた。このピンをROMULUS(Quad Group Inc.社製)を用いて引っ張り、剥がれたときの剥離状態を目視で観察した。硬化膜とエポキシ樹脂の界面、又はエポキシ樹脂とアルミ製ピンの界面から剥離した場合を○として、シリコン基板と硬化膜の界面で剥離した場合を×として、それぞれ評価した。結果を表2に示す。
【0131】
【表2】

【0132】
表2から分かるように、実施例の硬化膜は、いずれも実用上問題ない特性を有すると分かった。一方、(c)成分を用いなかった比較例2、フェノール基を含有する架橋剤(C5)用いた比較例1、3では、薬品耐性が実施例に比べ著しく悪くなっていることが確認できる。また、(d)成分を用いなかった比較例4では密着力の低下が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、高い化学薬品耐性、及び基材に対する優れた密着性を有し、特に無電解めっき工程に用いられる薬品に対して高い化学薬品耐性を有するので、表面保護膜又は層間絶縁膜として信頼性の高い電子部品の製造に適している。
【符号の説明】
【0134】
1 半導体基板
2 保護膜
3 第1導体層
4 層間絶縁膜層
5 感光樹脂層
6A、6B、6C 窓
7 第2導体層
8 表面保護膜層
101 半導体基板
102 シリコン基板
103 下地層
104 外部電極端子
105 表面保護膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)〜(d)を含有するポジ型感光性樹脂組成物。
(a)アルカリ性水溶液に可溶なポリマー
(b)光の照射を受けて酸を発生する化合物
(c)フェノール骨格を含有していない架橋剤
(d)ウレア結合を有するシランカップリング剤
【請求項2】
前記(a)アルカリ性水溶液に可溶なポリマーが、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、及びこれらの前駆体からなる群から選択される1種以上である請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(b)光の照射を受けて酸を発生する化合物が、ジアゾナフトキノンである請求項1又は2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(c)フェノール骨格を含有していない架橋剤が、尿素結合、メラミン骨格及びイソシアヌレート骨格のいずれかを含む化合物であって、1以上の−CHOR(Rは、水素原子又は一価の有機基である)で表される置換基を含む化合物である請求項1〜3のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(c)フェノール骨格を含有していない架橋剤が、下記式(1)で表される化合物である請求項1〜4のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化20】

(式中、Rは、それぞれ水素原子又は一価の有機基である。
は、それぞれ水素原子又は一価の有機基であり、R同士が互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【請求項6】
前記(c)フェノール骨格を含有していない架橋剤が、下記式(2)で表される化合物である請求項1〜4のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化21】

(式中、R〜Rは、それぞれ水素原子又は−CHOR(Rは、水素原子又は一価の有機基である)で表される置換基であり、R〜Rの少なくとも1つは−CHORで表される置換基である。)
【請求項7】
前記(c)フェノール骨格を含有していない架橋剤が、下記式(3)で表される化合物である請求項1〜4のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化22】

(式中、R〜Rは、それぞれ水素原子、下記式で表される置換基又は−CHOR(Rは、水素原子又は一価の有機基である)で表される置換基であり、R〜Rの少なくとも1つは、下記式で表される置換基又は−CHORで表される置換基である)
【化23】

【請求項8】
前記(d)ウレア結合を有するシランカップリング剤が、下記式(4)で表される化合物である請求項1〜7のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化24】

(式中、R及びR10は、それぞれ炭素数1〜5のアルキル基である。
qは、1〜10の整数である。
rは、1〜3の整数である。)
【請求項9】
前記(c)フェノール骨格を含有していない架橋剤の含有量が、前記(a)アルカリ性水溶液に可溶なポリマー100重量部に対して20重量部以上である請求項1〜8のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項10】
アンダーバンプメタル作製のための無電解めっきを必要とするデバイスの層間絶縁膜又は表面保護膜に使用される請求項1〜9のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物を塗布してなる硬化膜。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する感光性樹脂膜形成工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する露光工程と、
前記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像してパターン樹脂膜を得る現像工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を得る加熱処理工程を含むパターン硬化膜の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の製造方法により得られるパターン硬化膜に、無電解めっきをしてアンダーバンプメタルを作製する工程を含む電子部品の製造方法。
【請求項14】
請求項12に記載のパターン硬化膜の製造方法により得られるパターン硬化膜を、層間絶縁膜層及び/又は表面保護膜層として有する電子部品。
【請求項15】
請求項13に記載の製造方法により得られる電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−266487(P2010−266487A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115181(P2009−115181)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(398008295)日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社 (81)
【Fターム(参考)】